多分子供向けTCG世界か何かに転生したっぽいが、俺だけ成人誌の世界なんだが? 作:輝く羊モドキ
3月の終わりの日。
そして、この世界の終わりの日。
俺の目の前に一人、『主人公』が一人。立っていた。
腕には
こうして『主人公』の目の前に立つのは、3度目だ。
1度目は、倒れ伏す『主人公』とその仲間達の前に。
2度目は、闘気満ちた『主人公』と、世界中の強者達の前に。
そして今、3度目。今までと違い、
そしてその目には、『殺意』と『狂気』が燃えていた。
はは、いいね。
どうやら俺は、かなり思い違いをしていたらしい。
俺以外の皆が扱うカード、精霊、そのどれもが子供向けにデザインされたポップでキュートでカッコいい物達で。だからそんなモノ溢れるこの世界は『子供向け』だと思っていたんだが。
思い返せば、確かに。
何の事は無い。はじめっからこの世界は、『大人向け』だったというだけだ。
だってそうだろう?
こんなにも、狂おしい程。
こんなにも、愛おしい程。
『殺意』と『狂気』を、真っすぐ向けてくる『主人公』が。
少年誌や子供向けアニメの世界で描かれる訳が無いだろう?
だったら。
だったらさあ。
「こんな世界、バッドエンドで終わっても良いだろ?」
「円舞曲スタートォ!!!」
◆
スピリット・ワルツは悍ましい程に激しく進行していく。
激しい攻防、増減する手札、互いのフィールドが吹き荒れ、次のターンには盤石な態勢を取り、そして相手のターンでまた大きく荒れる。
コレがもし世界大会の全世界中継映像であれば、見る者全てを熱狂させ、手に汗を握りしめて観戦させる、全世界最高の勝負であっただろう。
「オレのタァーン!!!手札から【グループ・ドラゴン】を召喚ッ!!効果で2体デッキから追加召喚!!【ドラゴン】3体をリリースして手札から【超竜再生】発動ッ!!!墓地のアイテムカードとプレストカード全てデッキに戻し、カード1枚ドロー!ドローしたカードがスピリットカードだった場合、追加で1ドロー!この効果はスピリットカード以外のカードが出るまで続く!」
『主人公』がカードを何枚もドローしていき、再び展開を始める。
「フィールド5体のスピリット全てを対象に手札から【超竜融合】発動!!!エクストラデッキから現れろ、【
「なら手札からプレスト発動、【強欲で無力な呼び声】。手札を1枚捨て、エクストラデッキから召喚されたスピリットの効果を『相手フィールド上のカードを相手が1枚選んで破壊し、その後相手はカードをドローする』に書き換える。この効果は無効にならず、『効果を受けない効果』を貫通するルールがある。ハイド状態のカードを選択し破壊。その後1枚ドロー」
「クソッ!なら墓地の【復讐龍】の効果発動!【
「ワルツフェイズ移行前に手札からプレスト【強欲の代償】発動。効果で相手は俺のスピリットを攻撃する度手札かライフを墓地へ送らなければならない」
「くっ……なら攻撃せずターン終了!」
「俺のターン、前のターンにハイド状態で墓地へ送られた【闇の神官プルトゥ】の効果発動。このカードをフィールド上に置き、その後エクストラデッキから【プルトゥ】と名の付くスピリットを重ねて召喚する。現れろ、【天獄の支配者プルトゥ】。効果発動、手札を1枚捨て、墓地に存在する【プルトゥ】を全てフィールドに召喚する。【地獄の料理人プルトゥ】【新世界の従者プルトゥ】。それぞれの効果を発動。相手フィールド上のスピリットを2体まで選び破壊し、更に相手の手札の枚数分俺はドローし、相手フィールド上のスピリットの数手札を捨てる。ワルツフェイズに移行する」
「ならその前に手札から【復讐龍】を対象にプレストカード【ドラゴンの咆哮】!相手の【復讐龍】以下のLVを持つスピリットは攻撃出来ない!」
「……ワルツフェイズ、【天獄の支配者プルトゥ】で【復讐龍】を攻撃。『冥獄一閃』。【天獄の支配者プルトゥ】の攻撃で破壊されたスピリット・ライフはゲームから除外される。ターン終了」
「オレのターン!!」
激しい攻防。だがしかし、空しく、虚しくスピリット・ワルツをプレイする声が城に響く。
増減する『主人公』の手札。荒れ狂うフィールド。放たれる切り札と防御札の攻防。
もはやこの城には俺と『主人公』以外は誰も居ない。誰も彼もが今日を、世界の終わる日をただ慎ましく過ごしていた。あるいは、願っていた。
また、明日が何事もなく訪れますように。
「馬鹿がよ」
「ワルツフェイズ!【
粉々に吹き飛ぶ俺の
「【アークドラゴン】で直接攻撃!『ダイナミックスイング』!」
揺れる巨大な尻尾が俺の身体を撃ち抜く。
「【ドラゴンリンク】で直接攻撃!『トライホーンドライヴ』!」
三つ首竜の突進が俺の身体を穿つ。
「これでっ……!【
超高速で動くドラゴンが俺の最後のライフを奪い、再び突進してきた。
「最後のライフが手札に加わった時、コイツはそのまま召喚出来る。【不幸を告げる妖精】」
「ライフから召喚されるスピリットだって!?く……【ランボル】!そいつを攻撃!」
「【不幸を告げる妖精】は破壊される」
「仕留め損なった……ターンエンド!!」
「……」
これで俺が勝てば、世界は
「……エンドフェイズ時、手札のプレストカードを発動する」
『俺』という存在を
「【タイムマシーン】。このターン戦闘で破壊されたスピリットを呼び戻す」
「なっ!?もっと早く使えばライフが残せただろう!!?」
「良いんだよこのタイミングで。戻れ【プルトゥ】【不幸を告げる妖精】」
もし、『俺』という存在が
「……【不幸を告げる妖精】が召喚されたターン終了時、フィールドにこのカードが存在する時。デッキから―――」
「―――【終焉を告げる妖精】を、フィールドに呼び出す」
『―――ぃぃぃぃいいいひひひゃははははははははははは!!!』
―――まあ、もうそんなことはどうでも良いけど。
【終焉を告げる妖精】スピリット LVー∞
・このカードは召喚出来ない。
・このカードが墓地に送られた時、ゲームから除外される
・手札のこのカードを相手に見せて発動出来る。自分はこのカードをデッキの一番下に送る。
・このカードは戦闘で必ず敗北する。
・このカードは効果の対象になった時破壊される。
・相手のライフを全て墓地へ送って発動出来る。このターン、このカードは直接攻撃が出来る。
「そして俺のターン、【終焉を告げる妖精】の効果発動、お前のライフ全て墓地へ送り、このカードは直接攻撃が出来る」
「な、はあ!!?ふざけるな!!!手札から【エフェクトキラー】を墓地へ送って発動!フィールド上のスピリット1体の効果を無効にする!」
「【終焉を告げる妖精】は効果の対象になった際破壊される……が、お前のライフを全て墓地へ送るのは効果発動の為の
『ひゃははあははァ!!!』
【終焉を告げる妖精】が『主人公』のライフ全て奪いながらバラバラに爆散し、中空で霧のように消滅していった。
「デッキから10枚カードを墓地へ送り、手札から【悪食スライム グラトニー】を召喚」
「そいつは!?く……【アークドラゴン】の効果発動!グラトニーを選択し、その名前・LV・効果を【アークドラゴン】と同じにする!」
『あ”あ”あ”あ”!!?』
フィールドに出たグラトニーの姿が、『主人公』の傍に居るドラゴンへ
「……手札からプレストカード【妖精の祭典】を発動。墓地の【須臾の妖精 ソレーヌ】を選択し、そのレベルの合計と等しくなるように墓地から【妖精】スピリットを呼び戻す。その後手札を全て捨て1枚ドローする。……俺の場に居る5体のスピリット全てを
『貴様のせいで我自身もう搾りかすみたいなモンなんだが!?』
そうして現れたのは、この世界を混沌に変えるという邪神。
巨大な蛇の頭部に人間の女性が生えたようなその姿は、なるほど確かに悪意を振りまく邪神と言うに相応しい。
まあ、それが人間サイズでなければの話なのだが。
【強欲神 エキドナ】スピリット ゴッド LV EX
召喚条件:自分フィールド上のスピリット5体
・召喚に成功した時、相手の墓地から眷属を4体呼び出す。眷属がフィールドから離れる場合ゲームから除外される。
・神がフィールド上に存在する限り、相手はカードの効果は発動出来ない。
・このカードが戦闘する場合、LV EXのスピリット、あるいは神以外に必ず勝利する。
・このカードが破壊される時、フィールド上の眷属1体を生け贄にして破壊を免れる。
・ターン終了時に自分フィールド上に眷属が存在しない場合、相手の墓地から眷属を4体呼び出す。
フィールドに現れた邪神が闇を放てば、『主人公』の
引きずり出されたのは、巨大なドラゴン達。『主人公』の切り札、エース、仲間との友情の証、親愛の証。
「なっ……!?アステロイド!?ステラ!?オッドアイズ!?テナー!?」
時に『主人公』を守り、時に敵を撃破し、しかして遂には世界に『勝利』を
「墓地のアイテムカード『強欲な剣』の効果を発動する。自分フィールド上に存在する元々の持ち主が相手のカードをゲームから除外し、【強欲神 エキドナ】に装備」
【強欲な剣】アイテム
・自分フィールド上のLV 7以上のスピリットに装備可能。
・このカードを装備しているスピリットが相手スピリットと戦闘する時、カードを1枚ドローする。
・戦闘で相手スピリットを破壊した時、続けて攻撃する。
・このカードが墓地に存在する時発動可能。自分フィールド上に存在する元々の持ち主が相手のカードをゲームから除外し、フィールド上の正しい対象に装備する。
仮にも神を冠する癖に単体ではいまいちな性能の強欲神をサポートする強力なカードだ。
『貴様が我の力を奪えるだけ奪ったからだろうがァァァ!!』
「喧しい。ワルツフェイズ!強欲神で【
「【
「【強欲神 エキドナ】が場に居る限りお前はカードの効果は発動出来ない!闇に屠れ!」
「なんだと!?ッぐううう!?」
強欲神の攻撃によって闇に消え去る【
「【ドラゴンリンク】に攻撃!」
「【ドラゴンリンク】の効果!このカードが破壊される場合、手札1枚を墓地に送って無効にする!この効果は『発動する効果』じゃないから【強欲神 エキドナ】の効果範囲外だ!」
「ふん。なら【アステロイドドラゴン】で攻撃!」
「【ドラゴンリンク】の効果で破壊を無効!」
「手札は尽きたようだな。【ステラドラゴン】の攻撃!」
「ぐっ……【ドラゴンリンク】と【ステラドラゴン】は相打ちとなる……」
「これでトドメだ。【オッドアイズダンサー】で攻撃!」
赤と青の眼を持った踊り子が、その両手に持った諸刃剣と共に回転しながら『主人公』に斬りかかる。
【オッドアイズダンサー】は、元々『主人公』の仲間が持っていた切り札であり形見だった。
「……オレは、オレはァァァ!!墓地のカード全てをゲームから除外して【最終決戦】を発動!!!」
「【強欲神 エキドナ】が居る限りカード効果の発動は出来な……何?」
『主人公』の墓地から大量の光の玉が放たれ、フィールドの中央上空へ集まっていく。その光はどんどん、どんどんと拍動するように大きくなり、墓地から溢れ出てきた光の玉が止まった瞬間、フィールドのど真ん中へ落ちてきた。
「【最終決戦】の効果!自分の手札と互いのライフがゼロの時にのみ墓地の全てのカードをゲームから除外して発動する!フィールド上のカード全てを墓地へ送る!」
「なんだその強力なリセット効果は……何故発動出来た?」
『……我の力は、もはや神とは言え
「……そういう事か」
つまり【最終決戦】の
そしてフィールド上の全てのカードを、
『貴様マジ覚えてろよ……』
そうしてフィールドに落ちてきた太陽が世界を呑み込み、全てを焼き尽くした。
「……眷属となっていたカードは全てゲームから除外される。墓地に送られた時の効果は発動出来ない」
「オレのタァァァン!!!手札から【スピリット・ワルツ】を発動!互いのプレイヤーは手札が5枚になるようにドローする!オレは5枚ドロー!!」
「……1枚ドロー」
互いのデッキは、もはや片手で数えられる程度しか残っていない。尚且つ『主人公』のフィールドも墓地もカラ。しかし俺の手札と墓地リソースはまだまだ残っている。絶体絶命と言うに相応しい状況だが……。
来るんだろう?土壇場でバケモンドローソース引いてきた
「手札の地・水・風・炎のドラゴン達を墓地に送り、エクストラデッキから召喚する!暗闇に染まりし世界よ!明日無き運命よ!希望の光抱いて絶望に立ち向かえ!【希望神龍 マスタードラゴン】!!!」
『主人公』の手札から光が放たれ、遥か上空より
「ワルツフェイズ移行時、【希望神龍 マスタードラゴン】の効果発動!デッキからカード1枚ドローし、その種類によって効果が変わる!引いたカードは……スピリットカード【エールドラゴン】!相手はこのターンスピリットカード以外のカード効果の発動が出来ない!行けぇマスタードラゴン!『
「墓地の【アンデッドガードナー】の効果発動。手札を1枚捨て、相手スピリットの攻撃を無効にする。その後フィールドに召喚する。【アンデッドガードナー】の召喚に反応して【悦楽の妖精】を呼び戻し、『妖精』が呼び戻された事で他の妖精もフィールドに呼び戻す」
「無駄だ!【希望神龍 マスタードラゴン】は相手フィールドに墓地から召喚・呼び戻されたスピリットが居る限り連続攻撃出来る!『
「ちっ……ぐぅぅ!!!」
【希望神龍 マスタードラゴン】から放たれる無数の輝く流星が俺のフィールドを消し飛ばしていく。
否。フィールドだけじゃなく、俺の居城を消し飛ばしていく。悪意と欲望を煮詰めたような『帝国グループ』と、そこに繋がる『
まあ、そんな思い入れなんて無いけど。
流星が全ての始まりと終わりの大穴の最深部に浮かぶ城を完全に消しつくし、完全な闇が辺りを包む。
しかしそんな闇を打ち払わんとばかりに神々しく輝く龍と、それを従える【主人公】。
「手札の【エールドラゴン】の効果発動!このカードと墓地のドラゴンをゲームから除外し、フィールドのスピリット1体をもう一度攻撃出来るようにする!『エールギフト』!」
『主人公』から放たれた光が輝く龍に吸い寄せられ、更に煌々とした光が龍の口に集まっていく。
「これで……終わりだ!!!」
そして放たれる、極光を伴う流星。スピリットカード以外の効果発動をするマスタードラゴンの前に紙屑同然となった手札のプレストカードとアイテムカード。
……だが、まだ墓地リソースは残っている。
「俺は手札を全て捨て、墓地に存在するスピリットの効果を発動する」
俺の目の前で霧散する流星と、驚愕の表情を浮かべる神龍と『主人公』。
【暗黒邪神ナイアトテプ】 スピリット ゴッド LV EX
召喚条件:自分の手札が1枚も存在しない + 【偉大なる神々顕現の儀】の効果でのみ召喚可能
・このカードの召喚・効果発動は無効に出来ない。
・このカードが召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上のカード全てを墓地に送り、自分・相手の墓地に存在するLV EXのスピリットを召喚条件を無視してフィールドに好きなように置く。(アイテムカードとしても可)。この効果でフィールドに存在するスピリットは攻撃出来ず、効果の使用も出来ない。
・フィールド上にこのカード以外のLV EXスピリットが存在する場合、このカードは相手に直接攻撃が成功するまで何度でも攻撃出来る。
・フィールド上のカードを墓地に送って発動出来る。相手の手札・ライフを1枚選択し、自分のライフに加える。(ライフは5枚まで)
・墓地にこのカードが存在する時、手札を全て捨て発動出来る。墓地のプレストカード1枚の効果を使用する。この効果は相手ターンでも使用できる。
「こいつの最後の効果で、墓地にある【絶体絶命チャンス!】を使った」
「なぁッ……!?」
【絶体絶命チャンス!】プレスト
・相手スピリットの直接攻撃時、自分フィールド上にカード・ライフが無い場合、手札にこのカードのみがある時発動出来る。その攻撃を無効にしてカードを2枚ドローする。その後エンドフェイズに移行する。
昔から存在する、あまりにも使用タイミングが難しすぎる事で有名なカードだ。相手の攻撃を無効にするだけなら他に使いやすいカードがあり、ドローするなら同じく使いやすいカードが他にある。
「【絶体絶命チャンス!】の効果でエンドフェイズに移行する」
「く……クソッ……ターンエンド……!」
「俺のターン……」
カードを1枚引けば、そこで俺のデッキは尽きた。
「俺は【ドッペルゲンガー】を召喚。更に手札から【ドッペルゲンガー】を対象に【精霊の双影】発動。【ドッペルゲンガー】と同じLVになる精霊トークンと影トークンをフィールドに出す」
「【ドッペルゲンガー】だと……?ここに来て何を……」
【ドッペルゲンガー】スピリット LV1
・1ターンに1度、墓地のスピリット1体をゲームから除外して発動する。このカードは、ゲームから除外したスピリットと同じ名前とレベルを得る。
・上記の効果を使用したこのカードは攻撃出来ず、ターン終了時に墓地へ送られる。
【精霊の双影】プレスト
・フィールド上に存在するLV3以下のスピリット1体を選択して発動する。自分フィールド上に精霊トークンと影トークンを出す。この効果で現れたトークンのレベルは、選択したスピリットと常に同じになる。選択したスピリットがフィールドから離れた場合、フィールド上のトークンを全て破壊する。
・精霊トークンは戦闘では破壊されない。
・影トークンは相手の効果では破壊されない。
「墓地に存在する【悪食スライム グラトニー】をゲームから除外して【ドッペルゲンガー】の効果を発動。名前とレベルを得る。そしてトークン2体はグラトニーとなった【ドッペルゲンガー】と同じレベルになる。」
「レベル10が……3体……!」
「……名称の異なるLV10スピリット3体を生け贄に―――」
ゾッ、と。
その召喚条件は、間違いなく記憶に残っている。脳に焼き付いている。
世界に空いた大穴を作り出した、怪物が現れる。
「―――希望を、絶望を、未来を、過去を、善も悪も何もかもを食い潰せ。現れろ、神すら喰い尽くす怪物。【世界喰らう大顎門】」
全てを呑み込むその大口は、巨大な大穴の中でも健在で。
フィールド、墓地を呑み込み、闇を、空間を、世界を呑み込んでいく。
「ワルツフェイズ。【世界喰らう大顎門】でマスタードラゴンに攻撃。『
「抗えマスタードラゴン!『
超巨大なドラゴンから放たれる幾つもの流星が【世界喰らう大顎門】に直撃する。
しかしその流星が【世界喰らう大顎門】にダメージを与える事は無い。全身から裂けるように開いている口が全ての流星を呑み込み、噛み潰し、喰らう。
フィールド全てを埋めるような巨体を持つドラゴンと、ビルよりも巨大な大きさを持つアンコウがぶつかり合う。そしてサメのように鋭い牙がマスタードラゴンの全身に突き刺さる。血が流れるようにキラキラと光る星屑がマスタードラゴンの身体を伝う。
「マスタードラゴン!?そんな、マスタードラゴンは戦闘に必ず勝利出来る筈―――」
「【世界喰らう大顎門】も持っている。ルール上『相打ち』の場合は互いのスピリットは破壊されるが、あらゆる破壊を無効にする効果を持っているこっちの勝ちだ」
『ギュガアアアアア!!?』
マスタードラゴンの断末魔が世界に響く。勝敗は決した。
全身がズタズタに裂かれ、光となって消えていくマスタードラゴン。その光すら食い尽くさんと大顎を開く【世界喰らう大顎門】。
「―――それでも!希望は消えない!!!【希望神龍 マスタードラゴン】最後の効果発動!カードを1枚ドローし、スピリットカードだった場合そのレベルによって効果を得る!『
全身全てが光と化す【希望神龍 マスタードラゴン】。その光を全て食い潰さんと全身の口で呑み込む【世界喰らう大顎門】。だが僅かに残った光が『主人公』の手元へ舞い降り、デッキに宿った。
「……オレのデッキはあと2枚。そしてお前のデッキはもう無い。このターンを凌げば、オレの……オレ達の世界の、勝ちだ……!」
「……ああ。凌げればな」
俺は手札に残った最後のカードに意識を寄せる。既に運命は決している。こんな世界、どうなっても構いやしない……が、この勝負は。『主人公』は。『スピリット・ワルツ』は。
「……うおおおおおお!!!ドロー!!!!!!!」
とっくに亡くした筈の、俺の魂の残骸が。今この瞬間こそが楽しいと震えていた。
「ドローしたカードはスピリットカード!【
レベルは8!【
何処か『主人公』の幼馴染の少女を思わせるような、青い眼とプラチナ色の鱗を纏った龍が光の弾丸となり、【世界喰らう大顎門】の巨体に吸い込まれるように発射される。
【世界喰らう大顎門】はその弾丸を真正面から呑み込まんと大顎を開く。光の弾丸は真っすぐ突き進み、【世界喰らう大顎門】の喉に突き刺さり、そのままその巨体を貫通し俺の身体へ突き刺さった。
光の残滓が俺と【世界喰らう大顎門】を繋ぎ、【世界喰らう大顎門】の全身が光に包まれていく。
巨体が光に包まれる直前、【世界喰らう大顎門】の小さな、小さな片眸が俺を見る。
そして完全に光に包まれ、俺のエクストラデッキへと戻っていた。
「……これで、これでオレ達の勝ちだ!!!」
「―――ああ」
俺は手札に残った最後のカードから手を放す。
「―――【世界喰らう大顎門】は召喚するのに最上級スピリットを3体も要求する重いカードだ」
ひらりひらりとカードが舞うように俺の足元へ落ちていく。
「―――俺のデッキにカードは無く、手札のカードはフィールドにスピリットが居ない今使い道は無い」
カードはそのまま闇の中へと消えていく。
「【世界喰らう大顎門】の効果発動。このカードが
「……!」
「さあ、手札もフィールドも、墓地すらがら空きの俺を殺して見せろ」
世界から唯一。俺一人だけがこの
何度も何度も滅んだ世界。しかし滅んでも無かった事にされる世界。
時に俺が世界を滅ぼさんとする巨悪に立ち向かったこともあった。勝った。だが無かった事にされた。
未だに顕現せぬ巨悪を滅ぼした。それも無かった事にされた。
直接『主人公』に力を貸し与えたこともあった。無かった事にされた。
『主人公』の仲間に協力した事もあった、無かった事にされた。
巨悪に力を貸すふりをしてそれとなく『主人公』に力を分けたこともあった。無かった事にされた。
刻一刻と進み続ける世界。俺だけが断続する世界に取り残され、そんな俺を無視して世界は継続されていく。
希望だの、未来だの、薄っぺらな言葉にしか思えない。
努力すら否定され続けた先に何が残る。
家族も友も失った俺を残し続けて何がしたいのか。
「ターンエンド」
「……オレのターン!ドローしたカードは【ストライクドラゴン】!召喚してそのまま攻撃!」
【ストライクドラゴン】……懐かしいな。初めてスピリットワルツを行った相手が召喚してきたスピリットの一体だ。自身の身長を超えるドラゴンの攻撃にビビってた事もあったな。
今はもう何も感じねえや。
「ゲームから除外されている【超次元バックパック】の効果発動。【不死身のツーリスト】とゲームから除外されている時、相手のスピリットの攻撃を無効にし、【超次元バックパック】を墓地に移す」
「じょ……除外されているカードの……効果発動だと!?ぐっ……ターン……エン……ド……」
「…………俺の、ターン。効果でドローフェイズをスキップする為、ライブラリーアウトは起こらない。そして再び現れよ、世界の終焉告げる怪物。【世界喰らう大顎門】」
再度現れる超巨大な怪物。先ほどまでの姿とは打って変わって、全身から生えていたサメのような口からどす黒い血のような液体をゴポゴポと吐き出し、巨体が少しずつ、確かに縮んでいく。
「【世界喰らう大顎門】の最後の効果発動。ゲームから除外されているカード全てをデッキに戻す。『
ぐぱり
全身に生えている口がかっ開き、どす黒い液体と共に黒い光が激しく吐き出される。
数多もの光の中から一部が俺のデッキへと戻り、俺のメインデッキはゲーム開始前とほぼ同じになった。
「この効果でデッキに戻したLV EXスピリットの枚数だけ相手のフィールド上のカードを墓地へ送る。『
そして大きな口から放たれる大砲の如き光線が、『主人公』のフィールドに居た【ストライクドラゴン】を消し炭にした。
全身から今まで喰らってきた
その手足は木の棒のように細く、全身を隠すほどの汚れた灰色の長髪はボサボサに乱れている。
今にも死んでしまいそうな佇まいだが、その眼光は紅く鋭く【主人公】を射抜いていた。
「……終わりだな」
そう呟けば、世界の何かが致命的なまでに間違えてしまったかのような。
がちり、と。
世界を構築する歯車が壊れる音がした。
「あ……アぁ……」
『主人公』は、かつては希望をその眼に燃やして戦っていた者は。
俺に立ち向かってきた時には怒りと正義に燃えていた者は。
仲間を失って殺意と狂気に身を委ねた者は。
その眼は、絶望に染まっていた。
「【世界喰らう大顎門】で―――」
自分が死ぬ事による絶望か。
仲間の仇を討てぬことによる絶望か。
あるいは、世界を守れなかったという絶望か。
その全てか。
「―――攻撃」
【世界喰らう大顎門】の棒切れのような細い腕が振り上げられ、隠されていた
その細足からでは信じられないような踏み込みで駆け抜け、『主人公』との距離をゼロにした。
「『命喰』」
振るわれた腕が『主人公』の首を喰らい、『主人公』の頭はそのまま闇の中へ墜ちていった。
「ゲームセットだ」
闇に満ちた大穴の中に、一筋の光が差し込む。
「『主人公』が死に、世界は悪が支配してしまいましたとさ」
「ちゃんちゃん」
名状しがたい
こうして悪は滅びましたとさ。
めでたし めでたし
デウスエクスマキナに愛された『主人公』
遊希 望 ゆうき のぞむ
『ドラゴンビート』の使い手
この世界において比較的メジャーなタイプのビートダウンデッキを使用。
実力は非常に高く、小学生にして『
近隣で起こる様々なトラブルを『スピリット・ワルツ』で解決する『
宇宙からの侵略者や、遠い過去に封じられた邪神との戦いに勝利してきた実力は本物。
世界を滅ぼさんとする『悪食』を倒す為、『世界連合』の一員として征伐に加わる。
世界から弾かれた孤独者
誰からも望まれない『悪食』
■■■ 遊祇 ■■■ ゆうぎ
『ハンドレット妖精ハイエンド』の使い手
基本的にデッキ枚数は下限40枚構築が良いとされるが、狂気の100枚超デッキ。
フィールドに揃えやすい妖精カードを駆使して超重量級スピリットを大量に召喚していくデッキを使用。
幼いころから『悪の王』となるべく英才教育が施されている。
だが、生まれ持っての『破壊衝動』『殺人衝動』、そして『精霊喰い』の力を制御できず、両親・友人をその手で殺める。
誰かを愛するという感情を持たず、全て弱肉強食の理に則るままに喰らいつくしていく。
制御出来ない『破壊衝動』によって終には『人間界』と『
もうちっとだけ続くんじゃ