多分子供向けTCG世界か何かに転生したっぽいが、俺だけ成人誌の世界なんだが? 作:輝く羊モドキ
スピリット・ワルツ・アカデミアと呼ばれる学校島に来て、最初の学生が入学してから
アカデミア卒業生がスピリット・ワルツのプロ世界で華々しい活躍をした事もあり、最初の頃と比べて非常に多くの学生が増えた。
学生が増えたという事は、その学生の面倒を見る教師、事務員、用務員、また街施設の運営要員も増えたという事。
人が増えたという事は、問題を起こす馬鹿も増えたという事でもある。学生同士のトラブルは教員と風紀委員で対応し、学校外の街施設でのトラブルはこの島の新たな警察機関、『倫理委員会』が対応する。そしてトラブルの対応方法は、よっぽどの事が無い限りはスピリット・ワルツで解決する。
馬鹿かな?
学生達も増え、寝泊まりする寮も増改築を繰り返して大きくなっていく。
教員も初期のメンツから何度か入れ替わり、開校からずっと居る教員は校長と教頭、保険医の女、そして俺だけだった。
俺にも変化はあった。
選択授業は初期の頃は3年次選択であったが、1年次で当人の才能と成績を判断して2年次に4コースの内一つを選択する方式となった。
・カジュアル スピリット・ワルツの基本ルール、カードルールの説明を基本授業とし、汎用カードを用いたグッドスタッフ系列のデッキを中心に実技を行う。
・マスター カードコンボを徹底的に追及し、コンボに必要なカードの知識、コンボの組み上げ実践、そしてカードコンボに対してのマストカウンターの打ち方等の座学中心を行う。
・プロフェッショナル プロのスピリット・ワルツを目指す学生向けに現在流行しているデッキ構成、それに対するメタカード、そして観客を魅せるプレイングの実技中心の授業。
・ハイエンド 特に優秀な成績を修めた者のみが選択出来る授業。全コースの難関な所のみを行い、徹底的に実力とプレイングを鍛える上に授業内容に応じて様々なレポートを書くことを義務付けられる授業。
選択授業は座学も実技も全て専用のファイト場を通して行われ、そこでハイエンドクラスを除いた各人は俺を司令塔とした『コピーロボット』から授業を受ける事になる。
専用のファイト場は俺の電脳とリンクし、授業用の映像、座学、実技等をリアルタイムで操作する事で問題なく大勢の学生相手に俺一人で授業を行うことが出来る。
また、女曰く俺の行動記録を元に新たな『スピリット・ワルツ授業用のAIロボ』『実戦用AIロボ』『考査用AIロボ』等を作っているらしい。仮にAIロボが増えようが増えまいが、世界の1000倍の時間を持つ俺が無為に消費する時間が多少増えるだけで何も変わらないだろう。
『誰もお前を理解しようとしない。誰もお前を愛さない』
人間にとっても10年という年月は長い。機械の身体を持つ俺は見た目に精々アクセサリーが付いた程度の違いは無いが、人間は10年も経てば大きく変わる。入学したての子供は10年で大人に変わり、社会に出てプロになったり会社勤めになったり、あるいは結婚して子供が生まれたりと大忙しだ。
今日もまた俺宛にハガキが届く。内容は、
ハガキにプリントされた家族写真には、笑顔で笑う男性と女性、そして元気そうに泣く赤子の顔がしっかりと写っていた。
『お前が殺したヤツもこうして愛されて生まれ育ったんだろうな』
俺はハガキをシュレッダーに投げ入れる。シュレッダーの中には先ほどのハガキ以外にも多くの俺宛の手紙が入っていた。
文章、写真、中には小物や指輪まで送る者も居る始末。それら全て軽く目を通してシュレッダーに投げ入れ、紙以外の物は破砕機に捨てる。
『誰もお前を救わない』
全裸で眠る女を退け、今日の
スピリット・ワルツ・アカデミア開校10周年。その入学式が今日行われる。
◆
「――――――!」
10年前と比べて更に老いた校長が演台に立って新たに入学してきた学生達に挨拶を行う。
身長ほどに長かった白髭はだいぶ短く整えられており、その笑顔が一番奥に座している学生にも見えただろう。
入学してきた学生達を見れば、居るわ居るわカードの精霊が。入学式を行っている大ホールの中を思い思いに過ごす精霊達。退屈そうにあくびをするドラゴン。自身の主の膝の上で大人しく座っている小悪魔。一番後ろの席の更に後ろで佇んでいる人型ロボットに、床をちょろちょろ走り回るネズミとそれを追いかける猫、あと犬。なぜかネズミも猫も二足歩行な上、非常にコミカルな動きを見せていた。
……なんか何処かで見た事あるキャラクターデザインだな。あ、ネズミが振り回したフライパンが猫の頭に直撃して、猫の頭が平らになった。
そんな光景を眺めながら
「―――!―――――!」
新入生代表として演説を行っている。詳しくは知らないが、入学倍率100倍超の中で行われた受験戦争でトップを飾り新入生代表になっている以上優秀なのだろう。
そうして入学式は特に問題なく進行し、そのまま学生達は各々の寮へ移動していった。
学生寮は男子寮、女子寮と別れており、それぞれの部屋も基本3~4人の共同部屋。特に成績が優秀だった者と不出来な者は2人用の部屋に振り分けられ、学力の底上げを狙っていると校長は言っていた。
無論定期考査で落第を与えられた者は学校を去る。当然不出来な者が落第する可能性は高いため、必然成績が優秀な者は一人部屋にランクアップという訳だ。あまりにも部屋の偏りが酷い場合はアカデミア側から部屋の再振り分けが行われるが、今まであまり行われた事は無い。
1年次生は今日はこのまま終了となるが、我々教師陣は別にやる事がある。2・3年次の担任教師は各々の教室に向かい、俺は今年度初の風紀活動を行う。と言っても風紀委員室に行って彼ら彼女らの強化訓練を行うだけだが。
「―――!―――――!」
「おはようございます。それでは今年度もお願いします」
「――!――――!!」
風紀委員室には、既に2・3年次の風紀委員が勢ぞろいしていた。代表として挨拶してきた風紀委員長が先陣を切り、早速ファイトを仕掛けてくる。
「―――!」
「円舞曲スタート」
風紀委員長は現在2年次生だが、去年は入学して半年も経たずに当時の風紀委員長を倒し、しかも手加減用デッキとは言え俺に勝つ事が出来る程の実力を持っていた。
「―――!―――、―――――!!」
彼女のプレイングは隙が無く、物量でとにかく押して押して押しまくるデッキだ。ライフを削ろうにも防御札をしっかり握って対策しており、また
最初のターンを終えた彼女の前には5体のスピリットが並びながら、3枚も手札を残していた。
「私のターン、ドローします。メインフェイズ、手札からワルツフィールドカード【リドルストーリー】発動します。効果処理でデッキからカードを1枚引き、フィールドにレベル5以上のスピリット1体を召喚します。【グリム・BBウルフ】召喚。その後召喚したスピリットのレベルと同じ枚数デッキから墓地に捨てます。BBウルフのレベルは10。10枚墓地へ捨てます」
「―――!―――!」
「BBウルフは破壊される場合、自身のライフを1枚墓地へ送る事で破壊を無効にします。ライフを墓地へ」
5→4
「墓地に送られるカードは【グリムノート】、効果発動します。このカードはライフから手札または墓地へ送られた時でも効果を発動出来ます。連弾発動、自身のライフが直接墓地へ送られた時に手札からプレストカード【音楽隊緊急集合!】を発動します。何かありますか」
「――!―――……!」
「では更に連弾発動します。【BBB・ビッグバッドバイツ!】。発動コストとしてライフを1枚BBウルフに重ねます。何かありますか」
「!?―――……」
4→3
「では効果処理を行います。【BBB・ビッグバッドバイツ!】の効果で貴方の発動した【艦砲一斉射撃】を無効にして破壊します。その後【音楽隊緊急集合!】の効果でデッキ・墓地からそれぞれロバ・犬・猫・鶏を手札に加えます。最後に【グリムノート】の効果発動。手札に存在する【グリム】スピリットカードを2枚まで公開し、公開した枚数ドローを行い、その後公開した枚数分墓地へ捨てます。ただしこのカードがライフを失った際に発動した場合、公開できる手札は4枚までになります。手札のロバ・犬・猫・鶏を公開し4枚ドロー。その後ロバ・犬・猫・鶏を捨てます。効果処理終了。何かありますか?」
「――!―――!!」
「通します。手札が7枚あるので3枚捨てます。効果処理終了後、墓地に捨てられたアイテムカード【星の銀貨】の効果を発動します。何かありますか」
「――?……―――」
「では効果処理をします。相手の効果によって手札から捨てられた【星の銀貨】はデッキの一番下に戻り、その後以下の効果から選択します。自分は2枚ドローする、相手フィールドのスピリットを1枚自身の手札に加える。後者の効果を選択し、私は貴方のフィールドに居る【宇宙戦闘艦 ヤマト】を私の手札に加えます」
「―!!?―――!!」
「プレイするカードの効果を事前に説明する義務はありません。後ろに居る3年次生達にも何度も言ってますが、『知らないのが悪い』」
「――!!」
「BBウルフの効果発動します。手札のヤマトをこのカードに重ねます。ワルツフェイズに入ります。何かありますか」
「――!――――!」
「通します。BBウルフはこのターン攻撃出来ないので、このままターンを終了します」
「―!――!……――!」
「通します。BBウルフは手札に戻った場合、重なっていたカードは持ち主の墓地へ送られます」
「――!!」
「3体の攻撃はライフで受けます」
3→2→1→0
「――……―――!」
「自分フィールド上にスピリットが存在しないとき、手札からプレストカード発動【ラプンツェルの塔】。何かありますか」
「――……」
「では効果処理をします。【ラプンツェルの塔】の効果でフィールド上に塔トークン、そして茨トークン4体を召喚します。攻撃を続行しますか」
「――!―――!」
「茨トークンは一つ消滅します」
「―――!」
「私のターン、ドローします。メインフェイズ、ワルツフィールドカード【リドルストーリー】の効果を発動します。レベル4の茨トークン3体を生け贄に、効果でBBウルフを召喚。その後、デッキから残りの2レベル分、カード2枚を墓地へ捨てます。墓地へ捨てられた【道しるべのパン】の効果を発動。同じく墓地へ捨てられた【魔女の眼】の効果を連弾発動します。何かありますか」
「―……」
「効果処理を行います。【魔女の眼】の効果でデッキの一番下のカードを宣言します。デッキの一番下のカードは【星の銀貨】。宣言したカードと同じカードだった場合、そのカードを手札に加えた後墓地のカードを5枚までデッキに戻してシャッフルします。【道しるべのパン】の効果でデッキからレベル4以下のスピリットカード、【お菓子の家】を手札に加えます。効果処理終了。
【お菓子の家】を召喚します。召喚時効果発動、何かありますか」
「!……―――!――!」
「通します。巡洋艦の効果で【お菓子の家】の効果は無効になり、効果は不発となります。手札からプレストカード発動【魔女の魔法】。何かありますか」
「――!?」
「……無いなら効果処理を行います。【魔女の魔法】により、エクストラスピリット【グリム・灰かぶり姫】を選択。フィールド上のBBウルフ・お菓子の家・塔トークンを墓地に送り、墓地に存在するガラスの靴の上に重ねてフィールドに召喚します」
「――……」
黒いローブを被った老婆が杖を振ると、フィールドに居た大きな狼・お菓子の家・石造りの高い塔がぐにゃりと歪みながら中を渦巻いて光の球を作り出す。
光の球からは人型の何かが出てきて、次第にそれは光り輝くドレスを着た一人の女性の姿を形どった。
「灰かぶり姫の効果は相手フィールド上のスピリットの数によって効果が変動する。相手フィールド上に4体以上のスピリットが居る時、このカードは1ターンに1度デッキ・墓地から正しい対象となるアイテムカードを2枚まで選んで装備出来る。墓地から【カボチャの馬車】【
「……」
「では灰かぶり姫で【宇宙巡洋艦 タツタ】を攻撃。【
「――……」
「では攻撃続行します」
輝くドレスから金属で出来た女性用の軽アーマーに着替えた灰かぶり姫は、自身の身長と同じほどのロングソードとドラゴンの鱗で出来た大盾を両手に持ち、ガラスの靴を履いてカボチャの馬車を曳く馬の背中の上に立ち、自身より遥かに大きな船に突撃していく。
キラリとアーマーが光れば、突撃する馬の速度から更に加速するように宇宙巡洋艦に向かって飛び、一太刀で艦を真っ二つに切り伏せた。
「――!」
「覇者の剣の効果により、相手スピリットを戦闘で墓地に送った際、相手はライフを1枚失う」
「……――!」
「そして【カボチャの馬車】を装備したスピリットは相手スピリットに戦闘で勝利した場合、続けて攻撃が出来る。【宇宙空母艦 アカギ】を攻撃」
爆散する宇宙巡洋艦の勢いに乗ってカボチャの馬車に戻ってきた灰かぶり姫は、再び馬車の突撃にあわせて跳躍し、次の標的を真っ二つに切り裂いた。
「更に続いて宇宙輸送艦 イチゴ と ニィナ に攻撃」
宇宙空母艦が爆散する前に蹴り跳んだ灰かぶり姫は宇宙輸送艦をそれぞれ二太刀で切り捨て、3等分に斬り分けて艦が爆散した。
「――!―――!」
「最後に直接攻撃を宣言します」
「―――!―――!!」
「灰かぶり姫に装備されている【ドラゴンシールド】を墓地へ送り、灰かぶり姫を対象としたカードの効果を無効にします」
「――!!」
宇宙輸送艦それぞれ破壊された時の効果で手札を1枚ドローし、墓地からプレストカードを回収した風紀委員長。
ロングソードを振り上げながら真っすぐ落ちてくる灰かぶり姫に向けて、手札から【レッドカード】を発動し、赤い光線が灰かぶり姫に向かって真っすぐ突き進む。灰かぶり姫は手に持った盾でその光線を弾くと、盾が消滅すると同時に風紀委員長の最後のライフが切り捨てられた。
「直接攻撃では馬車の効果は発動しません。このままターンを終了します」
「―――!!――――!!!」
風紀委員長は手札からスピリットを召喚し、効果で墓地のヤマトを回収、そして更にプレストカードを切ってヤマトをフィールドに呼び出した。
「―――!――――!!!!」
フィールドに出たヤマトの効果で灰かぶり姫は主砲の餌食となって消えた。
「――!!―――!!!」
「ワルツフェイズ移行時、手札から【歌う骨】を発動します。効果で相手のフィールドで一番レベルの高いスピリットである【宇宙戦闘艦 ヤマト】を墓地に送ります」
「――!!!――――!―――――!!!」
風紀委員長はプレストカードを連弾発動し、自分フィールド上に居るヤマトと他の艦スピリット、手札のカードを墓地に送ってエクストラスピリット【宇宙要塞大艦隊 アマテラス】を呼び出した。
「効果処理終了後、アマテラス召喚時に手札からプレストカード【4分休符】を発動します」
「!!?――!―――!?」
「『何故ヤマト召喚時に使わなかったのか』ですか?貴方がアマテラスを呼び出すのが見えていたからですが」
プレストカード【4分休符】。効果は『カード効果による召喚を無効にし、そのスピリットを墓地へ送る』。
昔から存在する普通のカードだ。
「仮にヤマトを召喚する時に使ったとしても、いくらでもリカバリーする手段はあるでしょう。しかしビートダウン軸の【宇宙艦隊】デッキの切り札が出るタイミングはヤマトかムサシか、あるいはバーン寄りの構成ならカガのどれかでしょう。それが手札か場に居るのが見えているなら、後は切り札が出るまで待つだけ。
『マストカウンター』について追加の課題が必要そうですね?」
「――……!」
「『風紀委員長』となって驕りましたか?貴方よりも強い者は幾らでも居ます。ターン終了時、手札から【悪い狼の嘘】を発動。墓地から正規召喚に成功した【グリム・BBウルフ】を呼び戻します。
そして私のターン、ドロー。手札から【グリム・LRガール】を召喚。BBウルフが居る時、手札を1枚捨て効果発動、何かありますか」
「……」
大きな狼の横に赤いフードを被った小さな女の子が立つが、女の子は狼を見た瞬間悲鳴を上げた。
「効果処理を行います。LRガールの効果で墓地・デッキから【グリム・ハンター】を召喚。ハンターズがフィールドに居る時、相手はスピリットの効果発動時に手札を墓地へ送らなければならない」
女の子の悲鳴を聞きつけた、銃を担いだ男が何処からともなく現れて女の子と狼の間に立ち、狼に向けて銃で威嚇した。
「墓地の【グリム・リトルピッグ1】の効果発動。デッキから【グリム・リトルピッグ2】を召喚。
【グリム・リトルピッグ2】を生け贄に、墓地から【グリム・キャット】に【長靴】を装備した状態で呼び戻す。【長靴】の効果を発動します。何かありますか」
「――……」
墓地から二足歩行の豚がブーブーと
「【長靴】と【グリム・キャット】を墓地へ送り、エクストラスピリット【グリム・ブーツキャット】を召喚。ワルツフェイズに入ります。何かありますか」
「――」
長靴を足に履きなおした猫が靴からレイピアを引き抜き、眼前に構える。
「ワルツフェイズ、【グリム・ブーツキャット】で直接攻撃をします」
「――!――――!」
「【グリム・ブーツキャット】の効果。相手がプレストカードを使用した時、デッキからカードを1枚めくり、スピリットカードかプレストカードだった場合その効果を無効にして破壊する。『キャッツ・ピアッシング』」
風紀委員長の前に壁となって現れたプレストカードに向かって、レイピアを一直線に突き出す【グリム・ブーツキャット】。
「めくったカードは……【道しるべの白い石】アイテムカード。効果は不発です。めくったカードは墓地に送られます」
しかし壁となったプレストカードを射抜けなかったブーツキャットは弾かれたレイピアの勢いを殺せず、地面にゴロンと転がった。
そして発動するプレストカード【緊急艦隊行動!】の効果で、墓地から輸送艦ニィナを呼び戻した。
「ハンターでニィナに攻撃します」
「―――!」
輸送艦ニィナはハンターの銃撃で破壊されたが、最後の仕事として墓地からプレストカードを手札に回収した。
「LRガールで直接攻撃」
「――!―――!!」
「通します」
風紀委員長は二度目の【レッドカード】を発動し、攻撃してきた赤ずきんの少女を俺の手札に戻した。
「これでおしまいです。BBウルフで直接攻撃」
「―――――!!!」
大きな狼の突進が風紀委員長に直撃し、スピリット・ワルツの決着がついた。
「来週までに今の勝負についてのレポート課題の提出するように」
衝撃で倒れる風紀委員長を退かし、次の風紀委員達の相手を行う。
そうして今日という1日が過ぎていった。
◆
あれから更に
校長がカードの精霊の力を使って何か悪だくみをしていたようだが、当時出張中だった俺にはあまり情報が入ってこなかった。
それより目下問題なのが、俺の
授業の時もそうだし、
ラグは俺だけでなく、グラトニーにも起こる。今までは一晩で約3万回以上スピリット・ワルツを行っていたが、ラグのせいで2万回程度になっていた。
『長く生き過ぎたんだ。早く死ねばいい』
多少の動作不良程度ならどうでも良い事ではあるのだが、女が行う日頃のメンテナンスにおいて何も問題が無いという診断なのが問題ではある。
『惰性で生きるのは楽だよなぁ。早く死ねばいい』
自身にダメージを与える行為は禁止されている。だからいっそのこと誰かが俺を壊してくれればいいのに。
『金属の身体を捨ててしまえばいい』
今日の授業の準備をする。
『お前にご執心な子供たちに願えばいい』
カードを5枚引く。
『どうか俺を破壊してくれと祈ればいい』
相手に勝利する。
「それで全部解決だ」
「―――?」
「……いえ、なんでもありません」
ああ、また動作不良だ。思っても無い事が音声として出る。
女はここしばらくの間――出張でこの島に居ない。
「―――!」
「……なんですか遊条くん」
「――!―――!!」
「……ふむ、向上心旺盛なの―――はいい事です。――――この後はちょうど予定が空いてるこことですし、そこのファイト場を使いましょう」
「―?―――!」
遊条友介。ドラゴン族の大きな卵の精霊――を持つ学生。
スピリット・ワルツの実力は学校内でも最上に近いですが、勉強の出来が非常――にお粗末な事になっている。
「……ちょうど良い事ですし、このファイトが終われば……レポート課題を出しまししょう」
「!?――――!!」
「貴方の授業態度―――は非常にメに余ります。……テストの点数モ低い貴方は進級に関わりますよ」
「―――!!―――――!!!」
「……イイでしょう。貴方が勝てばレポート課題は少な少なめにしてあげましょあげましょう」
「――?―――?」
「ただだだだしアナタが負けタ時は負けた時は課題をふ―――課題を増やしま
「―――!!?」
「さ
「―――!!?―――――!!!?」
「
システムに異常を検知しました。管理者に発報します。システムに異常を検知しました。管理者に発報します。
深刻なエラー発生。深刻なエラー発生。正常な動作を維持出来ません。
セーフティモードに移行します。
直ちに安全な場所へ移動し、緊急停止を行います。直ちに安全な場所へ移動し、緊急停止を行います。
「警
ま
危険ですの
「―――!!――――!!!」
周囲の安全確認出来ません。
緊急停止不能。緊急停止不能。
想定された避難所へのルートを検索します。
―――■■■■■■■■。
検索終了。移動を開始します。
「警告。
周囲の人間は
緊急
◆
まるで夢を見ているような感覚だ。
自分という存在がふわふわと空中に漂っていて、世界はまどろみの中で揺らめいている。
『夢を見る』という事がもう何万年も前の話のように思える。
……いや、まあ少なくとも1万年は前の話か。
世界はぼんやりとした光の中で、俺は何かの上でうつ伏せになって倒れている。
首は下ではなく右向きになっているようで、視界の半分がフラフラと動き、残り半分は動かない。―――ベッドの上で寝ているのか?
身体はまるで鉄塊にでもなってしまったかのように感覚が無く、何かくっ、くっと動いているような感覚はする。
あらゆる感覚は全てセンサーで賄われているというのに、そのセンサーが仕事をしない。
1%の残った感覚だけで辺りを見ていた。
「先生!見つけてきたぜ!なんかスゲー力があるっていうカードをよ!」
「ふふふ、よくやったわ遊条君。これでワルツロイド先生も動くはずよぉ」
「ワルツロイド先生!これで直るんですね!」
視界のピントが延々合わない中、何人かの人間が動いているのが何となくわかった。
聞こえてくる言葉は相変わらず何を言ってるか分からないし、今までと違ってそれを情報としてだけで認識する事も出来ない。
ただ、俺の視界に顔を近づけてにっこりと笑っているような気もする。
「さぁ、そのカードをこのスロットに置いて」
「おう!ワルツロイド先生、復活したらリベンジの続きしようぜ!」
「遊条君!その前にちゃんと元通りに直ってるかの確認でしょ!」
「ふふふ、じゃあ、動力となっていた古いカードと入れ替えるわよぉ?」
カシャンと軽快な音が俺の身体を通して聞こえてくる。
そして取り出される、真っ黒なカード。
真っ黒なカード?なんで俺はそれをしっかり認識できたんだ?
そんな疑問を覚えた瞬間、カードに火が灯る。
火が灯るという表現は正しくない。ガソリンに火を点けたように煌々と燃え上がる。
カードが燃える。真っ黒なカードが燃えている。絵柄も、カード名も、効果も読めない真っ黒なカードが燃えていく。
俺は
それを
「グラーーー」
魂で理解してしまった。
お前は奪いすぎた。
お前は愚かすぎた。
お前は望み過ぎた。
お前は願いすぎた。
強欲で、傲慢で、怠惰で、愚かなお前でも。
因果は応報するって知ってただろうに。
お前には何も残らない。
過去も。現在も。未来も。全部全部奪われる。
世界を奪ったお前は、世界から全て奪われるのさ。
さようなら。世界から弾かれた孤独者。もう二度と会うことは無いだろうね。
「―――私のターン、ドロー。メインフェイズ、
「先生!」
「手札から【
「ぐっ!!」
「墓地へ送られた【
プレスト発動、【
「ロイド先生の
「しかもライフを失った時に発動する効果も強力だ……!相手のライフを削って、自分のライフは回復し続ける凶悪コンボ……!」
「遊条君!気張りなさいッ!!!」
「無駄な事です。
「……ヘヘッ!油断したな!プレスト発動、アルティメットボム!!効果は当然知ってるよなぁ?」
「なっ……しかし、貴方と私のライフは歴然の差があります。この程度なんてことはありませんよ」
「……なあ、お前……『誰』だ?」
「なっ!?遊条君!急に何を言ってるの!?」
「ロイド先生はいつも言ってたぜ?『ライフの差なんてどれだけ離れてても誤差』ってよ!俺のライフが0で、お前のライフが10枚あってもよぉ!スピリット・ワルツは、たった一枚のドローで全てひっくり返すんだぜ!!オレのターン!!ドロー!!!」
「ゆ、遊条のデッキが光ってる!?」
「ははっ!来たぜオレのエース!来い、【ドラゴンエッグ】!」
「……もったいぶって出したカードがレベル1ですか。呆れますね」
「もうロイド先生ゴッコはおしまいか!?ロイド先生ならなぁ、きっとオレのやる事全部お見通しだったぜ!!このカード以外の墓地のカード全てゲームから除外し、墓地からアイテムカード【進化の軌跡】をドラゴンエッグに装備する!そして効果発動!オレとお前のライフと手札の差の合計値は……20枚!」
「【進化の軌跡】!?」
「相手の場と手札の差の数だけ、効果が変わるカード……!20枚以上の差ならば、確か―――!」
「オレはデッキから2枚ドロー!更にお前の場のスピリットとライフの数を合計5枚になるように
「馬鹿な、ライフを『除外』だと!?」
「
「ぐ……手札からプレスト発動―――」
「無駄だ!【スーパーノヴァドラゴン】は召喚時に相手はカード効果を発動出来ないぜ!更に【スーパーノヴァドラゴン】の効果発動『恒星爆破』!相手はスピリットカード以外の効果の発動は出来ない!」
「上手い!
「能動的に相手に干渉するには、プレストとかで自分のライフを削らないと効果が使えない!」
「ぐぅぅ……まだ、まだだ!まだ私は負けていない!!!」
「へっへっへ!そうだな!ライフが完全に尽きるまで油断できねえよな!【スーパーノヴァドラゴン】!直接攻撃!!」
「ぐうううう!!!
「無駄だ!!スーパーノヴァは直接攻撃した時に相手のライフを確認し、スピリットカードだった場合は効果を無効にして墓地に送る!」
「な、なんだと!?」
「そして更に!スピリットカード以外が出るまで追加攻撃出来るんだよ!!お前のライフは全部スピリットカードだよなァ!!?」
「ば、馬鹿な……私が、負ける!?」
「行けスーパーノヴァドラゴン!『
「私の王国復興の夢が……私の未来が……こんなガキに……!馬鹿な……ばかなああああああああああああ!!!!!」
「先生!」
「ロイド先生!」
「ロイド先生!大丈夫ですか!?」
「おいしっかりしろよロイド先生!」
「うるさいですね。先生に対する言葉遣いですかそれが」
「うおおお!?急に起きるんじゃねえぜ!?」
「先生大丈夫なんですか!?」
「大丈夫……とは言えませんね。私の記録回路が幾分欠落しているようです。……スピリット・ワルツ回路も同様な様子」
「ええ!?先生弱くなっちまったのか!?」
「馬鹿にしないで下さい。それでも貴方方とはレベルが違うのです。多少弱くなった程度で貴方方に負ける事はありませんよ」
「なんだと!?ならちょうどいい、オレのテストの点を賭けて勝負だ!」
「筆記赤点の貴方に賭ける点数があるとでも?」
「う”っ。じ、実技の点を賭ける!」
「ちょ、ちょっと!ロイド先生は病み上がりよ!?」
「ロボットに病み上がりも何もないと思うけど……」
「ふん……まあ、貴方に助けられたのは事実です。多少は融通してあげましょう」
「マジか!?」
「ええ。全力のデッキを使いますので、ライフを削れるごとに筆記の点数を融通しましょう。5点ほど」
「ちょ!?ライフ全部削っても25点にしかならねーじゃねえか!」
「筆記で25点も貰えれば赤点回避出来るだろ普通に……」
「アンタがロイド先生の全力デッキ相手にライフ削れる訳ないでしょ!」
「そりゃねぇぜ委員長!!!」
ワハハハハ……
「(私を助けてくれてありがとう遊条君。そしてさようなら、悪食)」
「ふふ、ふふふふふ♥やっと、やぁっと手に入れたわぁ♥」
「神のカードの解析データにぃ、使用記録♥」
「しかも並行世界の記録まで手に入れちゃったわぁ♥」
「これで、神のカード量産計画は最終段階に入れる……♥」
「私の計画も進むわねぇ……♥」
「生きた
「……まあ、彼が
「おかしいわねぇ。あの魂の強さなら、計算上1万年はもつ筈なのに……」
「……まあ、いいわぁ♥魂の強さは遺伝するのか……試してみなくっちゃ♥」
とくん……
「ふふ、ふふふふふふふ♥」
次回はとても良く似た違う世界を観測する者達の話