Episode0:胎動、一つの終止符として
静まり返った発電所を突如として燃え上がった炎が赤く照らし出し、爆音が静寂の帷を強引に引き裂く。
数秒後、爆発地点に集結するヘリと装甲車両。
装備を擦る金属音を立てながら一糸乱れぬ動きで装甲車両から降り、横一列に並び銃を構える者たち。炎の中から黒い脚が除いた刹那、号令を以て銃撃音がこだまする。
西暦2045年
日の本の象徴に『孔』が空き、首都に聳える電波塔を『輪』が囲い、復興の象徴である廃墟から『渦』が溢れ、災厄を齎した発電所は『灰』が覆い隠した。
「個体の活動を確認!攻撃、来ます!」
「総員退避!」
銃撃が止み、全員が装甲車両の背後へと姿を隠す。
次の瞬間、凄まじい轟音と衝撃がその場にいる全てに襲いかかる。
灼熱を迎え撃った部分の装甲は融解し、衝撃を浴びたコンクリート制の地面は抉られ、その有り余る熱量は発電所の近くにあった海を瞬く間に干上がらせた。
武装した集団の一人が負けじと装甲車両から身を乗り出し、銃口を火の中に佇むそれに向ける。
だが、前触れもなく仰向けに倒れたその人物の眉間には、小さな穴が開いていた。
「ッ──────!?」
戦慄する暇も与えんと、今度は凄まじい速度で飛翔する物体が装甲車両に絶えず打ち付けられる。
集団の中には諦める者、泣き叫ぶ者まで現れる。
しかし、その者は隣に身を潜める男に向けて言った。
───私が、未来を切り拓きます。
と。
男は当然反対したが、彼は躊躇わずに車両の外へ身を乗り出し、抉れた地面を滑るように炎に向かって走って行く。
熱波が身を焼き、礫が体を穿つ。
だが、それでも脚が止まる事はなかった。
「(凜、宗司……すまない。誕生日を、祝ってやれなくて。母さんを、頼んだぞ)」
消えぬ決意の炎を目に、魂に灯し、男は全身に手榴弾を巻いたまま炎の中に身を投じる。
刹那、白い光が発電所を包み込み、黒い雨が降り注ぐ。
そして分厚い雲の隙間から差し込む光は、人類に新たな夜明けを告げると同時に、人の歴史に新たな一ページを書き記した。
そして、時は流れ西暦2055年
***
『本日を持ちまして、第一次崩壊事件から10年が経ちました。亡くなった多くの人々の為に黙祷を───』
あの日、日本各所に姿を顕した『其』は、多くの犠牲を払った末に二つの遺物を残し眠りについた。
一つは、
そしてもう一つは───
「お兄ちゃん、『メメント』の出現ポイントを特定したよ。準備は出来てる?」
「……あぁ、問題ない」
人々を脅かす『災い』として、日常の一つへと溶けて行った。
「さぁ、一仕事始めようか」
これは、神の手により神に近い力を手にした者による、神に叛逆する為の物語。