トントントン コトコトコトコ
朝から手慣れた様子で料理をする音が聞こえる。
「よぉ、おはようホムラ」
「あっ、おはようございますレイズ!
今、朝食を作ってますから、もうちょっと待ってくださいね!」
「ああ、わかった。……それにしても、ホムラの料理は美味いから楽しみだ」
俺はホムラの料理を楽しみにしつつテーブルに座ると、すぐに料理が出てきた。
「はい! おまたせしました!」
「おおっ! これは美味そうだ!」
目の前に出されたのは、ご飯と味噌汁、塩鮭に野菜炒めとほうれん草のおひたし。
ホムラが作る飯はどれも絶品で、俺の大好物だ。
特に塩鮭については、骨も全部取ってあって食べやすい。
俺は魚が嫌いだ。
一人で修行をしてたガキの頃、魚の骨が喉に刺さって、その痛みで能力が暴走して本来だったらありえない全身が大火傷を負った。
当時の俺じゃ耐えきれないほどの炎だった。
あのときは熱かったし、ヤバかった。
あまりにも激しく高温な炎が俺の下顎が焼け落ちたほどだ。
死にたくない一心で近くの湖に飛び込み、池を蒸発させたが、何とか消火できた。
全身が黒焦げで炭化し、下顎がなくなってる状態だ。
もし、あの場に誰かがいてそんな凄惨な俺の姿を見ていたらきっと腰を抜かしてたろうな……。
正直この時自分がフェニックスだったことに心底感謝した。
しばらくすれば炎と共に俺の体は再生したからな。
少しでも動けば崩れ落ちるであろう炭化した黒焦げの体も、下顎が焼け落ちたことで喋れなくなっていたのも、すぐに元通りだ。
髪の色も瞳の色もお父さんやお母さん、兄ちゃんたちやレイちゃんと全然似てなかったが、それでも俺は家族を思い出せたことが嬉しかった。
まぁそんな感動的なことは別にいい。
それはそれ、これはこれって奴だ。
とにかく、俺はそんなことがあったから、魚が嫌いになった。
見る分には問題ないが、食べるってなると、その時のことを思い出すからどうしても無理だった。
カレンにもそう言うのは言ってあったから、小言を言われながらも魚料理は出さないでくれた。
当然、今飯を作ってくれたこいつ、ホムラにもそれは伝えたが、根がすごく頑固なのか、あるいは克服してほしいと思ったからか、俺でも魚が食えるように懸命に骨抜きしてくれていた。
そんなホムラの努力もあって、俺は今魚を食うことができる。
「ふぅ…、ごちそうさま」
「はい、お粗末様でした。
片付け、してきますね」
「あぁ、頼む」
ホムラは人間じゃない。
ましてや悪魔でもない。
炎の精霊が少女の姿を取って実体を持った存在だ。
好奇心で顕現しこの街にやってきたらしいが、行く宛もなかったらしく、拾うことにした。
そして眷属にしてからというもの、ホムラの戦闘力は強かった。
炎を操るのはもちろんのこと、炎の剣を出現させて、それを剣のように振るうこともできる。
さらに、自身を炎の剣にして、契約したやつの武器として使うことができるという。
契約したやつ、つまり俺だ。
基本蒼炎を使う以外は丸腰だから、ホムラと契約してからは炎の剣を使わせてもらってる。
剣になってても意思疎通ができるから、戦闘中に困ることはない。
ホムラを炎の剣で呼び出したいときは、意思で剣になるのをイメージすると刀身から出現する。
それに、ホムラと契約してから炎の扱い方がさらに上達したし、戦闘力も上がった気がする。
更に言えば、ホムラはどこかで知識を得ていたのか、料理や家事など家事全般をこなすことができる。
それも、ハルファス家に仕えるべく俺が名乗りを上げるまで努力をしてきたシュタットフェルト家出身のカレンよりも、家事全般が上手い。
だから、ホムラが来てからはカレンの負担も減ってるし、助かってはいる。
何かもう、眷属でありながら、できた嫁って感じだった。
そう思いながら、鼻歌交じりで食器を片付けるホムラの後ろ姿を見つめた。