「…ふん、これはまた派手にやってるな」
「しかも全員、はぐれ悪魔みたいね」
俺とカレンは魔力のある炎を感じて廃工場に来ていた。
焼き尽くされ、触れれば塵となって消える程脆くなったはぐれ悪魔どもの死体が打ち捨てられていた。
「…」
焼けた灰に軽く触れる。
この感じ、やはり単なる火災じゃねぇ。
微かだが魔力を感じる。
だが、この魔力からしてこいつらをやったのは相当の実力者だろう。
「ねぇレイズ!これを見て!」
「あ?」
死体を調べていたカレンが何かを見つけた。
胴体を大きく斬り裂かれた跡、単純な炎の攻撃でもこんな風にはならねぇ。
さっきの魔力と同じだがこっちはそれよりも濃い。
「…気配から察するに、これをやったのは一人、か」
「えぇ、それにまだそんな遠くには行ってないわ」
「追うぞ、カレン。
はぐれ悪魔どもを葬ってくれたことは感謝はするが、そいつが何者なのかを知っておきたいしな」
「えぇ、行きましょう」
俺とカレンは互いに頷きあい、魔力を辿りながら走った。
魔力を辿ると、そこにパン屋があった。
領土とはいえ手荒な真似はしたくねぇから、俺らは普通に入ってパンを見ながら周りを見渡す。
すると。
「だから、もうこれ以上お金がないから負けなさいよ!」
「ごめんねぇ〜、流石にこれ以上は負けられないかな〜」
「うぅ〜、うるさいうるさいうるさい!」
と、レジで文句を言ってる小柄で長い黒髪の少女を見つけた。
どうやらメロンパンを買おうとしてお金が足りなくて、でも店側でもこれ以上は負けられないと困ってるらしい。
だがそれ以上に。
「…レイズ、あの子」
「あぁ、俺もそう思った」
間違いない、こいつからあの廃工場での魔力を感じる。
だが、店側に迷惑をかける訳にはいかねぇから、ここは穏便に済ませるか。
俺は適当なパンを手にとって、間に入るように割り込む。
「おっと悪いな。
こいつもレジで頼むわ。
金は俺が出すからよ」
「えっ、はぁ!?
ちょ、誰よあんた!」
「良いから大人しくしとけ。
面倒ごとは起こしたくないのはお前もそうだろ」
「うぅ…、わかったわよ」
少女も面倒ごとは嫌なのか、渋々ながら引き下がった。
「決まりだな。
んじゃこれ、頼むぜ」
「あ、ありがとうございました!」
金を渡して、俺たちはパン屋を後にする。
そして近くの公園のベンチに座り、パンを食べる。
「…さっきは、何のつもりだったのよ」
「あ?」
「だから、何のつもりで奢るなんてことしたのかって聞いてるのよ!」
「俺らはお前に聞きたいことがあったからな」
「はぁ?聞きたいこと?」
「この街の廃工場で、はぐれ悪魔たちの死体があったわ。
あれはあなたがやったの?」
「だとしたら何?
私を始末する気なの?」
「それはお前の話次第だな。
お前は何者で、何の目的でこの街にいるのか、それが知りたいんだ。
まぁメロンパンの礼として、聞かせてくれ」
「……わかったわよ」
少女は渋々とだが、自分の話をし始めた。
彼女は天罰神・アラストールと契約して、この悪魔や天使、ドラゴン、人間がいる世界のバランスを保つために、大太刀の贄殿遮那で悪しき心を持つ者を斬り伏せて燃やしてるらしい。
そしてその代償か、契約してから年を取ることはなく、契約する以前の過去も名前もないらしい。
基本的には依頼を受けて稼いでいるが、廃工場の一件は目立ち過ぎだと言われ報酬も無しだったので、さっきみたいに好きなメロンパンも買えないくらい金に困っていたらしい。
「ふっ、それなら、俺の眷属になるか?」
「えっ?」
「その様子だと、行く宛もないし、金に困ってるんだろ?
お前が俺のことを悪しき心を持ってるやつと判断しないなら、だがな」
「それは……、その……。
そこのあんたはいいの?
気配からして、こいつあんたの主人でしょ!?」
「別に良いわよ。
あなたは悪い子ではないみたいだし、彼があなたを眷属にすると言うなら、私は何も言わないわ」
「はぁ、何よそれ……。
良いわ、あんた達を信じるわよ」
少女はそう言って、俺たちに手を差し伸べる。
「あんたの眷属になってあげるわ!」
「ふっ、よろしくな」
こうして俺は少女を眷属にした。
駒は兵士だ。
だが、名前がないのは色々と不便だから、こいつが持ってる大太刀の名前から取ってシャナと呼ぶことにした。
それから改めて実力を見させてもらったが、流石はアラストールと契約してるだけあって、炎を纏った大太刀の威力は凄い。
それに、髪も瞳も黒いが、力を使うときはまるで燃え盛る炎のように赤く染まり、とても綺麗なものだった。