「琴里!チュパチャップス咥えたまま歩き回らない!
銀!出歩くなとは言わないけれどせめて何時に帰ってくるかを言いなさい!
ユナ!部屋でゲームばかりしてないで、外に行きなさい!」
屋敷で一人の少女の怒声が響く。
それはまさに手間のかかる家族にあれこれと世話を焼く母親であり、同時に学校の校則を破る生徒に口うるさく注意する風紀委員のような存在でもある。
しかし、その少女のことを不快に思う者など誰もおらず、むしろ微笑ましく見守っているのがこの屋敷の現状だ。
名前はアーデルハイト、鈴木アーデルハイトだ。
あだ名はアーデル。
元はある一族出身の少女で、俺の眷属になる前は、俺がハルファスの当主だからという理由で襲いかかってきた。
何でも、彼女の一族は昔、ハルファス家と仲が良かったもののある戦いで裏切られ、見捨てられて、果てには戦犯扱いして迫害したから、らしい。
だが、それは全くのデマだったのが、カレンたちに調べてもらってわかった。
その裏切りの過去について、実際は彼女の一族がやられそうになった所をハルファス家が死守し、無事に逃がした。
だが一族は、この戦いにはある悪魔の思惑が絡んでると踏んで、敢えて自分たちが迫害される道を選んだ。
その時点でそうでもしなければ、ハルファス家も一族も、そいつのせいで共倒れとなりさらなる被害が出ると判断したからだ。
そして現代で襲い来るアーデルに、その真実と証拠を見せつけると、そいつが姿を現し、いつかはハルファス家が復活すること、その当主が過去とは比べ物にならないくらい強い存在になることを予想していたそいつが、アーデルに俺を殺させて俺の肉体を奪おうとしていたことを言い、アーデルも今まで自分たちが捏造された記録に踊らされ、仇どころか命の恩人を殺そうとしていたことに深く後悔し、失墜の底に立たされた。
俺はそうやってあいつを嘲笑うそいつを、この世に一片たりとも灰を残さないように焼き尽くしてやった。
その後アーデルは、その真実を一族に伝え、俺に対する今までの非礼を詫びた。
しかし俺はそれを全て許し、逆に俺の眷属になるならと、その一族がハルファス家の庇護下に入ることを許した。
それからは、アーデルの一族の者たちも領土に引っ越してきて、今に至るというわけだ。
アーデルは、氷河の炎という、特殊な炎を使う能力を持っている。
アーデルの一族は、元々大地を司る特殊な炎を操る能力を持っており、氷河の炎も、その内の一つだ。
この炎は炎でありながら、相手を凍らせることのできる能力があり、それで氷の壁を作ったりすることができる。
しかもその氷は、普通の氷と違ってとてつもなく硬く、火で燃やそうにも火力が違い過ぎて溶けない。
また、アーデルはこの氷河の炎を利用して、自分と同じ見た目と戦闘力を持った氷の兵士たち、ブリザードトロイトを作り出し、数の暴力で敵を圧倒する戦いを行う。
アーデル自身も結構強いが、それが大量に出てくるんだ。
状況次第じゃどんな絶望的な状況もひっくり返せる、まさに切り札だ。
まぁそれでも、同じく氷を操る四大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタンとかいうコスプレ魔王には遠く及ばんがな。
それと、アーデル自身、一族を仕切ってたこともあり、通ってる学校でも粛清委員会というものを立ち上げ、風紀を取り締まっているそうだ。
そのため、眷属になっても、こうして屋敷の中で風紀を取り締まってるのだ。
「こら、レイズ!」
「あ?」
と、今度は廊下を歩いていた俺が声を掛けられた。
「あなたは私たちの主なんだから、身だしなみにも気を遣いなさい!
ほら、コートも前開いて!
胸板が見えるのは風紀の乱れよ!」
と、体のあちこちを触られる。
こんなことされてなんだが、アーデルは齢15にしてはエロい体をしてやがる。
まず、身長も170と高いほうであり、中学生にしては胸がデカすぎる。
本人は胸を見ながら話をされるのを嫌がるが、こんな至近距離で体を触られると…。
「ちょっ、何でズボンの下でテントを張らせるのよ!」
「お前がエロい体してるからだ」
「っ! もう、あなたって人は……。
仕方ないわね、これも風紀を守るため。
そんな状態で歩きまわれば風紀が乱れてしまうわ。
私が処理してあげる」
そう言うと、アーデルは俺を部屋に連れて行った。