私は最低だ。
寝ている先生にキスをするなんて。
生徒の為に奔走する先生を、私は尊敬している。
大人としての責任。
生徒を見守るのが私の役目であると、私にそう笑いかけてくれた先生。
初めて会った時も、生徒の為にと、彼女達が抱えていた問題を解決すべく、先生自ら頭を下げて助けを求めてきた。
自分の欲望のために膝をつく姿なら、これまで何度も見てきた。
でも、生徒の為に跪く大人は初めてだった。
私は、そんな先生に惹かれて、彼女の力になろうと心に決めたのに……
私は欲望を抑えきれず、先生に欲情してしまったのだ。
最低だ。
風紀を守るべき立場の人間が、自ら風紀を乱すなんて……
でも、この気持ちはもう止められなかった。
私は、先生に覆い被さる様にキスをした。
唇が触れ合う感触。
心臓の鼓動が高鳴るのを感じる。
先生に初めてを捧げた幸福感と己を律する事の出来なかった罪悪感と嫌悪感。
様々な感情が、私の中で渦巻いていた。
私は先生の唇から離れると、自分のしてしまった事の重大さに押し潰されそうになりながらも、逃げるようにシャーレを出た。
誰もいない廊下を走りながら、私はただ泣いた。
唇を強く噛みすぎて口の中から鉄の香りが広がった。
私は最低だ。
先生を汚した。
そんな罪悪感と嫌悪感が幸福な気持ちを塗り潰し、私の心を蝕み始める。
しかし、そんな感情とは裏腹に、私は先生にもっと触れたい、甘えたい、キスをしたいという欲求を抑えられなかった。
この気持ちだけは、どうしても抑えきれなかったのだ。
それからというもの、私は先生と顔を合わせる度に、先生の唇を見るだけで、あの日の事を思い出してしまうようになった。
先生は私に、生徒として適切な距離で接してくれているのに、私の頭の中にはあの日の事しか浮かんでこない。
私の頭の中で、先生とのキスの感触がフラッシュバックする。
私は先生と触れ合いたい。
もっと、もっと……
それを必死に堪えていた。
そんな日々が続いたある日の事だった。
シャーレの当番日。
今日の当番は、私1人だけ。
先生は、急用で席を外している。
私は散らかった先生の机を整理しようと、先生の机に近づいた。
椅子には先生の上着。
机の上には書類や空のコップなど、様々なものが散乱していた。
一つ一つを片付ける中、箱入りの薬を発見した。
風邪でも引いたのだろうか?
そう思いながら、私は薬の箱を拾い上げた。
薬にはこう書かれていた。
『生える薬』と……
頭の中が真っ白になった。
先生の机に、なぜこんなものが?
先生は何を?
いや、そんな事より……
生える薬。
私は、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
開封済みで、中身が減っている。
先生が服用したのだろうか?
先生がこれを服用して……その後は……まさか生徒と?
いや、そんな筈はない。
先生は、そんな事をする人じゃない。
でも……本当に?
そんな疑問が浮かんでは消えた。
私の心臓の鼓動は、どんどん早くなる。
もしも、先生が他の生徒と、行為に及んだのだとしたら、私は……
気が付けば、私は椅子に座り、先生の上着を抱きしめていた。
上着からは、先生の匂いがする。
それを嗅ぐと、まるで先生に抱きしめられているような気分になった。
上着に顔を埋め、机の上に置いた薬の箱をチラリと見る。
ー先生がこれを飲んだらー
私は無意識に、スカートの中に手を伸ばしていた。
震える指先で、下着の上からそこに触れる。
「…………ぁ」
ゾクリと、快感が背筋を駆け抜けた。
私は上着に顔を埋めながら、自らの秘所を慰めた。
あの薬を飲んだ先生が、私以外の生徒と……
そう考えると、胸が張り裂けそうな程に苦しくなった。
ー先生……先生……っー
心の中で何度もそう呟きながら、下着越しに指先を沈め込み、何度もそこをなぞった。
息が荒くなる。
切なくて、寂しくて、苦しくて……
私は、泣きながら自慰を続けた。
やがて、身体に電気のような快感が駆け巡った。
ー私……最低だ……ー
そんな罪悪感と嫌悪感に苛まれながらも、私はしばらく先生の上着を抱きしめて泣いていた。
この気持ちは、きっと抑えられない。
でも、この気持ちを先生に悟られてはいけない。
そんな事をすれば、先生は私を突き放すだろう。
先生を困らせたくない。
もう私の事を生徒として見れなくなったと、失望されたくない。
そんな葛藤が私を苦しめる中、シャーレのドアが開いた。
入ってきたのは、私が今、最も会いたくて、同時に最も会いたくない人だった。
先生は、驚いた表情で私を見つめていた。
「……ヒナ?」
「先……生……?」
見られた。
先生に、私の恥ずかしいところを……
絶望と後悔が、私の心を蝕んでいく。
「ちがっ……せんせ……これは……ちが……くて……」
見られた……見られた……見られた……見られた……
頭の中で、その言葉だけが反芻される。
見られた、先生に、私の、汚い、欲望を……
嫌だ、嫌われたくない、見捨てないで……
様々な感情が入り混じり、私は……