※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中
『看板娘』イベント継続中

タタラ強化イベント:コンプリート


※今回は少し情報過多ぎみなのでご注意下さい。


お説教タイム

「タタラ、貴方の身内認定した相手に対するガードの甘さ……いいえ違うわね。見通しの甘さを今回は怒らせて貰うわ」

 

 都市長にそう言われて、思わず目の前で正座した。今回指摘されるのはダリアの実家、と言うか片田舎と言われている故郷に俺がお義母さんから買う転移門を設置しようとした事に付いてだろう。

 便利なので頭からスッポ抜けていたが、都市内に直通する転移門を都市最高の権力者に伺いも立てずに勝手に設置するのは当たり前だが犯罪だ。外部に設置したその門を占領された際に都市内への警戒や警備無しでの侵入を許す事になり、しかも都市内で最高の防衛能力を誇るであろう俺の家を拠点にされるのだ……考えたくも無い。

 

「ダリアさん、貴女のご実家は何処かしら?」

「はい。私の産まれた故郷は地図で確認した限り、此処より一週間程歩いた場所になります」

「貴女のステータスで一週間となると、大体山岳地帯の辺りになると思うのだけれど?」

「おそらく今思い浮かべていただけた場所で合っているかと」

 

 都市長はダリアとの会話を得て、考えを巡らせている……いや記憶を洗い出してるのかアレは。

 

「……一応、本国の国境内だから同じ所属ね。問題はその付近にそこそこ規模の大きい傭兵崩れの野盗が住み着き始めた事かしら」

 

 その言葉に、思わず立ち上がりそうになる。しかし、俺の肩をいつの間にか近寄っていたカラムスさんが押さえて立ち上がれなかった。

 俺がそんな反応をするのに対して、ダリアは何処か余裕を保っている様子だ。心配では無いのか、それともその程度は心配するに値しないのか。

 

「野盗の規模はどれ程になるのでしょうか」

「100には届かないくらいね、おそらく80前後でしょう」

「それならば心配有りません。故郷には母が居ます」

 

 そう堂々と言うダリア、確かにダリアの母親ならば機巧乙女になるのだろうし魔導具が有る限りは人間に負ける要素は無いだろう。しかし、相手の規模が規模だ。何よりも野盗を相手にするのなら人質等の卑怯卑劣な作戦等も考慮して対策しなければならない。

 俺のパーティの場合、全員が俺より強いが逆に言えば一番弱い俺を抑えただけでもエテルが機能しなくなり瓦解しかねない。それに、正面戦闘は強いが謀にある程度強いメンバーはおそらく一華だけだ。探索者のパーティに謀略戦など望むのはおかしいが、この世界の理不尽な側面は何処かしらに発生しかねない。

 

「まぁ、その辺の報告と言うか情報は私も把握しているわ。単騎でその周辺に発生する破落戸を粉砕して回る殲滅乙女なんて呼ばれてる事もね」

「……自身の母親の黒歴史を知るのは辛いものが有りますね」

 

 それを言ったらこの都市の探索者なんて二つ名持ちは黒歴史持ちみたいなもんだぞ、俺の両親には死後に『双盾』なんて通り名が与えられたくらいだし。多くの人を守った事から『盾』の名前を与えられたみたいだが……俺はそんな物より生きて帰って来る明日が欲しかったよ。

 

「仮にソイツらに集落が襲われたとしても、転移門に何かしらの制限を掛けられるなら考えてもいいのよ。それでタタラ、何か思い付かないかしら?」

「思い付きはしますけど……正直無駄になるかなって」

「あら、何時もの常識破壊が趣味みたいな思い付きは無いのね?」

「と言うか、相手に機巧乙女が居た場合どんな対策も無意味になってしまうので」

 

 生体認証や魔力認証、使用毎に座標の入力や暗証番号の入力等一般的な対応策は浮かぶのだ。しかし、魔導具への支配権を持つ機巧乙女が相手に居ると途端にどの対策も無意味になる。

 

「それ以外は対策出来るのよね?」

「術式に対する理解が俺を越えていない限りにはどうにか出来る手段は有ります。鍵と登録者の魔力の波長が一致しないと起動しない仕掛けとか、使用の都度座標を入力する必要が有るだとか……なんなら生体情報を記録させてその人間以外が通れないだとか」

「成る程、そんなの作れるのね貴方……」

「タタラさん、お金を払うのでこの機能の搭載した転移門の試作品とか頂けませんか?」

 

 お義母さんが何か言ってるが取り敢えずスルーだ。

 転移門のセキュリティはどの国でも重要な案件なのだろう、前世で言うなら空港のセキュリティ並にガチガチにする必要が有るだろうし。とは言え、この世界にはインベントリと言う亜空間に物を収納する魔法が有りそれは誰もが先天的に持っている。その中に物を隠せる限り、前世のセキュリティにおける身体検査は意味を成さない。ならば、通行する門そのものに何かしら施すしか無いだろう。

 

「後はもう特定の人物にマーカー付けて此方の転移門からそれを追跡して相手の近くに出て来るとか。ただ、それをやると帰り道が無いので本末転倒ですが」

「タタラに転移魔法の術式を教えるのは絶対に止めとくわ、下手したら個人用の簡易転移門とか作りそうだし」

「要人の護衛と言うか、緊急脱出用に持たせるのなら良いかも知れないですけどねソレ。転移と脱出の術式を組み合わせれば下手な結界は突破出来ますし……子供が親から逃げるのに使う場面が思い浮かんで仕方ないですが」

「タタラさん、都市長様。陽出國とその個人用の簡易転移門の共同開発をしませんか?」

「転移の術式が分かるなら俺が1時間で作れますよコレくらい。魔力が不足してる人の為に内蔵した魔石で一回だけ作動させられる機能付きで」

「本当、意味不明よねタタラの技術力……」

 

 術式さえ分かるのなら特に難しい物ではない。身体に直接身に着けておく必要が有る物にはなるが、嵩張らないブレスレットやネックレスタイプで用意すればいいのだから大きさも問題無い。

 

「マスター、個人用のマーカーと言うものの作成は難しいですか?」

 

 そんな時、ダリアが俺に確認をして来る。追跡用のマーカーの作成に付いてなら特に問題無い。

 

「いや、難易度で言うなら簡易転移門よりも簡単だな。所有者の魔力を使用して座標を発信させれば良いだけだし、転移門にそれを受信する機能を持たせるだけだからな」

 

 発信した座標を受信する為にマーカーと転移門をマッチングさせなければならないが、そんなのはマーカーが出来た後なら一分も掛からず終わる。

 俺の言葉を聞いて頷いたダリアは次の言葉を紡ぐ。

 

「それならば、一方通行の個人用簡易転移門とその追跡用マーカーを作成して頂けたのなら私は問題有りません」

「……成る程、親にマーカー持たせて此処から出発して簡易転移門で此処に帰ってくるって訳だな?」

「その考えで合っています。コレならば転移先からの逆侵攻を防げるので、都市長様が言っている問題は全てクリア出来るかと」

 

 何ともまぁ……俺の技術と言うか開発力を前提としているが、確かにこの方法なら『ワールウィンド』が危険に曝される可能性は一気に落ちるだろう。問題は、術式をどうするかだ。

 

「……はぁ。タタラ、私から正式に開発の依頼をするわ」

「え、まさか……」

「ええ、個人用の簡易転移門と追跡マーカーの作成よ。此処で渋ると他国のお偉いさんがあんたに依頼しそうだからね」

 

 そう言って都市長がお義母さんをチラリと見る。お義母さんは不貞腐れたように唇を尖らせて拗ねているみたいだった。

 

「可愛い義息子に無視をされる、それが悲しく無いとでも?」

「いや、流石にこの話でお義母さんを関わらせるのも何と言うか……」

「それに、この流れだと陽出國から転移門も買いませんよね?」

 

 それは確かにそうだ。転移門の術式は此方の様式を使う故に陽出國の術式を解析する必要は無い、設置する事も無いので買う必要そのものが無くなったのだから。

 

「そうですね、必要無くなりました」

「はぁ、家庭用魔力炉の一番の問題点である動力がある程度揃う所だったのに」

「それは自力で至って下さい」

 

 作成のレシピと、俺の使っている作業台のレプリカは揃っているのだから『錬金術師の卵』は自力で作ってくれ。

 

「……タタラ、貴方転移門を買う上でどんな買い方したのよ」

「えっと、三億分の物と物々交換ですけど」

「で、何を交換しようとしたのか正直に言いなさい」

 

 何だか前世の母親にテストの結果悪くて隠したら怒られてる時の状況そっくりだな?

 

「その、『卵』を……」

「あの『卵』を、幾つ、交換しようとしたの?」

「じゅ、10個ほど……」

「……そう」

 

 都市長は目を閉じてすうっと深呼吸、そして──

 

「あんたは! また! 自分の作った物の価値を何だと思ってるの!!」

「ひぃっ!? ごめんなさい母さん!?」

「あんたのお母さんになった覚えは無いわよ! 私はまだ処女だ!!」

 

 怒鳴られて反射的に母親呼びしたら余計に怒られた、助けて都市長が怖い。確かに『卵』を国外に10個流出させかけたのは俺が全面的に悪いんだが、都市長に怒られると内心子供の言い訳みたいなのが浮かんでしまうから静かに説教して欲しい。

 

「……都市長、まだ処女なんだ」

「消費期限ギリギリ?」

 

 おい、エテルとニーナちゃん。ヒソヒソと話すな、微妙に聞こえてて都市長の怒りが有頂天どころか天元突破しそうなんだが。

 

「私の下半身事情なんて今はどうでもいいわ」

「ならなんで──」

「あ゛ん゛?」

「なんでもないです」

 

 怖い。

 

「私は結婚しないだけで、出来ない訳じゃ無いのよ。本国では家督を継いだ弟も居るし、妹達も結婚して子供産んでるから貴族として血筋が残るから問題ないのよ」

「あ、はい」

 

 何か言い訳じみた事を言い始める都市長。あんまり聞きたくないんだが……危険だと囁くのだ、俺の中の幽霊(ゴースト)だか怨霊(ワイト)だか死霊王(リッチ)だかが。

 

「今でも釣書は送られてくるのよ、相手が基本私より歳上のだけど」

「あ、はい」

 

 明らかに体裁保持の為の後妻とかそんなのの扱いな気がする、美人で面倒見も良いけど自分より仕事が出来る相手とかあんまり若い男貴族からは求められてないんだろうな。

 

「いっそのこと、おっちゃんとかどうなんですか?」

「親父殿が結婚とか想像が出来ないな」

 

 俺の上げた相手に、養い子であるタチアが眉を顰めるがどうもおっちゃんの結婚した姿についてらしい。確かに俺もおっちゃんが身を固めた姿を想像出来ない。けれど、確か漏れ聞こえた話では都市長とおっちゃんは同い年で学生時代を共に過ごしていた筈。それならワンチャン結婚も有り得たのでは?

 

「……学生時代の事を知ってるからローガスなんて選考外よ」

 

 昔を思い出したのが、物凄い嫌な顔をしてそんな事を言う都市長。おっちゃん、都市長になにやったのさ。

 

「それに、当時はローガスに顔は負けててもモテた奴が一人居たしね。表には出して無かった子が大半だけど」

「え、おっちゃんよりもモテる奴が!?」

 

 おっちゃんことローガスの学生時代は探索科の首席、つまりバカと同じ立ち位置だ。若い頃の姿絵を見たこと有るが、それはもう美男子と言うべき見た目で相当モテていた事が予想できた。そのおっちゃんよりもモテていたってどんな奴だよ。

 

「おっちゃんよりモテてる人って思い付かないんてすけど、どんな人だったんですかそれ」

「……あんたの父親よ」

「へぁっ!?」

 

 苦虫を噛み潰したような表情をした都市長が挙げた相手、それが自分の父親だった時の驚愕。ただ、複数個所から納得いった様な声が上がる。その一つがエテルなのは思う所は有るが、気になる声は別に有った。

 

「アルバードさん、父さんが学生時代でモテていたって分かるんですか?」

「いや、うん。君のお父さんは表には見えないだけで相当モテていたと思うよ」

 

 生きていたら四十路の父さんとは少し歳が離れてるアルバードさんがこう言うって、父さんは学生時代何をやってたんだろうか。

 

「あんたの父親、ローガスと親友とも言える間柄なのは知ってるかしら?」

「仲が良かったとは聞いたこと有りますけど、そんな関係だったんですか?」

「ええ、私達の代で探索科首席のローガスとドベのあんたの父親は凸凹コンビって呼ばれる親友同士よ」

 

 初めて知った。父さんと母さんが死んだあの討伐で指揮を執ったから、おっちゃんが二人の葬儀を取り仕切ってくれたのかと思っていたが。父さんの親友だからやってくれてたのか。

 

「そしてあんたの父親は口癖のように『モテたい』と口に出していたお調子者よ」

「……えぇ」

 

 母さんと結婚したから結局はいい出会いには恵まれたっぽいけど、途中経過が悲惨な気がする。

 

「モテようとしてする努力が方向音痴でね、歯の浮くような台詞やらハデでダサい服着たりとそれはもう目も当てられ無かったわよ」

「何だか聞いてて辛いんですが」

 

 何故か自分の厨二時代を突きつけられたかのような痛々しさが有る。親の若い頃のやらかしってこんなに心が痛くなるのは何故だろう?

 

「それでもタタラくんのお父さんは基本的には誠実で誰にでも優しかったからね、ボクたち後輩からの人気は男女問わずに高かったさ!」

「そうそう。それにね、気取らずに相手を褒める時はとても心に響くのよ、タタラくんのお父さんが伝えてくれる言葉は」

 

 アルバードさんとレイチェルさんの言葉を聞き、エテルと四葩に一華そしてバカとクロードとアンナちゃんとニーナちゃんが納得の声を上げる。いや、ちびっ子抜かした同年代がほぼ全員納得してんの何よ?

 

「……話を聞く限り、タタラ殿はお父上の血が濃いとみえるな」

「歯の浮く様な褒め言葉を言わず、照れも無く相手を褒めるなら余分な物を削ぎ落とした完成品とも言えますね」

 

 当主代行とお義母さんの言葉が聞こえてきた。うん、なんで俺も同類扱いされてんの?

 

「俺はモテたいからって口説いたりした記憶無いぞ?」

「気取らずに褒め言葉を伝えて、相手に好意を抱かせる姿は生き写しのレベルで似ていると思いますよタタラ殿」

 

 タチア、今なんで言葉で刺した?

 

「もしや都市長、そんな父さんに対して片想いしてたとか?」

「……」

「否定してくれよ!?」

 

 眉を顰めはしたが、否定の言葉が無いので悲鳴じみた声が俺の喉から出る。嫌だよそんな新事実。

 

「……あくまでも当時の話よ。彼奴、私が都市長に就任するのを迷ってた時に背中を押したのよ」

「え、都市長が迷ってた……?」

「私だって当時は可憐な乙女だったのよ、今みたいに酸いも甘いも噛み分けるイイ女じゃなかったわ」

 

 人に歴史あり、とは言うが都市長のそれは何か政争でドロドロしてそうであんまり聞きたくないな。

 

「ところでタタラ、あんたの中で両親についてってどれだけ記憶残ってるのよ?」

「……正直、記憶を引き出そうとすると今でも胸が痛みますよ」

 

 顔や声を上手く思い出せないままで、二人が明るく俺を愛してくれていた事は分かるのだが具体的な記憶は口に出せなかったりする。俺はトラウマを乗り越えられそうにない。

 

「そう、無理はしないでね」

 

 何処か悲しそうな表情をする都市長、俺の両親の記憶を上書きしてしまっているかのような気持ちなのかも知れない。

 

「で、それはそれとして」

「あの……『卵』の件は都市長から国の転移術式開示して貰えるなら」

「そっちはもう良いわ」

「ああ、開発関係の報告漏れですよね……」

「分かっているならいいわ、時限式の段階的な加圧と減圧の調整とか術式見ても理解が難しいけれど……これ料理以外に使える?」

「やろうと思えば兵器転用くらいは」

「……具体的には?」

「中に小さな鉄の玉を満載にして過圧して爆発、何時ぞやの形状記憶合金の失敗みたいなのを意図的に引き起こすやつですね」

「本気でやめなさい、アレ今でも夢に見るのよ……」

 

 段階的な加圧機能なので他にも色々出来るとは思うのだが、一杯だけとは言えアルコールが入っているので即座に思い浮かばない。

 

「マスター、その鉄球を過圧して放出する物を私の魔導鎧の武装に組み込めませんか?」

指向性地雷(クレイモア)杭打機(パイルバンカー)とか色んな所に怒られる組合せだな」

 

 ダリアの要望に思わず頬が引き攣る、真正面から吶喊を戦法としそうな組合せで脳裏に前世で好きだった人形巨大兵器(赤いカブトムシ)を思い出した。

 尤も杭打機(オウトエイズル)の名前からして気付く奴は気付くアレな名前なのだが。それに──

 

「第一コレ、鉄球もただの鉄じゃなくて硬さと一定の重さが求められるから余ってるミスリルじゃそこまで威力上がらないしな」

「そうなのですか?」

「ミスリルよりも魔鉄の方が向いてるくらいだぞ、コレに至っては」

 

 弾頭の威力は速さと硬さもそうだが、重さも重要になる。重い質量を高速で叩きつける故に運動エネルギーが衝撃になって相手を破壊する。ミスリルは重さが鉄の1/3未満で硬さは3から4倍程、前世での知識と照らし合わせるとミスリルはダイヤモンドよりも最低で2割増は硬い計算になる。硬い方がいいと思われがちだが、この世界の生物は外殻が硬い事以上に生命力が高いのでピンポイントに重要器官を破壊しないと死なないのだ。硬くて軽い弾頭は貫通力に優れるが、貫通しただけでは殺せない。前世で主に使われたアサルトライフルの5.56mm弾頭が人間相手には有効でも獣相手では威力不足に陥るのと同じ理屈なのだ。その為、魔導銃の物理弾頭は量産が効く鉄で作られている……鉛ってこの世界で見たこと無いんだよな。

 

「それに、特殊な弾頭として魔導鎧の砲撃の弾頭内に仕込んで対象のある程度近場で炸裂させて中身をばら撒く散弾弾頭とか作った方が安全だしな」

「マスター!」

「作っても良いけど制作費取るぞ」

 

 因みに、技術的な問題で俺くらいにしか作れないらしいのでお値段一発辺り10万程らしい。子供の頃に概念と設計図を都市長に見せたら首絞められて言われた。確かにあの時は形状記憶合金の悪夢の後すぐだったけど、首絞める事は無かったと今でも思うんだよな。

 

「うぐ、なら他に物理弾頭系でロマン溢れる物は無いのですか?」

「いや、流体魔石を仕込んだヤツを前に見せたが基本的にアレくらいだぞ?」

 

 一応、拳銃で使える炸裂徹甲弾みたいな物も作ってはいる。前世のとある漫画に影響を受けて研究・開発を始めて、昔見た映画の弾頭の構造を真似てお茶を濁した代物だ。弾頭の中身を水銀やら蛍光塗料にする事で対人外を意識した創作武器だったが、同じ様に人外が跋扈するこの世界には実に馴染んだ代物だ。そう言えば、漫画も映画の何方も吸血鬼が題材になってたな。

 

「と言うか『エリンジウム』も十分にロマン溢れるだろ?」

「違うのですマスター、爆発や炎は別口のロマンなのです!」

「いや、分かるけども」

 

 チラリと目を向ければ当主代行も深く頷いてる。まぁ、あの鎧のハンガーが気に入った人だしそりゃ理解するよな。

 

「空飛べて最新技術の塊の魔導鎧ってだけで納得しないか?」

「タタラさん、空飛ぶ魔導鎧って何でしょうか。詳しく聞きたいのですが」

「しかしマスター、『卵』を核とした私の力を使うのなら武装増々の実弾魔法多め硬めでないと勿体ないのでは」

「そんな料理のトッピングみたいに言うな。しかも硬めってなんだ、追加装甲でもしろとでも?」

「心惹かれますね」

「追加武装なら不必要なら接続部を炸裂させてパージでもさせろとでも?」

「タタラ殿、それ凄く見たい」

「はい、とてもロマン溢れる光景だと私の中で機械神様も言っています」

 

 さっきからちょくちょくお義母さんと当主代行が台詞を挟んで来る。それは置いておいてダリアの魔導鎧の構成がどうも素体に対して武装を増やしていく形になる予感しかしない、それなら全部手持ちにしてインベントリから出した方が効率的なのだが。何処ぞの未確認浮遊体験ゲームのオービ◯ルフレームになるし、余程正確に武装を思い浮かべなければ武装変換は難しいのだが……いやダリアなら魔導具愛でやれそうではあるが。

 

「タタラ、あんた何私の目の前で戦術兵器を作成する計画を話してんのよ」

「それならさっきの転移マーカーと簡易転移門だけでもお釣りが来るでしょうよ。一人敵地に侵入させればそれを使って相手国内に軍隊送れるし、失敗時の為に時限発動式の術式仕組めば機密保持も出来るんだから」

「安易にそんな奇襲戦法を提示するのはやめなさいよ」

 

 都市長の言葉に対して転移マーカーと簡易転移門の組合せで思い付いた戦法だ、魔導鎧を装備した特殊部隊を用意して動力から直結した術式を組めば基幹部分の構造は敵国へ漏れる可能性が低くなる。時限式なら撃破された鎧も回収出来るし、作戦失敗時には速やかに撤退出来るので見た目の統率力から相手に印象を植え付けて警戒もさせられる。

 

「仮にそれをウチの皇族に知られたらあんた、開発と作戦立案の為に軟禁されるわよ」

「開発は分かりますけど、作戦立案ですか?」

「実際の戦闘は兎も角として、特殊作戦の雛形の発想は欲しがられるわよ。あんたは理解してないかも知れないけど、さっきの作戦でウチの皇族……もっと言うと前皇帝陛下を相手に送り込めばそれだけで相手の国を滅ぼせる場合の方が多いのよ?」

「ウチの国の皇族は戦略兵器か何かですか?」

 

 いや、個の戦闘力では歴代主人公では真ん中程では有る。それでも頂点であろう初代RPGの主人公と真正面から斬り合って生き残れたというとんでも無い実績が有るのだ。

 時代的にまだ歴代でも有数の強さを持った剣の魔神との戦闘を経験して無いとは言え、テキスト上とはいえ一人で前皇帝の軍を壊滅手前まで追い込んだ準魔神級の戦闘力を持つ将軍を、単騎で圧倒して撤退させたのが初代RPGの主人公だ。

 そんなのと真正面から戦って生き残る前皇帝陛下なんて相手の国に送ってみろ、多少衰えてようが単騎で一都市くらい制圧すんぞ。しかも皇国になってから禅譲した時期を考えると、今の皇帝陛下の実力は旅を終えて鍛え直した頃だ。ゲームでは軍からの支援砲撃が強力な固有技では有ったが、雑兵どころかネームドの騎士だろうと一蹴出来た最盛期。多分この『ワールウィンド』の全戦力を相手にしても全滅させてくる。

 幼馴染にして妻のヒロインの影響で性魔術も鍛えられてるだろうから、エテルの強みも殺してくる。

 ダリアはステータスでは上回るだろうが、あの前皇帝陛下なら技術と思考誘導で勝つだろう。

 四葩が『概念鑑定』で勝てる可能性が有るが、正面から切り合え無いと察したなら闇魔法による制圧爆撃を敢行する。

 此方の最強であるカラムスさんが良い勝負をするだろうが、勝てるビジョンが見えない。

 

 うん、戦略兵器だコレ。単騎で一軍に並ぶとか白い悪魔と天然パーマなパイロットかよ。

 

 しかも一人で行動する可能性は低いだろうから、伴うのは戦闘力が異常な妻達だろう。

 大剣で前衛をこなし性魔術で撹乱させる夢魔。

 双剣と弓に召喚魔法で全距離に対応するハーフエルフ。

 工兵として活躍できる工匠にして錬金術師のドワーフ。

 3分以内なら死んだ人間すら蘇生が叶う闇の女神様の聖女。

 そして前皇帝……冗談抜きで一国を滅ぼせる。

 最低限でこの人選と言うだけなので、敵対していたが前皇帝の正妻へ向ける愛を見て見守りに回った魔神やら龍の国から嫁いできた龍姫やら戦闘力の天井組が残っている。此処まで来ると明確に上回れるのは『天使長』達『看板娘』くらいなので、白旗を上げるのが一番賢い方法と言える。それこそ初代RPGの主人公なら勝てるだろうが、多分周囲の被害を気にしていられる余裕が無いので少なくとも余波で都市は壊滅する。

 こんなん無法だろ、チートだチート。

 

「軟禁されたら技術継承とか無理になりそうだな、シャムスとエストにも教えられなくなりそうなのはなぁ……」

「……あんたの場合、何処かに入信させて聖人にしようとするんじゃないかしら?」

「軍神様のところは無理ですね、個人戦闘力は並以下なので」

「ジュロンの場合は武器の作り手として異例の聖人になり得る可能性は有るがな」

「何その新情報」

 

 都市長の発言に対して身近な宗派を挙げて無理だと言ったが、よりにもよって聖人のカラムスさんから可能性が有る発言で思わず変な声が出る。そんな可能性要らんのだけど。あと、何となく軍神様の宗派と乙女様の宗派で戦争と言うか殴り合いが始まる予感がする。何故かは分からないが。

 

「と言うか、軟禁は受け入れるのね?」

「下手に抵抗して大切な人達を傷付けられるくらいなら受け入れますよ」

「そうね、エテルや四葩嬢が人質になる可能性も有るのよね」

「何を言ってんですか、都市長やカラムスさんもその枠ですよ」

「え、私達も?」

 

 何故そんな意外そうな顔をするのだろう、俺を親代わりに見てくれた人達なのだし当然だろう。

 

「タチアもそうだ」

「ふふ、私達はパーティだしな」

「それに、アルバードさん達の一家もそうですし」

「おや、ボクたちもかい?」

「当たり前です、どれだけ俺の人生で助けになったと思ってるんですか」

「ふふ、そう言って貰えると嬉しいわね」

 

 そう笑ってくれるカラー夫妻の二人からそっとバカに視線を向けると呆れた様な顔を向けてくる、まぁ耳が赤いので照れているのが分かるんだがな。

 

「この都市には大切なものが多過ぎるんですよ、俺のせいで危険にさらせません」

「……良いこと言ってるけど、あんたの発明と発想で何度か危機的状況にはなってるからね?」

 

 はい、すみません。

 

「さて、そろそろお説教も終わりにしましょうか」

「そうして貰えると助かりますね」

 

 明るく声を出した都市長で俺も乗る、まぁ、説教タイムは最初だけで途中から話が脱線しまくったがそこはスルーだ。

 

「変に怒ったからお腹空いたわね」

「あ、鮪切り出しますよ」

「それも良いんだけど、ちょっと別のもの口にしたいのよね」

 

 都市長の言葉に鮪を切ろうとするが、ストップが掛かる。

 

「あ、それならそろそろタタラに頼まれてたビーフシチューの味が馴染むので温めて出しますね」

 

 都市長の言葉にエテルがそう言ってキッチンに向かう、今日一日は食って食って食い尽くす日になるので味変もいるかと思えば都市長には丁度良かったか。

 

「……何でビーフシチューなんて作らせてるのよ、タタラ」

「家だと一年の終わりとか、何かの区切りに作ってるんですよ。だからお義母さんやお師様に味わって貰おうかと」

「ちょっと待ちなさい、お師様?」

「ええ、陽出國から来てくれた鍛冶師のアマツ氏です。作刀技術に惚れ込んで思わず師匠呼びしたら受け入れてくれたのでそのまま」

「……あんたが弟子入りするって相当よ?」

「そりゃ陽出國一の鍛冶師ですからね」

 

 正しくは鍛冶神だが。都市長がそっと視線を向けるが、お師様は鰭を焼いてから清酒を掛けて鰭酒にしてる。この姿だけ見るととてもそうは見えないか。

 

「……具体的にいうと、どれくらいの腕前なの?」

「切れ味だけで世界を断てる刃を打てるくらいですね、俺もまだ写せない刃です」

「……タタラが?」

「ええ、俺が」

 

 多分、都市長の中で最高位のクラフターは俺なのだろう。その俺が模倣出来ない技術など想像の外なのだろう。

 

「もしかして、あのナイフって」

「作刀技術を学んだ結果出来た代物ですね」

「アレっていったい何なのよ、『鑑定』掛けたらよく分からない特殊能力付いてるし」

 

 ああ、そこからか。

 

「お師様の作刀を学んで作った概念武装ですよ、本来は長い時間を得ないと生まれない特殊な概念を持つ武装です」

「待ちなさい、それって神造武器の一部に付くやつじゃない」

「ええ、それを特定の方向性を持たせた物なら作れるようになったので贈らせてもらいました」

 

 都市長の顔が苦虫を噛みつぶしたような物になる、何かこの表情によくなるな。

 

「……で、アレってどんな概念なのよ?」

「厄切り、呪いやら病魔やらの持ち主の身に降りかかる汎ゆる厄と言う概念を切り払う物になります」

「……本気であんた種族タタラになってるのね」

 

 異国の神様の弟子ではあるが、種族を変えたつもりは無いですよ都市長。




 指向性地雷にミスリル弾を使わない事に対して、作者の昔の同僚に元自衛官が居て聞いた話を参考にしました。
 なんでも北海道の方で小隊を組んで夜間訓練してる時に熊に襲われて持っている銃で撃ったらしいのだが、持たされていた小銃の5.56mm弾では殺せる気がしなかったとの事。自衛隊の銃に使われている弾丸は本来の物よりも炸薬が半分程に減らされているらしいのだが、それを差し引いても口径が小さくて熊の分厚い肉と、脂で固まった毛皮を相手にしては破壊力不足だと感じたらしい。更に言えば、初速が速く貫通力に優れる弾頭では重要器官をピンポイントで狙わなければいけない上に、頭蓋骨等は滑る上に心臓の位置なんて分からないし胸骨は硬いしで貫けないんだとか。
 他国の話では有るが、野生動物が出て来る場所に配属される軍人には初速は遅いが大口径で威力の有る弾丸のある7.62mm弾を使用する銃を与えられるらしいがコレでも猪以上は当たりどころがよくないと即死させられないらしい。
 記録では50口径(13mm)強装弾(マグナム、通常より火薬が多い)のデザートイーグルで頭半分吹き飛ばしても生きている熊も居るらしいので、野生動物の生命力は恐ろしい……コレに銃一丁で挑める猟友会の人達マジで凄いなと思った思い出。

もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり

  • タタラとエテルの立場逆転
  • 現パロ(エテルヒロイン)
  • 現パロ(四葩幼馴染)
  • 武器が擬人化してタタラへ物申す
  • 年増組と同い年
  • 聖人カレハ
  • 原作エテルとタタラ
  • ガチ妹ダリア・ジュロン
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