※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

103 / 183
タチアイベント継続中
『看板娘』イベント継続中


※専門知識が有る方は閲覧注意、なんちゃって理論が展開されています。


空を往く為に/此処までとは言ってない

 さて、反動推進機構とは何か。ザックリ説明するなら進行方向とは逆に何かを噴射するその反動で推進力を得る物、と言うのが超絶簡単に字面だけを掻い摘んで説明した内容になる。

 開発コードに使用している前世のジェットエンジンがコレで、高速回転させたフィンで取り込んだ空気を圧縮して燃料と化合・燃焼させてその勢いに指向性を持たせて噴射、反動で押し出され前に進むのがその構造になる。噴射口を絞ったり広げたりする事で勢いを調整する機構を搭載する事で、発生する運動エネルギーを効率的に運用しているのだ。

 燃料はそのまま燃やしても可燃性が高いだけで実は爆発はしない、気体となり空気と混ざる事で熱が空気を膨張させて爆発が起こる。車の事故などで即座に爆発しないのは、タンクから漏れたガソリンが揮発して空気と混ざり合い着火する迄のプロセスに時間が掛かるからだ。ジェットエンジンはこのプロセスを応用する為の制御が難しく、調整を間違えると爆発する。空気に対してどれだけの燃料を混ぜるか、と言う一点に途轍もなく気を使うのだ。

 

「と、言った具合の機能を安全に使えるように調整して作る予定だ。何か質問は?」

「コレ、誤って私を黒焦げにしかねませんか?」

「調整を誤ればそうなるな」

 

 俺の言葉にダリアが嫌そうな顔をする。しかし、お前の防御力だと事故っても身体に煤が付いて終わりじゃねぇかな。

 

「安全策を取るならこの別の機構は有るには有るぞ」

「それは?」

「この燃料を燃焼して得る爆発力に匹敵するだけの風魔法を使う事、それこそエンジンの核を『卵』にして最上級クラスの風魔法を噴射して推力を得るって感じにな」

 

 エコ、と言う一点ではおそらく此方のが望ましいだろう、消費するのは魔力だけなのだから。しかし、それ程強力な魔法と言うのが問題だったりする。

 

「マスター、私達機巧乙女は魔法が使えません」

「それも有るし、俺の周りで風の最上級魔法を使える人間も居ないんだよな」

 

 風の初級魔法の術式を紐解いて基礎にしたとして、効率的に運用する為の魔法術式は作れても強力にする為の術式が分からないので推力になり得ない可能性が有る。何よりも魔法を使えない人間に使用出来ない機構なら、ぶっちゃけ『浮身石』でも持たせればいい。『料理長』の『我駕牙』に試作品みたいな物を積んではいるが、ぶっちゃけアレは『料理長』の元の鎧と『料理長』自身のスペックが有ってこそ出来た反則技だ。未完成技術なので瞬間的に相手との距離を詰める事にしか使えないし、精々が音速に届くのが限界だ。

 そして、今回このジェットエンジンを作成するのは目的がある。鎧に強襲と言うコンセプトを持たせる為に高速機動で一撃離脱戦法が取れるようにすること、更には小型でもこの世界で旅客機を作りたいからだ。まぁ、旅客機の場合は『卵』を核にしたレシプロエンジンを作る方が安全に飛ばせると思うが。

 

「だからこそ、ダリアにはちょっと難易度が高い液状化魔石を燃料にしたジェットエンジンを完成させて乗せたい」

 

 コレはある種俺の我儘、偽善でしか無い。一応、ダリアも俺の大切な相手として判定しているので出来る限りの技術を与えて生き残らせたいのだ。それに、片道一週間は掛かると言っていた里帰りも最初にこのジェットエンジンを使えば到着が早くなるはずだ。破落戸が出て来るらしい片田舎まで、危険を冒す必要は無い。

 

「ところでマスター」

「なんだ?」

「仮に……本当に仮に、ですが。魔法術式云々を抜きに風魔法関連で推力を得る方法を構築するとしたらどのような案が有りますか?」

 

 ダリアの質問に疑問を持ちつつも、魔法術式以外での解決方法を考える。

 

「……風の精霊それも中位以上の核石を『卵』と直結、『卵』から魔力を送って風魔法に変換して使用する構造を作るとかかな」

 

 つまり『卵』の魔力を魔法に変換する上で、術式では無く核石が保有する変換構造の応用だ。まぁ、核石の構造を解析すれば多分似たような事は出来るのだが手元に無い。それに、低位の物なら45階層以降で手に入るようになる。

 コレの強みは何と言っても安全性、液状化魔石と比べれば爆発の危険性が少ないことが上げられる。まぁ、『卵』から引き出す魔力の値を間違えると風魔砲として転用も出来る代物に成るだろうが。

 

「何故マスターはその方式を取らないのでしょうか、45階層なら私が先導すれば踏破出来ると思われますが」

「ダリアにおんぶに抱っこはどうもな、既に『リッチ』相手で頼ってる現状で何を言ってんだって感じかも知れんが。それに」

 

 ある意味で俺の我儘、クラフターとしての意地の問題だ。

 

「魔法に頼らず空を飛べる手段って、やってみたくないか?」

「……」

 

 俺の言葉にダリアは目を瞬かせ、やがて薄っすらと笑う。

 

「魔石に頼っているのに、ですか?」

「研究すれば化石燃料とかでも出来る構造だぞ、これ」

 

 と言うか、前世ではそうやって運用されてた代物だしな。

 

「しかし、ええ……私好みの返答です」

「はいはい、どうせ俺は浪漫でクラフトしてますよ」

「いいじゃないですか、浪漫。夢無く実用一辺倒なら、何れは可能性すら潰えます」

 

 ダリアの目は笑いながらも真剣だ、機巧乙女が魔導具を好む生態はもしかしたら可能性を形にする姿を好むからなのかも知れないな。

 そんな会話を挟んだ後、製作を開始する。ジェットエンジンに必要なプロセスは吸気、圧縮、燃焼、噴射の四つ。外気を吸引し圧縮する為に複数のフィン……扇風機の羽根の様な機構が必要になる。低圧縮から段々と高圧にしていく圧縮機。燃焼室で燃料と化合して燃焼させる。燃焼し爆発的に体積を増やした空気を指向性を持たせて噴射する噴射口。かなり簡略化しているが、此等を制御する為にはかなり面倒且つ精密な制御が施され運用していた。フィンの中に異物が入れば爆発してしまう程の精密機器、それがエンジンだろう。そう言えば、噴射口の中にタービンを設置して発電させる事で飛行機の電気を賄っていると言う構造でも有ったな……いや、下手にやろうとするとフォルジュロン・ドライブと同じ構造になるからやめとこう。

 そんな説明をダリアにしながら、最初にフィンを作る。高品質な試作品(ハイエンドプロトタイプ)と言う事で素材は鍛造ミスリル、一つ辺りインゴット二つ分を1基14個のフィンをカスケード構造で繋げる。このフィン、其々羽が別の角度になっていて圧縮の段階によって角度が違う。この辺の角度の計算はダリアに頼んだ、魔導式ワープロの演算器をダリアの特性で強化したのと合わせ割り出し、効率的かつ確実な圧縮を成す為の羽の角度を出して貰う。それを俺が『クラフト』スキルを使って再現。元から見せていた設計図に合わせてダリアが計算してくれた為かなり楽に作れたと思う。

 吸気から圧縮をする為のカスケードが出来たので、次は燃焼室に取り掛かる。内部の爆発に耐えられるよう特に強固な造りにする必要があるので、壁の厚さが5mmで均一になる様にする。お師様が釜を鍛造で作って居たが、アレに近付けようと思う。一度重ねたミスリルインゴットを鍛造したミスリル板にして『クラフト』スキルで変形、筒状にして溶接代わりに縁と縁を融合させる。同じ物を3つ造り、内部に燃料を送る燃料噴射口と火を点ける燃焼器を作成。更に送気口と逆流しない為の弁を付ける、こうしないと燃焼した空気が逆流して大惨事になりかねない。

 大まかな内部構造が出来たので一度組み上げて状態を見る。タービンシャフトを手で回し、空気が燃焼室に入って行くのを確認。空気が燃焼室から漏れ出て居ない事を見て安堵する。燃焼室の出口から噴き出した風で噴射口内のタービンを回す構造にも問題は無く、コレが吸気口側のフィンを回すので次の吸気が出来る様になっている。取り敢えず、タービンの回転で発電する機構は無いので終末動力機(フォルジュロン・ドライブ)になる事は無いようにした。流石に増産して半ば永久機関みたいにしたら『天使長』にサクッと刺されそうだし。

 次に取り掛かるのは燃料噴射口だ。適切な量を噴霧出来る様にしないと燃焼させるどころか爆発させるだろう、以前『ミスリルゴーレム』を溶かせるレベルの熱量が発生するのは見ているのだ、鍛造して通常よりも強固になっていても量を間違えたら間違いなく溶かす……そんな確信がある。液状化魔石と空気の混合比を前世で聞き齧ったガソリンの理想空燃比に合わせて1:14.7の割合で試す、作業台に耐衝撃と耐熱の防護結界を張り燃焼実験。結果、結界が全損し作業台が半壊する。

 

「……マジかぁ」

「コレは爆弾として優秀かも知れませんね」

「間違いなく都市長から禁止を言い渡されるわ、あの防護結界は『貫通』無しならエリンジウムですら耐えるんだぞ」

「成る程、それだけの爆発力が有れば確かに推力だけで飛べそうですね」

「俺の話、聞いてる?」

 

 工房内は防音結界を3重に敷いてあるから外には漏れてないだろうが、割と耳にダメージが入りそうな轟音だった。ダリアも耳が遠くなっているかも知れないな……んな訳ねぇか、このキラキラした目を見る限り。

 それからも理想値は危険極まりない事を理解しつつ、それを探す。結果、液状化魔石の理想値は1:22.8と判明。燃焼効率と余分な魔力カスが発生しないのは此処だった。ただ、この時に発生する熱は5mm厚の鍛造ミスリルですら耐えられるか微妙な所だった……どんだけヤベェんだよ液状化魔石。

 

「マスター、コレでは燃焼室が溶け出します」

「分かってる、要は一番耐えられる物で作れば良いって事だろ」

 

 対物理、耐熱において最強の金属であるアダマンタイトを鍛造して薬室内に1mm厚の壁として貼り付ける。たった1mmと侮ること無かれ、アダマンタイトの遮熱性能はドラゴンのブレス相手でも八割はカット出来る。もう少し素材に余裕が有れば、内部構造を全てアダマンタイトで作れたのだろうが流石に余裕は無い。

 実際の燃焼室を使って実験してみれば、アダマンタイトの内壁は上手く行ってくれた。シャフトと噴射口内のフィンはアダマンタイトで作り直し、元のフィンは溶かして別のに再利用する。

 次は噴射口の作成で、燃焼室から噴射する風を絞ったり広げたり出来る様にする。外は鍛造ミスリル、内は鍛造アダマンタイトの二重構造で作る事で熱耐性を高める。複数枚の板を重ねる様にして可動出来る構造にする。仮の外装を作って装着、実験してみればキチンと可動し、満足のいく動作をした。

 最後に外装を作る、素材は鍛造ミスリルで空気抵抗を考慮して流線型を意識した。そうして完成する試作型魔導式反動推進機構『プロトジェットエンジン』、燃料となる液状化魔石を抜いてわずか5kg程の重量の代物である。

 

「……遂に完成したのですねマスター」

「ああ、あくまで試作型だけどジェットエンジンは一先ず完成だな」

 

 製作時間はおそらく2時間程だろうか、実験も挟んだのでそこそこ時間が掛かった。2基目を作る時には1時間程で出来るだろう。

 

「それでは早速──」

「ああ、2基目の作成だな」

「……はい?」

 

 俺の言葉にダリアが固まる、何故だろうちゃんと魔導鎧の設計図は見ているだろうに。

 

「飛行ユニットのエンジンは双発式、つまり2基積むんだ。あと1基作らないとダメだろ」

「……こ、この出力の推進器を2基積むのですか?」

「え、嫌なのか?」

 

 と言うか、腰部のテールバインダー分も含めて合計4基のエンジンを積むのだが。ダリアは俯き身体を震わせ、そして──

 

「素晴らしいです、マスター!!」

 

 久し振りだな、この反応。

 

「1基だけでも十分な推力を得られるこのエンジンを更にもう1基積む双発構想を歪めぬその姿勢、飽くなき探究心は正に未来を開く開拓者が如し! このエンジン1基ですら私達機巧乙女の力を得れば音を越えるでしょうに、2基を積む事でどれ程の推力を発揮するのか!? 構想のままで有るのなら、空気抵抗の問題を突破する為に結界術を応用するとのこと……なれば我等こそ世界に存在する最高速度の記録を更新するのは必定!! 我等こそ世界最速、影すら踏ませぬ至高の存在であると証明しましょう!!」

「おう、落ち着け」

 

 久し振りにダリアの詠唱を聞いたな、数ヶ月ぶりに思えるのは何故だろうか。多分、2週間ぶりとかその辺だと思うのだが。

 

「何よりもこの構成ならば、本体は『反重力術式』で宙へ浮き『飛翔術式』で浮力を経る構造! ならば推進器は文字通り推力を得る事のみに注力出来る! 本来ならばエンジンを始動させる為に気流を得て加速させる必要が有るのでしょうが、この機構ならば垂直発進も可能!! いついかなる時、いかなる場所でも飛び立てる自由な翼!! 私の鎧はこの世界で最も自由との証明!!」

「うん、嬉しいのは分かったから落ち着け?」

 

 詠唱が追加されてスーパーアーマーも発動してる、言葉が届かないな。

 

「日中の疲れが抜けなくて興奮してるなら今日はもう休むか、脳内物質が止まらないんだろ?」

「いえ、作業を続けましょう」

「急に冷静になるなよ……」

 

 まぁ、今日はこのまま鎧を完成させるつもりだったから落ち着いてくれるのは助かる。

 

 この後はもう1基エンジンを作り、燃料タンクを兼ねた接続用のユニットに2基とも取り付ける。デザインのイメージ元は前世のリアルロボットアニメの金字塔のシリーズで種な初代主役機、その追加ブースターの上部だ。長距離航行を想定して増槽を付けられるように接続部も設けている。

 フライトユニットが完成したので、本格的に鎧の作成に移る。ダリアから仮設の鎧である『アルストロメリア』を受け取り、内蔵されている装備を外していく。ダリアは少し寂しそうだったが、コレから新たな鎧を作るのだと思い直してその目に輝きが戻った。

 ワイヤーアンカーは腰部に取り付けるテールバインダーに内蔵、テールバインダーには他にエンジンと増槽を装着する為の兵器倉を用意する。エンジンは背部飛行ユニットに比べれば小型で出力を落としたサブ用の物にする。元にした機体は何方かと言うと此方がメインのブースターみたいな大きさなのだが、ダリアの鎧はあくまで腰部の方はサブになる。緊急時の回避軌道の為に使用する事や、高速での旋回の為に用意しているような物なのである程度出力を絞ってる。接続部がある程度柔軟に可動出来るようにして、後ろ腰に装着する物は完成した。

 デザインは全体的に流線型になる様にしている、胸部は風魔法の結界が無くても空力特性をある程度得られる様にしたのでダリアの胸が自然と盛られる形になった。外したらまな板なので、ヒドイ詐欺に思えるが此処はスルーだ。

 素材は出し惜しみを一切せず、外装は全てオリハルコンとアダマンタイトの複合材で作成する。お師様から教わったオリハルコンに対して二分のアダマンタイト、刀に向く配分と言っていたがおそらくコレは2種の魔法金属配合において理想的な組み合わせだ。オリハルコンにアダマンタイトを織り交ぜ鍛造してやれば、普通のオリハルコンに対して1.8倍程の強度になった。此処に精神感応の性質を発揮するので、最大強度に関しては更に1.5倍ほどに成るだろう。確かにコレは刀の刃に向いているだろうな。

 可能な限り空気抵抗を減らす様に、全体的に細身のシルエットになっているが腕には愛用の剣をマウント出来る稼働式のラックを作る。某機動戦士な一角獣のトンファーや武闘伝のゲルマン忍者のブレードに似た構造にした。こんな構造してたら空気抵抗云々なんぞ言えたものでは無いかも知れないが、それ以上にダリアが即時戦闘行動を取れることが優先である。

 腰部はテールバインダー以外にスカートアーマーの類は取り付けない。正面から見るとハイレグアーマーじみた構造になるが、防御能力はインナーマッスルアーマーで確保出来ている。更にそれとは別に『玄武』と同じ構造を取り入れ、関節部には追加の新型人工筋肉を増やしてパワーを上げる。

 足はハイヒールの形にし、足裏からは圧縮空気を噴射して姿勢制御や旋回行動さらに急制動を補助する機能を付ける。

 背面に飛行ユニットを接続するコネクターを作製し、さらに肩や腕に脹脛等へ拡張装備を付けるための兵器倉を設けてて鎧本体を完成にする。

 

 さて、此処からダリアの浪漫に対する俺なりの答えを追加する。

 

 肩の兵器倉に増設するのは前面追加装甲と後部追加の推進器、更にはミサイルユニット。本体には砲撃機能を付けなかったかのはこうして増設する事で状況に対応させる為で、コレは俺がコレから作る同じモデルの魔導鎧で標準仕様にするつもりだ。

 本体は安く、オプションで追加料金を取る。阿漕に見えるかも知れないが、根本的に俺が設計した飛行ユニットや砲撃機能を求めていない層だって存在しているのだ。なら、必要に応じて装備を換装出来るタイプなら余計な出費を抑えたり戦術に対して最適化も出来るだろう。

 腕部には左右其々に魔力を集束放射する魔導砲と、砲塔が回転する実弾型魔導銃を2門ずつ付けてその上に盾を装着。

 脚部は丸々飛行ユニットと言うかジェットエンジンを脚にした。分かる人には某機動戦士の宇宙世紀外伝、宇宙技術のSブースターユニット装着型を思い浮かべて貰えたら良いかも知れない。または某特機大戦オリジナルの漫画版、最終決戦突撃仕様の赤カブトとか。

 最後に肩部ユニットと干渉しない様に追加のパーツを取付けて、背部飛行ユニットを取付けてる。更に追加したパーツにエリンジウムを2門乗せて完成。

 制御は全て着用者の技術に依存する大分アレなアセンブルだけど、まぁダリアなら使いこなせるだろう。最大出力で加速したら多分重力の軛から抜け出せるが、特に使う事は無いと思う。

 

「……マスター、コレはいったい」

 

 出来上がったラーメンのトッピング(ニンニクアブラヤサイマシマシ)全盛り(カタメブタダブル)を体現するかの様な過剰な迄の武装を施した自身の魔導鎧を見て、ダリアが思わず呟く。汎用のハンガーでは支えきれず、急遽専用にカスタマイズした物に吊られたその魔導鎧に顔を向けていて表情が分からない。

 

「ダリアには悪いとは思ったが、魔導鎧をちょっとした次世代構想のテスト用にさせて貰った。新機能や新規ユニットのテストをこなせるように追加装備が可能なウェポンベイの増設と、火力の増加をコンセプトにしたテスト用のユニットを付けさせて貰った。戦闘中に邪魔になったら接続部を炸薬が爆破してパージ出来るし、要らないなら今から外すが」

 

 俺の説明を聞いたダリアは俯き、身体を震わせている。何となくこの後を予想して、そっと耳を塞ぐ。ダリアは顔を上げ、キラキラと輝く瞳を俺に向けて口を開いた。

 

「素晴らしいです、マスター!!」

 

 うん、予想通りの反応だ。この手の浪漫を理解するダリアなら、テスト機とかプロトタイプとかの言葉が大好きだろうと分かっていた。

 

「素体である魔導鎧もインナーマッスルアーマーとオリハルコン・アダマンタイトの複合材による高性能と高防御力を両立させているにも関わらず、固定装備として用意された腰部テールバインダーと脚部サブジェットによる高機動を体現! 更に、腕部に付けた可変式ブレードラックによりスムーズな近接武器の使用機構!! コレだけでは無く、鎧に追加された人工筋肉により単純なパワーも上がっています! 組み付かれたとしても足に付けられた噴射口の出力なら相手を無理やり引き剥がすことも可能、正に隙なし!! コレに加えて追加武装の何と偏らせた事か!! 圧倒的な防御力と推進力に物を言わせた正面突破、更に追加された武装による制圧力!! 推力を落とさないどころか逆に増したその思考、正に規格外!!」

 

 おう、物凄く気に入ってくれたな。

 

「問題としては、追加装備の影響で腕のラックが干渉して使えない事か」

「確かに即応性は失われていますが、盾を追加されているので問題は無いでしょう」

 

 俺の上げた問題点を、ダリアは認めつつもその為の盾だと納得してくれている。助かるな。

 

「それではマスター、この鎧と追加武装のコンセプト。双方の名前をお願いします」

 

 うん、忘れてた。

 

「……鎧はダリアが付けてくれ」

「む、私が……ですか」

「ああ、コレから使っていく鎧だからな。ダリアが納得する物を頼む」

 

 開発コードである『グラジオラス』は有るが、元にしただけで今は完全に別物になってしまっている。量産モデルの名前には良いが、専用となっているこの鎧には相応しくないだろう。

 

「でしたら『トリテレイア』と」

 

 トリテレイア、確か花言葉は『守護』か。成る程、俺の命名パターンを理解したダリアらしい。

 

「いい名前だな」

 

 俺の言葉に、ダリアは珍しく満面の笑顔を返してくる。忘れがちだが、やはり此奴も美少女だな。

 

「それでは、マスターの作ったこの追加武装は何という名前なのでしょうか?」

 

 さて、困った。ダリアに言った手前、俺が命名から逃げる訳にもいかない。簡単にウェポンパッケージとでも呼べば良さそうたが、ダリアが咎めて来そうだな。少し試すか。

 

「そうだな、ウェポンパッケージとか」

「流石に安直過ぎませんか、シンプルで私は好きですがこの『ワールウィンド』ではもう少し凝った名前を好まれそうですし」

 

 ……何で理解してるんだろうね、この娘。仕方ないか。

 

「なら『ファイヤーワークス』とか」

「成る程、敵対したモノを汚い花火にすると」

「そこまでは言ってねぇよ」

 

 火力増々の構成なので思い付いた名前だったが、何やら物騒な有りもしない裏を読まれてる感が凄い。

 

「では、この『トリテレイア・ファイヤーワークス』を明日早速試してみます」

「いや待て、試すって何処でだ」

 

 コレだけアホみたいな出力を誇るのだから、当然『ワールウィンド』内で試験運用など出来るはずが無い。ダンジョン内で使うなど、過剰な推力で壁に激突してしまう。

 

「この都市から出て、私の実家までの距離を飛行して行ってみます。計算上、メンテナンスも含めて一両日中には帰れるでしょう」

「メンテナンスも何も、俺は着いていけないんだぞ。まだ転移用マーカーも簡易転移門も作れて無いし」

 

 メンテナンスとは言うが、それを行えるスタッフが居ない。更に言えば、試験運用なのにぶっつけ本番みたいなノリで使えば爆発もしかねない。

 

「大丈夫です、マスター。制作現場を見ていたので簡易メンテナンス程度は私にも出来ます……流石に、マスター程に本格的なのは無理ですが。それに、機巧乙女の能力を使えば多少の不調も問題は有りません。随時修正していけます」

 

 クラフター形無しな生物特性を言われ、説得を諦める。元々は海外を旅していたから手形の関係は継続して使えるだろうし、他に留めておける説得材料も思い付かない。

 

「はぁ……安全に帰って来い、お前も家族なんだからな」

「Yes my Master」

 

 了承の言葉を返したダリアの顔は、何処か子供っぽく笑っていた。

 

 

 ダリアを部屋に返し、俺は鍛冶場に一人立つ。眼前には『料理長』より預かったアダマンタイト、コレから鮪解体包丁を作製していくのだ。

 期日は明日迄なのだが、下手に予定が混むと打てそうに無いので今のうちに済ませる。何となく、間に合わなくても怒られるとは思えないのだが……『料理長』の場合凹んだり泣いたりしそうでそれは嫌だ。ぬいぐるみ抱いて笑ってるのが何時もの姿とは言わないが、『料理長』ひいては『看板娘』達には笑っていて欲しいのだ。

 何時もの工程、何時もの作業。違うのは自前の鮪解体包丁を作製した時と同じ様に歌を口ずさむ事。今日試した事から考えて、オリハルコンとアダマンタイトの複合材で作るのが最上にも思えるのだが、素材はアダマンタイトだけなのでコレだけに集中する。

 製作時間は2時間程、俺にしては時間が掛かってしまったが出来はかなり良い。少なくとも俺自身の『真具呂』よりも上に思える。包丁一本でも自分の成長が感じられて嬉しくなる。

 当主代行が土産で持ってきた黒檀を使い柄を作ると刀身も柄も真っ黒だ。鮪相手だけに真黒ってか、やかましいわ。

 何時もの様に『鑑定』してみれば案の定弾かれる、俺の『真具呂』とは別物として判定されているらしい。

 しかし、どうやって『料理長』に渡そうか。来るの完全にランダムだし……いや、明日渡すか。

 

《……誰が此処までやれと言いましたか?》

 

 そんな事を考えて居ると、背後から声というか思念を送られた。振り返れば案の定、ジト目になった『料理長』が来ていた。

 その腕には見慣れてきた気の抜けたネコのぬいぐるみ、どうも本気で気に入ったらしい。

 

「よかった、接触方法が無いから明日まで渡せないかって思ってた」

《その時は空に向かって姉さまを好きだと言いなさい、光の速さで姉さまが飛んできますよ》

「出来るか馬鹿」

 

 お前、そんなのエテルに聞かれたら搾り殺されるわ。それに、今回はお前に渡す物なのだから『天使長』を便利に使える訳が無いだろ。

 

「まぁいいや、ご依頼の鮪解体包丁だ。確認を頼む」

 

 そう言って出来たての包丁を差し出す。『料理長』は両手で受け取って、その刃を見る。

 

《……何ですかこの特殊能力、誰が此処までやれと言いましたが》

「海鮮料理にしか使えない特殊能力だ、面白いだろ?」

《……まぁ、目的にのみ力を振るえるのは道具の本懐でしょうけど》

 

 溜息を吐いてそう言ってくる『料理長』だが、不思議な事に名前が無くこの世界に根付いてない筈の鮪解体包丁の特殊能力を読み取っているらしい。流石はシステム側の存在と言うべきだろうか?

 

「取り敢えず、其奴にキチンと名前をやってくれ」

《……鮪解体包丁なので『真黒蘇(マクロソ)』で》

「あっぶねぇな!?」

 

 どこぞの超時空要塞みたいな名前を付けるなよ。

 因みに蘇とは和製チーズの一種だ、食材では有るのだが鮪から作れたなんて話は聞かない。

 

《1日早いですが、依頼の品は確かに受け取りました。キチンとお師匠さまより学んだ技術を使っている点も高評価です》

「まぁ、そこは結構気を遣ったからな」

 

 お師様から教わった技を費やすのだから、気の抜けた作品なんて当然作れない。刀から包丁へ落とし込む上で色々と気を付ける場面は有るが、我ながら良い物を作れたと自負が有る。

 

《それでは、此方が今回の報酬です》

「……珍しいな、武器が報酬なんて」

 

 俺は『料理長』が差し出して来た物を受け取る。物としては美しい装飾の施された長剣だ、黒い鞘と柄にに金の装丁が施され鍔元に青い宝石が埋め込まれている。

 

《それは何れ、貴方を助ける物になる筈です》

「コレが、か? 俺は剣なんて使えないぞ」

《貴方自身を助ける上で、その剣を貴方が使える必要は有りませんよ》

 

 つまり、コレは仲間の誰かが持つべきと言うのだろうか。何となく、今の仲間の誰の手にも馴染みそうに無いと感じる。

 何方かと言えば『天使長』の手に有ってこそ、そんな印象だ。

 

「まぁ、何時かは俺を助けてくれるなら預かっておくよ」

《あくまでも報酬です……まぁ、気に入らないなら溶かしてしまえばいいと思いますよ》

「そんな事するかよ、折角『料理長』が俺の為って贈ってくれたんだから大切にする」

 

 少し悲しそうに溶かすと言う選択肢を出してくる『料理長』に、俺は真剣にそう返す。彼女達『看板娘』が渡して来たキーアイテムにも見えるこの剣は、最初から大切に保管するつもりだ。

 

《そう、ですか……精々大切にして下さい。それでは》

 

 少し早口にそう言ってから『料理長』はカーテシーを行い帰って言った。後ろ姿だから分かり難かったが、耳が赤くなっていたように見えた。

 

 さて、明日は久し振りの開店だ。そろそろ寝よう。




背中のバックパック→エールストライカー
腰のテールバインダー→GP-03

トー◯ギスのスーパーバーニアとステ□メンのテールバインダーのデザインが好きです、でもトー◯ギスのアレを作る為の構造が思い浮かばない……開くバーニア格好良いのに表現出来ねぇ!
なので妥協のエールストライカー()
尚、その後に出来上がるのがディープ▲トライカーと言う。加減しろ馬鹿と言われそうですね。

もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり

  • タタラとエテルの立場逆転
  • 現パロ(エテルヒロイン)
  • 現パロ(四葩幼馴染)
  • 武器が擬人化してタタラへ物申す
  • 年増組と同い年
  • 聖人カレハ
  • 原作エテルとタタラ
  • ガチ妹ダリア・ジュロン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。