既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント継続中
アンケートは今月末で締め切ります。
天使族の戦士スィーブ。4枚の翼を持つ第5位の位階をもつ天使族。ゲームユニットとしては槍を主武装とする万能型で、硬くて強くて速いと三拍子揃ったキャラ。
自らの魔力を固めて作る『光槍』と呼ばれる槍には光の属性が込められていて、夜闇の眷属や『死霊』系の天敵。更に魔法も使えて遠距離攻撃も出来る。
そして何よりも硬い。物理と魔法の何方も防御が高く、登場したタイミングだと攻撃が殆ど通らない。ゲームシステムだけでなく、シナリオでもひたすら硬くて主人公スミスの工房で爆発事件を起こした時も当人は身体に煤を付けて泣いていた程度。しかもその泣いた理由もビックリしてとかそんな理由だった筈。
そんな降りて来た対象の情報を引き出しつつ、身体を起こす。小さな瓦礫等は身体に乗っていたが、幸い大きな物が無く簡単に身を起こせた。痛む身体を無視して周囲を見渡す、エテルとバカを見付けないと。
「あら、そこの人間さ〜ん! ちょっとい〜い?」
間の抜けた声が聞こえるが、そんな事よりもエテルが居ない。
何処だ、何処に居るんだ?
エンゲージリンクからは生存が伝わるが場所が分からない、何処に居るんだ。何処に。
「むぅ、聞こえないの〜?」
痛みは引いてきた、問題無く動ける。周囲の状況を見て瓦礫の下などへ『鑑定』を掛ける。幸い下敷きになった人は無し、つまりエテルも居ない。大丈夫、エテルは大丈夫だ……お願いだから早く見付かってくれ。
「無視するのは〜めっ!」
武器命中0+120−59判定61。命中判定。
攻撃80−39=41
「がぁ!?」
凄まじい衝撃を受けて吹き飛ばされる。
武器命中0+41−59=41。命中判定、
攻撃10−39=0。
「ぐぅ、がはっ」
背中から石で作られた壁にぶつかり、息が詰まる。ダメージは無いが、衝撃で動けそうに無い。
「話してる人を無視するのは悪い事なんですよ〜!」
間延びした話し方でそんな事を言ってくるスィーブ。
「……ふざけんじゃねぇよ、テメェが招いたこの惨状が分かんねぇのか脳味噌お花畑がっ!!」
母親を求めて泣く子供の声。動かない恋人に必死に呼び掛ける青年の叫び。痛みを訴える老婦人の悲鳴。父の、母の、子の悲嘆。
誰もが苦しんでいる。
誰もが悲しんでいる。
この状況で何を言いやがる人外風情が!
「もう、コレだから人間さんは難しいの〜」
頬に手を当てて、駄々を捏ねる子供に手を焼く母親みたいな雰囲気を出すスィーブ。原作主人公はマジでよくこんなのと関係を持てたな、俺には無理だ。分かり合える気がしない。
「1から3は怪我人の確保、4から6は消火に入れ! 残りは来い、アレを確保する!!」
『了解!!』
聞き覚えの有る声が聞こえた。自警団、班長さん達が来た。その目は怒りに燃えている。人々の安寧を崩した外敵に対して、平穏を脅かす脅威に対して正しき怒りを胸に燃やしている。
「もう〜次から次になんなの〜?」
そんな自警団の団員さん達へ対して、スィーブはのんびりと困惑した様子で声を出す。
「班長さん、近付かないで! コイツ、人間より遥かに高い身体能力をしてます!!」
「っ、総員ランチャー用意!」
俺の叫びを受けた班長さんは即座に命令を下す。団員さん達が盾で抑え込もうと動いて居たのを止め、一斉にトリモチランチャーを構える。射線軸に互いが入らないよう即座に陣形を変え、狙いを定める。
「撃てぇ!!」
号令と共に発車されるトリモチ弾、足元と頭上に放たれ全身を拘束する為の射撃だ。
「な〜に〜!? ネバネバしてて気持ち悪い〜!!」
そんなトリモチを全身に浴びて、スィーブが声を上げる。気持ち悪いだとか知るかよ、テメェには地下牢がお似合いだ。
「タタラさん、大丈夫ですか!?」
俺を心配して班長さんが駆け寄ってくる。そうだ、助けて貰わなきゃ。
「俺はいいんで、俺の恋人が居る筈なので探すのを手伝って下さい。菫色の髪でロングヘアー、今日の服はえっと……」
「落ち着いて下さいタタラさん、ちゃんと探しますから!」
エテルを探して貰おうと必死に伝えようとするも、焦って服装が思い出せない。早く、早く思い出さなきゃ。エテルが居ない、どうしよう。エテル、エテルは何処に──
「もう〜、邪魔しないで〜!!」
そんな言葉と共に、閃光が走る。次の瞬間には衝撃が走り、俺と班長さんは壁に叩き付けられる。班長さんは咄嗟に俺の盾になってくれたらしい、衝撃は思ったよりも弱かったが班長さんはかなりのダメージを受けてしまった様子だ。
「班長さんっ!!」
「ぐ、あ……うぅ」
痛むのだろう、呻くだけの班長さんの姿に怒りが湧いてくる。インベントリから傷薬を一つ取り出して、班長さんに持たせる。真っ直ぐ立ってスィーブを『敵』と認定し、見据える。救助の邪魔、人を救うの事に邪魔……排除する。
インベントリから『玄武』を呼び出し装着、対人用のバトンも装備して敵に向かって駆け出す。
脳内でスキル一覧を開き『速力上昇Ⅱ』を『速力上昇Ⅲ』へランクアップ。上昇量は僅かに1だが、その1で明暗が分かれるのがこの世界の法則なのだ。
武器命中20+100+【騙し討ち】15−120=15。回避判定。
「きゃっ、危ないですよ人間さん〜」
不意打ち気味で更にはスキルの『騙し討ちⅠ』まで使用したのに外した。しかし、数値上はギリギリだった。もう少し『速度上昇』が高ければ届いて居た可能性も有るが後悔は後だ。足りないなら此処で届かせるくらいにバトンを振ればいい。
飛ばれたらバトンは届かず、周囲の被害を考えると『砲撃』と『魔導砲撃・改』は使用不可。飛ばれる前に何とかするしか無い。
「……っタタラさん! 被害者の避難の為に時間を下さい、10分……いえ、5分でやります!!」
班長さんの傍らに何時も居た副長っぽい人の声が聞こえた。5分って自分達も無理かもなんて思ってるのでしょう……10分でも20分でも稼ぎますよ。『クラフト』で『玄武・改』の術式に干渉、お義母さんの理論を応用して効率と出力を上げる。更に『卵』から流れる魔力の出力も上げる。稼働時間が約30分と短くなるが、防御以外の性能が5割増しになる。まぁ、下手したら途中で人工筋肉とかがエラーを起こして止まるかも知れないが……構うものか。
正義の味方に頼まれたのだ、応えなくてどうする。
再度攻撃、踏み込んでバトンを振るう。
武器命中20+120+【騙し討ち】15−120=35。命中判定。
物理攻撃146−158=0。
魔法攻撃50−162=0。
バトンから衝撃が伝わるが、まるで岩でも殴ったかのような物だった。手が痺れるが、何とかバトンは取り落とさずにすむ。防御力が高過ぎて攻撃が通らないか。
「んもう、人間さんたら〜」
武器命中0+120−110=10。回避成功。
伸びてきた手を咄嗟に回避する。速力は相手が上だが、運良くギリギリで回避出来た。俺の速力か後10低かったら確定で当たって居たので、ギリギリ過ぎる。
「何で逃げるのかしら〜?」
「敵に捕まったら何されるか分かったもんじゃねぇだろ、都市の結界を破って侵入した挙句こんだけ被害出した奴が味方だと思われるか?」
俺が避けた事に疑問を抱くスィーブに対して、答える。正直、言葉を交わすのも嫌なのだが僅かでも時間が欲しい。俺が付き合えば他の人達の安全が僅かでも確保出来るなら、構うものかよ。
「むぅ、ちょっと知り合いに呼ばれたから来ただけなのに〜」
「だったら、正面から入管管理局で手続きしてから入れよ。人間社会の仕組みも分かんねぇのか」
天使族特有の傲慢さか。そう言えば過去作でも天使族より魔神や夜闇の眷属の方が社会性が高かったな、魔神がタピオカミルクティーとかカフェでの呪文みたいなメニューを頼んでるのを3度見する主人公なんて光景も有ったか。ラスボス格が揃って二郎系ラーメンのトッピングを頼むDLCなんてのも有ったな、フルボイスで何やってんだってなったのが懐かしい。
「むう、人間さん達は弱いから私達が導かなきゃすぐ滅んじゃう弱々さんなのに〜」
「はっ、随分と傲慢だな。誰がそうしてくれって言ったんだ?」
光の神への信仰心がそう取らせたのなら、信徒にだけ寄り添ってろ。誰も彼もがお前らを求めてる訳じゃねぇんだよ。
「成る程〜貴方は自分で立てる人間さんなんですね〜でもでも、弱い事には変わりないですよ〜」
武器命中0+120−220=−100。回避判定。
回避を準備していたので間に合った。気分は闘牛士のソレだが、回避に徹した為に反撃は出来ない。しかし、コレで目前の敵が俺に集中してくれたなら御の字だ。
「ちょこまかとすばしっこいですね〜」
「はっ、ただの人間を捕まえられないお前が俺達をどう導くんだよ」
「そうですね〜……ならこうで」
魔法命中130+120−220=30。命中判定。
魔法攻撃160−109=51。
スィーブが言葉を発した次の瞬間、全身を貫かれる。急所は逸れて居るが、脚を貫かれた為に動けない。
「がぁっ……」
思わず呻いた、無数の光の刃が俺を貫いた光景を見たのか周囲から悲鳴が上がった。
「ほら〜人間さんはとっても弱いですね〜」
言いながら近付いてくるスィーブ、その姿を痛みを堪えながら睨みつける。
「少し魔法で攻撃すると〜簡単に抵抗出来なくなっちゃう弱々さんで〜」
その右手に光が集まり槍を形作る。武器の『光槍』を手に取るとそう言った、俺を仕留めるつもりか。
いいぜ、テメェが俺を刺すと同時に砲弾を一斉に起爆させて道連れにしてやる。人間舐めんな人外。
俺の戦意を認識した『玄武』が肩部のシールドを開き、何時でも自爆砲撃を可能な様に準備を始めた。覚悟させる間も無く、確実に殺してやる。
「だから〜私達が守って導かなきゃ駄目なんですよ〜」
「そうかい、反吐が出るから空の上に引き籠もってろ」
「もう〜分からず屋さんにはお仕置きです〜」
どうも四肢の何れかを奪うつもりらしい、そうすれば俺の戦意を挫けるとの判断だろう……その油断を突く。
そんな時だ、一陣の風が吹いたのは。
目前のスィーブが突然弾かれ、その鎧に一筋の傷が入る。
「……中々に硬い、私もタタラ殿に打って貰うべきだったか?」
聞き覚えは有るが、聞き慣れない冷徹な声。
白い狩衣に高下駄、その背に黒い翼を生やし白刃を持つ者。
虎熊領の帝都近衛、鴉天狗の雛菊が其処に居た。
「主、大丈夫ですか主!?」
直後、聞き慣れた声。普段の口調が抜けてしまう程に焦って居るらしい一華が、俺に刺さる光の刃を見て泣きそうになっている。手印を組んで祝詞を読み、俺の身体に刺さった光の刃を消していく。
「一華……悪い、エテルを探してくれ」
言いながらインベントリから傷薬を取り出して呷る、一本では足りないので次も取り出す。
「ですが!?」
「お願いだ、一華。エテルは俺の……」
「……分かりました、分かりましたから主は少し休んで!」
全身から血が流れている俺を見て遂には涙を流し始める一華、傷が塞がる迄の少しの時間は休まないと俺も危うい。この一時だけでも傷の治りを優先する為に『地母神の祈り』を外して『錬金術師の卵』を装備、一分も有れば全快する。一分か、長いな。
目前では雛菊さんがスィーブと切り合っている、俺の目では殆ど追いきれないが何となく雛菊さんが押しているらしい。スィーブの攻撃は全て凌いでいるのに、雛菊さんの斬撃は的確に当たっている……防御を少ししか抜けないのか傷は浅いようだが。
「タタラさん、大丈夫ですか?」
俺に声を掛けていたのは班長さん、良かった気が付いたんだ。
「俺は大丈夫ですよ、班長さんは……」
「俺も大丈夫です、タタラさんの傷薬で傷は塞がってますから」
俺のだとよく気付いたな、誰かから聞いたのか?
「トリモチを弾かれるなんて」
「俺も慢心してました、アレの拘束力なら大丈夫って」
「いえ、タタラさんが作ってくれたトリモチで無ければあの侵入者を一時とは言え拘束出来ませんでした。それに、このトリモチで無ければ拘束力が強過ぎて他の人に使えません。洗い流しやすいからいいんですよ、コレ」
俺をフォローしてくれているのだろう、こんな時でも気遣いが出来るなんて本当に良い人だな。
「班長さん、こんな時になんですが……」
「何が……コレって」
インベントリから取り出した班長さん用のカスタマイズモデルのトリモチランチャーを渡す。魔鉄製の黒い銃身が、雲の切れ目から差し込む光によりキラリと光る。
「本当は詰所でお渡ししたかったんですけどね、こんな状況ですみません」
「いいえ、本当に助かります……俺がお預かりしてたのはさっきので壊してしまったので」
そう言って試作型のトリモチランチャーを見せてくれる、半ばからフレームが曲がっているがスィーブの魔力波を受けてコレなら十分に丈夫だ。
「少しデータ取りがしたいので預からせて下さい、すぐに直してお届けしますから」
「怒らないんですか?」
「誰かを守って壊れた正義の味方の相棒を、ですか?」
「……本当、タタラさんは」
何処か仕方ないと言う風に笑う班長さん、そんなに変だったろうか?
雛菊さんが代わってくれた為に時間に余裕も出来た、被害者の数は確実に減っている。周囲の被害を考えなくて済むなら、自警団の人達と協力してスィーブを制圧出来る筈だ。
「班長さん、手伝って下さい」
「タタラさん?」
「雛菊さん……あの黒い翼の人が気を逸らしている間に人を配置して、あの犯人にトリモチ弾をぶつけたいんです」
作戦とも言えない計画だ、スィーブの魔力波を何度も撃たせて魔力を空にして気絶を狙う。あの魔力波がどれだけ消費するかは分からないが、攻撃力から見て前世のゲーム知識を参照したスィーブの魔力はおそらく360前後。それなら──
「……私もソレ、手伝える?」
聞き慣れた声、聞きたかった声が聞こえた。振り向くと身体の至る所から血を流しているエテルが、一華に支えられて立っていた。
「エテル……っ!」
「喜ぶのは後だよタタラ、あの天使族の人を捕まえるのが先」
思わず喜びが声に乗ってしまったのを嗜められる。心をぐっと抑えて続きを話す。
「エテル、拘束魔法ってどれくらいの距離まで近付けば使えるんだ?」
「だいたい2mくらいかな、ソレより離れると自信無い」
「それなら私が奥様と組んで撹乱します、合わせて術で拘束を仕掛けますので成功率は上がる筈です」
エテルと一華が組んで拘束を仕掛ける……自警団の人達と合わせて波状攻撃をすればいける筈。
作戦を伝えていく内に、他の団員さん達も近寄って聞いてくれていた。誰も彼もがその目に怒りを宿している。平和を乱された怒りが、人々を傷付けられた義憤が見える。
俺だってムカついてるんだ、この正義の味方達が怒らない筈がない。
「もう〜あなた邪魔〜!」
業を煮やしたスィーブが、魔法を展開する。雛菊さんは範囲外に出ようとするも、背後に団員や怪我人が居るのに気付いて防御姿勢を取る。ヤバい、俺達も動こうとした時だ。
「──俺の好きな人に、物騒なもん向けんじゃねぇ!!」
スィーブの背後に飛び出して一太刀浴びせる人影、ヒーローは遅れて登場するって言うつもりか……相変わらず格好いいじゃねぇかよバカが。
スィーブは咄嗟に避けられもせず、しかし防御力で受け切るが集中を乱されて魔法が消える。
「もう〜邪魔……」
「貴様が人々の邪魔だ、白羽根」
意識をバカに向けた瞬間に入る雛菊さんの一太刀、今度は
「二人が時間を稼いでくれています、参戦出来る自警団の方は……」
「任せて下さい、タタラさん。折れてる奴は居ません」
獰猛に笑って答えてくれた班長さんに頼もしさを覚えつつ、頭を下げて手伝いをお願いする。自警団の人達は一斉に敬礼をして、それぞれ分かれて配置に着いていく。
「タタラ、私達も行くね?」
「二人とも揃って帰って来るでござるからな、安心して欲しいでござるよご主人」
エテルと口調が平常時に戻る一華、心配も有るが同時に頼もしい。俺も話してる内に傷が塞がった、拘束術は無いけど……クラフターの意地を見せてやる。
「貴方、人間さんにしては強いけど〜」
「くそ、中々当たらねぇ……」
スィーブは意識をバカに向ける、雛菊さんの一撃を受けてでもこれ以上気を逸らされる事を嫌がって先に片付ける事を選んだか。
雛菊さんも急いで動くが、スィーブの動きは止まらない。光槍を構えて突き出そうとする。
しかし、遅い。
スィーブの腕に魔力が絡みつき、その身を炎が包む。バカはその瞬間に背後へ跳び距離を空ける。
「分身殺法、散水」
その状態のスィーブに対して四人に分身した一華が、逆手に持った『牡丹』を振るい切り裂く。此処に来て明確なダメージが入ったのが見えて、更に雛菊さんも追撃。そこで魔力波が放たれて拘束魔法と忍術が破られる。
「むう〜人間さんを誑かす悪い眷属がいる〜」
「生憎、私が人間に誑かされてる側だから」
素早く『ロニセラ』と『グロリオサ』を抜いたエテルがスィーブの顔を目掛けて発砲する、防御は抜けないが魔力光とマズルフラッシュで視界を潰されたスィーブはエテルを追撃出来ない。
それに合わせて距離を開いた近接組を見て、自警団の人達がトリモチを浴びせる。
「もう〜なんなの〜!?」
そのトリモチを魔力波で弾き、自警団の人達に攻撃を向けようとしたところへ俺が魔法を使う。『創製魔法』クリエイトウォールと『クラフト』スキル『錬金術』スキルの並用により強固になったその壁は、自警団の人達が離脱する時間を確かに稼いだ。
そうして隙を見せたスィーブに対して再び近接組が攻撃を仕掛ける、俺も所々『創製魔法』と『クラフト』で足場を崩したり足枷を作ったりと地味な援護を仕掛ける。
削れている。間違いなくスィーブの魔力と体力は削れている。肩で息をしているのが目立ち、腕を振る速さも落ちている。
問題は此方も全力で動いている事だろう。自警団の人達のトリモチ弾も有限、一華は兎も角雛菊さんとバカは『卵』を所持していないので傷が治らない。エテルは時にエナジードレインを使って回復しているが『グロリオサ』の弾丸が足りなくなる可能性も有った。
疲労から脚が縺れたバカの前に壁を創って援護、下がる時間を作る。スタミナ切れで戦線を離れる事を余儀なくされたバカは悔しそうに歯を食いしばっている。スィーブはそんな弱っている所を追撃しようと執拗に狙うが、その度に俺は壁を作り邪魔をする。脳裏にこんぷりーと! っと響いたが今は無視だ、余裕が無い。自警団の方も弾切れなのだろう、バカの前に盾を構えて壁になろうとしている。雛菊さんと一華が急いでいるが、スィーブは傷を無視する動きだ。駄目だ、間に合わない。
「時間になっても帰って来ないし、あまりに遅いから気になったら面白そうな事をしてるじゃん」
軽薄そうな声、軽く地を蹴る音。
「混ぜてよ」
次の瞬間、スィーブの身体中から血が噴き出す。一華と雛菊さんが斬ってもあまり傷を負わなかった硬いその身体を、何でもないように切り裂く者。
「……よく此処に来れたな、あの糞野郎」
「助けたのにその言い方、本当に僕って嫌われてるね」
大きくない声で溢れた言葉に返してくる糞野郎、コレで時間が大分稼ぎやすくなる筈。残弾の無い自警団の人達が、バカに肩を貸しながら離れる。良い引き際だ。
「と・こ・ろ・で、僕の注文した物は?」
スィーブから顔を反らして聞いてくる糞野郎、その瞬間スィーブは光槍による連続突きを仕掛けるが見もしないで全て逸らしていく。マジで強いんだなコイツ。
俺は溜息を吐きながら、『太郎丸』と『次郎丸』を取り出して放る。ソレを認めた糞野郎はスィーブの槍を弾いてその腹部に蹴りを叩き込む。吹き飛ばされるスィーブに雛菊さんが追撃し、その間に糞野郎が二刀を掴んだ。それまで使っていた刀は何時の間にかインベントリに収められていた。
「……へぇ、流石」
抜いた二刀の刃を見て感嘆の言葉を溢す糞野郎、軽く構えてから踏み込んだ。スィーブの身体中を斬撃が襲う、傷を与えるが死なないその攻撃は一瞬にしてスィーブを血に染める。
「いいね、コレ何て銘?」
「『太郎丸』と『次郎丸』だ、折ったら終わりだからな!」
「そんなに下手くそじゃないよ、僕はね!」
糞野郎の剣戟が加速する。俺には腕が無数に分身して見える程の速度で、あの雛菊さんですら割って入れない様子だ。
スィーブは糞野郎と距離を取ろうと魔力波を放つが、鍛造ミスリルで造られた刃は容易くそれを切り裂く。その様に糞野郎は口笛を軽く吹いてから、更に踏み込んだ。彼奴がスィーブの体力を1に削ったら流石に拘束出来る筈。
そんな風に思った直後、糞野郎を光の刃が囲む。俺を串刺しにした魔法で決着をつける気かと思ったが、糞野郎は二刀で全て切り払う。しかし、その間にスィーブは宙へ逃げていた。
「……貴方達に審判を下します」
間延びした口調から一転、そう告げたスィーブは静かな声で続ける。
「神の使徒を傷付け、神の慈悲を厭う者。汝等が罪を受け入れ、速やかに懺悔せよ」
それは詠唱だ。天使族が持つ、神の力を限定的に借りる大魔法。戦闘中で使えるキャラは居らず、イベント専用の魔法だが……その威力は小国程度なら問題なく吹き飛ばせる。
雛菊さんが空を往く、エテルが切り札の『エリンジウム』を構える。詠唱時に結界が張られるのか、二人の攻撃は弾かれた。
「罪を雪げ、光の雨。我等、神の意志──」
『目標捕捉』
詠唱の途中、仲間内で共有しているアクセサリーからそんな念話が飛んできた。そして、凄まじい轟音の後に何かが割れる音。
「──ぐふっ」
スィーブが口から血を吐く、あの強固な結界を貫通した攻撃は威力を減衰させながらもその身を貫いたらしい。
『遅くなりました、マスター。ダリア・ジュロン、帰還しました』
音を遥かに越える速度で突撃し、風魔法による結界ごと自身を質量弾としてスィーブに叩き付けながらダリアはそう言った。
「……硬いな、帰って来たらただいまだろダリア」
『失礼しました、ただいまですマスター』
俺の軽口に対して律儀に返すダリア、何処か笑っているような雰囲気を感じる。
『マスター、この何故かムカつくトリモドキは如何すれば?』
「殺さないように確保……出来るか?」
『Yes my Master』
俺の注文に何時もの返事を返して、ダリアは『トリテレイア・ファイヤーワークス』のブースター出力を上げる。低空では街に被害が出ると判断したのか、どんどん上へ上がっていく。
「……アレも君の作品?」
「そうだが?」
「君、何でも作れるんだね」
何時の間にか横に立っていた糞野郎から問われたので返したら、呆れたような言葉が聞こえた。むしろ、あっちのが本業なんだけどな。
装備していた『卵』の影響で体力も魔力も回復した俺は、怪我をした人達の所へ向かう。医療班は来ていないらしく、全員包帯等で応急手当で止まっている。
「すいません副長さん、傷薬はどれだけ必要ですか?」
「……怪我人は全体で100人を切るくらいです、1人2個も有れば」
「本当は?」
「……重症者も居るので、全体で500は欲しいです」
「なら、これだけ有れば余裕ですか?」
インベントリから傷薬1000個を取り出して並べていく。副長さん以外の団員さん達も驚愕の表情だ。
「次期工匠長作の傷薬、必要なら持っていって下さい」
ニヤリと笑えば、自警団の人達は挙って手に取り怪我人の下へ向かう。副長さんも複数手に取って手当をしていた怪我人に使用していく。
こんな時の為の傷薬、目標は手元に一万個。災害対策はやはり必至だな。
「お、おにいちゃん」
そんな俺におずおずと声を掛けてくる男の子が居た。
「お、おかあさんがケガしてるの……これもらっていい?」
「当然、使い方が分からないならお兄さんがやってあげるよ」
「……おねがい、おかあさんをたすけて!」
子供の切実な願いを受けたら応えなくてはならない、少しくらい正義の味方の真似事をしても許されるだろ?
男の子の母親は結構重症だった、傷へ直接傷薬を掛けつつ別の薬を飲ませる。男の子に口元へゆっくりと傾けるようにお願いしたら、とても上手く母親に飲ませている。人を救うヒーローの才能が有るぞ、少年。
容態が持ち直したらしく、呼吸が落ち着いたのを見て安堵する。男の子は安心して泣き出してしまいそうだが、我慢させるのは良くない。
「頑張ったな、少年。格好良かったぞ」
頭を撫でてやると、遂に泣き出した。
「頑張った奴の涙は格好悪くなんてない」
俺の言葉が届いたのか、少年の涙は増えている。
「出来れば、将来はそうやって誰かを助けるヒーローになって欲しい。誰かに優しくなれる大人になってくれ……お兄さんとの約束だ」
少年は小さく頷いてくれる、立派な大人になってくれ。
その後も自警団の人達を手伝い、傷薬で応急手当をする。外科手術が必要な人も居たが、傷薬で持ち直したタイミングで医療班が来た。
搬送の為にストレッチャーをその場で『クラフト』する。持っていた魔石を『浮身石』にしてストレッチャーを浮かせた。
目を丸くする医療班の人達に複数の『ホバーストレッチャー』を押し付けつつ、怪我人を搬送させる。コレで一安心か。
そうしていると、上空から轟音が聞こえてくる。見上げれば、ダリアがスィーブに向けて左手の機関銃を叩き込んでいた。空戦では本来は上を取るべき所を、射線を気にして下から撃っているのだろう。苦労を掛けてしまった。
『マスター、問題が』
そんな時、ダリアから念話が入る。
『どうした、鎧に不調か?』
『はい、向こうで盗賊団を潰した影響で弾切れ手前です。砲撃用の弾は元から切れて居ましたが、『エリンジウム』は開幕の物が最後の一発でした。残りは魔力砲になりますが、目前の敵は魔法防御の方が高いので制圧は難しい』
どんだけタフなんだあの天使族。その前に、盗賊団を潰したって何?
『エテル、取れるか?』
『うん、聞こえてるよ』
『彼奴から根刮ぎ体力奪って地に這わせられるか?』
『必要なんでしょ、やるよ』
エテルから力強い答えを聞いて安心する。続いてダリアに念話を飛ばす。
『ダリア、其奴を地面に叩き落としてくれ』
『やりますが、武装的に厳しいです』
『……これから一つイメージを送る、使えるか考えてくれ』
それは前世でやっていたフライトシミュレーションでやっていた一つの空戦機動。其処にダリアに使ってる魔法技術を組み込んだ代物だ。
『……出来ますが、何故空を飛べないマスターがこの様な?』
『飛べ無いからこそイメージは、な』
『成る程』
ダリアには納得されたが、流石に前世知識とは言えんよな。
そうしている内にダリアの左手の魔導銃が弾切れを起こす、それを機と見てスィーブが攻勢に出た。
『それでは作戦を開始します』
『ああ、武運を祈る』
『Yes my Master』
そんなスィーブを背に引き付けて、ダリアは空を上がっていく。スィーブはそれを追い掛け、どんどんと近付く。二人の距離が数メートルと言った距離になった瞬間、ダリアが動いた。ジェットエンジンと浮遊術式を切り失速、そのまま重力に従い落ちるのに合わせて180°ターン。
その挙動にスィーブは反応出来ず、落下の際に得た風力で再びエンジンを吹かしたダリアの加速に押されて地面に向かってくる。加速し続ける二人、最後の抵抗としてスィーブがダリアの鎧を掴んだ瞬間にダリアの鎧が弾けた。
肩部と脚部のエンジンを吹かせたまま、ダリアは背部飛行ユニットと腰部のエンジンでその場を離脱。虚を突かれたスィーブはそのまま地面に激突した。
呻くスィーブにエテルは近付き、自身の持てる最大のエナジードレイン系の魔法を使用。スィーブは全身から力が抜けてぐったりとした。
ダイナミック不法入国者の大物取りは、こうして決着した。
四葩「因みに妾は迷子を疑われてお留守番じゃ、泣いてよいか?」
没案
『ダリア、其奴を地面に叩き落としてくれ』
『やりますが、武装的に厳しいです』
『分かった。ダリア、You have Control』
『……I have?』
ダリアに『玄武』の砲撃の制御権を渡す。『玄武』の残弾を確認して、ダリアは勝利を確信したような雰囲気で念話を送って来た。
『それでは、作戦を開始します』
『ああ、武運長久を祈る』
『Yes my Master』
言うと同時に射撃を止め、スィーブに向かって加速するダリア。まるで体当たりを狙った様な動きに、スィーブは慌てたように回避行動を取る。ダリアは攻撃が外れたかの様な挙動で、そのまま上空へと昇っていく。それを好機と見たのか、スィーブもその背を追っていく……地上に居る俺達の存在を忘れて。
無防備な背を向けたのを見計らい、ダリアからの捜査により起動した『玄武』の砲弾が発射される。
ダリアはわざと速度を追い付かれる程度に落としていて、そんなダリアに触れるか触れないかの距離になったスィーブの背に『玄武』から放たれた砲弾がこのタイミングで直撃する。弾かれたスィーブを追い掛けてに次々と着弾していく、砲弾は空中に白い尾をひいていてまるで前世で見ていたアニメのミサイルサーカスのようだ。
最後の一発が直撃する直前にダリアは反転、加速し爆炎の中に居るスィーブに激突する。そのまま左手の機関銃を密着状態で発射しつつ地面に激突した。
もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり
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タタラとエテルの立場逆転
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現パロ(エテルヒロイン)
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現パロ(四葩幼馴染)
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武器が擬人化してタタラへ物申す
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年増組と同い年
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聖人カレハ
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原作エテルとタタラ
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ガチ妹ダリア・ジュロン