既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
1層先へ進み、少女が変わらず前に出る。淀みなく、壁に沿って曲がり角まで進み立ち止まる。影から先を覗こうとした際、一匹ゴブリンが目の前に現れた。
瞬間、後ろに跳び『ロニセラ』を向け3連射する少女。目前のゴブリンは反応出来ずにその身体を3箇所削られて絶命したが、そのゴブリンの後ろから更に2匹が飛び出して来た。
先に見えたゴブリンを後ろへ跳んだが故に、少女は空中で避ける手段が無かった。威嚇、または駆除目的で『ロニセラ』を撃つが狙いは逸れてゴブリンは死なず、遂には取り付かれてしまった。1匹目は胸元、2匹目は脚にそれぞれ飛びついてゴブリンは少女のバランスを崩させる。
少女の胸元へ取り付いたゴブリンは鼻息荒くその体臭を吸い、興奮して服の上から少女の乳房を舐め始める。脚に取り付いたゴブリンは、露出している内腿を舐めた。
「ひっ」
生理的な嫌悪感から少女の口から悲鳴が漏れた、その様に益々興奮したゴブリンは衣服に手を掛けた。そして次の瞬間、上半身に取り付いたゴブリンは追い付いた俺が目に指を突き入れ引き剥がした。
指からはやや硬い物を突き破った感触の後、生暖かい液体に包まれる感覚。ゴブリンは悲鳴を上げ俺の手を引き剥がそうと握ってくるが、そんな事は関係無しに眼窩と額で頭を掴む形にした俺は無理矢理持ち上げ思い切り床へ叩き付ける。背中から硬い地面へ衝突したゴブリンは背骨が砕けたのか、氷を砕いたかの様な感触を手に伝えてくる。
仲間が目の前で無脊椎動物にされた事に呆然としたもう一匹のゴブリンは、少女が脚を振り解いて放った前蹴りを受けて内臓を潰された。壁に叩き付けられたゴブリンにつかつかと歩み寄った少女は、ゴブリンの頭を壁に押し付けるように踏み付けて潰す。
少女の物理攻撃力はゴブリンを武器無しで殺せる程度には高くなっている、冷静だったなら組み付いて来たゴブリンも難なく振り払って処理出来ていた筈だ。やはり、近接戦闘の経験が足りないのかこういった時冷静さを保てて無い。
「あー……大丈夫か?」
「大丈夫!!」
思わず声を掛けた俺に背を向けたまま、少女は怒鳴る様に答えた。明らかに大丈夫じゃ無さそうです、本当にありがとうございました。
「何で『ミミック』も『ゴブリン』も私のおっぱい舐めようとすんの、何で……」
「いやまぁ、結構立派だし……」
「アン?」
「なんでもないです」
怒気を越えて殺意が籠もった少女の声に背筋が寒くなる、今のは完全に失言だった。少女は装備を乱暴気味に直すと、落ちていた魔石を拾うと俺に向かって投げ渡してくる。インベントリにも入れて置きたく無いらしい、まぁ当然か。
「暫く俺が前に出ようか、また不意に出会いたく無いだろうし」
「いい、私が先に立つ」
「いや、でも」
「私が! 前に! 立つ!」
「……分かった。けど、フォロー入れられる様にすぐ後ろに付くからあんまり進み過ぎるなよ」
少女に着いて行ける様に本格的に『移動力上昇』の取得を視野に入れ、ダンジョン探索を再開する。
そこからは最初の様な不意打ちも無く、宝箱も無かったので次の階層へ進んだ。
次も変わらず少女は前を行く。通路の先にゴブリンの団体を見付け、速やかに『ロニセラ』を放つ。命中率が明らかに上がっていて、6匹固まっている所へ4連射して4匹片付け近付いて来たゴブリンを1匹射殺、更に近付いた最後の1匹は突然動きを止め、少女は至近距離から頭を吹き飛ばして片付けた。
「……もしかして、『魅了』使ったか?」
「前に教えて貰った使い方やってみた、便利だねコレ」
「お、おう……」
恐る恐る確認したら肯定された、最後のゴブリンに使用したのは『性魔術』の魔法の1つ『魅了』だ。相手を状態異常の魅了にし、一時的に隷属させる物。隷属下に置いた相手は命令を受けるか一定時間経って効果が切れるまで動けなくなるので、それを応用した遅延戦法だ。
魔法防御力で成功率が変わる筈なのだが、夢魔の特性か少女の『魅了』は簡単に通った。ゴブリン相手でも俺が使用したら3割は失敗する。
その後も少女は無双状態だった。遠方にゴブリンを見付けたら即座に『魅了』を掛け、動きを止めたゴブリンを確実に処理して進む。時には『魅了』したゴブリンを暴れさせ、周囲のゴブリンが混乱した所を纏めて処理する等どんどん扱い方が上手くなっていった。
そして気付けば階段の前、キレた少女は恐ろしい程の効率で進んでいる。
「(2階層ほぼ何もしてねぇ……)」
「ん、どうしたの?」
「いや、何もして無いなと……」
「アンタの方がレベル高いんだし、出番なんて基本的に無いでしょ?」
「そりゃそうだけど」
それを差し引いても流石に出番無さ過ぎやしないだろうか?
少女が『性魔術』を使うようになってから劇的に効率が増している、身体的にもそうだったが戦闘面でも『性魔術』の存在は彼女にとって重要だったらしい。
というか、魔法防御力が低いとはいえゴブリン相手に『魅了』通り過ぎだろう。今のところ100%だぞ。
「そういえば『性魔術』のスキルってどれくらいになった?」
「どれくらいって……この2層で使い始めたばっかりだよ?」
「いや、流石に此処まで使いまくってたら何か影響出てないかと……」
「んなわけないじゃん、ほらスキル……え?」
少女がスキルスロットを見た瞬間固まる。流石に此処まで使い続けてる上に成功させ続けてるなら、と転生後に変わった事を肌で感じた事象の一つを目の前で見せられた。
「うっそ、スキルレベルが最大になってる」
「もはや何かのバグだろコレ」
所謂『才能の差』とでも言うべき物、俺も『早熟』でスキルレベルが上がりやすくなってはいる。が、所謂天才と称される様な者達はそんな領域に無い。異常とも言える習熟速度、コレこそが天才の真骨頂だろう。
「取り敢えずスキルランク上げとこ」
特に気にした素振りも無く、少女は『性魔術Ⅱ』のスキルを取得した模様。確かに此処まで活用出来るなら上げた方が良いだろう、しかし何だこの釈然としない気持ち。
先へ進み、先行する少女は早速哀れな
相手がゴブリンとはいえ、そこまで強い効果出る魔法じゃ無い筈だ。
「お、魔力が溜まってる感覚がする!」
「多分生命力そのもの奪ってると思うから、軽い傷なんかも治ると思うぞ。お前限定で」
「え、どういうこと?」
「俺が同じ魔法使ってもこんなにならないんだわ、この魔法」
そう言いつつ、注意力が落ちている少女の隣で思い切りウォーハンマーを振る。隠れていたゴブリンが不意打ちを仕掛けて来たが、普通に見え見えだったので処理したのだ。
「え、嘘……」
「スキルが嵌まって興奮するのは分かるが、ちょっと冷静になれ。注意力が大分落ちてるぞ」
俺と空中で散ったゴブリンを交互に見て、肩を落として溜息を吐く少女。そのまま数度、深く呼吸をして気持ちを落ち着かせている。
「ごめん、また」
「此処までスムーズに行き過ぎたんだ、気にするなら次に活かせ」
「ん、分かった。ご……ありがとう」
「おう、パーティだから支え合いだろ。気にすんな」
謝罪をする少女のフォローをし、感謝を伝えて来た所で学園にて最初に習うパーティに付いての言葉を返す。初等教育、中等教育、高等教育それぞれの課程で必ず一度は言われるもので、少なくともこの国の人間なら必ず知っている筈のもの。
「……そう、だね。うん、次は私がアンタを支える」
「もう助けられてる、先に進もうぜ」
そんなやり取りをし、少女が満開と言わんばかりの笑顔を此方に見せて来るのに俺も軽く笑みを返す。
気を入れ直した俺達は、集中力を取り戻して探索に取り組む。少しずつ増えているゴブリンの出現数にボスフロアが近い事を意識しつつ、丁寧に処理して先へ。少女の『エナジードレイン』は先制と回復に最適なようで、半ば永久機関みたいにゴブリンの死を量産している。今でこそ単体での使用だが、後々に覚える範囲型のエナジードレイン系を使える様になったら半ば悪夢なのではなかろうか? 覚えるタイミングにも寄るが、下手したら30層より先は彼女一人の方が進みが早くなるかも知れない。
問題は、魔法防御力が高いタイプには殆ど無力というところだが、その為の方策は此方の領分である。何度も彼女の為に引き直した設計図の魔導銃、必ず完成させる様にしよう。
そして階層を進み、前回二人でモンスターハウスに引っ掛かった階に着いた。
「リベンジだな」
「……リベンジ、だね」
神妙な顔をした少女が俺の言葉に続ける。前回の失敗は罠付き宝箱の開封、罠解除に向いた盗賊スキルは未所持なので鑑定して罠付きと分かれば無視する方針だ。一応、ゲーム時代から解除用のアイテムは有るには有るのだが現状素材が希少なので手軽に作れない。具体的に言うとミスリルとオリハルコンが安定供給出来ないと無理、前にバカから相談された時に伝えたらしょっぱい顔をされたが自分も同じ顔をしていたと思う。
「状態はどうだ?」
「体力、魔力共に満タン。気力も充実!」
「よろしい、では安全に行こう」
「おーっ!」
少しテンションが高い少女だが、肩の力は抜けていて集中出来ている理想の状態だ。素早くかつ慎重に動き、目視したゴブリンは変わらず『エナジードレイン』で枯らして行く。もう少し離れた距離になると『ロニセラ』で撃ち、堅実に処理して行く。
そんな順調な動きをしていた中、少女が壁際で止まりハンドサインを送って来た。意味としては『厄介な敵有り』と言ったところか。
少女が潜む壁際まで進み、同じく覗き込む。暗がりで見えづらいが、通常のゴブリンより一回り程大きく装備がしっかりしている。そしてこの特徴はとあるレア種に見られる傾向だ。つまり、彼処に居るのは特殊個体を指揮する『ゴブリンコマンダー』だろう。此処に来るまで『ゴブリンウォリアー』や『ゴブリンウィザード』等の強化個体を見なかったため、先行して入った探索者達が粗方強い個体を狩って行ったらしかったのだが此処に来て俺と少女は厄介なヤツを引いた。ダンジョンは偶にこういった悪意の混ざったリソースの使用をする、5〜8階層迄のモンスターのリポップリソースをこの9階層へ集めて『ゴブリンコマンダー』を頂点とした部隊を用意したのだろう。
『どうするの?』
『片付けるしか無いだろう、此処まで寄り道無かったからアレを乗り越え無いと階段も宝箱も見付からない』
『それは同意だけど、作戦は?』
『『ゴブリンコマンダー』にお前の『魅了』を先ずは試す、弾かれたら次に武器持ってるゴブリンを優先して『魅了』の使用。何も持たずに突っ込んで来るヤツは『ロニセラ』で遠距離での処理を優先』
『それ、作戦というか私の方針じゃ』
『正直な話、お前が組み付かれるなりして行動不能になるのが一番拙い。多分、控えさせてるだけで『ウォリアー』と『ウィザード』も奴の指揮下に入っている筈だ。そうでなかったら無かったで楽だが、多勢に無勢で自爆特攻とかされたら下手したら普通にやられるからな?』
『その根拠は?』
『以前ソロの時に喰らい掛けた、直撃は避けたが爆風と爆炎で負ったダメージで傷薬10は使った』
『何で死なずに済んでんの!?』
『直撃じゃ無かったから、だな。序に言えば、火傷を治すのに傷薬使いまくった』
火傷のダメージは状態異常に類するので、傷薬で回復し続ける事で状態異常が抜ける迄持たせれば何とかなる。
もっとも、その間は只管熱持った患部と延々と続く痛みで発狂しそうになるが。火傷用の薬も作れはするが、素材は栽培するのが繊細で難しい。探索無し、学園無しなら恐らく何とか出来るだろうが今は商会からそこそこ高い値段で買う以外に数を用意出来ない。つくづく原作主人公の複数人が住む環境が羨ましくなる、アレなら材料費を安く済ませられると転生してから納得した。
『『コマンダー』の頭が性欲で詰まってなければ狙われ無いだろうが、そこ迄期待出来ん』
『言うて『ゴブリン』でしょ?』
『この前それで銃爪引きまくってたの誰でしたっけ?』
『すみません私です』
『『コマンダー』は『キング』程の強制力は無いが、方向性は決められるからな。男を優先して排除、女はお愉しみって指揮したら自爆型が女と愉しもうとして爆発なんて場合も有りそうだし』
『めっちゃ怖いんですけど』
可能ならば『ゴブリンコマンダー』は最初に潰したい。が、何気に上位種でも耐久が高めで他のステータスも一部を除いて不足なく高い万能型なのだ。唯一ゴブリンの例に漏れず魔法防御力が低いくらいしか突ける弱点が無い。
『取り敢えず、最初に『コマンダー』の指示を潰せる様に『魅了』を頼む』
『分かった、気を付けてね』
『あぁ、そっちもな』
以上のやり取りを目と口の動きだけで済ませ、戦闘準備をする。少女と違って魔力の自然回復は無いし、技力は先に『ミミック』相手に消耗しているが『エナジードレイン』で補える。
愛用のウォーハンマーは頑丈さに関しては拘って作った物だ、その分重いが勢いを付ければかなりの威力になる。俺が優先するのは『コマンダー』、姿を見せたのなら『ウィザード』だ。
もし『コマンダー』が『魅了』で行動不能になったのならその時点で全力で攻撃、倒せずとも少しの間行動不能にすれば取り巻きを片付けて2対1の状況を作れる。『コマンダー』の最大の武器である指揮能力さえ奪えれば、少ししぶといゴブリンで済む。
効かなかったのなら少女が取り巻きを有る程度片付けるまで、俺が『コマンダー』を抑えて置く。少なくとも『コマンダー』が指揮を発揮出来ない状況を作り続ける、それが少女を無事にボスへ挑ませる上での条件だろう。
少女の心に残った棘を無くすため、道を開けて貰おう。
誤字報告を初めて貰えた。
お気に入りが増えたり誤字報告を貰えたり凄くハーメルンで活動してるっぽい、ありがとうございました。
主人公とヒロインの容姿ってしっかり書くべき?
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見せてみろよお前の癖。両方に要る。
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理想の男と女を妄想してるから要らネ。
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どんな女がタイプだい?