※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中
『看板娘』イベント継続中


一歩を踏み出す

「それと、アンタに急ぎで作って貰う必要が有りそうなのが2点」

「えっと、この『厄切』以外にも?」

「ええ、ちょっと……外交長が交渉をしくじった時の為の保険をね」

 

 外交長、俺の中では評価高くないんだけど。いや、今は防衛長よりかはマシかも知れない。

 

「何を作ればいいんですか?」

「簡易転移門と魔導マーカー」

「……は?」

「簡易転移門と魔導マーカーよ」

 

 よりにもよってまだ設計段階の物を作れと。いや、必要ならやるけれど何のために?

 

「何よ、作れないの?」

「理論提唱レベルの物を頼まれた身にもなって欲しいんですけど」

「理論提唱段階のカラムスの魔導剣を3時間で作った奴が何を言ってるのかしら?」

 

 アレは単純に形状記憶合金の形態変化を応用しただけなのだが。簡易転移門はまだ術式の構築段階だし、魔導マーカーもそうだ。

 

「正直、理論は出来てるんですよ」

「……あら、理論は有るのね」

「とは言え机上の空論レベルですよ、誰か術式に詳しい人と速やかに転移門の術式を見ないと先に進めません」

 

 現状、俺がいくら理論を立ち上げてもそれを訂正してくれるような専門家が居ないと魔導具として完成が出来ない。見本になる転移門の術式を確認して、機能を完全に絞る事がスタートラインだし。一応、隙間時間に研究して前世の腕時計に入れられるボタン電池サイズの極圧縮魔力コンデンサは作成出来ている。時間は掛かるが魔力を再充填して使用出来るのでそこそこ経済的になるだろう。研究を続ければ魔力を充填するのでは無く、周囲の魔力を必要分その都度集める方式も出来そうではある。しかし、魔力を消失させた場所等から脱出する際に機能しないのでやはり充填式がいいだろう。

 

「──って具合で下地は有るんですけど、中身の術式が」

「何で下地は出来てんのよ」

 

 俺の進捗を聞いた都市長は半眼で睨んできた。いや、術式(ソフト)が無くても(ハード)は作っとかないと即座に実験出来ないし。一応、この器も別の術式の稼働を確認出来たので簡易魔導具として使えるのも確認してたりする。

 

「一応、今のアンタに言う事じゃ無いんだろうけれどね」

「え、また何か厄介事ですか?」

厄介事仕掛人(トラブルメーカー)のアンタが言う事じゃ無いでしょうが。兎に角、アンタが前に提唱してた熱操作式の魔導具あるでしょ。アレ、研究所で試験してもらう手筈が整ったから。優秀な研究員が忖度無しに文句入れて来るわよ」

「喜んでいいのか分かんないですね」

 

 炊飯器に使う加熱方式を応用したあの実験用魔導具の話か、ならいいか。その場でミスリルを取り出して『クラフト』スキルを使用。4点を支える爪とその爪から台座に続く魔法術式『調速』と『維持』を刻み、台座には魔石を接続出来るラックを作る。術式の制御を視覚として確認出来る用に摘みと表示板を取り付けて完成だ。

 

「理論実証の為に設計しておいた試作品です。1週間後にはレポート欲しいですね」

「アンタはなんでこうポンポンと用意してんのよ」

 

 作成時間は5分くらいとお手軽な『クラフト』で悪いのだが、コレに対する不満点を出して貰えないと実験器具は完成しないだろう。

 

「とりあえずこの1台で少し様子見するけど、必要なら増産を頼むわね」

「分かりました」

「それじゃ、今日はもう帰りなさい……エテル達と抱き合って生きてる事を実感しなさいね」

 

 嫌なフラグに思える事を言わないで下さい。

 

 執務室から出ると、カラムスさんが護衛の為に立っていた。

 

「……終わったのか、ジュロン」

 

 都市長との話し合いの前にした会話から気不味さを感じてしまうが、カラムスさんには謝らなければならない。余裕が無いとはいえ、この人の厚意を無碍にしてしまったのだから。

 

「あの、カラムスさん……先程はすみませんでした」

「気にするな、子供に余裕が無い事など当たり前だ」

 

 俺の未熟さから酷い言葉を浴びせたのに、仕方の無い奴だと言った風に受け入れてくれる。長く生きて居るからこその寛容さかも知れないが、器が大き過ぎる。

 

「玄関まで送ろう」

 

 そう言ってくれたカラムスさんと並んで歩く、何か話題を出さないと気不味さが増すだろうと話題を探すが何も浮かばない。

 

「……やはり、我が主には勝てぬな」

 

 そんな俺に対して、先に言葉を発したカラムスさん。その声には何処か自嘲が混ざっているように聞こえた。

 

「お前が落ち込んで居る時に、私の声は届かないが我が主の声は届いた。やはり、親子には勝てぬな」

 

 カラムスさんの言葉に、少し悩む。俺にとって都市長は後見人でありクラフターとしての心構えを教えてくれた師にも当たる人だ、そんな俺達の関係をカラムスさんは親子のように見てくれている。それだけ尊重し合えていると思ってくれている有り難さと同時に、迷惑ばかり掛けてしまう事に悩む。

 

「我が主より、私の方が遥かに歳上だと言うのにまるで勝てぬ。人間として情けないが、騎士としては誇れる事だ」

「……俺にとってカラムスさんは、親というより姉なので」

「はっ、お前の十倍は生きている私に姉とはな。そう言った口説き文句で誑して来たのか?」

「色んな人に言われますけど、俺は別に口説いても誑してもいないですからね?」

「どうだかな」

 

 何処かからかいの混じった声音で言われる、勝てそうに無いので呻くだけだ。

 

「お前のクラフトだがな」

 

 切り出したカラムスさんの言葉に、心臓が痛む。さっきは落ち込んでいたとは言え、踏みにじるような言葉を吐いてしまったのだ。後悔の一つもする。

 

「私は、剣の一つをとっても相手に寄り添う素晴らしい作品達だと思う。お前は自覚が足りない……いや、誰も声を届けていないのかも知れない。だが覚えておいてくれ……作った物で多くの人々を支え救っている事を」

 

 視線を向けると、カラムスさんは腰に佩いた『フィエルテ』の柄を撫でていた。

 

「お前は私には贈る剣を『フィエルテ(誇り)』と名付けた、それは同時に私にとっても誇りになるんだ。誰かの誇りと願いを預けられる、騎士としての誇りに」

 

 真っ直ぐ俺の目を見るカラムスさん、その奥には強い光が宿っている。

 

「忘れないでくれ、タタラ。私達軍神様に仕える者は、弱き者達の願いや祈りに立ち上がる勇気を貰えるんだ。私の二百余年の生の中でも、沢山の人達から勇気を貰った。故に、私はこの都市で最強と謳われる強さに至れた……私は、いや人は一人では強くなれないんだ」

 

 互いに脚を止めて、向き合う。いつの間にか玄関の扉の前に着いていた。

 

「お前の失敗も後悔も、お前を苛むだろう。お前は一人では立ち上がれないかも知れない。だが、お前は一人じゃない。側にお前を愛する者達が居る、それはお前の人生で勝ち取ったお前自身の強さの一端だ」

 

 カラムスさんの言葉には力がこもっていた、これはきっと長い時の中で積み上げた彼女の根幹を支える物。

 

「一人で立ち上がれる事も強さだろう。だが、手を伸ばしてくれる誰かが居ることもまた別の強さだ。誇れ、タタラ・ジュロン……お前は強い、お前を支えてくれる沢山の人が居ることそれがお前の強さだ」

「……それなら、カラムスさんも俺を助けてくれますか?」

「当然だ。お前と、お前の作った『誇り(フィエルテ)』に誓って……お前の前に立ちはだかる困難を払ってやる」

 

 そう言って笑うカラムスさんの目は、何処までも強い意志を秘めていて格好良かった。

 

 

 カラムスさんに見送られ、帰路を歩く。途中、封鎖された商会区の前を通りその惨状を目視する。戦闘中や直後は分からなかったが、相当に荒れている。大小様々な瓦礫が有り、地面が何か所も抉れている。一部には黒い汚れが見て取れて、それが何なのかを察して心が痛くなる。

 この光景は俺が招いた物だ。都市長やカラムスさんに言われても、この事実だけは覆せない。いや、覆さない。例え責任が一端であろうとも、招いた事は事実なのだ。

 受け止めて、後悔も苦悩もする。それでもそれを引き連れて前へ進もう。誹られようと罵られようと構わない、失った信用は行動を積み重ねる姿を示し続けるしか無い。例え二度と信じて貰えなくても、それでも俺は前を見よう。

 そっとステータスを開いて、あのトリモドキとの戦いでコンプリートした『創製魔法』を外す。次に入れたスキルは『ゴーレムクラフト』だ。コレは原作のメインヒロインが所持しているスキルで、そのヒロインの代名詞となるスキルだ。読んで字のごとくゴーレムを生成するスキルだが、このゴーレムは様々な作り方や運用方が存在する。

 精製法は地面から生み出したり、素材を集めて作り上げたり……鎧や人形をゴーレム化したり。運用方としては軍団を作るか、一点に集中した究極の一を作り上げるか等だ。

 原作ヒロインは基本的に素材を集めて究極の一を作り上げるタイプで、このゴーレムは非常に硬い上に物理攻撃も高いのでタンクとサブアタッカーの何方でも運用が出来た。メインヒロインの一人であるシスター・カレンと役割が被りそうな物だが、向こうは向こうでスキルガン積みすると硬い強い回復持ちと万能性に手が付けられなくなる。此方は素材を食うが強化が比較的簡単で、撃破されても簡単に復活出来るのが有り難かった。

 俺がコレを選んだのは今回の襲撃時、手数の少なさが致命的だったからだ。今回も俺が迎撃している最中にゴーレムが救助活動を出来たなら、或いはその逆が出来ていれば死者や重篤者は少なかった筈だ。雛菊さんが壁に成ろうとした時、ゴーレムが居たならば壁にして雛菊さんは攻撃に集中して貰えた筈だ。練度は直ぐには上がらないが、始める事が肝心だ。

 先ずはこの復興で瓦礫の撤去で複数のゴーレムを使用して人海戦術を覚える、瓦礫の状態ではそのまま再利用も有りだが細かい仕分けもプログラミング出来るか試す必要が有る。

 必ず、明日1日で完全に復興させる。そう決意してその場を離れた。

 

「ただいま」

 

 家に着いて、帰宅の挨拶をする。すると家の奥からバタバタと騒がしい音が近付いてきた。

 

「タタラ!」

 

 真っ先に姿を見せたのはエテル、あのバタバタと言う音は何だったのかと聞きたくなる程の静音性でスッ飛んできて抱き着いてくる。

 

「遅かったけど、大丈夫だった!?」

 

 焦った表情と声で問い詰めてくるエテル、そんな相手をそっと抱き締める。反応が一瞬止まるが、そっと抱き返してきた。都市長の言う通りにしてみたが思いの外安心する、この腕の中の温もりを失わずに済んで本当に良かった。

 

「都市の中で騒が有ったと聞き、エテル達が傷を負って帰ってきたので心配しとったのに早速供給かありがとうございますなのじゃ!」

 

 四葩、箱推し鬼が隠せてねぇぞ。とは言え、何故かあの場に来なかった四葩も安心させる為に一度エテルを離して……離し、離れねぇ!?

 仕方ないので四葩を手招きして、エテルを挟むように抱き寄せる。サンドイッチされたエテルは苦しいかも知れんが、コレも四葩を安心させる為。卑怯とは言うまいな?

 

「……まったく、心配したのにお主らが変わらぬので気が抜けたのじゃ」

 

 そう言って離れる四葩、エテルは俺から離れるかと思ったら背中に抱き着いて来た。随分と甘えん坊状態である。

 

「四葩は大丈夫だったのか?」

「雛菊と一華の奴等めに迷子になるから家で待機と言い含められてのう、それなら一緒に連れて行けとも思ったが置いていかれたのじゃ」

「おぉう……」

 

 四葩の迷子因子がどう働くかは分からないから置いていくのは正解だと思うが、ちょっと可哀想に思えるな。

 

「……タタラ、此度の敵はどうじゃった?」

「強かった。間違いなく今まで戦った中で一番に」

 

 魔導鎧のリミッターを外し、更にアレだけ沢山の人達が一緒に戦ってそれでもダリアが来なかったら危なかったのだ。ダンジョンを潜ればアレに匹敵する程のボスも待ち構えている、位階はアレより下だが天使族と上位の悪魔族が同時に出るボス部屋も存在している。その時は恥も外聞も無く四葩に頼るのが最上かも知れない。

 

「全身光の刃で貫かれて、四肢のどれかを落とされそうになったもんで砲撃の弾を起爆させて自爆しようと思った時に雛菊さんが来て本当に助かったよ」

「それを聞いて妾が何も思わないと思っておるのか?」

 

 失敗談のように語ったら真顔の四葩にそう言われた。いや、確かに留守番を言い渡されて家に残された挙句、俺が死にかけた話とかされても反応出来ないわな。

 

「しかし、天使族とはのう……空を飛ばれたら高度によっては斬れぬな」

「ある程度なら届く『手鞠花』が異常なんだけどな」

 

 もっと言うなら視界内なら斬れるお師様の『空裂』が、か。四葩の『手鞠花』は『空裂』の技法を取り入れてるからこそ射程が伸びてるみたいな面も有るし。

 そんな会話をしながらリビングに入ると、ソファに座った一華が祈る様な格好をしていた。声を掛けようとしたら此方に気付き、涙を滲ませた笑顔で抱き着いてくる。抱き返して頭を撫でてやれば嬉しそうに尻尾が揺れる。助けられ心配を掛け、更には遅くに帰ったから大分追い詰めてしまったな。見回すと雛菊さんは居ない、もしかしたらバカの家に行ってるのかも知れない。

 

「お帰りなさいませ、マスター」

「ああ、ただいまダリア」

 

 俺に声を掛けてきたダリアに挨拶を返す、一華がエテルと同じ様に俺から離れないので手招きして近くに来てもらいその頭を撫でる。表情は変わらないのだが何処かドヤッとした雰囲気に感じる。

 

「いいタイミングで来てくれたな、本当に助かった」

「いいえ、マスターの危機に対して遅れて馳せ参じた事をお詫びします。それと……」

 

 言い淀んで取り出すのは追加武装の『ファイヤーワークス』、最後にスィーブを地面へ高速で叩き付けた影響でフレームが歪んでいる。まぁ、あんな使い方をしたなら当然か。

 

「申し訳ありません、試作品をこの様にして」

「むしろぶっつけ本番の実戦で最後迄正常に動かした事を誇れよダリア、お前が居なかったらアレを確保出来なかったからな」

 

 気持ちが沈むダリアの頭を乱暴に撫で、その髪を乱す。されるがままだが、少しだけダリアの雰囲気が明るくなった様に見える。

 

「それに、データを取ったらキチンと直すさ。出来ればレポート出してくれれば、それを反映して調整するしな」

「Yes my Master」

 

 壊れた『ファイヤーワークス』を修復する事を伝えれば、今度こそ雰囲気が明るくなる。出来れば『トリテレイア』のレポートも欲しいが、大丈夫かな?

 さて、空気が明るくなってきた状況だが全員と話す事が有る。会議を始めようか。

 

「今回の顛末、それとタチアの事を話したい」

「……あの天使族の人、チーちゃんの関係なの?」

「ああ、あの天使族はタチアの母親だ。そして、今回『ワールウィンド』に来た原因の一端は俺にも有る」

「……詳しく話すがよい、タタラ」

 

 四葩に促され、今回起きた事と地下牢で知った事などを説明していく。出来るだけ客観的な物言いにしたが、俺が気に病んだ事を察したエテルからは抱き締める力を強くされ四葩には回避不可な不運であると叱責された。引き摺りすぎるならお義母さんと当主代行に叱って貰うと迄言われ、何とか今は大丈夫だと必死に説得する。こう言う所が怖いな四葩。

 一華からは思い詰めるのなら自らの身体を使って鬱憤を晴らさせると言われ、更にエテルも乗って服を脱ごうとしたので慌てて今は大丈夫だと抑える。この二人に挟まれた場合……駄目だ四葩も巻き込んで大乱交潮吹き(スプラッシュ)棒姉妹(シスターズ)になる未来しか見えん。当主代行にぶっ殺される。性魔術の避妊魔法を取得してない俺だと十月十日後には最低二児の父だ、エテルだけは結婚式迄は回避するのが何となく分かる。

 そしてタチアの事に触れた際は、その時追えなかった事をエテルに叱られた。それと同時に心が限界だった事も察せられ、少し同情もされた。

 

「……母親が自らの住む都市を襲撃し少なくない民を殺しておれば、タチアのように生真面目な人間が耐えられるはずもない」

「チーちゃん、騎士になりたいって心の底から思えてたからね」

 

 全てを聞いた四葩とエテルが其々の心境を溢す。

 

「やっぱりさ、俺はタチアの夢を諦めたくない。騎士になりたいって夢を叶えさせてやりたいし、受勲する姿を見たい」

 

 俺の言葉を聞いて、エテルと四葩は頷く。一華は俺達の方針にそのまま従うつもりなのだろう、話の推移を見守っている。

 

「このままだと騎士学校の見習い達がやらかす乱痴気騒ぎを最後に、タチアはこの都市を出て行ってしまう可能性が有る」

「可能性は高いね」

「うむ。だが、どうやって繋ぎ止める?」

 

 俺の予想に理解を示すエテルと四葩、問題となるのはどうやってタチアを引き止めるか。

 

「それなら、ご主人がタチアの事を抱いてしまえばいいのではござらんか?」

 

 そんな時に横から一華がトンデモナイ事を言い出した。俺達が一華に視線を向けると、何故そんな考えになったのかを丁寧に説明してくれる。

 

「タチアはご主人を嫌っているのでは無く、むしろ愛して居るからこそ側に居れないという思考に陥っているでござる。それならいっそ、離れられないくらいにご主人に入れ込ませればいいでござるよ」

「んなアホな」

 

 発想が斜め横に飛び過ぎてて頭痛がする。しかし、エテルと四葩は違うらしい。エロで何とかなるってエロゲーかエロ漫画かよ……この世界エロゲーだったわ。

 

「……チーちゃん、タタラの事を考えてオナニーしてるって言ってたね」

「おい、此処で暴露してやんな」

「タチアの身体がタタラに未練を持っておるなら可能性は高くなるのう」

「やめてやれよ」

 

 このままだとタチアを抱く流れなのだが。流石にアレ過ぎるだろこの流れ。

 

「早速、明日タチアを探してタタラと交わるまで出られぬ部屋へ閉じ込めるかの?」

「拙者、結界術なら多少の覚えはある身。指定した条件を果たさねば出られぬ物など造作も無いでござる」

「私も、性魔術でそういった封印術有るから手伝えるよ」

「ならば、妾はタチアを捕まえ部屋へ放り込む役を果たすかの」

「何なんだこのチームワーク……」

 

 いやにノリノリなのだがこの面子。と言うか、四葩と一華はそれでいいのか?

 

「あの、明日はちょっと無理だぞ」

 

 その前に言い含める事が有るから、頭を冷やして貰おう。

 

「え、何で?」

「明日は都市長から商店区の復興を言い渡されてる、半日で終わるけどちょっと集中してやりたい」

「……タタラ以外にも人は居るのかのう?」

「何を言ってんだ四葩、被害の規模から俺一人で十分だぞ」

「意味不明でござるな……」

 

 疑問に答えると一華が頭を抱えた。対して四葩は以前俺が陽出の職人さん達と1時間半で檜風呂の区画を作ったのを見ているので納得した雰囲気だ。

 

「一応、明日1日は復興作業で俺の予定は潰れる。明日納品の品物が有るんだが、シャッターにお知らせを貼っ付けて向かう予定だ」

「私達も何かお手伝い出来ない?」

「都市長からは俺一人って指定が入ってるから復興作業について出来る事は無いな、自警団の人と相談して炊き出し辺りは出来るかも知れないけれど……倒壊した家って2軒とかだから危急で炊き出しが必要って訳では無さそうだし」

「家2軒が1日も掛からず終わるのは意味が分からんのう……」

「正確には倒壊した家屋が2軒ってだけで、露店は12軒有るし壁が破損した家が2軒に窓が割れた家が8軒だったな」

「どちらにせよ普通は半日で終わる作業では無いでござるな」

 

 建築関係はまともに触れて来なかったが、基本的に万能な『クラフト』スキルを使えば出来るだろ。もう開き直って『普通は出来ない』とか言われたら『俺は出来る』と返そうかな。

 

 その後は女子組がタチアの捕まえ方を相談して、会議は解散した。分身した一華と高速機動状態のエテルが追い込んで四葩が『概念鑑定』で動きを先読みしながら捕まえるとか、捕まえるんじゃなく仕留めるのが目的だろうかと疑問が湧く。

 

 一人工房に入り、明日に向けて作業を開始する。作るのはゴーレムで、スキルである『ゴーレムクラフト』の感覚を掴む為だ。

 ゲーム時代だと初期は『ストーンゴーレム』だけしか作れないのだが、カンストした『クラフト』スキルの影響か俺は初期から上位のゴーレムを作成出来そうである……いやもしかしてコレも俺がバグってるせいか?

 在庫の多いミスリルインゴット13個と『錬金術師の卵』を取り出す。ゴーレムの作成には素体の材料と核になるコアの素材が必要になる。素体の材料はかなり幅広く、金属だけでなくモンスターの素材も使える。ドラゴンの素材を使った最上位の『ドラゴンゴーレム』なんてのも作れ、その性能は味方ユニットでも五指に入る程に高い。尤も、一体作る素材要求から考えるとドラゴン装備を作った方が手軽に味方を強化出来たりするのだが。

 今回俺が作ろうとしてるのは『ミスリルゴーレム』でコアは『錬金術師の卵』と言う、下手したらダリアが増えかねない組み合わせだ。まぁ、ダリアは機巧乙女であり『卵』の性能を強化出来たからこその結果なのでアレほどにはならないと思うが。

 早速ミスリルインゴットを鍛冶場で鍛造し、一つの塊にする。『クラフト』と『ゴーレムクラフト』の両方のスキルを併用して、鍛造ミスリルを人の形に形成する。何やら『クラフト』スキルが変な作用をしたらしく、人型は人型だがなんというかこう……デフォルメされたそれだ。全長130cm、重量1.3kg、3.5頭身程のデフォルメされた俺が其処に出来た。いや、何で?

 スキルでゴーレム化され、その額にゴーレムの証である文字が刻まれるが前髪で隠れてしまう。ミスリル特有の清らかな銀色をした素体が瞼を開く、何処か半眼っぽいがくりっとした目が俺を見る。あれ、ゴーレムってこんなだったか?

 

「たー!」

「え、喋った?」

 

 此方に向けて片手を上げて、単音だが声を発した。一切指示出して無いのにいきなり動いて、声帯も無いのに声を発するとかめっちゃ怖いんですけど。

 片手を上げたまま暫し硬直した俺を見ていたゴーレムは、反応が無いことを疑問に思ったのか小首を傾げてから俺を揺すってくる。何だか動きが子供みたいだな。

 

「あ、ああ……悪い大丈夫だ。俺の言葉は分かるか?」

「たー!」

 

 もしかして、このゴーレムは声は出せても『た』しか発音出来ないのかも知れないな。それでも『分かる』と意味が伝わってくる。

 

「コレから色んな事をサポートして欲しくて、俺はお前を作ったんだ。コレからよろしくな?」

「らー!」

 

 どうやら『た』と『ら』が発音出来るらしい。その後も小型の『ミスリルゴーレム』を作る。そちらはインゴット5個とゴーレム撃破時のレア素材『ゴーレムコア』を使った、何故か出来上がるゴーレム全てがデフォルメされた俺になり漏れなく『た』と『ら』の発音をする。

 

「たー!」

『たー!!』

「らー!」

『らー!!』

 

 何やら最初に作った『ミスリルゴーレム』がリーダーらしく、後から作った『ミスリルゴーレム』達を統括し始めた。よく見ると最初の『ミスリルゴーレム』は頭にアンテナと呼べそうな巨大なアホ毛が出来ていて、まるでリーダー機みたいな貫禄が出てる。いや、ただでさえデカいから見分けは付くんだが。

 

「しかし、少し使い過ぎたが?」

 

 リーダーゴーレムに1.3kg、随伴ゴーレム一体辺りに500gを99体の計100体で50kg以上のミスリルを使用してしまった。後で怒られるだろうな。

 

「っと、そう言えば」

 

 法務長の鎧用ハンガーを作り忘れていたので作成する。甲冑の重さが20kg有るので、ハンガーは安定させる為に60kgで作る。鉄と魔石を用意して魔鉄化、土台に30kg使い残りの30kgで支柱とアームを作る。アームには『反重力術式』を刻み、掴んだ甲冑の重さを打ち消す機能を搭載。家庭用に使えるアンビリカルケーブルと、魔石を内蔵してバッテリーとして機能する構造を併用。トドメに『鑑定』スキルで甲冑の状態を確認し、空間ステータスを表示する機能を付けて完成。気に入って貰えるだろうか?

 この二つが出来たのならと考えて、法務長から預かっていた鉄と魔石を魔鉄化させた後に2kg分を甲冑3kgをハンガーとして1/6サイズで作る。甲冑側には小型の魔力コンデンサー、ハンガー側にはアンビリカルケーブルと魔力の充填機能を付ける。更にハンガーには『念話』と甲冑側には『感応』の術式を刻み、この時代では珍しいラジコンの完成である。素材をちょろまかして何を作ってるのかと怒られるかも知れないが、法務長から預かった素材は全て使って当人達に渡す。気に入られなければ返金するつもりでもある……むしろ、返金する為に此等を作ったまで有るんだが。

 此処まで作業を終わらせると、『ミスリルゴーレム』達が其々に錆止めやら何やらの仕上げ作業を開始していく。軽く『鑑定』してみれば、小さい方には『クラフトⅠ』リーダーには『クラフトⅢ』が付いてた。どういう事なの?

 

 作業を終えて全てのゴーレムをインベントリにしまう。珍しく1人での入浴を終えて自室に戻ると暫くしてエテルが来た、何の用件かを確認しようとして気付いたら抱きしめて口吻を交わしていた。逃さないように後頭部に手を添え腰を抱く。エテルからは両腕を首に回され、翼が俺を包んでいる。

 そのままベッドへ押し倒し、乱暴に下を脱がせる。愛液で潤った秘裂を見て、ガチガチに勃起した愚息を手間取りつつ取り出して挿入する。熱く蠢く腟内の感触を覚えた瞬間に射精してしまうが、まったく硬度が衰えない愚息をそのまま動かした。

 どうも今回死にかけた事から、本能が子孫を残そうと暴走しているらしい。エテルもそうなのか、俺の腰に脚を回して逃さないと言わんばかりにホールドしている。コレ、下手したらエテルも無意識に避妊魔法を切ってるかも知れないな。俺が体重を掛けてエテルの子宮口に先端をねじ込んで一番深い所へ射精したら、今度は逆転されて騎乗位で搾り取られる。子作りと言うか、交尾みたいな感じで互いが互いを貪り合う。

 言葉も交わさずにキスを交わし、ひたすら腰を打ち付ける俺達は夜遅くまで互いを感じ続けた。

 

 

 朝、俺は日が昇りきる前に目を覚ます。ベッドで寝ているエテルを残してシャワーを浴び、朝食を取らずに家を出る。目指すは商業区、彼処は朝5時頃から開いている。俺は家を建てる上での素材を持ち合わせていないので、先に買っておく必要が有る。

 昔、開店間もない頃は何度も利用したのだがその度に揶揄われて苦手意識を持ってしまい今まで行かなかった。しかし、今回はそうは言ってられない。速やかに復興する為にはそんな事を言ってられないのだ。

 早々に到着して、受付へ。流石に相場も素材の数もまともに下調べしてないが、金額にして一億くらいの数を買えばいいだろう。

 

「すみません、素材を買いたいのですが」

 

 受付の人へ声を掛けると、何処か眠そうな顔を無理やり笑顔にして対応してくれる。うん、流石に夜勤の人だろうしお疲れ様と言いたい。

 

「いらっしゃいませ、どの様な物をお求めですか?」

「家屋2軒、家屋の壁2軒、家屋の窓8軒、露店12軒分の素材が欲しいんですが」

 

 俺の言葉を聞いて、受付の人が固まる。訝しげな表情になり言葉を紡いできた。

 

「……何を目的としてその様な?」

「復興ですが」

 

 俺の言葉を聞いて益々表情が険しくなる受付の人。さて、何を言われるやら。

 

「失礼ですが、本当に復興が目的ですか?」

「ええ、そうですが」

「……何処かのご所属ですか?」

「個人商店ですね、営業許可書が必要ですか?」

「いえ、結構です」

 

 転売を疑われたか?

 それはそれとして、さっさと始めたいから売ってほしい。この位なら、ギルドの在庫的には問題ない筈だ。

 

「申し訳ございませんが、お売り出来ません」

「何故でしょうか?」

 

 まぁ、何となく分かるが、

 

「個人の商店でコレだけの数の素材を買ったとして、復興に尽力出来るかは疑問になります。より高額に他者へ売りつける可能性も有りますので」

 

 まぁ、疑うよな昨日の今日だし。しかし、ちょっと俺も引けないのだ。

 

「指示をされてるんで、俺も引けません。売って下さい」

「何方からのでしょうか?」

「都市長からです」

 

 まぁ、そこら辺の書面は無いんだが。都市長の事だから代表の商会長へは手紙を出してると思うけど。

 

「それを証明する物は?」

「残念ながら受け取ってはいませんね」

「でしたらお引き取りを」

「出来ません、売って下さい」

 

 俺の反応に嫌悪感の見える表情を浮かべる受付の人。ある程度権限があるかも知れないが、上に確認するべきだと思うんだがな。

 

「貴方も仕事なのは理解します、売るべきか否かは上に確認して下さい」

「上とは?」

「商会長」

「お忙しいですし必要ありません、お引き取りを」

 

 悪いんだけど、こっちも引けないんだよな。都市長に今から書面出して貰おうにも、多分まだ寝てるか徹夜で始末書とか片付けてるだろうから……仕方ないか。

 

「はいはい、どないしたんですぅ?」

 

 と、そんな淀み始めた空気の中明るそうな声が響く。妙なイントネーションをした喋り口で出て来たのは、何度か顔合わせした事の有る男性。

 

「あ、商会長! 此方の方が、その……」

「ほほぃ、どない……んん?」

 

 商人としては着飾ってはいないが、布や身に付けている小物は全て最高級品質。相手の目利きを試す為に敢えて細部に拘る隙の無さ。糸目で細身、何処か狐とかヘビを思わせる雰囲気の男性は俺を見て驚いた雰囲気を出していた。

 

「お久しぶりですね、商会長」

「タタラはんじゃないの、どなんしたの?」

 

 この『ワールウィンド』の長の一人、流通を司る商会長その人だった。




『たたらゴーレム・リーダー』
 体力   800
 魔力   100
 技力   100
 物理攻撃 80
 物理防御 80
 魔法攻撃 0
 魔法防御 80
 速力   40
 運    10
 移動力  3
 特殊能力『指揮能力』『クラフトⅢ』『魔力充填』『体力回復Ⅴ』『魔力回復Ⅴ』『技力回復Ⅴ』

 タタラが初めて作ったゴーレム。見た目はデフォルメされた『黒鐵』装備タタラで頭にリーダーらしいアホ毛アンテナが生えている。他のゴーレムと違い、単音だけだが喋る。『た』と『ら』の発音しか出来ないが、イントネーションで代々言いたいことは分かる。リーダーらしく指揮能力を持ち、下のゴーレム達を充填出来る、

『たたらゴーレム』
 体力   500
 魔力   0
 技力   0
 物理攻撃 30
 物理防御 50
 魔法攻撃 0
 魔法防御 50
 速力   35
 運    10
 移動力  3
 特殊能力『クラフトⅠ』

 タタラが量産した99体のミスリルゴーレム。リーダーに比べて使っているミスリルが小さく、核が『ゴーレムコア』なので性能は低め。魔力で動いているが活動限界が有り、魔力切れが起きた場合『たたらリーダー』が充填する事で再起動が可能。充填中は手を繋ぐので、傍から見ていると微笑ましい光景になる。

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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