既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント継続中
※なんちゃって方言がでます、ご注意下さい。
商会長、この『ワールウィンド』に於いて商売や流通に関する最高責任者。少し離れた所の生まれらしく、喋り方に独特な癖が有りぱっと見結構胡散臭い表情をする。しかし、事商売関係に関しては誠実である。
俺がホイホイとトリモチを普及させたいと都市長に相談した時に紹介してくれたのが初めての出会いで、商品の説明を受けた時に結構な販売金額と特許料を提示された。正直、売上金よりも普及を最優先にしたくて結構強めの圧を掛けてお願いしたら青褪めた表情で頷いて貰えた。俺の提示した特許料は一律年500万、そして売上の単価は120前後だ。原価がだいたい100になるので一つ辺り20の黒字として提示した所、商会長は少し悩んで了承。そこから売上と普及率、更には継続した売上の見込みによって次に会った時は商会長から抱き着かれて感謝された。
そこからも俺のドライヤーの傷薬塗布装置の販売を提携しているクラフターにぶん投げる事を許可すれば、翌年には一般で見かけるくらいにはしていた。
敏腕経営者なのかと思えば、俺の両親が死んだ大討伐の遺族に対して身銭を切って義援金を募ったりしていて結構なお人好しである。多分、今回も何かやるんじゃなかろうか。
「タタラはん、都市長から復興する人間が一人だけで他には復興に関する素材売れんの知ってる?」
「いえ、初めて聞きましたけど。でも、それなら売ってもらって大丈夫だと思いますよ」
「……もしかして、復興って」
「ええ、俺が都市長から命じられました」
商会長から売れない理由を話されたが、それって俺がやるから売るなって話なんだよな。
「昨日、あの天使族と戦闘した後で都市長と相談したい事が有るので顔を合わせたんですよ。その時に『復興は一人でやれ』と」
「……いや、タタラはんは魔導具専門なんやんの?」
「主にやってるのがそれってだけで、基本的に何でもやれますよ。今回のも半日で終わると思いますし」
「タタラはん、本当に人間?」
「混じり物無しの人間ですよ」
俺の言葉を聞いて、商会長は大いに悩んでいる様子だ。
「……タタラはん、本当にやれん?」
「やりますよ、コレでも俺は都市長から後継を認められてますから」
糸目の奥からとても強い視線を向けられ、俺は真っ直ぐ見つめ返して答える。暫しじっと俺を見て、商会長は頷いた。
「うん、本当に出来るって面構えんね。ええよ、ボクが責任持って対応すんよ」
何処か明るい雰囲気を出してそう言ってくれる商会長、胸を叩いて任せろと意思を見せてくれて安堵の息を漏らしてしまった。
「何を安心してんの?」
「いえ、買えないと困るので……このままだと都市長を起こさなきゃならなそうだったから少し安心しちゃって」
「あー……都市長から許可書みたいん貰ってないんね、そりゃ話が通じんよ」
「ええ、二人とも疲れてたのか初歩的なミスをしてしまいました」
「片や死にかけの後、片や統括責任……これくらいの失敗は仕方なんね」
そんなやり取りをする俺達を見た受付さんは、顔を青くしながら商会長に話しかける。
「あの、商会長……此方の方は?」
「ああ、こん人はタタラ・ジュロンはん言ってね。次の工匠長が決まってんよ。今はまだ学生はん故に継げんね、ただこの街一番のクラフターはんよ」
商会長の説明で血の気が引いていくのが見ていて分かる受付さん、まぁ学生の身で次期工匠長なんて分からないよな。
「あの、その……大変申し訳有りませんでした!」
「ああ、いえ。此方も書面の一つも持ってなかったので気にしないで下さい」
それは明確に俺と都市長のミスだ、商会長に伝えたからと言ってそれがそのまま下に伝わるかと言えばそうとも言えない。第一、都市長の手紙の話を聞くに誰が対応するかも伝わって無いっぽいし。
「では商会長、素材を……」
「うん、用意しとんよ。それじゃ行こか」
「……はい?」
行こうかって、もしや商会長が来るのか?
「昨日んうちに現場見て見積もり出してん、ボクも行こ思って準備しとたんよ。商会長として、素材を無駄に使われんもややからね」
その言葉を聞いて、責任感が強い人だなって思った。
「それじゃ、行きましょうか。半日で直すんですし、早い方がいいですよね」
「そうね、家無くなってん人が直ぐに住める家用意してあげんと可哀想だしね」
そうやって言葉を交わして、速やかに現場へ移動する。受付さんへ商会長が留守にする旨を伝えてくれと言い残したのを見て、この受付さんが実は商会長の秘書なのだと気付いた。
「本当、ごめんねタタラはん。あの子、仕事熱心なだけんよ」
「え、ああ。全く怒ってないんで大丈夫ですよ」
「……本当に怒って無いんね」
少し歩いた時に商会長から話し掛けられて、何のことかと思ったらあの秘書さんについてらしい。怒って無いのは本当だ、ただちょっと作業に入る時間が遅れそうなのは苛ついたが。
「正直、ほんの少し苛つきはしました。早く復興したいのにって」
「ま、それは仕方ないんね。でもよく怒鳴ったりせんで都市長に頼ろって発想になんね?」
「悪いのは俺達ですからね」
そう、色んな意味で悪いのは俺と防衛長だ。
「悪いと言えば、防衛長の話は知っとん?」
「……もしかして、天使族を招いたってやつですか?」
俺の言葉に頷く商会長、長を任じる人達全員に伝わってそうだなコレ。
「本当、何かの用が有ったんだろうけどあの場で言うのがいかんね。工匠長と同じ、都市内で最高の戦闘力か探索者が任じられんいわば象徴の長やんか防衛長。それがあの場で、自分が原因て言ったら責められんは当然なんよ」
商会長が責める言葉を放つが、その内容は天使族を呼び込んだ事ではなくその事実をあの場で言った事を責めている。
「商会長はあの場で発言したことを責めるんですか?」
「そりゃ、呼んだ事と今回の悲劇が密接な関わりあるから責める理由になるとは思んよ?」
俺の質問に、商会長はそう前置きをして言葉を続ける。
「でも呼んだ理由を知らんて責めんは違って思んよ。コレ、あくまでもボクん考えけどね。あの防衛長が、何の理由も無しにあんなイカれん呼ぶ思えんよ」
そう言ってくれる商会長を前に少し悩み、原因その他を教える決断をする。タチアの名前や出自をぼかしつつ、それでも天使族とのハーフをこの都市に認めさせる為に天使族から祝福を受けた体で振る舞う必要が有ったこと。伝手を持たない俺に対して、防衛長があの天使族を招いて解決しようとした事。手紙に書いてても無視されてあのダイナミック不正入国に繋がった事を教える。
「……今回の原因、やっぱ防衛長やん」
「いえ、俺が頼ったからで……」
「ちゃうん、話聞くにタタラはん都市長と聖人さまにも相談しとんね。そんな中で手を上げた防衛長が招いたんがアレ、当然タタラはんは人格も性格も知らんてそんな中で呼ばれたんな。どうタタラはんが責任取れんの、ソレ。しかも、そうやって呼び出されたん知らんて大怪我負いながら戦って止めんやん。タタラはんはその場に於いて本当の英雄やんそんなん」
商会長は防衛長の判断ミスだと明確に言う。都市長も同じ結論だが、全く場を知らない相手からもこう言われる物なのか。
「それに、タタラはん義援金とか銭出そうとしとんね?」
「え、何で分かったんですか?」
「やっぱね、タタラはん苦しんでんて見て分かんよ。タタラはん、戦って傷付いた被害者なんそれでも助けられんかった人ん悼んでん。タタラはんは銭貰う側なん、それ崩しちゃダメなんよ。要らんにしても、一度受け取ってから他の人ん渡さんとね」
そうか、一度受け取ってからより困ってる誰かに渡せばいいのか。
「タタラはんがする復興が補償や補填になんね、コレやったらタタラはんはもう悩むん禁止な?」
「うぐ……はい、気を付けます」
「分かってんね、良かんよ」
何処か茶目っ気を感じさせる商会長の笑顔に、勝てないと感じて苦笑いする。そうして、商店区に着いた。明るくなり始めた空の下、改めて見るこの場所は荒れている。少し、胸が痛んだ。
「……改めて見るん、酷な」
「ええ、悲しい気持ちになります」
誰かの家族がこの場で亡くなってしまった、その事実が胸を締め付ける。少し黙祷、一分程目を閉じて死者の安寧を願うと誰かが俺の頭を撫でる感覚がした。目を開いても誰もいなかったが、何となく迷わず苦しまず召される事が保証されたように思う。
「早速始めましょう、最初は瓦礫を撤去します」
「……多いんね、大丈夫ん?」
「ええ、大丈夫です。そのために昨日作って来たんで」
「……作ったって、何ね?」
商会長の言葉に答えるように、俺はインベントリからゴーレムを呼び出す。するとリーダーを筆頭にして、次々とゴーレム達が出てくる。その光景を見ていた商会長は段々と口元を引き攣らせ、最後の一体まで飛び出し整列した様を見て乾いた笑い声を上げる。
「お前達、コレからこの広場を復興していく」
『たー!』
「手始めに瓦礫の撤去を行う。大小様々な大きさが有る、難しい時は一体で当たるな、仲間を頼れ」
『たー!』
「撤去した瓦礫は材料や重要度により仕分けだ、分かったか?」
『たー!』
「それでは作業を開始する、ご安全に!」
『らー!!』
元気な挨拶を返して一斉に散っていくゴーレム達、その光景に商会長が俺に声を掛けてきた。
「タタラはん、ゴーレム作れたん?」
「ええ、昨日から」
「昨日!?」
商会長の質問に答えたら素っ頓狂な声を上げられた。
「他の人は知らないですけど、俺には出来たんですよね」
「……ダメ、驚きすぎん何ん言えない」
そんな商会長に苦笑いをしつつ、俺は俺で作業に入る。小さいゴーレム達が露店の瓦礫の撤去を優先しているので、俺は家屋の瓦礫を撤去する。完全に壊れてしまった家具や、思い出の品と思われる彼是。中には子供の成長を刻んだ木の縁なども有り、それらを丁寧に仕分けする。作業開始から1時間程で2軒分の瓦礫を仕分け終わる。小さいゴーレム達も殆ど作業を終えている。中には屋台の無事だったタレや食材何かも丁寧に仕分けているゴーレムも居て、中々に頭が良いみたいだ。
そんな中、一体のゴーレムが商会長に近付いてくる。その手には沢山の何かが有った。
「たー」
「うん、ボクなん?」
「たー!」
商会長が身を屈めてその個体に問いかけると、ゴーレムは手に持っていた沢山の何かを差し出した。
「……コレ」
ソレは子供が描いた絵だったり、アクセサリーだったり様々だ。しかし、それが何かは分かった。遺品だ、亡くなった人達が大切にしていただろう物をゴーレム達は集めて商会長へ預けようとしているのだ。
「たー!」
「……ええ、分かんね。必ず……必ず、遺族の下ん届けんね」
「らー!!」
商会長の言葉に嬉しそうな声を上げたゴーレムは、再び復興作業へと戻る。商会長は預かった遺品を強く抱きしめて、インベントリにしまう。
「……ありがとね、タタラはん」
「えっと、お礼を言われる理由が分からないんですけど」
「こんなやさしい子たち作ってくれんね、そのお礼」
そんな事を言われるが、俺は意図していない。あの性質はどこから来たのかよく分からないのだが。
「タタラはん、撤去終わったら言ってな。素材と、今回被害に遭った家の設計図有るんね」
「はい、それでは早速家2軒分のをお願いします」
「早すぎん?」
商会長に家屋2軒分の瓦礫撤去が済んだ事を伝えれば、雷光の如きツッコミが入る。早すぎと言われても、瓦礫を仕分けしてたからコレでも時間を掛けたくらいだ。
商会長を倒壊した家屋の跡地へ連れていくと、見事に土台だけ残った状況に戦慄された。早速素材を出して貰うと、煉瓦とコンクリートが用意されて居る。早速コンクリート素材の中に砕いた魔石を混ぜ込み、魔導式コンクリートにしつつ複数のゴーレムを呼ぶ。支柱を押さえさせたり、煉瓦を積み上げるのを手伝わせつつ固定に『クラフト』を使わせたりと作業のアシストをすると作業効率が劇的に上がる。どうも俺が作ったからか、俺の考え方を先読みするらしく途中から俺の指示なしで先回りで準備を終えてくれている。結果、1軒再建するまでの時間が2時間程で終わった。
「しまったな、見積もり間違えた」
「んん、何ぃ間違えたんタタラはん?」
「半日で終わるって言ったけど6時間で終わる流れだコレ」
ゴーレム達のおかげで作業のスピードが上がって想定より早く終わるな、何だか檜風呂を作る時に陽出國の職人さん達と一緒に作業した時を思い出して楽しい。
「……タタラはん、ボクと建築会社やる気ない?」
「今の店で満足してるんでお断りします。国家事業の時とか呼んでくださいね、喜んで協力しますから」
「ダメねコレ、タタラはんを儲けさせる考えが天然で潰されるん」
むしろ儲け云々は陽出國でヒドイ事になってるからもういいです、店も半ば道楽になるだろうし。
「ところで気になったんね、この傷だらけの縁は何なね?」
「多分、此処に住んでた人の子供の成長記録ですよ。身長測った時に傷を入れてるやつです」
「……うん、ちゃんと元に戻してんね」
俺の言葉を聞いて、商会長は縁の傷を優しく撫でた。この家の住人が、家族を亡くしてないことを願うけれど……もしそうでないなら、少しでも思い出が戻せていたのなら嬉しい。
露店はゴーレム達が複数で次々に作り上げていく、中には広場の床を直してるゴーレム達も居てどんどん綺麗になっていく。
「……これ、内政長が色々言うかも知れんね」
「え、何でですか?」
「区画整備は内政ん世界なんね、商会側で勝手にやるんは怒案件なん」
「あ、ごめんなさい」
「ええんね、だって皆が笑顔になんね。タタラはんじゃなくてボクが怒られるくらい笑って流すんね」
なんというか、この性格で商売出来るのだろうか?
「それにタタラはん、見てよあの露店の並び。事件が起こる前と大して変わんなんね。居なった人もいるんね、それでもまた前を向ける……この風景はその証なんね」
少し寂しそうなのは、この事件で亡くなった10人と顔見知りだからだろうか。商会長として、出店の許可を出していたから俺よりも寂しいのかも知れない。
家屋の壁は罅を埋めるよりも一度取り壊して作り直す方が後々の不具合が少なそうなので、一度壁を壊す。その後、壁の素材に魔石を混ぜて『クラフト』で再構築。ゴーレム達に壁を押さえて貰いながら『クラフト』で繋げる。『鑑定』を使い隙間が無い事を確認して2軒分の壁修復は完了する。
何やら商会長が意味不明な物を見る目を向けて来たが、結果として上手く行ったから良いと思うのだが。アフターケアとしてハウスクリーニングして、諸々綺麗にしたし。
窓8軒分は流れ作業に近かった。前世の祖国で主流だったアルミサッシは実は断熱性が良くないらしいのだが、他国で活躍していた樹脂製サッシは作れない。なのでオーク材で窓枠を作り魔石を混ぜた防腐剤を塗り、断熱性を高めた物を使う。木製だがこの魔石を混ぜた防腐剤のおかげで下手な金属防具より防御力が上なので、防犯効果も高めだったりする。
露店もゴーレム達が修復を終えていて、後は店の人達に聞いて塗装を施すだけになっている。所要時間はだいたい5時間半、予想した6時間より更に短縮してしまった。
「後は家具とかも作るべきですよね」
「そこまでは必要無いんね、ボクらの復興支援で賄うんね」
「いいんですかね、それで」
「いいんよ、ボクらにも格好付けさせてんね」
商会長が笑顔でそう言ってくれる。いい人なんだけど、何で笑顔が胡散臭く見えてしまうのだろう。めっちゃいい人なのに。
「タタラはんは都市長のとこで報告してな、ボクはコレから仮設に避難しとん人達にお話しにいくんね」
「分かりました、後をよろしくお願いします」
「まかせんね!」
勢い良く手を突き出して来たので、握手する。商会長は嬉しそうに手を上下にブンブン振って、それから俺達は別れた。
ゴーレム達をインベントリにしまっていくが、リーダーだけは外に残って俺の横を歩くつもりらしい。ちょこちょこというかテチテチというか、もの凄くあざとい感じの足音を立てて俺の後ろを着いてくる。移動力の差も有るが、脚の長さからやや置いてけぼりになりかけては途中脚を止めて追いつくのを待つ。
周囲からはなんだあれみたいな声が聞こえてくるが、途中途中で女性の声で可愛いとも聞こえる。可愛いのか、俺の似姿だぞ?
中枢に付き、受付で都市長への面会を依頼する。受付の人は俺を知っているらしく、直ぐに取り次ぐように言ってくれた。ただ、視線は俺の横のゴーレムに向けられていたが。
「ジュロン、待たせた……な?」
カラムスさんが迎えに来てくれたのだが、視線は俺の横のゴーレムに向いている。そんなに気になる?
「昨日、復興作業で人手が欲しいので作ったゴーレムです」
「たー!」
『喋った!?』
ゴーレムを紹介すると、ゴーレムは挨拶と言わんばかりに声を出す。その様子にカラムスさんと背後から受付の人が思わずと言った具合に驚きの声を上げる。
「何故か昨日作った時から喋るんですよね、コイツら。まぁ『た』と『ら』しか発音出来ないみたいなんですが」
「らー!」
「そ、そうか……お前が作る物は不思議だな」
カラムスさん、顔が引き攣ってますよ。
「……ん?」
と、何やら疑問を持った様子のカラムスさん。
「コイツ“ら”?」
「あ、ええ」
カラムスさんの疑問に答えるためにインベントリから何体かのゴーレムを呼び出す、ちょこちょこと3体程出て来るゴーレムを見て軽く身を引くカラムスさん。
「このデカいのをリーダーに、小型の99体を指揮して俺をサポートしてくれます」
「然りげ無く数がおかしくないか?」
計100体のゴーレム、実は昨日作り終えた時点で『ゴーレムクラフト』スキルがランクⅢまで上がってたりする。上がり方が『錬金術Ⅴ』の時に『錬金術師の卵』作った瞬間にコンプリートした時の感じに似ている気がする。
そのまま都市長の執務室へ、カラムスさんのノックの後に入室すると大量に積まれた書類に押印したり署名したりする都市長が居た。
「失礼します」
「あら、タタラいらっしゃい。今度は何をやらかしたの?」
挨拶をしたら早速そんなヒドイことを言われた。なお、都市長の視線は俺の脇に居るゴーレムへ向けられていた。
「やらかしたと言うか、完了報告ですね。倒壊した家屋2軒、壁を破損させた家屋2軒、窓の破損8軒、露店12軒の復興作業完了です」
「……半日掛かるって言ってなかった?」
「人手の足しになればとこのゴーレム達を作ったら思いの外優秀でして、作業時間が半分になりましたね」
都市長は俺の言葉を聞いてからゴーレムに視線を向ける。少しして、頭を押さえて空を仰いだ。
「何でゴーレムが『クラフト』スキル持ってんのよ……」
「俺も分かりません」
ふと視線を向けると、俺の所へ手紙を運んでくる鳥型ゴーレムが居た。口をあんぐりと開けていて、コイツ本当に感情豊かだなと改めて思う。
そんな俺達を無視して、小さなゴーレム達は都市長の執務机に群がる。何事かと思えば、都市長の処理が終わった書類をまとめたり未分類の書類をどうやら期日毎や重要度毎に仕分けしているらしい。それらが終われば執務室の片付けや掃除を開始する個体と、都市長にお茶を入れる個体で別れた。お前ら、何で何も指示してないのにそんな事できんの?
「……タタラ、この子たち何体か譲ってくれないかしら」
「魔力の充填がこのリーダーにしか出来ないんで止まっちゃいますよ?」
一通り終えた個体がリーダーに近寄って手を繋ぐ。リーダーから魔力が送られて充填し、終わったら俺のインベントリに帰っていく……何で俺のインベントリを勝手に開けるんだ?
と、そこに別の鳥型ゴーレムが入ってくる。脚に括られた手紙を都市長が受取り目を通すと、溜め息を吐いた。
「商会長から復興作業終了確認の手紙が来たわ、タタラの名前で作業者が書かれてるから確かにアンタが全部やったみたいね」
「ええ、資材は全て商会長が提供してくれました。御礼の手紙を書いたほうが良いですよね?」
「必要無いわ、その場で握手とかしたんでしょ?」
「え、何で分かるんです?」
「アンタが近くに居ることを前提で書かれてて、御礼について口にしたらいらないと伝えるように書いて有るのよ」
商会長、筆が早すぎませんかね。
「とりあえず、アンタの補償と補填はコレで終わり。家を無くした人達を1日で帰すのだからこれ以上は許さないわよ」
「……はい、分かりました」
賠償や補償でお金入ったら寄付しよう……考えが読まれたら詰むけど。
「その、都市長に聞きたいことが有るんですが」
「何かしら?」
「あの閉じ込めてるトリモドキ……じゃないや、天使族はどうするんですか?」
俺の言葉を聞いた都市長は目を閉じて、少ししてから俺を見て来た。
「……正直、外交長が頑張ってるのだけど梨の礫よ。賠償金だけでも引っ張るのが限界かも知れないわ」
「そうなん、ですか?」
「アンタの特許関係使用停止までチラつかせてるのに、相手は此方を舐めてるのか交渉が進まないみたいなのよ。珍しく隠れて壁を殴ってる荒れた外交長の姿を見たわ」
あの厭味ったらしい外交長が仕事してるのか……いや、仮にも都市長から外交の長を任じられた人間なんだから優秀な筈だし仕事はするか。
「それで、タタラ。昨日の依頼なんだけど」
「魔導マーカーと簡易転移門ですよね、まだ手を付けて無いですよ?」
「ええ、この資料が必要でしょ?」
そう言って差し出される書類。手にとって見れば帝国式の転移門の術式だ。
「悪いんだけど、最低1セット出来れば5セットお願いするわ。期日はそうね……都市祭までに」
「分かりました」
資料をインベントリにしまい、了承する。簡易転移門用の器は出来ているので、後は術式を作るだけだ。
しかし、外交長の頑張りが通じなかった場合はどんな手段を講じるつもりなのだろう?
「それと、かなり無理を言うわね」
「え、何ですか?」
「カラムスの武器、アンタが作れる最上の物を用意して」
『はぁ?』
都市長の言葉に俺とカラムスさんの声が被る、いや俺の技術で最上って方向性で変わるのだが。
「それは、鍛冶技術を全力で振るった概念武装ですか?」
「……いえ、そっちじゃなくて魔導剣の方よ。今使ってるヤツ、前に見た新技術で作り直せない?」
「素材の問題がデカいんですけど。つまり昇華ミスリルと昇華オリハルコンで新しく作れって事ですよね?」
俺としては構わないのだが、オリハルコンと機能の核とするべき天使族の霊核が足りない。セントミスリルを作るだけなら創世女神の神核片が有るから作れはするのだが。
「……カラムス、貴方の貯えにオリハルコンは有るわね?」
「は、はい……インゴットで五つ程なら」
「タタラ、ミスリルに余りは?」
「いや、かなり有るので大丈夫ですけど……天使族の霊核が必要ですよ?」
「それなら……コレでいいわね?」
都市長のインベントリから取り出される一つの霊核、天使族の物だが……コレ位階どんだけの代物だ。尋常じゃない程の魔力を秘めてるぞ?
「昔、最期を看取った天使族が遺した霊核よ。位階にして5位、この前暴れたアレと同じね」
「……何で第5位の天使族の最期を看取ってるんですか」
人に看取られる天使族なんてレア中のレアだろ、過去作でもバッドエンドのアルメリアが主人公にそうやって霊核を形見として遺したくらいだぞ。
「人の生活とか『クラフト』が気になってた変り種だったんだけど、邪竜と相討ちになったみたいでね。最後に『クラフト』を見せてくれた礼として私の前に来たのよ」
第5位の天使族と相討ちになる邪竜って、かなり強い個体なのでは。まぁ過去作のRPGとかそれこそ『深く深い闇の先で』のダンジョン最深部では見慣れた敵だが。
「形見として持ってたけど、腐らせるよかマシでしょ」
「決断が男前過ぎる」
「依頼料は少し待ってて、忙しくて手が回せないから」
「……いえ、貸しにしときますよ」
「……アンタに貸しを作るとか怖いわね」
暗に代金は要らないと言えば、都市長は貸しと言う事に思う所が有るらしい。
「ジュロン、ミスリルは余っていると言ったが私の貯えを持っていってくれ。少ないが足しになるだろう」
そう言ってカラムスさんからミスリルを預かる。インゴットにして10個、1kgって普通なら結構な量だな。カラムスさんに渡した『フィエルテ』から考えると家からはインゴットを5個足すくらいか。
「この依頼品三つ、最悪剣くらいは明日までに出来るわね?」
「マーカーと転移門は形に出来ても実験が出来てないと思いますよ、いいんですか?」
「そうね、ならダリアさんを貸してちょうだい。彼女ならその辺の実験もある程度簡単かつ安全に出来るでしょう?」
「……本人に聞いてみます、了承されたら明日の朝に此処へ向かわせますね」
「それで良いわ」
さて、カラムスさんの新しい剣に簡易転移門と魔導マーカーか。少し忙しいな、何ならダリアの『トリテレイア』の整備と『ファイヤーワークス』の修理と改修もしなきゃならないし。
「カラムスさん、剣の調整はどうしますか?」
「私は主の護衛から動けんからな、此方である程度『フィエルテ』の時のように出力調整をしてみよう」
「分かりました。取り敢えず可変用の言葉は『抜剣』『展開』『解放』のままにします」
「それで頼む」
仕様について軽く話す。少し早めに作業をするか……タチアを探して都市内を駆け回ってるエテル達に出くわさなければいいが。
挨拶をして執務室を後にし、帰路を歩いてる時に見知った顔……と言うか本来は今日品物を渡す相手と出くわした。
「あ、店主さん!」
「コレは次期工匠長、用事はお済みで?」
「はい、昨日事件が起きた商店区の復興作業を終わらせて来ました」
『復興作業を終わらせて来た?』
成金さんと法務長の二人は、俺の姿を見て駆け寄って来た。店のシャッターの張り紙を見たらしいが、俺の用事が何かを分かってなかったらしい。どうも法務長には今回の事件は詳細が伝わって無い様子が見て取れる。
「昨日、商店区に天使族が降りてきて死傷者が出たのは知ってますか?」
「ええ、それは聞きました。探索から戻ったら随分な騒ぎでしたし」
「私は法務の出番無しと言う事で詳細は伝わって無いですね。ただ、今度会議が必要な案件が出たとか」
成金さんと法務長で其々答えてくれるが、どうも法務長は防衛長の事が伝わって無いらしい。それとも、知っているが成金さんが一般人でも有るから敢えて誤魔化してるかだろうか。
「それで、発生した物的被害……その中でも家屋に関する物を直して来たんですよ」
「そうなんですね」
「ふむ、私はそこそこの被害と聞きましたがもう終わったのですか?」
「ええ、昨日都市長に言われて被害の規模から半日で終わると判断したんですが……ちょっとした事で6時間で終わりました」
「そんなに時間が掛かったんですか?」
「コレでも早いくらいですよ、流石に家屋の倒壊2軒と壁の修繕2軒に窓の張り替え8軒と露店12軒にはこれくらい掛かります」
『早すぎでは?』
うん、そうなるよな。俺も早いと思うし。
「瓦礫の撤去だけ、とか?」
「いえ、建て直しも含めてですよ」
「他にも複数のクラフターが居た、とか?」
「俺一人ですね」
『意味不明過ぎないか?』
成金さんと法務長の質問に答えたら声を揃えて言われた、いやまぁ此処まで来ると仕方ないか?
まぁ、種明かしと行こうか。俺は俺の背後に隠れていたゴーレムを前に出す、成金さんと法務長はゴーレムにひどく驚いた様子を見せる。
「昨日作ったゴーレムです、コイツらを使って人海戦術みたいに瓦礫の撤去や露店の作成をさせたら早く片付きました」
『ゴーレムですよね?』
「ええ、俺特製のゴーレムです」
説明に俺特製と付けたら謎に納得された。いや確かに説得力は出るかなって思ったが、あっさりだな?
「しかし、店主さんに似てますね。何だかとても可愛らしくなってますけど」
「クラフトしたら自然とこうなったので原因は不明ですね、何か喋りますし」
「喋るのですか?」
「たー!」
『喋った!?』
うん、そりゃ驚くよな。普通のゴーレムは喋んないし。しかし、驚くのも束の間結局俺の作った物だからと勝手に納得された。
「でも、丁度良かったです」
「ふむ、何故ですかな?」
「お二人の甲冑をお渡し出来るので」
俺の言葉に反応した法務長に答えつつ、インベントリから法務長のハンガーを取り出す。続いて甲冑を出せば、ハンガーのアームが可動してガシュッガシュッと甲冑を固定する。
「ご依頼の魔鉄の全身甲冑とハンガーです」
「おおっ!!」
「え、何アレカッコ良」
稼働を見せれば法務長が子供みたいに目を輝かせて、成金さんが丁寧口調を崩す勢いで言葉をこぼしている。
「法務長には申し訳無いですが、甲冑はそのままだと重いので軽量化をさせて頂きました。重量は半減していますが、防御力は物理防御で10下がる程度に抑えています」
「……工匠長、それは些か契約違反では。その外した20kg分の鉄と魔石は如何しましたか?」
「それは此方に」
魔鉄の長剣、盾、大剣を取り出す。それを見た法務長と成金さんは目を丸くしている。
「法務長の武器がどうなのか分からなかったのですが、立ち姿で剣と盾の伝統的な騎士剣術と判断して此方を用意させて頂きました。御子息の方にも此方の大剣を、戦い方から身幅が広く盾に転用出来る物にしています」
そう言って二人に渡しつつ、今度は成金さんの甲冑を取り出す。ハンガーが無いので俺が支えている、そんな甲冑を成金さんは目を見開いて見ている。
「そして此方が御子息用の全身甲冑になります。魔鉄を全て使っているので重さで多少身の動きが遅くなるので注意して下さい」
「は、はいっ!」
大剣をインベントリにしまい、甲冑を受け取る。調整はしてないが、申し訳ないが今日はコレから研究と開発に没頭するので後日に店に来て欲しい。
「……依頼とは別の事をしていますね」
「全て頂いた素材と予算の内に収めていますが、お気に召さないのなら返金します」
むしろ、返金が目的だが。
「法に照らし合わせれば、明確な違反になります。しかし、私はこの作品達に満足していますので今回は訴えません」
「それは……」
「返金を目的としているのでしょうが、乗ってあげませんよ次期工匠長」
やはり、腹芸は勝てないか。勝てないな本当。
「それでは、商品を受取りましたので」
「あ、忘れてた」
オマケの一点出すの忘れてたな。コレも受け取った素材から作ってるけど装備じゃないから頭からスッポ抜けてた。
インベントリから甲冑ラジコンを取り出して、法務長に差し出す。法務長は1/6サイズの甲冑&ハンガーを見て硬直した。
「実は素材が余っていたので、特殊な技術検証を兼ねてこんなのを作ってしまっていました」
「……」
「此方も含めて、依頼の成否を決めて下さい」
「……」
「あの、法務長?」
先に渡した装備一式をインベントリにしまった法務長は、震える手で俺からラジコンを受け取る。意外に重いはずなのだが、受け取ったラジコンを色んな角度から見ている。
「えっと、それは念話可動式甲冑って言いまして」
「……」
「このハンガー部分に『念話』の術式を、甲冑側に『感応』の術式を刻んでいまして」
「……」
「その、ハンガー側に魔力を流して念じると……はい」
「……」
口で説明しながら動かす。ハンガーのアームが可動して台座から離れた甲冑が数歩歩き、法務長の目前でポーズを取る。その光景を見た法務長は無言で動かない。
「……あの、お気に召さなかったらお代はお返ししますので」
沈黙に耐えられず思わずそう言うと、法務長は1/6甲冑を少し動かしてからインベントリにしまって俺に詰め寄って来た。
「工匠長、幾らだぁ!?」
「ひぃ、お代は頂いてます!?」
「父上、気持ちは分かりますけど落ち着いて!!」
1/6念動可動式魔鉄甲冑
都市長『こんなバカみたいな代物に最新技術使ってんじゃないわよ。コレ一つで3桁万するわよ!?』
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない