※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中
『看板娘』イベント継続中

※間違って同じ話を2度投稿してました。申し訳ございません。


無差別爆撃

「……酷い目に遭った」

 

 工房の中で溜め息とともにそんな言葉を溢す、復興作業よりも法務長相手の方が疲れた気がする。

 1/6念動可動式甲冑に興奮した法務長は成金さんが羽交い締めにして連れて行った、何と言うか途轍もないバイタリティを見せられた気がする。一応、明日にでも甲冑の調整に来て欲しいと伝えたが果たして聞こえていただろうか。法務長、明日店に来たとして興奮して新しい念動可動式甲冑が欲しいとか言わないよな?

 そんな考えを頭を振って追い出し、インベントリから書類を取り出す。都市長から預かった転移術式を読み解いて、簡易転移門用に術式を再構築していく。

 一番の問題は、術式に無駄が多い事だろうか?

 いや、なんと言うか術式書いた人間の名前を所々術式が発動するギリギリの所で混ぜ込んでる様な気がする。先ずは不要な術式の文字を削り、次に術式を整理する。安定させる為の術式が多いが、コレは多分転移門の設置される場所の空間の揺らぎを開いた際の安定が目的なのだろうが……最適な数の倍は仕込まれてるっぽい。更に転移先の座標を代入する箇所もなんと言うか無駄が多い、双方向からの干渉する場合でも仮に簡易転移門の一方通行にするにしても余りにも加飾されてると言うか……前世ならギャル文字みたいに読み難い変換がされてるような感じだ。

 コレならグ□ンギ語やアル◯ド語の方が読み易いのではないだろうか、いっそヒュ△ノス語で書かれている方が見栄えが良い気さえする。

 術式を解読し、添削して行くと転移術式の長さが2/3程の長さになった。こんなに無駄が有ったのかと少しビビる。一先ず添削した術式を都市長に送ろうとするが、鳥型ゴーレムがいない。どうやら家に居ないらしく、しょうが無いので代わりを作る。

 あの鳥型ゴーレムにも愛着は有るが、最近俺が手紙を渡そうとすると嫌がるのだ。そろそろ解放してやらないとな。そう考えて、俺も鳥型ゴーレムを作る。都市長の物とは違い、大型の猛禽をイメージする。前世で最大の猛禽類である大鷲をモチーフに翼長を250cm、全長を105cmで設定。本体を鍛造ミスリル、翼をセントとイヴィルの両昇華ミスリルを複合したタチアの『アーラ』の技術を転用した物にする。翼には『飛翔』術式、本体には『反重力』術式を其々刻み空を飛ぶのを容易にする。高速機動を可能とする為、風魔法による結界を刻み空気抵抗を極限まで減らす。搭載する核はゴーレムコアでは無く『卵』にして完成。俺式の鳥型ゴーレム改めて猛禽型ゴーレム、今日から手紙はコイツに頼むか。

 

「それじゃ、先ずはこの報告書を都市長の所へ頼む」

 

 そう言って猛禽型ゴーレムの脚に括ると、俺に一礼してから飛び立って行く。ある程度高度を取った次の瞬間、凄まじい速度で飛んで行った。速い、俺の目では追えなかった。

 

「さて、続きだな」

 

 最適化した『転移』術式を、更に簡略化させる。座標と言う代数を切り替える事で複数箇所へ転移出来ると言う機能を削り、ただ一箇所だけ目的地に転移する形にする。空間の揺らぎを固定化する術式は全て削り、代わりに転移結晶に使っている『跳躍』術式を組み込んで行く。『転移』と『跳躍』で共通した部分を削り、組み替え足りない部分を足す。頭の中で術式の稼働をイメージし、想定した動きをするかシミュレート。誤作動をする所を精査して、再び組み替える。『跳躍』術式の目的地までの障害物を無視する作用を最初に発生させ、空間に一時的に揺らぎを発生させる形を取る。極短時間それも一回限りなら転移を問題無く可能な魔力の道が出来る。そこを通り『転移』する、一回限り特定の場所にのみ『転移』出来る簡易転移門の術式が出来た。

 そうして一時間程最適化して、ようやく一方通行の『転移』術式が完成する。最終的な魔力消費量は本来の転移門の1/4程、想定したよりもコンデンサーに対する負担が少なくなった。1/3くらいに抑えられると予想したのだが、コレは嬉しい誤算だ。

 続いては魔導マーカーだ。コレ、実はそこ迄複雑では無かったりする。とは言え重要なのは起点になる場所に任意で魔力による空間の揺らぎを発生させる必要は有るので、そこは工夫だ。先程作り上げた『跳躍』の空間突破用の構成式を組み替えて、魔力を目印として発しながらその場に障害物を突破する道を作る術式を組む。転移門は対象のマーカーから1m程離れた位置に出口が出来る用に調整、その場所も障害物を自動で確認して転移後に『石の中にいる!』みたいな事故が起きない用に特殊な設定に組み上げる。それでも注意書きとして周囲に障害物が無い状況での仕様を推奨した物を書く。所要時間は30分程、魔力もそんなに消費しない物が出来た。簡易転移門と魔導マーカーの術式は後で纏めて送ろう。……そう言えば、報告書は後5日とか一ヶ月後にしろって言われてたな。いや、でもコレ送っとかないと都市長もスッキリしないよな。都市祭までの締め切りって言われたけれど、外交長の状況から比較的急ぎっぽいし。そうやって悩んでいると、猛禽型ゴーレムが帰ってきた。

 労いとして首筋を撫でてやると身体を擦り付けて甘えてくる……コイツ、ゴーレムだよな?

 そこで脚に手紙が括られているのが見えて、受け取る。開いてみると都市長からで、転移術式の最適化を感謝されると同時に仕事を増やすなと怒られた。解せぬ。仕方ないので猛禽型ゴーレムに先程出来た術式を書いた報告書を括り付けて、もう一働きしてもらう。猛禽型ゴーレムは一鳴きして、再び都市長の所へ向かって行った……然りげ無く声を出したな?

 

 さて、術式が完成したのでカラムスさんの剣を作成しよう。そう考えてインベントリから預かったミスリルとオリハルコン、創世女神の神核片を取り出す。

 早速神核片でミスリルとアダマンタイトを昇華させ、加工を開始。かつて総本山で見た『ケラヴ』と同じ形、同じバランスになるように調整しつつ、セントミスリルを刀身として形作る。かつては不慣れから研いでいたが、今回は銀糸化しているセントミスリルの並びを調整して剣身と刃を作っていく。形状記憶合金が0.005mmの太さだったのに対して、昇華ミスリルは0.0001mmとか言う細さになる。コレで強度はミスリルの1.5倍は有るのだから意味不明過ぎるだろう、カラムスさんがコレに魔力纏わせたら何でも斬れるんじゃなかろうか?

 延性も増し、形状記憶合金の1.5倍の長さに伸びるので射程も自然と伸びる。柄には昇華オリハルコンを使用しているので、初期の『フィエルテ』よりも扱いが簡単な筈だ。制御用の術式は『フィエルテ』の物よりも洗練して、より効率的に刃を制御出来るようになっている。鍔は鍛造ミスリルで作成し、中央には都市長から預かった天使族の霊核を嵌める。霊核から伝わる魔力により、剣身が淡い黄金色の光を放ち始める。時折霊核から流れる魔力が内部の路を走り、それが青い光となって迸るようにみえる。

 取り敢えず、剣としては完成した。問題は何時ものように『鑑定』しても情報が読み取れない事か。

 

「……そうだな、お前は『ルーエ』だ。人々に安らぎをもたらす為の剣」

 

 カラムスさんには悪いがそう名付けさせて貰う、どうせまたぶん投げられるだろうし……俺があの人に願う名前くらいはいいだろう?

 何時もの如く脳裏に何かが繋がる感覚がして、目前の『ルーエ』の情報が読み取れるようになった。

 

 連接剣『ルーエ』

 物理攻撃 +95

 魔法攻撃 +120

 速力   +20

 最大射程  6

 特殊能力『可変』『魔力回復Ⅱ』『二刀一刃』

 

 どうも『ケラヴ』並に強力な装備が出来たが、向こうに比べて魔法攻撃寄りのステータスだ。それに、最大射程は劣っている。『ケラヴ』には『魔力吸収』が付いていたが、此方は魔力回復か。ソレに『二刀一刃』……カラムスさんに『ルーエ』と『フィエルテ』で二刀流にしろと?

 

「自分で作っててなんだけど、コレ下手したら軍神様から怒られたりしないか?」

 

 そんな事を呟いたら、何か背中を叩かれる様な感覚がする。しかし、こう……両手でぽこぽこと叩いて来た時のエテル並に力が弱い叩かれ方みたいな感じだな? 

 少しすると背後から衝撃が伝わってきた。振り返ると誰もいないのだが、何故か先程まで有った背中を叩いていたような感覚が消えている。

 

 さて、都市長からの依頼はコレで終わったがまだまだ作業は有る。ダリアから渡された『ファイヤーワークス』の修復もその一つだ。

 取り出してフレームをみると物の見事にひしゃげている、そりゃあんな速度で地面に叩き付けられたら当然か。むしろあのトリモドキと言うクッションを挟んだからまだマシと言う可能性も有る。パーツを分解して確認すると、衝撃を分散する構造の設計がやや甘いと感じた。前回はそうでも無かったのだが、見直してみると少し粗が目立つ。コレはいけないな。

 肩部アーマーは後部のエンジンや砲撃機能は点検する限り無事だったので、此方は後々軽い整備をするだけで済ませる事に決める。前面の装甲や基礎フレームは作り直しだ。一度フレームを溶かし、再度魔鉄に作り直す。今日一日で結構な魔石を使ったので今度補充しにいかないとと考えつつ、魔鉄を鍛造して形成する。内部フレームはハニカム構造で衝撃の分散をより大きくし、全体に均等な負荷を掛けるようにして耐久性を上昇させる。鍛造した魔鉄を更にハニカム構造にするのは今まで出来なかったが、何故か上手く出来る。俺の中でまた何かが成長したのだろうか、コレだからクラフトは辞められない。

 エンジンや砲撃ユニットはブロックとして分け、故障時にダメージを最小限にする形にした。今回は偶々ダメージが少なかったが、この2点は装甲よりも遥かに高価であり『ファイヤーワークス』の大半はこの部分の値段になる見込みだ。壊れやすいと再度作る上での手間にもなるし、可能な限り再利用出来るようにする。

 肩部アーマーはそうして上手いことバージョンアップが出来たが、続いての脚部パーツが中々に厄介だ。元からアーマーとエンジンが一体型になっている構造上、今回のでエンジンが凄まじいダメージを受けている。なので、先ずは再設計だ。ジェットエンジンを収める基幹フレームの上に3重で装甲を構築して、基幹フレームへのダメージを減らすクッションにする。一番外を最も硬くし、その下の二重の装甲はハニカム構造で構築。間にも衝撃を吸収出来るように工夫を挟み、出来上がった物は元の物よりも一回り太くなっていた。これじゃ某機動戦艦の劇場版で出て来た復讐者の黒百合みたいな脚だが、頑丈にする為にはこれくらいは必要と割り切る。ジェットエンジンは使えるパーツがほぼ無く、一から作り直しだ。『トリテレイア』に直接採用した物と違い此方は全て魔鉄製なので、このダメージの大きさはそれが影響したのかも知れない。改めて作り直している内に分かったのだが、魔鉄の遮熱性はどうもミスリル以上アダマンタイト未満らしくかなりの高熱にも耐えられるらしい。燃焼室を魔鉄で作った方が逆に無茶が利く事に驚きつつ、改修型のエンジンは一部の高温に曝されるパーツを魔鉄に置き換える。問題はミスリル程には強度が無い事だが、それは取り敢えず置いておこう。

 そうして改修した『ファイヤーワークス』、敢えて言うなら『ファイヤーワークスver.1,2』が完成した。ダリアが帰って来たら確認させよう。どうせ今日も潜って魔石の回収をしてくれてるだろうし、労いも兼ねて渡すかな。

 

 さて、先程思い出した某機動戦艦に出てくる復讐者の黒百合だが、アレも重装甲高機動を意識した追加装備だ。ならばウェポンパッケージの一つとして作るのも良いだろう、早速製造しよう。

 理想を言えばアダマンタイトなのだが、とても足りないので魔鉄を使用する。とは言え、鉄そのものも数が少ない。今度商会に行って買うかな、今回の事で誂ってくる輩も減ってくれてると嬉しいが。

 肩部、胸部、背部、脚部に対しての追加装備。肩部と背部、そして脚部には追加のエンジンを搭載する。『ファイヤーワークスver.1,2』の多積層構造を応用し、純粋な防御力向上をしつつ内部に追加エンジンを仕込んで機動力の確保はそこそこ難しい。脚部は更に一回り大きくし、更に内側に燃料タンクを兼ねた層を作成。仮に起爆したら着用者諸共吹き飛ばしそうで恐ろしいが、高機動を実現させるにはこれくらいの無茶が必要になる。肩部は開閉ギミックと、その内側にエンジンを搭載。肩部自体がかなり大型になるが、その分装甲を厚くしシールドを追加さらに裏側に増槽を搭載出来るようにする。胸部は防御力重視で分厚くし、背面には姿勢制御用の小型エンジンを2基搭載。腰部からは姿勢制御の役割も果たす尻尾型のスタビライザーを取付けて完成だ。

 元ネタは両手に其々カノンを装備してるのだが、此方はその辺自由に持たせられるようにした。まぁ、肩部とかは剛性優先で胸鎧とほぼ一体化しているので満足に可動しないのだが。

 

「そうだな、開発コードは『ブラックリリィ』……だとまんま過ぎるから『アザミナ』だな」

 

 まぁ、アザミナの花言葉は復讐なのでまんまと言えばまんまでは有るが。

 

 一通り作業を終えたが、そう言えば『玄武』のメンテナンスをしてない事を思い出す。トリモドキとの戦闘で過剰に魔力を流して無理矢理人工筋肉の出力を上げたのでどんな不具合が出ているかは分からない、なので『概念鑑定』を使って徹底的に精査する。そうしたら出るわ出るわ不具合の山で、一部など過負荷で溶け出している始末。特殊能力の『自己再生』ですら直しきれない程のダメージを負っていたのだ。特にトリモドキの魔法で貫かれた部分は繊維がズタズタで、そこに過剰に魔力を流した為に焼け付き固まってしまっている。これは完全に張り替えが必要か。

 全体の人工筋肉を外して、一度溶かす。昇華ミスリルを通常の物に戻し、そこから創世および終焉の両女神の神核片で再び昇華させる。更にミスリルを取り出して神核片で昇華する、元の人工筋肉量から倍にして等分の量を縒り合わせ人工筋肉にする。単純に倍にしたが、その分だけ長さや術式の調整を間違えたら弾き飛ぶ出力になるので慎重に人工筋肉を張っていく。此処までやるなら自分用のインナーマッスルアーマーを作るほうが良い気もするが、他人のは兎も角自分用のを作るのが何気に難しいのだ。アレ、自分の身体にフィットさせる際に調整間違えると自分では抜け出せないし。

 そんな事を考えつつ、左腕内装の人工筋肉を張り直し終わる。早速魔力を流し、動作を見つつ調整。じゃじゃ馬振りが上がったが、お義母さんの最適化した術式を更に先鋭化させて完全に専用の強化術式へと変えていく。出力調整が加速度的に難しくなっているのだが、何となく出来ていく。左腕一本に20分程掛かったが、仕上がりは完璧だ。以前のリミッター解除状態の出力が恒常の物に出来ている。同じ要領で右腕は15分、更に両脚は合わせて15分で終わる。慣れたとはいえ、我ながら早すぎる気がする。

 表面装甲を取付けて改修完了、ハンガーに固定して起動実験をする。内蔵された『卵』から放たれ循環する魔力が人工筋肉を巡る、起動した人工筋肉が魔力を青くスパークさせ魔力が循環する様を視認させる。少し『卵』から引き出す魔力の出力が高過ぎたので調整、無駄な魔力が表に出ないように効率良く循環させる。

 そうして『玄武・改』の改修作業は終了した。一度鑑定でステータスを確認する。

 

 魔導鎧『玄武・弐式』

 体力  +100

 魔力   0

 技力   0

 物理攻撃+75

 物理防御+40

 魔法攻撃+40

 魔法防御+70

 速力  +60

 移動力 +3

 特殊能力『砲撃』『魔導砲撃・改』『自己再生』

 魔導砲撃・改:消費魔力2〜100 威力:消費魔力/2+魔法攻撃力

 

 強化すっ飛ばして次の段階に進化してる。装甲を作り直した訳でも無いので防御力は据え置きだが、物理攻撃と魔法攻撃そして速力が激増している。まぁ、改の時点でのリミッター解除状態が基本出力なのでこうもなるか。しかし、学生運動でこのまま運用したら相手を殺してしまいそうだな……いや手心を加えると油断に繋がるか。全力で殺しに掛かろう。

 一通りの整備も終わり、普段使いしていたウォーハンマーを整備してから鍛冶場の壁に立て掛ける。何となくこれ以上は使うと壊れてしまう気がして、コイツは此処で引退させる。今度商会にまた行って鉄を買おう。魔鉄でウォーハンマーか何か撃力を上げる仕組みを付けた魔導具でも作ろうかな、打撃面の反対側から噴射するブーストハンマーとかその辺り。

 そんな事を考えつつ、冷蔵庫を見る。残っていた鮪がそろそろ危なそうなので、夕飯にすることを決めた。

 酒、醤油、味醂を合わせて火に掛けて煮切り浸けダレを作成。サイコロカットで切り分けた鮪を5人分に分けて、浸けダレの中に入れる。そのまま常温で20分程置く。浸透圧を使い味を染み込ませつつ他の準備を開始、先ずは米を研いで炊飯を開始。漬け丼に使う野菜は最適な大葉や長葱が無いので、レタスと玉葱で代用する。レタスは洗ってから手で千切り、水にさらしておく。玉葱は繊維を断つように包丁を入れ、此方も水にさらす。

 続いて用意するのは味噌汁、具は玉葱のシンプルなものに味噌は白だ。鰹節と煮干しで出汁をとる、水に鰹節と煮干しを浸けて火にかける。沸騰する前に火を止め鰹節と煮干しを湯から外し、自然と水が切れるまで笊に挙げて待機。しっかりと水が切れたら鰹節と煮干しは小皿にあける。出汁を取った湯に繊維に沿って薄切りにした玉葱を入れて弱火にかける。煮立ち始めたら味噌を入れて味を調える。味噌が解けたのを確認し沸騰前に火を止めておく。

 副菜ではないが、出汁に使った鰹節と煮干しは刻んでからクリームチーズにあえる、手軽なおつまみだ。副菜は一華が帰ってきたら玉子焼きを頼めるだろうか?

 炊飯が終わるまでの間仕事を探していたら、二階のベランダに洗濯物が干されていた。取り込んでいたら陽の光を反射しながら銀の猛禽が帰ってきた。俺の姿を認めたのか、そのまま二階のベランダに止まる。報告書を届けた事を労い頭をなでてやると、甘えるように身を預けてくる、生き物そのままな反応である。

 そんな反応をしていた猛禽型ゴーレムは、ふと思い出したように足に括られた手紙を嘴で示した。俺はその手紙を外して目を通すと、都市長から『新しくゴーレム作るなら先に言え』とお叱りの言葉が書いてあった。確かに、自分の知らないデカい鳥型ゴーレムがやって来たら意味不明で怖いな。カラムスさんが迎撃してないのは奇跡みたいな物か。

 他には転移門の術式の最適化についてだ、帝都と協議して本格的に国内で運用する可能性が有るとの事。その場合は軍事機密として扱われる上に、国から様々な特典が与えられると書いてある。何か益々俺の知らない所で俺の存在が大きくなってる感が凄い、俺はクラフトが出来るだけの人間なのだが。

 しかし、コレで都市長に俺の猛禽型ゴーレムが認知されたな。都市長の鳥型ゴーレムも俺から解放されて万々歳だろう。最近は手紙を送らされない様に様々な作戦を練っている程だから、役割から離れられて良かったと思ってくれる筈。俺のゴーレムにも意思が芽生えてるっぽいし、あの鳥型ゴーレムにも有る可能性が残るから自由にして欲しい。

 今日の仕事はもう無いので猛禽型ゴーレムにはインベントリに入るか適当に休んで貰おうとしたら、近くに止まり木が欲しそうだった。取り敢えず洗濯物を取り込んだら作ってあげよう。

 作業に戻り、干されていた洗濯物を洗濯籠に入れていく。相変わらずデカいエテルのブラや、少し劣るがそれでも凄い大きさを誇る一華のブラを見て心が躍ってしまう男の悲しい性よ。

 四葩のは二人に比べたら小さいが、コレを身に付けているのかと考えると少し興奮する。胸が小さいだけでスタイルは凄く良いのだ、特に臀部は安産型の見本の様な見事な桃を思わせる形をしている。そんな事を考えつつ四葩のショーツを取り込んだ。

 雛菊さんのはノーコメント、バカの想い人に対してそんな事を考えるつもりはない。ただ、洗濯に出す時にシャツの裏表くらいは直して欲しいとは思う。

 リビングに洗濯籠を下ろし、服を仕分けする。各員が自室に持っていける様に纏めて置く。ただ、一華は横着気味の雛菊さんの分も一緒に持っていくのでそちらは並べて置く。

 洗濯物の仕分けが済んだので次は止まり木の作成だ。猛禽型ゴーレムに理想の場所を決めて貰えば、窓際であまり光の当たらない場所だった。そこにオーク材で止まり木を作成、芯にはミスリルをクラフトして入れたので見た目以上に頑丈な代物だ。猛禽型ゴーレムは軽く羽撃いてその止まり木に乗る。気に入ったらしく、一鳴きして羽を繕い始める。うん、お前本当にゴーレムか?

 本格的にやる事が無くなったのでリビングのソファに座り、最近発見されたと商会長からの手紙と共に送られてきた古代文書を読み耽る。サイドテーブルにノートを置き、俺が読み取った文書を翻訳していく。全体の2/3程が終わった時に炊飯完了を知らせる音楽が流れた。この音楽は『深く深い闇の先で』のメインテーマで、曲調が明るいのでお気に入りだった物だ。此方では『ワールウィンド』に昔から伝わる伝統的な音楽として存在していたので、この都市発の商品っぽくなって結構気に入っている。

 炊けた白米を手製の寿司桶に移し、酢と砂糖と塩を合わせた合わせ酢を全体に掛ける。合わせ酢を全体に馴染ませる様にご飯を切り混ぜる。混ぜてひっくり返し、全体に合わせ酢が馴染んだら平らにならす。ミニサイズのゴーレムを呼び出し団扇で仰がせて少しずつ冷ましつつ、途中途中で酢飯をひっくり返し桶の底に溜まる合わせ酢を全体に行き届かせる。人肌程の温度に冷めたら完成、皆が帰って来るまでは清潔な布を上に掛けて乾燥を防ぐ。

 酢飯と野菜の上に鮪の漬けを乗せる漬け丼、喜んで貰えるだろうか。出来たら記録結晶で録画して、魔導ワードプロセッサを使ってお義母さんに送ってみようかな。

 

「ただいまー!」

「戻ったのじゃ」

「ご主人、ただいまでござるよ」

「失礼します」

 

 古代文書の翻訳を終わらせて添削している最中にエテル、四葩、一華、雛菊さんの声が聞こえてくる。

 

「お帰り」

 

 声を返しながら玄関まで向かうと、エテル達3人は汗だくだった。シャツが汗で透けて下着が見えてる。

 

「シャワー浴びてこい、ヒドイことになってんぞ」

 

 俺がそう声を掛けると、エテル達3人は驚きの速さで自身の身体を隠す。正直、ちょっと残念に思った。

 

「うう、トラッちゃんイッさんお風呂行こう」

「む、タタラも連れて行って囲むのではないのか?」

「ご主人の身体を洗える滅多にない機会でござるな。ご主人、行くでござるよ」

「嫌だよそんな生殺し空間」

 

 間違いなく檜風呂がエテルアシスト付きの脱処女会場になるぞ。

 この調子だと一華に玉子焼き頼むのは無理そうだな。

 

「む、ご主人!」

 

 と、いきなり一華が俺に詰め寄ってくる。汗をかいてる筈なのにいい匂いがしてきてヤバい。

 

「どうした一華。後、あまり近付くないい匂いがする」

「汗の匂いがいい匂いと感じるなら拙者とご主人の身体の相性は良いでござるね。では無くて、拙者の玉子焼きを求めてるでござるね?」

「なんで分かったのお前」

「ふふ、拙者の忠誠心故に!」

「ちゅーせいって心?」

「違うでござるよ、ちゅーは欲しいでござるけどそっちじゃないでござる」

 

 いや、キスは欲しいのかよ。それと後ろの二人、自分達にもって唇に指添えて催促すんな。

 

「お風呂に入った後に汗をかくのも何でござるからな、先に玉子焼きを作るでござるよ」

「いや、いいのか?」

「ご主人、前に言ったでござろう?」

 

 前にって、あの事か?

 

「俺に料理を食べてもらう事が幸せってやつ、か?」

「ふふ、ちゃんと覚えていて貰えて良かったでござる」

 

 少し顔を赤らめながらそう言う一華に、此方も少し恥ずかしくなる。

 

「……それなら頼む」

「御意にござるよ」

 

 はにかみながら了承を伝えてくる一華に、心臓が強く脈打つ。綺麗所が揃っているから、こんな表情一つで胸が高鳴って仕方ない。

 

「あ、タタラ今日の夕飯って」

「下拵えは終わってるぞ、風呂上がりにすぐ食える」

「む、洗濯物はどうじゃ?」

「取り込んでリビングに並べといた、後で自室に持って行ってくれ」

「下着で変な事、してない?」

「求めたら本人が相手してくれるのに態々代用品で済ませるかよ」

 

 エテルと四葩に次々と質問されながら答えていく。途中で変な質問を混ぜられながら、二人を檜風呂へ送る。

 

「やはり、賑やかですね」

 

 そんな俺達のやり取りを笑って見ていた雛菊さん。なんだか少し雰囲気が変わった気がする。

 

「気安さ故の軽口の応酬ですからね。雛菊さんは昨日帰りませんでしたけど、アイツと何か有ったんですか?」

 

 軽く俺達の関係故の物だと答えつつ、軽いジャブじみた質問を飛ばす。すると居住まいを正した雛菊さんが真っすぐ俺を見て言った。

 

「はい。この度、私はタタラ殿の幼馴染の彼とお付き合いする事になりました」

「……へ?」

 

 どえらい爆弾を投下された、ちょっと待って覚悟が全く出来てなかったんだけど。




猛禽型ゴーレム『サイファー』
 体力   300
 魔力   100
 技力   100
 物理攻撃 50
 物理防御 40
 魔法攻撃 50
 魔法防御 60
 速力   250
 運    10
 移動力  15
 特殊能力『飛行』『偵察Ⅲ』『隠密Ⅴ』『忍び足Ⅴ』『突撃Ⅱ』『視界共有』『体力回復Ⅴ』『魔力回復Ⅴ』『技力回復Ⅴ』

イーグルを連れた2機編成、尾に鎖を咥える地獄の番犬のマークが書かれている訳では無い。近似値にリボンのマーク付きのラプターが作られるかも知れない。

連接剣『ルーエ』
 物理攻撃 +95
 魔法攻撃 +120
 速力   +20
 最大射程  6
 特殊能力『可変』『魔力回復Ⅱ』『二刀一刃』

名前はドイツ語で『安らぎ』『静けさ』『休息』の意。前身の『フィエルテ』と同じく三形態に変形可能。射程で四葩の『手鞠花』を越えるが、武器としての理不尽さでは負ける。


オマケ

 華美ではないが、素材と匠に誂えられた調度品に囲まれた執務室。一際大きい机に向かい、書類仕事を処理しているのは迷宮都市『ワールウィンド』の最高権力者である女性の都市長である。
 後見を務めている青年が作ったゴーレム達に整えられた作業環境で快適に執務をこなす彼女は、つくづく後見を務める青年のタタラが作ったゴーレムを欲しいと思う。
 書類を確認し、期日や重要度で仕分けする能力。
 お茶を淹れたり、掃除を行う器用さ、
 何よりも小さくちょこちょこ動く姿は見ていて微笑ましく、癒しになる。
 声を上げて意思疎通を図れるのも良い、単音しか発せていなかったがイントネーションで伝えたい事が分かるのでかなりやりやすいだろう。
 そう考えて一つ溜め息、同じ『ゴーレムクラフト』を使いながら何故此処まで差が付くのか。慢心かそれとも環境の違いが、果てまた素材か。まぁ、ミスリルが余っているという意味不明な証言と何体ものミスリルゴーレムを見れば素材の違いなのだろうと予想は付く。
 何より、昨日取得したばかりのスキルでいきなり『ミスリルゴーレム』を作れている事が異常事態でしかないのだが。
 そんな事を思っていると、コツコツと何かを叩く音が響いた。都市長はその音を聞き戸惑う、執務室は地上3階にあり外部から窓を叩くにしても簡単にはいかない。更に、関係各所へ飛ばしている鳥型ゴーレムは全て帰って来ているのだ。それでは、何が執務室の窓を叩くのか?
 疑問に思い振り向くと、巨大な銀の猛禽類がその鋭い嘴で窓を叩いていたのだ。

「キャぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 まるで乙女のような悲鳴を上げる都市長、御年四十路。
 その声を聞いて扉を蹴破り突入してくる一つの影、都市長付きの筆頭騎士にして『ワールウィンド』最強の呼び名高い聖人カラムスである。

「我が主、何が有りました!?」
「窓、窓に!?」
「窓?」

 聖人カラムスが主の声に従い窓の外に目を向けると、巨大な銀色の猛禽類が張り付いている。

「……ゴーレムですね、中に入りたがってるみたいですが」
「なんでこんな大きな鳥型ゴーレムが飛べてるのよ!?」
「この都市には一人、人すら空に飛ばせる奴が居ますが」
「……あっ」

 カラムスの言葉で一人の人物を思い付いた都市長は、改めて猛禽類を見る。銀の猛禽類は変わらず窓を割れない程度の力加減で叩いているのみだ。
 恐る恐る窓を開けてみると、銀の猛禽類は窓の縁で脚を止めてそっと右脚を差し伸ばす。そこには手紙が括られていて、この銀の猛禽類が伝書用に作られたものであると漸く理解出来た。

「……本当にタタラが作ったゴーレムなのね、あなた」

 手紙の文字を読み作った人間を割り出した都市長がそう言うと、銀の猛禽類はその頭をそっと都市長の頬に擦り寄せる。滑らかな金属の感触ながら、何処か生き物じみた挙動に驚く都市長。
 普通のゴーレムはこの様な挙動をせず、さっさと飛び去っているだろう。それが親愛の情を表すなどと、やはりタタラはおかしいと改めて思う都市長だ。
 そんな都市長に一礼をして、飛び去って行く猛禽型ゴーレム。その速度は凄まじく、一瞬にして都市長の視界内から消え去った。

「凄まじいですね、逃げに徹されると私でも追えません」
「ゴーレムに何を仕込んでるのかしらね、あの子は」

 カラムスが溢す性能の高さに対する関心に、都市長は呆れ混じりの感想を溢す。しかし、あんな物を作るなら事前に伝えておいて欲しい物だと次に来たら文句の手紙を持たせようと決心する。
 早速届けられた手紙に目を通すと、それは帝国内の転移門に使われる術式を極限まで最適化した物であった。胃と頭を痛めつつ言いつけを破って即時報告書を上げた事を咎めたいが、この報告書は速やかに本国へ届ける必要が有ると判断したタタラの思考を少しだけ内心で褒める。
 都市長が視線を巡らせると、一体の鳥型ゴーレムが目に付いた。都市長の記憶が確かならば、タタラの伝書専用にしていた個体である。なんと言うか。愕然としている雰囲気だ。
 何故このゴーレムは感情を持っているかの様な反応をしているのだろう?

 その後、依頼した代物が当日に全て作られたと書かれた手紙を見た都市長は文句を書き殴った手紙を猛禽型ゴーレムに持たせた。

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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