※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中。
『看板娘』イベント継続中。

文が降りてこず、時間が掛かりました。

困った、結末の分岐を思い浮かんでどっちでも問題ない流れに出来そう……またアンケート取るかな。


戦いに備えよう

 俺の宣言を受けて、エテルと四葩の眼が細まる。現状、俺達は『死霊』系レアエネミーである『死霊王(リッチ)』に有効打を与えられず、更には即死に対する対抗手段が無いのでダリア抜きでは進めないと判断していた。

 だが、ダリアが一人で潜り精霊の核石を複数個回収してくれた為に状況が変わった。エテルの『ロニセラ』を進化させ『ロニセラ・リンネ』にした為に属性弾が使用出来るようになった。その為、先制して『死霊王』を攻撃出来るなら弱点属性でのクリティカルで一撃で倒せる可能性が出て来た。特にエテルは背面からなら3倍以上のダメージが出せるので、撃破の可能性が大分高くなっている。

 そして四葩も『手鞠花』の効果に『厄切』が含まれている為に即死効果を無効に出来る。後は刀身に炎属性を纏わせる特殊な刀装具、それこそ鍔か柄を用意すればいい。低位の炎属性の核石はまだ残っているので、『死霊王』への有効打になり得る。

 後は反応を置き去りに出来ればタチアの『突撃』からの『騎士剣術』バーストエッジに繋げれば撃破の可能性が高くなる。

 35階層からは相手は火に弱い『ゾンビ』だし、魅了を使ってくる『吸血鬼』相手でも四葩は『手鞠花』で、俺とエテルは『性魔術』で対抗出来る。問題は純粋なステータスが高い事だが、四葩は生物特効で問答無用で殺せるだろう。エテルは『ロニセラ』で火属性を撃ち込めば回復阻害が出来るし、前世の伝承関連の防御能力を持たないこの世界の吸血鬼は心臓か脳を破壊すれば殺す事が出来る。エテルでも十分『吸血鬼』を殺せるのだ。

 それに、深い階層はそれだけレベル20台のエテルとタチアにとっての経験値が美味しい。サクサクとレベルアップ出来ればその分攻略も楽になる。5レベルも離れていれば相当な経験値だ、『ゴーレム』系相手では稼げなかった分を『死霊』系で稼げれば巻き返しも出来る。仮に『死霊王』が大量出現していたとしても死霊特性さえ理解していれば強めの雑魚として扱う事も出来るのだ。

 

「さて、以前は出来なかった『死霊王』対策に付いて話そうと思う」

「『死霊王』と言うと31階層より先に出たダリア頼みで撃破しとったあの怨霊か、即死魔法を使うとか聞いたのじゃが」

「ああ、其奴で間違いない。ここで必要になる知識は彼奴が持つ死霊特性だ」

「死霊特性って事は、他の『死霊』系モンスターも持ってるの?」

「持ってはいる、特に気にせず倒せるけどな」

 

 スキエンティアや猫娘さんに売った『死霊王の衣』にも付与されているこの死霊特性、基本的に物理属性攻撃の無効と闇属性攻撃への耐性を獲得出来る代わりに炎属性が1.5倍、光属性が2倍のダメージになるという結構致命的な側面が有る。それでも40階層迄なら炎属性の魔法を使う敵は『ゴブリンウィザード』だけなので特に気にする要素でも無いし、45階層以降の『精霊』系モンスターは対になる属性攻撃で先制さえ出来ればレアモンスター以外は体力も低いので倒しやすい。50階層までなら『死霊王の衣』は非常に有能な防具となる。対して『死霊王』が倒すのに苦労する点はこの死霊特性を持っている上で魔法防御が高い事に有るのだ。

 

「この死霊特性、無効化することが出来る」

「え、学園で習ったこと無いよ?」

「そりゃ学園で教わるのはダンジョンの基本的な知識だし、25階層辺りまでの対策とかしか教えないしな」

 

 学園の授業で俺が問題だと思ってる点でも有る、50階層までは問題無く潜れる探索者を中堅と扱っているのだからその範囲内のモンスターに対して対策を教える事を義務付けるべきではと思う。

 

「んで、この死霊特性の無効化の条件なんだが」

「複雑なのでござるか?」

「いや、物理以外の属性攻撃を当てればいい」

 

 正しく言うなら物理属性を無効化するのが死霊特性の能力なのだ。『死霊王』の魔法防御は基本が58、階層によりレベルアップが絡み上振れて65に届くか届かないくらいだ。エテルの『ロニセラ』を背後から最大出力で当てれば確定で貫通出来る、正面からでも防御されなければ貫通できる可能性が高い。『死霊王』の物理防御は基本が12でレベルアップでの上昇確率も低い、体力も180前後なので死霊特性を考慮し無い状態なら四葩は確定で一撃必殺。素の状態の俺でも技を使えば殺せるだろうし『エレメンタルハンマー』で炎属性を装填したならば俺でも正面から死霊特性を貫通して殺せるだろう。

 

「死霊特性を無効化した状態なら後は特に問題は無く『死霊王』は倒せる、物理攻撃換算で炎属性攻撃は通るから四葩とタチアでも撃破出来るようになるからレベルアップも楽になる筈だ」

「成る程、他に気を付ける事は有るかのう?」

「そうだな……やっぱり即死魔法だろうな、防御を無視した物だし」

 

 原作ゲームでは確率での即死だったがこの世界ではどうなのかは正直分からない、食らった事など当然無いしな。だが、概念武装の『厄切』であるならば防げると思う。アレは汎ゆる害となる干渉を切り裂けるから、所有者に死を与える干渉など弾く要素として筆頭に上げられるだろう。

 

「死霊特性を無視した上で即時撃破が方針になる……おそらく正面から即死に対して身を晒せるのは四葩だけだろうしな」

「む、妾か……成る程『手鞠花』じゃな?」

「察して貰えて助かる」

 

 お師様が『手鞠花』の完成時に概念の説明をしてくれた時のことを覚えていたのだろう、四葩は直ぐに合点がいった様子で納得してくれた。

 

「戦法としては、エテルが先行するのは前提だが囮じゃなくて相手の背後を突くのが目的になる」

「うん、前にタタラが言ってた高火力が出せるアレだね?」

「ああ、その通り。そこで最大出力の炎属性の魔力弾を叩き込んで貰って、四葩かタチアにトドメを刺して貰う。エテルから気を逸らす為には敢えて四葩が前に出て意識を向けさせるのもアリかな」

「ふむ、即死を無効にする術を持つ妾なら安全じゃろうからな。承った」

「タチアにも後で方針を伝えるが、タチアは逆に助走をつけて『突撃』を使って貰った方がいいだろう。物理攻撃として見るならアレはかなりコストパフォーマンスが高いし」

 

 ランクはⅡだった筈だし、50mも距離を空ければダメージは100上乗せされる。途中で休憩を挟むなら持ち回りで『卵』を持たせて回復しつつ進めば安全性も増す筈だ。

 

「ふむ、一先ずはコレで『死霊』系の対策は良いかの?」

「気になる事が有っても現場じゃないと分からないかも知れないしな、基本方針はコレで決定にしたいと思う」

「なら、次は35階層から先の『ゾンビ』系かな?」

「正しくは『不死』系な」

 

 以前魔法触媒を依頼してきた教師に聞いたが、コレは地味に高確率でテストに出すらしいから引っ掛けとしてかなり優秀な問題らしい。まぁ『不死』系の最弱モンスターが『ゾンビ』だからこその認識だろうし、俺もゲーム知識が無かったらやらかしてた可能性が高い。

 

「コイツらは基本的に炎属性が弱点だ、魔法防御が低いし不死特性の影響で燃えやすい」

「燃えるのでござるか?」

「理屈は分からないけど、な。神官が居るなら『死霊』系共々ターンアンデッドで即死させられるらしいんだが、俺達の中に教会所属でそう言った祝福を受けてる奴は居ないからな」

 

 何となく、俺が何処かの宗派に所属したらいける気が何故かするのだ。ゲーム時代のプレイヤーキャラの特性として、教会に所属して神から祝福を受ける事で神官になる事が出来たから……と言うのと少し違う。軍神様や乙女様の宗派に所属をしたら意味不明な速度でその辺の信仰系魔法が解禁される妙な予感、何故そんな気がするのか分からないのだが何となく俺は宗派に所属するのはダメだと思う。尤も、敬ってはいるけど信奉しない俺が所属していいものでも無いけどな。

 

「『不死』系は死んでいる為か痛覚が無いみたいに多少のダメージを与えても怯みが無い、生物として脳から電気信号は出てるっぽいから頭を破壊すれば動かなくなるからコレが狙い目だな。魔法防御は殆ど無いからエテルの『ロニセラ』なら問題無く頭を吹っ飛ばせる筈だ」

「ふふ、なら私のボーナスタイムだね」

「まぁ、レアモンスターの『吸血鬼』以外ならって話になるけどな」

 

 タチアの確率反転スキルが無ければ31階層以降はエテルの独壇場だったのだ。『死霊』系も『不死』系も基本的に魔法防御が低い為にエテルの『ロニセラ』が特効となっていた。しかし、タチアのスキルでレアモンスターが恒常化してくると話が180°変わる。『死霊王』は先に説明したが、『不死』系のレアモンスターである『吸血鬼』も相当に厄介である。

 

「ではタタラ殿、その『吸血鬼』に付いての説明を願えるだろうか?」

 

 横からそんな言葉を投げかけられ、視線を向ける。風呂上がりで肌が紅潮したタチアが立っていた。口調が以前のものに戻っているのは、もしやあの素の喋り方は二人きりの時限定にするのだろうか?

 

「構わないが、途中からでいいのか?」

「実はエテル殿が共通のアクセサリーで私に会話を送っててくれてな、『死霊王』に付いての対策含めて心得ている」

 

 タチアの言葉に思わずエテルを見ると、悪戯が成功したかのように舌を出している。本当、この娘には勝てそうに無い。

 

「じゃあ『不死』系レアモンスター『吸血鬼』に付いての特性を話していこうか。弱点は炎と聖属性の攻撃で、『不死王』と違い物理攻撃が通る。個体によっては長く生きた結果、その身体を霧に変えたり蝙蝠にしたりと特殊な能力を持つ奴もいる。ただ、一番厄介なのは『性魔術』の魅了系だろうな」

「ふむ、以前言っていた事じゃな」

「ああ、あの時は四葩に『手鞠花』が無くて魅了対策が無かったから撤退の選択をした。まぁ現状だと対『吸血鬼』として完成しているのは四葩になるけどな」

 

 実は『不死王』よりも『吸血鬼』の方がこのパーティでは倒しやすい。四葩が魅了を無効化出来る上に純粋な暴力で『吸血鬼』を倒せるからだ。『概念鑑定』が生物特効故に『不死』系モンスター相手に通らない可能性は有るが、四葩が『手鞠花』を振るってダメージが通るだけ『死霊王』よりも簡単だ。

 

「ふむ、他に気を付ける事はあるかのう?」

「そうだな『吸血鬼』の再生能力……以上に『吸血』に付いても話そうか」

「名前に付くだけあって、その『吸血』が厄介なのですな?」

「ああ、本当に厄介なんだよコレが」

 

 レアモンスターらしくいやらしい特性を持ってる『吸血鬼』の特徴の中でも『性魔術』の魅了と同じくらいに面倒な点として言えるのが『吸血』だ。奴等の『吸血』はエナジードレインと同種の効果などと生易しい物では無く、血を吸った対象の一部ステータスやスキルを一時的にコピーする。更に吸われた対象を眷属化して、対象の『吸血鬼』を倒すまで敵として『吸血』を受けたキャラが立ちはだかる事になる。一応、対策としては『吸血』が物理攻撃判定なので防御力を上げて1としてダメージを受けない事になる。尤も、『吸血鬼』のクソみたいなコンボとして魅了で防御態勢を取れなくしてくる事が挙げられるうえに素の攻撃力が60を越えていて中々に防ぎ難い事に有るのだが。フル装備状態ならウチのパーティの面々で防御を抜かれる奴が居ないの救いだが、素の防御力を考えると俺とエテルが危ういのが面倒に過ぎる。

 

「聞きたいんだが、四葩の今の物理防御って幾つなんだ?」

「うむ、防具抜きなら94じゃな」

「わ、私より高い……」

 

 流石は鬼と言うべきか。人族など歯牙にも掛けない数値である四葩に、タチアがショックを受けている。多分、四葩は物理に反して悲惨な魔法防御をしていると思うが。

 

「そう言えばタチア」

「うむ、なんだろうか?」

「さっき、何か身体に異変起きてないか?」

 

 あの受勲式を得た事でタチアの身体に何か変化が起きてそうだと疑問に思えば、タチアはパンと手を叩いて口を開く。

 

「ああ、先程タタラ殿に……してもらった時に啓示を得ました。内容はクラスアップですね」

「……やっぱりか」

 

 あの翼の放つ光が強まった事、翼が大きくなった事はコレだったらしい。いや、王族でも何でも無い一般人が受勲の真似事だけでクラスアップさせたのは意味分からんが。

 

「新しいクラスは『翼騎士』、ステータスも大きく伸びて魔法防御は100に届きましたよ」

「うそだろ」

 

 魔法防御100越え、普通に50階層のクソギミックボスの魔法攻撃を食らっても無傷で済む数値だ。何なら防具込みで80階層迄普通に通じるレベルだろう、唯一闇属性魔法がタチアの出自的に危ういがそれでも即死は避けられるだろう。

 

「ふむ、タタラと交わればくらすあっぷが出来るのじゃな」

「いや、多分それが要因では無いと思う」

「む、では何なのじゃ?」

「ヨヒラ殿、それは私とタタラ殿二人の秘密にさせて頂きたい」

「……仕方ないのう、妾は許そう。じゃが、此奴(エテル)が許すかのう!?」

「え、私?」

 

 いきなり四葩から話しを振られたエテルは驚きつつも、直前までの会話から内容を察して言葉を紡ぐ。

 

「うぅん……秘密にしたいなら仕方ないかな。私もタタラと二人だけの秘密にしたい大切な思い出も有るし」

「なんじゃつまらんのう」

「流石に暴こうとするのは行儀が悪いでござるよ、四葩」

 

 一華にたしなめられて膨れている四葩の姿に苦笑いをするタチアを眺めつつ、タチアのクラスアップについて考える。

 騎士のクラスアップは基本的に王権を持つ者から受勲される事で発生する。しかし今回は俺がタチアを騎士と認めた事で発生してしまった。誰かから認められる事で騎士になれてしまうのなら、世の中には騎士が溢れかえっているはずだ。

 俺がまた知らない所で変な事をやらかしている可能性は有るのだが、はっきり言って心当たりが無い。お師様(陽出国の鍛冶祖神)から弟子として認められたからといって、王権に匹敵する権力を世界から認められる筈もないのだ。まさか神像を奉じた影響で俺が神々から認められている訳もないしな。

 事の真相は多分『天使長』にでも聞かないと分からないだろう、システム側からの正式な情報が無ければ裏事情など知りようもない。

 

「今回は40階層迄との事ですが……50階層へは?」

 

 会話の間を見て問い掛けてくるタチア、中堅の壁とも言える50階層への挑戦の有無を確認してくる。

 

「正直、準備不足だな」

「そうなのですか?」

「ああ、ボスへ挑む前に属性関係の装備を固めなきゃならないし」

 

 50階層のクソギミックボスを倒す為には最低でも火水土風の四大属性の攻撃と防御を固めなければならない、その為には49階層迄攻略して属性の核石を集めていく必要が有る。しかし、40階層を越えて41階層に潜る時にも既に面倒な敵が待ち構えているのだ。

 

「41階層から出て来る敵は『ハーピー』だからな、飛んでるから俺は砲撃くらいしか対処する手段が無いし。しかも『歌声』の特殊スキルの影響で混乱させられるだろうしな」

 

 飛行の特殊能力を持つ敵である『ハーピー』種、コイツもまたやり難い。特殊スキルである『歌声』が厄介で、防音関係の装備を作らないと此方を幻惑や混乱の状態異常にしてくるのだ。伝説上の『ハーピー』と『セイレーン』が混同したような存在であり、コイツに負けると鳥葬みたいに複数の『ハーピー』に囲まれて子を孕むまで搾り取られるエロが有った。俺達のパーティで男は俺一人なので、犠牲者は俺だろう……絶対に負けらんねぇ。

 

「その『ハーピー』種のレア種はなんなのじゃ?」

「記憶が確かなら『ハーピークィーン』だな、どう言う訳か特殊能力の強化よりも肉弾戦に舵切ったタイプのレア種だ」

「それ、縄張り争いの為に魔法より物理に偏った進化の結果でござらんか?」

 

 一華の言葉に一理有るなと少し納得する。本来の『ハーピー』種は何方かと言えば魔法使い型のステータスであり、特殊能力の『歌声』で此方を惑わせて行動を遅らせた上で強力な中位風魔法を叩き込んでくるタイプだ。その為に純粋に魔法防御を上げるか、風属性を上げればそこまで脅威では無い。その延長線上で『ハーピークィーン』がそのまま魔法関係の能力を強化するかと思えば、物理攻撃が『オーガ』種並に強化された上で空中殺法を取ってくるストロングスタイルに変わってて初見の数多くのプレイヤーは宇宙を背負う事になった。しかも、見た目が時代を越えて継承し7人の英雄を打ち倒す皇帝の話に出て来る7人の英雄のリーダー格みたいな見た目をしているし。

 

「物理攻撃を伸ばした結果、特殊能力関係がおざなりで意外に与し易いかも知れない。とはいえ、無くしてる訳じゃないから意識から外すと危うい」

 

 そう、物理攻撃が痛いからと遠距離戦に持ち込もうとすると『歌声』を使い始めて痛い目を見るのだ。元々が魔法使い型のステータスであるために魔法防御も高く、遠距離攻撃の主となる魔法も中々通じないし速力も高いから弓や銃も当てにくい。使用してくる風魔法も油断すると手痛いダメージを出してくる、何気なく50階層迄で最大の魔法攻撃を誇る『死霊王』に次ぐ魔法攻撃力も持っていて油断ならない相手だったりする。

 

「物理攻撃は『オーガ』、魔法攻撃は『死霊王』と中々に面倒なんだよ」

「話だけ聞くと中々どころかかなりの面倒ではないか?」

「実際に相当な面倒臭さだ。確か魅了に耐性を持ってたからエテルの『性魔術』が一部防がれるし、物理で攻撃を与えるのが主になるから」

「物理って言うけど、『オーガ』並の攻撃力が有るなら防御力も高いんじゃないの?」

「いや、種族としての特性は超えられないからか物理防御は低いんだ。鳥と同じで空を飛ぶ為に骨格の密度は少なく出来てる体質らしい」

 

 確か『ハーピークィーン』の物理防御は20前後だった筈、『死霊王』よりかは高いが誤差だろう。体力も80前後だったから四葩は勿論の事、タチアも『突撃』を使えば即死させられる。

 

「問題は『歌声』対策なんだよな、防音や遮音の効果の魔導具を作らないと……」

「思ったんだけど、それは問題なくない?」

 

 俺の悩みに対してエテルは簡単に言ってくる、問題無いとは?

 

「私達が共有してるアクセサリー、『エリンジウム』対策の防音結界が張られてるよね?」

「……あっ」

 

 すっかり忘れていた、確かにそれぞれのアクセサリーには遮音と念話の効果を付与している。コレなら『ハーピー』系の『歌声』対策として申し分ないだろう。

 

「なら後は武器に属性を付与する装具だな、鍔と柄の何方がいいかな」

「妾は鍔じゃの、握りが変わるのは嫌じゃ」

「私も鍔でお願いしたい」

「拙者は明日の探索は控えさせて貰うでござるよ、お友達の鍛錬の監視が必要そうでござるからな」

「分かった。それなら悪いけど今日は四葩とタチア二人の武器を預かる、死霊特性と不死特性の対策だから炎属性になるのは理解してくれ」

 

 俺の言葉にそれぞれ了承の意を見せる四葩とタチアからそれぞれ武器を預かる、四葩の『手鞠花』は兎も角タチアの『アンドレイア』は装飾として付けているルビーを核石と交換する事で手軽に別属性へ切り替えられるようにしても良いかも知れない。

 

「タタラの武器はどんなのなの?」

「俺のはエテルの武器を作る上で試験的に機構を作った物だな、シャフトに付いてる機構が回転して属性を入れ替えれるようにしてる」

「それ、普通に私の『アンドレイア』に付けられないだろうか?」

「見た目がゴツくなり過ぎて儀礼用に出来ないから、他のを作るなら何とかって感じかな」

 

 作るとしたら参考にするのは前世に有った代表的な国産RPGである最終幻想の8作目に出て来るアレだろうが、何方かと言えばモンスターなハントの砲撃槍の方がタチア向けな気がする。アレを再現するのもアリかな、槍と銃の両方が適性で必要になりそうだけど。

 

「……タタラ、何か不穏な物を考えておらんか?」

「いや、タチアの武器を魔導砲撃機能付きの騎乗槍にして属性砲撃を撃てる様にしたら面白いかもなって考えただけだが」

「タタラ殿、面白そうだが私は槍を使えない」

「何気に使いたがってはいるでござるな……」

 

 四葩の問いに答えたら割とマジなトーンでタチアに拒否されるが、一華が内心を察してる。まぁ、問題がすぐそこに迫るのに新しい武器種なんて試してる余裕は無いしな。

 

「今回の刀装具が上手く出来たら別のバリエーションも作るかな、複数属性が使えた方が対応力も上がるし」

「それは助かるのじゃが、その素材はもう少し先の話になるのではないか?」

「確かに45階層以降での入手だな、落とすのは『精霊』系だし」

 

 ダリアが核石を回収してくれたのは本当に助かった。問題は、俺達が挑む際に高確率でレア種が出る事か。

 

「その45階層のレア種は何になるのだろうか?」

「出て来るのは『精霊王』だが、ちと問題が有ってな。コイツらは各属性に『王』が居るんだがどれが出て来るのかは完全なランダムだ。最悪の場合、6種の『精霊王』が揃い踏みなんて地獄が発生する可能性も有る」

 

 この『精霊王』の空恐ろしいところは、弱点属性以外での攻撃が通らない事だろうか。防御力そのものは物理も魔法も高くは無いのだが、体力は最低でも300は有る。そこに弱点属性以外は通じないという面倒な特性を持っていて、更に下位の『精霊』種をランダムで召喚して敵を増やしてくるし各属性の高位魔法を単体・範囲の何方も撃ってくるのでその害悪さは推して知るべし。前世のゲームで彼奴等にぶち当たって何回全滅させられた事か。

 

「話を聞いていると面倒と言うか厄介と言うか……悪意の塊に思えるでござるな」

「流石のハーフボスを務める種族と言わんばかりの害悪っぷりだぞ」

 

 弱体化してるとは言え四大属性の『精霊王』を引き連れていて、其奴らを片付け無いとボス本体へダメージを通さない上に、倒した『精霊王』の弱点属性順に攻撃を当てないと体力が減らないとか言うクソギミック持ちの種族は格が違う。しかも3ターンで『精霊王』が復活するとか言う開発の悪意の煮凝りみたいなギミックだからな……何が『中間ボスなので拘りました!』だ、インタビューで見た時に殺意湧いたぞアレ。

 

「……はぁふぼす、とは何じゃ?」

「ああ、俺達が挑む『常闇の洞』は全100階層有るって御伽でな。中間で有る50階層を守るこのボスをハーフボスって呼んでるんだ」

「そう言えば、お母さんがよく読んでくれた絵本に有ったねその話」

 

 四葩の疑問に答えると、エテルが思い出したように絵本の話をする。流石にこの都市内でしか出回ってないだろうが、少なくとも都市の住民の殆どが知ってる御伽だ。

 

「ダンジョンが生まれた理由と、この都市が出来上がる迄の物語だからな。此処だと一般的だが流石に外の人達は知る訳がないよな」

「むむ、私も知らなかったな」

「タチアは流石に出自が特殊過ぎて知りようも無いだろ」

 

 都市設立に至る御伽、この都市……というより俺達が通う学園の元となる砦が作られる迄の物語だ。原作ゲーム時代から確かな事実を元として作られた話で、厄災が生まれて人々が困っていた時に竜騎士とその騎竜が活躍する物だ。竜騎士の制止を振り切った騎竜がその命を賭して100に届く厄災の封印をしてダンジョンを生み出し厄災を鎮めた。その騎竜の名前が『ワールウィンド』であり、竜騎士が人々に相棒を忘れられない為にその名を監視する砦へ贈ったと言う形で物語が〆られている。

 その砦を囲うように都市が生まれ、砦から都市に名前が譲られたのがこの『ワールウィンド』と言う都市なのだ。

 起きたのは大体1000年ほど前で、国取りの主人公ことこの国の前皇帝が簒奪する遥か昔の出来事だ。簒奪される前の国だったなら資料が残っていたかも知れないが、今はどうだろうか。

 元の国は簒奪される迄に1000年以上の歴史を誇っていたのだ。

 その膨大な歴史に裏打ちされた様々な資料を国家運営に活かしていないとは思えないが……周囲に王と国を思う余りに暴走した挙句その手の資料を燃やしそうな奴等が複数居たから危うそうだ。過去作のDLCのイベントの中には実際に燃やされた資料を修復する為に東奔西走する物も有ったしな、その中にこの『ワールウィンド』に関する記録が混ざってても驚きはしない。

 結局、あの追加イベントでは一部の資料しか直せてなかったし。

 

「で、この御伽に出て来る中で重要なのは騎竜が施した100の封印だな。ダンジョンの階層はコレが厄災により形を変えた物だと伝わってる」

「成る程のう、それ故に50階層を中間としてはぁふなのじゃな」

 

 軽く御伽を諳んじた後にその中でも必要な情報を伝えれば、四葩も納得してくれる。

 

「このボスを倒す為には各員がレベルとスキルをしっかりと鍛える必要が有るのは当然として、装備も整えないと駄目だからな。俺としては取り敢えず40階層を目指したいが、その先の『精霊』種の核石も欲しい。学生運動が終わった後でじっくり準備に入りたいな」

 

 属性の攻撃と防御は下層へ挑む上では基本とも言える程に重要になる、特に四葩のように純粋に火力が高い特徴を持ってない俺やエテルはその切り替えを適時出来なければ貢献出来ないくらいに。この先『ロニセラ』を強化や進化させる事で魔法攻撃力を上乗せ出来たなら、エテルは十分に火力を出せるが俺はそうでは無い。人間種(ヒューム)であるこの身が恨めしい。

 

 

 そんな風に会議を続けてるうちに、タチアが帰る時間になる。あまり意識して無かったが、初体験の後である為かタチアの歩き方がややぎこちない。

 

「……大丈夫そうか?」

「はは、タタラさんは誤魔化せ無いですね」

「いや、多分他の面子も気付いてたと思うぞ」

 

 特にエテルは昔に経験してるからな、初体験後は部屋から1日出て来なかったのは罪悪感もそうだが身体の違和感からだったろうし。まぁ、その翌日に自室から出て来たら自分で髪を切って更に口調も変わったのは驚いたが。

 

「辛いなら泊まっていけばいいだろ」

「学校寮はその辺りが厳しいんですよ、毎度帰るのが遅刻気味なのも問題視されてますし」

 

 寮生活をした事の無い俺では分からない世界だな。

 

「尤も、私の学年が問題児の塊なので私の帰りが遅い事もあまり問題として扱われていませんけどね」

「それはそれでどうなんだ?」

 

 苦笑いが湧く、タチアの顔も同じ表情が浮かんでいる。

 

「それじゃ、明日ダンジョンの前で」

「ええ、おやすみなさいタタラさん」

 

 最後に挨拶として、タチアからそっと唇を重ねてくる。離れた時、その顔は真っ赤に染まっていてそこそこ無理したのが察せられた。そんなタチアに愛しさを感じてしまう辺り、俺も度し難いな。

 そっとサイファーを呼び出して、タチアの護衛を頼む。俺の頬にその頭を擦り付けるようにして甘えてから、サイファーは高く空へ舞いタチアを追跡する。何か専用の武装でも作ろうかな。

 庭先で今日も鍛錬していたバカ達は既に帰っている、全く顔合わせしてなかったな。明日、バカに今日の分の金を渡さないと。何よりも、雛菊さんとの事で誂わなければならないし。

 

 夕食を終えてから、俺は工房に入る。四葩とタチアの武器に属性を付与する刀装具の作成、そして35階層の悪臭対策の魔導具も作らなければならない。

 先ずは四葩の『手鞠花』に着ける鍔だ。見た目から分かりやすくしたいと思い、鍛造したミスリルを整形して『火』を円で囲む様なデザインにする。点の部位に圧縮・形成した核石を二つ嵌め込み、それを『手鞠花』に取り付ける。元々、刀身にミスリルを使用していた事も作用したのか鍔と刀身が炎属性の魔力で赤く染まっていく。まるで呼吸するかのように明滅する赤い刀身に、あまりにも上手くいった事に我ながらビビる。生まれたての概念武装だから外部からの影響を簡単に受け過ぎるのだろうか?

 次にタチアの『アンドレイア』の鍔に付けたルビーを外して、圧縮・形成した核石を嵌め込む。此方は『手鞠花』の様にはならなかったので、嵌め込みに使った穴の周辺に術式を書き込んでいく。見せ方によっては精緻で美しい紋様になる故に、工夫をしながら鍔と剣身に術式を書き込む。すると、『アンドレイア』の剣身が赤く染まっていった。『手鞠花』に比べて属性の影響はやや弱いが、それでも炎属性を纏えただけでかなり戦術の幅が広がるだろう。いつか『アンドレイア』にも何か特殊な能力を付与出来たらなと思いつつ、鞘に納めてインベントリにしまう。

 続いては空気清浄の能力を持ったマスクの作成だ。本当なら各員の顔を測らせて貰ってオーダーメイドにしたい所だが、汎用の設計にして後々売れないかなと思い今回はフリーサイズにする。

 先ずは素材としてミスリルを取り出す、鍛造や強化はせずに整形だけして両頬の部分に穴を開けて通気孔にする。裏側からメッシュ状にしたセントミスリルを貼り付け『浄化』の術式を付与、コレで外部からの不浄な空気を取り除き肺の中へ吸わせるタイプの毒素をシャットダウンする。鼻の付近に匂い袋を入れられるポケットを作り、装着する為のゴム状素材を付けて完成。前世で顔にフィットさせる立体構造マスクを参考にして少し閉塞感を緩和した、流石にペストマスクはビジュアル的に忌避されそうだし。

 

 

 そうして作業を終えてから風呂に入る、夫婦風呂の広さはやはり落ち着くな。檜風呂を作ってからは入ったこと無いが、少し手狭な方が落ち着くのは小市民である感覚故か。

 

「現実逃避は十分でござるか、ご主人?」

「もう少し逃げさせてくれないか?」

 

 エテルでは無く、一華に背中を流されている現状は果たしてなんなのか?

 疑問に思う中で一華は口を開く。

 

「四葩の次にこの一党に入ったゆえ、先に繋がるのは仕方ないと思うでござるよ。それでも、やはり拙者の方が先に想いを告げた身……愛して欲しいと願ってしまうのです」

 

 そう言って一糸纏わぬ姿の一華は、俺の正面に回って唇を重ねて来た。




と言うわけで、新しいアンケートを実施します。
誰の事とは言いませんので、感じたままに投票をお願いします。
一応、初期は生き残らせる方面で考えてました。


 軽鎧『死霊王の衣』
 物理防御+8
 魔法攻撃+18
 魔法防御+15
 特殊能力『死霊特性』
 死霊系希少モンスター『死霊王』より取れる素材で作ることが出来るモンスター装備。装備者に死霊特性を与え、物理属性攻撃を無効化する能力と闇属性攻撃に高い耐性を持つ。それの引き換えとして炎属性攻撃に対する弱点と光属性攻撃に対する致命的な弱点を得る事となる。
 討伐した『死霊王』が持つ魔導の叡智を記録しているらしく、纏う者に魔法の真髄をもたらすと言う。


『常闇の洞』のモンスター分配

1〜4『ジャイアントバット』『ジャイアントラット』
5〜9『ゴブリン』系
10ボス部屋『ゴブリンロード』
11〜14『オーク』系
15〜19『オーガ』系
20ボス部屋『ハイオーガ』
21〜24『トロール』
25〜29『ゴーレム』系
30ボス部屋『オリハルコンゴーレム』
31〜34『死霊』系
35〜39『不死』系
40ボス部屋『ドラゴンゾンビ』
41〜44『ハーピー』系
45〜49『精霊』系
50ボス部屋『???』

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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