既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント継続中
アンケート実施中、直感でお選び下さい。
「流石に、この量は予想外だなっ!」
「此奴ら、一応希少な部類よな!?」
そんな風に悪態を吐きながら、俺と四葩は其々得物を振る。
武器命中20+122−25=117。命中判定。
炎属性攻撃1.5✕166−24=225。
目前に居た『死霊王』を撃破し、次へ向かう。
31階層で初めて『死霊王』を撃破した後に、出現率が引き上がった。現在まだ31階層だが、撃破した『死霊王』は20を越える。通常の『死霊』系モンスターの出現数がそのまま『死霊王』に差し替わったかの如き数を相手に、即死魔法から逃れつつ只管倒し続ける。途中でレベルも上がり、ステータスが回復しつつも精神的な疲労が溜まる。やはり、即死魔法への警戒が精神に負荷を掛けているな。
武器命中20+122−26=116。命中判定。
炎属性攻撃1.5✕166−12=237。
また1体『死霊王』を撃破する、すると脳裏にファンファーレが響く。1レベルとは言え格上を倒してれば上がるか、ステータスが回復したのを見て次を探す。しかし、室内に居た『死霊王』は全滅していた。
「お疲れ様」
「おつかれ……全員どうだ?」
「私はレベルが上がっているな、そろそろ30に届く」
「妾も1レベル上がったのじゃ」
「私は撃破してないから変わらずだね。あ、でもまた幾つか盗れたよ!」
そう言ってエテルがステアップアイテムを差し出してくる。コレ全部エテルに使えばレベルアップ相当にはなるんじゃねぇかな、此処に至るまで10個は手に入ってるぞ?
「流石に、此れほど迄に『リッチ』戦を繰り返すのは予想外ですね」
「なんで王なんて付いてる奴等がワラワラと現れるんだろうな」
王と言う役職のバーゲンセールである、一応『死霊王の衣』が作れる素材と大から極大サイズの魔石が手に入るから実入りは良いのだが流石に疲れる。
「エテル、道ってどっちだ?」
「待ってね……この先を左かな」
「そっちか、ありがとうな」
「私の仕事だしね」
戦闘で感覚が狂ったのでエテルに確認すると、周囲を確認してから道を指し示す。本当に助かるな。
「まだまだ出そうじゃの?」
「その分レベルも上がり強くなれます」
「ふむ、確かにのう」
思わずといった風に零した四葩にタチアが答えて、四葩も納得する。ダンジョンに対する知識を取得する時間は短くなるが、能力が高まれば後々その時間を確保出来る。それに、俺とエテルは学園に通っているのだ。支えられる筈だ。
そうして先へ進む俺達は直ぐに31階層の階段に辿り着く。一旦各員のスキルを確認させたところ、俺以外の全員が何やらやり始めた。聞けば幾つかランクアップできたらしい、頑張れよ俺の早熟。
そのまま順調とは言えずとも先へ進み、35階層へ辿り着く。その間に俺と四葩はレベルが34に届き、タチアもレベルが32になった。流石に各階層で一人頭10もの『死霊王』を倒してればこうもなるか。
35階層からまた雰囲気が変わり、今度は墓所に近い物になる。
岩肌の壁には赤黒い跡が付いていて、血を思わせる。周囲からも血錆に似た臭いと腐臭が漂う。この臭いを嗅いだ瞬間に、俺以外のメンバーが口元を押さえる。まぁ、そうなるな。
「実感して貰えたと思うが、この階層から臭気が強い。コレを着けてくれ」
そう言ってインベントリから人数分のマスクを取り出して渡す、我先にと手にとって口元に当てて呼吸する三人。すると少しずつ落ち着いていった。
「何ここ、本当に臭い」
「事前に聞いてはおったが、予想以上じゃぞ」
マスク越しのくぐもった声でそう言ってくるエテルと四葩、タチアはまだ呼吸を繰り返している。
「……肺の中に臭いがこびり付くかと思った」
落ち着いたタチアの言葉がコレである。いやまぁ、確かにヒデェ臭いだわな。そう考えつつ、俺もマスクを着用する。口呼吸、しかも浅く短い繰り返す事で臭気を感じないようにしては居たが臭い物は臭いのでこのマスクが重要になる。
さて、あまり声を出す形で肺に負担は掛けたくないので『念話』で会話をするか。
『此処からは敵が『不死』系になる、タチアのスキルを考えるなら敵は『吸血鬼』になるだろうな』
『気にすべきは『魅了』と『吸血』じゃったな』
『基本ステータスも高いと聞きました』
昨日行った作戦会議からの情報を引っ張り出して、四葩とタチアが例に挙げる。
『後は、動物に変化するんだっけ?』
エテルが思い出した特徴を挙げる。実際には早々やる奴は居ないのだが、一応警戒すべき特徴なので思い出せるのは良かった。
『ああ、相当に力が強い『吸血鬼』はやるな』
尤も、原作の『深く深い闇の先で』の中にはそこまで力を付けた『吸血鬼』は現れなかった。この能力を持つのは過去作でもその力が魔王級とされたネームドの『吸血鬼』くらいの物で、設定上では世界に10人も居ないとファンブックには書いてあった。中でも最強格の真祖と呼ばれる存在は、魔神にすら届きうると書いてあった。同時に人間大好きで、絶望の中でも足掻いて前へ進もうとするタイプが特に好きなんだとか。名前は載って無かったが、見た目は何処かの王立国教騎士団の切り札にそっくりとコメントが有った。
つか、前提情報からまんまアレじゃねぇか。間違っても出会いたくねぇ。
『取り敢えず、警戒すべきはタチアか』
『耐性関係を持っていないですからな、『魅了』を発動される前に倒す必要があるでしょう』
タチアも問題点を理解しているので、だいぶ助かる。四葩が敵に回る可能性が無くなって居るが、タチアが敵に回るのも大分マズイ状況になる。敵の盾になられたら、このパーティでタチアの防御を抜けるのが四葩だけなのだ。
『そう言えば、30を越えたからスキルスロットが空いたよな?』
『はい、勝手ながら物理攻撃上昇を取得しました』
『成る程、火力が不足気味だから十分に有りだな』
アタッカーを四葩一人に任せるよりも、前衛に出やすいタチアにもサブアタッカーとしての側面を持たせた方が良い。自分で考えているのなら否定する事は無いな。
『今のうちにアイテムでステータスを上げとくか?』
『それは後でよかろう、『吸血鬼』に一当てした後で問題点を解消する方が良いだろう』
俺の発案に四葩が否を唱える。そうだな、レベルが最大になった時に足りない分を補った方が効率が良いだろう。取り敢えず此処は先に進もう。
エテルを先頭に、先へ進む。敵とのエンカウントがあまりなく、途中で宝箱を見付けては鍵宝箱をエテルに任せつつ回収する。偶にオリハルコンが出るようになったので、装備の強化案に選択肢が増えた事が喜ばしい。そうして感覚として階層の半分程を進んだ時に、遂に見付けた。
金が混じる濃い茶の髪色、瞳は黒。女性にしては背は高いがタチアよりは低い身体のメリハリはそこそこ、四葩よりは胸が大きいが腰はコルセットを考えても太いな。人間から外れた妖しい美貌の持ち主ではあるが、俺の傍らには傾城傾国と言える美貌の持ち主が居るので惹かれる事は無い。
『アレが『吸血鬼』か……妖しい美貌と伝承に有るのは知っていますが、案外普通ですね?』
『タチア、お前も含めてこのパーティに居る女性の容姿の平均は世界に喧嘩売れるレベルだぞ』
エテルを抜かしても、四葩とタチアは勿論家で休んでる一華とダリアも相当な美貌を誇る、それらに見慣れてる俺は例えあの『吸血鬼』に誘われても鼻で笑える自信がある。
『初手、変わらずエテルによる背面攻撃からかのう?』
『まぁ、それが妥当だな。後詰めはタチアで突撃からのバーストエッジで吹き飛ばすのが吉か?』
不死族『ヴァンピレラ』
体力 280/280
魔力 150/150
技力 50/50
物理攻撃 54
物理防御 32+3
魔法攻撃 42
魔法防御 22+3
速力 56
移動力 3
状態異常 無し
特殊 『不死者特性』
装備 『夜会のドレス』
先手で『鑑定』を使いステータスを見ると、魔法防御は低いが体力が意外に高い。パーティ内で情報を共有したところ、エテルが何かを思い付いたらしく発言した。
『ちょっと試したいから私が先行するね。チーちゃんは私の攻撃であの『吸血鬼』が死ななかったら後詰めお願い』
そう言って飛び出して行くエテル、此方は準備が整ってないんだぞ。そうこうしてる内に、エテルは『吸血鬼』の背後に回り両手に持つ『ロニセラ』と『グロリオサ』を発砲する。直後、『吸血鬼』を青い爆炎が包んだ。俺が作った『グロリオサ』の特殊弾頭『炸裂徹甲弾』が、弾頭の流体魔石が着火し『吸血鬼』を包んだのだろう。タチアは突然巻き起こった青い炎の本流に、飛び出すのを控えて様子を見る。あれに突っ込んだら流石のタチアもダメージを負うだろう、かつて『オリハルコンゴーレム』に大ダメージを与えた物と同じなのだから。
青い炎の向こうに人影らしき物が見える、炎が消えた後に残ったのは消し炭になった人型だ。まだ生きてるかと思ったが、『鑑定』を使う前に崩れ落ちる。その場には大型の魔石だけが残ったので、しっかりと殺したらしい。
『……えぇ』
『流石に予想外じゃのう』
あまりにもアッサリと殺したエテルに、流石の四葩もドン引きしている。特殊弾頭が有る限りにはエテルは『吸血鬼』を先制で殺せるのは分かったが、流石に弾の上限が決まっているのであまり続けられないだろう。
『タタラ、コレ盗れたよ』
そう言って差し出してくるのは『吸血鬼』のレア素材、真紅の宝石『ノーブルブラッド』だ。流石に一発でコレを引くとは思ってなかったな。
『随分と美しい宝石ですね』
『見た目はな、コイツは所謂『吸血鬼』の霊核だ』
何故かエテルがその霊核を引き抜いていて、その場には魔石が残ると言う意味不明過ぎる事態が起きているのだが。霊核はとどのつまり高純度かつ高密度の魔石なのだから、普通は何方か片方だけしか手に入らない筈だ。コレもタチアのスキルの影響か?
『コレを含めて幾つか素材が集まれば『吸血鬼』の装備が作れるな』
『強いのかのう?』
『強いぞ、特殊能力がいやらしいしな』
レア種『吸血鬼』のモンスター装備『カズィクル・ベイ』、攻撃した相手からダメージの3割体力を吸収する『吸命Ⅲ』と一定確率で防御力を無視する『貫通Ⅲ』を持つ槍だ。基本性能もそこそこ高いので、扱える探索者にはかなり助かる代物だ。
正直、この『ノーブルブラッド』はコレ以外に使える場面も無いのであまり出て欲しくは無いが。
『エテル、弾はどれくらい残ってる?』
『残りは50発くらいかな、1体に3発使うから16体までは同じ事が出来るよ』
思ったより倒せる数は少ないな、多分此処から先エンカウント率は上がるだろうから温存しつつ俺達で倒しに掛かるか。ボスの『ドラゴンゾンビ』も居るわけだしな。
『エテルは弾の温存をしよう、次は500発くらいは用意しとくからその時に此処でレベル上げに入ろう』
『分かった』
俺の提案に了承をするエテルに安堵する。今回の探索ではエテルだけレベルが上がらないだろう、そこに不満を持ったならどうしようも無かった。何より今回は倒せる手段も回数制限付きとは言え有るのだから、普通なら不満を持つだろう。エテルが俺の言葉を信じてくれて本当に助かった。
そして少し進めば、再び出くわす『吸血鬼』。なんと今度は3体も出てくる。モンスターとは言え、同じ見た目の女性が並んでるのは気持ちが悪いな。
『またも希少種が並んでおるのう……』
『とは言え、まだマシだぞ。本来この階層は『ゾンビ』が大量発生してて、数を片付けるのに時間が掛かるからな。それが小出しで来てくれるなら簡単なもんだ』
そう、この35階層で本来警戒すべきは大量に湧く『ゾンビ』なのだ。『不死』系モンスターが共通して持つ『不死者特性』のせいで変に倒し難く、数が多いので囲んでくる。一応、耐久力以外はカスの領域なので囲まれないように動きながら戦えば対処は出来る。
序に、ゲームから現実になって一番厄介になるのはこの『ゾンビ』だったりする。生物として当然備えている痛覚が無いので、どんなデカい攻撃を当てても一発で粉砕しない限り近寄ってくるのだ。
身体が腐敗している為に『ゾンビ』からの攻撃で傷を負うと雑菌が入って危険な事も有り、早々に燃やす事が最適解だ。
そう考えれば、少数で出てくる『吸血鬼』はまだ対処がしやすい。物理面は高いが、魔法関係の能力はそこまででは無い。エテルの『ロニセラ・リンネ』がダメージを通せるなら、そこまで恐ろしい相手では無いのだ。
『次の階層では『ゾンビ』と同じ数の『吸血鬼』が並んだりするのかのう?』
『流石にそれは死ねる』
冗談抜きに一つの部屋に5から8体の『吸血鬼』なんぞ集まったら勝ち目が見えない、四葩に無双して貰って打ち漏らしを俺とエテル達で狩るしかないだろう。
『取り敢えず、四葩は1体担当だな』
『うむ、妾が『鑑定』する限りでも一人で倒せるのじゃ。任せよ』
弱点属性で四葩の物理攻撃力のダメージが飛んでくるとか、敵ながら可哀想に思えるな。まぁ、同情も何も無く敵なら殺すって判定だが。
『エテルとタチアは二人で1体を頼む』
『分かったよ』
『任されました』
エテルの『ロニセラ』と『グロリオサ』で大部分を削れる筈なので、後詰めにタチアを配置すれば確定で殺せるだろう。
一番の問題は寧ろ俺だ、火属性で弱点を突いたとしても一撃で倒せる火力に無い。なので数発打ち込む必要が有る、連続攻撃によるダメージの拡大は出来はするので何とか他の面子が助けに入れるくらいには弱らせよう。
『それでは、各員準備はいいか?』
俺の呼び掛けに、其々頷く。念話を飛ばしてカウントダウンし、同時に飛び出す。
不死族『ヴァンピレラ』
体力 280/280
魔力 150/150
技力 50/50
物理攻撃 55
物理防御 34+2
魔法攻撃 40
魔法防御 24+2
速力 53
移動力 3
状態異常 無し
特殊 『不死者特性』
装備 『薄手のドレス』
眼前の『吸血鬼』に『鑑定』を使用して読み取った情報がコレだ。一呼吸で懐に入り、技を起動。鎚の連続技【連撃】と『騙し討ち』を使用して攻撃を実行した。
武器命中20+128+【騙し討ち】15−53=90。命中判定。
回避行動を取るかと思いダメ押しで『騙し討ち』を使用したが、相手は防御を取った。使ったのが【重撃】だったのならば倒せなかっただろう。
炎属性攻撃1.5✕(172+【連撃】10)−72=198。連続攻撃。
魔法攻撃66−52=14。連続攻撃。
幻影の攻撃で相手の眼を騙し、初撃を膝へ打ち込む。枯れ木を折るかのような妙に軽い手応えを感じつつ、身体を回転させて打ち上げ気味に相手の脇腹を打ち据えた。最後に打ち下ろす形で相手の頭をハンマーで地面に叩き付けて潰す。堅い手応えと、水風船を潰したものが混ざり合った不快感の有る感触が伝わる。
頭部を潰された『吸血鬼』はそのままハンマーから発される火属性の魔力により焼却される。無事に撃破完了を確認して身を起こす。
周囲を見渡せば、全員無事に『吸血鬼』を撃破できた様子だった。
『全員無事みたいで良かった』
真っ先に思い浮かんだのがこの感想であり、それが伝わったメンバーは改めて仲間を確認した様子だ。互いに無事を確認して頷く、コレならこの先も大丈夫そうだな。
そこからは順調とも言い辛いが先に進めた。言霊とは有るもので、『ゾンビ』の数だけ湧く『吸血鬼』とか言う地獄に出会しつつも何とか39階層に辿り着く。撃破数からレベルも上がっていて、俺と四葩は40目前でタチアも35に届く。スキル関係もランクアップ出来てもいた。
後1階層でボスが待つ部屋と言う事で、警戒しつつも進んでいく。
もしこの先の出来事を語るのなら、運の振り戻しと言う事になるのだろう。
39階層には敵の気配が無かった。エテルが先行して斥候をしつつ、宝箱や採掘場所は見付かるが敵とのエンカウントが発生しない。異常事態に対して嫌な予感がし始める。
『……敵が出ないのう』
『ああ、なんだか嫌な予感がしてくるな。撤退も視野に入れるべきかも知れない』
『それ程か』
四葩の零した思念に対して答えると、四葩も一層警戒を強くした様子だ。
何事も無く探索は進み、嫌な予感はどんどん強くなっていく。
そして残すは次の階層へ降りる為の階段を残すのみとなった時、それと相対した。
仕立ての良い黒い服に、真紅の外套。
艷やかな長い黒髪に、
爛々と輝くのは赤い瞳、それは夜闇の眷属の証だ。
『なん、じゃ……アレは』
傍らに居る四葩が思わずそう零す。無理も無い、四葩の力は魔王にも匹敵するが目前のアレはその域を越える。こんな上層に存在して良いモノでは無い。
『気付かれる前に撤退と行きたかったが、コレは無理か』
『タタラごめん、多分この階層に降りた時点で気付かれてる』
どんな索敵範囲をしてるんだアレは。
「御機嫌よう、若き探索者諸君。その様に怯えずに顔を見せてはくれまいか?」
そうだよな、そんだけの力が有るならダンジョンの魔力に侵される訳が無いよな。
呼び掛けに対して前に出る、念話で先ずは俺一人だけで相対する事を伝えれば引き留めようとする思念が一斉に発された。それを無視しつつ、眼前の魔人に対して『鑑定』をかける。
不死族『不死の王』
体力 870/870
魔力 498/498
技力 299/299
物理攻撃 360
物理防御 188+12
魔法攻撃 231
魔法防御 116+14
速力 113
移動力 3
状態異常 無し
特殊 『不死者特性』『真祖』
装備 『黒い魔銃』『白い魔銃』『真紅の一張羅』
ヤバい、この場にダリアが居ても勝てる見込みが無い。何だコイツ、『天使長』達が居ないと勝てる気がしないぞ。
「ふむ、此方も瞳を使って見たのだから観るのはお相子か。その無礼を許そう」
マズイマズイマズイマズイ、まさか『鑑定』したのを察したのか!?
普通分かんねぇぞ、どれだけ魔力の作用に敏感なんだコレは!?
「此処へ来るまでに随分と同胞を討ってきた様子……腕は確かなようだ」
まさか、此処まで『吸血鬼』を倒してきたから此奴を呼び寄せたのか?
「では、此処まで来た貴殿の名を聞こう」
「……タタラ・ジュロンだ」
「ほう、答えが返ってくるとは思わなかったぞタタラ・ジュロン」
一方的に語っていた相手に答えて見れば、何処か嬉しそうに名前を呼んでくる。認知されたのは不味かったか?
「ではタタラ・ジュロン、お前の背後に居る者達はお前の何だ?」
そりゃバレてるわな、エテル曰くこの階層に降りた時から認知されてるらしいし。
「パーティメンバー……いや。婚約者と、俺を好きだと言ってくれた大切な相手だ」
「ほう、ほうっ!!」
パーティメンバーと答えるの事に違和感を覚えて、正しく関係を伝えたら何故だか俺の答えに嬉しそうな反応をして身を乗り出してくる。
「次の質問は、そうさな……何故此処へ来た?」
「貴方が立つその後ろに有る階段を降りて、其処に座す『ドラゴン・ゾンビ』を倒す為だ」
「ふむ、中々に勇敢な答えだ」
目前の『不死の王』は眼を閉じてゆっくりと頷く。何故だか嫌な予感が爆発的に強くなっていく、答え間違えたか?
「では、改めて挨拶をしよう」
『エテル、狙撃準備』
『分かった』
何処か演劇を思わせる優美な動作で一礼してくる『不死の王』の姿を見て、咄嗟に念話を飛ばす。
身を起こして俺を見据える眼には恐ろしい迄に強い光が宿っている。
「我が名は既に遠く歴史に消えたが、今は『不死の王』や『真祖』と呼ばれる者也」
そう言って両手を広げる『不死の王』は、まるで歌劇に立つ俳優が如く歌い上げる。
「我が同胞を数多く討った貴殿に王として、誅罰を与える」
『エテル!』
『伏せて』
俺の念話と同時に送られてくる指示に従い、その場で伏せる。背後を通ってエテルの放った『エリンジウム』の弾丸が『不死の王』の頸から上を吹き飛ばす。普通ならコレで終わりだが、俺はそう思えずに『重撃』を使用してハンマーを叩き付ける。
武器命中20+138−113=158。命中判定。
火属性攻撃1.5✕(180+【重撃】50)−200=145。
相手の左腕に直撃したハンマーは、肉を潰し骨を砕く感触を手に伝えてくる。追撃をした俺の姿に戸惑いを見せる事無く続いたのは四葩だ、恐らく『鑑定』を使って目の前の敵がまだ死んでない事を察したのだろう。目視が困難な速度で打ち出される銀閃は『不死の王』の身体を刻んでいく。しかし──
『なんじゃ此奴、全く殺せる気がせぬのじゃ!?』
焦り混じりの四葩の念が伝わる、対生物において別格の特効を誇る四葩が殺し切れない存在……それが『不死の王』か。
『四葩、此奴を殺せないのは何でだ?』
『分からん。『鑑定』では確かに殺せてはおるが、殺した先から体力が戻っておるのじゃ。まるで死んだら次の生命を用意して補充でも──』
「戦いの最中にお喋りとは、余裕ではないか?」
畳み掛けるかのように攻撃を続ける中で行われた俺と四葩の念話に割り込むかのような声、エテルに吹き飛ばされた筈の頭部を修復して美しい双眸で此方を見据える『不死の王』が口を開いている。
「中々の強さだが、まだ私を殺し切るに至らないな」
そう告げてから、ゆっくりと両腕を上げる『不死の王』。その先には白と黒の大型拳銃が握られている。
アレだけの物理攻撃力が有って、固定ダメージの魔銃を使う理由……手加減かと当たりを付ける。
武器命中40+113−138=15。回避判定。
乱数が味方して回避出来たが、銃声から考えるにエテルの『グロリオサ』より威力が上だ。直撃しても直ぐに影響は出ないが、当たり続ければ何れ『玄武』が削り切られる可能性も出る。
そんなタイミングで突っ込んでくるタチアは、最大加速を乗せた『突撃』と『バーストエッジ』の合わせ技を相手の心臓に突きこむ。
「中々の威力だ。しかし、まだまだ不足しているな」
「だが、縫い止めたぞ!」
嗤う『不死の王』の言葉に、タチアは叫ぶように答える。それに合わせてエテルの『エリンジウム』による第二射が『不死の王』を貫く。四葩と俺もその勢いに続く。
武器命中20+138−113=158。命中判定。
火属性攻撃1.5✕(180+【連撃】10)−200=85。連続攻撃。
一度で足りないならと『連撃』を使用して体力を削りに掛かる。四葩が観る限りには体力を削り切っても即座に最大まで回復するらしいが、それでも可能性に賭けて体力を削る。
しかし、次の瞬間にはその身体が復元され銃口を向けてくる。銃爪が引き絞られる瞬間、その腕が跳ね上がる。エテルの『ロニセラ』による狙撃が、ダメージを与えられないながらも攻撃を阻害したのだ。
「ほう、良い腕だ」
「人の嫁に色目使ってんじゃねぇよ!!」
武器命中20+138−113=158。命中判定。
火属性攻撃1.5✕180−200=70。
思わず下から『不死の王』の顎を打ち上げる。咄嗟の一撃で何のスキルも乗ってないので、折角の機会を無駄にしてしまった。
のだが、『不死の王』は何処か神妙な顔で俺に言葉を向けてきた。
「愛妻に不躾な視線を向けた事、謝罪する」
「……謝罪を受け入れる」
なんだろう、真摯に謝られると赦してしまう。
「人間が夢魔と夫婦になるなど中々ない、それも心底相手から惚れられているのはな」
戦闘を継続する中でそう語ってくる『不死の王』が持つ雰囲気は、何処か懐かしい物を見るような目だった。近しい相手にそういったラブロマンスが有ったのだろうか?
「普通ならその夜の手練手管に骨抜きにされ、一方的に搾取されるであろう。それを乗り越えた貴殿は正に勇者と呼ぶに相応しい」
「なんだろう、素直に喜べない」
四葩の4連撃で身体をバラされた直後に再生する『不死の王』が、尚も俺に語り続ける。ただ、この事で勇者と言われても喜べないのは何故か。
「タタラ・ジュロン。認めよう、貴様は私を打倒するに相応しい人間だ」
「打倒する為の条件が見えないんだが!?」
魔銃の照準を掻い潜り、再び『連撃』を使用。単発高威力より合計打点の方が『不死の王』には通じているのだ。
武器命中20+138−113=158。命中判定。
火属性攻撃1.5✕(180+【連撃】10)−200=85。連続攻撃。
「なに、私を100万回も殺せば殺しきれるぞ?」
「上等、死ぬまで殺し続けてやる」
『タタラ、お主そんなに敵と仲良くなって大丈夫かの?』
『不死の王』とやり取りをする俺を見て、四葩がそう念話を飛ばして来た。仲良くなってる様に見えるのか、気を付けなければ。
『四葩、さっき四葩が言ってた事がドンピシャだと思う』
『ふむ、先程の『100万回でも殺せば殺しきれる』と言うのが真実とタタラは思うのじゃな?』
『ああ、四葩の『鑑定』で確かに殺せているんだろう。その上で生命のストックをもって自分の死を乗り越えている……多分それがからくりだ』
とんでもないチートである。そうとしか表現出来ない程の不死性で、正直勘弁してくれと言いたい。戦いが好きなのか、一番俺達を仕留めるのに適した無手による攻撃を仕掛けて来ない。殺される事すら戦場の楽しみとか思ってそうだ。
『俺達が気を付けるべき点は、あの魔銃を破壊しない事だ』
あの魔銃を破壊してしまった場合、ダリアすら超える物理攻撃が飛んでくる……流石にその耐久勝負は勝ち目が見えない。俺たちの勝利条件は100万と自称する命を奪い尽くすか、目前の敵が飽きるか納得するまで戦って撤退させること。
あのトリモドキと戦った時よりも遙かに難易度が高いな本当。
「相談事は終わりか?」
「待っていてくれるなんて紳士的だな」
「私は闘争をしたいのだよ、心躍る闘争を楽しみたい……まだまだ未熟なれど向かってくる貴様達が堪らなく愛おしく見える程にな」
「それなら俺達より強い探索者と戦った方がより楽しめるだろ、弱い者虐めは格好悪いぞ」
「確かにな!」
俺との問答を楽しむ目の前の『不死の王』は大声で笑っている。何となく、諦め悪く倒し続けてるからよりヒートアップさせてる気がしなくもない。
「貴様達は実に面白い、歪なれども良き一団だ」
そう言って四葩を指差す『不死の王』。
「お前は優れた剣才に身体能力、魔王に届く才覚を持つ。この中でも随一の戦闘力を誇る」
次に指差すのはタチアだ。
「お前は身を危険に曝す事に躊躇いが無い、この一団で良き盾として随一の勇を誇る」
続いて指差すのはエテル。
「お前の狙撃は実に良い、才覚は無いが正しく敵を打倒する為に磨いている……殺意の強さは随一だ」
最後に俺を指差す『不死の王』。
「しかし、一番狂っているのはお前だ。我が身に振るう技は僅か二つ、それこそがお前が使える武技。戦の才無く、武にも才無し。しかし、その心根だけは誰よりも優れる」
そう言って嗤う『不死の王』は尚も続ける、
「我ら化け物を狩るのは何時だって人間だ。強き意志を持ち、諦めを知らぬそんな人間だ。貴様には資質が有る、この俺が保証しよう。お前は化物を踏破しうる人間だと、この『不死の王』がな!」
全く嬉しくない保証をされても困るのだが、そんな事を言ってられないのでハンマーを構える。その様子を見てか笑みを益々深くして『不死の王』も魔銃を構える。『ドラゴン・ゾンビ』を倒しに来たはずなのに、もっとヤベェもんと戦わなければならない現状に溜息を吐きたくなる。
「さぁ、俺を楽しませろ!」
嗤い続ける『不死の王』は続ける。
「早く早く早く早く!」
口元が裂けんばかりに吊り上がり、目は爛々と輝いている。
「お楽しみはこれからだ、まだまだこの宴は終わらせん!」
「戦に狂ってんのかよ、化物が」
まるで子供のようにも見える『不死の王』に対して思わずそうこぼすと、牙を剥き出しにして問い掛けてきた。
「俺を化物と呼ぶか、ならば俺が化物ならお前はなんだ!?」
「耄碌してもう忘れたのか?」
改めて『不死の王』を見据えて、言葉を紡ぐ。
「俺はタタラ・ジュロン、何処にでも居る人間だ」
俺の言葉に、笑みを深める『不死の王』。
「失礼した、タタラ・ジュロン。お前の名前は我が魂に刻んでやろう!」
堂々と、名前の通り王者の如く覇気を放ち『不死の王』は言い放つ。
「臆せずして掛かってこい、この俺を殺しきってみせろ!」
『不死の王』
ゲーム『DAWN〜深く深いに闇の底でRe:make〜』には登場せず、テキストデータのみ存在する不死族の魔神。
人間好きで戦争狂、特に自身との戦力差を理解して尚も打倒すると言う強い意志を持つ人間を好む傾向が強い。
当人もその生の殆んどを忘れてしまうほどの長命で、その生の中で食らってきた人間の数だけ生命のストックがある。
今回は男の姿で現れたが、姿を好きに変えられる。
温泉好き。
『天使長』なら特に問題なくタイマンで倒せる。
『神殺し』はタイマンで勝率が五分、使徒を揃えれば勝てる。
『前皇帝』はタイマンでは勝てず、徒党を組めば勝てる。
『当主代行』はタイマンでは勝てず、最精鋭を集めれば犠牲を出しつつ勝利は可能。
ダリアはフル装備状態で武器をほぼ消耗しきった上で、残りの近接武装で何とか食らいつき勝てる可能性が有る。
カラムスは『ケラヴ』と『ルーエ』そして『卵』を装備すればギリギリ引き分けられる。
防衛長はタイマン、パーティ何方でも勝てない。
なんかどっかで見たことが有りそうなビジュアルや言動かも知れませんが、開発スタッフの遊び心です()
生存するか否か
-
生き残る(元は生き残る予定)
-
生き残らない