既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント継続中。
アンケート実施中です、直感でお選び下さい。
俺は『不死の王』の言葉と共に駆け出して、ハンマーを叩き込みに掛かる。それに対して『不死の王』は魔銃をしまい、空いた手でハンマーのヘッドを掴もうとする。
武器命中20+138−113=158。命中判定。
火属性攻撃1.5✕(180+【重撃】50)−200=145。
咄嗟に『重撃』を使用して、その腕を叩き潰して対応する。しかし、それが隙になって反撃を許す。
武器命中40+113−138=15。命中判定。
物理攻撃45−87=0。
魔銃を避けきれず銃撃を受ける、入射角の問題で弾けはしたが装甲が凹んでいる。やはり、何発も受けられないか。
「随分と粗悪なアダマンタイトだな、融資してやろうか?」
「アダマンタイトじゃねぇ、魔鉄だ」
「魔鉄……寡聞にして聞かぬな、特産品か?」
「俺が作った新素材だ」
「……何故そんな研究者が探索などしているのだ?」
「色々有るんだよ、色々……」
学生運動やら、子供達の未来の為とか。
「……苦労しているのだな」
「泣きたくなるから同情すんな」
何を考えたのか憐憫の目で見られて気不味くなる。なんか段々化物と言うよりちょっとはっちゃけてる人間に見えて来た。
そんな俺の横から四葩とタチアが飛び掛かり、『不死の王』の生命を削っていく。やはり、火力として重要な役割は四葩だな。
「どうした、まだ一万も削れていないぞ?」
「この短時間で削れてたまるか」
ムカつく横っ面にハンマーを叩き付ける。
武器命中20+139−113=159。命中判定。
火属性攻撃1.5✕(181+【重撃】50)−200=146。即死判定。
頭を吹き飛ばしたら即死判定が出たが、次の瞬間には頭が復元している。それより、此奴との戦闘で攻撃を続けているせいか『物理攻撃上昇』と『速力上昇』が地味にレベルアップしている。生命は奪ってるから経験値は欲しいが、どうなっているんだろうなこの辺。
『タタラ、タチア一旦離れよ。少し大技を使う』
四葩からの念話を受けて、俺とタチアは同時に後ろに飛ぶ。四葩の一瞬の溜めを援護する為にエテルが狙撃し『不死の王』をその場に留めさせ、次の瞬間に四葩の攻撃が入る。
恐らく18連撃を叩き込み、その一撃一撃で『不死の王』の生命を削っているのが分かる。肉体の表層ではなく、奥深くに根付く複数の生命に刃を届かせるとか意味不明な事をしてるな四葩。
「くく、一皮剥けたか娘?」
「悪いが、敵と長く語る舌は持たぬ」
短く答えてから『夜の王』の首を刎ねる四葩、次の瞬間には復元されているが今ので20近くは生命を削った筈だ。何とも遠いが、積み重ねて行くしか無い。
インベントリから魔導具を取り出す、ダリアに譲ってから最近まで新規で作って居なかった代物の改良品だ。その先端を『夜の王』の胸部に突き付ける。
武器命中10+139−113=149。命中判定。
物理攻撃500−200=500致命打判定✕2。
魔導具の銃爪を引けば鉄杭が打ち出され、『夜の王』の心臓を完膚なき迄に破壊する。『オウトエイズル』から機構を冷却する水蒸気が上がる。此奴は起動を外部供給で賄う改良品、威力は変わらないが俺の『玄武』は『錬金術師の卵』を使用している故に魔力の供給を可能としているのでこの改良型は連射が効く。次々に銃爪を引いて鉄杭を連続で叩き込む。
物理攻撃500−200=300。
物理攻撃500−200=500。
物理攻撃500−200=300致命打判定✕2。
次々に鉄杭を加速させて叩き込む、その摩擦熱で本体が加熱を始めるが構わない。更に銃爪を引こうとしたタイミングで『卵』から供給される魔力の上限を越えたらしく、『玄武』が一時的はパワーダウンを引き起こした為に反動を抑え込めずたたらを踏んで離れてしまった。
「くく、良い武器だ。我等『吸血鬼』を殺すに相応しい代物だな?」
「元々は対『ゴーレム』用の武器だってのに、何で『オリハルコンゴーレム』の倍の防御力持ってんだよお前」
変形したパーツを『クラフト』スキルで直しつつ、『不死の王』を見据える。戦闘開始から考えてそろそろ100程生命を削っただろうか。後一万倍か、まだまだ先は長いな。
『タタラ、流石に体力が持つか分からんぞ』
『私も、『エリンジウム』の弾が無くなったら援護出来ないよ』
四葩とエテルからそんな念話が飛んでくる。タチアをチラリと見れば、誤魔化してはいるが息が上がり始めている。コレは、他の三人は撤退させて俺が足掻くべきか?
『なら俺が時間を稼ぐから四葩とタチアは少し休憩を取ってくれ』
『は?』
『エテルは悪い、『ロニセラ』で彼奴の攻撃を邪魔する事に徹してくれ。野郎を殺し続けないと撤退も難しい』
『タタラ、無理しようとしてる!?』
『今は無理しないと死ぬ場面だぞ』
今は俺達の動きを待ってくれているが、痺れをきらせば殺しにくるだろう。目前の存在とエンカウントを果たした以上、俺達は殺し続けないと詰む。
静かに佇みながら自らの魔銃の調子を確認している『死の王』を観察するが、何度も殺されていると言う事実が読み取れない。無傷のまま其処に立ち続ける存在が此れほど迄に心を折りに来るとは。
「どうした、私はまだまだ余裕だぞ?」
「淑女の御色直しくらいは見逃してくれよ紳士殿?」
「くっはっはっはっは……それは失礼した、お嬢さん方」
「少しの間、俺と婚約者の二人でお相手しよう」
「そうか……ああ、素敵だなお前達は」
四葩とタチアに技力と魔力の回復アイテムを渡しつつ、前に進み出る。俺のそんな様子に、何処か恍惚とした表情を向けてくる『不死の王』。
あいも変わらず此方の攻撃は受ける前提らしく、回避の素振りを見せない。
武器命中20+139−113=159。命中判定。
火属性攻撃1.5✕(181+【連撃】10)−200=86。
ハンマーを『連撃』を使い複数回叩き付ける、やはり『オウトエイズル』程に体力を削れないのは辛いものが有るが気にせず攻め続ける。『不死の王』が攻撃動作をしようとする度にエテルが『ロニセラ』の射撃で妨害してくれる為に、攻撃に集中し易い。
武器命中20+139−113=159。命中判定。
火属性攻撃1.5✕(181+【連撃】10)−200=86。
そろそろ技力が厳しくなって来たが、構わず『連撃』を使用する。一回でも多く目前の敵の生命を削る、先は遥かに遠いがそれでも挑み続ける。
「ふむ、攻めが単調になっているぞ?」
「武の才が欠如してんだ、技を求めんな!」
誂うような口調で言われて少し苛立った、思い切り横っ面に一撃を叩き込む。
武器命中20+139−113=159。命中判定。
火属性攻撃1.5✕181−200=71。即死判定。
腰の入った一撃が『不死の王』の頭を吹き飛ばし、生命を一つ奪う。なんだろう、このコント感。
「少しツッコミが熱烈過ぎるな、俺以外は受けられんぞ?」
「余裕過ぎるだろあんた」
さらっと頭を復元させた『不死の王』に頭痛を覚えつつ、それでもハンマーを強く握り直す。横っ面に『重撃』を叩き込めばワンチャン即死を狙えるか?
「心根は強いが、それだけで俺を凌駕出来る訳でも無いだろう。そろそろ絶望するか、人間?」
「絶望なんざ始めからしてんだよ」
心を折りに来たのか語り掛けてくる『不死の王』に答える、眉根を寄せる姿を見据えつつ真っ直ぐ答えを叩き付ける。
「その上で諦めずに足掻いてんだ、見縊んなよ化物」
俺の答えに一瞬呆けた表情を見せて、盛大に嗤い出す『不死の王』。そんなに面白い事を言ったか俺は。
「ああ、素敵だ。人間は実に素晴らしい」
「愚かで弱いって思うなら正直にそう言えばいいだろ、潔く死を受け入れろとか思ってるんだろ?」
「まさか、とんでもない!」
俺の言葉に対して大声で否定してくる『不死の王』、その声は迫真とも言えるもので本心から否定しているのが何となく分かった。
「お前のように絶望を飲み込み、死を前に足掻いて生を欲する……此れほど素晴らしい事が有るか?」
問い掛けに見せて、その実は持論の展開だろう。人間を遥かに越える化物が何を思うのか、黙って先を聞く。
「特別な強さも才も持たず、それを自覚した上で弱さを補う武器を用いて遥かに強い化物と相対しあまつさえ幾度と生命を奪う……それを認めずして何が打倒されるべき化物か!」
化物の矜持ってやつだろうか、いつか討ち滅ぼされる為にってそう願いながら力を付けてきたのがこの『不死の王』なのかも知れない。まぁ、俺からしたら加減しろ莫迦と言いたいけどな。
「先程の杭打ちは見事だったぞ、アレなら私を含めない『吸血鬼』はほぼ全て打倒出来る!」
恍惚とした表情になり俺に向かって手を伸ばしてくる『不死の王』、その手をエテルの狙撃が弾く。
『私のタタラに触るな馬鹿』
嫉妬してもらえて嬉しいのだが、何の痛痒も得ない『不死の王』の姿にげんなりする。
「素晴らしい、素晴らしいぞタタラ・ジュロン!」
なんだかその眼に怪しい光を見た気がするのだが、嫌な予感は無視するに限る。悠久の時を生きた果てに性別を気にしなくなってたりしたら嫌だし。
「我が至高の怨敵よ、今だ力が足りぬ未熟な勇者よ」
その手に持っていた魔銃をしまう『不死の王』、マジか……此処で本気を出すか。
「生き残って俺を殺せよ、そうさな……10度も殺せば退いてやろう」
「上等、直ぐに殺してやる」
俺の言葉に笑みを更に深めたかと思えば、次の瞬間には目前に拳が迫っていた。流石のエテルは反応して射撃を当てて逸らせようとするが、一切を無視して俺の顔面に拳が迫る。
「たー!」
そんな時に俺のインベントリから飛び出した中たたらが勢いよく俺を突き飛ばし、拳が直撃する。鍛造ミスリルの頑強さを持ってしてもその勢いを殺せず、大きく身体が凹む中たたらは思い切り吹き飛ばされる。
俺はそうして中タタラが稼いだ時間を使い、『重撃』と『騙し討ち』を使用した一撃を『不死の王』の心臓へ向けて振り抜く。
武器命中20+139+『騙し討ち』+15−113=61。命中判定。
火属性攻撃1.5✕(181+【重撃】50)−200=146。
反撃として打ち込んだ為に相手が回避を取ることは出来ないが、既にわざと受けると言う様子が無くなっている。心臓を収める胸骨へ全力でハンマーを叩き込むと『不死の王』は吐血する。
「ふは、眷属を持つかタタラ・ジュロン!!」
「生憎とゴーレムだ、意思は持ってるけどな!」
一殺は叶わなかったか、ならその心臓にまた『オウトエイズル』をぶち込む!
左手一本でハンマーを持ち、右手でインベントリから取り出した『オウトエイズル』を操作し心臓へ向けて突き込む。
武器命中10+139−113=36。命中判定。
判定は命中だ、しかし空振る。目の前に居た『不死の王』の姿は立ち消えて、俺の周囲を複数の蝙蝠が舞う。此処に来て動物に身体を変化させて俺の攻撃を避けたのだ、世界の提示した判定を覆して。
「マジ、か……っ!?」
「済まないな、化物は嘘吐きで人を騙すんだ。勉強になったな?」
背後から耳元へそう囁かれる、背筋が寒くなったが理由はなんだろうか。それと怪しく腰を撫でるな色んな意味で怖い。
「タタラに変な触り方禁止!!」
エテルの『ロニセラ』が凄まじい勢いで連射され、『不死の王』を横から殴り付けるように直撃した。軽くぐふっみたいな声を漏らして『不死の王』が俺の背後から離れた。視線を向ければ、いつの間にか距離を詰めた四葩の刃が『不死の王』を切り刻む。復帰した直後には全速力で加速したらしいタチアの『突撃』が『不死の王』の心臓を穿つ。
「ふは、本気だな!」
「タタラを男色に染めるで無いわ!」
「タタラ殿は私達を愛しているのだ、男色は控えてもらいたい!」
ああ、うん。心配したの其処なのね?
なんだか『不死の王』もちょっと微妙な表情してないかな、自分に向かってくるのがそんな感情と思いもしなかったろうし当然なのか?
「第一、タタラが好きなのは大きいおっぱいなの!!」
「仲間を刺すのやめよ?」
こんなところで性癖バラされても俺が傷付くだけだろ。
「ふむ、俺も巨乳だが?」
「貴方のは胸筋、私達のはおっぱい!」
「だが、そちらの剣士はそこまで大きく無さそうだが。何なら俺の方が大きいまで有るぞ」
「それを言ったら、戦争じゃろうが!!」
段々グダグダになって来たな、その間にも俺は身体を休めてスタミナの回復を行う。視線を向けると、中たたらも身体の損傷が直っていた。どうやら『体力回復Ⅴ』が正常に作動したらしい。
さて、時間を貰ったから次の攻撃の準備だ。相手は蝙蝠になり回避を行った、遂に特殊能力の一つを解禁してきた訳だが同時に何とか出来る状況でも有る。感覚から言ってあの蝙蝠は上層の『ジャイアントバット』に毛が生えた程度の能力だ、それならあの状態でもダメージを通せばいい。
『エテル、そのまま反応しないで聞いてくれ。この後俺がもう一度『オウトエイズル』を使って心臓を狙う、其奴が蝙蝠になったら『グロリオサ』の特殊弾頭で焼き払ってくれ』
『分かった、任せて』
口論をしながら俺の念話に答える辺り、相当な役者になっているエテル。念話は共有されている中で、四葩とタチアは実力行使と言わんばかりに武器を構える事で俺の動きから『不死の王』の意識を逸らした。
俺は一度息を吸って、止める。意識を集中させて駆け出した。
武器命中10+139−113=36。命中判定。
瞬時に距離を詰め、意識から外れていた筈だが驚異的な反射神経で蝙蝠に変化される。しかし、エテルの早撃ちはその蝙蝠達に特殊弾頭を直撃させ青い爆炎を発生させた。
俺も巻き込まれたが、来る事が分かっていた為に魔力を集中して防御する。
魔法攻撃120−234=0。
想像以上の衝撃を受けるが、同時に周囲を囲っていた蝙蝠達が焼け落ちる。灰から再度復元される『不死の王』、その復元中の心臓部へ向けて再度『オウトエイズル』を突き込む。
武器命中10+139−113=36。命中判定。
物理攻撃500−200=500。即死判定。
「まさか、中々の策士だな?」
「あの言い合いは素だけどな」
称賛を貰うことが何だが心苦しい、だが確かに生命を一つ奪った。
「褒美だ、受け取れ」
武器命中30+113−139=4。回避判定。
腕を犬の頭に変化させた一撃をギリギリで避けれた、本気で能力を解禁しやがって。
その犬の頭になった腕を四葩が切り落とし、返す刀で身体を真っ二つにする。やはり四葩にメインアタッカーを頼むしかない。
「褒美を受け取らないとは、ひどいじゃないか?」
「それ貰った場合、下手したら死ぬからな!?」
「殺し合いをしているのだ、殺されもするだろう?」
「否定は出来ないな!」
何とか回避行動で崩した体勢を整えようとする、そんなタイミングで『不死の王』が眼を合わせてきた。不味い。
「ふむ、『動くな』」
強力な『性魔術』による干渉が届く、そりゃ『吸血鬼』だから持ってるとは思っていたが此処で使うか。意識を集中し、魔力を循環させて全力で抵抗する。しかし、それが致命的な隙になった。
「ほれ、今度こそ褒美だ」
「タタラ!」
四葩の悲鳴が届く、当人は呼出されたと思わしき犬の使い魔に囲まれて即座に行動が取れない。そんなタイミングで、タチアが俺の前に立った。
武器命中30+113−139=143。命中判定。
物理攻撃360−202−87=71。
タチアが大部分のダメージを引き受けてくれたが、それでも俺もダメージを受けた。タチアが犬の頭に噛み付かれ、くぐもった苦痛の声を上げる中で俺は勢いよく吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。
「タチアを離すのじゃ!」
次の瞬間には使い魔を全て斬り伏せた四葩が、『不死の王』の腕を斬り落とす。タチアの身体を抱き、その場から飛び退いた。
「ククっ、コレで形勢逆転か?」
面白そうにそう声を上げる『不死の王』、俺は壁に叩き付けられたショックで息が詰まり即座に動けない。エテルが気を引こうと『ロニセラ』を発砲する、大したダメージを受けてない事に嗤いながらその顔をエテルに向ける『不死の王』が見えた。
エテルに危機が迫ってるから動かなきゃならないのに、身体が言う事を聞かない。動けよこのポンコツが、今動かないで最愛の相手を亡くす気かよ。
震える脚に力を込めて、無理矢理立ち上がる。壁に背を預けた情けない姿だが、動ける。
『タタラ、暫く休んでおるのじゃ』
四葩からの念話が届く、力の入らない身体を無理矢理起こすとエテルの前に立ち『不死の王』を斬り裂く四葩が見えた。
『エテルは妾が守ろう、タタラは逆転の手段を考えておれ』
四葩は『不死の王』の動きを見切り、全て『手鞠花』で迎撃している。隙が見えれば生命を奪いに行っているが、使い魔が割り込む形で邪魔をしている。『概念鑑定』で『不死の王』を観ていても、使い魔までは対応出来ないか。
俺が出来る逆転劇、俺に何が出来る?
俺に備わっているのは物を作る技能だ、それで何が出来るだろう。
ふと、視界に入る赤に気を取られる。この赤は俺の血、額が割れて流れ落ちる血だ。
血、『吸血鬼』の求める物。『吸血鬼』が喰らう物。そうだ、奴等はこの血を啜って存在している。そしてそれは、その身の内に練り上げられた魔石にも宿っている。
インベントリから『ノーブルブラッド』を取り出す、コレだけではモンスター武器の『カズィクル・ベイ』は作成出来ない。
だが、何故俺はモンスター武器を一つの形に押し留めている?
俺には新たな魔導具を考案し、作成する力が有る。それならば、従来の法則に縛られたモンスター武具に拘る必要は無い筈だ。そうだ、コレも高密度の魔石なのだから使い道は幾つも有る。
有りったけの『ノーブルブラッド』と、同じ数だけのミスリルインゴットを取り出す。頭に登った血は流れ落ちて、冷静な状態を保っている。この精神なら成功できると確信して、『クラフト』と『錬金術』でミスリルの昇華を実行する。そうして出来上がる、血の如き赤に染まったミスリル。差し詰め『ブラッドミスリル』とでも名付けるか。次々にミスリルを昇華させて、『ノーブルブラッド』は全て『ブラッドミスリル』へと変えた。
そうして出来上がった『ブラッドミスリル』を『クラフト』して、一つの槍を作り出す。
出来上がるは血の如き赤き魔槍、名付けて──
「魔槍『ワラキア』、それがお前の名前だ」
俺の言葉に呼応して、魔槍が脈打つ。その反応に気を良くして、杖代わりにして立ち上がる。マスクは衝撃で外れたのか、近くには無い。後で探さなければなと思いつつ、槍を構えて『不死の王』を見据える。
俺の視線に気付いたのか、『不死の王』は振り返って俺を見る。
「ほう、今度は槍か。それに素顔をようやく見れたな、中々の男振りではないか」
「褒めて頂けて恐悦至極。両親から貰った大切な容姿だ、自慢できる事の一つさ」
俺の言葉に何処か優しい表情をする『不死の王』だが、俺にはそれを気にする余裕は無い。コレからの行動の為にインベントリから『祝福の癒薬』を取り出して呷る、乙女様の祝福が俺の身体を万全な状態に戻した。
「俺には武の才が無い、戦の才能など以ての外。俺は『クラフター』……創る者だ、お前を打倒する武器を此処で創ってやる」
俺は本来戦える人間じゃ無い、俺は本来作り手なのだ。其処を履き違えていては、目の前の化物に勝てない。
勇者では無く、勇者の武器の作り手。勇者が求める『吸血鬼』殺しの武器を作り出すのが俺の仕事だ。
「ならばその槍がそうだと言うか?」
「知らん、それはコレから証明する」
全身を引き絞り、刺突の体勢。全身全霊を込めて、奴の心臓を穿つ。
「では、受けてやろう……来るがいいタタラ・ジュロン」
その言葉に応えるように、俺は『玄武』の噴射機構を全開にして前進した。全身の捻りを解き放ち、噴射機構の勢いすら全て乗せて『不死の王』の胸に魔槍を突き立てる。
武器命中30+139−113=169。命中判定。
物理攻撃204✕99−200=799。
胸骨を、その先の心臓を貫き背から穂先が飛び出した後に魔槍は砕ける。俺の試剣術が魔槍の耐久力全てを攻撃力として乗せ、結果として砕け散る未来を導いた。
「ククク……武具の耐久力を全て攻撃力に乗せるか、だが私はまだ死に切ってはいないぞ?」
「ああ、けれど……終わりだ」
砕けた魔槍が赤く輝く。貫いた敵の血を啜り、その身を歪に変えていく。砕けた破片を繋ぎ合わせ、貫いた者の血管に身を解いて大樹の根が如く広がり……その全身を内側から貫く。
魔槍は『不死の王』の無限とも言える量の血を啜り、その身を拡大していく。毛細血管の一本一本まで拡がった魔槍はその細い穂先を全身から生やした。
「コレが俺なりのお前を打倒する武器、『魔槍ワラキア』だ。『吸血鬼』のモンスター武器である『カズィクル・ベイ』の『吸命』を自己再生と自己強化、そして自己拡張に転用する武器……お前の生命を啜りお前を殺し続ける魔槍」
そう説明してから身を離す、赤い歪な木の根の様になった『不死の王』へ言葉を続ける。
「俺は鎚以外の武器を扱うのが下手で、その武器の全力を発揮しては壊してしまう。この武器は壊れてから本領を発揮出来る武器で、お前の強さに頼らせて貰った」
聞こえているだろう、そんな確信を持ちながら説明を続ける。
「俺達人間は弱くて卑怯だから、強くて優しい化物の矜持を突かせて貰った。俺達の創意工夫を受け止めてくれるお前だから、上手くできた」
俺は息を一つ吐いて、最後の言葉を放つ。
「ありがとう、そしてごめん。こんな卑怯な手を使って」
その言葉を最後にして、タチアの所へ向かう。『不死の王』の牙に腹部を貫かれているのだ、『癒薬』で治療しないと。
「タチア、動けるか?」
「タタラ、どの……」
マスク越しのくぐもった声、直後に咳込んだ姿に内臓を損傷したのだと当たりを付ける。直ぐにマスクを外し、癒薬を口元に運ぶが上手く飲み込めそうにない。仕方ない、俺は口に『癒薬』を含んでから口移しで飲ませる。タチアは一瞬の硬直の後、ゆっくりと『癒薬』を嚥下していった。
すると、直ぐに効果は出てタチアの傷は塞がった。その姿に安堵して、乙女様へ感謝の念を送る。
「……すまない、タタラ殿。盾である私がこんな無様を」
「何を言ってんだ、俺を守った名誉の負傷だろ。傷が残っても責任取るから気にすんな」
「……そうですね」
気にしているタチアにそう答えれば、薄く笑みを浮かべて返してくれる。しかし、今回みたいな特殊な敵と相対した時の為にタチアの『アーラ』の上位機種を作らないとな……俺の『玄武』も装甲を変える必要が有りそうだし。
そんな事を考えていると、影が差した。誰かが背後に立ったらしい、タチアの表情は驚愕と言うより絶望と言ったそれ。そう認識した瞬間、タチアを突き飛ばした。
物理攻撃400−87=313
背後から伝わる冷たい感触、そして腹を突き破る白刃。
「結構な自信作だったんだけど、なぁ」
内臓をかなりの箇所傷付けられて、吐血する前に零したのはそんな言葉だった。
「ああ、とても良い武器だったとも。あのまま死んでいても良かった……が、まだ足りんな」
力が抜けて倒れ伏す俺の背に、聞き慣れてきた声が降る。何とか首を動かして視線を向けると、赤い外套はそのままに黒い全身甲冑を纏った姿の『不死の王』が剣を片手に立っていた。
遠くからエテルの悲鳴が聞こえる。立たなきゃ、安心させる為にそばにいなきゃ。
「お前の作った槍は私の生命をそれこそ100は奪い続けた、私を拘束したまま私の生命を喰らい私を殺す……凄まじい武器だった」
髪を掴まれ、持ち上げられる。痛みが薄い、腹から流れ落ちる物の方が痛いだろうし脳が痛覚をシャットアウトしてるのだろう。だめだ、ねむい。
「しかし、まだまだ死んでやれんな。タタラ・ジュロン、次は何を魅せてくれる?」
思考が乱れてる、正常なものはむりだ。ねむい、眠れない。起きてなきゃ、おきれない。
このまま目を瞑れば眠れる、けれどダメだ。
「ククっ、そうだ。お前は足掻き続けるのだ、我等化物を殺す為に、最愛を守る為に足掻き続ける運命にある!」
勝手に俺の運命を決めんな、俺の運命はエテルだ。エテルと共に在る事が俺の運命だ!
意識を無理矢理繋ぐ、ゼロ距離信管を稼働。目標は目前のクソ野郎。生き汚いのはお互い様だが、いい加減にしてくれ。
「勝手に、人の運命を決めんなぁ!!」
無理矢理言葉を発した口から吐血する、『不死の王』の顔に盛大にぶっ掛けてしまったが気にしない。両肩のプレートが開き、36発の弾頭が発射され即座に起爆する。諸共吹き飛ぶつもりだったが、『不死の王』は俺を抱き締めるように覆い被さり一身にその爆撃を浴びた。
助けられたのだろうか?
気力を振り絞ろうにも意識が限界だ、思考が纏まらない。
「タタラ・ジュロン。此度は退こう、心躍る闘争で有った。褒美として、お前達の生命を保証しよう」
腹を貫かれた俺の生命は保証出来るんですかね……あぁクソ、もう限界だ。
「少々、お前の血は甘美過ぎる。此処まで純粋な人間の血など久方振りでな、思わず酔いそうだ」
ああ、そうかい。
「では、また運命の交錯する時に会おう。さらばだ」
身体に掛かる圧力が消える、俺を抱き締めていた『不死の王』が何かしらの能力でこの場から転移したのだろう。そんな事を認識した直後に、俺の意識は闇に落ちた。
『魔槍ワラキア』
物理攻撃+50
特殊能力『吸命Ⅴ』『貫通Ⅲ』『自己修復』『自己強化』『自己拡張』『侵食』
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない