※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中
『看板娘』イベント継続中

アンケート実施中です、直感でお選び下さい。


選択の果ての理不尽

「タタラ……タタラ……」

 

 遠くで何か聞こえた気がした、そして身体が揺さぶられるような感覚。

 

「タタラ、うぅ……タタラ……」

 

 声の主は愛しい1人のひと、大切な……とても大切な相手だ。

 

「タタラ、タタラ……んぁっ!」

 

 身体の揺さぶりが大きくなった、早く目覚めなくては。

 

「タタラ、タタラ、タタラ!!」

 

 ……なんだろう何かがぶつかるような音が聞こえると言うか、揺さぶりと言うかこれ腰の上で何かが動いてる?

 

「タタラ凄い、奥に届いてる!」

 

 待て待て待て待て、嫌な予感しかしないぞこれ!?

 起きて大丈夫か、ショッキングな光景が広がってたりしないか!?

 

「ダメ、イクっイッちゃうよぉ!!」

「おい馬鹿何やってんだ!?」

 

 思わず叫んで目を開けば、全裸のエテルが俺の上で腰を振っていた。いや、マジで何やってんの!?

 

「あっはぁ、起きたぁ♡」

「起きた、じゃないよ!?」

 

 起き抜けからエテルが開脚で結合部を見せ付けるように騎乗してた。何を言ってるか分からないと思うが、俺も何を言ってるのか分からない。頭がどうにかなっちまいそうだ……って訳でも無いな、割と頻繁にある光景な気がする。

 と言うか、此処は何処だろう?

 

「あの、エテル……むぐっ!?」

「タタラんむ、タタラ!!」

 

 身を倒したエテルに唇を重ねられる。舌で口内を舐られて、身体が興奮していくのが分かる。いや、それより此処は何処なんだよ本当。薄暗くて壁が岩っぽいが、見覚えは……いや何か見覚え有るな?

 等と意識を逸らしているが、もはや愚息は爆発寸前だ。上手く動かない両腕を動かしてエテルの臀部を押さえ、最奥に向かって射精する。色々な物が抜けていくような感覚と共に、エテルの身体から何かが流れ込んでくる感覚がした。コレは、生命力的なものだろうか?

 

「えへ、タタラ起きた……タタラ……ひぐっ」

 

 蕩けたような顔から、段々と歪んでいく。両目から大粒の涙が次々と流れ落ちて、遂には本格的に泣き出した。そんなエテルを抱き締めて居ると、横合いから声が掛けられる。

 

「漸く目覚めたのじゃな、タタラ。全く心配させおって……」

 

 涙目かつ震える声でそう語り掛けて来たのは四葩だ。潤んだ両目なのはそれだけ心配させたからだろう……それよりも裸なのと髪に白濁した何かが付いてるのはツッコミ待ちだろうか?

 

「全くですよ、こんなに心配させて……」

 

 目を拭ってそう言ってくるタチア。あの、裸かつ胸に白濁がこびり付いてるのは無視した方が良いですか?

 

「取り敢えずさ、現状を説明してくれないか?」

 

 俺の言葉に対して、三人は頷いた。誰かツッコミ役連れてきてくれ。

 

 話を纏めると、俺は『不死の王』と戦った際に死にかけていて緊急でエテルが『性魔術』の一つ『慈母の揺り籠』と言う魔法を使う事を決めたらしい。コレは使用者及び同意を得た者から生命力を譲渡し、対象を癒す物なんだとか。その為には対象と交わらなければならず、更にエテル一人では生命力が足りないと言う事で二人からも分けてもらう為に肌を重ねる事を決めたらしい。

 その為に先ずは階層を降りてボス部屋の前に来てから俺を脱がして三人で一緒に舐めたり、三人で挟んだりして生命力を統合した上でエテルが跨ったのだとか。三人で、とか少し見てみたかった光景だが逆に正気だったら耐えられなかったかも知れない。

 魔法の影響で俺の身体、どころかタチアの身体も傷一つ残らない綺麗な物になった。回復力が凄まじい、何でも身体の欠損も早期に対応したなら治せるのだとか。とんでもねぇな。

 

「あの変態との戦闘では経験値を得られんかったのじゃが、その分スキルの方が上がってのう。『剣適性』と『威圧』がコンプリートしたんじゃ」

「マジか」

 

 武器適性スキルは上がりにくいのだが、コンプリートまで行くとはな。枠が二つ空いたのか、何を選ぶんだろうな。

 

「そこで聞きたいのじゃがな、一つは父上と母上から言われてるので『歌唱』にするのは確定なのじゃがもう一つは何にするべきかのう?」

「俺に聞いていいのか?」

「妾はタタラに染められたいのじゃ」

「言い方」

 

 とは言え、現状四葩が取る方が良いスキルか。高火力はそもそも備わっているので、必要になるとしたら機動力か?

 

「即時効果の有るスキルとしては『移動力上昇』だな、今回の『不死の王』みたいな事案の対策として『物理攻撃上昇』もオススメだが」

 

 四葩には特殊な火力上昇を取得させるより、基礎火力を上げる方が劇的な効果が出る。まぁ、確定クリティカルの性質を活かしてクリティカル威力が上がるスキルを取らせるのも手段の一つだが。

 

「ふむ、タタラはどうして欲しいのじゃ?」

「先に『移動力上昇』を取って、何時でも側に来て欲しいかな」

「なら『移動力上昇』じゃな」

 

 軽くないか?

 

「言うたじゃろ、妾はタタラに染められたいのじゃと」

「そうか……ところで四葩」

「何じゃ?」

「髪に白濁した物がついてるから拭き取った方がいいぞ」

「先に言え!?」

 

 俺の肩を軽く叩いた後、布巾を出して髪を拭う。エテルが苦笑いした後に布巾を四葩から奪って髪を拭いてやっている。

 微笑ましい光景なのだが、二人とも服を着ようぜ?

 

「タチアはどうだ?」

「私は全体的にランクが上がった程度だ、少し強くなったが目立った変化は無い」

 

 タチアに問い掛ければそんな返答が返ってきた。

 

「タチアさ、相談なんだけど」

「ふむ、なんだろうか」

「次は物理か魔法の防御を取ってくれないか?」

「ふむ……今回の事を考えるならソレも必要、か」

 

 俺の言葉にタチアは考え込む。これまでは必要無かったが、今回のようなイレギュラーはこの先可能性が増えていくだろう。回避としては『白刃流し』等を取得するのも手では有るが、それなら合わせて『技力上昇』も欲しいし何より被弾の確率は残る。

 タチアは今回俺の盾になって『不死の王』の一撃を受けた、あの時に防御がもう少し高ければタチアも大きな怪我を負わず済んだだろう。この先『貫通』持ちの敵も出て来るが、何方かと言えば数は少ない。物理と魔法の防御上昇が不要になる事は無いのだ。

 

「分かった、何かスキルをコンプリートしたのなら先ずは『物理防御上昇』から取得しよう」

「ありがとうな、タチア」

「気にしないでくれ。私も……その、タタラさんに染められたいし」

 

 顔を赤らめて可愛らしい事を言っているが、裸で胸の間に俺の精液を付けながら言う台詞では無いと思うんだよね。

 それぞれが身形を整えて、改めて目前の40階層のボス扉に向き合う。俺のマスクは中たたらが回収してくれていて、ボスを前に臭気対策は万全である。

 

『さて、コレからドラゴン・ゾンビなんだが……ぶっちゃけていうが『不死の王』の後だから多分雑魚扱いになると思う』 

 

 念話でそう告げる。エテルが『エリンジウム』の弾丸と『グロリオサ』の特殊弾頭を使い切っているが、ぶっちゃけ誤差にもならないだろう。

 

『正直、あの時作った『魔槍ワラキア』が有れば瞬殺は出来なくても楽に勝てたんだが』

『あの変態が持って帰ってしまったからのう』

 

 そう、『魔槍ワラキア』は『不死の王』に持ち逃げされた。目撃したエテルと四葩曰く、奴は『ワラキア』で拘束されてる時に霧に変化して身を逃した後にインベントリへ『ワラキア』をしまったらしいのだ。どうせ今回の探索で手に入れた素材で作った物だからプラス・マイナス0だが、持ち逃げされたのは素直にムカつく。

 

『で、でもあの人も剣を忘れていったし……』

『確かに業物だが……納得出来ないっての』

『そうは言うがの、アレ明らかにタタラ向けの武器じゃろ』

 

 エテル達が言う忘れていった剣とは、俺を背後から刺し貫いたあの剣だ。鑑定した際に判明した銘は『名剣アルカード』と言う物だったが、少し珍しい能力が備わっていた。それは『破壊不可』、四葩の『手鞠花』と同じく壊れない武器である。どうも長い時を越えた逸品らしく、概念武装になったようでその結果得た物のようだった。

 確かに俺の試剣術向けの武器ではあるが、あの野郎のお古と考えると素直に喜べない。

 それはそれとして、『ドラゴン・ゾンビ』についてだ、

 

『相手は腐っててもドラゴンだから、気を付けるのは巨体による攻撃とブレスだ。特にゾンビ化の影響で火炎は撃てなくなったが毒ブレスを吐くから注意な』

 

 直接浴びたら危険だが鼻と口はマスクで塞いでるから避けた後は比較的安全だったりする。身体が腐った影響で、ドラゴンが持つ敏捷性が失われているから攻撃も全体的に避けやすい。龍の咆哮も本来の魔力が乗らないため、遮音結界で対策出来る。

 思えば大概の事を対策出来てるな。

 

『それじゃ、やるか』

 

 俺の軽い口調に文句の有りそうな四葩に苦笑いしつつ、ボス部屋の扉を開ける。

 今までのボス部屋に比べて、二周りは広い部屋。その中央付近にそれは座していた。

 頭頂から尾先まで30mは有りそうな巨体、全身の鱗は剥がれ肉は所々腐り落ち骨が見えている。翼膜はボロボロでとても飛べそうに見えない。落ち窪んだ眼窩の奥から白く濁った眼が此方を見据える。

 腐っても尚、威風堂々たる体躯を持つ幻獣種の王。『ドラゴン・ゾンビ』が其処に待ち構えていた。

 早速『鑑定』を使ってステータスを確認する。

 

 不死族『ドラゴン・ゾンビ』 

 体力  450/450 

 魔力  300/300 

 技力   10/10 

 物理攻撃 75 

 物理防御 30

 魔法攻撃 12 

 魔法防御 25

 速力   30

 移動力  3 

 状態異常 無し 

 特殊  『不死者特性』 

 

 その姿を認めた瞬間に飛び出したのは二人、エテルとタチアだ。タチアの影に隠れるようにしたエテルは、タチアが『突撃』による一撃を与えた直後に背後へ回り『ロニセラ』と『グロリオサ』の2丁で弾丸を叩き込む。炎による弱点属性攻撃を受けた『ドラゴン・ゾンビ』は咆哮を上げる。しかし、俺達にその音は届かない。

 エテルとタチアから一拍遅れて動き出した俺と四葩は、それぞれ別の前脚に狙いを定める。先ずは体勢を崩して、その後に頭を攻撃する。少し前に決めていた方針だ。ただ、その前に死にそうな気がする。

 前脚に向かってハンマーを振るう。

 

 武器命中20+138−30=128。命中判定。

 火属性攻撃1.5✕181−30=241。部位破壊判定。

 

 姿勢を崩すどころか片脚を吹き飛ばしてしまった。『不死の王』基準で考えてたからアレだけど、これ俺達過剰戦力なのでは?

 両脚を失った『ドラゴン・ゾンビ』が崩れ落ちる、頭を地に伏せそのまま光になって消えていった……呆気ねぇな?

 

『……想像以上に弱くないかのう?』

『直前まで戦ってたのがアレだから比較するのもなんだが、此奴本来はもっと強い筈だよな……』

 

 弱点属性を突けるだけで1ターンも掛からず倒せてしまうボスって何なんだろうな?

 

『ボスドロップが出ましたな』

 

 消えた『ドラゴン・ゾンビ』が居た場所に宝箱が現れる、苦労も無ければ感動も無いなコレ。

 マスクをずらしてみると臭いも無くなったみたいなので、そのままマスクを外す。息苦しさから解放されて思い切り深呼吸すると、何処か清々しさを覚えた。ボス戦前には外してたが何故か開放感が違う気がする。

 

「それじゃ、今回あまり活躍出来なかったからエテルが開けるか?」

「え、いいの?」

 

 俺の言葉にキョトンとした反応のエテル、四葩とタチアも頷いているのでそのまま開けることになった。

 

「何かななにかな♪」

 

 楽しそうな掛け声と共に開かれた宝箱の中を見たエテルは、訝しげな表情を浮かべる。何が入ってればあんな表情になるんだ?

 

「……紐?」

 

 そう言いながら取り出されたのは、確かに金色の紐に繋がった赤い布だ。嫌な予感がしつつ、それに『鑑定』を掛ける。

 

 全身鎧『ドラゴンスケベイルアーマー』

 体力  +50

 魔力  +20

 技力  +20

 物理攻撃+15

 物理防御+40

 魔法攻撃+10

 魔法防御+30

 速力  +20

 移動力 +1

 特殊能力『火属性耐性』『女性専用』

 

 物凄く強力な女性専用鎧だった、いや紐じゃんコレと思うが……ゲーム特有の高性能なエロ装備である。名前からして龍鱗を加工して作るモンスター防具なのだろう、この時点でドロップするにしては破格の性能では有る。有るのだが、こんなの身に着けられてたら集中できん。愚息に血が集中するわ。

 

「……物凄く高性能な全身防具だな」

「え、紐と布だよこれ?」

「まぁ、いわゆる魔法の鎧(ビキニアーマー)だな」

 

 仮にエテルが装備したら俺の我慢が出来ずに部屋に閉じ込める可能性が高い、多分滅茶苦茶似合うだろうが外を歩かせられないだろうな。

 

「……これ、遊ばせとくのが勿体ない性能じゃのう」

「正直、四葩かタチアに装備して貰うのがパーティ全体の戦力向上としては正しいんだが」

「流石に、このような痴女が如き恰好は嫌なのだが」

 

 四葩が『鑑定』でステータスを見たのか、呆れながらそう呟く。全体のバランスを考えて四葩とタチアの何方かを推薦するが、タチアが即座に断ってくる。四葩も頷いてる事から、前衛二人は無しか。エテルの場合は攻撃が上がるのが不要なんだよな、かと言って一華に渡すのは彼奴が露出するのを嫌がるから駄目だし。

 

「私の装備よりも弱いんだね」

「……まぁ、エテルの防具はな」

 

 特別製のエテルの防具は、『天使長』の羽を素材としているので性能がアホみたいに高い。エテル自身の打たれ弱さを補う為に防御が高い上に属性耐性もかなり高くなっている。今回のドラゴンスケイルアーマーはエテルに必要無いのだ。

 

「取り敢えず、私が持っておくね」

「ああ、不要だと思ったら言ってくれ。店に並べるから」

 

 絶対変な目で見られるだろうけどな。

 

「取り敢えず、今日はもう上がろうか」

 

 流石に『不死の王』が齎した疲労が大き過ぎる、気絶していたからか身体は休まって無いらしい。エテル達も特に文句が無いらしく、何時ものように全員が俺にくっついたので転移結晶を起動させて地上へ帰還した。

 何時もの位置に転移したはいいが、35階層からの悪臭が染み付いてしまったのか職員さんから滅茶苦茶叱られた上にその場で消臭用の薬剤をぶっ掛けられた上に水魔法で洗い流された。長時間過ごしたからか若干鼻が馬鹿になっていたらしく、本当に自覚が無かったのは申し訳無かった。

 そのまま家に戻ると、まだバカが指南を受けている最中だった。何となしに見ていると、刀を鞘に納めたまま構えて抜き打ちをしている。抜刀術とは……男の浪漫だな。

 

「それ、相手の不意を打つ為の技で相手の反応を置き去りにするべきもんなの。君のは遅過ぎて蝿が止まるね」

 

 向き合った糞野郎がバカに向かってそんな事を言う。不意打ちって事はやっぱり抜刀術なのか、迎撃なら居合術って言うらしいが其処は分けて教えるのか?

 

「鞘内で剣閃を加速出来るように、毎日朝と夜に型を100回ずつやる事。無意識下で最適な動きが出来るまで繰り返して身体に染み込ませな」

「はい!」

「あ、当然寝惚けた形は回数に入れないからね。完全な型を100回だからそこんとこよろしく」

「はいっ!」

 

 軽い口調で説明する糞野郎に対して、律儀に返事をするバカ。俺から見ても一刀毎の構えがブレているのが分かるから、直ぐに矯正するのは難しいかも知れない。

 

「ありゃ、帰って来たの……ってくっさぁ!?」

 

 糞野郎が俺に気付いた直後、覚悟して無かった腐臭を嗅ぎ取ったのか悲鳴を上げる。いや、確かに臭いだろうな。

 

「悪い、『不死』種の出て来る階層に潜ってたから臭うと思うぞ」

「言うのが激烈に遅くない!?」

 

 涙目の糞野郎に溜飲を下げつつ、風呂場に向かう。エテル達は檜風呂だろう、俺は一人夫婦風呂で消臭効果の高い薬用ボディソープを使って徹底的に洗い落とそう。

 

 いざ洗ってみると、薬用ボディソープの泡が黒ずんで流れていくのが見えた。汚れを視覚的に確認出来るようにした影響だが、流石に此処まで汚れてるのは予想外だった。頭と身体を3回ずつ洗って徹底的に汚れを落としてから上がれば、バカが雛菊さんと並んで縁側で休んでいた。

 

「よう、お疲れ」

「ああ、お疲れ。臭いが凄かったみたいだが何階層まで潜ってたんだ?」

「40階層、『不死』系が相手だから腐臭がどうしてもな」

 

 そう言いつつ、バカの隣に座る。

 

「そういや聞いたぞタタラ、あの……一華さんだっけか。あの人と子供が出来たんだってな」

「うげ、聞いたのかよ」

「ああ、本人からな。俺をタタラの親友だと見込んで打ち明けたって言われて、ちょっと複雑だぜ」

 

 そう語るバカの顔は苦笑いが浮かんでいる。同い年の友人に子供が出来たって話はそこまで珍しい事じゃない、高等部に進まずに働きに出た同級生には一人くらい子供が居るのが多いだろう。

 高等部だと在学生の妊娠は校則で禁止されているが、在学生でない相手を妊娠させただけだと原則罰する校則がない。

 そのせいか卒業間近になると探索科の中には卒業試験の為に一時的に組んだ探索者の女性と一夜を共にして、当てる奴等が一定数居るのだ。当てただけなら校則として問題は無いが、関係でトラブルが発生すると当てた生徒は退学処分が視野に入るのだ。

 俺と一華の場合で例えると、一華が俺を法的に訴える姿勢を見せた場合は俺が先ずは停学処分を下される。更に裁判になって負ければ退学処分になる、示談なら停学は解除されるがまぁ成績は悲惨な物になるだろう。

 探索科のクラフターなんていう評判が命みたいな俺の場合、裁判沙汰になったと言う事実が風評に致命傷を与えかねない。エテルが最優先なんていう条件を不満に持たれたら、俺は社会的に死ぬしかなかったのだ。

 

「まぁでも、タタラと一華さんは何だかんだ相性良さそうに見えるからな。多分、エテルが居ないか先に出会ってたら立場が入れ替わってたと思うぜ?」

「そんなにか?」

「ああ、何となくの勘でしかないけどな」

 

 そう言って檸檬の蜂蜜漬けの水割りを一口呷るバカ、此奴がこう言うのならきっと何処かの世界線では俺と一華が夫婦になってる世界も有るんだろうななんて思った。

 

「ところで、剣術の基礎は終わったのか?」

 

 少し話題を変えて、気になる所を聞く。抜刀術や居合術は技として各流派に存在しているだろうが、基礎の五行の型等の後に覚える物という印象が強い。

 

「え、ああ……さっきの抜打ちが特別に見えたのか」

「違うのか、此方じゃ鞘からの抜打ちなんて見ないから特別な物かと思ったが」

「タタラは普段俺達の稽古見てないからそう思うんだろうな、アレは普通の型の一つでしかないぞ」

 

 普通の型でコレとは、かなり厳しい物なのか。

 

「先ずタタラの認識を正すけど、この剣術は全ての技を必殺とする物だ」

「……刀ってか刃物で斬れば死ぬからか?」

「ソレも有るが、全ての攻撃は相手の死と言う結果に繋げる為の手段でしか無いってのが基本理念だ。基本の型から放たれる斬撃も、相手の攻撃をいなす技術も突き詰めれば効率的に殺す為のモノでしかないんだ」

「コレは野獣神陰流の基本理念になります、私はこの考えが肌に合わず我が一族に伝わる天狗立身流と言う流派を修めました」

 

 つまり、相手を殺すと言う結果へ繋げる為に必要な術理ってのがバカが習う剣術の本質なのだろう。ただ──

 

「武には明るくないが、術理ってのはそれが基本なんじゃないのか?」

「君、才能は無いのに思考は此方(人斬り)寄りなんだね」

 

 バカの言葉に対して思った事を口に出すと、軽薄な声が届く。視線を向ければ糞野郎が少し勿体ないと言いたげな表情で俺を見ていた。

 

「突き詰めれば凶器を使う術理は、僕が教える技術みたいに命を奪うものでしか無い。其処に自制を促すだの何だのと装飾して格好つけてるのが流派って物なのさ。僕の教えにそんな余分は無いよ、有るとしたら効率的に相手を殺す為に冷静で居られる土台作りくらいだね」

 

 糞野郎の言葉は俺にとって納得出来る物だ。武才が無い故に精神性に重きを置かない俺と、突き詰めて一つの体系へと至った糞野郎の思考が変に一緒なのは何か変だが。

 

「それで、迷宮に潜って何とやり合ったのさ」

「……何のことだ?」

「誤魔化せると思わないでよね、血臭どころか死臭がしてたんだよ君。何と出会せばそんなの纏うのさ」

 

 野生の直感だろうか、どうも誤魔化せそうにない。俺は溜息を吐きつつ、39階層で会敵した『不死の王』について話す。案の定、糞野郎は愉しそうに嗤う……やっぱり『不死の王』側だよな此奴。

 

「あぁ、何でそんな愉しそうな場面に居れ無かったかなぁ。あの白羽根を斬った時くらい愉しい一時だろうに」

「……どうだろうな」

 

 何となく、本当に何となくだがこの糞野郎と『不死の王』は相性が良くない気がする。戦闘スタイルやスタンスと言うよりも精神性が致命的に合わない気がしてならない、戦い自体は楽しむだろうが人間性で落第点付けそうな気がする。何方が、では無く互いに。

 

「つか、そんなのをどうやって殺すんだよ」

「一応、その場で作った武器で百回くらい殺したら満足して帰ってくれたぞ」

「タタラ殿の創る物は何故そうも常識を置き去りにするのか」

 

 バカの疑問に答えたら雛菊さんからそんな事を言われた、流石にこの扱いは酷くないかな。

 

「『吸血鬼』殺しの概念武装でも作ったの?」

「いや、それまでに殺した『吸血鬼』の霊核でミスリルを昇華してそれで槍を創ったらそうなった」

『意味が分からない』

 

 俺の説明に三人の声が揃う、やっぱり俺の扱いはこうなるのな。

 

「でも、今回ので面白い気付きを得られたからな。是迄作れたモンスター武具を、相手が求める形にできるから武器種そのものを変えられるぞ」

「……地味にパワーアップしてんのな、タタラ」

 

 何処か呆れを滲ませたバカがそんな事を言った。

 

 指南も終わりとの事でバカを送っていく雛菊さん、何処かその姿を面白がって見送った糞野郎は残って俺に言ってくる。

 

「魔獣の素材を使って好きに作れるのは本当なんだよね?」

「嘘は言ってないが……なんだ、また新しい武器が欲しいのか?」

 

 糞野郎の前振りに対してそう問い掛ければ、糞野郎はニヤリと嗤う。そうしてインベントリから一つの宝玉らしき物を取り出す。

 

「僕が昔倒した龍の宝玉、コレで刀を作ってよ」

「無茶言うな、コレ一個で作れるかよ」

 

 龍の宝玉、コレはそれこそ1000年以上生きたドラゴンが内部に生み出す霊核だ。その出力は神核にも匹敵する、間違いなく最上位の素材である。

 

「またまたぁ、君の事だから出来るんでしょ?」

 

 ニヤニヤと嗤いながらそう続ける糞野郎に苛立ちが湧く。

 

「悪いが、お前が求めてる様な長さを作るには魔力の出力は兎も角総量が足りない。作るには最低でもう一つ理想を言えば二つは必要だぞ」

「おや、打刀には足りると思うけど」

「お前の一番欲しい刀は野太刀だろ、普段は打刀使ってるけど振り方の癖からそっちのが本領だろお前」

 

 俺の言葉に糞野郎の表情が抜け落ちる、図星突かれて思考が止まったか?

 

「……何で分かるのさ、君」

「悪いが、得物の傷でも見れば戦闘経験も読めるぞ。クラフター舐めんな」

「……ふは、天目一箇命の弟子は弟子入り前から近い存在だった訳だ」

 

 何処か愉しそうにそう言った糞野郎は、宝玉をインベントリにしまう。

 

「確かに、コレを使うなら一番身に馴染む武器にしたいよね。今回は止めとくよ」

「はいはい、そのまま忘れてくれ」

「アハハハ、それは無理だね!」

 

 そう言い残して糞野郎も帰って行った、龍の宝玉なんて一生の中でも出会えるかも分からない物に触れられ無いのは勿体無かったかも知れないが半端な仕事はしたくない。例え相手があの糞野郎でも鍛冶に付いては誠実に向き合わなければならない、お師様の弟子をやっているのだからそこは譲れない。

 

 一華が準備してくれていた夕食を囲み、本日の探索に付いて話をする。一華の前で『不死の王』関連の話をするのは気が引けるが、やはり戦闘者としての意見が欲しいので話すことにした。

 

「ご主人、腹を貫かれたってなんでそんな事になってるでござるか!?」

 

 ──のだが、俺が死にかけた場面の衝撃が大き過ぎてとても意見を聞ける状態では無さそうだ。

 

「いや、あの野郎を縫い留められたと思って油断したと言うか」

「常在戦場の心得や残心を忘れるべからずでござるよ、下手したら拙者未亡人だったでござるよ!?」

「あの、イッさん落ち着いて。赤ちゃんに障るから、ね?」

 

 あまりの勢いにエテルが諌めにかかる、お腹の子供を引き合いに出して冷静さを取り戻させようとするのが中々に策士だ。

 

「問題は次に奴と出会った時じゃろうな、妾達を本気で殺しに掛かって来たら流石に危ういぞ」

 

 四葩の言葉に頷く。今回、四葩の『概念鑑定』は対象を一人にしか絞れないのが分かった。使い魔を召喚されて囲まれた場合、本体を叩け無いのだ。いや、普通はアレの使い魔とか囲まれたら死ぬんだが。

 

「となると、各員の防具の強化が課題か」

「しかし、アレ程強大な敵とそう何度も出会いますかね?」

「タチアのスキルでレア祭りになる現状から、俺は警戒するに越した事は無いと思ってる」

 

 責める様な言い方になってしまうので控えたかったが、コレをなぁなぁにすると次は封印されてる魔神やらうっかり迷い込んできた神殺しやらに出会いかねない。正直に言えば、遊び無しに向かってくるであろう神殺しの方が『不死の王』よりも怖い。

 

「それに、俺は知らないが『吸血鬼』の王をやってるみたいだし国も有るだろう……何かしらの拍子に国交が始まったり開戦したりって恐れが有るからな」

 

 なので、あの時作った『魔槍ワラキア』を再び作る必要が有る。何なら、より強力な物に仕上げる必要も有りそうだ。

 

「構想は有るのかのう?」

「一応、杭打機の杭を『ワラキア』と同じ製法で作って叩き込んだ上で相手の体内に残すみたいなのとか。後はエテルの『エリンジウム』に特殊弾頭として採用するとかな」

 

 所謂『神の杖』と称されるSF武器の一つだ。違いとしては、元の兵器は衛星軌道上から撃ち込むのに対して此方は直接射撃になる事か。

 

「流石にアレだけ高価な物を使い捨ては……」

「だけど、そうでもしないと死なないと思うぞアレは」

 

 多分、あの時作った『魔槍ワラキア』では足りなかった。あの『不死の王』を殺し続ける上でより多くの……それこそ10kgを越える『ブラッドミスリル』と『吸血鬼殺し』の特殊能力、この二つを揃えなければ今回と同じ事になる。

 身体を変化させて脱出、この手段を防ぐ為に特殊能力を封じる効果を付与しなければならない。

 

「今度は何を考えてるでござるか、ご主人」

「いや、あの『不死の王』を仕留めるにはどうするべきかなって」

 

 会話が疎かになってたからか考え事を一華に察知された。

 

「いきなり再戦時の算段立ててどうするのだ……」

「でもあの『不死の王』の事だから、次に顔を合わせた時に何もしてなかったら失望と一緒に殺しに来そうだし」

 

 一華への答えを聞いてタチアが疑問を持つが、あの『不死の王』の場合何も備えてなかったら失望から殺しに来るのは分かるだろうに。

 

「なんでそんなにタタラは理解度高いんだろうね……」

「まぁ、タタラじゃしのう」

 

 エテルの溜息混じりの台詞には四葩が答えた、なんだろうなこの扱いは。

 

 

 夕食を終えてタチアを見送った後、パーティメンバーの装備を整備する為に工房に入る。四葩の『手鞠花』は問題無かったが、タチアの『アンドレイア』と『アーラ』はヘタリが見えたので本格的な手入れを必要とした。案の定強化が入ったが、あの戦闘を考えれば当然か。

 それで言えばエテルの『ロニセラ・リンネ』と『エリンジウム』も強化された、倒せてはいなかったがアレだけ使っていたのだから当然か。

 俺の『エレメンタルハンマー』と『玄武・弐式』も強化されはしたが、正直力不足も感じる。いや、正しく言うなら『玄武』の装甲の弱さが気になる。とは言え、総取っ替えにするにしても素材が足りない。『不死の王』が品質の悪いアダマンタイトと言っていたから、張り替えるならアダマンタイトだとは思うが圧倒的に足りてない。手持ちのアダマンタイトを考えるなら、オリハルコンとの複合にして意思に呼応するタイプにしたほうが最終的な防御力は上だ。

 

「……マスター、よろしいですか?」

 

 そんな風に一通りの作業が終わったのを見計らったのか、夕飯も食べずに寝ていたダリアが工房に入ってくる。

 

「おう、どうした?」

「申し訳ないのですが、お願いがあります」

 

 常に無い神妙な表情でそう言ってくるダリアに、俺も真剣に向き合う。

 ダリアはインベントリから二つ物を取り出して俺に差し出してくる、それは普段から使っている魔力刃型の魔導剣とあのトリモドキから取り返したダリアの核だった。

 

「この魔導剣を、私の核を使用して強化を願いたいのです」

「……いいのか、取り出され代替品を今は使っているとは言えお前が生まれた時から内に有った物だろう?」

 

 ダリアの依頼に対してそう問い返す、今でこそ俺の作った『卵』で生きているが親から貰った自身の一部である筈だ。

 

「はい、私は今更マスターから頂いたこの『卵』とこの核を交換したいとは思いません」

 

 ある意味では生まれとの決別の言葉だ、無表情に見えるが相当悩んだ末にこの結論に至った事は何となく察せれた。

 

「なら依頼は受けるけど、此方の魔導剣でいいのか?」

「はい、此方でお願いします。ハイマツァーンラートはお気に入りですが、此方で無いと少し困ります」

 

 はて、何方かと言うとハイマツァーンラートの方が気に入っていると思っていたが。しかし、少し困ると言うのが引っ掛かる。

 

「困るってのはいったい?」

「……そうですね、コレはマスターに隠しておくのは無理ですね」

 

 俺の疑問を聞いて、少しだけ悩んだ後にダリアが決意のこもった目でそう言った。

 

「マスター、先に前置きをします。私は貴方を恨んでいません、むしろ感謝しています。貴方が居なければ私は死んでいた可能性が遥かに高く、また貴方の言葉が無ければ『幸せ』について本気で考える事はありませんでした。マスター達と過ごした日々は掛け替えの無いもので、私の宝物です」

 

 それだけ言葉を連ねた後に、一つ深呼吸してからダリアは言葉を続けた。

 

「マスター、私は貴方からこの『卵』を頂き生命を永らえさせた時より……聖人になりました」




 実は冒頭のお目覚めックスは前話の最後に入れようか迷ってました、激戦の余韻が酷くなりそうなので此方に持ってきました()


 両手剣『名剣アルカード』
 物理攻撃+40
 物理防御+25
 魔法防御+25
 特殊能力『破壊不可』

 数多の敵を屠り幾千幾万の夜を越えた王が愛用し続けた剣。
 護国の決意の下で振るわれ続けた刃は、何時しか欠けることの無い物となった。


 全身鎧『ドラゴンスケベイルアーマー』
 体力  +50
 魔力  +20
 技力  +20
 物理攻撃+15
 物理防御+40
 魔法攻撃+10
 魔法防御+30
 速力  +20
 移動力 +1
 特殊能力『火属性耐性』『女性専用』

 ビキニアーマー。着ける者によってそのサイズが変わる。
 胸鎧が大きな者には面積が小さく、小さな者には面積が大きくなる。この構造を考えた奴は相当なスケベである。
 使用された龍の鱗により色と属性耐性が変わる。

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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