既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント発生中
アンケート実施中です、直感でお選び下さい。
「そうだ、おじさん。相談なんですが」
「え、何かなタタラくん。それと何でゴーレムが喋るのかな、普通喋ら無いよね?」
「その辺は分かりませんので答えられません。それで、相談って言うのは実験に付き合って欲しいって事なんですよ」
「実験かい?」
アルバードさんに持ち掛ける相談とは、実験のお付き合いだ。この前作った物を試してレポートが欲しいのだ、特に現場の声が無いと改善も出来ない。複雑な操作は無いように気を付けているが、それは俺の感性に則っている為に確かとは言えない。
「ボクらはタタラくんみたいに学者さん的な事は出来ないよ?」
「いえ、俺が欲しいのは使い易いかとかもう少しこんな機能が欲しいみたいな感想なんですよ」
「そうなのかい……で、何を試して欲しいのかな?」
俺の言葉に対して少し乗り気を見せてくれるアルバードさんに内心ガッツポーズをしつつ、インベントリから冷蔵庫にも似た型の魔導具を取り出す。扉には強化ガラス製の窓が付いていて、その中には何段もの網棚が作られているのが見える。
「コレはフードドライヤーって言う魔導具なんですが、此奴の試験運用に付き合って欲しいんです」
『付き合う!?』
「アンナにニーナ、ステイ」
アルバードさんに仕事内容を伝えていると、唐突にアンナちゃんとニーナちゃんが大声を上げてクロードに諌められる。何故付き合うなんて言う言葉に反応するのか。
「コレは何をする魔導具なんだい?」
「内部の温度と湿度を一定に保ち続ける事で、安定して天日干しに近い状態を維持します。そうする事で内部の食材は乾いて、安定して乾物を作ることが出来ます」
「それは……」
アルバードさんは驚愕の表情を浮かべる。そりゃ、形の悪い果物や野菜が取れた時は自分達で食べているとバカには聞いているがそれでも余るのだとも言っていた。一部は畑に植えて肥料にしてもいるらしいが、それでも余った時は廃棄しているらしい。
畑は広大で収穫も多いが、形の悪い野菜もその分出る。乾物にしようにもカラー邸には安全に干せる場所が無い。それらの問題をある程度解決する為に、このフードドライヤーを試して貰おうと思うのだ。
「でも、いいのかい?」
「何がですか?」
「こんな高価な物を預かって」
高価と言えば高価ではあるが、実は大した事は無かったりする。内部には温度調整用の加速術式と、風を送るためのファンそして湿度を調整する為の噴霧口くらいの物だ。ファンを稼働する為に強化銅を使用したくらいで、魔法金属や核石を利用してない一般向けモデルでしか無い。敢えて言うのなら、夜間稼働用に魔導コンデンサーを備えているくらいか。
「まだ試作品ですし、気にしないで下さい。一般販売されてもせいぜいが50万くらいの代物ですよ」
「うん、50万は十分高いからね?」
アルバードさんに言われてハッとする、自分の金銭感覚が狂ってるかも知れない。確かに50万は高い部類に入るだろう、最近売り上げの単価が3桁万越えが多くて変になってた。
因みに、ハイエンドモデルとして火、水、風の三属性の核石と魔力効率の為にミスリルを用いた物も設計しているが、コレは我が家でのみ運用しようと思っている。世に出したら都市長がまた発狂しそうだし。
「それでは週に一回レポートをお願いしますね、報酬も出しますから」
俺にそう言われたアルバードさんは複雑な表情になる、息子と同い年の子供から依頼を受けるってなればそうもなるか。
ファーレムを抱きしめるサニーちゃんに手を振るエテルを筆頭としたパーティメンバーを促しつつ、カラー邸から離れる。途中で買い物から帰ってきたらしいレイチェルさんにも挨拶しつつ、早速探索へ向かう。
「今日で50階層を攻略、とは行かんのかのう?」
「出来なくは無いと思うが、45階層以降がダリア頼みになる」
「私は構いませんが」
「存在昇華の条件にレベル最大が有るんだ、俺自身のレベルを上げておかないと60階層を攻略してもタイムロスになるだろ?」
それに、存在昇華前にステータスも上限を叩いておきたい。存在昇華直後のステータスは直前のステータスに影響を受ける、1回目は最終ステータスの20%で、回数を追うごとに20%ずつ増えて100を解放した時は100%引き継げる。唯一スキルスロットはレベルごとの解放な為に5に戻されるが、5回目迄は1つずつスキルスロットも増やされ更に『早熟』を筆頭とした特典スキルもそこに選べる。人間種の俺としては、『早熟』のランクアップと更にもう一つ必須と言える転生スキルを取得しなければならないのがキツイ。
「それって、私達が存在昇華したら戦力が大分落ちるって事だよね?」
「スキルとしては、な。このパーティの場合、それを覆せる手段は有るし」
転生直後にステータスが落ちても、ステータスアップアイテムが盗れるこのパーティならある程度は補える。
「ある程度先を見るなら、例えばエテルは『物理攻撃上昇』のスキルを取っておいたりとかの対策は有る」
「え、なんで?」
「『グロリオサ』や『エリンジウム』の装備制限に物理攻撃が有るだろ?」
「あ、そっか」
エテルの最大ステータスから考えると、存在昇華直後は『グロリオサ』を使えなくなる。この辺、ゲーム時代でもスキル取得をサボってたりするとぶち当たったりする。俺の作る防具に制限が無いから問題になり難いが、一部の強力な防具には物理・魔法の防御が一定の高さに無いと着けられない物もゲーム時代には有ったのだ。
「その点で言うならタタラ殿は楽ですね、その魔導鎧の補正ならば20階層からでも始められますし」
「レベルアップには最適では有るな」
タチアから『玄武』を褒められて内心嬉しくなる。因みに、ゲーム時代と似通った箇所として10レベル上の相手を倒すと確定で1レベル上がるのがこの世界だ。ステータスの暴力で進む上で、『物理攻撃上昇』と『魔法攻撃上昇』は必須と言えるくらいに必要なステータスだったりする。まぁ、そこら辺を踏み倒せる装備を作るのが俺の役目だけどな。
「ではマスター、存在昇華をした際の恩恵は何ですか?」
「レベル上限の解放、ステータス上限の解放、最大5回までスロットの増加……特殊なスキルの解禁だな」
ダリアの質問に答える。最大ステータスは一度の存在昇華で20%ずつ上がり、レベル100を解放したら初期ステータスの丁度2倍になるように調整されている。
「もし存在昇華時にスキルを選ぶなら『早熟』がオススメだぞ」
「ふむ……それ程までか?」
「経験値が2割増し、それとこれランクアップすると効果が上がるだろうから存在昇華する度にレベルアップが早くなるぞ」
「成る程、タタラには特に必要じゃな」
四葩の納得した感じの声に安堵を得る、卑怯と言われたら傷付いてたかも知れない。まぁ、コレが無かったらこの面子に並ぶのは難しいを通り越して無理の領域だったかも知れないが。
「そろそろダンジョンの受付だし、情報を零すのも此処までかな」
「うむ、下手に他者へ聞かれると何か言われそうじゃしの」
「変に寄生されて探索が遅くなるのも好ましく有りませんね」
この手の話は本来拠点である家でやるべき事だが、カラー家からダンジョンに来る迄の道が少し長いので思わずやってしまった。まぁ、聞かれたとして50階層以降は難易度が意味不明に上がるのでこの都市内でレベル60を越える探索者は極少数だ。俺の両親も存在昇華を可能としていたが、上げ直す苦労に見合わないとそのままだった。上げ直していたのなら、生きて帰ってきてくれただろうか?
到着早々に手続きを終えてダンジョンに潜り、何時ものように探索を始める。『ゴブリン』種、『オーク』種、『オーガ』種と次々に殲滅して20階層。エテルが『ムゥ
「そろそろ、全員にアイテムを使っていこうか?」
「ふむ……50階層へ向けて調整は必須か」
俺の言葉に四葩も考え、納得する。さて、どうするかな。今までに集めた其々のステータスアップ関連は相当な数である。一覧を出すと。
体力増加82個。
魔力増加62個。
技力増加100個。
物理攻撃増加63個。
物理防御増加54個。
魔法攻撃増加96個。
魔法防御増加42個。
速力増加26個。
運増加87個。
移動力増加52個。
技力と魔法攻撃に偏っている、と言うか移動力に関しては存在昇華の影響を受けないのにこんなに出て良いのか?
「ふむ、タタラに全て使うべきじゃな?」
「それで良い訳ねぇだろうが、移動力とかこんなに上がっても活用出来んわ」
それに、使うなら最小にしたい。レベル最大時にステータスの不足分を補うだけで十分だろう。まぁ、速力と魔法防御はどうしても足りないだろうが。それに、運は存在昇華後のエテルに使いたい欲も有る。
「タタラがレベル60になった時に足りない分を補うとか?」
「まぁ、それなら」
「しかし、上昇する数値はその時々で違うじゃろ?」
「いや、俺は一律1ずつしか上がらないから最大値は分かる。不足分は51だな」
「ならば、その分を注ぎ込めば問題無かろう」
言質が取られた気がする、そこから他のメンバーからの圧に負けて、レベル60時点でステータスが最大に出来る物はそうなるように調整された。
レベル 38/60
体力 490(600)
魔力 238(360)+67
技力 276(360)
物理攻撃 98 (120)+32
物理防御 98 (120)
魔法攻撃 98 (120)+32
魔法防御 89 (120)
速力 73 (120)+32
運 78 (100)
移動力 15 (99)
結果としてコレが俺のステータスだが、あまりにも高過ぎる。全て注いでも足りなかった分は、後々盗んで補填すると言うのがエテル達の言である。
残った分の分配については俺と同じく各ステータスの成長が低いタチアに回すべきかと思ったのだが、成長はするが初期ステータスが低く今でも総合では高くないエテルに回すべきではと四葩が声を上げる。実際、エテルと俺は体力、魔力、技力を共有しているので残っている体力増加をエテルに回せばそれだけ死に難くなる。まぁ、上げられても22とそこまで高くは無いのだが。
後は移動力の基本をダリアも含めて15で統一した、そこにスキルと装備が乗るので、エテルとタチアは移動力が25を越えている。正直やり過ぎたとも思えるが、タチアは『突撃』を考えるとこの方が火力が乗るので必要だったと思う。
「タタラの為に魔法防御と速力関係を盗めるように頑張るね!」
「さらっと言ってるけど、異常だからな?」
そもそも下層ですら滅多に手に入らないステータスアップアイテムが、中層迄で総数3桁越えで手に入ってるのが意味不明なのだ。どうなってるんだこの面子の運。
俺自身のステータス強化の影響で、その後の攻略がスムーズになる。真正面から『オーガ』種を殴り殺せるステータスを発揮する事無く『ゴーレム』種の額の文字を削って進み、『死霊』系の蔓延る階層へ。『死霊王』相手に技を使うまでもなく、更に言えば運の上昇によりクリティカル確率が上がっている為に属性攻撃のワンパンで終わる場面が相当数有った。合計攻撃力が四葩よりも5高いと言うのに後から気付き、少し頭が痛くなった。
まぁ、この状態ですら『不死の王』とかち合った場合死ぬ可能性の方が高いのだが。
そして35階層へ降りて、『不死』系の敵を殲滅し続ける。エテルの為に特殊弾頭を500発用意したのでエテル自身も嬉々として『吸血鬼』を倒していく。レベル差からガンガン経験値も溜まるらしく、レベルアップに燥いでいる……これ昔だったら死ぬ迄搾り取られてたな。俺と四葩もキッチリ『吸血鬼』を倒して行き、レベルが40に届いた。タチアも順調にレベルが上がったらしく、もうすぐ40に届くらしい。パーティ全体の強化が出来て万々歳だ。
「タタラ、相談なのじゃが」
「おう、どうした?」
「スキルスロットが増えたのじゃが、攻撃力を上げるスキルは何が良いかのう?」
さて、四葩の相談は中々に難しい。単純に攻撃力を引き上げるならそれこそ『物理攻撃上昇』なのだが、四葩のように元からの物理攻撃が純粋に高い近接アタッカータイプには別に勧められる物がある。
「それなら『
「ふむ、『鍔目返し』とな?」
この『鍔目返し』は攻撃力を低減する代わりに、スキルランク分攻撃回数を常に増やすと言う物だ。更にスキルレベル分だけ下がった攻撃力が補正されていき、コンプリートするとそのままの攻撃力で5回攻撃が基本になる。このスキル、何がヒドイってコレを攻撃技にも機能させる事だったりする。単発高火力技が5回攻撃になるとか、頭大丈夫かと言いたくなる反則具合だ。四葩は『騙し討ち』も取得しているので、魔力は馬鹿食いするが10回攻撃も夢では無い。
「ほうほう……強力過ぎんか?」
「そうは言うがな、四葩の物理攻撃が半減したら『ゴーレム』相手にしたらダメージが目に見えて落ちるんだぞ?」
そう言われて、四葩も頭を悩ませる。四葩の攻撃力は現在『手鞠花』込みで260と言った所で、半減したら130くらいだ。それでも十分に高いのだが、『ミスリルゴーレム』や『オリハルコンゴーレム』相手だと50や30程のダメージに落ちる。その分、生物相手なら必中かつ防御無視で確定クリティカルを出すので全く衰えないのが異常だ。ゲーム時代は51階層からボス直前までは属性相性を持った5から49階層迄の雑魚敵のごった煮に+αなので、選んで戦えば通じない事は全く無い。
「しかし、最終的には通常の攻撃力に戻るのじゃな……ならば『鍔目返し』を取得しよう」
そう言ってステータス画面を操作する四葩、俺の言葉に従う……俺の色に染まりたいって言ってたのが実践されるのは何だか気恥ずかしい。
「タタラ、それ私も取得した方が強くなれる?」
「エテルは向かないな、銃の装弾数もそうだが魔力の減りに直結するし継戦能力が目に見えて落ちるぞ」
この世界、肉体的には物理法則を越えた事が行えるが魔法関係は元から色んな法則を無視しているからかそこまで無理は効かない。魔導銃では無く魔導剣ならそこまで大きな問題では無いのだが、エテルは銃使いなのでこの話は此処でおしまいだ。
「タタラ殿、私にはそのスキルは向きますか?」
「悪くは無いな、『アーラ』の強化で思い切り恩恵も有るし」
「成る程、では私も候補に入れておきます」
タチアからそう言われるが、その前に防御関係を2つ取得するのだから結構先になるだろう。何なら、存在昇華時に得られる『早熟』でスキルレベルが上がりやすくなってからが本番まである。
さて、俺はどうするかな。レベルが40になってスキルスロットが空いたわけだが、俺自身もサポート出来るようにしとこうかな。
「そう言えば、タタラもそろそろレベル40じゃない?」
「さっきの階層で40になったからな、『罠解除』を取ろうかと思う」
「待つのじゃタタラ、お主は防御力を上げよ」
「そうですね、タタラ殿は僅かでも生き残る為に行動をするべきです」
おおう、圧が強いな。
「『罠解除』なら私が次に取るから、タタラは『物理防御上昇』だね」
「異論は無いのう、前回は背中から貫かれて死にかけておったしのう」
「私も賛成ですね、更にその次は『魔法防御上昇』にして頂きましょう」
『賛成』
うん、全員の
「分かった、『物理防御上昇』を取得するから」
俺の言葉に安堵した面々はホッと一息吐く、逆らったら本気でやばかったな。
「さて、準備は出来た……先へ進もう」
俺の言葉にメンバーは頷いて、新たな領域の41階層へ降りる。
広がるのは岩肌と蔦、そして木の枝だ。緑葉の生い茂る光景は11階層にも似ているが、あちらが湿度の高い密林だとしたら風の流れる崖近くの森だろうか。雰囲気が違うのだ。
「湿気の感じない場所ですね」
「出て来るのが『ハーピー』種だからか、風の流れが心地良いんだよな。ダンジョン内って言う閉鎖空間で風ってのも変だが」
タチアの言葉を聞いて俺が答えると、全員がこの状況に対して疑問を持ったようだ。まぁ、ダンジョン内の現象なんてどうやっても説明が付かないのだが。
エテルに先行して貰い探索を開始、相変わらず無音の挙動を取るエテルだが曲がり角から先を覗いた瞬間に飛び退いた。何事かと思えば直前までエテルが立っていた所に天井付近から強襲した何かの影が有った。
緩く波打つ青い髪に茨を思わせる蔦の冠に、逞しく広がる緋色の翼。空を舞う為に華奢な身体に、鳥を思わせる鉤爪の生えた逆関節の脚。細面の一般的には美しい顔の目元には血のような赤い筋が涙のように引かれている。
41階層から現れる『ハーピー』種のレア種、『ハーピークィーン』の登場である。
「エテル!」
回避行動を取ったエテルが魔銃を構えるより早く、『クィーン』が再度の攻撃に入る。俺の声に反応もせず、エテルだけを狙っている……何となく狙ってるのがエテルの胸に思えるのは何故だろう?
『クィーン』を改めて見る、剥き出しの胸部はCからDと言ったサイズだ。一般的には普通からやや大きめとされるのだが、エテルの爆乳に嫉妬してたりするんだろうか?
そうなると目元の赤い筋が嫉妬で血涙流してるように見えてくるので不思議だ、自分の想像で笑ってしまいそうになる。まぁ、そんな事を考えるよりもエテルの援護に入る方が先なのだが。
俺よりも圧倒的な速度で『クィーン』に吶喊するタチアの姿が見える、先程引き上げた移動力の影響だろう一瞬にして距離を詰めていく。タチアが『アンドレイア』を突き入れる直前に、『クィーン』へ『鑑定』を使う。
鳥人族『ハーピークィーン』
体力 120/120
魔力 180/180
技力 50/50
物理攻撃 44
物理防御 16
魔法攻撃 35
魔法防御 28
速力 77
移動力 6
状態異常 無し
特殊 『歌声』『風属性』
装備 無し
想像以上に脆い、コレなら一撃で終わるか。そう思った瞬間に、エテルの『グロリオサ』から放たれた弾丸が痩身を穿ちタチアの刺突が『クィーン』を貫いた。
その生命を跡形もなく吹き散らされた『クィーン』はサラサラと塵になり、その場には大型の魔石とドロップアイテムが残された。
「……妾達に出番は有るのかのう?」
「四葩には有るだろ、俺には無い……いやこの魔法防御なら魔導砲撃を通せるな」
「私としても、何かする必要が有りませんしね」
四葩のボヤキに答えれば、ダリアも所在なさげに零した。飛行手段と遠距離攻撃を持たない俺は、何をすればいいんだろうな?
「タタラ、コレ盗めたよ」
「おう、ありがとうな」
エテルが渡して来たのはレア種素材の『女王の風切羽』だ、コレと『ハーピー』種の素材が有ればモンスター武具の『タラリア』と言う脚用防具が作れる。防御力は低いのだが、それ以上に移動力+2と『飛行』を得るのが強力な装備だ。まぁ、俺達のパーティには使う奴が居ないが。この素材が複数集まったら、四葩の防具にアレンジした形で使用して『飛行』特性を得させようかな?
「……タタラ、何か不穏な事を考えておらんか?」
「いや、四葩の防具に使って『飛行』させようとか考えてないぞ?」
「語るに落ちるとはこの事じゃろうな……」
四葩に横から突っ込まれて思わず考えを吐露したら、溜息を吐かれてしまった。まぁ、四葩の『手鞠花』は30m迄は斬撃が届くし『飛行』は今のところ必要無いか。この先、崖なんかで歩けないマップなんかも有るには有るけど。
「それじゃ、次は俺と四葩も可能なら参加するか」
「そうじゃの、特にタタラはレベルを上げねばならぬしな」
ぶっちゃけ、今のステータスと装備なら51階層以降は大分楽だとは思う。属性攻撃が出来て、基礎ステータスも高いのだから。
ただ、51階層以降は敵のレベルもそうだが出現率が跳ね上がる。ゲーム時代は体感で敵の数が倍に感じる程の量が出て来るので、レベルアップは楽だが殲滅戦を続けると息切れを起こす。まぁ、1階層ごとに各員に『卵』を装備して貰って2分も待機すれば体力、魔力、技力は最大回復するのでアイテムの消耗以外は気にする事は無いんだが。
そんな事を考えつつ、エテル先導で道を進む。途中で鉱脈を見付けて『鑑定』してみれば、オリハルコンの鉱脈だった。ミスリルピッケルを叩き付けて採取して、後々にタチアの『アーラ』の上位機種を作る上で活用しようと心に決める。
そうして進むと、エテルが待ったを掛けてきた。静かに近付いて覗き込むと、『ハーピークィーン』が6体見えた。ただ、何だか仲間割れ……と言うか縄張り争いをしている様子だ。
『……女王決定戦かな?』
『野生とはかくも厳しい物なのじゃな……』
『ここはやはり漁夫の利、ですかね』
俺と四葩とタチアの感想がこれだ。6体は其々傷を負っているので、横殴りすれば経験値が美味しく頂けるのが分かる。エテルは『グロリオサ』の弾倉を入れ替えて『炸裂徹甲弾』を使用するつもりらしい。つか、傷付いてるなら俺が砲撃噛ませば終わるんじゃないか?
『なぁ、砲撃を試してみていいか?』
俺の言葉にエテル達は頷いてくれた。まぁ、まとめて吹き飛ばせばレベルアップしそうだしな。
「同時砲撃シークエンス稼働」
早速砲撃のシークエンスを実行する。肩部のシールドが開き、弾頭が顔を覗かせる。次に俺の目前に表示される空間投影型ディスプレイは、次々と『クィーン』をロックオンした。以前使用したのはロックオンした対象の周囲に無差別にマイクロミサイルを落とし、起爆させるものだった。今回は最大36ターゲットに対してマイクロミサイルを直撃させる物だ。
「発射」
静かに発射された36発のマイクロミサイルが、縄張り争いに集中していた『クィーン』達を襲う。『クィーン』6体に対してマイクロミサイル36発、1体辺り6発のマイクロミサイルが飛んでいく。向かい合い、これから一撃決めるのだと向かい合っていた『クィーン』を筆頭に砲撃が襲いかかった。
武器命中25+168−74判定119。命中判定。
武器命中25+168−78判定113。命中判定。
武器命中25+168−75判定118。命中判定。
武器命中25+168−79判定114。命中判定。
武器命中25+168−77判定116。命中判定。
武器命中25+168−75判定118。命中判定。
砲撃威力200−15=185。
砲撃威力200−10=190。
砲撃威力200−13=187。
砲撃威力200−11=189。
砲撃威力200−14=186。
砲撃威力200−12=188。
判定が頭に流れ、レベルアップを知らせるファンファーレが頭の中に流れる。そりゃ、1レベルとは言え上の奴を同時に消し飛ばせばレベルも上がるか。
「うし、レベルが上がった」
「やはり、この砲撃は素晴らしいですね。全身ミサイルコンテナのウェポンパッケージを作りませんかマスター?」
「却下」
ダリアからの要望をその場で却下する。コレ、一発辺り40万近くする弾頭だからな。今のも1体辺り6発のミサイルとかやり過ぎたと思ってるし。それに、この弾頭をジェットエンジン製作時に割り出した比率で燃料を最適化した物にしてもいない。おそらく、火力が凄まじい伸びを見せるだろう……『不死の王』に使ったらめっちゃ喜ばれそうだな。
「コレからは集まっておったらタタラの砲撃、そうでないなら各員で撃破が主になりそうじゃの」
「個人的には、『盗む』スキルを覚えて『強奪』までいってから使いたい欲が有るな。まとめて奪えたら面白そうだ」
そんな会話をしながら、エテルの先導で先へ進む。宣言通り、固まっていたら砲撃で分散していたらエテル達が撃破していった。途中、階層を降りる際に少し時間を貰って『玄武』の砲撃の術式を追加する。今迄はマルチロックに対して全弾発射が前提だったが、オーバーキル気味になるので単発で終わる対象には一発だけ当てる物を増やした。まぁ、流石に金と素材が勿体無いからな。
途中で40体同時で遭遇等と言うアレな状況も有ったが、俺の砲撃で撃ち漏らした『クィーン』をエテル達に狩って貰う形で片付ける。俺が駆け足気味では有るが、パーティ全体がレベルを上げて進めた。
そうして45階層に降り、また風景が一変する。ただ、此処からは少し面倒な事になるのだ。
「此処からは『精霊』種が相手、そうでしたね?」
「ああ、合ってるぞタチア」
質問に答えつつ、周囲の状態を見る。やや緑に溢れた色彩、此処から先はこの壁の色が中々に重要になる。と言うのも、この壁の色でその階層に現れる『精霊』の属性が大体決まるのだ。今回の緑は風属性が主体になる。しかも、一色と言うことはレア種の『精霊王』が出現している事の証左だ。
「さて、進む前におさらいをしていいか?」
『おさらい?』
俺の言葉に疑問を抱くメンバー、その様子に苦笑いをしながら俺は言葉を続ける。
「この階層から出現する『精霊』種は其々弱点属性を持っていて、それ以外の攻撃があまり通らない。ダリアみたいに常軌を逸した魔法攻撃なら通常の『精霊』種相手も有効だが、『精霊王』は文字通り弱点属性以外を無効化してくる」
ダリアが一人で潜った際に、『精霊王』と出会わず全ての属性の『精霊』と出会えた事は半ば奇跡である。そのおかげで俺達は属性攻撃を可能とするに至っているのだから。
「先ず、今回俺達が当たるのは風の『精霊』種だ」
「分かるのじゃな?」
「ああ、確定と思ってくれ。根拠としては壁の色、緑は風の色なんだ」
「成る程、鮮やかに一色ですね」
「まぁ、普通は一色になるって事は殆ど無いんだけどな」
レア種は中々出ないからレア種なのだ、俺達の感覚では通常の敵みたいな頻度で出くわすが本来は希少なのである。
「普通は複数の属性が混ざるからマーブル模様なんだが、『精霊王』が出現する際は一色になるんだ」
「成る程、王の出現により階層が支配されているという事なのですね?」
「その認識で合ってると思う」
ゲーム時代は俺の運が影響しているのか、『精霊王』が出現した際には1属性だけで複数属性揃ってる光景は見ていない。タチアのスキルが影響して複数属性の『精霊王』が出現する可能性を考えたが、この調子なら大丈夫だろう。
「属性ごとの色は風の緑、火の赤、水の青、土の黄、雷の白、氷の水色だ」
「雷と氷が中々に面倒そうじゃの?」
「氷は更に吹雪くからかなり辛いぞ」
ゲーム時代のエフェクトでは有るが、氷の『精霊王』が出た時は画面が真っ白かつ風の効果音が流れるので敵を見付けるのが難しかった。
「まぁ、それは脇に置いて属性相性の話をしよう」
さて、コレから俺達が挑む『精霊』種には相克に近い属性相性が有る。風は火に弱く、火は水に弱く、水は土に弱く、土は風に弱い。基本の四大属性はこの相克が常に存在し続けて、この相克も実は魔法の迎撃に対して活用が出来たりする。魔法攻撃に大きな差がある場合は話は別だが、同じくらいなら属性相性が有利に働く。
「──と言うわけで、この階層に出現する敵は風だから今の装備がそのまま活きる。ただ、別の属性が出て来たら俺かエテルで一当てしてから最悪ダリアの火力に頼る事になる」
俺の言葉にダリアも一度頷く、『ランタナ』の火力ならば流石の『精霊王』にも痛打を与えられるだろう。
「可能なら俺達で倒してレベルアップを意識する、無理そうならダリアに倒してもらって素材の回収……これで行こう」
俺の言葉に頷くメンバー、再びエテルに先行して貰いダンジョンを進む。
『敵、発見。大きさから多分『精霊王』だと思う』
エテルから念話が送られてくる、そっと覗き込んで確認する。
体長は2mほどだろう、脚や髪に当たる部分がぼやけて見える中性的な人型。肌の色は周囲の壁に近く薄い緑で、部屋の中心で1体だけ佇んでいる。風の『精霊王』……『ジン』である。
『早速だな、火属性だから俺達全員の攻撃が通るがどうする?』
『タタラ殿のレベルアップが目的なのですから、エテル殿の先制攻撃とタタラ殿の追撃にて様子見が良いのでは?』
『後詰で妾達が動けばよかろう、『精霊王』で注意するべき点は何じゃ?』
『中位以上の属性魔法だな。後は下位『精霊』の召喚か』
実は49階層付近なら、属性無効化装備を用意して『精霊王』に延々と下位精霊召喚を使わせて倒し続けるのが一番効率良くレベルアップ出来る方法だったりする。まぁ、今回はその無効化装備を作る上での素材集めが目的だが。
『初手で倒すのが最上、では無さそうじゃのう?』
『お、気付いたか。とは言え、今は撃破優先だな。『王玉』が手に入ったなら各員の属性防御を優先して上げて、余ったなら属性攻撃を可能にする物を作るよ』
俺の言葉で無限雑魚狩り法に思い至った四葩に対して感心する、しかし今回はレベルアップもそうだが装備の素材集めがメインだ。『精霊王』から取れる『王玉』は防具に使うと属性を無効化通り越して吸収するので、出来れば欲しい。
『それじゃ、やるか。エテル、先制頼む』
『いいよ、それじゃ……行っきます!』
思念が届いた直後、エテルの姿が消えた。気付けば『精霊王』の背後に居て、即座に銃撃が4発放たれる。慌てて『精霊王』に『鑑定』を掛けながら駆け出す。が、意味が無かった。
目の前で『精霊王』が消え去る。エテルの『ロニセラ』が想像以上に体力を削ったらしい……いや、弱点属性を突いた上に背面から気付かれず攻撃したのならエテルの場合は例のコンボで即死も狙えるのか。コレはちょっと想像以上だな。
「……出番なさそうじゃの?」
「かもな、エテル一人の独壇場になりかねん」
後から追ってきた四葩から言われた言葉に、俺もそう返すしかなかった。想像以上に属性攻撃を可能にした『ロニセラ』の火力が高い。
「タタラ、思ったより弱かったよ」
逆にお前が強過ぎるんだよ。つか、ドロップはしっかりと『風の王玉』だし。この階層で人数分集められるかな。
「それと、コレね」
そう言ってエテルから渡される『風の王玉』……防具どころか、武器の方も何とかなりそうだ。
スキル『鍔目返し』
『深く深い闇の先で』及び『DAWN〜深く深い闇の先でRe:make〜』にて存在した攻撃スキル。それぞれで少しだけ効果が違う。
元はスキルレベル÷2回分攻撃回数が増える物だったが、リメイクされた際にスキルランク回分攻撃回数増加に変更されている。
スキルレベルにより攻撃力の減衰は抑えられるが、ランクアップの際に攻撃力の減衰はリセットされる。
元のスキルをコンプリートしていた場合
【重撃】攻撃+50 攻撃回数6
【連撃】攻撃+10 攻撃回数8
だったのがリメイク版は
【重撃】攻撃+50 攻撃回数5
【連撃】攻撃+10 攻撃回数15
と、開発が調整のミスをした物になっている。
精霊種『風精霊王ジン』
体力 300/300
魔力 250/250
技力 100/100
物理攻撃 20
物理防御 20
魔法攻撃 60
魔法防御 20
速力 68
移動力 3
状態異常 無し
特殊 『精霊王特性:風』
装備 無し
『精霊王特性』
弱点属性以外の属性への耐性獲得、更に自身の属性に対しては吸収効果を得る。更に、自身の属性の魔法の最大攻撃力を2倍にする。
生存するか否か
-
生き残る(元は生き残る予定)
-
生き残らない