※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中
『看板娘』イベント継続中


アンケート実施中です、直感でお選び下さい


予想以上の戦果

 武器命中20+174−68=106。命中判定。

 炎属性攻撃2✕235−20=450。

 

 振るったハンマーの直撃を受けて、『精霊王』が消し飛ぶ。ドロップする『風の王玉』を見て安堵する、コレで6個目か。

 先の『精霊王』とのエンカウント後、探索を続けるうちに出会す『精霊王』を狩るうちにそれだけ希少である筈の『王玉』を回収している。ドロップしない事も有るが、エテルが盗むので順当に数が揃っている。後の研究用と、鍛冶場の強化用に幾つか欲しいとメンバーに相談したら受け入れて貰えた。本当に助かる。

 俺はあと1体倒せばレベルアップと言った所で、エテルは2度レベルアップをしている。レベルが40になったので増えたスキルスロットには『罠解除』を取得した、コレで次から罠宝箱を見てもスルーせずに済む。

 四葩とタチアも攻撃に参加している、四葩は『鍔目返(つばめがえ)し』の攻撃力低下に戸惑いつつも攻撃回数の上昇で相手を細切れにしている。なんだか、普段から三連撃とか叩き込んでいたのが六連撃に増えている気がする。まぁ、強くなったならいいだろう。

 タチアは即座に攻撃力が上がらないが、前線に出て囮を買って出てくれている。『精霊王』の魔法が直撃しても傷1つ負わずに距離を詰める姿は、流石の『精霊王』ですら腰が引けていた。本当に硬いな俺達の騎士様は。

 

「エテル、そろそろ次の階層に降りそうか?」

 

 消耗も特になく終わったのを確認して、エテルに質問をする。

 エテルは目を閉じて周囲の状況を確認している、どうやら『索敵』スキルを使用してダンジョン内を確認しているらしい。それ、そんな事が出来るスキルじゃ無いと思うんだけどな。

 

「……階段は結構近いかな、まだ見てない所もそこそこ多そうだけど」

「分かった、取り敢えず全体を回ろうか」

 

 エテルの言葉を信じて、探索を続ける。エテルの言った通りに階段は直ぐに見付かり、その先に別の通路が見えたのでそちらも探索する。罠宝箱を発見し、エテルに開いて貰えば中からは盾が出て来た。円形の盾で、玉虫色の下地に銀の装飾が施されている。中央には遥か昔に生み出された妖精をモチーフとしたマークが入っている。

 

「タタラ、コレって?」

 

 エテルの差し出した装備に『鑑定』を掛ける。

 

 盾『スピリットシールド』

 物理防御+13

 魔法防御+18

 特殊能力『属性防御:四大属性』

 

 ゲーム時代にも有ったそこそこ強力な盾だ、つか妖精モチーフなのに名前は精霊の盾なのかコレ。防御はそこそこだが属性防御が付いているのがかなり強いんだよな、タチアに持って貰おうか?

 

「タチア、この盾使うか?」

「ロード・タタラ、それは命令ですか?」

 

 確認がてら聞いたら超低音でそう聞き返された。やばい、地雷踏んだ。

 

「いや、性能がいいから使うかの確認だ。必要無いなら店で売るさ」

「それなら良かったです、ロード・タタラから下賜されたこの盾を捨てろと言われたのかと」

「思考が飛び過ぎだろ」

 

 流石にそこまでは言わない、装備は渡すが最後には自由意志に委ねるし。手に入った盾はインベントリにしまう、ゲーム時代では30万だったけどコレいくら位かな……商会長に確認しよう。

 来た道を戻り、階段を降りる。今度は一面が赤に染まっていてこの階層には火の『精霊王』である『イフリート』が居るのが察せられた。

 

「今度は火の『精霊王』じゃな、タタラとエテルに任せるしかないのう」

「そうですね、私達は役に立てない」

「いや、最悪エテルを守る盾になれるからなタチアは。しかもこの階層だとダメージを一切受けない無敵なそれだし」

 

 現状、タチアの魔法防御は通常の属性魔法ならボス相手でもダメージを通さない領域だ。それこそ、『不死の王』が如き場違いな不運(ハードラック)遭遇(ダンス)でもしないと危機にはならないだろう。俺も流石にあんな存在の近似値が、ホイホイとこのダンジョンに迷い込むとか考えたくない。

 

「取り敢えず、この階層は俺とエテルの二人で倒しに行くわ」

「それが最善っぽいもんね」

 

 俺とエテルの意思は揃っている、このままエテルを先頭にして進んでいく。そうして少し広い部屋で火の『精霊王』と会敵した。

 風の『精霊王』である『ジン』に似た2m程の中性的な肉体で、此方は四肢の末端が炎となっている。頭は燃え盛る松明が如く、熱が上がり過ぎて金色にも見えてくる……穏やかな心を持ちながら怒りに目覚めた超戦士に見えなくもない。

 ただ、問題なのがこの『イフリート』が初手から8体居ることだろうか。流石に多くね?

 

『レア種ってなんだろう、レア種ってなに?』

『最早見慣れておるが、仮にも王がわらわらと居るのう……』

 

 あまりの光景に軽く現実逃避に入った俺の隣で、四葩が溜息を零しながらそんな事を言う。もう意味不明過ぎる光景で頭痛が痛いみたいになってる、正直このメンバーで無かったらとっくに撤退してる。

 

『取り敢えず、エテルは背面取って何体か削ってくれ。俺は正面から行って囮になりながら戦うから』

『危なくない?』

 

 エテルの心配を含んだ声を聞き、一度火の『精霊王』を『鑑定』する。

 

 精霊種『火精霊王イフリート』

 体力  300/300

 魔力  250/250

 技力  100/100

 物理攻撃 43

 物理防御 20

 魔法攻撃 60

 魔法防御 20

 速力   25

 移動力  3

 状態異常 無し

 特殊   『精霊王特性:火』

 装備   無し

 

 風に比べると物理攻撃が高いが、速力が落ちている為に戦いやすいだろう。そう言えば此奴は火蜥蜴(サランダー)の親玉なんだよな……だから速力低めなのかな。それでもずっと速いけど。

 

『今の俺の魔法防御、彼奴の魔法を正面から受けても問題ないぞ』

 

 俺の言葉に訝しむエテルだが、四葩も『鑑定』を掛けて確認したのか納得の表情だ。

 

『確かに、魔法による威力の上乗せを考えてもタタラにダメージを通せんのじゃ』

 

 納得と言った雰囲気の四葩だが、火属性魔法の『爆発』に付いては多分知らないのだろう。開幕から使われたら単純計算で560の魔法ダメージになるだろう。一体なら即死する事は無いが、2体にでもやられたら流石に死ぬだろうな。可能なら、火属性耐性は早めに作らないとな。

 

『それじゃ、行くかエテル』

『うん、行こうタタラ』

 

 俺とエテルは互いに声を掛け合ってから、飛び出す。

 俺は正面から一番近い『イフリート』へ向けて駆け出す、強化した移動力のお陰で俺の一呼吸の移動距離は150mに届く。対象として定めた『イフリート』は一切反応出来ていない。ハンマーの機構を作動させ、属性を水に変更。打撃面のミスリルが青く染まり、属性の変更が正常に作動したのが分かった。そのまま、ハンマーを叩き付ける。

 

 武器命中20+174−25=169。命中判定。

 水属性攻撃2✕235−20=450。

 

 発生したダメージにより『イフリート』の姿がかき消える。水を高熱の塊に叩き付けた事から水蒸気爆発が起こるかと心配したが、特に問題は無かった。コレならこのまま続けても大丈夫だな。

 即座に次を定める、此方の速力が上回っているから相手の反応よりも前に動けているがそれもいずれは終わる。何かしらのタイミングで相手も魔法を撃ってくるだろうから、その前に可能な限り削る。エテルが移動して行った方向とは逆に向けて動く、そちらに居るのは2体でエテルの方が負担が大きくなるかも知れないが、そこは信じるしかない。

 踏み込んで距離を詰めて、ハンマーを振るう。

 

 武器命中20+174−25=169。命中判定。

 水属性攻撃2✕235−40=430。

 

 次の『イフリート』は咄嗟に防御姿勢を取ったが、焼け石に水だ。そのままハンマーをイフリートの背中に叩き付ける……うん、何でこの『イフリート』は防御として背中で受けたんだろうか……任侠立ち?

 思考に一瞬気を取られた時に、残した一体から強い熱を感じた。視線を向ければ『イフリート』が右腕を天に向けていて、その開かれた掌の先に巨大な火球が生み出されていた。中位火属性魔法【火球】、火属性魔法と言えば大多数の人が思い浮かべるであろうファイヤーボールである。

 咄嗟に両腕で顔を庇う防御姿勢を取る。まるで見計らったかのように『イフリート』は【火球】を放って来た。

 

 火属性魔法攻撃60+【火球】15−330=0

 

 防御姿勢を取って敢えて受けたが、必要無かったかも知れない。無傷で乗り切り、その姿を見て驚愕したかの様な雰囲気を見せる『イフリート』へ駆け出す。1秒を切る時間で懐へ入り、ハンマーを振り抜く。この時、俺は油断した。

 

 火属性魔法攻撃60+【爆発】220✕2−165=335。

 

 かつて、『ゴブリンウィザード』から食らった【爆発】の魔法、それをクロスカウンター気味で撃って来た『イフリート』は俺を確実に殺すつもりだったのだろう。実際、予想以上に強烈な一撃を食らってしまった。

 だが、俺はまだ生きている。

 

 武器命中20+174−25=169。命中判定。

 水属性攻撃2✕235−20=430。

 

 魔力を一度に失い硬直していた『イフリート』へ思い切りハンマーを叩き付けて消し去る。『玄武』の表面装甲が熱されて煙を上げている、結構やばかったかもなコレ。

 エテルの方へ顔を向ければ、残った『イフリート』は一体だけ。三次元立体機動で姿を認識させてないらしいエテルは、上空から背後へ回り逆立ちの様な状態で『イフリート』を背面から撃ち消し去った。うん、反逆の白騎士(ランスロット)みたいな動きしてんな?

 

「タタラ、お主大丈夫なのか!?」

「ロード・タタラ、ご無事ですか!?」

 

 と、飛び出して詰め寄ってくる四葩とタチア。その後ろからダリアがゆっくりと歩み寄ってくる……妙に圧を感じるな?

 

「ちょっと2/3程体力を持って行かれたけど生きてるぞ」

『重傷だそれは!!』

 

 気軽に被害を報告すればメンバーから思い切り怒られた、取り敢えず『卵』を装備して自然回復に努める。2分もすれば全快するのは本当にヤバイな。

 

「タタラ、前にも似たことされたよね!?」

「ああ、『ゴブリンコマンダー』と戦ってる時に『ウィザード』にやられたな。あの時は大した被害にならなかったが、流石は火の『精霊王』と言ったところだな」

「タタラお主、少しは妾達に心配掛けた事を気にせい!」

 

 焦るエテルに答えたら四葩に叱られる。とは言え、警戒してても使われる時は使われてしまうのだ。やはり、早めに『王玉』による耐性獲得が急務だな。

 

「そう言えば普通に倒しただけでドロップ見て無かったな」

「マスター、全て『火の王玉』ですのでご安心を」

「一応、盗めたのも有るから全部で12個ってところだね」

 

 いや、数よ。一応この王玉ってレア種から手に入るレアアイテムなんだけど……タチアのスキル、改めてやべぇな。

 

「この先も出て来るんだろうけど、さっきの【爆発】を使われるのは少し怖いな」

「少し、で済む問題かたわけ」

 

 四葩から強めの口調で注意を受ける、確かに第三者の視点から見た方が怖いかも知れないな。俺もコレをエテル達に使われてるのを見たら肝を冷やすと思う。

 会話をしていたら時間が経過し、減った体力が回復した。装備を戻して皆を促し先へ進む。そこからの探索も順調では有ったが、10体に1体程の割合で【爆発】を使用する『イフリート』が現れた。スキルは『物理防御上昇』よりも『魔法防御上昇』にしておくべきだったと後悔しつつ、食らっては『卵』で癒してを繰り返し少しずつ探索していく。

 途中でレベルも上がるが、それでも大きくダメージを減らせる訳でも無い。採掘ポイントではオリハルコンを回収しつつ、48階層に降りた。

 

「……マジか」

 

 壁を見て思わず溢した。そこには赤、青、茶、緑のマーブルカラー、つまり複数属性の敵が出ると言うこと。

 

「タタラ、コレはどう思う?」

「楽観すれば雑魚湧きの階層」

「悲観したなら?」

「四大属性の『精霊王』揃い踏み」

 

 四葩の質問に答えた後、更に質問してきたダリアに答える。

 最悪、そのうち来るんじゃないかとは思っていた。それでも出来れば来て欲しくは無かった。

 コレはちょっと、ダリアを頼る前に出来る事はしておこう。

 

「タチア、『アンドレイア』を貸してくれるか?」

「はい、どうぞ」

 

 俺の頼みに考える間も無く愛剣を渡してくるタチア、嵌められている核石を外してインベントリから『風の王玉』を取り出す。

『クラフト』と『錬金術』スキルで圧縮・成形してから『アンドレイア』に嵌める。剣身が翡翠を思わせる翠へと転じ、簡易の作業でも上手くいった事に安堵する。

 

「これで、『アンドレイア』は風属性攻撃に変わった」

「手早くダンジョン内でとんでもない事をしていますね、ロード」

 

 タチアの手に『アンドレイア』を返してそう言えば、呆れられてしまった。それはそれとして、この階層からの方針を伝えよう。

 

「四葩とタチアには特定属性の『精霊王』を相手にして欲しい」

「となると、妾は風相手じゃな」

「私は土属性ですね」

 

 属性相性を理解してくれている二人に頷いて返す、きちんと説明を覚えていてくれて感謝である。タチアのもそうだが、四葩の『手鞠花』も属性を簡易に切り替えられる何かを作らないとな。

 

「俺とエテルの対応は変わらずに行く、エテルもいいよな?」

「勿論……まぁ、タタラは水専門で【爆発】に対策して欲しいけどね」

 

 先程の光景が若干トラウマなのだろうか、応えてやりたい気持ちは有るが流石にそれではエテルも危険なので聞いてやれない。

 方針を決めて探索へ、エテルの先行は変わらずにどんどん先へ進んでいく。そして角からは部屋を確認した時に念話が飛んでくる。

 

『早速だね。火と風、それと茶色と青色が居るよ。火が1、風が3、茶色と青色が2ずつ』

 

 うん、いきなり8体の混合っすか。ダンジョンさんは大分殺意が高いと見える。

 

『じゃあ、さっきの担当でいいよな?』

『それが最適解だろうしのう』

『じゃあ、タタラは水ね。私が火をやるから』

 

 確認中、エテルがそう言った。思わず顔を向けたら大分怒りを溜め込んだ雰囲気で俺を睨んでた。

 

『さっき、タタラが【爆発】を受けたのを見た時私かなり心配したんだよ?』

『なら、俺がそれを他のメンバーにさせたく無いのも分かるだろ?』

『分かるよ。でもね、私達もタタラを大切に思ってる事を忘れないで』

 

 エテルの言葉に込められた圧の強さを思わず後退りする、視線を感じて周囲を見れば四葩にタチアどころかダリアも鋭い目で見てくる。

 

『でも、俺は男で……』

『うん、だから?』

『忘れないで欲しいのですが、タタラ殿よりも強い面々が揃っているのですからね?』

『タタラ、観念せよ』

 

 俺のなけなしの矜持を折に来てるメンバーに対して言葉が出なくなる、情けないがこの手の圧はかなりキツイ。

 

『……分かった、水の『精霊王』を相手する』

『理解してくれて良かったよ、『魅了』使って操るところだった』

『発想が怖いよ』

 

 あっけらかんと言うエテルに純粋な恐怖を抱く、キレると何するか分かんないな。

 そして、各員が担当する属性の『精霊王』へ向けて駆け出す。相変わらず反応が出来てない『精霊王』へ奇襲を成功させてハンマーを振り被る、属性を切り替えて土にして思い切り振り抜く。属性が切り替わり土の茶色へ変わった打撃面が直撃する。

 

 武器命中20+175−30=165。命中判定。

 土属性攻撃2✕240−40=440。

 

 直撃を受けた水の『精霊王』は弾けるように吹き飛び、その場には水溜まりとドロップアイテムが残る。風は散って火は消えて水は弾けるのか。中々に其々死に方が違ってるのが凄いな。

 次に並んでいたもう一体の水の『精霊王』に狙いを定め、ハンマーを構えて『鑑定』で観る。

 

 精霊種『水精霊王アプサラス』

 体力  300/300

 魔力  250/250

 技力  100/100

 物理攻撃 22

 物理防御 40

 魔法攻撃 60

 魔法防御 46

 速力   30

 移動力  3

 状態異常 無し

 特殊   『精霊王特性:水』

 装備   無し

 

 改めて見据えた水の『精霊王』は何方かと言えば女性的なフォルムをしていた。丸く盛り上がった胸元に細く括れた腰と妙に肉感的な太腿、正直体付きだけ見るならダリア以上四葩以下と言った具合だろう。流れる水の如く波打った頭髪にも似た頭部が余計に女性っぽさを演出しているが、躊躇わずにハンマーを叩き付けた。

 

 武器命中20+175−30=165。命中判定。

 土属性攻撃2✕240−40=440。

 

 またもやその場に水をぶち撒けたような状況が出来上がる、ドロップアイテムがその中に転がっているのも同じだった。

 視線を動かせば、タチアが土の『精霊王』を倒せずにいた。タチアの刺突が俺と同じく単発攻撃によるからだろう、四葩やエテルに比べて火力が不足している。駆け出して属性を変更、そのまま土の『精霊王』を『鑑定』で見る。

 

 精霊種『土精霊王ティターン』

 体力  182/300

 魔力  250/250

 技力  100/100

 物理攻撃 40

 物理防御 60

 魔法攻撃 20

 魔法防御 28

 速力   20

 移動力  3

 状態異常 無し

 特殊   『精霊王特性:土』

 装備   無し

 

 どうやら初撃で『突撃』は使わなかったらしい、使用していれば一撃で終わっていた。だが今倒せていないのなら援護に入らなければ。反撃として放たれた土の『精霊王』の拳をタチアが避けるのが見えて、その隙に背後から一撃を見舞う。緑に染まったハンマーの打撃面が真芯でその背を捉える。

 

 武器命中20+175−20=175。命中判定。

 土属性攻撃2✕240−60=420致命打判定✕2。840。

 

 土の『精霊王』が砕け散る、土の塊の中にドロップアイテムが残った。一つ大きく息を吐いて、タチアに視線を向ける。

 

「悪い、横入りしたな」

「いえ、気にしないで下さい。タタラ殿のレベルアップが優先ですから」

 

 朗らかに笑うタチアに安堵しつつ、やはりタチアの火力不足を何とかせねばと心に決める。この先を考えて『アーラ』の上位互換となる魔導鎧を作らないと。

 周囲を見渡せば四葩とエテルは問題なく『精霊王』を撃破したらしい、四葩は相手が3体だから一番危うかった筈なのに涼しい顔である。

 

「取り敢えず、特に危なげは無いがこのままで大丈夫そうか?」

「妾は問題ないのう」

「私は火力が若干不足してますが、『突撃』を活用すれば問題は無さそうです。このままで大丈夫です」

「私も大丈夫だよ」

 

 俺の質問に四葩、タチア、エテルの順に答えた。各員問題無いならこのまま49階層まで攻略しよう。

 そうして攻略を再開し深く潜って行く、精霊の王とは何なのかと問いたくなる程の出現率で王玉が全属性二桁手に入っている。コレ、本来はもっと希少な物の筈なんだけどな。

 そうして全員がレベルアップをしながら50階層のボス部屋まで降りて来た。

 

「さて、帰るか」

「勿体無くない?」

「この流れなら行けそうじゃがのう?」

 

 俺の言葉にエテルと四葩がそう声を上げる。確かに、瞬殺出来そうでは有る。正直苦戦もしないかも知れない、しかし今はまだ行かない。

 

「いや、帰ろう。あんまり変な色気出すとヒドい目に遭う気がする」

「……そう、だね。確かにそうだ」

 

 流石にボス部屋なら無いと思うが、入ったら『不死の王』がコンニチワとかなったら死ぬ。まだ『魔槍ワラキア』の新調も済んでないのだ。

 俺の考えを読んだのか、エテルが複雑そうな表情を浮かべる。無理するなと最初に声を上げた事も有るのだろう、俺の意見に同調してくれた。そうすれば四葩とタチアも納得してくれて、撤退する運びとなる。

 

「マスター、申し訳有りませんが私は試す事が有るので先にお帰り下さい」

「え?」

 

 エテル達が何時ものように転移結晶を用意した俺にくっつく中、ダリアがそう言って来た。試すって、まさか一人でボスと戦うつもりだろうか?

 それならギミックについて教えなければ。

 

「もしボスと戦うなら──」

「あ、いえ。都市長様より頼まれた実験ですのでボスアタックはしません」

 

 説明しようとしたらそう言われ、言葉が詰まる。都市長からの頼み事とは?

 

「新型の魔導具の実験です、マスターの物では無いですが……少し私も試したかったので受けました」

「そう、か……どんなのかは聞かないが大丈夫そうか?」

「そこはご安心を、マスターの母親代わりの方ですよ?」

 

 そう言われては納得するしか無い。湧き上がる不安を頭を振って追い出してから転移結晶を起動する。

 

「じゃあ、先に戻る」

「ダリア、気を付けてね?」

「はい、お心遣いありがとうございます」

 

 エテルの言葉に感謝を述べたダリアを置いて、地上へ戻る。用意していた消臭用の薬品を使い、取り敢えず応急処置をしたら前回と違い職員さんからの洗濯を受けずに済んだ。

 

「そのまま家に戻り、別れて風呂に入る。薬用シャンプーとボディソープで洗えば案の定汚れで真っ黒だ、嗅覚の強い一華に言われなくて助かったな。」

「モノローグ語りするなよ」

 

 帰ってから夫婦風呂に入ったら、夕食の準備を終えた一華が入って来た。楽しそうに頭と体を洗ってくれたお陰でスッキリしたが、薄い襦袢をお湯で濡れ透けさせてチラリズムを発揮する姿を見て勃起してしまった。

 

「タタラ様、申し訳無いですけど行為は出来ませんよ」

 

 本来の口調、更には髪も尾も隠さない状態になった一華からそんな事を言われる。分かってはいるが、一華の見事な身体を見れば流石に若い身体を持て余す。

 

「分かってる、後でエテルに頼るさ」

「それはそれで複雑です」

 

 少し楽しそうに笑う一華の姿を見て、その精神の安定に助かったという思いを抱く。そんな俺を背後からそっと抱き締めてくる一華、背中に柔らかい感触がして愚息が更に反応する。

 そんな俺の耳元に一華はそっと呟く。

 

「今日も無事に帰って来てくれてありがとうございます」

 

 囁かれる言葉に謝罪と感謝を返した。

 

「……心配を掛けてすまない、待っていてくれてありがとう」

 

 風呂上がりにバカの鍛錬を見る、最早俺では理解出来ない程に洗練されて見える斬撃は学生であると言う事を忘れさせる。

 

「ほらほらほら、型が崩れるのは良いけど注意が逸れてるよ?」

「ぐぅ、はいっ!」

 

 向き合い型稽古をするバカと糞野郎だが、その速度が尋常ではない。矢継ぎ早に続く型はそのまま一つの連続攻撃が如く無駄も淀みも無く繰り返される。糞野郎、バカの奴が型を完璧に修めてる事を前提にしてアレやってやがるな。

 型よりも注意、と言うのはおそらく型と言うか技が全て急所へ向かう軌道を描いているからだろうか。バカが指摘されている注意力はその剣戟が相手を殺す軌道になってなかったからか。寸止めしてるとは言えイカれてんな、アレ。

 

「……うん、今日は此処までかな。抜刀の型は良くなってたから家での鍛錬は継続、それと各型を朝と夜に10回ずつ取る事。いいね?」

「はぁ……はぁ……はいっ!」

「よし、今日は解散。お疲れ」

 

 鍛錬内容を言い渡し、帰っていく糞野郎。気の所為で無ければ、薄っすらと汗をかいていたように見えた。此奴、運動であの糞野郎に汗をかかせるだけに成長してんのか。

 バカは縁側に腰掛け、思い切り水を呷る。なみなみと注がれていた水を一気に飲み干し、盛大に息を吐いた。

 

「っだぁ、疲れた!」

「お疲れ様です」

「お疲れ、スゲェなあの早さ」

 

 思い切り声を出したバカへ雛菊さんに続く形で声を掛ける。実際、俺から見ても成長が著しい。ステータスで押し込まないと確実に負けるが、此奴にステータス差でどうにか出来るビジョンが見えない。

 

「追い付くので必死だわ、剣のお陰で怪我しねぇから当てるつもりでやれとか言われてストレスがスゲェし脊髄反射で振れねぇと噛み合わねぇし型が下手だと痛えしでマジでキツイわ!」

「寧ろこの短期間で何でお前は出来てるんですかねぇ……」

 

 糞野郎は全力では無かったろうが本気でやってたぞ、アレ。1週間前後で適応してる此奴は何なんだ?

 取り敢えず檸檬の蜂蜜漬けの水割りを渡して疲労回復の手助けをする、先程の水とは違い少しずつ飲む辺り疲労はしてても大丈夫そうではあるな。

 

「しかし、私としては意外なのですが」

 

 そう切り出す雛菊さんに俺とバカは同時に目を向ける。

 

「野獣指南役は才能へ向ける敷居が高く、見切りも早いと國内では有名です。その彼が前払い済みかつ領主からの令が有ったとは言え素直に彼へ指南をしている……コレを意外と取らずにいるのは無理です」

 

 雛菊さんの言葉を聞いて、俺は少しだけ違う感想を持つ。あの糞野郎は煽り魔でガキみたいな情緒をしているが、任された仕事はキッチリとこなす。真面目と言うか、自分がその程度も出来ないと思われるのが我慢ならないのだ。

 では、バカ相手の指導で手を抜かないのは何故か?

 お義母さん曰く、バカの才能は四葩に匹敵する物らしい。あの虎熊家随一の戦闘力と言われる四葩にだ。

 そんな才能に自分の剣術を叩き込む事、そこに愉しみを見出すのは自然な事だ。なにせあの糞野郎は自分を殺し得る相手との死合を至上の愉しみとして認識しているのだから。その果てに死ねたなら、彼奴は笑って死ぬ。

 そういう奴だと俺は理解している。

 

「ま、それだけ此奴に才能が有ったって事なんでしょう。誇れる事ですよ」

「誇って良いのかコレは……?」

 

 まぁ、糞野郎への理解など深めてやる気は更々無いけどな。

 

 

 バカを見送り、風呂上がりのタチアを工房へ招く。エテルと四葩が誘われたと勘違いして一緒に来たが、特に問題は無い。

 

「タチアの新しい魔導鎧について色々やろうと思ってたが、丁度良いから全員分の装備に手を加えようか」

「く、風呂で一応準備してましたが無駄でした……!」

 

 そんな悔しそうに言うことかよ。つか、風呂上がりに汚れたら本末転倒だろ。

 

「まぁ、タチアは置いておくのじゃ。それはそれとして、装備に手を加えるとな?」

「ああ、今回手に入った王玉で防具に属性耐性を付けようと思ってな」

 

 雷と氷を抜いて全ての属性の王玉が手に入ったのは想定以上だった、少なくとも四大属性に対して王玉による属性対策が取れるのはかなり大きい。

 

「私達、いる?」

「居てくれたならある程度要望は聞けるからな。ま、取り敢えず付与が楽な四葩の『紫陽花』からやろうか」

 

 鍛造ミスリル製の『紫陽花』はそれだけ魔法的な処理に適している。装備者の意思に呼応して魔法防御を発揮するが、そうでないなら『クラフト』がやりやすい素材なのだ。

 四葩から『紫陽花』を預かり、先に整備。汚れ程度で特に破損も消耗も無いので手早く終え、早速インベントリから王玉を取り出して作業台に乗せる。

 

「何処にどの属性が欲しいとか有るか?」

「む、何か有るのじゃな?」

「まぁ、各属性の特性というか」

 

 例えば火の属性は攻撃力を高めたり、風の属性は速度を上げたりする。腕甲に土属性を付与すれば防御力が上がり盾代わりになるし、身体に水属性を付与すると生命力が上がったりするのだ。

 

「タタラとしてはどうなのじゃ?」

「腕に火と土、身体に水、脚に風だな。かなり強力になると思うぞ」

 

 因みに、両腕に其々この属性を付与すると相乗して効果が高まったりする。更に魔力を回して活用すれば複合魔法の【溶岩】を擬似的に再現出来る、四葩の魔法攻撃力では大した威力にはならないかも知れないが。

 

「一カ所一つの属性に拘らないで、全部乗せちゃえば?」

「やれなくは無いんだが……」

「やらぬのか?」

「俺の直感がそれをやると世界から追放されるって言ってんだよね」

「なら無しですね!」

 

 エテルの疑問に答えれば、タチアが案を却下した。うん、そうなるよな。

 と言う訳で、四葩の『紫陽花』に王玉による属性付与を実施していく。極端に色が変わることは無く、各部位に掘った花の文様に色付くと言う不思議な作用を見せて付与は完成する。

 

「……美しいのじゃ」

「コレは俺も予想外だわ」

 

 セット装備『紫陽花・春夏秋冬』

 物理攻撃+10

 物理防御+80

 魔法防御+120

 速力  +30

 移動力 +2

 特殊能力『属性吸収:四大属性』

 

 見た目の美しさもそうだが、性能が頭おかしい。確かゲーム時代の王玉による装備は属性無効とかまでだった筈、吸収って何だ吸収って。




【裏設定説明天使長】

《システムアナウンス!『天使長』がこの世界の事をお教えします。本日のお便りは此方! ででん♪》

『存在昇華』

《はい、お便りを要約すると『存在昇華ってなに?』と言う物でした。以前にレベルアップについてお話しした事が有りますが、存在昇華はそのレベルアップで集めた魂の魔力を用いて器の拡張を行う儀式になります。その器の限界まで集められた魔力を全て使い、器そのものの拡張を行いその存在を昇華させてより上位の存在として再誕させます。その為、器に蓄えられていた魔力を失い肉体は初期の空の状態へと戻ります。この影響かプレイヤーさんからは『転生』とも呼ばれていましたね。器の拡張で得られる物は元の肉体から割増しした限界値、そして特殊なスキルスロットとスキルですね。タタラさんが持つ『早熟』と言うスキルはこの存在昇華をした時にのみ取得出来る物で、更に拡張されたスロットにのみ付けられる物です。手に入る環境が限定されるので、此処で取得出来るスキルはどれもが強力な物です。そして、此処で取れるスキルにも多少の制限が発生します。タタラさんは元々プレイヤーなので基本的に制限が無いのですが、エテルさん達には明確に取得出来ないスキルが存在してます……尤も、タタラさんと出会った事で芽生えたスキルも有るのでそれらはタタラさんは取得出来ないんですけどね。存在昇華を行った際に失うのはそれまでのステータスと、レベルアップで増えたスキルスロットになります。ステータスは存在昇華直前の物を一部引き継ぎ、スキルスロットは初期の5スロットに拡張されたスロットを増やした分だけになります。引き継がれるステータスは初期20%、2回目からは更に20%ずつ引き継がれて100解禁の時にはそのままのステータスの引き継ぎになります。その為、タタラさんがゲームとして遊んでいた時は存在昇華スキルをコンプリートする為に何度もレベルアップ周回をするプレイヤーさんも居たみたいですね。存在昇華時の特殊なスキルについてはお便りが有りましたらまたご紹介したいと思います。それでは、システムウィンドウを閉じますね。またいつか〜♪》

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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