既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント進行中
アンケート実施中です、直感でお選び下さい。
四葩の『紫陽花』を強化して、少し考える。属性吸収を機能として持ち合わせたのなら、51階層以降も通して攻略が可能じゃないか?
オリハルコンが手に入った事で、俺の『玄武』も装甲の張り替えが可能になっている。全員から死なないようにしろとも言われてるのだ、許可を取ってやるか。
「その、相談なんだが」
俺の言葉に全員が視線を向けてくる。その視線を受けて、口を開く。
「俺の魔導鎧、装甲をオリハルコンにしたいんだがいいか?」
『許可』
「1秒も悩まず満場一致かよ」
思わず苦笑いするが、それだけ俺を大切に思っていると言う事だろう。愛されてる、そう思えば恥ずかしながらも誇らしい気持ちが湧いてくる。
「なら、後で俺の『玄武』は強化しとくよ。それよりもタチア、装備についてなんだが」
「その、まだ『アーラ』で戦えると思うのですが」
そりゃ、性能で言うならタチアと揃って80階層まで通用するくらいに強力な装備ではある。しかし、急がなければならない事情が出来た今は四の五の言う前に強化する必要が有る。
「戦えるだろうな、伝え聞く敵の攻撃力から考えたら70階層まで挑んでも余裕が有るだろう」
「それなら」
「ただ、それは基本的に防御力についての話だ」
そう、『アーラ』の防御力は非常に高い。だが、その他の補正がそこ迄では無いのだ。外装は学生運動が終わるまでは継続するとして、インナーマッスルスーツはバージョンアップしたい。
「肉体の補正、攻撃力や速力の方の補正を上げたいんだ」
「それは……『精霊王』を一撃で倒せなかったから、ですか?」
「切っ掛けはそうだが、50階層のボスを倒す上で火力不足になればそれだけ状況が悪くなる。長引けばそれだけ危ういんだ、だから……タチアの戦闘力を上げたい」
俺の言葉を聞いたタチアは目を閉じて考え込む、1分程考えてから一つ頷いて俺を真っ直ぐ見てくる。
「分かりました、貴方を守る為の力を私に下さい」
その言葉に安堵し、決意が固まる。ダリアのインナーマッスルアーマーを参考に、最新型の物を用意する。
「つきましては、その……採寸をお願いします」
「え、前から変わったのか!?」
日々訓練をしているタチアの事だから、太ったりはしないと思う。そうすると筋肉が発達したのか?
「その……胸と尻の辺りが」
その言葉を聞いた瞬間、四葩が自分の胸の前で手を上下させた。だからスカって音が聞こえそうだからやめろそれ。
「あっと……切っ掛けとか分かるか?」
「た、タタラ殿と通じ合ってからですが!?」
うん、羞恥から声が上ずって大きくなってる。いやまぁ、聞いた俺が悪いなコレは。
「分かった……その、採寸するな」
「はい……」
タチアはそっと衣服をインベントリにしまって全裸になった。最早一度見たので今更恥ずかしがる事では無いのだが、改めて見るとタチアの身体は彫像のように整っていて美しい。
各種のサイズを測れば、胸はカップ数が上がっていて臀部もしっかり肉が乗ってる。なんというか、子を産む為に身体が最適化を始めた様な雰囲気だ。流石はエロゲファンタジア、なんでも有りだな。
「その、測り終わったぞ」
「むぅ、興奮して下さらないのか?」
「してるよ、十分に」
ガチガチに勃起してる身に対してそんな事を言わないで欲しい。好きな相手の裸に興奮しない訳が無いだろう。
「ふむ……押し倒されなかったのでしなかったのかと」
「我慢してるんだよ、エテルと四葩も居るしな」
視線を向ければエテルの笑顔から圧を感じる、後で搾られるだろうなコレは。
着衣を終えたタチアを見て、取り敢えず魔導式ワープロで設計図を呼び出しつつ説明する。ダリアの装備を参考に、背中の部分の改修を行った物をその場で提示する。
「この後作業に入って、明日には渡せるようにする」
「分かりました、お願いします」
「ああ、それと『アンドレイア』も預かる。属性を切り替えられるようにしとくよ」
「それは……お願いします」
タチアから愛剣を受け取る、調整すれば強化もされる可能性が有る。
「エテルの装備も預かるな」
「うん、どうぞ」
俺の言葉に一つ頷いて、エテルがインベントリから装備を出して渡してくる。流石にカップサイズ上がって着れないとかは無いよな、以前は3カップ分は余裕作ったんだし。
「それと四葩、後で刀装具を渡す。鍔だが付け替えてくれ」
「ふむ、今のでは駄目か」
「ああ、デザイン的に複数属性対応が出来そうにない」
「成る程のう、分かったのじゃ」
四葩からも了承を貰えた、コレで全体の底上げが出来る。
「って、タチア時間!」
「……ファ!?」
色々とやっていてタチアの門限を忘れていた、俺の声で気付いたタチアが慌てて動く。
「明日も探索ですか!?」
「いや、夜の9時まで中枢や商会からの仕事を受け付けてるから分からん。決まったら念話を送るからアクセサリーを着けておいてくれ!」
「分かりました、お邪魔しました!!」
慌てて走っていくタチアを見送る、アイテムで移動力が上がった為に物凄い速度で背中が遠ざかる。実はまだ余裕が有ったか?
エテルと四葩は部屋に戻らせて、工房にて作業を開始する。先に簡単な作業を終わらせる事に決め、エテルの防具を取り出す。
いきなり鼻を押し付けて深呼吸なんて真似をする事は無く、先ずは装備の傷みを確認して補修する。『天使長』の羽根を使いミスリル銀糸を強化したエテルの防具、その名も『天使の羽衣』。正直、最下層まで耐えられると思ってるくらいの自信作だ。
セット装備『天使の羽衣』
物理防御力+100
魔法攻撃力+40
魔法防御力+100
速力 +50
移動力 +3
特殊能力 『全属性耐性』『状態異常耐性』
正直、これを装備しているエテルを庇っていた自分は過保護に過ぎただろう。それでも、好きな人が傷付くのが見たくなかったのが弱い男の本音だ。ジャケットにグローブ、靴に其々王玉を使用して強化する。左右で別の差し色のグローブになったが、アシンメトリーなデザインはエテルの好みだしそこ迄目立つ変化でも無い。四葩と同じ様に王玉を施した結果、物理攻撃の補正が付いた。魔銃を取り落とした際にぶん殴る選択肢も取れるだろうし、これでよし。靴に施された風の王玉の影響で移動力が増加して、ジャケットの水の王玉が防御力を上げる。
そうして出来上がる新しいエテルの防具、完全に別物になってステータスが読み取れない。
「そうだな……『マトリカリア』、それがお前の名前だ」
慣れた何かが繋がる感覚とともに、ステータスが確認出来た。
セット装備『マトリカリア』
物理攻撃力+20
物理防御力+130
魔法攻撃力+50
魔法防御力+150
速力 +75
移動力 +5
特殊能力 『属性吸収:四大属性』『属性耐性:光・闇』『状態異常耐性』
なんか『看板娘』装備並にエグい性能してるんですが。コレなら存在昇華後も特に問題なくレベル上げに対応出来るか。
続いてはタチアのインナーマッスルアーマーの作成だ。取り出すのはタチアの体重の半分の重量のミスリルインゴットと、約2kgのオリハルコン。先ずはミスリルとオリハルコンを『創世女神の神核片』で強化する、タチアの中に流れる天使族の血からおそらく此方の方が肌に合うと思うが実際に試すまでは分からない。
両手首、胸の中心、下腹部に其々王玉を取り付ける。ゆっくりと属性が循環するが、インナーマッスルアーマーはセントミスリルの清らかな光を維持している。一先ずは『アーラ』の術式を転写するが、試運転をしなければ出力が違い過ぎてタチアが吹っ飛ぶだろう。『黑鐵』から『玄武』に変わったばかりの俺がそうだったのだから。
タチアの新型インナーマッスルアーマーが調整を残すだけとなったので、『アンドレイア』の調整に入る。取り出すのは其々の属性の王玉と、オリハルコン。『アンドレイア』の鍔を外して、一度溶かす。オリハルコンと織り交ぜ、鍛造して再び形作る。
魔導具に施した術式を刻印する技法を応用し、鍔を術式で飾る。四つの王玉をはめ込み、其々が属性の色を植物の蔦のように伸ばし絡み合わせる。剣身はやがて属性の光を順に灯し極光の様に揺らめかせる。鍔のオリハルコンにより、望んだ属性に切り替わる為に待機状態はこのようになってしまった。これじゃゲーミングエストックだな。
次に同じようにミスリルとオリハルコンを取り出して鍛造し、十字に輪が通った形の鍔を作る。輪に術式を刻み、円環を繋ぐ。属性同士が反応し合わないように抑制し、完成。ミスリルとオリハルコンにより白金の輝きを放つ綺麗な鍔が出来た。名付けて『四天の鍔』、四大属性を使用者の意思に応じて切り替える刀装具だ。
コレで、一通りメンバーの装備は何とかなった。後は俺の装備を終わらせるだけだな。しかし、一息にやり過ぎて少し疲れた。水分を摂りに台所へ行くかな。
《見て下さい、タタラさんがクラフトをしてますよ。かわいいですね》
《かわいい……?》
「ぬわぁ!?」
一息吐いたタイミングで背後から聞き慣れた念が届いて思わず変な声が出た。振り返れば、『天使長』と『清掃長』が並んで立っていた。
「いきなりビックリするじゃないですか」
《ふふ、前回は驚かせられなかったためのでリベンジですよ!》
俺の言葉に胸を張りながら答える『天使長』、一華並にデカい胸がエプロンドレス越しに揺れるのが分かる。が、この人をそういう目で見るのは何か違う気がして気をそらす。
「それで、『清掃長』が居るって事は例の像を御所望ですか?」
《はい、お願いします!》
《姉様、元気ですね》
妙にテンションの高い天使長を見つつ、インベントリからミスリルインゴットを一つ取り出して『クラフト』を使用。世界からイメージを受け取り手の中のミスリルを変化させる。
完了した感覚から目を開けば、其処には微笑みながら眼鏡のツルに手を添える『清掃長』の姿が有った。コレは前に作った『天使長』及び『料理長』と同じ、コンプリートスチルの『清掃長』だ。前の二つが明確に変化していたのに対して、此方はゲーム時代のまんまである。いや、確かに何か変わる要素は無いが。
「コレで依頼は完了、ですね?」
改めて『天使長』に確認すると、その目を輝かせて像を手に取る。
《コレです、コレが欲しかったんです!!》
《姉様、興奮し過ぎです》
まぁ、待ちに待った妹のフィギュアがエロフィギュアだった時のショックは相当だっただろうしな。上手くいって良かった。
「そう言えば、フロアワイパーが欲しいんでしたっけ?」
《その話を詳しく聞こうと思いますので、少しお待ち下さい》
キビキビ動き出した『清掃長』が部屋から出ていく。あの人、壊滅的に炊事が出来なくてお茶淹れるのも無理じゃなかったか?
そんな疑問を持っていたら、『清掃長』が戻って来た……小脇に『料理長』を抱えて。いや、なにやってんの?
《なに、なんですか下姉さま!?》
「可哀想に、いきなり連れてこられて泣きそうじゃないですか」
《しかし、私にお茶は淹れられませんので得意な相手を連れてくるのが最適解では?》
「脳がぶっ飛んでんのかアンタ」
取り敢えず、混乱して涙目の『料理長』を『清掃長』の腕から逃がしてやる。床に落ちそうだったので咄嗟に抱き締めると、腕の中にスッポリと収まってる。ちっちゃいなこの子。
《ふぇ、タタラさん!?》
「混乱してて気付かなかったのか……」
特に抵抗も無く腕の中に収まったままの『料理長』……何だか逆に力抜いて身体預けてきてないか?
《……落ち着いてますね》
「いきなり連れて来られて混乱してたんだし、いいでしょそれくらい」
《敬語、抜けてるんですね》
「妹に迷惑掛けてる駄目な姉に使う敬語なんてねぇよ」
《……ふふ、そうですか》
何だか楽しそうにそう言ってくる『清掃長』を訝しみつつ、腕の中の『料理長』が何故か抱き返して来たことにビビる。こんなに警戒心薄かったか?
「おい、『料理長』?」
《ふふ、タタラさんの匂い。心臓もちゃんと動いてる……動いてるよ》
何だか俺の心音を聞いて安心している、この前の事で何かトラウマになったのだろうか?
《さて、そろそろタラシさんゾーンから出てお茶を淹れて欲しいのだけれど?》
「なんだその異常な
《……ふぎゅ!?》
どうやら『料理長』は一瞬正気に戻ったらしい、腕の中で硬直してしまった。取り敢えず一度離れてやると、顔を真っ赤にした『料理長』が呆然と俺を見ている。大丈夫だろうか?
「……大丈夫か?」
《……》
《ダメそうですね》
「おう、連れてきた元凶が無責任に言うな」
何処か他人事な『清掃長』に思わずツッコむ。この人、本来はこんなハッチャケキャラだったのか。初対面どころかゲーム時代でも猫被ってたとか分からんて。
少しして『清掃長』が『料理長』の目の前で手を叩く、その音でようやく意識が戻ったらしい。
《た、タタラさんが何で!?》
「ここは俺の家、更に言えば君のお姉さんが君を此処まで連れてきた形だね」
《何時まで呆然としてるのですか、早くお茶を淹れなさい》
「お前も横暴な事言ってんなよ」
姉妹コントにツッコミを入れていると、漸く状況を理解したらしい『料理長』は溜息を吐いてからお茶の準備を始める。
「携帯式の湯沸かし機能が付いたポットとか作ろうか?」
《タタラさん、そんな便利な物を用意されたら末の妹がカップ麺しか食べなくなるので駄目です》
《あの子はドジだから、作って貰っても壊されるのが先だと思いますよ下姉さま》
俺の提案に対してダメ出しする理由が『バイト長』の横着だという『清掃長』に、否定しない『料理長』。そうか、そんなにドジなのか。
「でも『清掃長』はもっとひどい料理音痴ですよね?」
《下姉さまは台所の破壊神ですから》
「なにそれ怖い」
《破壊しても新品同様に掃除しますので問題は有りませんが?》
『問題しかねぇよ』
開き直ったかのような『清掃長』の言葉に俺と『料理長』の言葉は揃った、直したからって無罪じゃねぇよ。
《……あれ、いつの間に来たんですか?》
《姉さまはフィギュアに集中し過ぎです》
正気に戻ったらしい『天使長』が『料理長』に問い掛けたら、『料理長』は呆れを含んだ声でそう言った。手早く紅茶の準備を終えて、更にインベントリからお茶菓子まで取り出していつの間にやら用意したテーブルの上に並べる。うん、作業台やら作業机を使わないようにと配慮してくれたらしいけどよく用意してたな。
《さて、ではタラシさん。お茶でも飲んで口を湿らせたらキリキリ吐いて下さい》
「なにこれ尋問?」
《上の妹は掃除道具に目が無いですからね》
「『天使長』は妹のことに目が無いでしょ」
《はい、お姉ちゃんですから!》
「胸を張るなシスコン」
そんなやり取りに疲れてため息を一つ、先ずは紅茶を一口。
瞬間、口の中に広がり鼻を抜ける香気に意識を持って行かれる。茶葉を乾燥させた筈の紅茶から、得も言われぬ程に新鮮な印象を受ける。僅かな渋味と、不思議な甘味。人によっては砂糖を必要とするかも知れないが、俺には十分かつ不快にならない程度の甘みを感じる。紅茶だよな、これ?
《……あの、気に入りませんでした?》
何処か不安そうに聞いてくる『料理長』。しまった、あまりの美味さに意識が飛んでたっぽい。
「いや、今まで飲んだ中で一番美味い。香り高いし、渋味の中にも不思議と甘みを感じる……何だか何時でも飲みたい味だ」
《えへへ……そっか、よかった!》
ゲーム時代では珍しい『料理長』の満面の笑みだ、有志によるカウントでは過去作含めて十回も見せてなかったんじゃなかったかな?
お茶菓子はフィナンシェで、表面はサクッとしつつその下はしっとりしている。砂糖では無く蜂蜜を使ったのか、甘さに柔らかな印象を受ける。シナモンを混ぜられているのか、ほのかに香りを感じる。紅茶を一口飲むと、何方の旨味も引き上げる途轍もない代物だった。成る程、コレが公式で料理上手と設定されている実力か。エテルや一華の料理に魅了されてなかったら危なかった。
《それで、フロアワイパーを含めて様々な掃除道具について喋って貰いましょうか》
「何で普通に光源有るのに光の反射で目が見えなくなってるんすかね」
テーブルに肘を立て手で口元を覆うどこぞの
俺は何時もの如く魔導式ワープロを取り出して設計図を展開、魔導式フロアワイパーの説明をする。『清掃長』からの圧が強くなる中で、更に簡易式のフローリングワイパーの設計図を出しダメ押しとしてハンディクリーナーや高圧洗浄機等々次々に見せていく。
一通り説明し終えて喉が渇いたので『料理長』の紅茶を一口、やはり美味い。『清掃長』はバンと机を叩きながら立ち上がり身を乗り出してくる。
《それでは、製作をお願いします》
「マジかよ」
普段細められている『清掃長』の目が開いている、どうやら色は翠で統一されているようだが『清掃長』の瞳孔は縦に割れているらしい……だから普段は閉じてるのかな。気分は蛇に睨まれた蛙だ。
《当然お礼は弾みます。お望みなら身体も差し出しますし、何なら妹も──》
「いいわけねぇだろ自分の身体も姉妹の身体も大切に扱えやこのスカタンが!」
あまりの発言に対して流石に苛立った。俺をそんな節操なしだと思ってんのかテメェ。
俺の言葉に『清掃長』は言葉を止めて俺の目をじっと見てくる、嘘は許さないと言った雰囲気だ。
《……それでしたら、何がお望みですか?》
「……前と同じで魔法金属、アダマンタイトが少なくてな」
無茶振り、ではない。ある程度俺達にとって高価な物を提示しないとこの人多分暴走する。
《分かりました、オリハルコンとアダマンタイトをある程度の数お譲りします》
そう言って身を離した『清掃長』に少し安堵する、身売りされたら俺が『天使長』に殺されかねん。
早速作っていく訳だが、フロアワイパーは何方かと言うとスプレーワイパーと呼ばれたタイプである。ジェットエンジンで培った噴霧器の技術を応用し、充填された薬液を適量噴霧してポリッシャー型の回転型の拭き取り機を二つ取り付けて拭き取る物を作る。ミスリル製で本体はかなり軽く出来た。
フローリングワイパーは普通にミスリル製だか、ヘッドとシャフトの接続部はフィギュアの球体関節を応用して自在に動くタイプにしている。更にシャフトは伸縮性にしているので、やり方如何では壁や窓にも使える。
ハンディクリーナーは以前作った『ハリケーン掃除機』の構造をそのまま、小型化しただけの物になる。オンオフを簡単にする為、トリガー方式を採用。引金を引いている間だけ機能するようにした。
高圧洗浄機は風と水の王玉を使用し、魔力を流す限り王玉が水と風を生み出して吹き付ける事が可能になっている。構造としては火炎放射器の応用に近かったりするが、水と火で真逆になってるのが面白い。
一通り製作を終えて『清掃長』に渡す、少し長く集中していた為に疲労感が有る。そんな俺に紅茶を差し出してくる『料理長』、そのカップを受け取り口に含むとレモンティーだった。どうやら蜂蜜と檸檬を使った疲労回復目的の物でとても美味しい、心遣いも疲れた心を癒してくれる。
《妹がすみませんね、タタラさん》
そして、『天使長』が労いの言葉と共に肩を揉んで来た。驚いたが、同時に物凄く気持ちの良い感覚が背筋を走る。俺の反応に気を良くしたのか、『天使長』の按摩は続く。
《こういった何かを作ってもらうと言うお願いが出来るのって、今はタタラさんくらいなんですよ?》
「……昔はいっぱい居たんですよね?」
《まさか、外からこの世界の歴史を見ていたタタラさんなら分かっているでしょ?》
確かに、過去作からして『天使長』達が直接製作依頼をするなど5作程しか無かった。『深く深い闇の先で』でのスミスは翼を奪った犯人探しだけで、直接の製作依頼はしてなかったしな。
《何で私達を邪険にせずお願いを聞いてくれるんですか?》
そんな『天使長』の質問に対して答える、按摩の影響で眠気が出てるが問題なく答えられる。
「貴女達姉妹には笑っていて欲しいから、だからお願いを聞くんですよ」
ヤバイ、心地良さと疲れから眠気が来た。
《……そんなだから、私達は貴方を──》
僅かに『天使長』の声が聞こえた気がしたが、眠気に負けて意識が落ちた。
目が覚めたのは僅か15分後。その間『天使長』達は待っていてくれたのだが、『清掃長』が新しい掃除道具を試していて工房が綺麗になっていた。
《そんなに疲れているのなら、無理しちゃダメじゃないですか》
最初に俺が起きた事に気付いた『料理長』がそんな事を言ってくる、口調はキツイが本気で心配したのが思念から伝わってくる。
「うん、ごめん」
《分かればいいですよ。はい、目覚めて早速はアレですけどカモミールティーをどうぞ》
「ありがとう」
謝罪に軽く答えた『料理長』が出してくれた紅茶を飲む。爽やかでスッキリとした味わいが、リラックスさせてくれる。
「……そう言えば、『天使長』はまだ何か用件が?」
《はい、そうなんです!》
質問をすればまた元気な反応をしてくる『天使長』、はたして何が目的やら。
《妹達に聞きました、タタラさんはゴーレムを作ったそうですね?》
「ええ、ちょっと仕事の為に」
《少し見せて下さい》
目から楽しみであるのが伝わってくる『天使長』に、中たたらを見せて良いものか。チラリと『料理長』を見れば、此方も楽しみと言った様子だ。お前、昨日ぬいぐるみあげただろ。
溜息を吐きつつ、インベントリから中たたらを呼び出す。嬉しそうに顔出しした中たたらだが、『天使長』と『料理長』を見た瞬間真顔になり、インベントリに引っ込んだ。お前、本当にゴーレムだよな?
《……隠れちゃいましたね?》
《前もタタラさんの後ろに隠れてましたっけ》
「よく分からないですが、何か警戒してるんですよね」
何でこんなに怯えてるんだろうか、並行世界で破壊された経験が有ったり……なんて訳が無いが。
「で、ゴーレム達に何か?」
《いえ、ご挨拶と……出来たら私達にも一人くらいお譲りして貰えたらなって》
うん、これを警戒して引っ込んだんだろうか。
「……新規に今のサイズのを『天使長』にって形でいいですか?」
《はい!》
《それなら私にも!》
うん、前回もそうだけど『料理長』はゴーレム好きなのか。まぁ、作るが其々に特徴が必要だよな?
「じゃあ、素材として羽根をくれますか?」
《え》
《はい!》
俺の要望に元気よく答える『料理長』とは逆に、固まってしまう『天使長』。いや、確かに今の刃金の翼には羽根は無いな。
固まる『天使長』を脇に置いた『料理長』は早速自らの翼を撫でて羽根を数枚手に取り俺に渡してくる。
「やっぱり、『料理長』の髪色と同じで綺麗だな」
俺の羽根へ向ける感想に、はにかむ『料理長』。『清掃長』には誑し等と言われたが今回は大丈夫だったか。早速インベントリからミスリルインゴットを13個取り出して、『料理長』の羽根で強化する。そのまま『クラフト』と『ゴーレムクラフト』を併用して形成、見慣れたサイズの人型を成していく。出来上がるのはコックコート姿のデフォルメされた俺、魔石から手早く『卵』を作り出して核として植え込む。少ししてその目が開き、俺へ元気よく挨拶をする。
「たー!」
《喋った!?》
ゴーレムが声を出した事に驚いた『天使長』なのだが、姉妹達は教えなかったのだろうか。ゴーレムを作った事だけしか伝えてないのなら、大分イタズラ好きだな『料理長』と『清掃長』は。
俺は新たなゴーレムと目線を合わせて語り掛ける。
「作って早々に悪いが、俺では無く『『料理長』を手助けしてくれ』」
俺の命令に戸惑いつつ『料理長』を見るゴーレム、少し俺と『料理長』へ視線を行ったり来たりさせてから意を決したように『料理長』の所へ歩いていく。背中を向けられて分かったが、背中に小さな翼が生えてるんだな。
「たー!」
《はい、よろしくお願いしますね!》
意思疎通は問題ないのか、ゴーレムの挨拶に笑顔で返す『料理長』。もしかしたら、俺達にはたとらにしか聞こえてないが『看板娘』達には言葉が伝わってるのかも知れないな?
ゴーレムを抱き上げる『料理長』だが、嫌がられている様子は無い。少ししてから警戒対象から外れたのか、ゴーレムも『料理長』に身を預けている。
《あ、あの……タタラさん》
「はい?」
《私、羽無いんですけど!?》
何時も来るたびに2枚から3枚は落ちてるのはなんなんだろうか、気になるが向かうべきアマゾンは無いので解決策を考えようか。インベントリの中に残ってるのは有るけど、それを使うか?
《……あの、姉さま?》
《え、なんです?》
《少し力を込めて翼を撫でてみては?》
妹からそう言われて素直に従う『天使長』、すると羽根が数枚その手の中に現れた。
《え、何で?》
当人が困惑しているが、取り敢えずはそれを預かってゴーレムを作ろうと思う。
「取り敢えず、それを預かっていいですか?」
《え、はい。どうぞ》
と、差し出された羽根を預かり先程と同じ作業を実施する。不思議と他の素材よりもミスリルに馴染ませるのが簡単に感じつつ、またも『卵』を用意して核として埋め込み『ゴーレムクラフト』を使用。
出来上がるのは執事服のデフォルメされた俺……メイドから執事ってのはなんだろうな?
「たー?」
目を開いて俺を認知したゴーレムが何処か疑問を持った声音で声を出してくる。
《……え、何でタタラさんをお父さん呼びしてるんですか?》
横から『天使長』のそんな声が聞こえた、どういう事?
《私のゴーレムはタタラさんを御主人様と呼んでいるのですが、姉さまのゴーレムはタタラさんをお父さんと呼んでるんですよ》
疑問に思っていた俺に『料理長』が補足してくれた。いや、確かに製作者ではあるから間違ってはいないけど。
そんな『天使長』用のゴーレムは俺から視線を外すと、『天使長』を見て嬉しそうに近寄っていく。そして目前に立つと両手を上に上げて声をあげた。
「らー!」
《え、お母さん!?》
「何言ってんだコイツ」
嬉しそうに『天使長』へ向けてらーと続けるゴーレム、そんなゴーレムを戸惑いながら抱き上げる『天使長』……よく見るとゴーレムの背中に『天使長』の刃金の翼みたいなのが付いてるな。
「コレでお二人のゴーレムは完成って事で良いですかね?」
俺の確認に其々ゴーレムを抱いている姉妹は戸惑いつつも頷く、しかしこうも出荷が続くなら都市長の所にお手伝い派遣してもいいかもな。新規に中1体と小5体作って贈るか。
《それでは、先ずは私から報酬を》
「……いきなり背中から声かけるのやめねぇか『清掃長』?」
《軽い悪戯です。それではコレを》
そう言って差し出されるオリハルコン10kgとアダマンタイト5kg、相変わらず感覚が狂っててビビるが正直『玄武』の強化をする上ではありがたい。
《続いては私からですね、コレを》
そう言って『料理長』が差し出すオリハルコン20kg、コレなら『玄武』の装甲を全取っ替えしても大丈夫そうだな。
《最後は私ですね、はい!》
最後に『天使長』が差し出すアダマンタイト10kg、感覚がおかしくなるな本当。
「えっと、報酬は確かに受け取りました」
軽い頭痛を覚えながら、それでも報酬はしっかりと受け取る。自分自身をガメつく思ってしまう面が有るのだが、以前ダルマさんに言われた正当に報酬を受け取る事が誠意というのを踏まえて飲み込む。安売りは俺の作品を使う人達を下げる行為だと教えられたのだ、心からその事を無くしてはならない。
《追加のお願いもコレで終わりましたし、私達はコレで帰りますね》
そんな『天使長』の言葉に合わせて、『看板娘』達は肩を並べる。一斉に礼を取ってから工房から出ていった……俺の言葉くらいは聞いてから行ってほしかったな。
しかし、コレで素材は揃った……と言うか想像以上に多くなったので学生運動後にタチアの鎧の外装部分を作れるだろうな。今は俺を優先するように言われてるから『玄武』の強化が先だ。
魔鉄の部分を全て外し同じだけの量のオリハルコンとその二分に当たる重量のアダマンタイトを用意する。『クラフト』スキルを使いつつ鍛造し、一つの板金を作り出してからスキルで分割する。鎚で叩き曲面を作りながら形成し、元の鎧と同じパーツを作成する。裏地に使っていたミスリルに核石を用いて属性防御を付与し、その上に装甲を貼り付けていく。簡易な強化だが、それまでの装甲の弱さを克服した物となった。
案の定『鑑定』を使っても情報が出て来ないので、新たに名前を与える。
「うぅん……『
上手い名前が思い付かず、そう名付ける。改めて『鑑定』を使えばステータスが覗けた。
魔導鎧『黒煌』
体力 +100
魔力 0
技力 0
物理攻撃+80
物理防御+80
魔法攻撃+80
魔法防御+80
速力 +80
移動力 +5
特殊能力『砲撃』『魔導砲撃・改』『自己再生』『属性吸収:四大属性』
魔導砲撃・改:消費魔力2〜100 威力:消費魔力/2+魔法攻撃力
うん、大分ヤバイことになったな。コレなら普通に80階層まで無策で突っ込めるんじゃなかろうか?
準『看板娘』装備並になった自分の魔導鎧をインベントリにしまいつつ、工房から出る。掃除は『清掃長』がやってくれていたので最低限で終わる。そのままリビングに行くと、サイファーが俺に向かって飛んできた。
「っと、どうした?」
左腕を差し出して止まらせると、その足に手紙が括られているのがみえた。解いて見ると、都市長と商会長から仕事の依頼だ。其々が朝と夕方に時間が割かれているので、1日で何方も済ませられると判断して了承の意を書いた手紙を書く。
「悪い、送り届けてくれるか?」
俺の言葉に返事をしたサイファーは早速飛んでいった、本当に速いな彼奴。
更新した装備は明日の朝に渡すとして、アクセサリーの術式を起動しタチア含めて全員に念話を飛ばす。
『明日は都市長と商会長から依頼が入ってるから俺は探索に不参加だ、装備は少し手を加えたが微調整出来てない。出来れば『アーラ』を使ってくれ』
『ふむ、了承しました。クラフターは大変ですね』
『ま、これも好きでやってるから仕方ないさ。取り敢えず全員レベル50迄は上げて出来ればステータスアップアイテムを集めてくれ』
『分かりました』
やり取りは全てタチアだけで済まされたが、他に誰も聞いてなかったのだろうか。それとも、一人だけ居る場所が遠いタチアの為に気を使ったのか。
そんな事を考えつつ、俺は作業で汚れた身体を流す為に風呂場へ向かった。
【裏設定説明天使長】
《システムアナウンス!『天使長』がこの世界の事をお教えします。本日のお便りは此方! ででん♪》
『速力システム』
《はい、今回はゲーム時代のシステムに付いてのお便りが来たので説明致します。タタラさんが遊んだゲーム会社のSRPGのシステムはターン制が導入されていますが、少し特殊な物になります。1ターンの間に各キャラは速力に応じた回数行動する事が可能です。タタラさんにとってゲームから現実になった時に1ターンを1分とカウントし、各員の速力に応じて行動の先制や移動や攻撃等の挙動を行なっています。さらにこの速力は攻撃時の攻撃回数や命中、更には回避にも影響していますので実はもっとも重要なステータスとも言えます。その……えっちの時の早さには直結しないので速力を上げすぎて早く漏れてしまうって事は無いので安心して下さい。って何を言わせるんですか!? もう……恥ずかしいのでここで失礼しますね! それではまたいつか♪》
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない