既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
ゲーム『深く深い闇の先で』におけるボスモンスターは2種類に分けられる。ストーリー進行で戦わざるを得ないものと、ダンジョンで相対する戦わなくてもいいもの。
その中でもこの『ゴブリンロード』を始め、30階層までのボスは少し特殊な立ち位置になる。というのも、共通ルート中で20階層迄は絶対に潜らなければならず、特定のヒロインのルートでは30階層のボスからドロップするようになる特殊な素材が必要になるからだ。ストーリーボスに比べればステータスは大した事は無いし、スキルや武器防具も貧弱というお粗末な扱いだ。
が、オリジナルキャラを育てるモードだと途端に話が変わる。というのも、オリジナルキャラは原作キャラと違ってパーティを組む難易度が高いしステータスが全体的に低い。装備の拡充にも手が掛かり、金策をしなければ拠点の確保もままならない。
開発チームの鬼畜っぷりが垣間見えるゲーム難易度だった。一応、オンラインにて同じゲームのプレイヤーが自分のキャラを貸し出す事が出来るので本当にパーティを組めない場合はプレイヤーキャラを借りてくる事で解決出来る。
ただし、凄まじく高額な
逆にゲーム中で関係を築いてパーティを組んだ場合、その関係性で支払う金額が変わる。深い仲に至った相手は料金を請求して来ないので、かなり懐が助かる事になる。
話は逸れたが何を言いたいかというと、ボス相手は本来パーティを組んで大人数で叩くか、レベルを上げて殴るかの二択だという事だ。
現状、少女と2人のコンビで安全マージンより上では有るが少女は5しか上回ってない。普通なら完全に自殺行為だ。
だが生憎と、俺と少女は普通では無い。2つのアクセサリーを身に着けてレベルを上げ、安全マージンの中で想定されているステータスを大きく上回った探索者だ。
作戦は『ゴブリンコマンダー』の時とほぼ同じ、取り巻きの『ウォリアー』と『ウィザード』を速やかに倒し、2人掛かりで『ロード』を倒す。対応するのは『ウォリアー』が少女で『ウィザード』が俺なのも変わらず。しかし、この『ロード』戦には『コマンダー』とは違う面が有る。
俺達が動き出した直後に『ロード』が叫ぶ、直後3匹を包む『ロード』の魔力。ゲーム時代にも有った専用バフ技『人妖の号令』である。攻撃関係のステータスにプラス補正を掛ける物で、コレが掛かった後の攻撃は意外と痛い。因みに更に上の『ジェネラル』や『キング』はコレの上位版を持っていて、使われた後の攻撃はかなり痛い。しっかり鍛えた壁か避け盾が居ないと数で押し込まれるし、出て来る配下も『パラディン』とか『ワイズマン』とかなので頭を早急に潰さないと全滅しかねない。なお、その状況下ですら単騎で無双するのが『天使長』を筆頭とした『天使』達である。伊達に公式で最強ユニット扱いされていない戦闘力だ。
そして、この『ロード』のバフは攻撃にしか無く防御は据え置きなのだ。つまり、前の階層で戦った『ウォリアー』や『ウィザード』と殆ど変わらない体力と防御なら問題ない。
少女の方はギリギリ『ロニセラ』の射程に『ウォリアー』を収め、構えている。『ウォリアー』はニヤリと獣欲を滲ませた表情で少女の元へ移動を開始、腕をボクシングのブロック姿勢みたいに前で構えて防御のつもりらしい。腰蓑を押し上げる雄の象徴が何を考えているのか、簡単に察せた。しかし、ちょっと少女を舐め過ぎだ。『ウォリアー』の脚が止まり、惚けた表情で両腕が降りた。少女の『魅了』が通ったらしい、無防備な姿を曝している。少女が一層集中した次の瞬間、放たれた魔力弾は『ウォリアー』の頭を吹き飛ばし即死させた。恐らく射撃系共通技の『精密射撃』だろう、ゲーム時代では命中率上昇とクリティカル率上昇効果でかなり世話になった技の一つだ。
配下の『ウォリアー』を殺されて激昂したのか、少女に向けて鳴き声を上げる『ロード』。そちらに気を取られているのなら、俺は『ウィザード』を片付ける事に集中出来る。入口から『ウィザード』までの距離は40m、ギリギリ二呼吸が要る距離だ。俺から距離を取る事はせず、迎撃の構えをとる『ウィザード』は早速魔法を展開する。風の初歩魔法『風撃』が飛んでくる、空気という視認し難く初期属性魔法では最速に属する攻撃が俺を打ち据えようとする。しかし、練度の低い風魔法は舞う埃やらゴミ以外にも光の屈折でも視認が出来たりする。その為に『ウィザード』の魔法は俺に見えて、見えているなら対処出来る技法が俺には有る。ウォーハンマーを横薙ぎに振るう、太いゴムタイヤでも打ったかの様な硬くも柔らかい奇妙な感触が手に伝わる。『ウィザード』の魔法はコレで対処完了だ。
二呼吸目、間合いに入った俺はウォーハンマーを下からアッパー気味に振り上げる。『ウィザード』は魔法を放とうとした模様だが、少女の魔力が干渉して『ウィザード』の生命力がゴッソリ無くなったのを知覚出来た。このタイミングで『エナジードレイン』による援護が来るとは予測出来なかったが、おかげで『コマンダー』戦の様な『爆発』を警戒しなくて済む。何より、無防備に俺の攻撃を受ければ肉体的には脆い『ウィザード』はひとたまりもない。
下から勢いの乗ったスイングが『ウィザード』の顎に当たり、そのまま顔をこそぎ取った。顎、鼻、目と頭の半分を吹き飛ばされた『ウィザード』、しかし念を入れてウォーハンマーを打ち下ろし完全に頭を破壊してトドメを刺す。
軽く息を吐いて視線を動かす。『ロード』は少女へ向かって剣を振るっているが、その尽くが避けられている。ゲーム時代の命中率計算式は(武器の命中+速力)−敵の速力で計算される。計算結果の数字上、20の差が出たら内部計算式では必中または確定回避となる。
更に、攻撃を受ける側は『反撃行動』『防御行動』『回避行動』の3つから選択する。『反撃行動』はそのまま相手の攻撃判定の後に自身の通常攻撃の判定が始まるのだが、コレは自分が攻撃出来る間合いに相手が居る時に限る。『防御行動』は『ゴブリンコマンダー』の時にも説明したが、自身の防御値を2倍にした数値でダメージ計算を行う。そして『回避行動』は先述した命中率の計算式で回避側の速力の数値を2倍にして計算する。少女は相手の命中率が予想出来ないため回避を選んでいるが、恐らく少女の速力的に反撃を選んでも避けられる可能性が高い。
少女は俺が『ウィザード』を片付けた事に気付いたらしく、少し動きを変える。回避の方向を俺が居る場所に向けて少しずつ位置取りをしていく、恐らくは俺が一呼吸で詰められる位置まで来たら攻撃を任せるつもりだろう。俺が前を張れば、少女は『ロニセラ』による射撃も『性魔術』による援護も可能になる。そうすれば早期の決着にも繋がる。
俺と『ロード』の距離が30mを切った時、少女が大きく後ろに跳んだ。ギリギリまで『ロード』の剣を引き付けての跳躍だった為、力を無駄に込めていた『ロード』は空振りで体勢を崩した。
そこに横から突っ込んでウォーハンマーを振り降ろす。俺の存在に気付いたのが遅れた『ロード』は軽鎧の肩と腕甲で受ける姿勢を取っている。『鑑定』を発動してその情報を読み取る。
人妖族『ゴブリンロード』
体力 139/150
魔力 30/45
技力 50/50
物理攻撃 35+13
物理防御 25+10
魔法攻撃 5
魔法防御 5
速力 20
移動力 3
状態異常 無し
特殊 『指揮Ⅰ』『邪妖の威』
装備 『邪貴の剣』『邪貴の軽鎧』
想像以上に物理攻撃と物理防御が高い、鎧が前に戦った時に見た物より良くなっている。『重撃』を使用、防御の上から思い切り叩き付ける。
物理攻撃力100-物理防御力70、判定30ダメージ。思った以上に攻撃が通らない、ゲーム時代では此処まで性能が高い装備はしていなかったがやはり現実になるとどんなイレギュラーが発生するか分からない。
俺の一撃でふらついた所へ、独特な発射音が3回続き『ロード』を横から襲う。俺の攻撃が影響して『スタン』に入っていたのか、防御も回避も出来ずに魔力弾が3発直撃する。頭に入らなかった故に即死は無かったが、この行動の間に体力を63削れたのは大きい。
軽鎧の隙間から入った魔力弾に肉を裂かれて血を流す『ロード』へもう一度攻撃へ移る、今度は反撃をしようと行動に出た『ロード』を見て違う技を選択。『槌適性』の連続攻撃技『連撃』、物理攻撃に僅かな補正を掛け攻撃を3回叩き込む技だ。
武器命中15+速力35=50−速力20、判定30。命中判定。
物理攻撃50+連撃10=60−物理防御35、判定25。連続攻撃。
上から振り下ろし鎖骨の辺りに当て、勢いを殺さず身体を回し横合いから胴へ、最後に上からの振り下ろしの三連撃。振り下ろしは相手の肩に当たったが、軽鎧は衝撃で割れている。コレなら鎧の防御力を無効化出来るかも知れない。
そして『ロード』が反撃に移る。先程からの計算が合っているなら残りの体力は1、コレが恐らく最後の抵抗。
武器命中25+速力20=45−速力35、判定10。命中判定。
此処に来て乱数は『ロード』を祝福したらしい、そして『ロード』の身体から圧が吹き出す。恐らくは『ゴブリン』種が持つ種族的な必殺技『ゴブの魂』だろう。体力が五分未満だと発動してくる形勢逆転を狙える一撃、下手に生存本能が高いと使う前に逃げるのでボスくらいしか使ってこない技だ。
物理攻撃48×『ゴブの魂』5=240−物理防御40、判定200。
横薙ぎに振るわれてくる剣の側面へ咄嗟にウォーハンマーの柄を叩き込み、僅かに軌道を逸らす。鎧の隙間が有る腋に向っていた刃を、胴の部分へ誘導し直撃。瞬間、俺の身体が吹き飛ばされる。軽く10m転がり、衝撃で内臓が傷付いたのか吐血した。
少女が此方に気を取られる。だが駄目だ、喉奥の血を吐き捨て思い切り叫ぶ。
「トドメを頼む!」
俺の声にハッとした少女は即座に『ロード』へ狙いを付け、発射。罅が入っていた軽鎧が砕け、その身体に風穴を空けられた『ロード』は倒れそのまま分解されて行った。『ゴブリン』相手だと油断した己の落ち度か。ゲーム知識を下地に今生を擦り合わせているつもりだったが、何処かゲーム感覚を捨て切れていないのかも知れない。よりにもよって少女という格好良い姿を見せたい相手の前でコレである、情けない。
仰向けになり、インベントリから傷薬を取り出して呷る。前世でよく飲んだ栄養ドリンクに似たえぐみと甘味のハーモニーが口をみたし、食道を通って胃に届くのを感じる。次々と取り出し飲み干した5本、もはや好き嫌いを超越した感情の境地に有る味だった。
そんな俺の下に少女が走り寄って来た、覗き込んで来た表情は今にも泣き出しそうで目には涙が溜まってる。
「よう、お疲れさん」
「お疲れさん、じゃ無いっての! 死んじゃったかと思っちゃったじゃん……!!」
言葉を紡いだ直後に涙が雨みたいに降ってきた、流石に俺自身一瞬死んだかと思った一撃だったしそう思うのも仕方ない。ゆっくり息を吸い、身体の状態に意識を向ける。飲んだ傷薬が効いて来たのか痛みが引き始めていて、あと3分も有れば再び動ける。
「3分待ってくれ、それで動ける」
「分かった、動けるようになったら帰ろ」
「ソレは駄目だっての、20階層まで行くのはノルマだからな」
「なら本当にもう無茶はやめてよ、アンタが死んじゃったら私も後を追うよ!?」
「マジでそれは待て本当に気をつける」
とんでもない脅ししてきやがった、そういえば以前死んだら家も財産も全部やるって言ったら泣きながら拒否してたなコイツ。
痛みが完全に引き、身体を起こす。少女が慌てて支えて来たが、支えられなくても大丈夫そうだ。とはいえ、暫くは少女の精神安定の為に支えさせないとダメそうだが。
「お、ボスドロップだ」
『ロード』が死んだ場所に豪華な見た目の宝箱が一つ鎮座している。10階層毎に出て来るボスは撃破すると報酬としてこの様な豪華な見た目の宝箱が出る。中身もその階層としてはかなりの物が落ちるので、周回して金策にする人間も多い。
1ボスには1人1日1度挑む事が出来るのがダンジョンのシステムだ、何人も売ったら値崩れしそうな物だが何故かそうならない。ちょっとした不思議だ。
少女に支えられながら宝箱に近付き、開ける。中に入っていた物に目を見開く。黄金に近い輝きを放つ象牙に似た色をした物体。
「……インゴット?」
「嘘だろ、オリハルコンが何でこんな階層で出るんだ……」
少女の言う通り、一つのインゴット。しかし物はオリハルコン、ミスリルよりも希少でずっと奥に潜らないと見付からない物だ。インゴットは素材によって1つの重さが変わる、鉄と鋼なら1つ1kg、ミスリルやオリハルコンは100gで出来ている。しかしその値段は比較にならないレベルだ、このオリハルコンの量で俺達が住む家の周囲4軒の土地ごと買って最新設備を揃えてもお釣りが出る。ゲーム時代では溢れる程に持っていたが、今生では滅多にお目にかかれない素材だ。
「オリハルコンって、どこに出るんだっけ……」
「情報はかなり曖昧だな、30とか40なんて言われてる」
一番手に入ると言うなら『ワールウィンド』外に有るゲーム時代では汎用ダンジョンとされていた鉱山の深い階層だ、そこも攻略難易度が高いとされ、今生では正確な情報が出ていない。
「使い方は今度考えよう、取り敢えず魔石を拾って先に進もう」
「……分かった、もう無理はやめてよ?」
「出来たらそうする」
次の階層から少女にとっては未知だ、出くわすモンスター達にどんな反応をするのか……初見は騙されるかな多分。
ちょっと駆け足気味に10階層まで終了です。
チュートリアルは20階層を越えた先まで続きますので今暫くお付き合い下さい。
主人公とヒロインの容姿ってしっかり書くべき?
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見せてみろよお前の癖。両方に要る。
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理想の男と女を妄想してるから要らネ。
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どんな女がタイプだい?