※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中。
『看板娘』イベント継続中。

アンケート実施中です、直感で選んでください。


話題の迷子

「それで、タタラ殿は儂達に何を言ってないのかね?」

「はい?」

 

 朝食を終えて探索に向かう上での会議を始めようとしたら、当主代行からそう問われた。視線を向けると、お義母さんと揃って少し険しい顔をしている。

 

「報告してない……あ、一華に子供が出来たことですね。すみません、俺が避妊魔法使えなくて」

「それはそれで何で言わなかった!?」

 

 報告してない事としては重要な事はコレだよな、お腹が目立つのはまだまだ先の事になるが一華の其処には確かに命が宿っているのだ。一華自身の申告と、エテルの夢魔としての力による保証なので確かな事実になる。

 

「タタラさん、一華を先に孕ませるとはどうしてですか?」

「流れとしか言えないですね、まさかエテルより先に一華と子供が出来るとか想像してませんでした」

 

 いや、本当に。

 

「ま、まさか四葩……既にまぐわってたりは」

「残念な事に、妾はまだ未通なのじゃお父さん。タタラにも言われておるが、少なくとも虎熊領にて通す筋を果たさねば交われません」

「そ、そうか……」

 

 恐る恐る聞いてきた当主代行に四葩が返す。安堵してるところ悪いんですけど、既に肌は重ねているんですよね。四葩も未通とは言ってるけど、行為をしてないとは言って無いし……卑怯な言い回しだがブチギレて殺されるよかマシだろうか?

 チラリと見ると、どうもお義母さんは四葩の言い回しに気付いたらしい。何処か納得の表情で頷いている。いや、以前は事に至る直前を見られたから今更って感じかも知れ無い。

 

「コホン、それも重要だがそれでは無くてだな……」

「他……このままだと俺が数ヶ月で病没するとか?」

『何でそれを言わない!?』

 

 当主代行とお義母さんが身を乗り出して来た、ちょっと怖い。

 

「いえ、でもコレは虎熊領には直接関係無いですし……」

「大有りだ馬鹿者、娘の嫁ぎ先が消滅の危機とか聞き捨てならんだろうが!」

 

 掴み掛かる勢いで手を伸ばしてくる当主代行、お義母さんもそんな当主代行を落ち着けるどころか俺を軽く睨んでくる始末。

 

「理由はなんだ、どんな病気だ!?」

「いえ、病名まではまだ」

「検査は!?」

「してないですけど、回避方法も有るんで」

「それならどうして分かったのですか?」

「神託みたいな物で、ですね」

 

 虎熊夫婦に詰められながら答えていく、当主代行が全く冷静になってくれないがどうしようか?

 

「……それで、回避方法とは?」

「存在昇華ですね、一度で10年延びるって保証も貰ってます」

 

 少し冷静になった当主代行にそう告げれば、椅子に座って何かを考えている。

 

「短い、ですね」

「原因としては俺の魂が肉体の許容量を越えてしまうことらしくて、病没すると言われてもどんな物かは分かってないんです」

 

 お義母さんからの質問に答えると、妙に納得いったように頷いている。魂が肉体の許容量を越えるってそんなに聞く事象なのだろうか?

 

「存在昇華にはどう対応をするのかね?」

「この都市に有る迷宮の攻略ですね、俺が60階層のボスを倒せば取り敢えず一段階上げられます」

「……現在の最深探索階層はどれ程?」

「49階層ですね、50階層を越えたところで敵が一気に強くなるので戦力を拡充してる最中です」

 

 二人の質問へ交互に答えると、何か考え込んでる。はて、何に悩んでいるんだ?

 

「……四葩を連れ帰るのは無理、か」

「流石に今居なくなられたら詰みますね、俺達の中で一番強いので」

 

 ダリアと言う例外は居るが、基本的に四葩が俺達の中で一番強い。存在昇華を果たした後は更に強くなれるだろうし、最終的にはおそらくダリアも越えるだろうな。

 

「現状、足りてないのは何でしょうか?」

「俺自身はレベルですね、メンバーはステータスと言ったところですが」

「ふむ、装備は十分なのかね?」

「性能だけなら多分80階層辺りまで対応出来ると思いますよ?」

『どう言う事なの?』

 

 俺の言葉に虎熊夫婦の声が揃う。

 装備の性能には自負が有る、後は着用者当人が扱い切れるか否かだ。

 実際に俺の『黒煌』を取り出して解説をする、見た目は殆ど変わらないが装甲がオリハルコンとアダマンタイトの複合材故に防御性能が劇的に向上している事。更に四大属性の王玉を使用した為に四大属性なら吸収出来る事を説明したらどん引きされた。

 更には四葩も『手鞠花』と『紫陽花・春夏秋冬』を取り出し、どんな強化がなされたのかも見せた。属性変化と吸収の合わせ技を知り、お義母さんの目が怪しく光る。

 

「タタラさん、この装備の量産は?」

「素材が有れば可能ですけど、流石に四葩の装備と同等は下手すると家庭用魔力炉並に金が掛かりますよ?」

 

 属性吸収装備は戦闘に携わる者なら喉から手が出る程に欲しいだろうが、生憎俺達にとっては普通でも一般的には希少な素材で作られているのだ。作る上で材料費と技術料を考えるとおいそれと譲れない、流石に都市長からカラムスさんを差し向けられてぶん殴られる。

 俺の言葉に項垂れるお義母さんだが、流石に身内とはいえ理由無く作って渡せない。当主代行のは言い訳が立てられるだろうけどな。

 

「……四葩、帰る迄の条件を一つ追加する」

 

 当主代行が重々しく口を開く、四葩は姿勢を正して向き合っている。

 

「タタラ殿が一度は存在昇華を終えて、寿命を延ばしたのなら一度帰りなさい。先ずは10年延びたなら家に帰り、嫁ぐ準備をすること。よいな?」

「はい!」

 

 どうも、俺を生かす為に方策を変えてくれたらしい。有難いな。というか、いいのか嫁がせて?

 

「タタラ殿。貴殿の命はこの国と我が國を繋ぐ上で重要な物である。それを自覚し、そして大切にしなさい。娘を預けるのだから、自分自身を大切にしてくれないと困る」

「分かりました」

 

 父親が持つ葛藤は、今の俺には分からない。誰かの所へ預ける恐怖など余計に。それでも、任せてくれた事に対して真摯に受け止めよう。俺に取っても四葩は大切な相手なのだから、当たり前の事だろうけど。

 

「他に、何か伝えてない事はないだろうね?」

「そうですね、寿命とは別に下手に新規開発すると世界から追放される事とかですかね?」

「君は幾つの厄ネタを抱えているのかね!?」

 

 此方もまぁ対策は分かっているのだが、条件が何処まで揃っているかまでは分からないんだよな。『天使長』曰く後3柱なのだが、俺自身がその条件を満たしたか迄は分からないのだ。

 

「タタラさん、その神託は何時頃受けたのですか?」

「具体的には『錬金術師の卵』を作った時ですね、それから俺が無自覚にこの世界に残る条件を満たしていたらしく少しずつ余裕は出来てたみたいです」

「……追放されてしまう具体的な条件等は分かりますか?」

「生憎と、そこ迄は分からないです」

 

 どれだけの物を作るとアウトなのか、それが分からない。間違いなく『卵』クラスの物を新たに作るとアウトなのは分かるが、細かい発明でも積み重なると終わりそうなのだ。

 作る前の感覚でなんとなく分かる故に回避出来てるが、そのうち衝動に負けて作った瞬間アウトに成りかねない。

 

「コレについては此方が何か出来る事は無さそうですね」

「はい、すみません」

「いえ、タタラさんの頓痴気具合なら納得出来るので」

「頓痴気……」

 

 都市長からも偶に言われるが、そこ迄頓痴気なのだろうか?

 いや、俺自身に自覚が無いことが頓痴気なんだろう。納得いかないが。

 

「隠し事2つが命に関わる案件なのはどうなのだろうな……他に何か有るかね?」

「えっと……モンスター素材の武具を違う形で作れるようになった、とかですかね?」

 

 俺の言葉に疑問を持った二人の為に、一例を用意する。『ゴブリン』種の素材から作れる『ゴブリンキラー』は、本来なら両刃の西洋剣型である。それを俺がクラフトする際に少し弄ってやれば、刀の形状として作成出来る。それどころか、必要ならば槍にも斧にも出来るのだ。

 余っている『ゴブリン』種の素材で実践して見せれば、当主代行とお義母さんの二人は呆れ顔だ。

 

「こんな事をしておれば魂が肉体の許容量を越えるのも納得だな」

「タタラさんは種族:タタラか、種族:クラフターなのではないでしょうか?」

「扱い酷くね?」

 

 お義母さんからの扱いが人間のそれでは無い、やらかしの自覚は多少有るが流石にこの扱いは酷くないか?

 

「コレで全部かな、あとは大したこと無いし」

「タタラ殿、自己評価で決めると大概外れているのだから一通りぶちまけ給え」

「信用無いな」

 

 溜息を吐きつつ考える。変わったことと言うとスキル関係くらいだろう、とは言えその程度はなぁ。

 

「たー?」

 

 そんな事を考えていたら、コーンレムが寄ってきて心配そうに覗き込んでくる。

 

「お前は俺よりも一華を心配しろよ、専属なんだからな?」

「らー!」

 

 返事をした後に一華の下へ歩いていくコーンレム、人を心配出来る優しさは何処から来たのやら。

 コーンレムに向けていた視線をもとに戻すと、当主代行とお義母さんがコーンレムを見ていた。どうしたんだろうか?

 

「あの、そんなにゴーレムが珍しいですか?」

『ゴーレム!?』

 

 いや、何だそのリアクション。

 

「俺が作った『ミスリルゴーレム』ですね、何故か俺をへちゃむくれにした姿になるんですよ」

「だから、そういう事をちゃんと言え!?」

 

 滅茶苦茶怒られた、もしやアーレム関係も話さないと駄目かコレ?

 

「タタラさん、何故ゴーレムが喋るのですか?」

「いえ、分かりません。最初の1体を作った時から喋りますし自立行動しましたから」

「それを異常だと認識して下さいね?」

「そうは言いましても、最早この手の事は『俺だから』で済む事象な気がしてきて」

『説得力の強さよ』

 

 俺の言葉に虎熊夫婦の言葉が重なる。タタラってるとか動詞にされてる時点で今更感が凄いが、ゴーレムが喋るくらいは良いだろもう。

 

「しかし、何故ゴーレムを作ろうなどと?」

「少し前に天使族が訪れて街が一部壊れまして、その復興の為に手が欲しくて作りました」

「それは……そうか」

 

 ゴーレムを作った理由自体に当主代行が辛そうな表情を見せる、死傷者100人規模は平和なこの街で起こるには大き過ぎた事件だ。この辺は話して無いが、伝えるなら俺よりも都市長達の方が相応しい気がする。

 

「で、『ゴーレムクラフト』を取ったついで出来たのがこの新しい娯楽でアーレムって言います」

 

 そう言いつつ、インベントリから1体のアーレムを取り出す。現時点でどれだけの高性能機が作れるかを試そうと、鍛造ミスリルで作り上げた代物だ。参考にしたのはダリアの魔導鎧の元になった『グラジオラス』だ。

 コントローラーであるハンガーから解放された『グラジオラス』は滑らかな挙動で歩き、当主代行達の前で立ち止まり恭しく礼をとる。

 

「……タタラ殿、これは?」

「俺が持つこのコントローラーから『念話』を飛ばして、アーレム側が『感応』でそれを受信します。コントローラーの持ち主の意思や考えを受信した後、アーレムがその通りに動きます。俺はコレをこの都市の流通を司る長である商会長に持ち込んで、近日中に販売しようと思ってます……新しい事と言ったらもうコレくらいですね」

 

 視線を一切『グラジオラス』から逸らさないで質問してきた当主代行に説明する。なんとなく、同好の士である気配から紹介したけど外したかな?

 

「タタラさん、此方はどのような構造で動いているのですか?」

「魔力源は俺が作った小型の魔力コンデンサーっていう魔力を溜めておける発明ですね、一つでこの『ワールウィンド』の一般家庭1軒分の消費する1日分の魔力保有量を誇ります」

 

 俺の説明に感心するお義母さんを尻目に、当主代行は『グラジオラス』をじっと見詰めている。もしやコレは──

 

「もしかして、欲しいんですか?」

「欲しいに決まっている!!」

「うわ煩っ」

 

 確認したらめっちゃデカイ声で言われた、そんなに気になるか……いや気になるよな。男の子だもん。

 とは言え、作るなら巻き込まれて貰わないと困るんだよな。

 

「作るのはいいんですけどね……」

「何か不都合が有るのかね?」

 

 意を決して伝えるのは、都市祭におけるアーレムの発表についてだ。現在『ワールウィンド』には俺の『グラジオラス』を抜いて3体のアーレムが存在している。成金さんの『フォートレス』、法務長の『ロウフル』、商会長の『玄武』の3体だ。

 これらを3人に実際に動かして貰い、関心を買うのが目的だ。ただ、俺はこれだけで関心が買えるのかというのが疑問なのだ。

 

「真新しい故に多くの関心は集まると思います、子供も大人も目を輝かせてくれると思います……けど情熱を集められるかが分からないんですよ」

 

 当主代行、身を乗り出しているな。俺の悪巧みが気になるのだろう、他国の貴族の当主代行を巻き込むのは問題かも知れないが……友好国って事で許されないかな?

 

「先に作った3体は全てこの国の意匠で作られているんですよ、その為にある種代わり映えがしません」

 

 当主代行が気付いたのか目を輝かせ始める。

 

「なので、お披露目会場に乱入者が欲しいんです。それも、見た目で強い衝撃を与えるような異質な意匠の物が。例えばそうですね──」

「我が國の甲冑、などかね?」

 

 俺の意を組んでそう口に出す当主代行に、ニヤリと笑みを返す。

 

「ええ、多分その登場は劇的な物になるでしょう。我が国の標準的な鎧達の前に現れる、異形にも見える意匠の甲冑。1体なのに、3体を相手取り大立ち回りをするその姿。出来れば大袈裟な動きで見栄を切って欲しいですね」

「良いな、歌舞伎が如く構えるのも面白い!」

 

 当主代行はノリノリである。隣のお義母さんは呆れている風だが、同時にそんな子供っぽい当主代行が大好きなのだと雰囲気で伝わってくる。

 

「つきましては、その……」

「む、何かね?」

「資料として陽出甲冑の実物を見せて貰えれば。出来れば当主代行のヤツ」

 

 俺の言葉にガタッと椅子を鳴らせて立ち上がる当主代行、そして──

 

「直ぐ戻る」

「貴方、待って下さい!?」

 

 庭先の転移門へ向けて全力疾走しようとした当主代行にお義母さんが待ったを掛ける、そりゃそうだろうな。

 

「大紅蓮が有ったろう、あれを見せれば動く大紅蓮で遊べるのだぞ……何を躊躇う必要がある!?」

「落ち着いて下さい!?」

 

 駄目だな、当主代行の目がショーケースの向こうのトランペットを見た少年みたいに光ってる。憧れは止められねぇってやつだ。

 大紅蓮、確か過去作でも登場した最上級の防御力を持つ全身甲冑だったはずだ。そんな物を持ってるって、やっぱり凄いんだな虎熊家って。

 

「あ、お義母さん」

「なんですか、今ちょっと大変なんですよ!?」

「その大紅蓮を解析させてくれたなら、俺が同等以上の物を作りますって言ったら──」

 

 言い切る前に当主代行がお義母さんを振り払い転移門へ神速とも呼べる程の速度で辿り着き、転移して行った。滅茶苦茶速かったな今の。

 門の向こうへ消えていく当主代行を呆然と見送ったお義母さんは、俺を睨み付けてくる。その目尻には涙が浮かんでいるように見えたが、きっと気の所為だな。

 

「タタラさん、どうしてあんな……ひどいですよ!」

「あの、何かいたたまれなくなるような言い方をするの止めてもらえます?」

 

 まるで俺が無理矢理関係を迫ったみたいに言い方をしないで欲しい。

 

「それに、大紅蓮を解析して同等以上の物とはどういう事ですか。確かに先程見た『黒煌』は相当な物でしたが、大紅蓮に比べれば些か防御力は下回ってましたよ?」

 

 大紅蓮のゲーム時代に登場した性能は、最低で物理防御100。確かに今の俺が作っている鎧では下回る。まぁ、この大紅蓮は魔法防御がお粗末という特徴が有るので、俺が作る鎧の方が総合能力では上回る。それに──

 

「お義母さん、俺の工房はさらなる進化を迎えています。今迄の出来と一緒にされたら困りますよ」

「さらなる進化……?」

 

 俺の言葉にお義母さんの表情が変わる。疑いと言うか、『次は何やったんだお前』みたい物に見えなくも無いが今はそこでは無い。

 

「探索中に相対した『精霊』種の希少個体である『精霊王』を倒し、その核たる王玉を使用した強化を施しました。この工房で鍛えられた魔法金属……どれ程の性能に至るか、分かりますか?」

 

 俺の言葉を聞いたお義母さんが唾を飲み込む、そりゃ技術者としての面を持つお義母さんは気になる筈だ。もう一押しだな。

 

「そして、俺が作ると言う事は大紅蓮の防御力に『黒煌』の機能を搭載すると言う事……魔導鎧『大紅蓮』の完成です!!」

「ま、魔導鎧『大紅蓮』……!?」

 

 未知なる装備に心をときめかせるお義母さん、俺は内心堕ちたなとほくそ笑む。

 

「気になりませんか、魔導鎧となった大紅蓮の性能」

「い、いえ……私は!」

「見てみたくないですか、魔導鎧と概念武装を用いた際の当主代行の強さ」

「そ、そんな誘惑……!!」

「ほら、お義母さん。口では何と言っても……身体は正直ですよ?」

「え、そん……な……」

 

 俺の言葉を聞き、お義母さんは既に鍛冶場に向かって歩き出していた。本能が作る工程を見る気満々である。

 

「素材は一先ず鍛造ミスリル製ですね、オリハルコンは関節の可動部分に使って人工筋肉の制御に回します」

「成る程、あの人に合わさせた術式なら任せて下さい。長年連れ添っているので対応は可能です」

「お任せします。ついでに、工房の術式も見てもらえたら……」

「仕方ないですね、10分で終わらせましょう」

「タタラが何かの詐欺を行う現場にお母さんを誘ってるように見えるのが不思議じゃな」

 

 俺と家族の会話の中に混ざれ無かった四葩が、そんな事をこぼす。失礼な、詐欺でも何でも無いぞ。

 鍛冶場に入ったお義母さんは、早速各設備の術式を確認し始める。関心の声や、唸り声が響く中で術式に手を加えていく。

 

「……タタラさん、術式の構築が上手くなっていますね?」

「そうなんですかね、何か最近上手くいくなとは思いましたけど」

「かなりの部分最適化出来ていましたよ、私が手を加えても循環効率が5%良くなるくらいです」

「それ、普通に凄いのでは……?」

 

 エネルギーロスが5%減るって普通に凄い事なのに何を言っているんだろうかお義母さんは。

 早速魔力を循環させて鍛冶場に火を入れれば凄まじい熱気と、不思議な空間の圧を感じた。

 

「……今なら『空裂』を打てそうな気がする」

「タタラさん、お試しに成ります?」

 

 一つ頷いて、俺は鍛冶に取り掛かる。取り出すのは俺達ならではと言う事でミスリルのインゴットを5kg分、早速重ねて炉に入れる。赤めて鎚で打ち、再び炉へと繰り返す。以前より遥かに魔力の通りがいい、魔法金属が普通の鉄を鍛えるかの様な手軽さだ……俺にとってそれは特に凄い事では無いのだけど。

 打ち伸ばしたミスリルを水槽へ入れて割り、積み沸かしを行う。仮付てから鎚で固め、鍛錬を開始。十文字鍛えで折り重ねていく、金属層が重なり粘り強くなっていく。

 四方詰に作り込み、槌を振るい固める。鋒を落とし、せんで形を整え再び槌を振るう。素延べ棒が出来上がれば焼刃土を塗り、炉へ入れる。

 焼刃土が斑無く焼けたのを確認し、水槽へ入れて焼入れ。悲鳴のように上がる急速に冷却されたが故の甲高い音を聞き、音が止んでから引き抜く。焼刃土を割って姿を魅せるのは白銀の刃金だった。

 刃を研ぎ、その身を鋭く仕上げていく。茎を切り、銘と日付を彫る。最後に白鞘を施して完成だ。眼前に掲げて『鑑定』を掛ける。

 

 長剣『空裂・白銀』

 物理攻撃

 魔法攻撃

 最大射程

 特殊能力『世界切り』『使用可能回数:2』

 

 攻撃力と射程の表示が無く、特殊能力の『世界切り』と『使用可能回数:2』と言う表記。お師様の『空裂』は一度で砕けた事を考えると、コレは前に進んだと言えるのだろうか?

 素材の暴力で解決したかのように見えるが、ミスリルですら2回で砕けてしまうのはやはり失敗作なのだろうか?

 

「お義母さん、お願いがあるんですが」

「はい、何でしょう?」

「俺の打ったコレ、お師様へ届けて貰えませんか?」

 

 俺が差し出す『空裂』を見て、お義母さんが暫し固まる。何度か俺と『空裂』を見たあとに溜息を吐いて、受け取ってくれた。

 

「……アマツ翁が発狂しますよ、コレ」

「それでもお師様なら越えてくれるって信じてます」

 

 俺の顔を見て呆れたように笑うお義母さん。

 

「タタラ殿、待たせた!!」

 

 そんなタイミングで鍛冶場に突っ込んで来る当主代行、もう我慢出来ないと言わんばかりの表情だった。

 当主代行のインベントリから取り出されたそれは、一言で言うなら芸術品だった。

 鉄と鋼を丁寧に折り重ね鍛え上げられたその造り、金属の黒と紐の朱色のコントラスト。幾枚の鉄を重ねた大袖や草摺に脇楯など、前世で見たことの有る日本甲冑の構造を余す所なく取り入れたそれである。

 

「……成る程、コレが銘物『大紅蓮』」

 

 目の前に有る甲冑に、思わず気圧される。正直、総合的な性能ならば以前シスター・カレハから報酬として受け取った『リインフォース』の方が上だろう。しかし、品位と言うか格は此方の方が上に思える。早速『鑑定』を掛けてみる。

 

 全身鎧『大紅蓮』

 体力  +50

 物理防御+110

 魔法防御+18

 速力  −15

 

 成る程、体力と物理防御の加算値が高い。ただ、ゲーム時代より魔法防御がお粗末な気がする。そして速力低下の数字が中々に重い、タンクとしては採用見送りしてしまう物だな。

 そのまま『鑑定』で鎧の構造を記憶する、脳内では物理防御を減らしても魔法防御と速力の低下を相殺するべく構造を構築する。なんなら、同じ厚みの鉄の裏に『反重力』術式を刻んで軽くするのも有りだろう。

 先ずは練習の為に魔鉄でアーレムを作る、レギュレーションに則って本体3kg分を今読み取った大紅蓮の構造で組み上げる。手元に出来上がる『大紅蓮』は黒く重々しい光を放ち、小さくなれどその美しさは健在である。

 次にコントローラーだ。正直、日本甲冑用となると椅子の様な台の方がらしいのだがそうすると他のに比べて華がない。やはり同じ様なハンガータイプにするべきか?

 

「……何か悩み事かね?」

「いえ、ハンガータイプにするか鎧立てタイプにするか悩んでて」

「ガチャガチャする方で!」

 

 当主代行の質問に答えるとリクエストが入った、ならガチャガチャするハンガータイプだな。とは言え、やはり日本甲冑らしい座った姿勢の姿も出したいので台座が可変するタイプに決定する。

 背面の支柱にレール、足元にベルトコンベアを用意。支柱に据えられたアームが上に稼働しつつ、足元のベルトコンベアが動く事で座った状態から起立させる。支柱に据えたアームは脇の下から羽交い締めにするように支えさせ、肩や腕を後ろから支えつつ姿勢を修正するサブアームを付ける。

 早速『大紅蓮』を座らせて、アームで固定。実際にリフトオフが出来るか試せば上手く行った。

 座っている姿からレールが火花を散らしながら稼働して立ち上がらせて、身体をを固定していたアームが次々と外れ最後に俯いていた顔を上げて目を光らせる。かなり上手く出来たのではないだろうか?

 

「当主代行、コレでどうでしょう?」

「うむ、幾らだね?」

 

 出来を聞いたら値段を聞き返された、法務長と同じ反応されてるんだけど。

 

「え、うん……どうしようまだ相場とか考えて無いんだコレ」

「ふむ、取り敢えず此方の金で100万程を渡せばいいかね?」

「よくないが」

 

 初手から払い過ぎである、目標は子供のお小遣いで届くレベルなのだ。とは言え、猫娘さんの時みたいに魔鉄の技術料くらは貰うかな。

 

「少し割高ですけど、魔鉄製って事で35万で」

「では『大紅蓮』を再現したと言う事で100万で」

「値段を勝手に釣り上げんな」

 

 いきなりポンとそんな大金を玩具に対して支払われたら俺もドン引きするわ。まだ説得出来る土壌が無いし……仕方ないけど明日まで支払いを待ってもらおう、一緒に商会長の所へ連れていって適正価格を決めてもらおう。

 

「明日、この都市の商売を司る人と会いますのでそこで値段を決めて貰います。その後でお金は受け取りますので、いいですね?」

「だが、この国にはちっぷと言う文化があると聞いたが?」

「生憎とこの都市には無いですね」

 

 危ねえ、何をどうやっても俺に100万渡す気だぞこの人。手軽に高級な玩具を買おうとするんじゃない。

 止められそうなお義母さんは『大紅蓮』とそのコントローラーを調べている、コレは頼れそうにないな。

 

「……タタラ、今日は探索やめておく?」

「いや、行くからな」

 

 数ヶ月で死ぬのであまり余裕が無いって焦ってたよなエテル、現状見て当主代行に気を使うのは分かるけど予定は守るよ。

 

「兎に角、明日キチンと値段を決めて貰ってからお代は頂きます」

「ふむ、都市祭とやら迄は滞在の許可を皇帝陛下より頂いているので問題は無い」

「陛下から何で直接許可貰ってるんですかねぇ……」

 

 もしや『不死の王』も正式に滞在許可貰ってるんじゃなかろうか……否定出来る要素が無いのが怖い。

 

 

 そんなやり取りをして、バカ達が鍛錬の為に家へ来るのを待ってから俺達は探索へと向かった。変な疲労を感じつつ、それが影響を与える事は無いみたいで良かった。

 

「何と言うか、お父さんが迷惑をかけたのう」

「いや、別にコレくらいはいいさ。それにあのクソ野郎の面白い顔も見れたしな」

 

 意気揚々と稽古を付ける為にやって来たクソ野郎が、当主代行とお義母さんを見て顔色を変える様子はとても面白かった。

 発言を控えて隠れていた雛菊さんだが、今日の鍛錬中にバカとの仲を多分察せられるだろうからどうなるやら。

 それに、大紅蓮を元にした魔導鎧の製作も夜にやる必要が有る。条件と言うか餌として提示した身なのだ、責任持って作成しよう。何より、当主代行が正式に継承した際の贈り物として甲冑は以前から作るつもりだったのだ。コレは丁度いい機会だろう。

 

「何やら、タタラ殿の家では大変だったみたいですね?」

「ああ、四葩の両親が来てな。俺の身体の事やら話したらそりゃもう」

「娘婿……いえ、嫁ぎ先の義息子の生死が掛かるなら当然だと思いますよ」

 

 タチアからの言葉に返せば、軽く責められる。まぁ、俺はメンバーにすら黙っているつもりだったしこんな反応されても仕方ないよな。

 

「今日は階層を進めるつもりは無いですが、タタラ殿を中心にレベル上げ。更にはエテル殿にステータスアップアイテムを集めて貰い、可能なら私達全体の底上げ……で宜しいのですね?」

「細かい所は詰められなかったが、基本的な方針はそれで合ってる。今日も『ムゥ(たみ)』が出たら頼むなエテル」

「任せてよ!」

 

 鼻息荒く気合いを入れるエテルに苦笑い一つ、本当に頼りになる俺の奥さんだな。

 

「タタラ、妾達はレベルが50になったら暫くはそのままでおるぞ?」

「前に話してた件だな、分かった。でも、良いのか?」

「最終的には妾達全員の為になる、問題は無いじゃろ」

 

 レベルを上げずに居るのは経験値が勿体なく成りそうだが、各員に納得して貰えているならば文句は無い。顔を見れば受け入れてくれている様子だし。

 

「そうだ、ねぇタタラ」

「おう、何だ?」

 

 何かを思い出したかの様なエテルが俺に質問をしてくる。

 

「そろそろスキルがコンプリートしそうなんだけど、ちょっと確認お願いしたいの」

「構わないぞ」

「ありがとう、7枠くらい空くんだけど何がいいかな?」

「……はい?」

 

 何枠、7枠?

 いきなり意味不明なレベルでスキルスロットが空くと言われ、頭が混乱している。

 

「何がどうしてそんなに空くんだ?」

「えっとね……『狙撃術』、『移動力上昇』、『速力上昇』、『忍び足』、『隠密』、『闇討ち』、『不意打ち』が前にあのタタラのお尻狙ってた人との戦いで急成長したからかな」

「その認識は止めてくれ」

 

 俺も思わず尻を隠したくなるだろ。

 しかし、そうか。エテルの暗殺者ビルドは殆ど完成しているが……いや、まだ有るか。

 

「一応、『潜伏』と後は『鷹の目』もかな」

「む、タタラ殿『鷹の目』ですか?」

「ああ、タチアは初期から持ってたか。アレ、遠くを見通す事が可能になるスキルだから近接寄りの人間だと殆ど活用出来ないんだよ。タチアが魔法を覚えたら射程を延ばせるけどな」

「成る程、確かにそれなら私が直ぐ使う事は無いですね」

 

 俺の言葉に頷いたタチアは、思い出したかのように俺を見る。

 

「そう言えば、私もいくつかスキルをコンプリートしそうなのですが」

「マジか」

 

 タチアもスキルコンプリート間近の物が有るらしい。しかし、取り敢えずエテルからだ。

 

「エテル、次は『潜伏』と『鷹の目』を取ろう」

「いいけど、『鷹の目』で魔導銃の射程って延びないって前に授業でやってたよ?」

 

 学園の授業でその記憶が俺にない、つまりは専門授業中での事か。確かに、弓と違って魔銃は『鷹の目』で射程は延びない。だが、エテルの場合は別の恩恵が有る。

 

「エテル、魔銃は射程が延びないが魔法の射程は延びる。拘束魔法の射程、延びるんじゃないか?」

「あ、成る程!」

 

 あのトリモドキの時にも活躍した拘束魔法、アレの射程が延びるのは純粋に強力だ。シンプル故に幾らでも応用が利く。

 

「それに、索敵範囲も延びるしな」

 

 単純に見える距離が広がれば、それだけ相手を発見しやすくなる。まぁ、透明な姿を持つ敵なんかは目に頼ると感知出来ないがそこは別に『聞き耳』スキルでも取ってもらえばいい。

 

「取り敢えず、後は実際にコンプリートしてから決めよう」

 

 この言葉を号令として、俺達の探索は始まった。




おまけ『モンスター武具基本一覧』

『ゴブリン』種→長剣『ゴブリンキラー』ゴブリン特効
『オーク』種→短剣『ミートチョッパー』オーク特効
『オーガ』種→腕甲『オーガニクス』オーガ特攻
『トロール』種→戦斧『ガラガラドン』トロール特攻
『ゴーレム』種→戦槌『コアブレイカー』ゴーレム特攻・貫通
『死霊』種→布鎧『死霊王の衣』死霊特性
『不死』種→長槍『カズィクル・ベイ』吸収・貫通
『ハーピー』種→靴『タラリア』飛行
『精霊』種水→長弓『玄武弓』水属性
『精霊』種火→短剣『朱雀刃』火属性
『精霊』種土→腕甲『白虎甲』土属性
『精霊』種風→長槍『青龍槍』風属性
『悪魔』族→長剣『マンイーター』人類特攻
『天使』族→魔導銃『ディバイン』悪魔特攻

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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