※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中。
『看板娘』イベント継続中。

アンケート実施中です、大事なのは経験ではなく選択。


才能の格差

 探索を始めれば後は流れ作業のように進んでいく。少なくとも31階層から出現する『死霊王』の即死攻撃や、極低確率で出現する罠宝箱の即死トラップくらいしか現状の俺達をどうにか出来る手段は上層には無い。

 途中の『ムゥ(たみ)』からエテルがステータスアップアイテムを盗み、その際に飽きずに抱き着いている姿を見て殺意を滾らせる以外に特筆することも無い。

 

「む、タタラ殿」

「おう、どうした?」

「スキルをコンプリートしました」

「お、よかったな!」

 

 22階層に降りた辺りでタチアから報告を受けた、移動中という事は『移動力上昇』辺りだろうか?

 

「はい、『炎の黄金証明、苦難の人間証明』をコンプリートしました。次は前に言われた通り『魔法防御上昇』を取得します」

 

 どうやらタチアのユニークスキルをコンプリートしたらしい、多分レア出現率やらの確率干渉型だとは思うが果たしてコンプリートはどれだけ影響を出すやら。

 

「分かった……スキルの経験値取得の為とか言って、『精霊王』のど真ん中に飛び込んで魔法を受け続けるとか考えないでくれよ?」

「……成る程、その手が有りましたか」

「おい」

 

 現時点で四大属性を吸収出来るが故に考え付いた防御系のスキルを上昇させる方法である。ゲーム時代でも属性無効装備で活用していたと報告の上がるやり方で確かな効果の有る方法なのだが、こんなの目の前でされたら此方がストレス溜まるだろう。

 俺の反応を見たタチアは楽しそうに笑い、俺と目を合わせてくる。

 

「流石にやりませんよ、タタラ殿。貴方を心配させてしまうからな」

「分かってるなら冗談に乗らないでくれ、いまだにタチアの冗談は真に受けるくらいに読み取り難い」

「ふふ、それは失礼を」

 

 俺とのやり取りを楽しみながらステータス画面を弄っているタチア、その手がふと止まり俺に視線を向けてくる。

 

「もし、次にスキル欄が空いたら何を選ぶべきですか?」

「火力が欲しいなら『突撃』を伸ばして行くのも有りだな、可能なら『技力上昇』も一緒に欲しい。または四葩と同じ様に『鍔目返し』を取得するかだな」

「ふむ、それなら次は『突撃』を伸ばしましょう。生まれながら持っているスキルですしね」

 

 笑いながらそう言うタチアに、今更ながら人間らしくなったなんて思いが浮かんでくる。スィーブの事で一時期は自分を化け物と言っていたタチアが、穏やかに俺達と同じ時間を歩いている奇跡に柄にもなく神様へ感謝した。

 そこからの影響を語るなら、1階層丸々最大出現率で『ムゥ(たみ)』を引いた事だろうか。どうもタチアのスキルがコンプリートした影響で、レアの出現率が完全に逆転したらしい。更にはエテルの『盗む』スキルの低確率発動アビリティの『ダブルポケット』という一度に二つアイテムを盗むスキルが確定といえる確率で発動、物凄い勢いでステータスアップアイテムが手に入っていった。

 

「なんだこの無法な組み合わせ」

「タタラの足りなかったステータスが補えておるぞ、凄まじいのじゃ」

 

 思わずこぼした言葉に、口元を引き攣らせた四葩が追随した。いや、助かるけども何だこの理不尽さ。まだ魔力と技力は最大に届いて無いが、魔法防御と速力はこのままレベルアップすれば最大を叩ける様になっている。まぁ、この2種のステータスアップアイテムは使い切ってしまったが。

 

「あ、そうだタタラ」

「どうした?」

「スキル6つコンプリートしたよ」

「……おう」

 

 『移動力上昇』、『速力上昇』、『忍び足』、『隠密』、『闇討ち』、『不意打ち』の6個のスキルをコンプリートしたらしい。『狙撃術』は銃を撃つ頻度が下がったから遅れたのだろうが、常に前線へ移動している上に背後から盗んでいたからか『闇討ち』と『不意打ち』までもがコンプリートしたのは頭が痛い。

 さて、此処からは存在昇華も見据えたスキルの選定に入ろうか。

 

「先ず、エテルの最大の弱点を補おう」

「え、私最大の弱点……って何かな?」

「打たれ弱さ」

「う」

 

 夢魔である事を差し引いても、現時点で体力の合計が135はちょっと低過ぎる。おそらくエテルの成長し難い部分で、レベルアップでも1ずつしか上がらないのでコレほどに低いのだろう。この状態で存在昇華したら初期体力が30台とか言う悲惨過ぎる状況になるぞ。スキルは基本ステータスに加算されるしくみである為、最低でもその数値が保証されるのでコレは取得させて起きたい。

 敵の攻撃に対して当たらなければどうという事は無いと調子に乗ると、3倍速く動ける赤い人でもビームライフルに当たるのだから。

 

「タチア筆頭に俺達が一緒なら盾になれるが、51階層より先は階段に分散トラップとか言うクソ罠が有るらしいからな。それでエテルが敵のど真ん中に放り込まれたら下手するとヤられる」

「うう、否定出来ない……」

 

 ゲーム時代に発生したランダム配置トラップ、父さんと母さんそして防衛長からその存在を厄介な物として愚痴られた事が有る。

 エテルは現時点で合計300を越える速力を持っている、その上で『飛行』持ちなのでゲーム時代だと51階層どころか70階層までなら一発も被弾しなくて済む状態だ。しかし、イレギュラーが起きたらその限りでは無い。

 物理防御を突破する攻撃持ちも出て来るので、基本的な体力を高くしないと本気で危ないのだ……一番の対策がやられる前に殺れなのがこの世界の厳しいところだ。

 

「存在昇華後のステータス低下を考えて『物理攻撃上昇』と『物理防御上昇』、それと『魔法防御上昇』も欲しいな」

「防御は分かるけど、攻撃も?」

「そうしないと『グロリオサ』と『エリンジウム』を使えないからな」

「あ、そっか」

 

 ギリギリ『エリンジウム』は行けるかも知れないが、『グロリオサ』は絶対に無理だろう。エテルの物理攻撃を最大にしても半分にギリギリ物理攻撃が届くくらいだ。それなら可能な限り補う手段を用意するべきだ。

 それに、魔力切れを起こした際に最後に頼るのは自分の肉体なのだから物理攻撃は腐らない。

 

「それじゃ探索の前に話してた『鷹の目』と『潜伏』に『体力上昇』『物理攻撃上昇』『物理防御上昇』『魔法防御上昇』で丁度6つだね」

「改めて聞くと意味不明な取得数だよな……」

 

 かつて『魔力上昇』をコンプリートした際に一度に5個のスキルスロットが空いたが、アレを越えるとは思いもしなかったな。

 

「わ、『鷹の目』の影響凄い。確実に10mは視界が延びてる」

 

 エテルの驚きを含んだ声を聞いて、素直に感心する。コレ、この世界で眼鏡があまり流行らないのはこのスキルの影響が有るんじゃなかろうか?

 

「それじゃ、先へ進もうか」

 

 俺の言葉に頷く面々と共に探索を再開する。探索の速度が大きく変わることは無かったが、エテルの戦法がかなりエグくなっていた。『鷹の目』で延びた効果範囲を活用して『性魔術』を遠距離から掛けるようになり、まさか『ゴーレム』まで拘束して襲撃するようになるとは思わなかった。『物理攻撃』を上げる為なのだろうか、動けない『ミスリルゴーレム』の額の一文字を蹴りで削っていくのは少し不思議な光景だった。

 ただ、その戦い方だと『狙撃術』が成長しないんだけどな。

 敵が高機動幻想(ガンパレード・オーケストラ)やってる中で1人未確認浮遊体験(Z.O.E)やってるエテルを眺めつつ先へ進み、『オリハルコンゴーレム』から1時間殴られてスキルのレベルアップに挑んだタチアに軽く引く。いや、お前の防御力なら1もダメージ通さないけど脳筋に過ぎないか?

 まぁ、四葩も『鍔目返し』のレベルを上げたいからと『オリハルコンゴーレム』をひたすら斬り続けてたけど。

 31階層に差し掛かり、敵が『死霊』系に変化する。相変わらずエテルの『強奪』と『ダブルポケット』アビリティが仕事をして、ステータスアップアイテムが凄まじい速度で溜まっていく。

 コレの分配は今度考えよう、今考えても脳が機能停止しそうだ。俺もしっかり『死霊王』の撃破に参加した、普通の『死霊』系のノリで『死霊王』が湧くので即死攻撃を使われる前に片付けないと危ういのだ。

 そのまま35階層へ進む直前に、エテルが声を掛けてきた。

 

「タタラ、『狙撃術』もコンプリートしたよ」

「うん、知ってた」

 

 1日でスキルを7つコンプリート、何かの記録に成りそうだ。

 

「斥候としては『聞き耳』スキルを取ってほしいところではある」

「目の次は耳って事だね、でもそんなに役立つ?」

「此処はダンジョンだからな、透明な敵が出て来ても音は消せないから」

「ふむふむ、なるほどね。なら『聞き耳』スキルを取るよ」

 

 そう言ってステータス画面を操作するエテル。仮にこの先エテルがソロで探索に来ても、持ってるスキルの構成から生存率はかなり高くなるだろう。俺も探索に出るつもりではあるが、卒業後は店や依頼の仕事に追われる事になるだろう。工匠長の立場に立ったらどんな無理難題を押し付けられるか、今から不安である。

 35階層からの探索も問題は無かった。エテルの背面攻撃がえげつない事も、四葩の連撃の破壊力もいつも通りだ。タチアは『突撃』を活用して『吸血鬼』を即死させている。

 俺は遅々として進まない自身のスキル成長に悩みつつ、『吸血鬼』を叩き潰す。ハンマーの属性変換は絶好調、『黒煌』は性能を遺憾無く発揮して俺自身が強くなったと錯覚させる程あっさりと本来は強敵で有る『吸血鬼』を撃破する。『性魔術』で魅了は効かないし、なけなしの魔法も四大属性なら吸収する。いや、複合属性である雷と氷でも俺達の装備は吸収出来るけれども。

 撃破した『吸血鬼』からはノーブルブラッドが大量に手に入った。前回の分と合わせて100を越えたので、今夜は『ワラキア』で俺が本来想定していた素材の量で作った場合を試せる。今度こそ『不死の王』を殺しきれる槍を作ってやる。

 探索を進め、40階層。ボスの『ドラゴンゾンビ』を軽く蹴散らしてボス宝箱を前にしている。

 

「ふむ、エテルでどうじゃ?」 

「前回はやらしくも高性能な装備を引きましたし、今回も同じのを引く可能性が有りますね」

「私、絶対イヤだからね!?」

 

 前回『ドラゴンスケイルアーマー』を取得した為、エテルの夢魔としての本能(エロス)が作用した疑惑を掛けられてこの会話である。いや、大変盛り上がり強力な装備だったが使わないのに増えるのは違うと言うか。

 エテルが拒否する上に二人が押し付けようとしてるので、取り敢えず籤を作って引かせてみる。

 

「む、妾か……」

 

 そうして宝箱を開けるのを四葩に任せることになり、早速開けさせる。

 

「開けゴマ、なのじゃ!」

 

 そうして開いたボス宝箱を覗き込む四葩が、身体を震わせて止まった。何事かと思うなか、四葩が宝箱からそれを取り出す。

 金色の紐と、同じく黄金のパーツ。色は違うが間違いなく──

 

「……『ドラゴンスケベイルアーマー』じゃな」

 

 全身鎧『ドラゴンスケベイルアーマー』

 体力  +50

 魔力  +20

 技力  +20

 物理攻撃+15

 物理防御+40

 魔法攻撃+10

 魔法防御+30

 速力  +20

 移動力 +1

 特殊能力『火属性耐性』『風属性耐性』『女性専用』

 

 念の為に『鑑定』を掛けたら案の定証明された。前回勘違いしてたけど、これスケイルアーマーじゃなくてスケベイルアーマーだったのか。名前の通りだな、何考えてんだ開発。

 自分以外でもスケベイルアーマーを取得した事に満面の笑みを浮かべるエテル、コレは同類を見たかの様な反応である。

 

「トラッちゃんも同じのを拾ったんだねぇ?」

「むぅ、コレはおそらく誰が拾っても同じなのではないか?」

 

 四葩も自分と同じ扱いだと詰め寄るエテルに、此処の宝箱が同じ物しか出さないと予想する四葩。

 

「いえ、御二方がスケベで有る証明なのでは?」

『それを言ったら戦争じゃろうが!!』

 

 そんな二人に酷い仮説を叩き付けるタチアには人の心は無いのだろうか、エテルと四葩の二人も思わず声を揃えて意見を退けるつもりなのが見える。

 

「じゃあ、エテルの時と同じく保管は四葩な」

「何でじゃ、タタラが保管しておればよかろう!?」

「でも俺、それ着れないし」

 

 スケベイルアーマーは女性専用なので、俺が持っていても意味はないのだ。顔を顰める四葩に対して、エテルがそっと何かを耳打ちする。

 

「エテル、結局お主は助平ではないか」

「そんな真面目な顔で言う?」

 

 さてはコレ、俺とスケベイルアーマー着てセックスした事を教えたな?

 四葩が持つ恐らくは雷龍の鱗を使ったであろう金ビキニを見つつ、コレを四葩が着たら大分マニアックだなとそう思った。

 

 そんな事を話しつつ、41階層へ。群れなし襲い掛かる『ハーピークィーン』に対してエテル達3人が迎え討つ。

 空の覇者は己だと言わんばかりに暴れるエテル。

 『空裂』の技法の影響で世界の断層までは行かずとも空間の断層を生み出して『クィーン』を斬り裂く四葩。

 愛剣で刺し貫き愉快なオブジェクトにしていくタチア。

 俺も空戦が出来るように『黒煌』に手を入れようかな、この先の階層に出て来る断崖絶壁を進む上では必要になるだろうし。

 

「む、タタラ殿」

「おう、もしやスキルがコンプリートしたか?」

「はい、『剣適性』、『騎士剣術』、『速力上昇』、『移動力上昇』の四つがコンプリートしました」

「……」

 

 エテル程では無いが大分ぶっ飛んだ成長ぶりで有る。武器適性と発展スキル、更に基礎能力上昇系を二つコンプリートはかなり助かる。

 

「タチアは今、どんな風になりたい?」

「そう、ですね……攻撃力を補いたいですね」

 

 タチアの望みを聞いて、それに合わせたスキルの提示が俺の役割だろう。これなら幾つか候補が有る。

 

「先ず、タチアに必要なのはより多く技を使う為の技力だ。だから『技力上昇』は必須になる」

「成る程、『突撃』の回数を増やせればそれだけ優位に立てますね」

「それと、攻撃系スキルの経験値を稼げる手段としても『鍔目返し』が有用だろう」

 

 実は『鍔目返し』の裏の使い方になるのだが、攻撃回数を増やして攻撃関連の経験値を増やすという方法が有ったりする。俺は元々探索するつもりが無く、戦闘能力を完全に捨てたスキル構成をしていたので転生時に取らなかったのだが、今も取らない理由は鍛冶の時にまともに制御出来てない打撃が入るからだったりする。思った通りに鎚を振るえないなら駄作に直結する、そんなのは願い下げだ。

 対してタチアは『突撃』だけでなく、『物理攻撃上昇』にも作用する上にそこ迄の精密性は求められて居ない。成長を促進させる上でもベストなスキルなのだ。

 

「む、たしか『鍔目返し』は攻撃力を半減するのでは?」

「暫く49階層迄を周回するなら問題は無いさ、半減してても『突撃』の威力も乗るしな」

 

 何なら技を使用するから『技力上昇』も刺激を受けて成長出来る。ベストとは言い切れないかも知れないが、ベターな選択ではあるはずだ。

 

「では『鍔目返し』も入れますね」

「それと、このタイミングから『白刃流し』も始めていこう」

 

 俺の言葉に訝しげな表情を浮かべて俺を見て来るタチア。

 

「……ロード・タタラ、『白刃流し』とは回避に類するスキルだったと記憶していますが」

「ああ、使用して回避成功時に反撃を可能にするスキルだ」

「それは、私の防御力が信用ならないと?」

 

 ああ、少し勘違いしているのか。

 

「いや、逆だ。タチアが高い防御力を持つから反撃する可能性を増やすコレを勧めてるんだ」

 

 俺の言葉に目を瞬かせるタチア。ふむ、少し説明するか。

 

「『白刃流し』は回避時にボーナスを速力に追加して、回避が成功したら反撃する……コレが基本になる。だが、更に深い階層には『貫通』持ちの相手が出るって話を聞いた」

 

 まぁ、正しくは前世知識だが。

 

「コイツらはそこそこの速力の高さを持つ為に、基本的に攻撃を避け難いって特徴を持つ。そのくせ当たると痛いし、基本的に物理防御が高い相手を狙う癖が有るらしい」

「……話を聞く限り、私の天敵ですね」

「そう思うか?」

 

 俺に言わせると、それは逆だ。速力を高めたタンクにこの『白刃流し』を使わせて一方的に虐殺出来る程度の低能にしかならない。本能に従い餌に食い付いた所を狩る、簡単だろ?

 

「つまりタタラ殿は、より深い階層で私に囮になれと?」

「どっちかと言うと疑似餌だな、引き寄せて殲滅させる盾にして鉾……それとも自信が無いか?」

「意地の悪い質問ですね」

 

 俺の言葉に強気な笑みを返してくる、タチアは『白刃流し』を取得してくれたようだ。

 

「そんで最後なんだが……その、な」

「どうしたのですかタタラ殿、そんな言い難そうに」

「タタラの事じゃ、強力な代わりに何がしかの欠点か弱点の有るスキルを教えるつもりなんじゃろ」

 

 俺が言い淀む中、疑問に思ったタチアに四葩が横から捕捉を入れる。まぁ、気付かれるか。

 

「俺がタチアに勧める最後のスキルは『渾身』だ」

「『渾身』ですか、あまり聞きませんね」

「そりゃ使い手の殆どが死ぬレベルで扱い難いスキルだからな」

「本当に大丈夫なんですかそれ!?」

 

 ゲーム『深く深い闇の先で』に於いて、『貫通』持ち蔓延る深層にて受けタンクが行き着く先がこの『渾身』タンクだったりする。避け盾でなければ盾に非ずと人権を失ったタンク達が活用法を見出された結果、捨てがまりタンクとか薩摩タンクとか渾名された自爆特攻型の戦闘法である。

 

「コレはあくまで最終手段として覚えておいて欲しいんだ、本当普段使う方法じゃないからな?」

「そこまで念押しするんですね……」

「隣で聞いてる私の方も緊張してきたんだけど」

 

 そりゃ、デメリットに対してメリットが少ないとか散々文句が出た能力だからなこれ。

 

「『渾身』ってスキルは綺麗に言うなら全身全霊を掛けた一撃を叩き込むスキルになる。己の全てを掛けて相手を倒す為に生み出されたスキル、なんて呼ぶ奴がいるくらいだ」

「そう言われると凄そうじゃの」

「何か勇者に許された必殺技のような雰囲気が有りますね」

 

 まぁ、ある意味で勇者(愚者)のスキルだと思うけどな。

 

「このスキルの効果は使用後に一発限り、自分の攻撃力に防御力を上乗せした一撃を放つ」

 

 ついでに言うとスキルレベルに依存したクリティカル威力上昇と『貫通』の発動も有ったりする。まぁ、この世界はゲーム時代と仕様が変わってるから確かな事は言えないのだが。

 

「成る程、防御力を上乗せするのなら確かにタチア向けのスキルじゃな」

「此処までは欠点は見当たりませんね」

 

 そう、此処までは良いのだ。問題は此処からである。

 

「このスキル、使用後は一分間は行動が取れなくなる」

『……え?』

 

 続いた俺の言葉に対して、三人が疑問の声を上げる。まだまだ有るぞ?

 

「それに防御に費やす余力も注ぎ込んだ結果、防御力が一切働かなくなる」

「あの、それ……」

「ついでに言うと、敵から攻撃されてもまともに動けないから回避も不可。ついでに動けないから致命打を受けやすい」

「……待つのは死では?」

 

 そう、捨てがまりタンクとか呼ばれたのはコレが原因だ。一撃で一切合切終わらせなければ待つのは死、あまりにも潔く死に過ぎて最早芸術の域である。一部には熱烈な愛好家も居た、なんて噂になるくらいに流行ったこの薩摩タンク。勧められたタチアは完全に硬直している。ただ、コレは使う場面さえ選べば例えダンジョン最深部のボスだろうと一撃で葬れるのだ。

 

「欠点が目立ちに目立って余りにも役に立たなく見えるが、例えば対ボス戦時の運用についてはほぼ最強に位置するからなコレ」

 

 更に言えば『鍔目返し』はこの攻撃すらも連続攻撃に切り替える、一体だけが立つボス戦ならば『渾身』が乗った2連撃が決まれば大半が沈む。改めて思うと、『鍔目返し』が強過ぎる。技じゃなくて攻撃全てに適応されるのは控え目に言って狂ってる性能だ。

 

「それは、私に四葩殿と同じ様に立ち回れと?」

「いや、コレはあくまで切り札だ。俺がコレを此処で勧めるのはある意味で50階層ボス対策でもある」

 

 さて、以前説明した事をおさらいしよう。

 50階層のクソボスは4体の『精霊王』を連れている、コイツらは通常時に会敵する時に比べてステータスが低く設定されていて全て倒す事でクソボスへの攻撃が通るようになる。

 此処で問題なのが、クソボスは各属性で体力が分けられている事だ。攻撃可能な時間が決まっている中で、可能な限り体力を削る必要が有る。だが、体力の高さが何気に面倒なのだ。

 少なくともゲーム時代、一つの属性辺りの体力は400程。問題は特定属性しか通らない上に、攻撃可能な時間が1ターンも無い事だ。その為、一度に与えられるダメージを可能な限り上げる必要が出るのだが同時に此処で問題が有る。

 何とこのクソボス、属性が弱点では無く耐性なのだ。

 そのために与えるダメージが半減する、何が酷いってその上で防御力もそこそこ高いと言う事。コレを作った開発はマジで死ぬべきではと、プレイした当時は思った程だ。

 

「そ、そんな……では『鍔目返し』は逆にそぐわないのでは!?」

「初期状態ならそうなるな、だから求めるのはランクⅠのレベル10。本来の攻撃力で2回攻撃を可能とする状態だ」

 

 俺とタチアの会話を聞いていた四葩も静かに頷く。とは言え、四葩は攻撃力が半減しても多分あのクソボスの体力を削り切れるんだよな。物理攻撃が300近いし、普段は使わない高威力技も持ってる。仮にあのクソボスへ『概念鑑定』が通らなくても、力技で削り切れる。

 渾身のデメリットを考えても、四人で即座にクソボスの体力を削り切るにはこの手段くらいしかない。

 まぁ、ダリアを連れてくるってのも解決策にはなるが。

 

「暫くは足踏みしてステータスを上げる事に従事する、そう言う話だったからな。それなら、可能な限りそれを活かす方向に舵を切ろうと思う」

 

 俺のステータスはこのままレベルを上げて行けば、60の時点で魔力と技力を抜かしたステータスが最大を叩く。その二つもエテルが頑張ってくれると言うので、それを信じよう。

 そして、俺に使わないステータスアップアイテムはエテル達に分配すれば底上げになる。エテルは兎も角として、四葩とタチアの物理攻撃を上げるのは相応に楽だと思う。流石に二人の物理攻撃を上限叩かせるのに合計で100は必要無いと思いたい……それでも何とか出来そうでは有るけどな。

 

「それに、タチアは先天的に持ってた『突撃』を鍛えて行けばかなりの火力になる。『突撃』と『渾身』を合わせれば、多少攻撃力が落ちようと問題無くなる筈だ」

 

 実は、一番手軽に最大ダメージを出せる手段は何かと言うと『突撃』だったりする。コレ、ゲーム時代は最大まで上げると1マス進むごとにダメージが50増えたからな。

 その影響で、最大に届かずとも高火力が出せるスキルとして扱える。少なくともランクⅡの時点で1マス進むと20ダメージが増えるので、タチアがランクⅢにでも育てたらかなりの火力に届くだろう。

 

「まだステータスを伸ばす余地は有るから、50階層を攻略するのを遅らせてでも備えよう」

 

 俺の話を聞いてタチアは少し考え込みてから頷いた。

 その様子に安堵しつつ、45階層を越えて『精霊』種との戦いに移る。壁は四色を混ぜたマーブル模様、エテルに先行して貰って探索すれば案の定複数属性の『精霊王』が待ち構えている。

 タチアと一緒だとこの状況がデフォルトになってるんだろうな。

 特に苦戦する事もなく片付けていき、50階層に辿り着いた後で転移結晶で地上へと戻る。

 

「順調にレベルが上がってるな」

「適正帯で戦うとレベルアップも早いよね」

 

 俺の言葉にエテルが賛同する、俺は今回の探索で50まで後少しになった。話を聞くとエテル達も50直前まで上がっているらしい、順調だ。

 スキルの成長も早い、特定の物だけでは有るが『早熟』を所持している俺よりも早い物すら有る。コレが才能の違いと言う物だろう。悔しいが、俺は俺の速度で確かな成長を重ねるしかない。

 消臭してから帰路につくとタチアはここ最近門限関係でやらかしが多いらしいので早々に別れる事になった、晩飯に対して物凄く未練が有りそうだったので明日また来る様に言って別れた。

 

「タタラ、明日って……」

「俺は商会長の依頼で1日潰れるぞ、エテルと四葩はまた潜るのか?」

「うむ、レベルもそうじゃがスキルも成長させねばならぬようじゃからのう。50階層のボスは話を聞く程に面倒な事が上がっておるから今から気分が沈むのう」

 

 俺もゲーム時代で新キャラを作るごとに同じ事を思った物だ。初めて戦った時などギミックが分からず全滅したので、今でも記憶に残る苦い記憶だ。そこからセーブ&ロードの繰り返しで対策を探り、クリアした時はクソボスだけでも3時間は掛けていた。

 今思えば攻略サイトでも探せば良かったのだが、自力での攻略に躍起になって時間が掛かってしまった。パソコンのエクセルを使って表まで作っていたのが懐かしい……アレをいまだに覚えてるって魂に刻まれる程熱中してたのか俺は。

 

 家に着き、各員風呂へ入る。エテルと四葩は檜風呂で、俺は一人夫婦風呂を満喫している。一華は背中を流しに入って来なかったので、リラックスして湯船に浸かれる。

 入浴を終えると雛菊さんとバカ、そして当主代行が揃って座禅を組んでいた。いや、どんな早さで仲良くなってんだ彼奴。肝心の指南役である糞野郎を探せば、離れたところで燃え尽きたようにソファにもたれ掛かってグッタリしていた。いや、どうした彼奴?

 近寄って声を掛けてみる。

 

「どうした、指導の仕方で叱られたか?」

「……久し振りにご当主と模擬戦やって滅茶苦茶疲れた」

 

 口から魂吐いてそうな雰囲気でそう言われた、戦闘狂な此奴がそんな事を言うって相当激しい物だったのか?

 何とか姿勢を戻した糞野郎は脇のテーブルに置いてあったコップを呷って水を飲んだ後、話を続けた。

 

「君から依頼を受けてる彼に貸してる……『慈悲丸』だっけ、アレの効果を知ったご当主が態々借りて僕と久し振りに模擬戦したのさ。そしたら痛みは有っても死にはしないって状況に滾っちゃったみたいでさ、技まで最大活用して斬りあったんだよね。お陰で疲労困憊、ご当主は奥様が後ろから殴り付けて止めてくれたけど僕の方も指導が出来る体力なんて残っちゃいなくてさ……このザマ」

「うわぁ……」

 

 この糞野郎の愚痴を普通に最後まで聞いてても同情しちまうレベルだった。バカはお義母さんが雛菊さんと協力して見てくれたようで、今の座禅に移るまで結構長く指導してたらしい。

 どうもこの糞野郎が鍛えた影響か、あのバカのスタミナが伸びてる。と言うか、刀を振るう上で無駄な動きが削がれて余計な消耗が無くなったと見るべきか。本当、俺からしたらマジの天才に見えるぞ彼奴。

 

「ごめん、まだ暫く休ませて……」

「いや、邪魔してすまん」

 

 糞野郎からの頼みに対して素直に謝罪が出た、コレはもう異常事態だろコレ。

 

 夕食を挟み、当主代行とお義母さんは家に泊まると言うことで小たたら達に部屋を用意させる。俺はこれから工房に籠もる旨を伝えて離れさせて貰った。

 今日の探索で集まった『ノーブルブラッド』とミスリルで、本来作ろうとした『ワラキア』を完成させようと思う。用意するのは『ノーブルブラッド』を100個と、ミスリルインゴット10kg。普通なら集まらない様な素材量である。

 先ずは『ノーブルブラッド』でミスリルを強化し、『ブラッドミスリル』を10kg生成する。形状記憶合金と同質の性質を持つので槍の形に操作する。『ワラキア』と同じ紅い長槍となったが、何かが足りなく感じた。そこで、オリハルコンインゴットを二つ取り出して残っていた『ノーブルブラッド』で強化。案の定新しい魔法金属になったので『ブラッドオリハルコン』と名付けてから柄の中に芯として仕込む。コレで『ブラッドオリハルコン』が使用者の殺意や敵意を読み取って『ブラッドミスリル』を操作、敵を確実に害するように動くようになった。

 完成を感じ取って『鑑定』を掛ければ、情報が伝わってくる。

 

『吸血槍ワラキア』

 

 物理攻撃+90

 最大射程 3

 特殊能力『吸命Ⅴ』『貫通Ⅴ』『自己復元』『自己強化』『自己拡張』『侵食』『吸血鬼殺し』

 

 名前と攻撃力、そして射程の伸長と『吸血鬼殺し』の付与。

 ゲーム時代にも有ったこの『吸血鬼殺し』は『吸血鬼』に対してダメージが2倍になる事と、『吸血鬼』の特殊能力を封じる機能が有った。狙った能力が付いた事に安堵して思わず溜息を吐いた。




不死の王「何やらタタラ・ジュロンが私を想いながら武器を作った気配がする」
従者「気の所為です、お願いですから此処で大人しくしていて下さいね!?」

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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