※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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駆け足気味に11〜14階層迄の攻略です。
そろそろ探索パートに皆さんが飽きてそうで怖い。


探索パートⅢ

 ボス部屋でステータスの確認を行う。

 

 なんとさっきの戦闘で少女はレベルアップを果たしていて、更に『性魔術Ⅱ』スキルもランクアップをして『性魔術Ⅲ』になったらしい……俺のスキルレベルに並んでるの何なんだろう。

 『速力上昇』と『移動力上昇』もスキルレベルは上がっているらしい、常に前へ出て貰っているから当然か。

 

 俺は『鑑定Ⅲ』がもう少しでランクアップ出来る所まで来た、このまま順当に行けば20階層では『鑑定』のランクアップが出来るかも知れない。

 少女から『精気譲渡』を受けて技力を回復して、11階層へ進む。

 

 9階層までは積み上げられた石のブロックの様な壁だったのが、蔦が這う石壁に変わった。

 所々木の根が飛び出している所も有り、気を付けないと躓きそうだ。

 

「なんか雰囲気変わったね」

「正直コレでも大人しい方だがな、壁の素材は変わって無いし」

「え、そうなの?」

 

 初々しい反応に微笑ましくなる。

 ただ、此処から登場してくる敵はエロゲーの常連でもあり定番とも言えるモンスターだ。

 

 馴れた様子で先行していく少女と後を追う俺。

 そして少女が立ち止まり、壁の影から先を覗いた瞬間肩が揺れた。何が起こったかだいたい予想出来たが、同じ様に壁の影から先を覗き見る。

 

 見た目ファンシーな二足歩行の豚、俗に言う『オーク』と呼ばれる者なのだが蜂蜜好きな黄色い熊の友達なアレにしか見えない可愛らしさだ。

 前世でプレイヤー達から『オークじゃなくてポークじゃねぇか!w』とか言われ、夏と冬のお祭りでは様々なキャラを押しのけて企業ブースでぬいぐるみが売られ完売したと言う伝説を持つモンスターである。

 

 そして、この少女は隠しているつもりなのだがああ言う可愛いモノが好きだったりする。

 

『かわいい! 持って帰りたい!!』

『モンスターだからやめとけ。ついでにアレ、思考はゴブリン並みの性欲の塊だからな?』

『でもかわいいし!』

『ソッチ方面の被害の声は可愛いくねぇよ』

 

 アイコンタクトと口の動きで意思疎通を交わすが、かわいいで思考が汚染された様子だった。

 

『取り敢えず一匹だし試しに頭を撃ち抜いとけ』

『え、そんな残酷な事したくない』

『そうしないとお前が残酷な真実(・・)を見ることになるぞ』

『うぅ、ごめんねピギー』

『初対面で名前付けんな』

 

 少女は『ロニセラ』を構えようとしたが、途中で思い直したのか『エナジードレイン』を使用した。少女の魔力が『オーク』を包んで生命力を奪う、一瞬ふらついた『オーク』だったが直ぐに立ち直る。

 直後に怒り狂った様にピギーピギーと鳴き声を上げて周囲を見回している。

 

『え、何で!?』

『『オーク』種には種族特性として『精気回復』が備わってるからな、『エナジードレイン』には強いんだよ』

『そんなの聞いてない!』

『聞かれてないからな、それに俺は頭を撃ち抜いとけって言ったぞ?』

『そんな意味なんて思わないじゃん』

『それと気を付けろ、匂いで勘付かれた』

『え』

 

 壁の影から覗きつつ、やり取りを交わしていた俺達に『オーク』が視線を向けてくる。数度鼻を鳴らした後、その身体に変化は訪れた。

 

 バキバキと音を立てて膨れ上がる肉体、牙が伸び禍々しくなる容貌。豚と言うより猪の頭にレスラーを思わせる身体をした、正に誰もが想像する様な『オーク』がそこに居た。

 

「え゛」

 

 ポークから『オーク』へ変態する様を一部始終見ていた少女は、濁った声を出して完全に固まった。

 

 いや確かにアレは初見だと思考停止するけれど。

 

 可愛らしい物から雄々しさと言うか悍ましさを感じる低い鳴き声に変わった物を上げた後、此方へ向かって突進してくる『オーク』。未だ魂が抜けた状態の少女の腰を抱き、十分引き付けてから飛び退く。

 

 『オーク』種が得意とする『突進』は、移動した距離に比例して威力が伸びる。『オーク』種は直線に限り移動力を10発揮すると言う特性を持っていて、『突進』は移動距離が1増える毎に物理攻撃力が10ずつ上がる。

 

 もっとも、速力は高めなのだが『突進』の命中率は高く無いため簡単に避けられるのだが。

 

 少女をお姫様抱っこして着地した後、重々しい衝突音が聞こえた。どうやら『オーク』が壁に激突して止まったらしい。

 少女を地面に降ろすと、ヘナヘナと両手と両膝を付いて落ち込む。見事な迄のorzだった。

 

「なんであんな……酷いよ」

「だから残酷な真実を見るって言ったろ、かわいいままで死なせてやればよかったのに」

「この世界は残酷だ……」

「今このタイミングで言う言葉かソレは、落ち込んで無いでアレ見てみろ」

 

 落ち込む少女を促して壁の前で倒れている『オーク』へ視線を向けさせる。壁には血痕、床に沈んだ『オーク』の頭は潰れている。

 

「……え、なんで?」

「コイツら『オーク』は突進を避けられて壁に激突した場合、助走距離如何では自分の体力以上のダメージが反動で返ってきて自爆するんだ」

「え、欠陥生物?」

「否定は出来ないな」

 

 因みにコイツら『オーク』のレア種は両手にフランベルジュを持って突っ込んで来る何処ぞの鬼狩りをパロったヤツだったりする。『突進』は最低限の使用で大剣の二刀流を使ってくるやたらと手強いヤツだった。

 

「間抜けみたいな死に方するけど気を付けろよ、最長距離走ったら『ゴブリンロード』の『ゴブの魂』並に威力出るからな」

「えぇ……」

「まぁ、当然壁に当たれば即死するんですけどね」

「えぇ……」

 

 確か『突進』が物理攻撃に60とかの補正で、最長10ヘックスの移動で攻撃力に+100だったから最低攻撃力160で物理攻撃が乗るからな。

 

 コイツら『オーク』は対処が簡単なのだが、如何せん避けて自爆させると経験値を貰えない。『突進』をどうにかするなら大盾と槍でパイク戦法を取るのが無難だろう、吹き飛ばされ無ければ確実に殺せる。

 

 壁に激突した『オーク』の魔石を回収し、少女を促す。さて、探索を再開しよう。

 

 実際に『オーク』と言う種族はどう言った種族なのかと言うと、攻撃に全振りした脳筋である。

 物理攻撃は浅い層で出会う種族の中でも第一位と言う純然たる事実が存在し、普通に殴られたりするだけでも痛い。

 

 しかし、速力と移動力を除いたステータスはお粗末も良いところだ。物理防御力と魔法防御力は『ゴブリン』種にすら劣り、『ジャイアントバット』と『ジャイアントラット』に並ぶ1。

 

 体力も記憶している限りは40前後とやや高めに見えるが、防御力の低さから簡単に殺せる数字だ。

 

 魔力は低くそもそも魔法を覚えられない魔法攻撃力なので問題は無いが、逆に『突進』使用のために技力は無駄に高い上に種族特性から回復する。

 ……何となく、技力が高いのは性欲が強いからなのではと今回の少女の『エナジードレイン』に耐えた姿から想像してしまった。

 

 過去の作品で居たのだ、主人公のパーティに負けて弱り、複数の『オーク』に性魔術を使って精気を吸おうとした結果怒らせて、輪姦された挙げ句に性処理用に持ち帰られた夢魔が。

 

 あまりにも芸術的なメスガキっぷりにその界隈ではそこそこ有名だったらしいが、俺はメスガキが守備範囲外だったので気にして無かった。

 

 ゲーム時代では敗北した女性ユニットを前と後ろからサンドイッチしていた。多分、少女が敗北したら前後から挟まれて溢れるくらいに中へ注がれる。『ゴブリン』との違いは最初の2匹が抜くこと無く何発も放ち腹部が膨らむくらいだろうか?

 何となく『やめて、これ以上は入らないのぉ』くらいは言うかもしれない。

 

「兎に角『ロニセラ』で頭をぶち抜いてやれ、かわいいままで死なせてやるのが慈悲だ」

「死は救済……死は慈悲……」

「ヤベェスイッチ入れないで下さいお願いします」

 

 目からハイライト消して『ロニセラ』を見詰めるな、タマがヒュンとなる。

 

 そこからは少女の銃撃無双だった。視界に『オーク』が入った瞬間、目にも止まらぬ早業で頭を撃ち抜いているのだ。

 『銃適性』の常時発動型の技で『早撃ち』だったか、初撃だけ速力を2倍にして先攻を取ると言った能力だったはず。

 

 無慈悲に銃爪を引き屍の山を築く様は殆ど悪魔のソレで、こんな所で彼女の父親の血を見た気がする。

 

 斥候から雑魚処理と八面六臂な活躍をしている少女、そんな彼女の前に貧相な宝箱が鎮座していた。

 

「『鑑定』の結果、罠は無いな」

「なら早速開けちゃおうか!」

 

 ようやく感情が戻って見えた、今まではブツブツと慈悲とか救済とか呟きながら『オーク』を処理してたからな。

 

「アレ、なんだろこれ……板?」

 

 そう言って少女が宝箱から取り出したのは木製の板だった、大きさ的に宝箱に入るサイズでは無いのだがよく有る事だ。

 素早く『鑑定』を掛ける、名前を見て頭が痛くなる。

 

「どうしたの、頭痛い?」

「いや、その素材がな……」

 

 コレ、開発が狙ってたなら相当だと思う。

 

「コレ何なの?」

「木材の一種で『オーク材』って言う、しかもかなり高品質だなソレ」

「……」 

 

 俺の言葉を聞いた少女から表情が消えた、思い切り息を吸い込んで叫ぶ。

 

「くっっっだらねぇ!!」

 

 ストレス溜めすぎたかな……『ポークハント』は彼女には酷だったかも知れない。

 

 少女からオーク材を受け取ってインベントリに放り込む、そしてゾロゾロと足音が聞こえてきた。

 既に臨戦態勢の『オーク』が大量に現れた、もしかしたら先程の少女の叫びが集めてしまったのかも知れない。

 

 全ての『オーク』が鳴き声を上げ、まるでラグビー選手がタックルを始めるかの様に片膝と片手を突いた。コレ、一斉に『突進』するつもりだな?

 

「ちょっちょっちょぉ!?」

「くそ、間に合えよ!」

 

 咄嗟に『創製魔法』を使う、選択したのは『クリエイトウォール』と言う周囲の素材を集めて壁を作る魔法。裏側には階段を作り少女の手を引いて駆け上る。

 インベントリから取り出した『鉄の斧』を天井に叩き付けて深く挿し込むと、少女を抱き締めて階段を蹴った。

 

 次の瞬間『オーク』達は一斉に『突進』を仕掛け、俺が作った壁を壊しダンジョンの壁へ激突する。距離は大した事無かったのだが、数十匹と言う何処から出て来たのか分からない量の『オーク』達が後に続き前に居た同胞を押し潰して行く。

 

 天井すら揺れる衝撃に『鉄の斧』が抜けないかヒヤヒヤしつつ、下の『オーク』達は動きを止めて居た。

 死んだ物と気絶した物で半々くらいか、このまま先に進むと魔石を取り込んで面倒な事になりそうだった。

 

 床に降り立って俺は再び『クリエイトウォール』を使用、天井ギリギリに隙間が出来るくらいの高さからインベントリから取り出した袋入りの『火薬』を投げ込み仕上げに火の点いた『マッチ』を投げ込む。更に2重の『クリエイトウォール』を建てた直後に凄まじい爆音とともに目前の『クリエイトウォール』に亀裂が走った。

 

 異世界転生系小説でお馴染みの『粉塵爆発』である、3重の『クリエイトウォール』が粉砕一歩手前と言う威力に驚いた。

 

 軽く叩いた壁が崩れ、その先には焼死体だけが残っていた。

 次々と分解されていく『オーク』の死体を眺め、遺った魔石を手早く回収して行く。

 

 先程の大声を反省したのか黙っている少女は斥候を再開したが、流石にあの数の『オーク』が集まったのならこの階層のリソースは一時的に空の状態だろう。階段へさっさと向かった。

 

 しかし『オーク』が焼けた匂いは香ばしくて空腹を誘った、何と言うかポークジンジャーを食べたい気分だ。

 

「ねぇ」

「どうした?」

「ポークジンジャーとかが食べたい」

「それな」

 

 少女も俺と同じ気持ちだったらしい、晩ごはんは豚肉に決まりだな。

 

 そして階段を降りた。階段の前でステータスを確認する、『クリエイトウォール』の影響か『創製魔法Ⅲ』がランクアップ可能になっていた。

 4回しか使っていないのに一度にレベルが上がり過ぎではと思ったが、粉塵爆発が経験点となったなら辻褄は合う。本来攻撃手段を持たない『創製魔法』で数十体も同時に殺せばこうもなるか。

 

 ちなみに、レベルは上がっていない。

 

 そこからも同じ様な事の繰り返しだ。少女の銃撃が『オーク』の頭を撃ち抜いて、先へ進む。

 宝箱を開ける度に出る『オーク材』にキレそうになりつつ、時に蔦や枝を使ったトラップで『オーク』を事故らせて少女の負担を軽くする。

 

 そうして気付けば14階層で、俺達は面倒に対面していた。

 

『何か、剣背負ってる奴が居る』

『嘘だろ、レア種だぞそいつ』

 

 階段直前の広場にソイツは陣取っていた。臨戦態勢前なので、デフォルメされた二足歩行の豚が背中に大剣を2本背負った姿はシュールさが強い。少女としては、本性を知る前なら可愛いと言っていたのだろうが。

 

 このレア種の名前は『オークスレイヤー』と、何故か『オーク』の方を殺してそうな名前をしている。

 ステータスは体力と攻撃力が伸びているが、他は据え置き。

 しかし、ひたすらに戦いが難しい相手だ。

 

『どうするの?』

『どうするも何も殺っとかないと進めないしな、きっちり終わらせとくぞ』

『オッケー、で取り敢えず頭に狙撃?』

『そうしてくれ、即死させ無いと本当に面倒な強さなんだよあいつ』

『そうなの?』

『『オーク』特性の『精気回復』で技力を自然回復させつつ剣技使ってくる』

『それは面倒過ぎる』

 

 少女の魔法攻撃力が元々高かったのなら魔法で出来た戦法で、殆どのヤツから卑怯扱いされるレベルでシンプルに強い戦い方だ。

 少女が集中する、一撃で仕留めるべく頭に狙いを定めて──発射。

 独特な発射音の後に中空を駆ける魔力弾は『スレイヤー』の額に吸い込まれていき、『スレイヤー』の頭が後方に弾けた。

 

『やった!』

『いや、生きてる!』

 

 どう言う直感か音よりも速い魔力弾が直撃する寸前に、自分から頭を後ろに逃して魔力弾を避けたのだ。

 

「前に出る、援護頼む!」

 

 少女が『スレイヤー』に取り付かれれば危うい為に前へ出る。

 『スレイヤー』は他の『オーク』と同じ様に、身体を変化させて行く。出来上がったのは無駄の無い均整の取れた肉体美、そして風格を見せる猪の頭だった。

 背負っていた大剣を2本とも抜き、身体の前で交差させる様に構える。『スレイヤー』も『オーク』の例に漏れず、初手は『突進』を仕掛けるつもりのようだ。

 一瞬、その身を沈ませたかと思えば爆発でもしたかの様な音を発する踏み込みをして『突進』をした。

 交差する刃が眼前に迫る中で『回避行動』を選択。

 

 武器命中20+速力20+『突進』10=50−速力70、判定-20。回避成功。

 

 向かってくる『スレイヤー』をギリギリで回避、直進しか出来ない性質を利用して直前で横に逃げる事で回避をする。気分は闘牛士のそれだ。

 俺が刃の間合に入ったと見た瞬間、両手のフランベルジュが横薙ぎに振るわれていた。避け損ねたらあの中で真っ二つにされていたかも知れない、そう感じさせる光景だった。

 

 俺が避けたと知った瞬間『スレイヤー』は両足で急制動、地面を削りながら滑る。そして、そんな無防備な状態を少女が見逃す筈も無く三連射。

 今度は完全な不意討ちになったらしく、防御も回避も取れずに魔力弾が身体を直撃する。血の花を咲かせるその背中に、今度は俺がウォーハンマーを振るう。

 しかし、直前で反応した『スレイヤー』は俺に向かって振り向いていて行動を起こしていた。

 

 武器命中15+速力35=50−(速力20+『白刃流し』+15)✕2、判定−20、回避成功。

 

 此処に来て恐らくは『スレイヤー』の隠し玉であろう『白刃流し』を使われる。『白刃流し』は近接武器で使用可能なスキルで有り、使用した時の効果は相手の攻撃に対して回避判定を行い、成功した場合反撃を実施すると言う『回避カウンター』に属するスキルだ。

 『スレイヤー』に攻撃を流され、体勢が崩れた俺に2本のフランベルジュが迫る。狙いを読み、首筋と脇腹を守れる位置に腕を置く。

 

 物理攻撃48−物理防御40、判定8✕2

 

 二刀流である為に攻撃力が落ちていて助かった、そうでなければ手痛い攻撃を受けていただろう。

 ゲーム時代で二刀流は武器適性スキルが7の時に取得する『デュアルウェポン』が有って可能となる戦闘方法だ。メリットは攻撃回数が単純に2倍になる事だろう、技を使用した時にも適応された。

 デメリットはダメージの減少、ダメージが8割に落ちる為に単純に防御力が高い相手には効果が薄いのだ。

 例外としてはダメージが固定している武器(・・・・・・・・・・・・・)は計算式が適用されないくらいだ。

 

 攻撃を凌ぎながら『鑑定』を掛ける。

 

 鬼族『オークスレイヤー』

 体力   35/80

 魔力   0/0

 技力   25/60

 物理攻撃 40+20

 物理防御  1

 魔法攻撃  1

 魔法防御  1

 速力   20

 移動力  10

 特殊  『精力回復Ⅰ』『デュアルウェポン』

 装備  『フランベルジュ』『フランベルジュ』

 

 後僅かで倒せるのだが、俺では『白刃流し』を使われる可能性がある。決め手になるのは少女の『ロニセラ』だ、少女に目を向ければ意図を察したのか一つ頷く。コレだけ接近していても確実に狙えると、そう自信を示したのなら俺は『スレイヤー』の意識を引くだけだ。

 可能な限り引き付ける為に、わざと大きな動作でウォーハンマーを振りかぶる。それに対して『スレイヤー』も肩に担ぐようにフランベルジュを構えた。

 

 が、急にだらんと脱力した。

 

「え?」

「やった、通った!!」

「え?」

 

 突然の事で混乱する俺と、目的を果たしたと喜ぶ少女。つまりコレは『性魔術』の『魅了』系なのか?

 取り敢えず動かない『スレイヤー』の頭にウォーハンマーをフルスイングしてホームランする……そう言えば『エナジードレイン』は無駄でも『魅了』が掛からなくはなかったなと思い出す。むしろ『オーク』種は力による支配に弱い部類だった、ダークエルフとかに支配されてるのがお約束だったわ。

 

「今のは普通の『魅了』ですけど?」

「嘘だろおい」

 

 終わった後に聞いてみたら予想外の返しをされた。

 夢魔の特性故か、少女の『性魔術』は強力になる。それを差し引いても初期の魔法で、レア種の耐性を貫通するのはちょっと想像付かなかった。

 

「それに、新しいのは向き合って無いとダメそうだったし」

「新しいのは覚えてるんだな」

 

 俺は『性魔術Ⅲ』になっても何も覚えてないのだが、コレが才能の差ってやつなのか?

 

「向き合って無いと使えないとは一体」

「名前からして視界に入ってる必要がありそうなの、こんな風に」

 

 口元に爪を見せるかの様なVサイン、悪戯っぽく口を開き細めた目で流し目気味に視線を送ってくる。

 ポーズを取る事も発動の条件なのだろうか?

 

「コレが新しい魔法、『ゆ」

 

 

 

「あれ?」

 

 目の前に居た筈の少女の姿が無い、直前迄の記憶は少女が新しい魔法を見せようとした所で途切れている。

 身体には倦怠感と、奥底から湧き出る活力。少女から『精気譲渡』を受けた時の感覚に似ている。

 

「おい、何を……」

 

 魔法の名前も効果も分からなかったので、少女に問い詰めようとして周囲を見た。少し離れた壁際で少女は俯き此方から視線を外し、何より視線に入るのを嫌がるかのように自身の身体を抱いている。

 荒い吐息、汗ばみ紅潮している肌、やや乱れた着衣。

 

「……おい、何をした?」

「な、なにも?」

「嘘つけ、何も無ければそう言うだろお前」

 

 俺から視線を反らして必死に言い募っている少女の姿に、ひたすらに嫌な予感がする。

 

「正直に言え、先生怒らないから」

「それ、絶対に怒る前フリじゃん!?」

「正直に言ったら怒る事が有ったと?」

「誘導尋問とかズルい!」

「誘導尋問どころかお前の自爆だろ!」

 

 必死に俺から隠してるのが不安になる、いや本当に何をやったんだ?

 

「……せめて魔法の名前だけは教えてくれ」

「……『誘惑の微笑み』」

「名前から推察すると『魅了』系の上位版か、それなら確かに意識は途切れるか……『性魔術』で耐性上がってる筈なのに突破されるとか笑えねぇ」

 

 転生後の変化なのか、魔法関連の取得はその方向に耐性が追加される。『性魔術』その物への耐性もそうだが状態異常の『魅了』にも強くなっている筈なのだ。

 

「……それはちょっと違うっぽかったけどね」

 

 効果を直に見た少女には何か確信に至る情報が有るらしい、問い詰めても教えてくれそうに無いが。

 何となく溜息を吐いてステータスの確認、予想通りと言うか何と言うか魔力と技力が回復していた。最早慣れ始めた体内に少女の分けた精力が有る感覚で予想はしていたが、あまり使われ過ぎるのも気になる。

 まぁ、キスが出来るのは役得なのだが。

 

「これ以上は追求しない、取り敢えず進もう」

「うん、分かった」

 

 ややホッとした様子の少女に思う所は有るが、俺とて仲違いをしたい訳では無いのだ。

 次は15階層、20階層のボスと同じ種族のモンスターが出て来る様になる。目標迄あと僅か、無事に最後まで行きたい物だ。




書き方を変えてみようと実験中です、WEB小説の独自ルールがよく分からず読み難くて申し訳無いです。

少女と俺の間に何が起こったかは分かりません、語り部が意識を失って居たので知り得ないのです。

主人公とヒロインの容姿ってしっかり書くべき?

  • 見せてみろよお前の癖。両方に要る。
  • 理想の男と女を妄想してるから要らネ。
  • どんな女がタイプだい?
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