※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中
『看板娘』イベント継続中


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1周年目の更新がこんなので申し訳ない。


無茶振りが無茶になり得ない者

 来訪した3人をリビングへ案内し、ソファに座らせる。『不死の王』の姿を見た当主代行が警戒心を顕にし、インベントリから『竜舌蘭』を抜く。それを見た護衛さんが立ち上がり構えるが、護られる筈の『不死の王』が笑ってそれを諌める。いや、仕事してるんだから諌めるなや。

 俺はエテルに頼んで紅茶を用意して貰いつつ、3人の対面に座る。

 

「改めまして。タタラ・ジュロンと申します」

 

 そう言って一礼する。護衛さんは俺の名前を聞いて激しく動揺して、遂には物凄い敵意をぶつけて来たので身構えてしまう。もしや『不死の王』から何度も殺した事を聞いたのだろうか、それならこの敵意も当然だな。

 

「やめろ、そんな風に殺気を出していれば依頼の一つも出来ん」

「ですけど!」

「あえて私からも言おう、やめろ」

「……イエス、マスター」

 

 女傑さんが護衛さんに注意するが、警戒を解かず寧ろその注意に反発する。それに対して『不死の王』からも諌められて、渋々と従った。護衛役なのだから彼女の反応の方が正しいんだけどな。

 

「まさか、この都市の長が勧めるこの都市最高の技術者が貴様とはな」

「一応、次期とは言え『工匠長』の役職になりますからね」

「『工匠長』?」

「ええっと、この都市には各分野に──」

 

 女傑さんが笑いを含んだ声で俺のクラフターとしての技術について言及してくるので答えると、護衛さんが疑問を持つ。そこに対して説明をしていけば、女傑さんも興味深そうに耳を傾けてくる。一通り話を終えるタイミングで、エテルが近付いて来た。

 

「えっと、紅茶ですけど大丈夫ですか?」

「気遣い感謝する……安物だが丁寧に淹れられているな、香りが良い」

「一般家庭に高級品や銘柄品を求めないで下さいね」

 

 エテルが紅茶を淹れて女傑さんに出す、一口飲んだ感想は茶葉が安い事だが淹れ方を褒められてエテルが喜んでいる。香りの良さを褒めたのは本心なのだろう、香りをそのまま楽しんでいる。

 

「……一般家庭?」

「当主代行、俺の家はあくまで一般家庭です。『工匠長』になろうが俺に特別な血は流れてないですからね?」

「え、マスターがあんなに褒めている血なのに!?」

 

 当主代行の疑問に答えると、護衛さんが驚いている。いや、血を褒めてるって何よ?

 疑惑の目を向けると、視線を向けられた『不死の王』は楽しそうに笑って答えてきた。

 

「以前も言ったが、貴様の血は純粋な人間故に飲みやすい。そのくせとても甘い故な、下手をすると病み付きになるぞ?」

「褒められても嬉しくねぇな……」

「因みに、血の甘さは純粋に愛を向ける相手が居る者が持つ特徴なのだ。良き運命を見付けられたようだな、タタラ・ジュロン?」

 

 血についての説明をしつつ、『不死の王』の視線はエテルへ向けられる。あの時に婚約者って言ったのを覚えているのだろう、更には血から記憶を読んでいる可能性も高いな。

 

「俺には勿体ないって思えるくらいに最高の相手だ。で、今日はどんな用件で来たんだ、態々都市長へ手紙まで出して」

 

 俺が話題を切り出すと、『不死の王』では無く隣に並んで座っている女傑さんと護衛さんが難しそうな顔をする。『不死の王』では無くこの2人が依頼元ってなると、本当に目的が分からないな。

 

「確認したいのだが、タタラ・ジュロンよ……お前はどれだけの武器が作れる?」

 

 要領を得ない質問が女傑さんから届く、どれだけの武器と言われても答え難いな。

 

「頼まれたならどんな物にも対応するつもりですが、具体的にお願い出来ますか?」

「ふむ、具体的にか……」

 

 女傑さんは俺の言葉に対して更に悩む、武器種の指定だけでも欲しいんだが。すると、護衛さんが。少し苛立ちが混ざったような表情で声を上げる。

 

「でしたら1000m以上の射程で、空中要塞や地上戦艦を撃退出来るようなのを!」

「ああ、その程度でいいんですね」

 

 なんだ、『エリンジウム』レベルでいいのか。追放案件の物を頼まれるのかと内心戦々恐々としてたけど、魔導銃くらいなら何でも無いな。……なんか護衛さんが鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をしてる。

 

「エテル、参考の為に彼女に『エリンジウム』を見せてあげて」

「うん、分かったよ……はい」

 

 俺の頼みに応えて、エテルはインベントリから『エリンジウム』を取り出してソファの間に有った机の上に置いた。護衛さんは目を白黒させ、女傑さんは隻眼を大きく見開く。

 

「全長1800mm、重量10.5kg。装弾数8発、18mm徹甲弾を使用。初速を音速の64倍にして射出する空中要塞や地上戦艦の装甲も撃ち抜けると都市長に太鼓判を押された代物だ」

「ククク、コレがお前の嫁が私に何度も弾丸を叩き込んだ銃か」

「そうだ。魔導加速式狙撃型魔導銃『エリンジウム』、消費魔力的に連射は効かないが単発の火力は世界有数の魔導銃だと自負してる……コレならお眼鏡に叶いますか?」

「パーフェクトだ、タタラ・ジュロン!」

「感謝の極み……って、お前には聞いてねぇよ」

 

 何だかあの漫画的に言われたらファン感涙の物を言われた気がするが、取り敢えず今はお前じゃないぞ『不死の王』。

 俺の言葉を聞いた護衛さんは固まっている、良いか悪いかを聞かせて貰わないと次を用意出来ないんだが。

 

「……私はいいと思うが、出来れば2丁で更に言えば狙撃態勢で無くても撃てるようにしてもらいたい。出来るか?」

「精密射撃をしないと考えるなら……後ろを延長して、重量を寄らせて抱え撃ちでも使える様には出来ます」

 

 俺は女傑さんに答えながらインベントリから出した魔導式ワードプロセッサで空間に設計図を投写して、より細かに説明していく。空間に投影された設計図に驚く女傑さんだったが、真剣な表情で向き合う。

 

「ふむ、ならそれで……素材はどうだ?」

「2丁ならミスリルが2kgと鉄が20kg必要ですね」

 

 俺の言葉に苦い顔をする女傑さん、そりゃ普通ならミスリルを2kgも使うなんて考えたくも無いだろう。ましてや、鎧ではなく魔銃にである。しかし、この『エリンジウム』は銃身をミスリル……それも鍛造ミスリルにしないと魔力伝達効率と耐久力がお亡くなりになるので此処だけは譲れないのだ。ついでに言えば、鉄も魔鉄にする必要は有るし一部は鍛造して機関部に使うから要求した分から素材から重量が減る。

 

「代用は出来ないのか?」

「加速術式を用いて弾頭の初速を上げてるので、どうしても無理ですね」

「炸薬では無理か?」

「逆に聞きますけど、音の64倍に届く初速を出せる炸薬に心当たりは有りますか?」

「……何方にしてもミスリル以上の魔法金属が必要になるか」

 

 そう、鋼では擦過時に発生する熱に耐えきれず融解するのもミスリルを必要とする理由でもあるのだ。そのミスリルですら、鍛造しなければ耐えられない、我ながら頭のおかしい代物だ。

 

「そ、それなら物理弾頭ではなく魔力弾頭にすれば!」

 

 ハッと意識を取り戻した護衛さんがそう提案してくるが、クラフターとしてはそれには否と答えざるを得ない。

 

「あの、それだけ強力な魔力弾を撃つなら相応に魔力が無いと無理ですよ?」

 

 いや、内部に『錬金術師の卵』を搭載すれば多少は使用魔力を抑えられるがそんな内心を口には出さず。俺の言葉を聞いた護衛さんは肩を落とした。

 

「それに物理弾頭でないと100mにも届かずに魔力が霧散します、それでは要望の1000m以上の射程を叶えられません」

 

 どうも俺の言葉は護衛さんの心を抉ったらしい、遂には護衛さんが泣き出してしまった。

 

「こら、吸血鬼が泣くな」

「でもマスター!」

 

 呆れた声で注意する『不死の王』に泣き縋る護衛さん、情けないその姿に鬱陶しそうな反応だ。

 

「……魔導銃の素材は持込み限定か?」

「俺は基本的に魔法金属の販売を許されてませんのでそうなります、都市長か商会長からの一筆が有れば問題は無いんですけどね」

 

 コレは成金さんのアーレムの為に魔鉄その物の販売をする事を商会長からその場で許可を貰った時のように、何方かの許可さえ有れば可能である。まぁ、都市長の事だから織り込み済みだろうけどさ。

 

「ふむ、ならばこの手紙が必要という訳だな?」

 

 俺の言葉に『不死の王』が手紙を1枚差し出してくる。受け取って内容を確認すれば案の定、都市長と商会長の連名で俺が魔法金属製の武具を売る許可が記されていた。

 

「取り敢えず、そこの護衛さんの魔導銃でいいんですよね?」

「護衛さん!?」

「プッ」

 

 俺の呼び方に素っ頓狂な声を上げる護衛さんの姿に、思わずといった様子で『不死の王』が噴き出す。女傑さんは思い出したかのように口元を押さえていた。

 

「すまない、名乗っていなかったな。横のコイツが治める『常夜の国』で宰相の地位を頂いているガブリエル・ハーカーと言う」

「何で宰相が王の居ない国から出てるんですかね!?」

 

 国政に携わる人間で実質トップの地位じゃねぇか!

 

「うちには優秀な元老院が有るからな、王と宰相が抜けた程度では問題無い」

「いや、そんな軽い存在じゃないだろ特にお前は!」

 

 紅茶の匂いを堪能していた『不死の王』が問題ないと言ってくるが、問題しか無いだろう。なんというか、目の前に居る3人の元ネタと思われる漫画の人物が闇鍋みたいに集まってそうな国家なのだ。どっかの大隊指揮官ソックリな奴が居ても納得しか無いだろう、英国無双な臆病だけど卑怯者では無い人が居れば回りそうではあるけど最後の大隊がおいたしたら流石にこの『不死の王』が居ないと駄目だろう。

 

「なに、私が居なくとも国は回る。仮に乗っ取られようと、全て喰らえば問題無い」

「問題しかねぇだろ、領民の居ない国とか最早国じゃない」

「そうか……なら、お前が新たに領民にならないか?」

「誰がなるか、俺は陽に干した布団が好きなんだ。常に夜の国なんかに住んだら布団干せなくて発狂するわ」

 

 俺の言葉に護衛さんが盛大に噴き出した、断る内容がツボに入ったらしい。虎熊夫婦は深く頷いている、どうやら干した布団の匂いが好きな同士らしい。

 

「ふむ、確かにそれは耐えられぬな。私も今泊まっている宿の寝床の匂いが心地良いと感じるしな」

「マスター、納得するんですね……」

 

 コレまた大きく頷いている『不死の王』が零した納得の言葉に、護衛さんが力無くツッコミを入れている。

 

「で、えっとハーカー卿」

「なんだ、若者よ?」

 

 あ、俺の呼び方はそれなのね。まぁいいけど。

 

「この手紙が有るので俺の店の在庫で賄えますが、この護衛さんの魔導銃2丁だけでいいんですか?」

「ご、護衛さんって……私にも名前が」

「いや、それ以外にも頼みたい。片手剣を一本用立てて欲しい」

「此方で一般的なブロードソードですか?」

「いや、サーベルだ」

 

 口を挟もうとした護衛さんを無視してハーカー卿が商談を進める、剣の要求なら今使ってるヤツを参考にしたいところだ。

 

「追加で、私の銃も整備を頼みたい。都市の長曰く、お前に渡せば間違いは無いと言っていたからな」

 

 そう言って以前戦った時に使っていた黒と白の大型拳銃型の魔銃を机の上に置く、形がどう見ても漫画に出て来たあの2丁だ。

 

「いいのか、お前の武器(てかげん)だろう?」

「構わぬさ、多少おいた(・・・)をされようが痛くも痒くも無い。目障りになる小蝿なら払えばいいしな」

 

 やっぱり『不死の王』にも学生運動の気配を察知されてるか、この『不死の王(絶対強者)』に痛痒を与えられる実力が騎士見習い程度が持つとも思えない。しかし、何かの切っ掛けで興が乗ってしまうとこの『不死の王(かいぶつ)』は徹底的に潰しに掛かるだろう。元ネタから考えて持ってそうな俺達もまだ見れてない切り札なんて切られたら、恐らく『ワールウィンド』総出で倒しに掛かる事態になるだろう。

 その時は、その心臓に『吸血槍ワラキア』を叩き込んでやろう。あの時から進化した吸血鬼殺しの切り札、何処まで通じるかは分からないがそれでも自分の作品なのだから自信は有る。それに、いざとなったら『空裂』を振るえば1000くらいは生命を削れるだろう。

 

「取り敢えず、依頼を再確認する。『不死の王』の愛銃2丁の整備。ハーカー卿のサーベル……ミスリルでいいか、一本作成。護衛さんの魔導銃ってか魔導砲2門の作成……これで合ってるよな?」

「うむ、それで頼むぞタタラ・ジュロン」

 

 俺の確認に鷹揚に頷く『不死の王』、その横でハーカー卿は自身のサーベルがミスリルで作られる事にやや引き気味だ。あ、そうだ。

 

「ハーカー卿、愛用している剣って今持っていますか?」

「む、私の剣か……何に使う?」

「バランス合わせますので見せて欲しいんですよ」

「気軽に言うが、出来るのか?」

「この程度出来ずに次期とは言え『工匠長』は名乗れませんよ」

 

 ……何か今、都市長の声で『工匠長のハードルを上げるな』って言われたような?

 気の所為だな、うん。

 ハーカー卿は訝しげな表情をしたあと、溜息混じりに年季の入った白い鞘に納まるサーベルを投げ渡して来た。

 受取り、鞘から抜き放って剣身を『鑑定』で観る。普段なら普通に目で見るだけだが、僅かな癖も見逃さない為にスキルも使う。

 

「……膨大な数の『吸血鬼』や『屍鬼(グール)』を斬って来た事が伝わってきますね、斬撃に比重をおいている戦い方だがやや力任せに振る事の方が多いらしい。サーベルよりカトラスやシミターの方が向いてそうですね」

「……何故か私の数十年を否定されたような感覚だな」

 

 まぁ、それだけ長く実戦で磨かれてきた技なのだろうけれど適してないのだ。なんというか、生来の気質がサーベルのように繊細な物に合って無い。そんな俺の分析を聞いていた『不死の王』が笑い始め、ハーカー卿はその姿を歯を剥き出して睨みつける。護衛さんはおろおろとして止められない様子、苦労してるんだな。

 

「残念だったな、ガブリエル。お前の研鑽は遠回りだそうだぞ?」

「煩いぞ、この若造が間違っているかも知れんだろう!?」

「それは聞き捨てならんな、ハーカー殿。我が義息子の技は確かだ」

 

 目前で言い合う国王と宰相に対して抗議の声を上げるのは当主代行だ。いや、義息子って。

 

「ほう、身内の贔屓目では?」

「そう取りたければ取るがいい、この剣を見た後でも言えるならな」

 

 ハーカー卿の言葉に対して鼻で笑い、インベントリから別の剣を取り出して目前に突き出す。『竜舌蘭』と同じ拵えだが、アレは昨日渡した不殺の刃だ。

 その刀を訝しげに見るハーカー卿の横で、己を斬った『竜舌蘭』と全く同じ拵えだと気付いたのか『不死の王』が喜色満面になる。

 

「ふははははは……っタタラ・ジュロン!!」

「爆笑してんな。で、なに?」

 

 遂には声を上げて笑い出した『不死の王』が俺の名前を呼び、何事かを尋ねれば身を乗り出してきた。

 

「あの時、俺を斬った刀と全く同じではないか……複製したのか!?」

「まぁ、本歌を写したのは違いない。が、コイツは別物だ」

「そんな事は見れば分かる、元が全てを断つ刃ならばコレはその真逆……全てを断たぬ刃だ!」

 

 興奮のし過ぎで一人称か俺になってるな。それでも尚、正しく武器を見るのだから認めたくは無いが凄いな。

 

「元の剣そのままではない、そこの大鬼の癖を見事に写している……やはりお前は最高だタタラ・ジュロン!!」

 

 歯を剥き出しにして、今にも俺に喰い付かんばかりの表情だ。 目前に迫る顔の造形が些か美し過ぎるが、エテルのお陰で変な道に進む事は無くて助かる。

 

「愚王、そこまで言うか」

「当然だ、当然だとも我が宰相……やはりお前こそが我が命を終わらせる権利を持つのだな、タタラ・ジュロン」

 

 護衛さんは『不死の王』の言葉に反応して、俺へ向ける害意が更に強くなった。目の色が赤く煌めいていて滅茶苦茶怖い。

 

「勝手に運命やら権利やら主張しないで欲しいんだが」

 

 俺の呟きに対してエテルがそっと俺の腕を取り引き寄せる。そのまま『不死の王』を睨む辺り、エテルも運命を主張しているらしい。離れた所で俺達を見た四葩が箱推し鬼になってるのがチラ見えした。

 ハーカー卿は半眼を『不死の王』へ向け、口を開く。

 

「お前のラブコールは届かないみたいだぞ、大人しく我慢したらどうだ?」

 

 その言葉を聞いた『不死の王』は喉の奥でクツクツと笑う。

 

「そうだな、残念だが今日は諦めるとしよう。どうやらコレから用事も有るようだしな?」

 

 恐らく、俺達が探索に出る事を分かっているのだろう。『不死の王』にとっても俺が存在昇華をしなければ死ぬ事を知っているのだし、依頼をする以外は特に用事は無いのだろう。あえて言うなら、ハーカー卿と護衛さんに俺という人間をより深く教える為に会話をしていた感じがする。

 

「武器は明日には作り終えてるから、朝か夜の何方かに取りに来てくれ」

「早すぎないか?」

「私との戦闘中に槍を一本作る男だぞ、一晩有れば事足りるだろうよ」

 

 俺の言葉に秒でツッコミを入れるハーカー卿、それに対して大したことは無いと教える『不死の王』。そんなタイミングで『不死の王』が何かを思い出したように俺へと言葉を掛けてくる。

 

「そういえばタタラ・ジュロン、私を殺し得る武器はもう出来たのか?」

 

 そんな『不死の王』の言葉に護衛さんが殺気立ち、ハーカー卿が鋭い視線を俺に向けてくる。殺しても死なない特性を持つ『不死の王』の事を知っていて尚この反応、単純に生命を削られる事を恐れたのか……それとも本当に俺が作った武器なら殺せる(・・・・・・・・・・・・・・・)と確信しているのか(・・・・・・・・・)

 さて、何にしても俺の対『不死の王』の切り札である『吸血槍ワラキア』を見せる流れである。しかし、ただ見せて対策を立てられるのは此方に掛かるマイナスが大きい。なら、せめて一つは札を晒させよう。

 

「仮に出来ているとして、素直に見せると思うか?」

「ほう?」

 

 俺の言葉に対して口元が緩む『不死の王』、視線で俺を促して続きを言わせようとする。

 

「せめて札の一つも曝せよ、そうしたら見せてやる」

「貴様っ!」

「控えろイケマ・モリス、コレは俺とタタラ・ジュロンの問題だ」

 

 俺に食って掛かろうとした護衛さんを『不死の王』が諌める。まぁ、普通なら不敬罪で俺が処断される方が正しい。しかし、護衛さんには悪いが此方も此方で眼前の『不死の王』を打倒する道筋を作る為に必死なのだ。

 俺と目を合わせる『不死の王』はニヤリと口元を歪めて、インベントリから何かを取り出した。

 

「これが今、俺が持つ最強の武器だ。まぁ、作った本人のお前なら分かるだろうタタラ・ジュロン?」

 

 そう言って『不死の王』が眼前に差し出したのは深紅の槍だ、見覚えは正直言えば無いが『不死の王』が俺が作ったと言うなら心当たりは一つある。

 

「……『魔槍ワラキア』がお前の最強の武器になるなんてな、随分と様変わりしてて最初は気付けなかったぞ」

 

 制作した時よりも色はより深く濃い、長さも10cmは伸びているし刃もやや幅広く返しや波刃が増えている。恐らく、持っていた能力の『自己強化』と『自己拡張』の影響で『不死の王』の血を啜って自らをより凶悪な姿へと作り変えたのだろう。正直、『鑑定』とかしたら呪われそうで怖い。

 

「ククク、お前が造り私が育んだ刃だ。差し詰め、2人の子供と言ったところか?」

「素直に気持ち悪いぞその発想」

 

 ……なんだが俺の発言を受けて『魔槍ワラキア』から元気が無くなった気がする、まさか意識に目覚めてたりするのか?

 まぁ、そんな馬鹿な事は無いだろうが。

 

「それで、私は札の一つを見せたぞ?」

「そうだな」

 

 俺は内心舌打ちをしながら、正しく目の前に立つ吸血鬼を殺す為に作った槍を取り出す。その身を改めた『魔槍ワラキア』を前にしても格が劣らないその威容を目にし、ハーカー卿と護衛さんが小さく悲鳴を上げたのが分かった。

 

「……コレがお前を殺す為に練り上げた切り札、『吸血槍ワラキア』だ」

 

 俺の言葉を受けて、『不死の王』の口は大きく歪む。笑みの形である筈のその表情は肉食獣が餌を前にしたものにも見えたし、何処か迷子が親を見付けた物にも見える。何故、俺はそんな印象を持ってしまったのだろう?

 そんな俺達の間に割り込む護衛さん、インベントリからライフル型の魔銃を取り出し俺へ向けて構える。その銃口は揺れていて、動揺か恐怖か分からない表情を浮かべているのが見えた。

 

「な、何なんですかそれは……貴方は何なんですか!?」

 

 人間より遥かに強い筈の吸血鬼が怯えている。今更ながら気付いたが、目の前の護衛さんは某婦警に似てる。恐れ知らずの吸血鬼軍団を怯えさせてた元ネタと、ただの人間を恐れる目の前の女性で変な対比になっていて笑いそうになる。

 

「何かと聞かれたら、ただの人間だよ」

「そんな物を作る存在が、ただの人間であるものか!」

『それは本当にそう』

「お義父さんお義母さん!?」

 

 護衛さんの質問に答えたら人間扱いされず、更には当主代行とお義母さんにまで背後から刺された。地味に心が痛い。

 

「一応、この都市で一番のクラフターって扱いは受けてるぞ」

「嘘を吐け、一つの都市で一番の腕程度で……そんな悍ましい物を作れるか!」

「少なくとも国で一番だと思うよ?」

「少なくとも妾達の國で最高の鍛冶師の弟子と言うか、その師からも一部技術は上と認定されておるしのう」

「あの、味方が背後から刺すのやめよう?」

 

 護衛さんの言葉に対してエテルと四葩が賛同する。おかしいな、俺の味方が居ない気がする。一華ですら視線を逸らして意見を認めてる様子で、この場に俺の味方が居ない。

 

「タタラ・ジュロン、やはりお前は最高だ」

「マスター!?」

 

 何処か恍惚とした表情の『不死の王』の反応に驚愕する護衛さん、大分苦労性が表に出て来たな。

 

「控えろ、イケマ・モリス」

「でも、どんな怨念が有れば此処まで悍ましい武器を作れるって言うんですか!?」

 

 煩わしそうに言う『不死の王』に対してなお食って掛かる護衛さん。怨念……怨念ね、そこ迄深くは無いけど何をされたかと言えば──

 

「背後から剣で貫かれて内臓ズタズタにされて殺されかけたから、かな?」

『……それは仕方ないな』

 

 俺の呟きが届いたのかハーカー卿と護衛さんが納得の言葉を溢す。むしろ同情の視線まで飛んでくる。

 そんな二人を見た『不死の王』は肩を竦めてから『ワラキア』をインベントリへとしまう、その様子を見て俺も自分の『ワラキア』をインベントリへとしまった。

 

「正しく私を殺す手段を模索していて嬉しいぞ、タタラ・ジュロン」

「死にたがってるのは分かったが、正直いい趣味とは言えないぞ『不死の王』」

 

 心の底から嬉しがる『不死の王』へ呆れ混じりの言葉を送る、俺の言葉に流石の『不死の王』も苦笑いだ。

 

「永く生きているとな、段々とそうなるのだ」

 

 何処か寂しそうな表情を浮かべて、『不死の王』は続ける。

 

「我が身を滅ぼしかねなかった勇者が、老と共にその可能性が潰えていく。太陽が如く眩い可能性を秘めた幼子が、下らない生物に墜ちてゆく……そのような物を延々と見続けているとそのうちに別の事を考え始めるのだ」

 

 俺の目を真っ直ぐ見て、『不死の王』は続ける。

 

「我が身の終わりに意味を求めるのだ。己の最も輝く姿で終わりたいと願うのだ、己が最も輝く姿を残す理由になる事を望むのだ。故に、化物()達は人間(お前)達とその可能性を欲する」

 

 そう言って『不死の王』は嗤う。

 

「……お前は、自分の生に意味を持ちたいんだな」

「そうだな、究極的にはその通りだ」

 

 俺の言葉に苦笑交じりに答える『不死の王』。もしかしたらそれは知性を持つ生物にとっての本能のそれなのかも知れない、俺達定命なる者達が子を残そうとする本能と同じ物ではないかと俺は感じる。そう考えると、やはり吸血鬼も特徴が違うだけの人間なのだと俺は思う。

 

「やっぱり、お前も俺達人間と大して変わんねぇな」

「……そう考えるのは多分、お前だけだぞタタラ・ジュロン」

 

 俺の言葉に呆れすら含んだ様子の声音で『不死の王』はそう言った。何やらハーカー卿の向ける視線も似た物に感じる。

 従者さんは少し驚いた表情で俺を見ている、どんな感情なのだろうか?

 

「それとタタラ・ジュロン、このイケマ・モリスにお前の血を少し飲ませてやれ」

「へぁ!?」

「……理由は何だ?」

 

 エテルと四葩が『不死の王』の言葉に戦闘態勢を取る中、混乱した表情の護衛さんと発言者の『不死の王』を交互に見て真意を求めると『不死の王』は一つ頷いて続ける。

 

「お前の血は我ら吸血鬼にはかなり栄養価の高い物になる、此処で少量啜れば少なくとも一月は血を飲まずに済む」

「俺はお前達吸血鬼にとって何なんだ?」

「でもタタラ、夢魔にとっても同じようなものだよ?」

「俺はお前達にとって何なんだ?」

 

 性魔術の出力が普通の夢魔の5倍とか言われたのもそうだけど、俺の身体は亜人種には何かと特別な効能が発揮されるのだろうか……性魔術は別口だな。多分。

 しかし、護衛さんも吸血鬼であるなら確かに一ヶ月は栄養が保つなら血を分けるのはいいだろう。俺はインベントリからナイフを取り出して、掌に切り傷を付ける。傷口から血が溢れてきたのを確認してから、護衛さんに差し出す。

 

「噛むのは勘弁して下さいね」

「うむ、私が血を分けたからな……噛まれたらタタラ・ジュロンが『吸血鬼』になるだろう。くれぐれも噛むなよ、イケマ・モリス?」

「ヒィッ」

 

 自身の主から圧を掛けられて怯える護衛さんは、差し出された俺の手から恐る恐る血を舐め取る。すると、大きく目を見開いた後に傷口を何度も舐め始めて遂には牙を突き立てようとする。

 次の瞬間には『不死の王』が裏拳で護衛さんの頭を横から殴り壁に叩き付けた……罅が入ったから後で直さないとな。

 

「噛むなと言っただろう」

「う、ぐっ……すみませんマスター。それとタタラさん」

「あ、はい」

 

 漫画なら頭に怒りマークが浮いているだろう声音の『不死の王』と、忠告に従えなかった事と本能的に血を吸おうとした事を謝ってくる。と言うか、俺の名前を呼んだなこの人?

 

「どうだ?」

「初めてです、血をもっと飲みたいって思ったこと」

 

 元キャラから考えると吸血には忌避感が有った筈、それを考えるとより血を飲みたいと感じるのは凄まじい事態なのでは?

 

「改めまして、タタラ・ジュロンさん。私はイケマ・モリス、我がマスター『不死の王』より血を分けられた吸血鬼にして宰相であるガブリエル・ハーカー卿の護衛を仰せつかっている唯一の従者になります」

「あ、はい。タタラ・ジュロンです」

 

 ようやく俺に挨拶を出来た従者さん……イケマさんに挨拶を返す。貴族としての爵位は持ってなさそう、いや騎士爵くらいは持ってるだろうか……それなら騎士と名乗るか。

 

「貴方の制作技術は分かりました、先程の狙撃銃をお願いします」

「はい、承りました」

「それと、失礼な態度を取ってすみませんでした!」

 

 大声で勢い良く頭を下げられる。特に気にしてはいないが、イケマさんの心情的には謝らないとスッキリしないだろうな。

 

「その謝罪も受け取りました、コレからは過剰に謝るのは辞めてくださいね」

「う、分かりました」

 

 何だかそのまままだ謝りそうな雰囲気だが、何とか飲み込んでいる様子。その姿に『不死の王』とハーカー卿は呆れを含んだ目を向けている。

 

「それでは今度こそ御暇しよう、また運命の交錯する時に会おう。さらばだ」

「いや、明日武器を取りに来るだろう。だからまた明日、だな」

 

 何時もの『不死の王』流の挨拶に対して、明日も会うのだから簡単な挨拶を指摘する。『不死の王』はかなり驚いた表情になるが、直ぐに楽しそうに嗤う。

 

「そうだな、それはそうだ。では、また明日会おう」

「おう、また明日な」

 

 なんというか、遠足を前にする子供みたいな表情で帰っていく『不死の王』。ハーカー卿とイケマさんは戸惑いつつも、その後ろについて行く。さて、今日は探索を終えた後に忙しくなりそうだな。

 3人を見送った後に振り返ると、難しい表情をした当主代行が立っていた。何事かと疑問に思い見ていると、一つ頷いてから俺に向けて言葉を放つ。

 

「タタラ殿、誑す相手は選びなさい」

「誑して無いが!?」

 

 前にもやらなかったか、このやり取り?

 

 

 朝から濃い邂逅となり、朝食を済ませた後に探索へ。何時も通りとも言えるレア種との遭遇で、順調に降っていく。

 四葩の『ムゥ(たみ)』への怨みは深く、背後から『盗む』スキルのアビリティ『強奪』でモツ抜きかましながらステータスアップアイテムを集めている。その光景の恐ろしさはエテルをより過保護にさせ、『ムゥ(たみ)』への手厚い対応が俺の殺意を滾らせる。降り立った先の『ミスリルゴーレム』は問題無用で俺が即死させ、タチアは『オリハルコンゴーレム』に1時間程殴られ続けてスキルレベルを上げる。

 何時も通りだった。ただ、少しだけ何時もと違う事が起きた。

 34階層での事だ、罠宝箱を発見してエテルが対応した。何時もなら成功していたのだが、珍しく失敗し罠が発動した。次の瞬間、部屋の出入り口が全て閉じて罠が作動する。

 次々に湧き上がる『死霊王』、数カ月ぶりに出くわすモンスターハウスである。

 

「ごめんみんな!」

「気にすんな、ガンガンに殴って削っていけ!」

 

 武器命中20+234−54=180。命中判定。

 炎属性攻撃1.5✕259−17=372。

 

 眼前に現れた『死霊王』に対してハンマーを振るう、一撃で消し飛んだ『死霊王』を見つつ素早く周囲を見渡して確認すれば新たな『死霊王』が湧いているのが見えた。

 つまり、このモンスターハウスは耐久型。以前は30分間無限に現れる『ゴブリン』を倒し続けたが、今回は『死霊王』を倒し続ければ終わる。

 

『今回の罠はモンスターハウス、耐久型で時間まで敵が無限湧きする!』

 

 武器命中20+234−22=212。命中判定。

 炎属性攻撃1.5✕259−15=372。

 

 念話を飛ばしながら次の『死霊王』へハンマーを振るう、此方も問題無くその身を消し飛ばせたが攻撃の終わりを狙われる。

 

 火属性魔法攻撃90+【炎槍】25−202=87。

 

 飛んてきた【火球】の更に上位の魔法、【炎槍】が直撃するが逆に身体に活力が湧いてくる。流石は属性吸収効果、笑ってしまうくらいに有効だ。

 俺へ魔法を放った『死霊王』は俺が健在である事に硬直し、次の瞬間にはエテルが背後から切り捨てた。昨日頼まれて作ったミスリル製のサーベルは、火の王玉を施された影響かエテルが振るう度に赫い残光を残して敵を切り捨てていく。

 この状況下で継戦能力を優先して近接戦闘に切り替えたのだろうが、背面攻撃で『死霊王』を一刀両断出来るエテルの攻撃力に感謝だな。

 それに、俺以外の面々は『卵』と『厄切り』を所持している。即死攻撃も状態異常に分類される為に、あの3人には通用しないのはそれだけで優位に立てる。まぁ、俺は『地母神シリーズ』装備の影響で危ういのだが。

 

 次から次に湧き続ける『死霊王』にハンマーを振り続けるうちに、脳裏では『こんぷりーと』やファンファーレが響く。しかし、ステータスを開いている余裕は無い。30分間『死霊王』からの即死攻撃を向けられない事を念頭に、手早く敵を倒して次の行動への余裕を作り続ける。

 何十と言う魔法と杖による打撃を受けた、ダメージにはならないが精神的な疲労は溜まる。常に思考を回し続け、延々と敵を倒し続ける。そうして閉じ込められてから30分程が経過して、罠から解放された。

 

「や、やっと終わった……」

 

 真っ先に声を上げたのはエテルだ、その言葉に思い出すのは以前モンスターハウスを発生させた時。あの時は2人きりでの探索だったが、今は四葩とタチアも居る。まぁ、敵が『ゴブリン』から随分とグレードアップされているが。

 

「疲れてるところ悪いが、さっさと魔石の回収をしちまおう。呼び水になって面倒な奴等を招きかねん」

 

 あの時とは少しだけ台詞を変えて言ってみると、エテルはハッとした表情になる。その反応に四葩とタチアは疑問を持っているみたいだ。まぁ、苦いけど2人だけの思い出だ。

 俺とエテルは笑いつつ、大量に落ちている魔石を回収していく。四葩とタチアも疑問に持ちつつ続き、軽く3桁の魔石とドロップアイテムを回収した。




常夜の国宰相:ガブリエル・ハーカー
ガブリエル→ガブリエル・ヴァン・ヘルシング(ブラム・ストーカー著:吸血鬼ドラキュラ)
ハーカー→ミナ・ハーカー(ブラム・ストーカー著:吸血鬼ドラキュラ)

護衛さん:イケマ・モリス
イケマ→イケマ(花)
モリス→クインシー・モリス(ブラム・ストーカー著:吸血鬼ドラキュラ)


『不死王槍ワラキア』

 物理攻撃+870
 射程   3
 特殊能力『吸命Ⅴ』『貫通Ⅳ』『自己修復』『侵食』

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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