既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント継続中
アンケート実施中、直感でお選びください。
前半が強化パート続きなので飛ばしても大丈夫です。
「先程の『死霊王』からも相応に強化石が手に入ったじゃろう、そろそろ使用せんか?」
モンスターハウスを切り抜けた34階層の階段前でスキルを各々で確認している中で、四葩がそう提案してきた。その提案に、今所持しているステアップアイテムが気になって確認する。
体力 192
魔力 123
技力 243
物攻 237
物防 185
魔攻 201
魔防 56
速力 190
運 176
移動 186
ひどい偏りが出来ていることにツッコミを入れたい。なんだ魔法防御の56って、他は軒並み三桁だぞ……いやそもそも三桁も集まってんのがおかしいわ。
所持してるアイテムの数を伝えると、数の多さもそうだが振り分けの面倒さにそれぞれが顔をひきつらせた。
「……最優先はタタラ殿ですね、60階層のボスを倒したら即座に存在昇華をしてもらうのですからステータスは完璧にしていただきましょう」
タチアの発言にエテルと四葩も頷いて可決、俺は溜息をこぼしつつ魔力増加を56個と技力増加を18個使用する。これでレベル60の時に全ステータスが限界値を叩くようになる。
次は明らかに足りてない体力、魔力、技力、魔法防御以外の分配を始める。
物理攻撃はエテルに21個、四葩に45個、タチアに40個をそれぞれ配り上限に届かせる。
物理防御はエテルに21個、四葩に89個、タチアに58個を配り上限に届かせる。
魔法攻撃は四葩のステータスが低すぎて正直足りるか分からなかった。俺はエテルの『性魔術』の効果も考えて、エテルを優先して次にタチアに振るべきと提案、これが可決されてエテルに86個、タチアに36個を渡して上限に届かせてから残りを確認。上限に届く分が確保できる分が残ったので61個を四葩に渡した。
速力は斥候で更に物理防御の限界値が低いエテルを最優先にする事をタチアが提案したので俺と四葩が賛成し、83個を渡して上限へ。次にメインアタッカーである四葩に57個渡して上限に届かせたが、残りの50個をタチアに渡すも普通の人間種より高い速力の限界値の為に上限には届かなかった。運は全員が限界値に達しているし、移動は今より増やしても持て余すので一旦保留する。
さて、体力と魔力そして技力に魔法防御の分配だ。
体力は四葩が上限を叩いているので、エテルとタチアに分配するのだが片方だけなら上限まで届かせる事が出来る。一番体力の低いエテルへ保険として注ぎ込むか、最前線で殴り合うタチアに集中するか。
「私はチーちゃんに渡すべきだと思うな。危ないのは何方かと言えばチーちゃんの方だし」
「私はエテル殿に渡すべきだと考える。やはりエテル殿の体力が低さは目立つからな」
互いに譲り合いをしている中、俺が意見として注視したのはタチアの方だ。エテルは上限まで上げても体力が300までしか上げられず、現時点での基本の体力は120しか無い。そこへスキルとクラスの追加で30されて150なので素の状態で500を越える俺と四葩は当然として、初期から300を越えていたタチアと比べても低過ぎる。
「……ここは一旦、エテルの体力を200とタチアの体力を400まで上げるのはどうじゃ?」
「コレからもアイテム盗んで集めるって考えて、一先ずボス戦対策としてそうするのもアリかな」
四葩の提案に対して俺は良案に感じて賛成する。エテルとタチアも納得してくれたのでエテルへ80個、タチアへ61個其々渡す。
次に魔力だ。
「今はタチアに全部渡すべきじゃないかと俺は思う」
「タタラ殿、何故でしょうか?」
俺の意見に疑問を持つタチア、俺はその疑問に答える。
「タチアの魔力の上限って600で、今は199で止まってる。魔導鎧でマイナス補正が掛かって99しか無い訳だが、コレだとタチアの切り札の一つバーストエッジの火力が余りにも低くなる。それなら残ってる分の56個を使って、火力を上げるようにした方が良いと思う」
俺の考えはタチアの火力上昇を優先する形だ。実際、タチアは魔導鎧の強化幅を考えても素の火力はパーティ内ではそこまで高くは無い。捨て身の『渾身』や『突撃』を用いて火力を上げれはするが、方やデメリットの塊で方や距離を稼がないとダメージが出ない。それなら、一発限りのバーストエッジの火力を上げた方が良いという考えだ。
「うん、私はタタラの意見に賛成。私なら『性魔術』で敵から魔力を奪えるし、また集めればいいだけだしね」
真っ先に俺の意見に賛成を出したのはエテルだ。エテルも魔力の限界値までまだまだ届いて無いが、自然回復とエナジードレインで実質無限に回復出来るので問題無いと判断したのだろう。
「妾も賛成じゃな、基本魔力を使わぬ妾にはそこまで必要でも無いしエテルが納得済みならそちらがよいじゃろう」
四葩からも賛成意見が入り、残った56個のアイテムは全てタチアに渡された。それでもタチアの限界値の半分にも届いて無いのだから相当である。
次に技力、コレはエテルが意見を出した。
「近接戦闘がメインで、技を多く使うチーちゃんが最優先だね。その次にトラっちゃん。私は敵から奪って回復も出来るし、基本的に技とか使わないからね」
「まぁ、『剣適性』の技を使わないならエテルの戦闘方法って基本が自動発動型のスキルの組み合わせだからな……」
背後から攻撃するアサシンスタイルを完成させたエテルは、基本的に技を必要としない。狙撃する際には『精密射撃』等の技を使うが、それでも消費は5と低い。『卵』を装備している現状、瞬間的だろうとガス欠になる事は無いので消費の大きい2人へ回すのは正常な判断とも言える。
エテルの意見が採用されてタチアに161個、四葩に45個渡され余った分の19個をエテルに回した。
さて、ラストは全く足りてない魔法防御だ。集中させれば一人は上限に届くのだが、誰にするべきか。
「……ここはエテル殿では?」
「でも、最前線で盾になるチーちゃんも必要だと思うよ」
「四葩も魔法防御の値が低いんだよな……」
「一応、『紫陽花』のおかげで大丈夫じゃがな」
俺としては最愛の人の安全の為にエテルに回したいのだが、パーティ全体の状況としてはタチアか四葩に回すべきだとは思ってる。特に四葩は光と闇の属性に対しては魔法防御で受けなければならず、51階層以降が不安である。
「……チーちゃんはさ、このパーティの盾なんだよね?」
「はい、そのつもりです」
「それならさ、防御は万全であるべきでしょ?」
エテルの暴論に近い意見に、タチアは戸惑う。俺が四葩に視線を向けるとバッチリと目が合い、互いに頷く。
「なら、今回はタチアの魔法防御を上げよう」
「妾も賛成じゃ、しっかり守ってくれよ我等が盾?」
俺と四葩の言葉を受けたタチアは少し悩み、それから受け入れた。39個のアイテムを渡し、残った17個は四葩に回った。この強化をしてもエテルの魔法防御がパーティで一番高いのは殆どバグだと思う。
「それじゃ、後は移動力を一人5ずつ上げよっか」
「ちょっと待とうか」
此処に来て移動力にも振るとか、既に15とか有るのに増やしても過剰だろう。
「うん、過剰に思うかも知れないけどチーちゃんの『移動力上昇』を考えると動ける距離が多いほうが育つの早いよね?」
「それはそうだが」
移動力の高さは探索だけでなく戦闘でも大いに影響は出るが、此処まで高くすると其々に斥候のスキルを持たせて別々に探索する形の方が効率が良くなる。まぁ、それは多分61階層以降でダンジョンが更に広くなってからやる事になると思うが。
「タタラ殿、私としてもこの先強敵と出会った際に『突撃』の威力を引き上げる為に上げておきたい」
「タチア……まぁ、その意見は真っ当だな」
「ふむ、妾は何方でもよいぞ?」
「四葩を自由にさせると迷いそうだから嫌なんだが」
「さ、最近は迷子にならぬし……」
常に一緒だから迷ってないだけな気もするが、まぁ此処まで賛成が出るなら受け入れるか。
「わかった、一人5個ずつ配ろう」
そうして基礎の移動力が20になる。俺だけこの中で『移動力上昇』を取ってないので出遅れ易いので、『採掘』がコンプリートしたら取ろうと思う。
こうして一先ず全員の強化が完了して、俺は自分のステータスを確認する。『物理攻撃上昇』『速力上昇』『魔力上昇』『魔法攻撃上昇』の四つがコンプリートしている。
早速『闇討ちⅠ』『不意打ちⅠ』『隠密Ⅰ』『忍び足Ⅰ』を取得する。この先、エテルが子育てで探索に出れなくなった際に俺が斥候を出来るようにというのと俺自身の火力不足を補う為の選択だ。
「のうタタラ、相談なのじゃが」
「おう、どうした?」
「『鍔目返し』が最大まで育ったのじゃが、ランクを上げるべきかのう?」
「早くねぇか?」
この前取得したばっかりだよな、なんでもうランクアップ出来るんだ?
いや、まぁそれは置いておこう。
「四葩の攻撃力なら半減しても特に問題は無さそうだしな、上げて良いと思う」
「ふむ、ならばランクアップをさせようか」
そう言ってステータスを操作する四葩、これでますます手が付けられなくなるな。
「それとな、そろそろ『盗む』もコンプリートするんじゃが」
「……探索なら『忍び足』、あとは」
「何を言っておる、『性魔術』じゃろう?」
「地味に勧め難いんだよなぁ……」
俺の『性魔術』の影響で馬鹿になる事の対策として『性魔術』を取得する、あまりにも字面が酷い。
「妾もエテルやタタラの使い方を見て興味が有るのじゃ、強敵相手なら活用法も広かろうて」
「むしろあの使い方の方がイレギュラーに近いんだけどな」
拘束魔法や魅了魔法で相手の隙を無理矢理作るのは本来の使い方では無い。尤も、呆れるほどに有効な戦術ではあるのだが。
「騒動が終わって領に帰った後、妾の扱いがどうなるのか見ものじゃのう」
「多分、海内無双とか言われんぞ」
「ふむ、父上のその称号を継ぐのも良さそうじゃのう」
「……呼ばれてたのかよ」
確か、前世で名前の元になった人も同じ称号貰ってたような気がする。
そして探索を再開し、『吸血鬼』が蔓延る35階層へ。強化されたステータスは猛威を振るい、鎧袖一触と言う言葉がピッタリだった。俺も『隠密』と『忍び足』を活用し、『吸血鬼』の背後へ回り『闇討ち』と『不意打ち』を乗せた攻撃を叩き込んでいた。
炎属性攻撃1.5✕268✕【闇討ち】1.75✕【不意打ち】1.75−35=964。
文字通り砕け散った『吸血鬼』の姿に呆気に取られる。想像以上ってか、想定以上に火力が伸びている。コレなら、糞ボス相手だとしても十分に火力を発揮出来る。まぁ、『不意打ち』と『闇討ち』が発揮されている事が前提になるが。
それに、このコンボの要でもある『隠密』と『忍び足』のレベルが低い為背後へ回る上である程度遠回りを必要とした。エテルのように横を通り抜けた後に背後から攻撃といった曲芸はまだ無理なので、俺のコレは即座に活用できるものではない。
『……タタラ、お主何をやったらそうなるのじゃ?』
『いや、さっきスキルをコンプリートしたからエテルと同じ背面攻撃を強化するスキルを取ったんだよ』
『いや、にしてもコレは過剰でしょう。魔銃を使うエテル殿故に許されてた感じも有ります』
四葩の疑問に答えると、タチアもドン引きした反応をしてきた。いや、確かに此処までくると100階層までストレートに目指せるレベルではある。しかし、これをやるとなるとほぼソロでの探索になるしそうなると探索の速度が落ちに落ちる。
それに、正面戦闘をせずに済む場面ばかりでは無い。『ローバー』系の敵は全身に目がある為に背後という概念は無いし、下層の『インビジブル』という透明な敵を相手にした場合は相手の位置特定そのものが困難で背後も何も無い。やはり基礎的な戦闘能力を上げるのは必須だろう。
そして、タチアの言ったエテルだが此方も此方でヤバい。『剣適性』のランクが上がった為にアビリティ『デュアルウェポン』を取得し、コレにより剣と銃による二闘流が可能となった。右手に『ロニセラ』左手に剣を持ったエテルは戦闘能力が爆上がりした。
剣の攻撃力は8割に落ちている筈だが、追撃の『ロニセラ』でトドメを刺す形を取るので火力が落ちるどころか上がっている。多分、正面からでも『ロニセラ』で牽制しつつ剣で斬りかかり相手を倒せるだろう。此処まで来たらキチンとした剣を用意しないと損失である、特殊能力で『二刀一刃』が有れば『デュアルウェポン』の低減を無くす事も出来るしな。それか、魔力刃系の魔導剣なら『ロニセラ』と同じ固定ダメージになる。
そんな事を考えつつ、探索は続く。『ドラゴンゾンビ』を何時もの如く蹴散らし、宝箱からは『龍鱗の剣』が出て全員が愕然とする。一先ずは後で誰が使うか決めるようにして、探索を続ける。『ハーピークィーン』を剣で殲滅するエテルの姿にドン引きしつつ、背中を向けている『クィーン』に対して魔導砲撃を叩き込んで倒す。
最近分かったのだが、『黒煌』の魔導砲撃は属性攻撃が乗るようになった。右腕は炎、左腕は土、両足は風と強化時に使用した王玉に対応した属性弾が撃てる。水は身体なので、現状撃てない。撃てるとしたらそれこそ某
早い話『ハーピー』族の弱点である炎属性の遠距離攻撃が可能となったので、俺も積極的に倒せるようになった。俺自身の魔法攻撃力も上がった影響で、消費する魔力をある程度抑えられるようになったのも大きいだろう。小さく経験値を稼ぎながら、下へと降りていく。
45階層から『精霊王』相手に切り替わり、各員で属性を切り替えながら倒していく。エテルと四葩が『王玉』を大量に盗んでいるのだが、現状これ使った新しい装備を作る事が無い。あえて言うならエテルの魔導剣に使うかも知れないが、それでも余るだろう。俺の制限が無くなったら何かで使えるだろうとは思うが、現状は宝の持ち腐れだろう。下手に市場にも流せないしな。
そうして俺達は50階層のボス扉の前に立っていた。
『さて、帰るか?』
俺の言葉に、パーティメンバーは其々が悩む。ステータスをアイテムで強化し終わっている為、現状の攻撃力ならボスに通じる筈ではある。その為、挑もうと思えば行けるだろう。
そんな中、手を挙げたのはタチアだ。
『私は撤退を進言します』
やや苦しそうな表情での提案に、全員で目を向ける。視線を受けたタチアは言葉を続ける。
『現状、私の攻撃能力がまだまだ低い。以前タタラ殿から聞いた話を前提とすれば、私が全力で攻撃しても確実に敵を倒せるとは限らない』
悔しそうな表情でタチアはそう念話を飛ばして来た。
『タタラ殿から勧められた『鍔目返し』もまだレベルが最大へ至っていない、それでは敵を倒せる力としては足りない』
強く拳を握るタチアは、俺達に視線を合わせてくる。
『後少しで『鍔目返し』もレベルが最大になります。なので、今回は撤退させて欲しい』
その表情を見て、エテルと四葩は視線を合わせたあとに頷き合う。
『私はチーちゃんに賛成するよ』
『妾もじゃ、タチアの判断を尊重したい』
2人の言葉を聞いて、俺も頷く。
『分かった、今回は帰ろう』
全員の意思が固まったが、その時タチアが思念を飛ばしてくる。
『明日、少し戦えば『鍔目返し』のレベルが最大に届きそうです。なので、明日には挑みましょう』
気合十分といった雰囲気のタチアに、頼もしさを感じる。
『それなら、明日タチアの『鍔目返し』が最大まで育ったら50階層を越えて60階層まで目指そう』
俺の言葉に驚きながらも、タイムリミットを考えて頷く皆。冗談と取られかねなかったが、都市祭とタイムリミットの事を考えて早めに済ませる事に納得がいったのだろう。
そうして、俺は転移結晶を取り出す。メンバーが俺に捕まったのを見て作動させ、ダンジョンから出た。
家に帰り、風呂で汚れを流してからリビングへ。庭先ではバカの奴と当主代行が模擬戦をしていて、刃の嵐とも呼べそうな当主代行の連撃を次から次に捌いて僅かな隙を突いて何発か当てている。フル装備状態なら近い事が出来そうだが、俺の半分以下のステータスしか無いだろうになんで彼奴はあんなことが出来るのだろうか。怪物か何かか?
俺は取り敢えず夕飯の準備の為に台所へ入れば、一華が先に調理を始めていた。足下ではコーンレムがせっせと食材の準備や、ゴミの片づけ等をしている。ぶつからないように器用に動けるもんなんだな。
「いつもありがとう、一華。手伝うぞ」
「どういたしましてでござる、お味噌汁をお願いするでござるよ」
感謝と共に手伝いに入れば、味噌汁を頼まれる。具材はもやしと油揚げだ……え、油揚げ?
「むむ、ご主人油揚げを見たこと無いでござるか?」
「え、ああ。この『ワールウィンド』では見ないな」
前世では見たこと有るが、今生では出会えていなかった。そもそも豆腐が『ワールウィンド』には無いしな。
「豆の加工食品か」
「ご明察でござる、拙者の大好物の一つでござるよ!」
「これに出汁を染みさせて酢飯入れるとか出来そうだな」
「……ご主人、なんでいなり寿司の作り方を知ってるでござる?」
なんとなくと答えて誤魔化そうと一華に顔を向けると、何故だか一華が何時もより輝いて見えた。肌の艶が増し、肌理がより細かになり瞳が潤んで見える。
「……ご主人?」
俺を呼ぶ唇も光を反射して潤いに満ちていて、吸い寄せられる。自然と唇を重ねるように身体が動いていき、そして──
「はい、タタラストップ」
エテルが声を掛けて来て、俺の意識が戻る。今の俺、魅了されてたか?
「……一華、もしかして『性魔術』を取得したのか?」
俺の質問に目を瞬かせてから頷く一華。マジか、漏れ出す魔力で魅了されたのか俺は。
「イッさんの『性魔術』の強さも中々だけど、タタラって身内相手だと自然と『性魔術』に対する耐性が低くなる弱点が有るんだよね」
俺の挙動の原因を言ってくるエテル、そんな事実知らんぞ?
振り返ってエテルを見る。風呂上がりの為に紅潮した肌が色っぽく、更には身体の熱を逃がすために薄手のタンクトップとホットパンツ姿だ。部屋に連れて行きたくなる衝動に襲われるが、今は俺の身体についてだ。
「身内相手に耐性が低くなるって何だ?」
「うーん……説明が難しいんだけどね。タタラは普段私とえっちしてる訳だけど、本来タタラの耐性だと私からとは言え『性魔術』の干渉ってもっと弱まる筈なの。けど、タタラは私からの『性魔術』をほぼ素通しするくらいに自然と干渉を容易にしてるんだよね。何か有った時に私からの干渉を拒絶しようとすると物凄い抵抗力を見せるとは思うんだけど……」
「つまり何か、俺は身内には自然と弱くなるのか?」
「そうだね、多分『身内は裏切らない』っていうのがタタラの根っ子に有るんだと思うんだよね。それが自然と相手からの干渉を素通しする事になってるみたいな」
聞いてる限りかなり危うい気がする、将来的に子供からとか身内を人質に取られてしまったみたいな時に俺自身が抵抗出来なくなる可能性も有るのか。
「それが何故、拙者の『性魔術』の取得を証明する事になるでござるか?」
「多分、慣れてないからだと思うんだけどイッさんの魔力が自然と『性魔術』に変換されてるんだよね……それとタタラ用に指向性を持たせた物に」
『指向性』
エテルの説明に頭が痛くなる。一華は無意識下で魔力を『性魔術』に変換して漏らしているのだが、それが俺に対してのみ効果を発揮する状態になっている。魔力の制御力が先天的に優れているからこその特異性とでも言うべきなのかこれは。
「拙者が無意識で『性魔術』を使っているとして、何故ご主人の耐性を貫通できるでござるか?」
「多分、一華の魔力の波長を持ってるからだろうな」
魔力とは自然に存在する物で有るが、人が放つ物には魂の癖とでも言うものが付く。霊核や王玉に属性が乗るように、魂が自然魔力を取り込んだ際にその癖が移る。その癖は同じ物が近似する物は有っても同じ物が無い、そして近似する場合は近親者になる。この癖を応用した特殊な効果がエテルの持つ『ロニセラ』の能力だ、他にも四葩の『手鞠花』と一華の『牡丹』が該当する。
エテル曰く、俺の『性魔術』の耐性は身内に対しては低くなるという。つまり、一華の『性魔術』から魔力の波長を感じ取った魂か肉体が耐性を下げてしまうのだろう。
「この癖、矯正しないとな……」
「む、何故でござるか?」
「子供が『性魔術』持ってた場合、素通しするのは拙いだろ?」
俺の言葉にエテルと一華はハッとなってから頷いた、特にエテルは少し前に『性魔術』を学園内で使いまくった奴を見てるしな。エテルが矯正に協力してくれるそうなので頑張らないとな。
本日の夕食は親子丼だった。丁寧に取られた出汁醤油、やや甘めなそれで玉葱と鶏肉を煮込み玉子で綴る。俺のは殆ど熱を通してない半熟玉子で、白米の熱で徐々に固まっていく塩梅だった。
そもそも丼鍋とか無かったから急遽鋼で作製したしな、表面を魔石でコーティングして更にちょっとした術式を用いてくっつかないようにとした特別製だ。
「……ご主人、玉子焼き用の角鍋とかこの丼鍋みたいなこだわりの調理器具を用意するの好きでござるよね」
「そりゃ、美味しい料理には良い調理器具が有ったほうが良さそうだしな」
弘法筆を選ばずとは言うが、やはり相応しい道具は有って然るべきとも思う。コレは俺がクラフターだからかも知れないが、やはり料理に相応しい調理器具を用意したい。
人数分用意して、全員揃った所で食事を始める。今日はタチアも参加していて、久し振りのジュロン家飯に表情が明るくなっている。
早速アタマと白米を摘み、口へと運ぶ。火を通しやすくする為に小さく切られた鶏肉は、柔らかくもしっかりとした歯応えの後に肉汁と出汁を口の中へと拡げる。どうやら下味にスパイスを使っていたようで、出汁の旨味を一段階は引き上げている。正直、和風の味付けに『ワールウィンド』のスパイス文化は馴染まないかと思っていたが……一華のコレは新たな気付きを得られた。
玉葱は甘く蕩けるような口当たりで、出汁に自然な甘さを与えている。そこに鶏肉に使われたスパイスからピリッとした辛さが与えられ、全体の味を引き締めている。
そして、白米と思ったがコレは麦飯であった。白米とは違う、やや癖を出す味。しかし、それは掛けられた出汁に対して米の味を主張してくる。時雨煮丼を作った時、正直麦飯が欲しかったのだが白米を贈られたので諦めていた。まさか、こんなタイミングで食べられるとはな。
ふと、視線を向けると四葩と当主代行が揃って大丼をかき込んでいた。お義母さんはそんな2人を行儀が悪いとたしなめているが、どうも口だけらしい。楽しそうに笑っている。
「むぅ、屋敷での堅苦しい食事では無いのだ。偶にはよかろう?」
「母上、せめてジュロン家では多少行儀を悪くさせて欲しいのじゃ。公の場ではきちんとする故に」
「もう、仕方ないですね」
「殆ど此処が実家みたいな寛ぎ方してません?」
虎熊家のやり取りに、ついついツッコミを入れてしまった。
まぁ、悪い気はしないんだが。
「うう、コレだ……この食材の旨味を引き出したやや薄目の味付けが欲しかったんだ」
「チーちゃん、本当にうちの食事好きだったんだね……」
「コレは、次に来る時も腕によりを掛けねばならぬでござるな」
感涙しているタチアの言葉に、エテルと一華が同情と言うか美味い飯を食わせてやらねばみたいな決意を抱いたのを感じる。いや、確かにこんな反応されたら俺も美味い飯を腹いっぱい食わせてやりたくなるけどな。
味噌汁を啜りながらそんな事を思う、味噌汁に使ったもやしは軽くフライパンで炒めてから煮たので香ばしい。更に久し振りに口にする油揚げも独特な食感と風味を感じさせて美味い。
人生、美味い飯食えれば勝ち組ではないかとそんな事を思う。
まぁ、好きな人達と囲む飯だからより美味いと感じるのかも知れないが。
食事を終えて、お義母さんに頼み込んで一緒に工房へ。『不死の王』から依頼されている魔導銃に関して、術式の最適化を手伝って貰う。その為に、先ずは『エリンジウム』を見て貰うのだ。
「粗が多いですが、少々最適化も難しい術式ですね。出来なくは無いですが、一箇所につき10分程時間を必要としますよ」
「時間に余裕が無いなら、今回は見送りますが……」
「何を言うのです馬鹿弟子、しっかりと目に焼き付けて物にしなさい」
「いつの間に弟子になったんだ俺」
「でしたら馬鹿義息子」
「いや、間違っては無いですけど……」
そんなやり取りをしつつ、お義母さんは先に『エリンジウム』の術式を最適化し始める。以前感得した展開場所による術式の最適化だが、『エリンジウム』のコレはかなり細かくせねばならない様子で本当に時間が掛かった。段階的に加速する術式だが、場所によって術式の細やかさが違う。特に、最初と中間そして最後の3箇所は倍は細かく作らねばならないらしい。読み解くと、この3点が修正された事で反動も2割は軽減されている。凄まじいな。関心していると、『オウトエイズル』も持ち出されて術式を最適化された。此方は消費魔力が3割は落ちて、お義母さんの技術に感心するばかりだ。
そうして、いよいよ持って『不死の王』達の武器に着手する。
依頼された『エリンジウム』のカスタム品の前に、俺へ向けたライフル型の魔銃を参考に普段使いの物を先に作る。
銃身は鍛造ミスリルで、お義母さんの加速術式を3枚展開する。音速の8倍に届けば打撃力が高くなる、比例して強くなる反動は吸血鬼の身体能力でねじ伏せて貰おう。
銃身から機関部までは鍛造ミスリルで作成し、それ以外は魔鉄で覆い更にオーク材に魔石を混ぜた防腐剤を塗る。全体的に重量が増したので、銃床で格闘を行なっても相応に威力を出せるだろう。
続いて『エリンジウム』カスタムの一丁目。口径を元の18mmから大きくして30mmにする、多分元になったであろう漫画のキャラが持つ武器と同じだ。まぁ、この世界には劣化ウランなんて無いので弾頭は持ち主に任せるが。取り敢えず1000発くらいは魔鉄製の弾頭をサービスで付けておこうとは思う。
弾頭の大型化に伴い発生する摩擦熱の増加が見込まれるので、『エリンジウム』のレール3本から倍の6本に増やす。更に熱を吸収する為に火の王玉と、空気抵抗を減らす為に風の王玉を使用。『概念鑑定』で確認すれば、火の王玉のおかげでミスリルの熱耐性が上がったので安堵する。そのまま鍛造して更に強固にした上でレールが完成する。
お義母さんには機関部の術式を最適化して貰う、見て学べば我ながら粗の有る術式だと思わされる。まぁ、基本は『ワールウィンド』どころかこの世界で主流な魔銃の動力術式なのだが。構造にばかり気を取られてこの辺突き詰めて無かった自分を恥じるべきだな。
そうして出来上がった銃身と機関部を、魔鉄とオーク材で作ったパーツで包んでいく。カウンターウェイトを設ける事で、伏射が基本であるこの銃を立射が簡単になるようにする。
そうして出来上がる全長2000mm程の超大型魔導砲、重量も『エリンジウム』を越える15kg。流石にカウンターウェイトを重くし過ぎたかも知れないが、元ネタと同じく鈍器扱いされそうなのでこれでも軽いだろうな。
「……タタラさん。途中で止めなかった私が言えた事では無いですが、過剰では?」
「いや、楽しくなっちゃってつい……」
なんとも言えず2人で顔を合わせて零れ出た会話がコレである。本当、エテルに持たせられないなこんなゲテモノ。
同じ物をもう一丁作り、続いてはハーカー卿の剣を鍛える。当人はサーベルを望みそうだが、手癖に合いそうなファルシオンとカトラスも作成した。多分、気に入ると思う。鍛造ミスリル製の刃と、魔鉄製の剣身なので頑丈さと鋭さには自信のある代物だ。ダルマさんの斧と同じ構造にすれば、ミスリル製の武器でも重く出来るからハーカー卿みたいな人向けだな。
そして最後に取り出すのは『不死の王』の二丁拳銃、コレは整備だけなので丁寧な仕事をするだけだ。分解して内部の構造を確認したが、極普通の魔銃だった。魔力を炸薬として放たれる大口径拳銃なのだが、問題は内部に自爆装置みたいな術式が仕込まれていた事だ。こんな所の元ネタ再現しなくてもいいだろう。
「タタラさん、コレは……」
「常夜の国の闇ってヤツですかね」
苛立ちが湧いたので完全に分解して、自爆術式を完全に取り除く。ついでに通常の魔導銃から魔導加速式へと変える。エテルに作った『グロリオサ』と同じ機構にして、大型の銃身を応用し術式を2枚展開させる。拳銃にあるまじき反動になったと思うが、同時にこれを使える奴は間違いなく人間を越える筋力が無ければ不可能だろう。
依頼品を全て終えて、並べる。何とも壮観だ。
「明らかに、あのイケマという護衛の方の武器が物々し過ぎますね」
「一人で戦争出来そうですよね」
ハーカー卿の剣は造形の美しさが見て取れる。『不死の王』の銃は外観には流麗な古代文字で『裁き』に『鉄槌』と其々に刻まれていてそれが美しい。
そこに来て完全な兵器が三つである、物々しいにも程がある。
それに、これらを明日の何時ごろ取りに来るんだろうか?
「一晩で十分と言っていたが、遥かに早いではないか」
「製作速度は現工匠長をして意味不明らしいからな……うん?」
最早聞き慣れてすら来ている艶のある低音、振り返れば以前の寝間着姿をした『不死の王』が立っていた。
「いや、何で居るんだ?」
「お前に預けた私の剣の魔力を起点に少し、な」
「アレを本気でやる奴があるか」
何日か前に帰り道で話した事を実践しやがった、何で出来るんだよ。
「早速全ての依頼を終えたのか、ガブリエルの剣は当人の手に持たせて相応しい物を選ばせる気遣いか?」
「そのつもりだ、好きな武器と向いてる武器は違う場合が多いのは分かるけど一度は向いてる武器を使ってみて欲しいしな」
俺の言葉に『不死の王』は何処か楽しげだ、俺がクラフターをしてる姿が珍しいからだろうか?
「で、明日の何時ごろ取りに来るんだ?」
「夜、と言いたいが」
「此方としては朝に取りに来て欲しいんだが」
「ふむ、理由は?」
俺の要望に対して疑問を見せる『不死の王』、そんな相手にいっそ気軽に言う。
「明日、50階層を越えて60階層のボスまで挑みに行くつもりだからな。下手したら俺、夜には死んでるかも知れないし」
護衛さんの銃は名前どうしようかな……やはり春懇念(はるこんねん)とか?()
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない