既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
何か新しくキャラ生えてきた……なんで増えたんだ?
15階層に降り立った。
周囲の雰囲気はまた変わり、赤黒い壁面には人の顔を模した彫刻が掘られている。死相を思わせる苦悶の表情が並ぶ様は、悪趣味としか言いようが無い。
「なんか、気持ち悪い……」
「まぁ、イイ趣味過ぎて理解は出来んな」
周囲の死相に見られている感覚でも持ったのか、少女は周囲を見ながら二の腕を擦っている。鳥肌が立ってるのかも知れない。
かく言う俺も、ゲーム知識としては持っていたが実際に降り立った時に嫌な気分になった物だ。
最早自然な動きで先行し始める少女だったが、壁の死相には触りたく無いようで普段よりちょっとだけ距離を空けている。まぁ、壁から覗き見ようとしてあの死相とコンニチワしたら凄く嫌だしな。
ここからの階層は14階層までに比べて更にモンスターの出現頻度が低い、階層内で出て来る数が4〜5匹といったくらいだ。その為、此処でレベリングをする探索者は少ない。
そして、此処に出て来る奴等がレベリングに向いてないというのも有る。
少女が壁から覗き見た先にモンスターを発見したのか、此方へハンドサインを送って来た。そろそろと近付き、同じように覗き見ると案の定此処の階層から出現するモンスターが一匹居た。
全長は3m程、筋骨隆々の肉体、適当に木を削って作ったかの様な棍棒、額から伸びる角。鬼族の代表『オーガ』である。
『あれ、どうすんの?』
『正直に言うと殺すまでが面倒過ぎるから無視したい、通路上だから殺らなきゃ進めないが』
『それは分かってるけど、『ロニセラ』は通るかな……』
『身体はデカいがステータスは物理特化だ、キチンと通るが問題は体力だな。頭を破壊するにしても暫く動いたりするし』
『本当に生物なのそれ?』
『ほら、台所のアレとかもそうだが虫って頭無くしても暫く動くじゃん?』
『嫌なもん想像させんな!』
相変わらず虫嫌いだな、俺も苦手だが。
さて、この『オーガ』だがモンスターの中でもタフな奴等として知られている。ゲーム時代でも序盤の壁として嫌われていた。
50階層迄のモンスターを比べた場合、体力と物理攻撃は堂々の2位を誇り物理防御は3位に着ける。更に、種族特性として『肉体再生』を持つ為にひたすら死に難いし攻撃が痛い。
かといって鈍重な訳でもなく、速力は『オーク』以上と隙が無い。
魔法関係は死滅しているのでそこを攻めるしか無いのだが、肝心の『肉体再生』を阻害する為に炎属性魔法で火傷でも負わせないとジリ貧になる嫌らしさ。
初めて20階層まで攻略する際に、ゲーム知識を活かして予め大量のアイテムを用意して挑んだが、死にかけた回数は恐らく15〜20階層の間だけでも二桁を越える。それくらい『オーガ』達は手強いのだ、序盤は。
『取り敢えず、準備するからちょっと待ってくれ』
『準備って何するわけ?』
『彼奴等『オーガ』が持ち得ない弱者の知恵の使い方』
『具体性に欠くなぁ』
アイコンタクトと口パクで意思疎通をしつつ、此処に来て最大限の仕事をする『クラフト』スキルの準備に入る。最初は気付いて無かった活用法、学園で得た知見も活かした戦い方を見せてやる。
床面に魔法陣を描き、回収してきた小さな魔石を幾つか使用して『穴』をクラフトする。オーガに対して径は肩幅を多少越える程で深さは頭頂からある程度の余裕が出来る典型的とも言える落とし穴だ、その中に更に鋭利で返しの付いた突起物を作る。もっと大規模な準備が出来たのなら突起物の先に毒や糞尿を塗るのだが、流石にインベントリには用意して無い。というか、学園生の間は毒の所持を禁じられていて持ってたら捕まる。
穴の上に重量約60kgまで耐えられる床面を模した板を乗せて完成だ、後は此処に『オーガ』を誘い込み落ちた所を滅多打ちにすれば良い。
『殺意高くない?』
『コレくらいしないと死なねぇんだよアイツら、本当に面倒臭いタフさしてる』
落とし穴は10分もしたらダンジョンの再生力で消えてしまうので、さっさと最初の『オーガ』を殺ってしまおう。
少女には先ず姿を曝して貰い、『ロニセラ』で『オーガ』を撃って貰う。ヘッドショットで倒れればそれで良いが、そうでなければ怒って近付いて来るので落とし穴まで誘導して貰う。
そして『オーガ』が落とし穴に嵌まれば持てる力でぶっ倒す。
ね、簡単でしょ?
「じゃ、作戦開始ね!」
「躓いて転ぶなよ」
「フラグ建てないでよ!?」
俺の言葉に焦りの混じった言葉を返して、少女は飛び出した。
移動はギリギリ『ロニセラ』の射程内、背中を向けている『オーガ』へ3連射。背骨、肩甲骨、後頭部の3箇所へ当たった。血が出ているが深く傷を与えている様には見えなかった。
背中から撃たれた『オーガ』は振り向き、少女を確認した瞬間に叫びを上げて走り出した。
少女はその迫力に思わず悲鳴を上げて、落とし穴まで走り始めた。囮としての役割を果たす為に、ギリギリ置き去りにしない距離を保ちながら落とし穴へ向かう少女。『オーガ』は何の疑いも無く少女へ向けて走る。
そして、少女が落とし穴の上を駆け抜けた直後に板へ乗った『オーガ』は落とし穴へ落ちた。落ちる瞬間、まるで万歳の様な姿勢になった『オーガ』にある種の芸術性を感じつつ俺は落とし穴へ向かった。
物凄く大きな悲鳴が耳に届く。作った突起物は見事に『オーガ』の表皮と筋肉を貫き、骨を砕いたらしい。
落とし穴の中を覗き込めば、苦痛で暴れ回る『オーガ』の姿が有った。身体を貫いた突起物は先端に返しが付いている為に抜けず、暴れ回る度に折れて別の突起物が刺さる。動けば血が噴き出し痛みが走り、耐えられず暴れれば新たなる突起物が刺さる。
食らった『オーガ』に取っては最悪の永久機関である。『肉体再生』が有ろうと傷を防ぐのを阻んでしまえば関係無い。
「うわ、痛そう……」
「しまった、突起の中に空洞作って血が流れる仕様にすればよかった……それとも螺旋状にした方が良かったか?」
「よく無いよエグ過ぎるよ」
「まぁ、自分では掛かりたく無いな」
そんな会話を交わしつつ『創製魔法』で砂を作り、落とし穴の中へ流し込んで行く。最初は暴れられていたオーガだが、やがて砂に全身を捉えられ、更に血を吸った固まった砂で身動きが取れなくなった。このまま埋めてもいいのだが『オーガ』の経験値は少女にとって美味しい筈、此処まで来たらレベル差が殆ど無くなってそれなりに貰える様になる筈。
「ほら、後は頑張って頭を破壊してくれ」
「こんなやり方、殆ど悪役だよ……」
悲しそうにそう言って、少女は『ロニセラ』を『オーガ』の頭に撃ち込んで行く。物理的に頭の硬い『オーガ』だったが、10発も撃ち込む辺りで遂に体力が尽きた。
クラフトで砂を取り除き『オーガ』の魔石を回収する。此処にきてようやく中サイズの魔石が出て来た、コレでクラフトの際に必要な魔力の確保が楽になる。
「なんか精神的に疲れた……」
「本当に無駄にタフだよなコイツら」
「それだけじゃ無くて……ダメだ言っても無駄なタイプじゃん」
「失礼過ぎないか?」
人を鬼畜外道みたいに言わないで欲しい。
「一人の時はどうやってたの?」
「落とし穴作って、嵌まった所に酸ぶっ込んだり火薬詰めて爆破したり」
「さらにエグい!?」
その為にインベントリは様々な劇物塗れだった、あの時職務質問でも食らってたら拘留されてたかも知れない。
「どうしよう、『ロニセラ』が頼りなく感じて来た……」
「そう思うのは多分この先何度も有ると思うが、正直『オーガ』種相手だとどの武器でもそう感じるぞ」
使い手のステータスで攻撃力が変わる武器や魔法なら実力を上げれば良いのだが、何度も言う通り魔導銃は固定ダメージが強みで有り弱点だ。今迄はヘッドショットで確殺出来て居たが、骨の硬さで脳を破壊出来ないのは初めてだろう。
普通、魔法防御が低いなら殺せている筈なのだが『オーガ』はその体力の高さで脳へ届くダメージを耐えているらしい。『オーク』を脳筋と言ったが、コイツら『オーガ』こそが一番の脳筋かも知れない。
「魔導銃で『オーガ』に向いてるの無い?」
「有るには有るんだが、作る為の素材を手に入れる時には多分『オーガ』に苦戦しなくなってる」
「ダメじゃん」
「それな」
魔導銃で『オーガ』に有効な物は、俗に言う『火炎放射器』だ。一定ダメージを与え、火傷で回復を阻害する。現実になった今では、顔に向ければ酸素が欠乏して窒息死も狙える。しかし、作る上での素材は溶岩地帯で手に入る鉱物やモンスターの素材だ。今のダンジョンでも階層は45階層以降なので、作る時には更に先に有る『ドライアド』の群生地を焼き払う時くらいしか出番が無い。
「ボスまで時間掛かりそう……」
「一匹一匹に時間は掛かるが、数は少ないだろうし頑張ろう」
「はーい……」
気落ちした少女に先行してもらい、探索を再開する。
早速一匹の『オーガ』が発見され、罠戦法を取る。実験を兼ねて内部の突起物を溝の入った三角錐で作り、更に加工して螺旋状へ形成する。前世のドリルを思い出して試してみた物だ、螺旋状の構造で内部へ潜り込み切った溝で肉を抉り血を流させる。加工を見ていた少女が当たった姿を想像して涙目になっていたが仕方ない。効果が薄かった場合に備え、落とし穴の壁は返しの付いた突起物で囲む様に作った。コレで暴れても自傷ダメージになるだろう。
尚、完成した落とし穴を見て少女は泣いた。
最初の『オーガ』と同じ流れで作戦は成功し、落とし穴に落ちた『オーガ』だが若干結果が変わった。
三角錐を加工した突起物は深々と刺さったのだが『オーガ』の『肉体再生』で溝が埋まり血が出なかったのだ。完全に埋まった関係で骨を突き破り、動こうとする度に激痛が走る様で『オーガ』が涙目になっていた。中で暴れ回るたびに周囲の突起物が刺さり、更に暴れて骨を貫いた痛みが襲い……と先程と同じ様な無限ループに入った。
少女は『ロニセラ』を構えたが、何を思ったのか『エナジードレイン』を使用した。
結果、効果は劇的だった。
少女の『エナジードレイン』で生命力を吸われた『オーガ』は『肉体再生』の効果が弱くなったらしく、身体を貫く突起物の影響も有りスリップダメージで直ぐに死んだのだ。コレは新しい発見かも知れない。
尚、その死に方を見て少女は更に泣いた。吐いて無いだけマシかも知れないが。
「一戦一戦が心を削ってるよ……」
「でも真正面からは無理だろ?」
「それは分かるんだよ、でも良心が痛むんだよ……」
「まぁ、お前は優しいからな」
共感性の高さから他人の痛みを想像してしまう少女は、本来は争い事に向いてない筈なのだ。そうも言っていられない現実が有るので銃把を握っているが、こうした作戦を心の何処かで許容しきれていない。
いや、確かに今回はやり方として外道みたいな物だけど。
けれど言い訳させて欲しい、前世に有った漫画には『弱い奴は死に方すら選べない』というセリフが有った。ならば弱者は生き方も選べ無いのではないか?
生き残る為に勝つ算段を立てるのは当然、乗り越える手段が有るなら取るべきだと思う。
転生できたからといって、次が有るとは限らないのだ。全力で生きる事こそ、今は亡き両親にも報いれる事だろう。
「……で、自己弁護は終わり?」
「いや、その……」
「はぁ……取り敢えず、強くならなきゃダメって事は納得したから先に行こう」
何か少女に呆れられた。解せぬ。
そうして探索を続けると、少し豪華な宝箱が見付かった。『鑑定』を掛ければ鍵付きで罠は無かったので少女に任せる。
「何か、解錠するの久し振りな気がする……」
「むしろ此処までの階層で当たることの方が稀過ぎるんだけどな、罠宝箱しかり」
「コレじゃスキルレベル上がんないよ」
「明日から家でも出来る解錠練習グッズ用意するからそれで暫く我慢してくれ」
「それ、役に立つの?」
「学園の先生から『誰が此処までやれと言った』って評価される程度には良い出来みたいだぞ?」
「それは本当に褒められてるのかな……」
会話をしながらも少女は淀み無く宝箱の鍵を外して行く、そして金属が擦れる音の後に鍵が外れる音がした。
「よし、一丁上り!」
「上手いもんだな」
「ま、コレくらいは基本よ基本!」
そう言って胸を張る少女、豊かな胸が柔らかく揺れる。どうよという感情が形になった渾身のドヤ顔に苦笑が漏れる。
そうした会話の後、宝箱を開けると中には豪奢な造りの腕輪が入っていた。
「わ、凄い」
「またとんでもない物を引いたかもな」
驚く少女の横から手を伸ばし、手にとった腕輪に『鑑定』を掛ける。
装飾具『鬼神の腕輪』
特定の血族にのみ効果有り。
継承の証。
血の気が引いた。とんでもない厄ネタを引いた可能性が高い。
ゲーム『深く深い闇の先で』ではこんなアイテムも関連するイベントも無い。しかし、別のタイトルにヒロインとして居たのだ。継承の証である腕輪を探し、結果一族の重責より愛を選んだ鬼族のお姫様が。
お姫様以外にも継承権を求めて探しているという設定で、結局どの作品でも拾われなかった設定がまさかの登場である。
「……コレ、かなり拙い」
「え、呪われてたりする?」
「ある意味それに近い、何処かの名家の継承の証だコレ」
「ひぃ」
ダンジョンから出たら一も二も無く協会へ提出しなければならない。多分、協会職員ですら血の気を無くすレベルだ。
それくらいこの世界のお家騒動というのは危険なのだ、何ならゲーム作品として出来上がるくらいに。
「……取り敢えず、先へ進もう」
「え、それ持ったまま!?」
「正直、帰ってさっさと協会へ提出はしたい。しかし、問題が出来た」
「問題って……え、何この気配」
「俺にも分からん、というかなんだこの重圧」
来た道を振り返ると、その先から静かな足音が近付いて来ていた。軽い木を打つ様な独特な音。
「コレはまさか……下駄、か?」
「ゲタって、遠い国の靴だっけ?」
「あぁ、『ワールウィンド』じゃ滅多に見ないくらいに交流が無い国の履物だ」
そっと少女の前に立って、何時でも盾になれるように備える。
そして、暗闇から現れたのは一人の女怪。
毛先が赤い体毛、同色の睫毛で飾られた金色の瞳、褐色の肌、着崩し肩を出してはいるが纏っている白い着物はかなり上等な品だ。そして左手に握る鞘に収まった野太刀。
ゲームでは見たことが無い。それでも分かる、この相手は魔王にも届く実力が有る。
「おや、童が2人……迷うたか?」
鈴を転がすような声、と称するべきか?
耳触りの良い高めの声が耳に届くが、冷や汗が止まらなくなる。人語を解する敵など、このダンジョンで現れるのはそれこそ70階層を越えてからの筈だ。それまではダンジョンに満ちる魔力で正気を失う程度の存在しか現れない。それがこの階層に現れる意味、最早災厄の類いだ。
「迷ってはいないですね、探索者として潜っていました」
当たり障りの無い答えをしつつ、頭の中で如何に生き残るか、逃走するかを考える。少女一人なら或いは、しかし後追いを言い渡されている身としては二人共生き残らなければならない。
「探索者……? 我が虎熊家の庭で、何を探ろうというのか」
虎熊家、間違いなく過去作に出ていたヒロインの関係者だ。この『ワールウィンド』が有る大陸から遠く離れた島国に存在する鬼の名家。
しかし、何故そんな遠い異国のお姫様がこんな場所へ?
何故、この『常闇の洞』を虎熊家の庭と呼ぶのか?
ふと、過去作におけるヒロインの属性を一つ思い出す。
作中でネタにされ、作中イベントにも繋がる弱点。
「もしかして、方向音痴で迷った……?」
思わず口から零れ出た言葉、過去作のヒロインが主人公と出会う切っ掛けにもなった、血筋由来なのだとも語っていたソレ。
曰く『運命の迷い子』とか何とか。なんでも昔から迷子になっては伴侶やら親友やらと出会ってきた家系らしい。
「ち、違う! 妾は方向音痴じゃないもん!」
いきなり口調を子供っぽくすんな、見た目の美人具合とのギャップで脳がバグる。
「流石に失礼だよ」
「でもこの大陸って、普通に来れる距離じゃねぇぞ? 転移結晶の事故でも無いとダンジョン内とか普通は居ねぇよ」
「それでも方向音痴って事は無いでしょ?」
「いいか、よく聞け。音痴ってのは運動だろうが味だろうが当人が死ぬ程努力しても治せねぇんだ」
「聞こえとるからな!?」
若干涙目になって見える目の前の女鬼。コレ、本人も方向音痴の自覚有るな?
「取り敢えず訂正を。此処は虎熊家という家が保有している土地では無く、国が管理している『常闇の洞』というダンジョンです」
「愚かな事を申すで無い、虎熊家の庭を歩いて居たら着いたのだ。間違い無く虎熊家の庭じゃ」
『庭を歩いてたらダンジョン?』
『次元の壁でも渡ったか?』
「二人でこそこそするな! そういうの虐めになるんだって妾知ってるんだからな!?」
なんだろう、重圧を感じなくなって来た。間違い無く実力は上なんだろうけど、幼気な雰囲気が出て警戒心が保たない。
「ところで、何故庭を散歩してたのですか?」
「ふ、蝶に誘われたのよ。風や花と戯れたくなる善き陽射しでも有ったからな」
「天気が良いから蝶々追い掛けてたら迷った的な?」
「な、なんで分かるの!?」
「「合ってるのかよ」」
もう駄目だ、街で泣いてる迷子相手にしてる気分になって来た。口調を仰々しくしてるのも背伸びしてるだけに見えて来る。
「脱出用の結晶渡した方がいいんじゃ……?」
「残念ながら、今回1個しか用意して無いから一緒に脱出する事になる」
「それでいいじゃん、今回は諦めよう?」
悩む、腕輪の事も考えるなら共に脱出するのが望ましい。
「わ、妾は大丈夫じゃぞ? ちょっと周囲の壁が趣味悪くて気持ち悪いだけじゃから気にせんでも……」
駄目だ、もう一緒に行動しないと心配で仕方ない。
「もういっそ攻略に付き合って貰おう、その方が安心する」
「私も、一緒に脱出したら悩ませちゃいそうだし連れて行きたい」
「ふぇ?」
俺達は意見が一致したので、取り敢えずこの
「取り敢えず、俺達の目的完了までは付いてきて貰う」
「罠とかは私が見るから付いてくるだけで、その代わり絶対に先行したり一人で行動しないこと」
「い、いきなり何じゃ!?」
「終わったら国営組織に連れて行きますので、それまでは大人しくお願いします」
「ちゃんと帰れるように手続きしますので、一緒に来て下さい」
俺と少女の言葉に目を白黒させる女鬼。少し考える素振りの後、おずおずと問いかけてきた。
「本当にお家に帰れる?」
「その為の協力は必ずします」
俺の答えを聞いた後、目を瞑って深く考える様子を見せる。
そして一つ頷くと、顔を上げて満面の笑みを見せてきた。
「うん、お世話になるのじゃ! 宜しくの!」
その笑顔を見て、俺と少女も安堵する。女鬼──虎熊をメンバーに加えて、俺達は探索を再開した。
そこからも変わらず『オーガ』を罠に嵌めて、安全に進んで行く。
尚、罠の構造を見た虎熊は泣いた。
途中途中で虎熊の国の風習や文化に付いて話を聞き、何れは着物や刀を作る為に資料になる物を手に入れたいと話したら、実家に帰れたらお礼として用意出来るか親に聞いてくれるそうだ。
尚、罠の『オーガ』に『エナジードレイン』を放つ少女を見て虎熊は泣いた。
宝箱から取れたアイテムや俺と少女の持つ文化の違う武器に目を輝かせて燥ぐ虎熊の姿に、連れてきて良かったと俺と少女は笑い合った。
そうして迎えた20階層、目の前には巨大な扉が鎮座している。
10階層との違いは壁の死相の意匠を汲んで、人相が咥える形を取ったドアハンドルが有るくらいか。
「身体の調子は?」
「体力は万全、魔力と技力も問題無し!」
俺の質問に元気に答える少女、俺も少女から『精気譲渡』を受けて体力以外は万全だ。
「その……この国の者はああして接吻するのが普通なのか?」
見た目に反して幼いらしい虎熊は、俺と少女が口吻を交わす度にワタワタとしていた。申し訳ないが、羞恥心とか以前に命がかかっているので気にしていられなかった。
「あ、う……ふ、普通では無いかなぁ」
少女の方もやや言い難そうに答える。まぁ、やれてたのは他に居なかったからってのも理由としては強かっただろうけど。
改めて問われて羞恥心が出て来たらしい。
「そ、そうか……やはり夫婦となるならそれくらいは出来ぬとならぬか」
「め、めおとぉ!?」
「動揺し過ぎだ」
虎熊の言葉に素っ頓狂な声を上げる少女、俺は溜息混じりに声を掛ける。
「一応言って置くが、俺達は夫婦じゃないぞ?」
「な、なんとっ!?」
事実を伝えただけで滅茶苦茶驚かれた、虎熊の国ではお淑やかな人達が多いのかも知れない。
「ま、誰にでも許す訳では無いけどな」
俺と少女が一瞬だけ目配せしたのを見て、虎熊は目を大きく開き嬉しそうにする。
「ほう、ほう! 祝言を上げる時は妾にも教えるのじゃ! 絶対行くから!!」
その勢いに俺と少女は苦笑い。現状のパーティメンバーで間違い無くムードメーカーを担ってくれているのは虎熊だ。
「まぁ、先ずは此処を乗り切ろう」
「オッケー、派手に行こう!」
俺と少女のやり取りを見て、虎熊は難しそうな顔をする。
「しかし、良いのか? 妾は手を貸さなくて」
「コレは元々俺達二人の探索だからな」
「出来るだけ、二人で越えたいんだ」
虎熊の言葉にそう答える。虎熊は俺達を見て、一つ頷く。
「あい、分かった。しかし、どうしても危なくなったら介入するぞ?」
「まぁ、どうしようも無いって思ったら頼む」
「今はパーティなのに、仲間外れみたいでゴメン」
少女の言葉に苦笑いをする虎熊。彼女自身、俺達にとって異物になってしまっている自覚が有るのだろう。特に文句を言う気配は無かった。
「気にするでない。妾こそ夫婦水入らずに水を差した無礼、申し訳ない」
「だからぁ!」
少女の反応に呵々と笑う虎熊を見て、適度に肩の力を抜いてくれて助かったと感謝する。
コレならいけると思わせるベストコンディションだ。
「さて、行こうか」
声に出して、扉を開ける。
20階層のボスとの戦いの始まりだ。
あと2から3話でチュートリアルが終わる予定です。それに合わせて2つ目のアンケートの締切とさせていただきます。
一応、主人公とヒロインの名前解禁と共に作中の何人かの名前も解禁します。
主人公とヒロインの容姿ってしっかり書くべき?
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見せてみろよお前の癖。両方に要る。
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理想の男と女を妄想してるから要らネ。
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どんな女がタイプだい?