※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

152 / 183
タチアイベント進行中
『看板娘』イベント継続中


アンケート実施中です


『何故自分には』そんな言葉を引き出してしまうもの。

 三葉さんの説得が終わり、当主代行はその後軽く運動がしたいからと庭先に出てバカの修練に参加しに行った。元気だな。

 

「タタラ様、先程の家事代行業務の話なのですが」

「え、話終わったと思ったんですけど」

「はい、此方に越して来る事は一先ず保留としまして……掃除道具の事でお話が」

「ああ、成る程……」

 

 此方に引っ越して来るかは兎も角として、俺が作る掃除道具(・・・・・・・・)が気になるのか。うん、各家庭で用意しようにも都市長に見せたら発狂しそうな代物だろうしな……開業祝いでは無いけど贈らせて貰おうか。

 

「分かりました、申し訳無いんですけど一緒に工房までお願いできますか?」

「はい」

 

 素直に従って貰えて助かる。しかし、引き摺られてる髪はどうにかした方がいいだろうな。この状態ですら艷やかで綺麗な髪なのは驚嘆するが、家事代行をする上では見た目の印象が悪い。出来ればお義母さんを交えてこの辺指導して貰わないとな。

 工房に入り、以前『清掃長』の為に作った掃除道具の設計図を一通り空間に投影して見せていく。

 

「これは……このように多様かつ高性能な掃除専用の魔導具が有るのですね」

「雛形は『ワールウィンド』にも有りますが、此等は全部俺が設計と作成を行った特別な仕様です。前に掃除道具を依頼して来た相手に合わせた物ですが、そちらの方は魔力が豊富なのでこう言ったモデルにしています」

「あら、それでは私には合わないのでは?」

「はい、なので別の方法を提示させて貰います」

 

 そう言って設計図をコピーし、内部構造を変える。掃除機の中に風の核石と接続する形で動力源を増やす設計である。

 

「こうして、掃除機の中に動力源を増やす構造にするのがいいと思います」

「成る程、私の魔力を使うのではなく掃除機に魔力源を増やすのですね」

「はい、こうする事でそこそこ広い邸を連続して掃除できるようになります」

 

 例え貴族の邸を掃除するとしても、小型の魔石が一つでも有れば掃除機自体は問題なく稼働する。一つの家庭の魔導具を1日フルで稼働させる魔力量は伊達では無いのだ。

 しかし、家事代行を行うとなると不安が残る。流石に1日に2件3件と貴族の邸を掃除する事は無いとは思うが、仮にそうなったとしても対応できるようにするのが俺達クラフターの仕事だろう。

 

「それ程に需要が有る、と?」

「家事代行サービス自体はこの都市にまだ存在しませんが、1日に数件家を回ることも想定しておかないとトラブルに見舞われる可能性が有ります」

 

 コレで三葉さんが鬼以外の種族なら、魔力に余裕が有るだろうから当人から引っ張る形を取っただろう。お義母さんの例が有るとは言え、種族を考えるとあまり期待しては拙いと俺の勘は判断している。

 家事代行を依頼した家が魔石を用意しておらず、家の魔導具が可動せずに全て手作業で仕事をする場面が有るかも知れない(・・・・・・)……そう言った事も想定して然るべきだ。

 

「とは言え、俺が作れるのはこう言った掃除機やフロアワイパーみたいな物になりますけどね」

「いえ、此方での掃除に必要の道具なのでしょう。全てを雑巾やハタキで対応する事を想定していたので、十分助かります」

 

 礼を言われて少し困る、作るとは言っているが現時点で作れているわけではない。

 

「お礼は物が出来上がってからでお願いします、今はまだアイデアを出しただけで物を作り終えている訳では無いですから」

「そうは言いますけど、お母様から聞いた限り1時間も有れば作り終えますよね?」

 

 うん、何でそれは聞いてるんだろうか?

 

「その時間で作れはしますけど」

「やっぱり。たたらっている、と言うのは伊達ではありませんね」

「俺はなんで外国から来た身内の姉にこんな扱いを早々に受けているのか」

 

 何だか精神的な何かを削られている気がして、気疲れと共に溜息を吐いた。

 

 

 それから1時間程で掃除道具一式を作り、三葉さんに渡す。フルカスタマイズと言うがオーダーメイド品と言う事で握りの大きさやらシャフトの流さ等を調節し、色を好みの物にした。意外、とも言えないがイメージとして寒色系が好きなのかと思ったがお義母さんと同じく桜色が好きとの事だったので本体は桜色にして白抜きで桜色の花弁をあしらってみた。驚いた表情を見せた後に、四葩に似た笑みを見せられて少しドキリとする。

 用事を終えて庭先に向かうと、糞野郎といばらさんが多分模擬戦をしていた。多分、と付けたのはその余りにも激しい応酬に疑問しか浮かばなかったが故である。

 剣術三倍段と言う言葉が有る。本来は槍術三倍段なのだが、己より長い武器を持った相手に勝つ為には3倍の技量が必要と言う教えだ。ならば今、糞野郎の刀の側面を拳でいなしてその懐に飛び込もうとしているいばらさんの実力とははたして如何程の物なのだろか?

 

「あら、此方で才覚ある若者を相手し過ぎて修羅道から抜けました?」

「あのね、ご当主が見てる中で君に本気出せる訳が無いでしょうが」

「言い訳は見苦しくてよ、私の肌も傷付けられ無い鈍らをお持ちなのですから殺す気でいらっしゃいな」

「……この刀を鈍らって言うんじゃねぇよ」

 

 剣と拳、言葉と言葉のやり取りの中で明確に糞野郎の雰囲気が変わる。当主代行が見てる中で手加減していたのは本当なのだろうが、次の瞬間には凄まじい打撃音がいばらさんの全身から聞こえてくる。やばい、あのトリモドキと戦った時よりステータスは上がってる筈なのに全く見えねぇ。

 

「ふふ、ようやく本気をお出しなのね?」

「うるせぇよ行かず後家」

「……ぶち殺して差し上げますわ」

 

 糞野郎の言葉に本気でキレたらしく、いばらさんの身体から魔力とも妖力ともつかないオーラが湧き上がりその身体能力が爆発的に増加する。残像を残すどころか影すら置き去りにせんばかりの速度で糞野郎の身体に重々しい音の連撃を叩き込んでいるが、糞野郎は被弾しつつも柄頭で殴り付ける等明確に相手を破壊する意図で攻撃をしている。

 うん、貴族令嬢とそれに向ける戦いでは無いな。

 

「お姉様、お見合いが上手く行かない事を気にしているのですよ。本人が武に傾倒して相手にも求める故に、多くの殿方が挫折しておりますの」

 

 何ともコメントに困る事情である、下手に言及すると飛び火してきそうで怖い。

 

「……その、晩御飯の準備をしましょうか?」

「そうですね、タタラ様もご一緒になさいますか?」

「ええ、流石にちょっと今の庭先は危なそうなので」

 

 正直に答えれば三葉さんは口元を隠して控え目に笑う、何故こうも三姉妹で所作に差がつくのか。

 家事を趣味にしていると言うだけあり、三葉さんの料理の腕前はかなりの物だった。持ち歩いているらしいマイ包丁も手入れが確りと成されていて、本気度が伺える。思わず包丁を一本贈りたいと溢したら、嬉しそうに待っていると返された。

 得意料理と言う事で三葉さんには肉じゃがを作って貰った、味見させて貰ったら薄目の味付けだが出汁が確りと効いている物で感嘆した。

 因みに主菜は魚の味噌煮である、大根と一緒に煮たので味が染みた副菜付きのちょっと豪華な献立だ。後は一華が玉子焼きを作ってくれたら最高のメニューである。

 

「ほら、妹様は夕飯を作ってるみたいだよ。君も花嫁修業の一つでもしたら?」

「ほほほ、あの子はあの子で私は私よ。出来る者がやればいいのであって、私には必要ありませんわ」

「その思考のせいで貰い手が無いんでしょ、少しは自覚したら?」

「あらあら、顔と実力と名声を持ちながら性格一つで嫁の来ない負け犬が何やら吠えてやがりますわね?」

 

 互いが互いを罵り合い、額にぶっとい血管を浮かばせながら本気も本気で殺意を向け合っている。怖いな、此処。

 

「ふむ、刀の振りや間合いの取り方に視線の動かし方……刀術を習い一月と聞いたが末恐ろしい物が有るな」

「ありがとうございます!」

「礼節も良い……ふふ、家族皆で我が虎熊領へ来る気はないかね。畑とするに十分な土地と君には我が家付きの侍……此方で言う騎士の座を用意するが?」

「すみませーん、勧誘は事務所(都市長)を通して下さい」

 

 激突する部下と娘を余所に、バカの奴を勧誘する当主代行。前にもお義母さんに言った気がするな、コレ。

 

「む、ならばタタラ殿も来るかね?」

「俺が陽出國(そっち)に行ったらアーレムを流行らせたり虎熊領をタタラせますからね」

「どんな土地になるのか怖くて想像したかねぇなそれ」

 

 俺の言葉を聞いたバカが身震いさせている、少なくとも農家には増やしたファーレムを派遣して手伝わせるかな。対象は領民、あえて言うなら年貢をキチンと納めてる家に限る感じで。

 

「むぅ……我が家付きの鍛冶師で落ち着かんか?」

「嫌です、最低でも『ワールウィンド』でのクラフターみたいに働け無いと」

「実はタタラってワーカーホリックだったりするのか?」

「失礼な、クラフトが趣味で1日一本は剣を打たないと発狂しかねないだけだぞ」

『怖いわ!!』

 

 炉の火を見つめ槌を振るい、この手で一つは何かを作らないと不安になる。そう言う意味では、お師様から教わった『空裂』はとても都合が良い。1日一本しか作れないが、自身の鍛冶技術と魂に向き合うのにあれ程適した物はない。

 俺も混じった会話が小休止になり、適度に休み力の抜けたバカは精力的に鍛練に打ち込んだ。その真摯な姿に当主代行と俺は後方腕組み師匠面であるが、本来の師匠役である糞野郎はいばらさんとの模擬戦を終了間際まで続けていた。うん、余程色々溜まってたんだろうな互いに。

 バカと雛菊さん、そして糞野郎を見送り一華達が帰るのを待つ。どうやら今日は少し遅れているらしい、待つ時間と言うのは少し不安になるからあまり好きにも慣れないな。

 

「ところで、タタラさん……すこし宜しいでしょうか?」

「はい?」

 

 少し呆けて外を見ていると、唐突にいばらさんに声を掛けられた。はて、なんだろう?

 

「今日、剣術指南役と戯れに拳を交わしたのてすけど」

「……戯れ」

 

 明らかに互いが殺意を持って相手を攻撃していたように見えたのだが、アレが戯れか……鬼って怖い。

 

「剣術指南役の持っていた鈍ら、アレで斬られても痛みは有れど血が流れませんでしたわ」

「はぁ」

 

 そう言えば、アレは人型種に特効持ってるけど殺せないって能力が両立してる概念武装なんだよな。あのトリモドキとの戦いでは糞野郎が膾斬りにしていたのに死んでなかったから、効果は確かなのだが。

 

「あの鈍らはいったいどのような代物なのですか?」

「それを俺に聞く意味は分かってますか?」

「ええ、お母様より聞いてますがお父様や剣術指南役が持つ刀を打ったのは貴方なのですよね?」

 

 うん、そうやって打った本人に対して作品を鈍らって呼ぶのは流石にデリカシーが無くないかな。それだから婚期逃すんだと思うよ。

 俺の心情を察したのか、当主代行が横から嘴を挟んでくる。

 

「いばら、それを理解して製作者に対して作品を鈍ら等と呼ぶな。失礼であろう」

「あら、人を斬れぬ刃等鈍らでしょう?」

 

 まぁ、間違ってはいないのか?

 

「それを言うなら持ち主の斬りたい物を切り、斬らざる物を切らない事は名刀の条件ではないですかね」

 

 と、思わず口から溢してしまった。糞野郎に頼まれた人を斬れない刀を鈍らと呼ぶなら、当主代行に譲った『龍舌蘭』は何と呼ぶのだろうか?

 

「あら、では剣術指南役が持つ鈍らは名刀であると?」

「そこ迄の自惚れは無いですが、求められた機能を正しく発揮して居るなら俺としては満足ですよ」

「あの、タタラ様。剣術指南役の刀に求められた機能とは?」

「アレは『人を殺せない刃』を求められて作った武器なので、傷付けられても殺せないなら十分能力を発揮してるんですよ三葉さん」

 

 いばらさんへの答えを聞いて三葉さんが別の疑問を持ったことに対して答える、三葉さんは意味を理解したのか驚いた様子だ。

 

「人だけを切り、その上で人を殺せない刀なのですか?」

「ええ、そうです。人型種を殺す概念と、殺せない概念を両立させた概念武装になります」

「……概念武装を、人が作った?」

 

 三葉さんはどうやら概念武装について知っている様子で、何処か恐怖を感じている様子だ。まぁ、本来は長い年月を必要とする物を手軽に打っているって事実にドン引きしてるんだろうけど。

 

「お師様から器の作り方を教えて貰いましたからね、そこへ満たせるだけの思いを注いでやればある程度指向を持たせてやれますよ」

「……やはり、タタラ様はたたらってるのですね」

「もしかして、それ気に入ってます?」

「語感が少し口に馴染みますね、可愛らしいというか」

 

 三葉さん、どうやらタタラってるを気に入った模様。

 

「その概念武装で包丁等は作れますか?」

「ええ、実際に有りますよ」

 

 疑問に答える形でインベントリから『真具呂』を取り出して見せる、包丁と言うよりは刀みたいな見た目をしている鮪解体包丁を見て三葉さんは驚いた様子だ。

 

「コイツには『海鮮特効』、水生生物を殺す事に特化した概念が含まれてます。甲殻類どころか水龍の鱗すら無視してぶった斬れますよ。概念の関係で水生生物以外は斬れないんで、誤って自分の手を斬ることも無いですしね」

「それは……素晴らしい包丁ですね!」

 

 俺の言葉により目の輝きを強くした三葉さんに、包丁を用意したくなる。

 

「補足すると、タタラ殿はアマツの奴ですら認める鍛冶の才能を持っておる。一部の技能では上回ってると彼奴も言っていたぞ」

「それは……本当なのでして、お父様?」

「勿論だ。第一アマツの奴ですら概念武装の器は作れても、その場で概念武装を作る事は出来ぬからな。概念武装を量産するタタラ殿は、我が國の最高の鍛冶師を凌駕できることの証左だ」

「単純な作刀技術は俺の一生を賭してすらお師様を越えられる自信は無いですけどね」

 

 あんな美しい御業を俺が越えたなんて烏滸がましくて口に出せない、1日一本『空裂』が作れても積み上げてきた基礎が違い過ぎてとても俺の方が上なんて言えない。何より、俺がお師様を最高の鍛冶師として思い続ければ神たるあの人はそう在り続けてくれると信じてる。俺は今に満足しないで、技術を磨き続けたい。その為には目標がある方が良いこだ。

 

「でしたら、タタラ様の鍛冶を拝見したいです」

「ええっと……1日一本作刀してるので、それの見学くらいなら」

 

 目に太陽でも宿してるかと聞きたいくらいに輝かせている三葉さんの希望に対して、思わず受け入れてしまう。俺達の様子を見ていた当主代行も頷き、口を開く。

 

「ならば、儂も良いかな?」

「ええ、見学なら構いません」

「忝ない」

 

 当主代行も見学を希望したので受け入れる、序に空輸用の魔導具を見てもらってデザインの意見を貰おうかな。

 

「……なら、私も宜しいかしら?」

 

 一連の流れを見ていたいばらさんからも見学希望を受ける。まぁ、いいか。

 

「ええ、構いません。あくまで見学に徹して下さいね」

「あら、私が道理を弁えて無いと?」

「鍛冶師の前で作品を貶める品性を見ているので、変な正義感と見当違いな善意を振り翳されて集中の邪魔をされたく無いので」

 

 俺の言葉を聞いて口元が引き攣るいばらさん、三葉さんは俺の言葉に驚いている様子だが当主代行は納得したような雰囲気だ。

 

「ほほほ、私がその程度の道理を弁えられぬと?」

「ええ、むしろどうすれば弁えていると判断出来ると思っているんですかね。俺の前で俺の作品を貶すような人間を、どう思うかとか考えられませんでしたか?」

 

 流石に四葩の姉とか義理の家族になる可能性が有ろうと、俺の誇りを汚そうとする相手にニコニコ笑ってられねぇんだわ。

 

「いばら、そこ迄にせよ」

 

 当主代行が間に割って入り、いばらさんを注意する。やり込めたとかは思えず、当主代行に介入させてしまったと情けなさを覚える。

 

「お父様」

「いばら、鍛冶師の作品にケチを付ける行為を先に行なったのはお主だ」

「それは……」

「これ以上、見苦しい姿を見せるで無い。非はお主に有るだろう」

 

 何かを言おうとした所で畳み掛けるように言葉を被せた当主代行に、いばらさんは閉口する。改めて言われ、自分の行いがどれ程相手の怒りを買う行為なのか察したのだろうか?

 少し動揺が見えた後、深呼吸をしたいばらさんは俺に向き直る。

 

「失礼致しましたわ。失言のあったこと、謹んでお詫び致しますわ」

 

 そう言って頭を下げてくるいばらさん、潔く謝って貰えたのなら俺も特に言及する事は無い。

 

「謝罪を受け入れます。此方こそ強い言葉を申し訳有りませんでした」

 

 同じ様に頭を下げて謝罪する、コレで意固地になられてたら関係が悪化してたかも知れない。

 まだ一華達も帰らず早い時間なので、当主代行と工房に入る。気になったのか三葉さんといばらさんも付いてきたが、特に問題は無いので言及はしない。

 早速魔導ワードプロセッサを起動して、かなり昔に引いた図面を呼び出す。所謂ドローンだが、見た目は完全に趣味に走った。前世で見た垂直離陸機をイメージした固定された翼の両端に縦軸に稼働するプロペラを付けたティルトロータータイプで、本体は角張ったヘリと輸送機の間の子の様な見た目でやや平たい構造である。折り畳み式の着陸装置(ランディングギア)を前後左右の計4箇所に付けていて、着陸姿勢はドラゴンが翼を休めている姿に見えなくもない。

 

「本来なら明日、アリーナでお披露目するつもりだったんですけど当主代行に意見を聞きたくてお見せします」

「ふむ、この男心を擽る代物は何だろうか?」

「元々は鳥形ゴーレムに代わる新しい方向性の空中用ゴーレムだったんですけど、空中での姿勢制御が難しくて断念していた物になります」

 

 最初期は空力特性や動力の問題で断念していた代物だ。だが、今の俺にはそれらを解決する手段が出来ている。

 

「両翼の先に付けられたこの羽を回転させる事で浮力を得て、更に向きを変えることで機動力として活かす機構です」

「ふむ、強みは何かね」

「空中での姿勢保持ですね、その場で滞空するなら恐らく鳥形ゴーレムより上です。そして、何より格好良いです」

「成る程、格好良さは重要だな」

 

 大きく頷いて同意する当主代行、そんな俺達を見て呆れ顔をするいばらさんと微笑ましい物を見る様子の三葉さん。四葩なら多分、当主代行の反応と同じだろうから姉妹で反応がバラバラだな。

 

「前までコレが実現出来なかった風の影響なんかは『飛翔術式』と『風魔法結界』で解決出来まして、本体の重量はミスリルと『反重力術式』で解決が叶いました」

 

 ティルトロータータイプであるが故に推進装置自体は問題は無い、プロペラ推進器を稼働させて垂直離陸と空中機動を可能としている設計だ。

 

「こうして滞空を可能にし、ある程度の物なら空中輸送が可能な物が完成しました」

「なるほど、つまりコレで儂の大紅蓮は運んで貰えるのだね?」

 

 目がキラキラ光ってて完全に少年に戻ってるな、まぁ俺もこう言うのは大好きな物なので気持ちは痛いほど分かるけど。

 

「あの、タタラ様。お父様から意見を聞きたいのですよね?」

 

 一通り説明が終わったのを確認してからか、三葉さんが疑問を投げ掛けてくる。そう、当主代行が満足している所で悪いが俺は意見を聞こうと思ってコレを見せているのだ。

 

「む、具体的には何を聞きたいのかね。儂には専門的な意見や技術は無理だぞ?」

「いえ、俺が聞きたいのは別の問題ですよ」

 

 俺は今表示している設計図と並べる形で、同じ設計図を展開してから改変していく。ティルトロータータイプでは無く、翼の中にファンを内蔵するリフトファン構造。後部には風の核石を使用した単発式の魔導式ジェットエンジン。

 某機動戦士に明るい人ならばファンファンと言えば通じるだろう構造である。

 

「今の技術で作る場合、こう言ったより趣味的なデザインに走った物も作れるんですよね。後部の魔導ジェットエンジンは偏向ノズルにしていますので、下部へ向けて噴射する事で離陸時の推力と安定性を得る事も出来ます」

 

 この辺はあまり詳しく無いが、前世の海外の映画で見た戦闘機を参考にしている。後部の一箇所だけで安定性が無いのなら、数カ所に小型のを増やして安定させればいいだろう。検証なんて1時間も有れば終わるし、不具合潰しなんて直ぐだ。

 

「先に見せた物との大きな差異としてはその最高速度ですね、後は見た目の好みだけです」

 

 大型ヘリに吊られて運ばれるロボの格好良さの中には、あのヘリのローター音が含まれていると俺は思っている。遠距離からあの音が聞こえて何かと振り向いたら人型兵器の空輸が見える、この一連の流れに燃えない男の子は居ないと信じている。

 

「ふむ、タタラ殿。百聞は一見にしかずという諺も有る……試しに2つとも作って試運転して見せてはくれまいか?」

「……単純にお父様が見たいだけでは?」

 

 真剣な顔で言った当主代行の言葉に対して、いばらさんが鋭いツッコミを入れる。案の定視線を反らした当主代行はボソボソと言い訳を口にする。

 

「いや、その……実際の運転時に閉所だと問題が有るかも知れぬしやはり一つに絞ると後々問題が出た時に詰みかねぬし」

「素直に何方も見たい、でタタラ様は作って下さると思うのですが」

 

 うん、三葉さんの言う通り何方も見たいと言ってくれるなら両方作って現地で実際に稼働させて決める事だって出来る。

 

「うむぅ……タタラ殿、どっちも見たい!」

「分かりました、なら明日実際にアリーナ内で動かして確認しましょうか」

 

 正直に当主代行が言えたので、両方を作成する。使用するのはミスリルと魔導コンデンサー、動力源に『卵』は今回使わない。仮に使用してしまえばアーレムと同じ遠隔操作型では無くサイファーと同種の飛行型ゴーレムになるからだ。

 先ずは内部のフレームを作成する、ローターを稼働させる為に専用のコンデンサーを別途に用意して本体にはコントローラーから『念話』を『感応』する物を設置する。本体上部に設置した翼の内側を通してローターの偏向を行う術式を刻みながらシャフトを通す。ローターは正面から垂直迄の90度のみの可動に抑える、流石に魔法で結界を張って空力特性が前世の現実からかけ離れてるとは言えVTOL機でバックなんてやったら下手したら空中分解しかねない。ティルトローターでは無くティルトジェットなら上手くいくかも知れないが、その為には風の核石が足りない。タチアを留守番にして精霊を狩りに行くか、商会に問い合わせしようかな。王玉なんて使ったら出力過剰で吹き飛ぶのが目に見えてるし。

 続いて後部に垂直尾翼と水平尾翼を可変型にして作る、これは空の英雄譚を魅せるフライトシミュレーションの架空戦闘機の飛竜(X-02〈ワイバーン〉)を参考にした。理由は格好良いのもそうだがその場で旋回をする際に垂直尾翼が折れないようにする為でもある。ミスリルだから折れ難いだろうが、過信も慢心もしない。世の中にはミスリル製の皿を落とした拍子に歪める存在すら居るのだ。

 一通りの動作を行う為の術式を組み、仮説のコントローラーで操作しその通りに動くか確認する。ローターの向きや水平尾翼の動きが正常である事を確認し、問題ないと分かったら外装を施す。

 仕上げにプロペラを付けて完成だ、外装は黒とミスリルの銀色によるツートンカラーだ。雰囲気はかなり重々しい。

 

「ふむ、実物を見ると不可思議な形をしているのだな。特にこの風車はかなり特徴的だ」

 

 ティルトローター式を興味深そうに見る当主代行はそんな言葉を溢す。確かに見慣れなければプロペラというかヘリとかって中々に奇抜な見た目をしているかも知れないな。

 続いてはリフトファン構造の物を作成する。先に作った物とは逆に、機体下部に翼を付ける構造にする。翼の形状はデルタ翼で、参考にしたのは前世で開発した国以外で売られなかった最強と名高い猛禽類(F-22〈ラプター〉)だ。とは言っても翼の真ん中穴を空けて大型のファンを付けるので、元にした機体のような格闘能力など当然無い。あくまでも形状の参考にしただけである。

 続いて後部に搭載する魔導式ジェットエンジンを作成する。

 本体はミスリル、その中心には風の核石を設置して術式による魔力の調整で出力を制御する。噴射口を絞ったり広げたりで推力の調整を出来るようにして、更にノズルを三次元的に偏向する事で運動性を確保する。ジェットエンジン内の核石から更に術式を引き、機体の各所から風を噴射して姿勢を制御するブースターとしての役割を持たせる。操作の難易度は上がるが、ティルトローター型よりも運動性は此方のほうが上だ。何より、この空気を噴射するプシューと言った音と共に姿勢を整える姿は格好良い。

 機体内部に格納するタイプの着陸装置を用意し、着陸時に強い衝撃を吸収する為のサスペンション等も丁寧に作る。

 最期に夜の色に近い濃紺へと塗装して完成。

 

「ふぅ……少し根を詰め過ぎたかな」

「タタラ様、1台1時間では無く2台で1時間は流石に早すぎると思いますよ?」

 

 作業に向ける集中状態を解いて発した言葉に、三葉さんが何処か呆れを混ぜた声でそう言ってくる。

 振り向くと、当主代行はもう我慢の限界と言わんばかりの姿を見せている。その隣に立ついばらさんは顔が引き攣っていた。

 1時間で家を建てているので今更と思わなくもないが、アレはゴーレム達の手伝いも有っての建築時間だったな。そう考えると、一から新規技術の代物を作るにしては大分早いな。

 

 早速完成した小型ヘリの試運転をしようかと思ったが、丁度一華達が帰って来た。3人を風呂へと送り、出て来たら夕飯にする為に準備を始める。一華に玉子焼きを作ってもらいたいが、探索帰りなので今回は見送ろう。久し振りに自分で玉子焼きを作ってみたが、一華の物に比べると大分味が落ちるな。

 

「むむ、ご主人が玉子焼きを焼いてしまっているでござる……」

 

 風呂上がり、夕飯を食べるタイミングで一華がションボリとそう溢す。耳と尻尾も垂れているので、本心から落ち込んでいる様子だ。

 

「マスターのも十分に美味だと思うのですが」

 

 俺の玉子焼きを一切れ口にしたダリアかま小首を傾げながらそう言った。味が問題では無いんだよな、一華の場合。

 

「拙者の玉子焼きをご主人に食べて欲しかったでござるよ」

「一華殿は本当にタタラ殿に食べて貰うのが好きなのだな」

 

 一華の言葉にタチアが苦笑いする。一華にとって幸せとまで言われているし、俺自身が一華の料理を好んで居るので食べたい。

 

「一華、明日の朝は期待していいか?」

「勿論でござるよ!!」

 

 一華の落ち込み様から励まし半分、本気の期待半分に声を掛ければ一気に元気になった。うん、やっぱり一華は笑ってる方が良い。

 そんな一華の様子を見ていたいばらさんは驚愕と言った表情だ。

 

「……一華、貴女随分と明るくなったわね」

「終生の主にめぐり逢えたでござるからな、明るくもなるでござるよ」

 

 虎熊領に属していない為、口調から敬いみたいな物が無くなっているらしい。いばらさんが少し苛ついている様子だが、元から一華の対応はこんな物ではないのだろうか?

 この家で素を出しやすくなっているが、元から敬うべき相手には相応の態度を最低限だが取っている。四葩への態度は主従を越えた親しさの上で出来た物だったみたいだと納得したが、いばらさんが苛立つのはもしかして方言混じりだからか?

 

「一華様、少しよいですか?」

「むむ、なんでござるか三葉様」

 

 ……露骨にいばらさんとは態度が違う気がする、もしや領で何か有ったのだろうか?

 

「ダリア、少し頼みたい事が有るんだがいいか?」

「マスターが頼み事とは珍しいですね、夜伽でしょうか?」

「新しい魔導具の操作を覚えて欲しかったけどキャンセルでいいな」

「お二人にはそのやり取りを挟まないといけないルールでも有るのですか?」

 

 俺の頼み事に対して夜伽を上げるダリアに用件のキャンセルを言い渡せば、タチアがコメントに困ると言った表情でそんな事を言ってきた。確かに殆ど鉄板みたいなやり取りでは有るな。

 

「魔導具の操作を、ですか」

「ああ、覚えられたなら都市祭で1日時間を貰いたい」

「成る程、デートの約束ですね?」

「報酬がデートでいいならそうするが」

「……ふぇ?」

 

 俺の実質了解の言葉に、ダリアは思考が止まったのか変な声を上げて固まる。都市祭のデートくらいはお安い御用だ。

 

「どうした?」

「いえ、その……マスターがデートを認めてくれるとは思って無かったので」

 

 戸惑う様子から聞いてみれば、いつもの様に断られると思っていたらしい。いや、夜伽とか言われなければ受けるぞ。

 

「まぁ、この後の用件はそこ迄色気が無いけどな」

「そうなのですか?」

「ああ、ちょっと新機軸の魔導具の操作を覚えて欲しくて」

「今すぐ取り掛かりましょう!!」

「食い終わってからだ」

「はい」

 

 興奮気味に立ち上がるダリアに注意をすれば、静かに席に座る。一連の流れを見ていた三葉さんはやや困った表情をしていた、夕飯を作ったのだからこういう時は怒って良いと思いますよ。

 

 

 食事が終わり、食器を洗い終えた後にダリアと一緒に庭先に出る。楽しみであるという雰囲気を全身から滲ませるダリアの前で、今日作った念動VTOL機を2台取り出す。

 

「コレがダリアに試験を頼む魔導具、と言うか空中浮遊型のアーレム亜種である魔導VTOLだな」

「……マスター、アーレムとは?」

「……そう言えば、ダリアにはアーレムの話をしたこと無かったか?」

 

 思い返してみて話した記憶が無い。アーレムの説明をすれば、案の定というかダリアの目がキラキラと輝き始める。

 

「マスター!」

「分かった分かった、後で作ってやるから。取り敢えずこれの操作を覚えてくれないか?」

「Yes my Master!!」

 

 元気よく応えたダリアに苦笑しつつ、念動VTOL機のコントローラーを渡す。通常のアーレムはハンガーと充填器を兼任した物になるが、此方は完全にコントローラーとしての役割で独立している。形としてはフライトシミュレーションでお馴染みであるスティックコントローラーで、基本操作もそちらに合わせて右手側のスティックを引けば上昇で前に倒せば下降である。左手は速度調整の為のスロットルレバー方式で、プロペラの回転数は此方で制御されている。

 一度ダリアに説明の為に実演するが、大分難易度が高い。前世じゃ高くてヘリのラジコンとか触った事が無かったので想定外だ。……なのだが、俺はどうも機巧乙女という存在を甘く見ていたらしい。

 

「マスター、見て下さい!」

「……VTOL機ってあんな自由自在に飛べるもんなんだな」

 

 まるで妖精とでも踊るかの様な優美さで、ダリアの操る念動VTOL機は宙を飛んでいる。最初こそもたついていたのだが、5分もすればコツを掴んだらしく前世では戦闘機でしかやらない様な空戦機動を披露している。なんでVTOL機でクルビット機動とかやれてんだ、普通は失速して墜落するか機体の耐久性を越えてバラバラになるだろうに。

 しかし、コブラからフックそしてクルビットと特殊な機動をやってるがどうも一つだけ見てないものが有る。

 

「インメルマンターンはやらないんだな。いや、アレはVTOL機でやるもんじゃ無いけど」

 

 そもそも戦闘機の空戦機動はVTOL機でやるものでは無いのだが、それでもダリアが俺からイメージとは言え最初に教わった技術だ。最初にやると思ったら全然やってないのは違和感がある。

 俺の言葉を聞いたダリアは少し恥じ入るような雰囲気で言葉を紡ぐ。

 

「その……あの機動はマスターから初めて教えてもらった物なので、軽々しく出来ないと言いますか」

「……そうか」

 

 何となくダリアの頭を撫でてしまう、恥ずかしそうに俯いてしまったがVTOL機は問題なく飛んでいる。やはり魔導具に関しては意味不明な事が出来るんだな機巧乙女は。

 余談ではあるが、空を縦横無尽に飛び回る魔導VTOL機を当主代行に見られて案の定欲しがられた。

 

 

 魔導VTOL機を回収し、明日のアリーナでの実演に向けての準備を終えた俺は工房に入る。虎熊家の人達への鍛冶実演の前にダリアのアーレムを作る運びとなったのだが、ダリアが真っ当な依頼をする筈も無い訳で。

 

「私の『トリテレイア』を完全再現しましょう!」

「却下だ」

 

 魔導鎧『トリテレイア』の完全再現は出来なくは無い、技術的に見れば挑戦してもいいとすら思える。が、アーレムでアレを作った結果ミニダリアが出来てしまうとアリーナが崩壊する。

 つか、調子に乗ったダリアが大会にでも出たら無双する未来しか見えない。ダリアに関しては大会出禁も視野に入れるべきだろう。

 

「そんな、何故ですかマスター!?」

「何が悲しくてお前の姿を模したアーレム作らなきゃならんのだ。美少女アーレムとか10年くらい先で出て来るべき概念だろうが」

「……私は美少女扱いなのですね」

「言動は兎も角、見た目は間違い無く美少女だろお前は」

 

 俺の言葉にダリアは視線を反らす、顔が赤くなっているのは恥ずかしがっているからだろうか?

 

「仕方有りません、『トリテレイア』は諦めましょう。代わりにマスターの前世で有った女性型でゴーレムに向いたデザインをお願いします」

「それはそれで難易度高いな」

 

 ダリアの依頼に頭を悩ませ、天を仰ぐ。女性型のロボとなると幾つか浮かびはするが、流石に元祖スーパーロボのヒロイン機(アフロダイA)その後継機(ダイアナンA)を出すのはダリアの美意識に合う気がしない。というか、妹分に渡すなら格好良いのが良い。

 と、妹というワードで思い出す。某宇宙の騎士のリメイク作品(テッカマンブレード)に出て来る悲劇の妹キャラ。

 早速作成に入る、素材は現時点で主流となっている魔鉄だ。

 アーレム本体を最初に作成する。俺が今まで作ったアーレムに比べてより丸みを帯びたデザインで、やや華奢に作る。胸元と肩に太腿を少し盛り、頭部をダリアの髪型に似せたメット状に作る。本人より胸部装甲が厚い、というか全体的に肉感が増した雰囲気になってしまった。まぁ、本人が憧れてるからいいだろう。

 続いてはコントローラーの作成だが、元ネタから引っ張るとクリスタルになる。それだとあまりにも操作が難しいので、戦闘機能付き変身用の相棒(ペガス)を元にする……此方も此方で大概か。

 再現するなら徹底的にしたいと思うのは悪い癖かも知れない、第一『ゴーレムクラフト』で作り出すゴーレムは基本作った当人にしか従わない。今は(・・)俺でもその法則を越えられていないのだ。仮にゴーレムとしての側面を持たせたとして、俺が死ねば機能を停止させてしまう。動かなくなった相棒を側に置いたままでは、ダリアもきっと淋しくなってしまう。

 そんな事を考えていると、ダリアが心配そうな表情を見せる。まぁ、殆ど鉄面皮のままで変わってないように見えるのだが僅かに眉尻が下がっている。まったく、俺は情けないマスターだな。1人で解決出来ないなら、仲間を頼ればいいのだ。

 

「なぁ、ダリア。相談なんだがな」

「はい、よ」

「夜伽って言ったらコレを作るの辞めるな」

「……なんでしょうか」

 

 勢い余って言うか微妙なラインだったな、まぁいいか。

 

「ダリアのアーレムのコントローラーをどう作るかなんだが」

「ふむ……先程の特殊ゴーレムと同じと予想しましたが」

「コイツらはちょっと特殊でな、コントローラーにアーレム本体への魔力充填機能を持たせてるんだ。で、ダリアのはこう……クリスタルみたいな見た目のと外に別の大型鎧みたいな側を被せるかで悩んでてな」

 

 言いながら説明の為に魔導ワープロを取り出して図面を描画する、クリスタルタイプの真ん中から割れて出て来る構造に目を輝かせるダリア。

 

「これは神秘性も有っていいですね!」

 

 そんな大興奮のコメントを貰う中、申し訳無く飛行機能持ちの可変大鎧型キャリアから華奢なアーレムが出て来る構図を見せる。途端にダリアの表情筋から活動が無くなり、瞳孔が開い(ハイライトが消え)た。

 

「……どうする?」

「後者で。ですが、マスターは何かに悩んでいましたね?」

「ああ、コレを実用化するには問題が有ってさ」

 

 魔導VTOL機と同じ感覚で大鎧を作り更にアーレムを搭載するという構造である関係上、アーレムを二機分の魔力を必要とするので充填が非常に遅くなる。

 

「む、こういう時こそ『浮身石』や『卵』の出番では?」

「それらを核として使うとなると、アーレムじゃなくてゴーレムになるんだよ。そうすると、俺が死んだ後にダリアが使えなくなっちまう」

 

 俺の言葉を聞いて、ダリアの顔が少し歪む。やはり、俺の死に関する話題はダリアにとっても嫌なものらしい。

 

「それは……マスターの喪失に直面させられるのは辛いです」

「うん、俺もそれが怖くてダリア用のゴーレムを作れないんだ」

 

 形見は魔導剣『フォルジュロン』が担ってくれる、俺の渾身の一刀は易々と折れることは無いと自負がある。しかし、魔導具全般はそうと言えない。一つずつ動かなくなっていく魔導具達を見て、ダリアの心が上げる悲鳴は如何程のものか?

 俺は前世で死んだ際、両親と兄弟を遺している。覚悟も無く通り魔的に死んだから薄いが、今生では誰かを置いて逝くと言う事に恐怖心を持っている。

 一華には言っていないが、正直なところ一華と子供を置いて逝く事がとてつもなく怖い。ダリアとタチアにも覚悟して貰うが、俺を大切に思ってくれている人達を置いて逝く事はとてもとても怖いんだ。

 エテルと仲違いした為に大分狂ってしまったが、俺は本来ならとても死を恐れる人間だったらしい。たった一つの出会いと別れでその恐怖心すら見失い再確認する、なんて愚かな生き物なのか。

 

「……それでしたら、アーレムの核と供給源を分けてしまうのはどうですか?」

「なに?」

 

 少し思考が反れた後にそんな言葉を貰う、核と魔力の供給源を分ける……成る程。

 早速ダリアの言葉を設計図に起こす、中心に『浮身石』を据え反重力術式の恩恵と魔力の回復機能を活用する設計案。

 次々と出来上がる新しい型の図面にダリアも目の輝きを強くする。なお、その瞳孔は開い(ハイライトは消え)たままである。なんだこの矛盾した目。

 出来がっていく輸送機兼コントローラー(ペガス)にダリア好みのデザインを取り入れつつ、設計図を完成させる。

 そこからは直ぐと言えた。素材は競技用を考えずに総鍛造ミスリル製だ、ダリアからの要望に応えた形だが問題はアーレムよりも重くしなければバランスが悪くなって倒れてしまう事だ。なので、鍛造しつつもそれがアーレムより重くなるように調整してミスリルを鍛える。何だか最近、手に持ったインゴット内の不純物の比率を『鑑定』無しに判別出来るようになってきた。これも成長か?

 そうして打ち上げた鍛造ミスリルを『クラフト』と『ゴーレムクラフト』で加工する、アーレムの1.5倍程の大きさになった大鎧は内部でアーレムを固定する際には大鎧の五体にアーレムの五体を合わせる形にした。大鎧の前面が開いた後に、固定用アームが外れてアーレムがリフトオフする仕組みである。

 問題無く空を飛ぶ為に、背面の翼に『飛翔』術式を刻み更に残った最後の風の核石を後ろ腰辺りに付け両足の裏から風を放出して機動力を発揮できるようにした。

 最初こそ宇宙の騎士の愛馬(ペガス)を踏襲したデザインの筈だったが、所々スマートにした結果リモコンロボの金字塔の続編(鉄人28号FX)みたいなデザインになってしまった。正直、コレで殴りに行った方が強そうまである。……これを見られたら、今度こそ法務長渾身の駄々っ子ダンスが見せ付けられるかも知れないな。

 出来上った2体1組のアーレムを、初めて見る程に輝く笑顔で見ていたダリアが振り返る。

 

「マスター、この子達の名前は!?」

 

 まんま名前を借りようかとも思ったが、何だか悲劇に見舞われそうで少しだけ捻る。

 

「なら、中身のアーレムが『ヴァルキュリア』で大鎧の方が『ペガサス』っていうのはどうだ?」

「成る程、戦乙女と騎乗している天馬ですか。あのムカつくトリモドキを思い出しそうですが、アレよりも遥かに美しいので問題無いですね!」

 

 印象を払拭しきれなかったみたいだが、名前を気に入って貰えてよかった。

 尚、身内贔屓で超技術の塊である専用アーレムハンガーを作った事を後悔するのは割と近い未来だった。




此処最近、エロ小説なのにエロが無いレーベル詐欺が続いて申し訳有りません。エテルが居なくなると途端にレーベル下がる……流石の夢魔です。

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。