既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント発生中。
唐突ですが、アンケートを次回の更新で締めようと思います。
タチアにここ数日分の性を放ち続け、すっかり夜が明けてしまった。何回射精したのかは自分でも覚えてない、一回一回のスパンは短いのだがその分を回数で補っていたような気もする……コレで『性魔術』未使用と言うのが我ながらどうかと思う。
タチアは俺のベッドの上で疲れ切って寝ている、その腹部は俺が出した精液で若干膨らんで見える。うん、多重の意味でヤリ過ぎた。避妊とか考えず全部
そうなった場合、俺は責任を取らなければ成らない。成らないのだが……タチアに拒否されてしまったらどうしようか?
最悪、養育費を払い続けるくらいはさせて欲しいものだ。
疲れ切ったタチアを起こさないようにして、夫婦風呂で諸々を洗い流す。なんというか、溜まっていた物を出したせいか身体と気持ちそして睾丸が軽く感じる。
身体を洗い終えて台所へ向かえば、俺より先に三葉さんが朝食の準備をしていた。
「おはようございます三葉さん」
「あら、おはようございますタタラ様」
家事をする為に髪を結っている為、そのたおやかな笑顔を惜しげもなく見せて挨拶を返してくれる。美人に微笑まれる事に嬉しさを覚えるのはなんとも雄と言った反応だろうな。
「屋敷にも有りますが、この魔導炊飯器は大変良い物ですね。米を洗い水を入れれば後は自動で美味しく炊ける……人の生み出す叡智の結晶です」
前世の知識を応用して作ったものなので、その言葉がそのまま当て嵌まるのがなんとも面白い。
「これを作ったのもタタラ様なのですよね?」
「ええ、まぁ……とは言えヒントは他に有りましたから俺は形にしただけですけどね」
前世知識によるカンニングが有るのだから、俺が褒められるのは少し違う。三葉さん達には転生者で有ることを伝える気は無い、今のところと付くが、軽々に伝えるにはあまり良い情報では無いし、何よりもエテル達の反応が頭に過って伝える気が起きない。
会話は早々に切って台所に並び立つ、三葉さんは味噌汁を先に作っていたようなので俺は主菜を作ろうか。当主代行が来てから和食が増えたのだが、やはり白米と味噌汁の匂いはシンプルに腹が減る。さて、そうなると王道の焼き魚がいいだろう。
人数分の魚を取り出して捌き塩を振り、溶岩プレートの上に足付きの網を起きその上に魚を乗せて火を入れる。遠赤外線で中身が確りと焼けて旨味が身の内に閉じ込められる、炭焼きと同じ焼き加減になるのでコレが美味い。焼かれ余分な脂が溶岩プレートに落ちて蒸発する音が食への期待感を上乗せする、はしたないが待ち切れずに摘み食いをしたくなるな。
そうして焼き加減を見ながら人数分の焼き魚を焼き終えれば、集中している間に台所へ入って来ていた一華が玉子焼きを焼いてくれていた。
「あ、おはよう一華」
「おはようでござるよ、ご主人」
気付いたので挨拶をすれば、楽しそうに笑って一華が返してくれる。尻尾が俺の背中を軽く撫で、その後は玉子焼きに集中する。
邪魔に成らないようにそっと離れ、冷蔵庫の中の常備菜である一華の金平牛蒡を小鉢によそってから食卓に次々と先に並べていく。
一華も焼き終えた玉子焼きを切り分けてから小皿に乗せて食卓へ持ってきてくれたので、朝食の準備は完了だ。
「ふむ、魚もいい塩梅に脂が乗っているな……釣ってきて正解であった」
「本当、陽出國から持ってきて頂いて助かります。白米に味噌汁と来たら焼き魚ですからね」
朝の鍛練を終えた当主代行の日本人なら納得しか無い言葉に頷きながら、解した身を白米と共に口へと運ぶ。固めに炊かれた白米は噛み締めれば奥から閉じ込められたほのかな水分と旨味が溢れ、そこへ魚の脂の旨味が混ざり朝から気分がアガる極上の味わいだ。
味噌汁は白味噌、具はキャベツのみとシンプルながら出汁も確り取られていてスッキリとした味わいだがキャベツの甘味と煮干しの旨味が確かに主張してくる。
「美味い……」
「ふふ、ありがとうございますタタラ様」
しみじみと感想を零せば、三葉さんが楽しそうに礼を言ってくる。同じく料理を嗜む者として美味いという感想は伝えなければ無作法と言うもの、三葉さんも俺の焼いた魚に目を輝かせて美味と感想をくれるので嬉しくなる。
金平牛蒡も良いが、やはり手間をかけて朝から焼いてくれた一華の玉子焼きも美味い。ふわふわとした食感に、僅かな塩だけで調えた味は卵自体の味をコレでもかと引き出してその濃厚な旨味を伝えてくる。思わず口角が上がる俺の顔を、一華が幸せそうに見ている。
尚、寝坊しているダリアに昨夜抱き潰してしまったタチアはまだ食卓に着いていない。流石にやり過ぎたと反省している。雛菊さんの食レポはスルーの方向である。
「タタラも料理が出来るのよね……」
「一人暮らしの時期も有りましたしね、それでなくとも『クラフト』スキルの影響かこの手のは上手く出来たんで母さんを助けるつもりで積極的にやってました」
焼き魚を摘むいばらさんの言葉にそう返す。
台所の改装もやっていたが、一番助けるのは労働を肩代わりする事だと思って積極的にやっていた。母さんが褒めてくれたが、当時の俺は母さんの料理に味で勝てなかった。思い出の味は永遠に越えられない壁になっているが、きっとそれは幸せな事なんだと思ってる。
「当主代行、今日もお付き合いお願いしますね」
「うむ、やはり前準備は着実にせねばならぬからな」
尤もらしい事を言っているが、その目はアーレムの事で頭がいっぱいなのが見て取れる。仕方ないよな、男の子だもん。
「一華、今日はダリアも一緒に連れて行こうと思ってる。探索するならあまり潜り過ぎないようにして欲しい」
「むむ、そうなればある程度の階層でスキルレベルを上げる事と能力上昇のアイテム集めで終わらせるでござるかな」
俺の言葉に一華は方針を即座に決める、タチアと二人で潜るなら『ムゥ
「わふ……おふぁようございまふ」
と、そんな事を考えているとダリアが起きてきた。あいも変わらず眠気眼で、髪も寝癖で跳ねている。そんなダリアを手招きした三葉さんは、ダリアを近寄らせた後に櫛を取り出してその頭を整えてくれた。なんというか、お嬢様とは思えない世話焼き具合だ。まぁ、家事代行の仕事に目を輝かせるような人だし根本が世話焼き体質なのだろう。ダリアも髪を整えられる姿は何処か心地よさそうだ。
「ダリア、目を覚ませ」
「うにゅ……いえすまいまふたぁ」
声を掛けるが、欠伸混じりの返答に苦笑が浮かぶ。仕方ない、カンフル剤を打つか。
「今日は昨日の魔導具を実際に使う状況で飛ばす予定だけど無理そうだな」
「そのような事は有りません、今すぐでも出られます」
「先に飯食ってからだ、いいな?」
魔導具の単語が出た瞬間には完全覚醒したダリア、筋金入りである。まぁ、実際にアーレムを動かす所を見せたりと楽しませてやれる事は多いだろう。
「……おはよう、ございます」
そして、最後にやって来たタチア。二階でシャワーを浴びて来たのだろう、身綺麗になっている。が、まだ上手く力が入らないのか脚が震えている。
「おはようタチア」
「おはようでござるよタチア……随分と堪能した様子でござるな?」
横目で俺をジトッとした目で見てくる一華に、思わず顔を逸らしてしまう。向けられたその目は自分にぶつけて欲しかったという感情と、肚に生命が宿っている故に控えられた事の納得し難い感情が見て取れた。口や胸を使わせて貰えば良かったかな。
「ええ……目的は、果たせませんでしたが」
「ご主人にソレを頼むのが間違いでござるよ」
「はい、本当に私はヒトを理解するのが苦手です」
自嘲交じりのタチアの言葉に、何と言うべきか迷う。啜った味噌汁の味が、少し苦く感じた。
朝食を終え、俺と当主代行そしてダリアの3人はアリーナへと向かう。タチアは直ぐに動くのは無理で、午後から探索に出るとの事だった。一華はそれ迄はバカの鍛練を監督してくれるとの事で、安心して出発が出来た。
糞野郎は昨日に続いて参加するいばらさんに嫌な顔をしていたが、刀を貶めた事の謝罪を受けて俺に視線を向けつつその謝罪を受け入れた。尤も、その後直ぐに煽り合いになり即座に激突していたが……一周回って仲良いだろお前ら。
そんな日常を残して、俺達はアリーナの前に立つ。そして俺はインベントリからゴーレム達を出して、眼前に整列させる。
「工匠長より達する」
可能な限りの厳格さと威厳を込めて、ゴーレム達に声を掛ける。
「これより我々は、この『アリーナ』を完成する作業を実施する」
一糸乱れぬ姿で俺に注目するゴーレム達の視線を受け、俺も背筋が伸びる。こう言う檄文を飛ばすのは苦手だが、それでもしっかりとやらないと駄目だ。
「期せずして昨日の作業に戻った格好だが、これは都市長の命令によって行う作業ではない」
思えば都市の最高権力者からの依頼が無いのに、次期とは言え最高のクラフターと流通や商売に関わる最高権力者が揃って仕事をしてるのは物凄い事ではあるな。
「生き延びるため、『ワールドウィンド』の中に『アーレム』が知れ渡るのを成功するため、我々が独自で行う作業である。『ナーハズヒト帝国』が築いてきた伝統と、陽出國が齎す新たな可能性に揺らぐ未来。二つが合わさることでどうなるかは、私にもわからない」
別の文化が交流する事はかなり難しい事象だ、それは前世で学んできた歴史からして嫌と言うほど分かる。
「その未来を生きるのは我々ではなく、今を生きる若者たち」
「お主も若者側であろう」
当主代行にツッコミを入れられるが、とりあえず無視。
「そして、これから生まれてくるまだ見ぬ子供たちだろう」
脳裏に過ぎるのは一華の顔、その腹に宿る俺の子供だ。
「彼らの未来を明るくするためにも、我々は……生きて帰らねばならない」
「死ぬの!?」
なんか昨日と同じツッコミを入れられたような気がするけど無視だ無視。
「出来上がった『
生きる事で精一杯なこの世界で、心を慰撫する娯楽としての可否。ソレをこの世界に問いかける為に、先ずはこの『ワールドウィンド』にて実行する。
「クラフターとして、一人の大人として、諸君らの健闘に期待する!」
先頭に立っていたリーダーが覚悟を決めた顔で進み出て、その後ろのゴーレム達もそれに続いてアリーナへと向かっていく。
「ってオイ、なんでお前まで続こうとしているダリア!?」
「……はっ、つい!?」
どうやら無意識だったらしいのだが『クラフト』スキルが無いダリアが混ざろうにも多分、作業効率は比較に成らないくらいに悪いと思う。
「マスターの演説を聞いたら、どうしてもアレに続かなければ成らないと思ってしまいました」
「もしかして、俺をマスターとして登録してるからか?」
「可能性は非常に高いですね」
「正直、ツッコミは入れたが儂も参加したくなったぞ」
恐るべし某機動戦士の一角獣にて有数の名シーンにて行われた演説、やる気を煽るのに凄まじく効果的だ。
アリーナ内へ入り、バトルフィールドに向かう。到着したが商会長の姿は無く、まだ出勤前なのかも知れなかった。さて、ダリアに感覚を掴んでもらうか。インベントリから魔導式VTOL2機を取り出して、フィールドの上に置く。コントローラーをダリアに渡して、序にその場で空輸する為の仮の箱を作り魔導式VTOLの横に置く。
「ダリア、先ずは両方の機体をこの空間内で試そう。何方からでもいいから、軽く飛ばしてみてくれ」
「Yes my Master」
俺の言葉に従って、ヘリを起動させるダリア。ティルトローターのプロペラが回転を始め、あの独特の空気を叩く音が空間を満たす。ゆっくりと持ち上がる機体の姿に胸が高鳴っていくのが分かる。何度見ても、この離陸の瞬間と言うのは胸が高鳴るな。
「おお……と、飛ぶのかタタラ殿!?」
「ええ、飛びますよ」
そう言えば、庭先で飛ぶ様子は実際には見てなかったか?
プロペラが空気を裂く独特の音を響かせて、ダリアの操作のもとVTOL機が自在に空を飛ぶ。慣らしを兼ねているのか、稼働時間と空中機動もそこそこにティルトローター機を着陸させる。続いてティルトウィング機を機動させるダリア、フィンの回転するプロペラよりも高い音域の可動音と共に機体が浮き上がる。
「タタラ殿、タタラ殿!」
めっちゃキラキラ光る目でVTOL機を見ながら興奮した様子で俺の名前を呼んで肩を叩いてくる当主代行、地味に痛い。
「アレ、カッコイイ! 儂、欲しい!」
「気持ちは分かりますけどそんな子どもみたいに言わないで下さい、というか何で片言?」
小型のジェットエンジンから噴き出す空気に押され推進するティルトウィング機を見て大興奮している、本当に子供の心を忘れられないな……俺も人の事を言えないが。
「マスター、屋内で飛ばすと機体の生み出す気流でバランスが取りにくいです」
テスト飛行をしてくれているダリアから、そんな言葉を貰う。
「そうか、屋外と何方が難しい?」
「昨日の庭先で行った試験機動時はほぼ無風でしたので、そのケースなら屋外です。ただ、屋外の場合ある程度風が発生する場面も有りますので基本的には屋内の方が簡単になると予想します」
確かに横風に煽られたら屋外の方が難しいか、コレは少し変えるべきかな。
「仕方ない、『浮見石』を使用してプロペラとフィンを外そう」
『却下』
と、乱気流を発生させる構造を止めようとしたらダリアだけでなく当主代行からも却下された。この間、僅か0.001秒と言ったところか……宇宙刑事の蒸着より早くねぇかな。
「操作の難易度など些事、格好良さに勝る優先度は有りません」
「然り。この音無くば登場に際し誰も気付けぬ、音に疑問を持ち自ら追い発見するからこそ未知の姿に興味をより強く抱くのだ」
うん、二人とも大分ガチだな。コレは流石にVTOL機の改造は見送りか。
「成る程、アレが空輸用の隠し玉なんねタタラはん」
そこに今まで居なかった人物の声が割り込む、視線を向ければ昨日と同じジャンプスーツ姿の商会長と貴族服姿の外交長が居た。
尚、二人の視線は空を飛ぶVTOL機に釘付けである。
「おはようございます、商会長に外交長」
「おはようさんね、タタラはんに虎熊はん。それと、はじめましてやね?」
「初めまして、操作中に付き無礼な姿で失礼します。私は機巧乙女にしてタタラ・ジュロンの義妹のダリア・ジュロンと申します」
VTOL機の操作に意識の大半を割きながら、商会長に挨拶するダリア。商会長は機巧乙女という申告に眉を潜めるも、そんなダリアがVTOL機の操作に集中している事に対してそれだけ扱いが難しいと理解してくれた様子だ。
「外交長もおはようございます」
「ふん、タタラ・ジュロン次期工匠長は随分と礼がおざなりのようだ」
「……VTOL機に視線向けっぱなしの人に言われてもなぁ」
縦横無尽に空中を舞うティルトウィング機から視線が一切ブレない外交長に、はたしてどんな感情を抱けばいいやら。
「そうね、ボクも同意見よ。タタラはんこの後法務長と息子はんも来んね、お披露目式のリハーサル……今日んウチにやんね」
言ってから、視線をVTOL機へ向ける商会長。やはり空を飛ぶ物は男の子の心をガッツリ掴むんだな。
VTOL機を入れ替えて合計にして十数分間のテスト飛行を終えたダリアは、自らが動かしたVTOL機の具合を見ている。可動部を特に確認していて、自身の操作がどれだけ影響を与えたかを読み取っている。
「マスター、レポートを夜に提出しますので改良をお願いします」
「分かった、楽しみにしてる」
魔導具に向き合うダリアは真剣そのものだ、それ故にこの手の仕事は信頼出来る。
「さて、では外交長。本日お呼びした理由も含めてご説明します」
「結構、既に商会長から概要を手紙で送られています。陽出國との国交樹立をこの建物で行うイベントにて市民に告知する、この外交長たる私に言わないのは業腹です。が、周知させる上では有効と認めましょう。ただ、この建物に入れなかった市民への告知を如何にするか、そこを確認させなさい」
「ふむ、それは儂もお聞きしても?」
新たに聞こえた声の方向を見れば、貴族服姿の法務長と成金さんが並んで居た。そして――
「私にも詳しいお話をして貰おうかしら?」
この都市の最高責任者、都市長も入ってくる。
「可及的速やかにお願いするわね、ストレスで死にそうなのよ」
カラムスさんが押す車椅子に乗った状態で。いや、そんなにボロボロなの都市長?
「アンタ、外交長伝にこのイベントの話をされた私の気持ち……分かるかしら?」
「いえ、その……」
「外交関係の最高責任者として外交長に話をするより先に、都市関係の最高責任者である私に言うべき事じゃないのかしら?」
「はい、その……」
「どうせ私が前に言った報告書を全部都市祭後に回せっていう言いつけに縛られたんでしょうけどね……はあ、本当貴方は気遣いの方向音痴なんだから」
「それで、商会長から以前より言われてた土地に新規の公共施設を建てるって話で、この土地を使うってのは了承したわ。企画書では競技施設と出ていたのだけれど……このステージは何なのかしら?」
さて、都市祭後に報告する筈だったアーレムについての説明をしなければ成らない。申し訳ないが、成金さんにも手伝って貰う必要が有るので心の中で平謝りしながら法務長と商会長、そして成金さんと当主代行に其々のアーレムをステージ上に出してもらう。
そのままデモンストレーションとして動かして貰えば、都市長が盛大な溜息を吐いた。
「他人に譲渡できる超小型ゴーレム、しかも遠隔操作式って何をどうしたら作れるのよ。都市祭について集中しなきゃならないタイミングで技術的に不可能である事象を突破するなんて」
「あっと……魔導コンデンサーについて覚えてますか?」
さて、技術的に本来不可能であった事象を説明する上で同じクラフターでなら通じる事がある。
「コンデンサーって、確か前に話してた家庭用の魔力の貯蓄装置よね……まさか」
俺の言った代物一つで、今は俺に譲ったがかつて都市内最高のクラフターであったこの人ならコレだけで理解をして貰える。
「蓄充填式のコアで本来のゴーレムに必要なコア出力を
「流石は都市長、理解が早い」
冗談でも何でも無く、アーレムについての理屈をこの短時間で理解出来るのは凄まじい。猫娘さんは俺の説明を受けてなお理屈を理解しきれて無かった、流石としか言いようが無い。
そんな俺の賛辞を受けた都市長は額に手を当てて盛大に溜息一つ。
「カラムス」
「はっ」
一言命令した都市長に従い、超高速で接近してきたカラムスさんがインベントリから何かを取り出して思い切り振り下ろして来た。
スパンと高らかな音を響かせて叩かれる俺の頭、大して痛みは無いが反射的に痛いと口からこぼれる。目を向ければ、カラムスさんの手には薄っぺらい革製のスリッパが握られていた。
「この、お馬鹿っ!!」
一瞬大きく息を吸った都市長は、それはもう大きな声で俺を叱る。
「なんでこんな今迄の常識を破壊する物をポンポン作ってるのよ、それとここに来るまでに見えたけどアンタどんだけゴーレム作ったわけ!?」
「ま、前に作ったのと合わせて合計201体です」
「多すぎんのよ! アレ、ミスリル製でしょ!?」
「と、統括リーダーはミスリルをベースにアダマンタイトとオリハルコンも使ってます!?」
「余計に、トンデモじゃない!!」
都市長が叫ぶ度にカラムスさんがスリッパを振り下ろしてスパンといい音がなる、ちょっと色々申し訳なさ過ぎて抵抗する気になれない。
「1カ月報告控えさせようとしたらなんで何百倍の爆弾になるのよ!?」
「そ、そんなにいっぱいは作ってないですよ!」
「じゃあ聞くけど、常夜の国から来た王家の関係者に渡した物で変なの無いでしょうね!?」
「そんなの『エリンジウム』のカスタム品とか、ダルマさんの斧と同じ造りの剣とかしか作ってないです!!」
まぁ、『不死の王』の銃は整備と言いつつ新造に近い事はしてるけど。でも造ったわけでは無いし、なんだったら自爆システムを取り除いてるくらいだ。
しばらく彼是と騒ぎ立てる俺達を、商会長を筆頭としたその場の面々はポカンとした表情で見てくる。まぁ仕方ないか、都市長のこんな反応は俺と関わった時くらいしか見せないし。
そうして肩で息をする都市長が深呼吸して息を整えた後、真面目な顔をつくる。
「……それで、この仰々しい施設まで作って何をしようとしてるのよ?」
その問いに対して俺も姿勢を正して説明を始める、まぁそこ迄深い意味のある話でもないのだが。要約すれば新しい娯楽を広めて人生に少しでも潤いを齎すとかそんな物なのだ、例えこのアーレムがそのまま軍事転用が可能な代物であっても。
俺の話を最後まで聞いた都市長は真剣な目で俺の目を見てくる、コレは問いかけだ。俺のアーレムが数多くの命を奪う兵器になりえる事、それに気付いているかと無言の問い掛け。俺も真っ直ぐにその目を見詰め返して答える、初めから理解していると。
一分か、もしかしたら十数秒かも知れない。時間感覚が狂う程に濃密な意思の確認は、都市長の溜息で終わりを迎えた。
「はぁ……仕方ないわね、此処での国交樹立の宣伝も含めて認めるわ」
その言葉を聞いて、場に安堵の空気が流れる。非常に緊張してしまったが、都市長は俺達の計画に利を見た訳だ。コレに安堵するなと言うのが無理だろう。
「で、当日にこの場へ来れない人達にはどう伝えるつもり?」
「ええ、ちょっと此処の設備も使って説明しますね」
都市長に答えてから、俺は天井から吊り下げられている大型モニターにカメラの画像を映して説明を開始する。
「本来は長距離通信用の術式ですが、短距離用に組み直す事で魔力の消費量を従来の1/5にした術式です。その分出力が下がって遮蔽物には滅法弱いんですが、此処からでもこの都市内くらいなら問題無く使えます」
「……然りげ無くとんでもない事をやらかしてるけど、今はいいわ。それで、この通信と言うか『念話』術式を都市内で使うにしても頭の上にあるような画面の設置場所なんて中々に無いわよ?」
流石は都市長、俺がやりたい事を簡単に理解してくれている。
「それと、都市内の公共施設内への設置には内政長の許可が要りますな」
そこへ補足を入れてくるのは法務長だ。俺がやりたい事を正式に行う為に誰から許可を貰うべきなのかを伝えてくれているので、本当に助かる。
「恒久的な設置ではなくて、一時的な設置に止めようと思います。そこで用意するのは頭上のモニターの1/4程の大きさの移動式モニターにします」
「ふむ」
「成る程ね」
俺の言葉を聞いて法務長と都市長が理解を示してくれる、見渡すと商会長そして外交長も理解してくれている。
「モニター内に魔石をセット出来る様にして、外部からの供給は断つ形で携行性を高め更には設置場所を選ばない形式で作成します。設置場所は都市祭にて特に人が集まる場所、それも複数箇所に置くようにして視聴出来る人数を増やします」
話を聞いている当主代行は興味深そうな表情で、一般人な成金さんはとんでもない事を聞いているのではと焦り気味。カラムスさんは初っ端から理解を投げ捨てて自分の胃を守っている様子だ。
「効果的に視聴数が増える場所はアドバイスをいただきたいですね」
「良いわよ、必要数を後で送るからその分を用意してちょうだい」
「待って頂きたいですな、この都市内通信……このよく分からない競技でしか使えないのであれば無用の長物でしょう」
即決に近い早さで判断を下した都市長、それに対して外交長が異を唱える。いや、敢えて思い付く不平不満を出して利用法の有無を確認するつもりかな?
「いえ、映像を発信する魔導具を別の場所にも用意すれば中枢からの知らせを都市内全域に伝える事が可能です」
「でしょうね、タタラが作るならそれくらいの汎用性が有って当たり前だわ。なんなら、他にも何か考えてるでしょう?」
「期待されても困りますよ、せいぜいが執務室か自宅に通信設備を用意して会議を可能にするくらいです」
所謂オンライン会議てあるが、剣と魔法のファンタジー世界でやる事ではない気がする。育児中でも参加出来るだろうから広めたくは有るけど。
「成る程ね、予算を組むから設備を用意して。アンタの工匠長就任後に本格稼働させる前に、今の面々で試験運用くらいはしたいわ」
「なんなら都立研究所なんかの都営施設にも設置してはどうでしょうか、研究施設の事故や成果の窃盗等に迅速な対応がかないます」
「それなら、自警団の本部んもね。凶悪犯罪んついて迅速に情報送るんね」
「でしたら、入管にも置けませんかね。外交関連の重鎮が転移門を使わず訪れる場合、情報を速やかに知らせねば外交問題になりかねませんので」
都市長を皮切りに法務長、商会長、外交長から其々要望が出る。いやはや、本当仕事が早い人達で助かるわ。俺は必要になるモニターと素材の数を計算する、魔導具大好きダリアは興奮冷めやらない様子で話を聞いている。尻尾が有ったら分身するくらいに振ってそうだな。
「都市内での運用で問題の洗い出しが終わったら、本国の皇家及び軍部に技術提供するから。レポートまとめなさいね」
「あんまり気は進まないですね……」
「軍事技術に転用出来るってだけで、本国も早々に使う訳じゃ無いわよ。政治関連で早期に会議を開く際に使い勝手が良いんだから、先にそっちで運用されるわ」
まぁ、簡易転移門の軍事転用というか奇襲戦法を送ってる時点で俺の技術の軍事転用なんて今更か。
「それで、この面子をアンタが集めた理由の方も聞きましょうか?」
「都市長は予定外ですけどね……」
「仕方ないでしょ、コレでもクラフターなんだから新技術が気になるのよ」
下手に言い訳せずにクラフターらしさを出してくるのは卑怯だと思う、俺だって同じ事をするから行動を否定出来ない。
改めて商会長と当主代行を巻き込んでアーレムを広める為に行おうとしたイベントについて説明をする、その上でアーレムと活用した競技について説明をすれば都市長を始めとした未所持の3人も興味を持ってくれた。
「この……アーレムだったか、コレを競技として広めるのは面白いとは思う」
真っ先に声を上げたのはカラムスさんだ、戦の公平と公正を司る軍神様の聖人だからか競争の発生には肯定的だ。だが、その言葉には引っかかりが有る。
「しかし、間口はどうなのだ?」
「そうね、この新機軸の商品を広めるには誰でも買える金額でないとダメよ。アンタ、これ幾らで取引したの?」
痛い所を突かれた、金額聞いたらまた怒られるだろうな。
「えっと……法務長のはまとめて注文された中のサービスの一環ですね」
「へぇ……」
「その」
「何を幾らで注文されたのかしら?」
思わず口籠る、法務長は口を挟む気は無いらしく然りげ無く俺達から離れている。この自然さが年の功ってやつか。
「その……魔鉄製の甲冑2領とハンガー、そして武具です」
「それで、幾らで受けたのかしら?」
「その、合計で300万です」
「成る程ね……」
溜息を吐いた都市長に合わせてカラムスさんが近付いてくる。うん、やられるな。
「安過ぎるでしょアンタぁ!!」
高らかな音を響かせて、カラムスさんのスリッパが振るわれる。尚、法務長と成金さんは都市長の言葉に深く頷いている。
「使われてる技術を考えればこのアーレム一機でもそんだけするでしょうが、オマケで付けられる代物じゃないでしょ!!」
またも都市長の言葉に合わせてカラムスさんのスリッパが降って来た、特に抵抗も出来ず頭に直撃する……痛みは無いけど心に来るな。
「第一、コレ一つ幾らで流通させるつもりだったのよ!?」
「その……コアとコントローラーのセット一つで1000から1500程で」
「安過ぎるって言ってるのよ!!」
何度目か振るわれるカラムスさんのスリッパ、段々とダリアの顔が険しくなってくのが見えた。マスターである俺が一方的に叩かれているのが我慢ならないのだろう、そのうち『フォルジュロン』を抜きそうで怖い。
「都市長、タタラはんの考えを落ち着いて聞いてあげてくれませんか?」
そんな中、お国言葉を控えた商会長が間に入ってくれる。
「商会長、貴方もグルなわけですか?」
「共犯、と言われたら否定は出来ません。しかし、タタラはんの考えは十分に流通で彼に還元出来る物と見たので協力しました」
少し落ち着いたと言うか、ターゲットを変えた都市長が商会長を問い詰めるがその敵意を受け流す。
「タタラはんはこのコアとコントローラーを商会の専売にするつもりでした。他に流さなければその収入はタタラはんに全て還元出来ます」
「自由経済って概念に真っ向から喧嘩を売るつもり?」
「残念ですが、他のクラフターにはこのコアとコントローラーは作成出来ません。自由経済にさせるには、公開してもこの技術の模倣が叶わない故に誰も参戦出来ません。完全な独占市場となります」
技術を公開しても誰も模倣出来ないってのは中々にキツイな、まるで世界で独りぼっちにされた様に感じる。
「……商会での独占販売、それでタタラの言い値で売るとしても他者の参入が出来なければ恨みを買うわよ?」
「そこはタタラはんが道を示してくれてます。コアは確かに専売ですが、フレームは他のクラフターが作る事が出来ます。私個人の伝で何人かのクラフターに接触して試して貰ってますが、確かな手応えが有ることを確認しています」
商会長、いつの間にそんな仕事をこなしてたんだ?
「……コアが他のクラフターに作られて、より安価で出されたらどうするつもり?」
「その時はその時で対処法を考えます。ですが、タタラはんが既に幾つか考えてくれてもいます。例えばアーレムの競技に参加する資格に、商会が販売してナンバリングに紐付けされたコアのみに参加権が有る等で差別化を図れば商会での販売に絞る事が出来ます」
うん、俺は大会に参加する資格を商会が販売したコアに限るとは言ったが管理方法までに言及してはいないのだが。
「それならタタラ、アンタはこのコアはどれくらい納品出来るの?」
唐突に話を振られて焦るが、即座に答える。
「一度に100ってところですね」
「1週間で?」
「1日で」
「相変わらずタタラってるわね」
何処か呆れが混ざった声だった。
「更に言えばゴーレム達をフル稼働させれば多分、1日で数千はいけますよ」
俺の言葉に盛大な溜息を吐いた都市長は、何もかもを諦めた表情をしている。
「製造の上限は1週間で1500……いえ、販売の上限をその数字にするわ。タタラは納品して在庫を増やしなさい」
「……希少性を投げ捨てる、と?」
「数が揃ってる事が重要なのよ、このアーレムのコアは。何時でも誰でも買える状態にしないと、一つ1000から1500なんて値段で売れないわ。クラフター達も下手したらフレームで値段を吹っ掛けてしまうのかも知れないのだし、タタラの目的が子供のお小遣いで買える物ってするのならせめてコアだけは何時でも買える物にしないと駄目なのよ」
都市長の販売指示に対して疑問を抱く法務長に、都市長はそう答える。
「この設備を利用する上での価格設定は?」
「入場料は大人1500、子供500で考えてます。飲食店の値段は少し割り増しで考えてますが」
「運営費で考えるならそれが妥当ね。タタラ、この施設の魔力消費の試算は出来ていて?」
「家庭用魔力炉で自足出来るので考える必要は有りません」
「またやったのね……」
本日、何度目かの溜息だろうか都市長。頭を振って意識を戻し、言葉を続ける。
「この、『タタラアーレムアリーナ』の運営についてはそれで構いません」
「え、何その名前……」
「アーレム開発者のアンタが作ったアリーナなんだから当然でしょ、他に誰の名前付けるのよ」
「え、現皇帝の名前とか……」
「そっちの方が不敬よ、お膝元の帝都じゃなくて此処は地方都市なんだから。何よりタタラと同列に扱われたらクレーム物よ」
「俺の扱い酷くない?」
スゲェ、エロ無いと筆が早い()
現皇帝「タタラ・ジュロンの作った施設に私の名前を……嫌ですよそんなの」
前皇帝「ふっ……くっ……いいじゃないか、最低100年は語り草な記念になるぞ?」
現皇帝「なら、父上の名前を付けますか?」
前皇帝「嫌に決まってるだろ」
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない