※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中
『看板娘』イベント発生中


無自覚イベントボス作成者

 目に入った魔導具狂い2人を前に見なかった事にしたくなるが、そうは問屋が卸さないのが世の常である。諦めの境地に達した己の心を溜息と一緒に追い出して、取り敢えず声を掛ける。

 

「本日の営業は終了しました、またのご来店をお待ちしています」

「逃がすとお思いですか、マスター?」

《タタラさん、あんまりヒドイこと言うと姉さまに泣き付きますよ?》

「すみませんでした」

 

 魔導具を前にしてガンギマりし(ハイライトの消え)た目をしたダリアと、無表情で脅してくる『料理長』に対して90°の礼でもって謝罪する。多分、無理に逃げようとすれば魔導鎧で完全武装した二人が追い掛けてくるだろう。下手に捕まったらとても恐ろしい目に遭わされそうだ。

 

「聞きたいのはさっきの魔導具についてか、それともアーレムについてか?」

《すみません、アーレムとはいったいなんでしょうか?》

「……そう言えば『料理長』達にアーレムを見せた事は無かったか」

 

 俺の質問に対して疑問を持った『料理長』にそう言えばと思い出す。ゴーレムとは顔合わせもしたけど、アーレムについては話した事が無かったか。

 俺の言葉から事情を察したダリアの目がギラリと光る、明らかにコレは得物を見つけた猛禽の目(新規ファンを沼に沈めるヲタクのそれ)である。内心で溜息を吐きつつも、ダリアのストレスを解消する為に『料理長』には犠牲になってもらおう。

 

「ダリア、『ヴァルキュリア』と『ペガサス』を見せてあげてほしい」

「Yes my Master!!」

 

 滅茶苦茶気合の入った返答の後、インベントリから『ペガサス』を取り出すダリア。その大声に目を白黒させ戸惑っていた『料理長』も、ダリアが取り出した物を見て好奇心から目が輝き始める。

 

「コレが俺の作り出した新機軸の娯楽品、念動甲冑アーレムだ」

「その中でも私専用の愛機である『ヴァルキュリア』と高機動ハンガー『ペガサス』になります」

《コレが、アーレム……》

 

 ロボット大好きな『料理長』は興味が隠せてない表情で、ダリアの愛機を見詰めている。

 

《タタラさん、私も欲しいです!》

「作るのは良いけど素材は持ち込み限定な。コアは此方で用意するけど」

《当然です!》

 

 俺の言葉に答えた『料理長』はインベントリの中から金属素材を取り出す、出て来た物は案の定大量の魔法金属だ。コレにはダリアも苦笑いを通り越して口元が引き攣っている、俺だって一体のアーレムを作るための素材で各魔法金属が数十kg単位で出されたから同じ表情になっているだろうな。つか、以前依頼を受けた時からコツコツ貯めてたりしたのかこの量?

 

「……こんなに必要無いぞ?」

「それよりもマスター、アーレムを魔法金属で作るのはアリなのでしょうか?」

「作ること自体に問題は無いよ、公式大会でレギュレーションが出来てないから参加資格に疑問が残るけど」

 

 その辺はもう通常の金属や擬似魔法金属、魔法金属で其々階級でも作らないと蹂躙劇になりかねないだろうな。

 

《それなら、タタラさんが思う最高性能のアーレムをこの素材から作って下さいね!》

「俺が思う最高性能、ねぇ……」

 

 興奮気味に言ってくる『料理長』の言葉に思考を巡らせる。

 アーレムを魔法金属で作る場合、それなりに制約が出る。

 例えば重量、コレの基準は一番最初に作った法務長のアーレム『ロウフル』だ。本体重量は2kgと言うのが現状のレギュレーションで、全長も約30cmとなっている。

 魔法金属で特に軽いミスリルで同じ重量にするとサイズがどうしても大きくなるし、逆にサイズを合わせると軽く成りすぎて機動力が上がるが近接戦闘で必要な重量が落ちる。その他の特性としては魔力の伝達効率から考えて継戦能力や魔力砲関係の威力と連射力が他の素材と比べて跳ね上がる、遠距離から飽和攻撃して勝ち抜くなんていう見応えのない試合が展開されるだろう。

 逆に最高硬度のアダマンタイトを使う場合、問題は全金属で最低とも言える魔力伝達効率がネックになる。堅牢では有るがその魔力伝達効率の低さ故に鈍重で、更には使用者からの『念話』に対する反応の鈍さも懸念されるだろう。魔力伝達効率を考えずに無理矢理動かすことから、継戦能力も低くなるかも知れない。

 精神感応金属であるオリハルコンは恐らく一番コントローラーからの『念話』を綺麗に受け取れるだろう、俺が思うにオリハルコンのアーレムは思ったように動くアーレムになる。

 

「──って感じで、アーレムの素材でも方向性が変わるから一概に最強の定義が言えないんだよな。その人に合うと言うか、その人が持つ哲学に合致したアーレムが一番強いとは思うが」

 

 魔法金属の性質から予想される問題点を説明しつつ、魔導式ワードプロセッサで設計図を描く。『料理長』の為に俺が作った『我駕牙』をアーレムに落とし込み、更には前世の美少女化されたスーパーロボットの意匠を取り込んだ結果そこには『料理女王ガガガ』が出来上がっていた。うん、やり過ぎたなコレ。

 

「マスター、この意匠にするなら『ヴァルキュリア』を私の顔にしても良かったのでは?」

「前にも言ったが、お前の姿を意匠にして美少女アーレムとか作る気は無いぞ。普通にバトルするだろうし、お前の似姿が傷付くのを見たくない」

《それだと私は美少女判定から外れるんですか?》

「普通に美少女なのは認めるが、コレの元ネタをそのまま出すのは色々と拙い気がしたんだよ。それに、アーレムでバトルする為だけに地上へ降りてきたりしないだろ」

 

 なんとなく『看板娘』イベントの頓痴気具合ならやりそうではある、と言うかゲームでアーレム系サブイベントが有ったらそのラスボスの立ち位置にこの『料理長』が居るだろうけどな。

 投影された設計図を見て考える。ガガガの勇者王の黒い塗装部分を全てアダマンタイトにして、本体はミスリル、内部フレームにオリハルコンでギリギリ2kg内に重量を収めるようにイメージ。髪を昇華ミスリルで再現してより『料理長』っぽさを出す方向にしたら、何方かと言えばジェネシックに近い見た目になってしまった。こうなればもうデザインをそちらに寄せようか?

 背面の翼を再設計して、内部にはミスリルに『飛翔術式』を簡易転移門と同じ方式で刻んだフレームをいれて外部装甲の展開により露出するように変更。機動力確保の為に周囲の空間を『圧縮』する術式と『解放』する術式を合わせて、空気の噴射では無く空間圧縮方式での真空状況下でも使用可能な高速機動を実現した。

 

「……俺が現状考える最高性能はこんな感じだな。内部フレームにはオリハルコンを使って、使用者の意思を最大限ズレ無しで伝える操作性。コアからの魔力をミスリルにより高効率で循環させて、高い継戦能力を誇る本体。最高硬度のアダマンタイトで作られた装甲により叶う攻防一体の戦闘力。空中を含めた三次元的な戦闘を可能にする機動力。これら全てを兼ね揃えた、強いて言うなら数世代先のアーレムだな」

《然りげ無く新機軸の技術生み出してませんでしたか今?》

 

 俺の説明をよそに『料理長』がヤバいモノを見たかのような目を俺に向けてくる。はて、『圧縮』と『解放』はインベントリを解析して判明した術式なので割とポピュラーな術式である筈なのだが?

 

「マスター、この空中機動をする上での推進機能の説明を求めます」

「そんなに珍しいか?」

 

 何なら艦載用の魔導砲にも使われている技術だ、炸薬の代わりに『圧縮』した空気を『解放』して砲弾を飛ばす機巧。俺のは空間の『圧縮』と『解放』を行なっているだけで、原理は同じだ。

 

「マスター、完全に新機軸の技術です」

「マジか」

《どうしよう、私の為に作るせいで世界からの追放が回避されてる……》

 

 機巧聖女であるダリアの新機軸判定は『料理長』の呟きによって補強されてしまった。つか、『料理長』と言うか『看板娘』からの依頼ならある程度は俺の追放関連が回避出来るのか。

 

「つっても、多分コレはアーレムクラスの出力じゃないと危険だと思うぞ?」

 

 空間の圧縮と解放による加速機巧、理論上の最高速は亜光速に達する物になる。当然そんなのを大気の有る状況で使えば空気の摩擦熱で魔法金属だろうと溶けるし、物体に掛かる負荷でぶっ壊れるだろう。慣性を打ち消すような技術や術式を編み出せば問題は解決できそうではあるが、多分普通に追放されるような技術なので今は作れない。

 そんな物である為に、出力を限定しなければ制御不能で宇宙の彼方に飛び出して逝くことになるだろう。実際に動かさないと確かな事は言えないが、それでも第二宇宙(重力圏から離脱する)速度は余裕で出せる事が感覚的に分かる。まぁ、こんな能力が有っても本気の魔神や『看板娘』達は普通に捉えるようなトンデモ揃いなのだが。過去作の中で概念干渉の影響で光より速く動けるって言ってたしな、人間相手に使う事はプライドが赦さなくて無いらしいが。

 

「機巧聖女ならば制御しきれると思います、ですので『トリテレイア』にこの機巧を搭載しましょう」

「使えるか馬鹿、魔導鎧の耐久限界超えて空中分解か燃え尽きるわ」

 

 概念的な守護か法則書き換え系の術式を組まなければ例えダリアの強化が有っても無理である、それこそ『機械神』様による改竄でも行われて神器化でもしないと現時点で『トリテレイア』が耐えられる事は無い。

 

「むぅ……それでは、低出力で作れる加速装置の作成は如何ですか?」

《仮に作ったら追放案件ですよ、タタラさん》

「……作ったら追放らしい、今は無理だな」

 

 隣で『料理長』が発明品に対して判定したのでそれをダリアに伝える……判定してくれるの便利だからコレからも家に居てくれないかな、淹れてくれたお茶も美味しかったし。

 判定を聞いたダリアは難しい顔をしながら口をつぐむ、俺を寿命より前に世界から追放したい訳でも無いのだろうしこの辺の分別を付けるのは性根の良い子さが見えるよな。

 

「一応、空間の反発を応用した加速機巧の設計と理論提唱は残しておく。作れるのは何時になるか分からんが、それで一度納得してくれ……どうも実際に作らなければ大丈夫っぽい」

「むぅ、Yes my Master」

 

 本当、渋々と納得したな……いや納得はしてないか。承諾しただけだなコレは。

 

「流石にズルいと思います、何故貴女たち天使族は優遇されてるのですか?」

《天使族が優遇されていると言うか、私達姉妹に対しては世界法則側の存在なので緩いんですよ》

「……天使族が優遇されてるんじゃなくて、この『料理長』達姉妹が特別みたいだな」

「なんですかそれは、贔屓ですか。やはりこの乳が影響しているのですかこの小柄巨乳め恥を知りなさい」

《ひょわぁ!?》

 

 俺から『料理長』の言葉を伝えられたダリアが文句と共に手を伸ばして『料理長』の胸を揉む、小柄だが豊かなその乳房に服越しでも指が沈むのが見えた瞬間罪悪感で顔をそらす。ステータスが上回っている筈の『料理長』はダリアに伝わらない悲鳴を上げながらやめるように言うが、ダリアに止める気配は無いらしい。逸らした顔を向け直すと、ダリアの目は死んで(からハイライトは消えて)いるまま指先は動き続けている。エテル相手でもこんな反応してた記憶ないぞ。

 

「やめんか阿呆」

「あう!?」

 

 ダリアの頭にチョップを落とせば痛みは無いんだろうが衝撃で手が止まる、ダリアの魔手から解放された『料理長』は俺の背に隠れて来た。多分顔を少しだけ出してダリアの姿を伺ってると思う、この小動物みたいな娘ならそう言う挙動をすると妙な確信が有った。

 

「ですがマスター、エテル様とは別ベクトルで凄いですよ?」

「感想を言うな」

「柔らかくも僅かに抵抗を示す張りは何処か押しの弱い処女が片想いを続けて来た少年から迫られ初の性行為への恐れと大好きな異性と繋がれる期待感から弱い拒絶をするかのような趣が」

「乳レポすんな」

 

 雛菊さん(食レポ担当)みたいな事をすんなよ、官能小説とか語彙力満載の同人誌(TinTin亭)じゃねぇんだぞ……この世界エロゲーだったわ。

 つか、そろそろ本題に戻ろう。

 

「話が脱線しまくってて忘れそうなんだが、『料理長』のアーレムはどう言う方針にするんだ?」

《あ、そうですね……》

 

 俺からの言葉から『料理長』は自分で用意した素材を見る、それから少し吟味した後にオリハルコンを1kg、アダマンタイトを800g、ミスリルを200g選んで俺に差し出してくる。

 

《この配分でお願いします、機巧は先程タタラさんが設計した物で大丈夫です》

「承った」

 

 俺は『料理長』が自ら選んだ素材を受け取って、早速製作に入る。今回はアーレム(玩具)に有るまじき高級素材の為、更に妥協の無い代物にする。

 先ずは本体の骨格から作成、『料理長』に許可を貰って『鑑定』で骨格を解析してからムーバブルフレームとして簡略化しつつ再現する。その上にミスリルを外部装甲として纏わせてから『料理長』の身体を再現する。なんと言うか、黄金比で出来たバランスだ。骨格から人を引き付ける様に完成されてる。

 問題としては顔、元々人物画を描くのが苦手なのが影響して『料理長』の顔を造形するのが難しい。再現方法を悩む中で、ふと頭に覚えるのでは無くて手で覚えれば良いと思い至る。

 

「すまん『料理長』、頼みが有る」

《はい、なんでしょうか?》

「アーレムの顔を再現する為に『料理長』の顔を覚えたいから触らせてくれ」

《はい、いいですよ……はい?》

 

 許可が貰えたので両手を『料理長』の顔へと伸ばす、掌や指先で軽く触れて形を手に覚えさせる。痛みを与えないように優しく頬や顎先、鼻筋や目元を頭と手に刻む。両手からは『料理長』の体温も伝わってくるが、段々と熱くなってきた、体調が悪いのだろうか?

 3分程『料理長』に触れて、イメージを定着させた俺はアーレムに指先で触れて『クラフト』で造形していく。エテルとは別方向で整った輪郭は造形が難しい、流石に『クラフト』で作れば良いのかもしれないが、それをやると妙に嫌な予感がしてこうした手作業をしている。

 顔を造形し終えて、昇華したミスリルを髪として頭部に植える。こうしてアーレムの素体を完成させた後、次は武装を作成する。一番複雑な背面ユニットは、内部フレームのミスリルが重要である。基部を2枚作製し、そこへ術式を刻む。簡易転移門の作製で確立した技術を総動員して両翼に『飛行』術式を刻み、中央部には『反重力』術式を刻んだ1枚目。『圧縮』と『解放』を刻んだ2枚目、この2枚を合わせて素体と接触する1枚目の部分以外を分割して形成したアダマンタイトの装甲で覆い、術式の可動に合わせて変形して『圧縮』と『解放』の術式が露出するようにする。

 かつては人工オリハルコンを爆発させた時に外部への被害を抑えた物をさらに発展させ続けて来た作業台の上で実験を行えば、俺のステータスですら一瞬見失う程の加速力ですっ飛び防御用の結界に激突した。もう少し術式に込めた魔力が高かったらぶつかった衝撃だけで結界割ってたなコレ。出力を絞るようにリミッターを掛けて背面ユニットを完成とする、尤も『料理長』の意思一つで簡単に外れてしまうようなリミッターなので危険物には変わり無いのだが。

 続いては脚部の作製、素体を接続する形式にして先ずは内側を作る。ミスリルにより素体からの魔力を高効率で受け取り、膝部に付ける武装のドリルを回転させる機巧を付ける。元ネタの脹ら脛に有ったキャタピラはオミットして、姿勢制御を行えるように『圧縮』と『解放』の術式で空気を圧縮・解放して姿勢を制御したり僅かに加速させたり多方面に使えるようにした。足は元ネタから変えて前部は一本、後部は二本の爪を立てる形にしてハイヒールに似た形状へ。脚全体を少しスマートにして女性らしさを持たせる。膝にはドリルを付け、術式で回転させて相手の装甲を削れるようにする。まぁ、試合でそこまで露骨に相手のアーレムを壊すのはレギュレーション違反になりそうではあるが。

 続いては腕だ。此方は元ネタに寄せて作製、肩は新幹線が此方では伝わらないので意匠を簡略化する。腕は丸みを帯びた円筒形だが、手首に素体の手が入らない形状にして腕の中でマニュピレーターを操作する方式を採用。更に右手首には回転する機巧、左腕にはややミスリルを多目に使い結界を展開する機能を搭載した。尤も、元ネタと同じ様に手首を打ち出したブロウクンほにゃららは戻って来る術式を組めないので単純に回転する拳を押し付けるだけになる。まぁ、膝もそうだが高速回転するアダマンタイト製の物を押し付けられるのだからその威力は相当な物になる。

 頭部は四本のブレードアンテナと一対のイヤーアンテナ、そして頬に牙を思わせる頬当を付けたヘッドセットだ。一応、ギミックとして昇華ミスリルによるマスクオンも付たので必殺技の時とかに口元を隠すような感じの設定を入れる。エネルギー全消費覚悟でヘルアンドヘブンを使うとかでマスク出てきて顔隠したら格好良いし。

 最後に身体の鎧だ。胸部はライオンの頭を模した物に、そして腰部のスカートアーマーは後ろ腰から尻尾を模したスタビライザーを装着して完成だ。うん、どう見ても『料理王ジェネシックガガガ』である。普通の女の子ならこんなん渡されても戸惑うか泣くかだな。

 

「ふぅ……出来たぞ、『料理長』」

 

 作業で集中して溜め込んだ息を吐いて、『料理長』に向き直る。そこには両手で口元を隠し、大きく目を見開いた『料理長』と、俺の全力でのやらかしに大興奮のダリアが居た。うん、ヤベェかも。

 

「マスター、私も魔法金属をふんだんに使ったアーレムが欲しいです!」

「素材が集まったらな、それとレギュレーションガン無視した公式大会で使用不可の物にするから普段は『ヴァルキュリア』を使うようにするからそれも受け入れろ」

「Yes my Master!!」

 

 ただでさえ公式大会で出禁食らいそうな機巧乙女の中で、唯一の機巧聖女なダリアなのだ。非公式の大会で暴れられるようなルールガン無視な代物にしよう。まぁ、そうすると多分『料理長』もそこら辺無視したアーレムを依頼して来るだろうがその時はその時だ。

 

《……それなら、私のもレギュレーションを無視して作れば良かったのでは?》

「お前のはレギュレーションに則って無いとヤバい気がすんだよ」

 

 多分、アーレムのイベントで隠しかラスボス枠として『料理長』が出るようにこの世界(システム)は定めるだろう。その時にレギュレーション違反してると問題になる……寧ろレギュレーション違反だから勝っても負けても大丈夫にしかねないのが発売元の会社だが。

 それに、最初はレギュレーション通りに作れるようにして後からより自由に作った方が俺自身の限界も見えると思う。今回の新機軸の加速機巧の出力調整も、アーレムの規模だから出来たと何となく感じるのだ。

 

「さて、次はハンガー兼コントローラーだな」

 

 基部をアダマンタイト、背部のレールは内にミスリル外にアダマンタイトを使用する形で作製。更にアームは全てミスリルで造り完成、魔力の充填には基部の裏に『錬金術師の卵』を埋め込んで何処でも充填出来るようにした。

 

「コレでアーレムは完成だ。とは言え、まだこの『ワールウィンド』でもこんなレベルの代物は存在して無かったから暫くは試合とかはダリアくらいしか相手が出来ないって思ってくれ」

 

 まぁ、そんなフィールドがそもそも無いのだが。今度地下にでも個人用のバトルフィールドを作るかな。

 そんな事を考えつつ、ハンガーに固定されたアーレムを『料理長』に渡す。ぬいぐるみをインベントリにしまった『料理長』はアーレムを受け取り、そのまま抱き締めて蕩けるような笑顔を此方に向けてくる。

 

《ありがとうございます、タタラさん!》

 

 少し苦労したが、こんな笑顔を見れるのなら作って正解だったと思わせるのは美少女の特権だろうな。

 

「なぁ、ダリア」

「はい、どうしましたかマスター?」

「今度地下に個人用のバトルフィールド作ろうと思うんだ、お前や『料理長』が思いっ切り戦えるようなの」

「素晴らしいですね、その時は私が彼女の相手をしましょう」

「おう、その前後にはお前の魔法金属製アーレムを用意するよ」

 

 俺の言葉を受けて嬉しそうに笑うダリア、以前よりずっと表情が増えて良い感じだな。

 

《ところでタタラさん》

「うん、どうした?」

《先程の魔導具についてお話を伺いたいんですけど》

「……おう」

 

 すっかり忘れてたな。

 取り敢えず、インベントリにしまっていた『ドレッドノート』を取り出して作業台の上に置く。ダリアと『料理長』は興味津々と言った表情で顔を近付ける。

 

「対『地龍』種を想定した魔導具、その名を『ドレッドノート』。大型の腕甲型にして相手を掴む事を前提とした設計で、指の腹に付いている刃を回転させて相手の鱗を削り切断する武器だ」

 

 俺の説明を受けたダリアは振り返ってくる、自分のも欲しいのだろうがこの1基を作るのでも結構な素材を使ったのでまた揃える必要が有る。何なら完成品として刃をオリハルコンとアダマンタイトの複合で作った最高硬度の物にして攻撃力を上げた物を渡したいので、今は一旦堪えてもらう。

 

「素材が足りないし、あくまでも試作品だから俺自身が使って不具合を見たい。諸々を済ませたら作るから今は堪えてくれないか?」

「……Yes my Master」

 

 渋々ながらも了承してくれるダリア、ここ最近かなり聞き分けが良くなった気がする。まぁ、元から良い子では有ったが魔導具狂いだったのをコントロール出来るようになったように思う。

 

《コレは、どうやって可動させるんですか?》

「魔導鎧に接続して、そこから魔力を引っ張って来る感じだな。想定してるのは俺とダリアが持つ共通規格の魔導鎧だけだ」

 

 そんな俺に魔導具のスペックを確認してくる『料理長』、素直に答えるがコレはあくまでも試作品で他の人間と言うかパーティが使用する事を考えてない。ダリアと同じ機巧乙女ならハッキングで使えるだろうが、正直に言うとダリア並に魔力を持ってないと直ぐに魔力切れを起こすだろう。俺も『黒煌』の動力を『卵』にしているからこそ使える魔導具として作っているつもりだ。

 まぁ、『終焉女神の神核片』と『創世女神の神核片』を動力にしている『料理長』の『我駕牙』も問題なく使えるだけの出力は持っているのだが。何なら『卵』なんて歯牙にも掛けない出力だしな。とは言え、『料理長』の『我駕牙』にはもっと専用の武装を付けたいのがロボ好きとしての意見だ。例えば腕に装着する空間歪曲できるドライバーとか、重力波振動により対象を光子レベルに分解するハンマーとか。

 

「『料理長』に作った魔導鎧はもっと別の高出力な魔導具を作る方がいい、正直アレに使ってる動力源に相応しい装備とか追放案件な気がするけど」

《ご明察ですね、少なくともタタラさんが追放される問題を解決しなければこれ以上の装備作成は難しいと思います》

 

 ふむ、『看板娘(システム側)』からのお墨付きか。コレは本当に解決しないと拙いだろうな、俺の事だからいつ無意識にこの辺を踏み外すか分からんし。『料理長』と一緒だからかアーレムの作成時に新型加速機巧に対しては何時も出ている直感による警告が出なかった。この感覚のままでは、下手したらダリアに何か作ろうとして直感が働かずこの世界から追放される可能性も疑わなければならない。

 

「とは言え、制限が掛かってるのをどう解除するべきか」

《……姉さまから聞いては無いんですか?》

「一通りは聞いた、俺の楔になってくれている神様を増やさないといけないんだよな」

《それ以外にも有ったはずですよ、特に姉さまが望んでいる物が》

「……それがお前達の力を奪う事なら、俺は絶対にやらない」

《何故ですか、それをすれば……》

「『天使長』にも言ったけど、改めて言ってやる。俺はお前達姉妹が好きなんだよ、だから笑っていて欲しいし傷付くような事が有って欲しく無い」

《……貴方がそんなだから姉さまは苦しむんですよ》

 

 何処か辛そうな表情でそんな事を零す『料理長』に、何かスレ違いが起きてるような気になる。『看板娘』の誰かから力を奪う事に対する認識に致命的な齟齬が有るような?

 

「あのな、『天使長』は一度力を奪われてんだろ。そんな人がもう一度力を失うとかいいわけ無いだろうが」

《……そう、ですね。人間の感覚ならそうなりますよね》

 

 どうも『料理長』の感覚は人間と『看板娘』間の認識の齟齬と言った具合とは何となく違う気がする。なんだろう、俺が思う手段とは別なのか?

 

「……『天使長』は翼を無くして力を失ったんだよな?」

《え、ええ……そうですが》

「俺がお前達から力を奪うって事は、その力の源である翼を奪えって事なんだよな?」

《……ああっ!!》

 

 俺の確認に、『料理長』は何かを理解したかのような反応をする。そして、その顔がみるみる内に赤くなる。

 

「……もしかして、違うのか?」

《い、いえいえいえいえいえいえいえ!!》

「勢いよく否定し過ぎてて逆に肯定してるぞその反応」

《き、きききききききき気にしないで下さい!!》

 

 うん、これ以上突っ込むと特大の地雷踏みそうだな。追及は辞めとこう。

 

「マスター、先程から何を?」

「いや、なんか見解の相違が有ったみたいでな」

「マスターの声しか聞こえていませんが、追放の回避に関わる事だと思えるやり取りのようでしたが?」

「それについてちょっとな……」

 

 どうも俺が『天使長』から力を奪う方法として想像していた翼を奪うと言う認識が間違っているらしい、『料理長』の反応からしてもっと穏当と言うか全く別の方向性なのではないかコレは?

 ただ、この事を詳しく聞こうとしたら『料理長』が泣き出しそうな気がする。そうなれば『天使長(シスコン)』がすっ飛んで来て俺の事をサクッと殺しそうな予感がする、あの人は恩人だろうと関係なく妹を泣かせる相手には容赦しないだろう。

 

「……なぁ、『料理長』。お前達から力を奪うって、翼を奪う事では無いんだな?」

 

 俺の問い掛けに対して『料理長』は一つ頷く。

 

《その手段だと私達から力を失わせるだけで、奪う迄には至りません。ですが、翼を奪われたら余程の例外が無ければ二度と私達は力を取り戻せないんです》

 

 そう答えた『料理長』の言葉に、俺は『深く深い闇の先で』における『看板娘』のイベントに考えを巡らせる。アレは『天使長』の翼を取り戻すも、その背に戻す事がスミスには出来なかった。翼を取り出した後で始まる後日談的なイベントでは再会したスミス達と過ごすうちに『天使長』は力を取り戻す手段を見失い、人として生きる事を選ぶ終わり方だった。ただ、このイベントは時限式でゲーム内で1週間『天使長』と再度出会わなかった場合フラグが消滅する。フラグ消失から暫く後に『天使長』から手紙が届き無事に力を取り戻して帰宅できた事が分かるのだが、その手段が不明なままなのだ。スミスの視点では何も分からないで終わる。実はこの『天使長』の手紙はイベントスチルになっていてこの結末を見ないとオールコンプリートが叶わないのだ。

 未練を断ち切って未来を見据える終わりと、無事に帰宅出来た終わり。どちらがより素晴らしいかは人によるが、オールコンプリートのスチルを考えるとスミスと再会しない事が正史ではないかと前世では推察していた。

 会社としては最後に人間にする事で『天使長』を『看板娘』から降ろすと言う目的も有ったのだろうけど、本心では会社を畳みたくは無かった為に最後は見慣れた『天使長』に戻してあのスチルに登場させたのだと思う。まぁ、ユーザーに見慣れた姿を見せたかったというのも有るだろうが。

 今の『天使長』は俺の影響で家に帰れるが現状は間違いなくイレギュラー、それにあの剣と同じ事をやれと言われても自信は無い。偶然と言うか奇跡の産物だと俺のクラフターの勘が言っているし、再現する時は命懸けになるんじゃなかろうか?

 ただ、俺が例え『看板娘』の翼で再び同じような物を作ったとしても俺には使えないと予想してる。原作で『天使長』から翼を奪った奴は『天使長』を零落させて、自らの欲をぶつける事が目的だった。奪った翼を使い自身を強化すれば良いと思ったが、結局出来ずに保管するだけに留まっていたのだ。何故かと考えていたが、先程の『料理長』が言った事を考えると羽ならまだしも翼を加工する手段が無いのだろう。子供の頃の俺が翼で剣を作れたが、何故作れたのか自分でも不思議だ。

 

「まぁ、『料理長』達から力を奪う予定は無いからこの件はこれ以上はやめようか」

《……えぇ、そうですね》

 

 何でちょっと不満そうなんだよな。

 

「他には何か有るか?」

《むむ、本当は魔導鎧の武装を作ってもらいたかったんですけど……アーレムで満足しちゃいました》

 

 そう言って『料理長ジェネシックガガガ』を笑顔で抱き締める『料理長』に、苦笑いが浮かぶ。

 

《では、この素材は全て報酬という事で》

「ちょっと待て」

《今度、アーレムで遊びましょうね!》

 

 俺の静止を無視して『料理長』は笑顔で帰っていった。残されたのは俺とダリア、そして1種類辺り20kgは有りそうな魔法金属の山である。

 

「……ダリア、何か武器作るか?」

「欲しいですが、また今度にしましょう」

 

 疲れ切った俺の言葉にそう答えるダリア、気遣いが身に染みる。

 

 

 素材を俺のインベントリにしまった後、日課の『空裂』を一本打ってから就寝した。自然と目覚め、洗顔を終えてから台所へと向かえば庭先で当主代行の笛を聞き舞っている四葩が目に入る。少しばかり見ていなかったが、コレが日常の一幕だったのだ。僅か数日だけだというのに、随分と久し振りに見た気がする。

 

「一華、それに三葉さんおはようございます」

「おはようでござるよ、ご主人」

「おはようございます、タタラさん」

 

 並んで朝食の準備をしている二人に挨拶をしてから、調理に入る。どうやら一華が三葉さんに『ワールウィンド(此方)』の朝食を教えているらしい、久し振りの洋風な朝飯に少し心が浮き立つ。

 俺は早速食パンを切ってから焼き、火加減を見ながらスープを作る。一華が飲み易いように以前作ったコーンポタージュにしようと決めて、玉蜀黍の実を削ぎ落としてから丁寧に潰して裏漉しする。玉葱を取り出して刻んだ後に火にかけて、透ける程度に火が通ったら一旦火から下ろして薄力粉をまぶしてから再び火にかける。

 少し炒めた後に裏漉しした玉蜀黍と水を入れて混ぜ、焦げ付かないように混ぜながら煮詰める。頃合いを見計らい牛乳を入れようとした際に、三葉さんが豆乳を取り出したのを見て即座に変更。頼み込んで貰った豆乳を鍋に入れて混ぜ、クルトンの代わりに小さく切った豆腐を入れる。胡椒の入ったミルを用意して、豆乳コーンポタージュの完成だ。

 途中でパンも焼けていたので、一人2枚としてトーストを並べる。うん、バゲットでも良かったかな?

 一華はエテルのレシピを見てスクランブルエッグを用意してくれていた、匂いからベースに白出汁を使った物らしく出汁巻き風スクランブルエッグはかなり興味をそそられる。献立は『ワールウィンド』風の朝食なのに味のベースが陽出國風なんて中々に変な状況である。

 

「おーい、朝食出来たぞ」

 

 庭先の四葩達に声を掛けに行けば、四葩といばらさんが戦っていた。

 それは、稽古と言うにはあまりにも激し過ぎた。

 鋭く、重々しく、速く、何よりも殺気に満ちていた。

 それは、稽古と言うより決闘だった。

 いや、何これ?

 

「あの、当主代行」

「ああ、お早うタタラ殿」

「お早うございます……何でこの二人は戦ってるんですか?」

 

 うわ、四葩の剣戟避けた際に着物の裾を握って崩しに掛かってる。それに逆らわず、逆に勢い付けて当身に持ってくのはどうなんだ四葩。って、それを受け止めてから襟を掴んで投げるんですねいばらさん。そこで跳んで空中で姿勢を戻して着地出来るのか四葩。

 

「うむ、いばらが四葩にタタラ殿との関係を聞いてな。立ち消え寸前の婚約者と答えた後にいばらのお見合い戦績を聞いてな」

「地雷踏んだかぁ……」

 

 そりゃ妹に先んじられた姉とか怒り狂うだろうな、いばらさんは特にプライド高そうだし。

 

「二人とも、今すぐにやめないと朝食抜きだからな!」

「タタラ殿、それで止まる二人では……」

 

 次の瞬間、四葩の刃はいばらさんの首に添えられいばらさんの拳は四葩の鼻先で止まっていた。

 

「……止まるのか」

「四葩は数日ぶりな此方の飯ですし、いばらさんもなんだかんだ頂きますとご馳走様を欠かしていませんでしたからね。胃袋を掴んだら此方のものですよ」

 

 当主代行が何やら変な目を向けてくるが、一旦は無視。ダリアが起きてきたらアリーナに当主代行を連れて行くように頼まないとな。

 

 焼いた事で香ばしさと、軽くも確かな食感を得たトーストにバターを滑らせてから一華のスクランブルエッグを乗せて齧り付く。

 ザクッとした表面に反し中はモチッとしていて、小麦の香りが口いっぱいに広がる。そこへバターの甘みを持った濃厚な牛乳の味わい、そして卵と魚介でとられた出汁の味が続く。半熟故にとろりとした舌触りはそれ故に舌を覆い、旨味をダイレクトに伝えてくる。

 豆乳コーンポタージュを一口啜れば、玉蜀黍の甘みと豆乳の濃厚な味わいが広がる。牛乳に比べれば若干の淡白さが有るが、トーストと合わせれば程よく感じる。中に入れた木綿豆腐は硬さを残していて、舌で潰せば大豆の味が主張する。うん、木綿も良いけど堅豆腐でクルトン代わりにしても良かったかな。まぁ、思い付きレシピだし次はもう少し計画的に朝食を作ろう。

 

「それで、タタラ殿は今日どうするのかね?」

 

 食後にコーヒーを啜りながら、当主代行が質問してきた。

 

「今日はダンジョンで探索をしようかと」

「ふむ、そうか」

「アリーナへはダリアも行きますので、迷子は回避できると思いますよ?」

「そこを心配するか!?」

 

 いや、迷子因子は虎熊家の標準装備でしょうよ。一人で『ワールウィンド』歩いてたら気付けば国外に居ても俺は納得するぞ。

 

「妾もタタラと共に行くのじゃ、愛する男くらいは自分で守りたいものじゃしのう」

「……そう」

 

 おいおい、ナチュラルにいばらさんを煽るなよ四葩。髪に隠れて見えにくいけど蟀谷にぶっとい血管が浮いてんぞ。

 

「三葉さんには申し訳無いですけど、家をお願いします」

「ふふ、承りました。魔導具の練習も兼ねて当たらせて頂きますね」

 

 楽しそうに引き受けてくれる三葉さんに安堵の息が漏れる。一華を連れ回すとバカ達の監督役と家事を担う人物が居ないので不安になる。三葉さんが来てくれて本当に良かった。

 

「今日は何階層まで潜る予定なのですか?」

「49階層までであのボスは避けるつもりもだけど、一華の成長具合如何ではもう少し潜るのもいいかもな」

 

 タチアの質問にそう答える。エテルの代わりは一華なら十分にこなせるだろう、俺も斥候向けのスキルを取っているしカバーも出来ると思う。

 一番の問題は、あのクソボスに挑むのなら火力が若干不足気味ってところか。一華が49階層に着くまでどれだけレベルとステータスが上がるか、それを見てから更に深く潜るか決めるべきだろう。

 

「そう言えば、タタラのレベルは今いくつなのじゃ?」

「69だ、適当に20匹でも敵を殺せばレベルも上がるから深く潜る必要も無いぞ」

「どう言う事なのですが、タタラ殿」

 

 四葩の疑問に答えれば、タチアが首を傾げる。そう言えば、花冠の事を伝えてなかったな。

 

「あの時、妖精から花冠を貰ったのを覚えてるか?」

 

 俺の質問に対して四葩と一華は揃って顔を顰める。うん、軽く地雷踏んだな……でもコレが必須なんだよな。

 

「あの時に渡された花冠に経験値を5増やすって能力が有ってな、その影響で20倒せばレベルは上がるんだ」

 

 俺の言葉に二人どころかその場の全員がドン引きした表情をする。まぁ、もっと正確に言うなら最低値の1にプラスして5の合計6で更に40%増しの8が最低保証か。実は上の階層でも20匹も必要無いとか意味分からんな。

 

「ご主人、それって拙者達に貸せぬでござるか?」

「実は専用装備みたいでな、俺以外は無理って鑑定で出て来た」

 

 俺は『祝福の花冠』を取り出して見せる。四葩がどうも『鑑定』で調べたらしく、呆れた表情をした後に首を横に振った。

 

「間違いなくタタラ専用じゃの、妾の『手鞠花』と同じく表記されておる」

 

 その言葉に一華は残念そうな表情になる。まぁ、戦闘力を速やかに取り戻すには元のレベルに可能な限り近付ける必要が有るしそうなるか。

 

「もう一度手に入れる機会は有りますかね?」

「タチアと一緒なら可能性は有るけど、その為には51階層を越えて探索が必要だぞ?」

「少なくとも今は現実的ではないのう……」

 

 タチアの疑問に対して答えれば、四葩は溜息を吐いてそう結論付けた。特にレアなモンスターが二種類揃って居て、更に襲われてる所を助けるとか普通に考えたらトンデモナイ確率だしな。

 そんなミーティングをした後に、俺達四人はダンジョンに来ていた。身体と装備の調子を軽く確認してから、早速潜っていく。

 上層は全く問題にならなかった、一華がレベルを上げるために率先して皆殺しにしながら進むので四葩がスキルを上げれない。一華は以前作った『衝羽根』で纏めて敵を細切れにしていく、その殲滅速度は広範囲の移動後使えるマップ兵器持ち(サイバスター)を想起させる。正直、『ゴーレム』相手の時くらいしか俺に出番無さそうだな。

 そうして階層は21に到達、一人で殲滅を続けていた一華のレベルも20を越えた。あまりにも早すぎて思わず遠い目になる中、この階層から現れる名物を発見する。

 

「……あいも変わらず間抜けな面じゃのう」

「本当、呑気に歩いてやがる」

 

 青い体色の『ムゥ(たみ)』を発見して思わず四葩と俺が交わしたやり取りがコレである。さて、以前は『祝福の花冠』を見てアイテムを譲ってくれたが今回も出来るだろうか?

 俺は意を決して『ムゥ(たみ)』の前に姿を晒す、『ムゥ(たみ)』達は一斉に逃げ出そうとするが俺の頭の花冠を見た瞬間に動きを止めた。あいも変わらず効力はバッチリらしい。

 それから箱やら袋やらを貰い、見事にステータスアップアイテムが揃っていった。

 

「……まるで紋所じゃのう」

 

 まさかこの時代に陽出國ではそう言った文化が出来上がっているのだろうか?

 時代劇と言うか娯楽劇とかの分類か、まぁあの勧善懲悪は分かりやすく痛快だからな。子供達に見せる目的も有るかも知れない。

 そんな事を考えながらどんどん潜っていく、そして俺達は50階層のボス部屋前に居た。




『料理長』のアーレムの見た目はコト▽キ屋から出ているク□スフレームガールの勇者王ガ◯ファイガーを参照して下さい()


オマケ

 此処は、辺境の農村。世界有数の大国である『皇国』に所属し、他国との国境沿いに存在する小さな村の一つである。
 日々忙しく過ごす村人達、顔見知りの中で健やかに育っていく子供達。そんなありふれた幸せに溢れた何処にでもある日常。

 しかし、それは一瞬で崩された。

 ──皇暦987年
 建国から千年を目前に控えた皇国に対し、隣接する『王国』は奇襲とともに宣戦布告を行った。
 広大な領土と肥沃な大地を誇る皇国はその食料生産力により経済を支え、他国へ輸出する事で外貨を得ていた。隣国にして一番の商売相手である王国は数年前に襲ってきた大寒波により国内の食料生産力が落ち立て直しも叶わず、更には国王の崩御も重なり国内経済が悲惨な状況になっていた。
 そんな状況を越え新たな王を戴いた王国は、隣接する帝国の領土に目を付けコレを奪う事を決意する。
 王国と帝国の国力差は約11倍、軍事力は約5倍の差が有るとされていた。
 しかし、蓋を開けて見れば開戦から3年で帝国の領土は1/8を奪われる事となっていた。
 圧倒的なまでに有った差は、しかし一つの事象から埋められていた。
 その理由、前線にて王国と戦った帝国の兵士達はこう語る。

 曰く──鉄の悪魔が全てを薙ぎ払った、と。

 家屋が、家畜が、人が燃える。
 兵士隊が抵抗する者達を殺し、無抵抗な者達を犯す。
 そこに秩序は無く、有るのは狂騒だけだ。
 誰も彼もが理性を失い、虐げ奪う弱肉強食の理で生きる獣だけがそこにいる。
 大切な父親を殺され、母や姉達を目前で犯される光景を必死に声を押し殺して見詰め続ける少年が居た。
 まだ一桁の子供であろうその少年は、家族達が身を挺して守る為に隠されそしてソレが壊される様を目撃し続けた。妻と娘を守る為に抵抗した父は両腕を落とされ磔にされ、目前で妻と娘が犯される様を見せ付けられた。
 母は愛する夫を壊され、見ず知らずの男達に犯される間に狂い舌を噛み切った。
 まだ幼さを残していた姉は、大柄な男に犯された際に耐えきれずに死に至った。
 少年は、その一部始終を目撃していた。
 血が流れる程に強く己の手を噛み、必死に声を殺し理性を保ち続けた。
 少年は聡明に過ぎて、この場で声を出せば殺される事を理解していた。
 家族が己を生かすために犠牲になった事も理解していた。
 此処で己が死ねば、家族の献身が無駄になると理解していた。
 本当ならば、共に死ぬほうが幸せであったのだと理解していた。
 そして、少年の心は復讐する事に全てが囚われる事を由とした。
 下卑た笑いと聞くに堪えない言葉を紡ぐ王国兵を見た。
 死に体の父に新たに刃を突き入れる外道を見た。
 母と姉の亡骸に己の欲望を吐き出し続けるケモノを見た。
 そして、家の外に在るそれを見た。
 全長は人の10倍ほど、その体格に見合った巨大な剣と盾を携えた威容。剣の一振りで家屋を破壊し、幾人もの大人達を殺した存在。
 全身鎧で武装した巨人にも見えたが、少年はそれが兵器であると看破していた。
 超大型の魔導鎧、或いは人が直接搭乗して操るゴーレム。
 そして、少年はその構造を読み取っている。
 己の手でその力を暴き、奪った力で殴り返す。
 復讐する為の力を、血涙を流しながら解析していく。

 一昼夜を越えて、王国軍は村を去っていった。少年は生き延び、偵察に来た帝国軍に保護される事になる。
 少年から齎された巨大な鉄人の存在は最初こそ笑われたが、やがて真実だと前線から伝わる事でその目撃証言の重大さが理解される。人間と同じ技を使う巨大な鉄人の脅威に、帝国軍は蹴散らされ不利に陥って行った。
 対抗策を用意できぬまま3年が過ぎ、国土の1/8を失った帝国に一つの報が報じられる。

 曰く、王国の鉄巨人を再現したと。

「本当に此処で合っているのか?」
「はい、間違い有りません」

 豪奢な軍服を纏った男性軍人の問い掛けに、先導する一般兵士は答えつつも足早に目的地へと向かう。
 国が保有する軍施設では無く、開戦後に難民が集まるようになった区画。その中でも何故か過疎化している場所だ。一軒だけやや大き目の家屋が建つのみで、周囲には広く間が取られていた。
 難民の多くなるこの時世に、コレだけ無為に土地を使う事に疑問を持つ軍人に対して先導していた兵士は慣れた様子でその建物に入る。その様子を見て慌てて後を追って建物に入りっていった。
 先に入っていた兵士は直ぐに見付かり、何やら住民らしい青年に話し掛けているところだった。しかし、軍人はそれよりも目を引かれる物があった。
 それは成人男性の身長を越える大きさの巨大な足裏だった。金属製で、複雑な溝が彫られているのは滑り止めだと推察できる。足首より先は布に覆われていて見えないが、意外な程に有った奥行きの先に布は続きそこに何かが寝かされているのは理解出来た。

「……これは」

 思わず呟いた男性軍人、その無意識の疑問にやや幼さを残す声が答える。

「アーレム」
「アーレム……それはいったい?」

 短く簡潔なその単語に対して質問をすると、兵士と話していた筈の少年が男性軍人の前に立ち苛立ちを含んだ声で返す。

「3年前、国境付近に有った村を襲った王国軍の鉄巨人。正式名称は分からないから俺はその構造からアーレムって呼んでる」

 答える少年の声を聞き、その少年の正体が滅んだ村の生き残りで有ると察した男性軍人。巨大な足裏に向けていた視線を少年へと向ければ、鍍金の剥がれた鋼の様な疎らに黒を散らした白髪が目に入った。

「奴等の鉄巨人は超大型の魔導鎧、または人が乗って制御するゴーレム。アーマーとゴーレムを繋げて省略したからアーレム」
「……奴等の鉄巨人の正体を暴いたのか?」
「元々『鑑定』のスキルを持ってたから、隠れてずっと見続けてた。そうしたら何なのかが分かったから、奴等を殺す為に同じ武器を作った」

 少年の言葉は簡潔だが、とてつもない重要性を持っていた。軍部が調べても辿り着けていない情報に、齢10を幾ばくか越えたばかりであろう少年が辿り着いていると言うのだ。

「……動かせるのか?」
「理論上は。実稼働実験まで行ってないから正常に動くかはコレから、不具合を直すのも考えたらちゃんと動くまで5年くらいは掛かると思う」

 その言葉に男性軍人は悩む。既に開戦している中で、新兵器の可動に5年。前線に立つ者としてはあまりにも遅い。
 それが、技術者としては理解不能な早さだと言う事が理解出来なかった。

「此奴らの弱点は?」

 故に、男性軍人は即座に必要になる情報を求めた。

「一つ、足回り。大型だからこそ、高い位置にある重心の維持が大変だしこの大きさを支えるから負担が大きい。正直、めちゃくちゃ速い巨人族を相手にしている想定で戦術を組めばそこまで怖くない」
「……奴等は素早いと聞いたが?」
「巨人族の大きさで人間の技術を遺憾無く発揮できればそれは普通に脅威、これはそれを体現してる」

 立て板に水、それ程の速さで答えが返ってくる。

「二つに、視界。高い位置から見渡すから視点は高いけど、遠見の魔術を刻んだ目を保護する為に騎士鎧と同じ様に目元を可能な限り隠してる。だからこそ死角が多いから罠を設置して対処出来る」
「……根拠は?」
「奴等の使う物の頭部を模した兜で実践した」

 少年の答えに男性軍人は口をつぐむ、何れ程の恨みを抱けばコレだけ復讐に真摯であれるのか?

「三つに、重量。人を十倍の大きさにしてるから、体重は一千倍はする。転んだ拍子に中の人間には凄まじい衝撃が発生する上に、自重に対してパワーが足りなくなる可能性が高い。それに脚部に凄まじいまでの負荷が掛かるから長時間走らせれば脚が壊れて動けなくなる」
「……機械ならば、壊れても大丈夫ではないか?」
「その場で直せないならただの棺桶、問題は対峙する人間がプライド捨てて敵に背を向けられるかってだけ」
「……騎士の考えでは無いな」
「誇りを持って犬死するならしてればいい、俺は奴等を殺す為なら泥でも糞でも何でも塗れて汚れようが構わない」

 男性軍人は額に皺を作るが、今は考えている場合では無い。

「コレは接収させてもらう」

 男性軍人の言葉に、少年は険しい表情を浮かべる。

「……俺から復讐の手段を奪うのか?」
「そうだ。コレを国が解析して、量産する」

 その言葉に少年は僅かに思考、そして瞬時に答えを出す。

「交換条件」
「衣食住、何でも言え」
「量産の計画に俺も参加させて」

 少年の提示する条件に、男性軍人はいよいよ苦い感情を隠せなくなる。この場に大人がおらず、少年一人でコレだけの物を作っていた理由を考えたからだ。
 戦災孤児、家族全てを失ったのだろうと男性軍人は思い至っている。復讐というのも、生まれ故郷と家族の事と思えばコレだけ頑ななのも理解出来た。

「……子供の遊びではない」
「なら、俺の作ったコレは子供の玩具でしか無い。態々子供の玩具を取り上げて、そしてそれを量産して国はどうするの?」

 少年は必死だ、唯一の復讐の手段を奪われる事に対して躍起になって抵抗する。

「それに、コレを動かす為の動力はまだ俺にしか作れない」
「……なに?」

 男性軍人は疑問に思う、このアーレムと呼ばれる鉄巨人の動力源について少年の言が理解出来ない。男性軍人は技術者では無い、少年の言葉が大言であるのか分からないのだ。

「……少年、コレは何で動いているんだ?」

 軍人のやりとりを見ていた兵士が初めて会話に混ざる、そんな兵士に一度目を向けた少年は再び軍人に目を向けて口を開く。

「賢者の石」

 その一言に、軍人と兵士は絶句する。御伽噺にのみ存在する架空の物質、無限の魔力を内包しているとされるそれを、少年は動力源にしていると言うのだ。

「何処でそれを……!?」
「作った」

 震える声で問い掛ける兵士に、何でもないように答える少年。

「必要な物は全部作った。奴等のアーレムより遥かに優れた物を、その思いで俺はコレを作ったんだ」

 少年の声に熱が混ざる。

「もう一度条件を言うよ、俺も量産計画に混ぜて。賢者の石の作り方も、人造の魔法金属の作り方も教える。だから……」

 今にも全てを焼き尽くしそうな熱量を込めて、少年はその想いを解き放つ。

「だから、奴等を殺す為の武器を作らせて。父さん達を殺した奴等を、この地上から殺し尽くす為に」

 そうして、少年の復讐劇の幕が上がる。

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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