※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント進行中。
『看板娘』イベント進行中。



そう言えばずっと昔から頭にこびりついて離れない言葉があるんですよ、『ケツからひり出すファンタジア』って。なんなんだろうなコレ()

あ、一応前半は閲覧注意でお願いします。


凝り固まった心は一度粉砕してしまおう(その後立ち直る保証は無し)

 俺に群がって来たエテルは一斉に俺の服を掴み引き裂いた、男女逆だとよく見たシチュエーションではあるのだが襲われるのが男ってのは中々に珍しくないだろうか。何かもう一周回って冷静に状況を見てる。

 床に押し倒されて見上げる先には俺の身体を情欲に染まる目で見下ろしてくるエテルの顔、顔、顔……経験は無いが手術で執刀を受ける時の不安感ってこんな感じなのだろうか。少なくとも歯医者でリューカー片手に見下ろしてくる医者を見ている時の不安感を数十倍にしたかのような恐怖感に襲われてる。

 離れていたエテルの顔が近付いて視界を覆い尽くす。唇が塞がれ口内をエテルの舌が蹂躙を始め、更に曝されていた片側の乳首を一人が舐め始めたのか湿った感触で刺激されもう片方を多分指で弄ばれた。更には腹筋を筋に合わせて舐められ、臍に舌を突き入れられた。複数の局部に強い刺激を受け身体が跳ねるが、4人のエテルに抑えつけられた状態では刺激から逃れられず……ただその抵抗を無為にされる姿がエテルの嗜虐心を刺激するだけ。

 俺からより反応を引き出す為に責めは強く激しくなり、愚息は熱く固くなる。腹を刺激していたエテルだろうか、俺の愚息をズボンから取り出して刺激し始める。鈴口や亀頭、裏筋や陰茎を優しく丁寧に扱われそのもどかしい刺激に対して脳が射精を求め始める。腰を跳ねさせてより多くの刺激を求めようとするが、エテルはそれを全て躱して己の手から伝える快感のみに絞らせる。それですら射精を促して遂に爆発しようとした瞬間だ、エテルの手が陰茎の複数箇所を押さえて射精を無理矢理止めた。

 

「……ぇ?」

 

 僅かに声が漏れた、求めていた射精を抑えられて違和感にも似たもどかしさが襲ってくる。俺のそんな姿が面白いのか、エテル達から笑い声が漏れている。射精感が収まると同時に再びエテル達の攻勢は始まり脳を焼くような刺激が襲ってくる。先程よりも刺激は強く、更に責め形は多彩になる。一度我慢させられただけで射精して無い身体は直ぐに限界を迎えるが再びエテルは再び射精を止める。そうしてまた衝動が収まると責めを再開してと俺を寸止めを繰り返す地獄へと叩き込んでいく。

 局部への刺激に飽きたのか肌を吸うエテルも居れば、俺の指を己の秘処の中へと入れるエテルもいた。唇を重ねていたエテルは俺の口に秘処を押し付けて舐めさせて来た。酸素が足りずに苦しくなるが、エテルから流れ込む魔力は俺の死を許す訳もなく呼吸の出来ない苦しさを延々と続けさせるだけで意識が薄まる事すら無い。

 何度寸止めされ、どれだけの時間責められ続けたのだろうか。永遠にも思える地獄から唐突に解放された。それでもまだ射精は許されておらず、脳を快楽ともどかしさで掻き混ぜられた俺はまともな思考を出来ていない。脳を支配するのは何でもいいから射精をしたいとそんな単純な物で、この苦しみから逃れたいと言う物だ。

 そんな俺の過去一番で硬度を持つ愚息を優しく掴むエテル、他のエテルが俺の腕を全体重を掛けて押さえ付けさらに肩まで押さえて逃れられないようにする。疑問を持ちながら顔を上げる。

 

「ぁぇ?」

 

 そこには幼い姿のエテル、以前俺が大人のままでは興奮出来ないと伝えた姿でエテルは俺の愚息を受け入れようとしていた。

 

「ゃぇ……」

 

 やめろと声を出そうとするが、口すらまともに動かない。散々に寸止めされた愚息は萎えることも無く、幼い姿のエテルは膣口に先端を添えた後に俺を見て淫靡に笑い……一気に腰を落とした。

 

「っあぁぁぁぁぁぁあぁあああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 脳髄を走る衝撃、脳をミキサーに掛けられたかのような目茶苦茶な刺激が襲い掛かり悲鳴を上げた。俺の愚息を受け入れた幼い姿のエテルは背を仰け反らせ、突き破らんばかりに内で膨らむ愚息に腹の形を変えている。

 止めさせ無ければ、いくら夢魔とは言え幼く未成熟な身体で受け入れていいモノでは無い。しかし、複数のエテルに抑えつけられている俺は身体を動かす事も叶わずにただ幼いエテルが腰を動かし俺の愚息により膣壁を削る様に抽挿させる。無理矢理狭く幼い膣へ入った為か余りの締付けの強さに痛みすら感じるが、それが逆に良かったのか射精が早く訪れた。引き抜かせる事は叶わなかったが、その腟内に射精する。初体験の時にも比肩或いは凌駕する勢いで放たられる精子は幼いエテルの肚を満たし、更に腹の形を変える。これ程に人は射精出来るのかとエロゲー世界らしいリットル単位出してそうな射精を終え、コレで幼いエテルがこれ以上俺を受け入れる事も無いと安堵する。そんな俺の上に凭れ掛かる幼いエテルだが、俺は違和感を覚えた。

 身体を通して鼓動を感じない、エテルの目は虚ろで動かない。

 

「……え、てる?」

 

 俺を抑えていたエテル達は離れて、自由になった身体を動かして幼いエテルに触れる。しかし、糸の切れた操り人形の様に幼いエテルから力は抜けて動かない。

 幼いエテルは死んでいる。いや、俺が殺した。

 

俺がエテルを殺した

 

「っわぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 幼いエテルの亡骸を抱きしめる、視界が揺れて涙が滲むのが分かった。

 

「エテル、エテル……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、死ぬな死なないでお願いだからエテルえてるぅ!?」

 

 喉から出る言葉はエテルの名前と死を嫌がる言葉ばかり、文体は目茶苦茶でただただ言葉が漏れ続ける。

 

「ごめん、ごめんなさい……おねがいだからしなないで」

 

 動かないエテルを抱き締め続ける。愚息の抜けた膣口から俺の出した精液が流れ出て床を汚す、白濁に赤が混ざりそれが破瓜では無く俺の愚息がエテルの膣を破った事が原因なのだと何となく理解した。この混ざり合った物は俺がエテルを殺した証、俺の罪。

 

「あ、あぁ……」

 

 絶望が心を染める。暗くなる視界、急速に冷え込む身体。父さんと母さんの死を自覚した時の何倍もの苦しみが襲ってくる。

 ああ、もうこの世界に生きる意味なんて無い。

 

「大丈夫だよ、タタラ」

 

 そんな俺の肩に手を置くエテル、その手を辿って視線を向けると微笑みを浮かべる姿。

 

「ほら、見て」

 

 そうして指差す先で、抱き締めていた幼いエテルの身体が粒子になって消えていく。

 

「うわぁ、エテルっ!?」

 

 その光景に焦り粒子を集めようと焦るが、手からすり抜けて世界へと溶けていく。やがて幼いエテルの亡骸は消えて、俺の手には何も残らなかった。

 

「さっきのはただの分身、魔力の塊だよ」

「ぶん、しん……?」

 

 優しく語り掛けて来るエテルに視線を向ける、表情は先程と同じ笑みのままだ。

 

「私を殺したいくらいに恨んでいいよ、何度も殺させてあげる。殺しちゃうほど乱暴なセックスをしたいなら叶えてあげる。だからね……」

 

 正面から抱き締めてくるエテル、その温もりを思わず抱き締める。逃さないと強く強く抱き締める。

 

「たくさん私を()してね、タタラ」

 

 その言葉は呪いとなって、俺の脳に焼き付いた。

 

 口直しだと再び複数のエテルと交わる、正面から愛し合いキスを重ねながら腰を動かして思うままに射精する。

 他のエテルとキスをしながら責め立てる事もした。

 複数のエテルの胸で愚息を包ませて射精したりもした。

 分身の一人の髪を掴んで無理矢理後ろから犯しもしたが、二度とやらないと誓った。

 いきなり幼くさせられた上で囲まれて犯された、目茶苦茶怖かった。

 本物のエテルと繋がり分身に様々な場所を責めさせて何度も絶頂させた。

 

 分身を全て消して、本物のエテルと抱き合いながら腰を動かす。エテルの脚は俺の腰に絡まる所謂だいしゅきホールドという体勢だ。俺の胸で潰れる柔らかなエテルの胸の感触を楽しみながらキスを重ねる、蕩けた表情で舌を絡ませるその姿に満足感を覚えて一番深く腰を沈める。エテルの最奥まで愚息を届かせて、射精をする。

 エテルの内側を俺の種で満たしながら、深く深く唇を重ねる。

 

 

「たくさんえっち出来て気持ち良かったね!」

「俺は何度か死にたくなったけどな」

 

 戦場を夫婦風呂に移して何戦かし終わった後に身体を洗って湯船に二人で浸かる、コレも随分と久し振りに感じるな。

 

「え、ちっちゃい私とのえっち駄目だった?」

「分身とは言え最愛の相手を殺した気持ちを考えろよ……」

 

 現実をまともに認識出来ず、死んだ相手の蘇生しようともせずに抱き締めてただけだったあの時。正直頭が真っ白で何をするべきかも思い付かず動けなかった。仮に迷宮でエテル達を死なせてしまった場合、俺は『料理長』の弁当を使うことが出来るだろうか?

 

「むぅ、タタラだって存在昇華を止めて死ぬつもりなのにそれを言う?」

「それは……」

 

 一華からも言われた、俺を失った世界で朝を迎える事の苦しさ。俺は目の前で分身とは言えエテルを失った際にアレだけ取り乱したのだ、エテル達はそれもその後も味わい続ける。その事の残酷さを改めて突き付けられた。

 

「……すまん、それでもまだ踏ん切りが付かない」

「なら、縁切りの概念武装とか止めて」

 

 俺に背を預けていた体勢から向き合う格好になるエテル、真剣な眼差しで俺を見てくる。

 

「前にも言ったように、タタラが死んだら私も後を追うよ。この家と遺産はイッさんに全部譲ればいい、だけど私を遺す事を考えないで」

「……生きていて欲しいって思ってもダメなのか?」

「駄目、そんな我儘赦さないから」

 

 逃さない様にか俺の両頬に手を添え、真っ直ぐに見詰めてくるエテル。そこから伝わる意思はとてつもなく強い、この意思を曲げる事は俺には出来ないだろう。

 

「……分かったよ」

「じゃあ!」

「俺と生きて、そして死んでくれエテル」

「うん!」

 

 俺の言葉に満面の笑みになったエテルは真正面から抱き着いてきた。一緒に死んでくれ、なんて言われて嬉しそうにする奴がなんで俺の周囲にそこそこ居るんだろうな?

 それはそれとして、柔らかさから愚息が反応し始めた。今日だけで何度射精してるのかも分からないのに何でまだ稼働できるんだコイツ、無限情報サーキット(Gストーン)ならぬ無限情欲サーキット(自慰ストーン)でも積んでるのか……いや自慰は出来て無いな。

 硬さを取り戻す愚息に気付いたエテルが悪戯っぽく笑う。

 

「元気だね、タタラ」

「本当、なんでこんなに元気なんだろうな……」

 

 誂いを含んだ言葉を向けて来るエテルに答えるも、視線を向けようと下を向いたらエテルの豊かな胸に顔を埋める形になった。それが決定打となり完全に戦闘態勢を取る愚息。此処は銭湯では無いが戦闘が起こるし洗浄した後に戦場になるのも本末転倒だなって喧しいなこの言葉遊びは。

 

「それじゃ、元気いっぱいで1等賞なタタラへご褒美」

 

 そう言いながら腰を落とすエテル、『性魔術』も使用しているのだろう愚息を介して脳に伝わる快楽に理性が飛びそうになる。巨大な目前の乳房を持ち上げて先端を同時に舐めて刺激を与える。夢魔の特性なのかエテルの肌は甘い、この甘さに溺れて俺は支配されているのではと思う事が幾度かある。尤も、そんな思考も即座に快楽で潰されて消えるのだが。

 

「本当、タタラっておっぱい大好きだよね」

 

 優しい声音でそう言って頭を撫でてくるエテル、しかしその腰使いはまったく優しくない。容赦なく俺を射精させようと膣全体を使って愚息を絞ってくる、慣れている筈なのだが抵抗も出来ずに射精してしまった。

 それでもまだ足りないとエテルを立たせて壁に手を付かせて尻を突き出させ、その細い腰を掴んで収まらない愚息を再度挿入する。

 音が鳴る程に力強く腰を打ち付け、浴室内に音を響かせる。エテルも快楽を感じてくれているのか声を漏らしている、姿勢を崩しそうになったエテルを壁に押し付けてそのまま射精した。腰が震える、そのたびにエテルの腟内もまた蠢く。エテルを振り向かせてキスをすれば、エテルからも強く抱き返されてより強く密着した。

 

 

 風呂から上がった後もエテルを自室に連れ込み朝まで戦いを続けた、工房もそうだがそれなりにしっかりとした清掃が必要な程度には部屋が酷いことになってしまった。そんな事を考えてる俺は2日連続の寝坊である、傍らには精根尽き果てたエテルが眠りについている。で、何故寝坊したのが分かったかというと単純に起こされたからである。

 

「ご主人、流石に元気過ぎるでござらんか?」

「はい、すみません」

 

 呆れつつも、恐らくエテルのフェロモンの影響で若干発情しかけてるであろう一華の言葉に謝ることしか出来なかった。

 部屋も含めてどれだけヤッたんだろう、多分記録を大きく伸ばしてると思うけど考えたら馬鹿になりそうだからやめとこう。

 

「朝食の準備は済んでるでござるから、奥様を起こした後二人とも身体を清めてくるでござるよ」

「はい、分かりました」

 

 何一つ反論できず、一華の言葉を了承するだけだった。

 

 エテルと風呂に入れば盛ること間違い無しなので俺達は別々にシャワーを使う事にした。因みに俺が後で浴びる形になった、エテルに突撃させない為の措置である。

 シャワーの後は直ぐに朝食だ、『バイト長』は何処か自信に満ちたというか完全にドヤ顔である。尚、専用のゴーレムは少し離れた所でグッタリしていた。

 

「……今日は転ばなかったのか?」

《ふふん、ボクだって出来るですよ!》

 

 自信満々に答えてくれたが、多分回数が減っただけだろうと当たりを付ける。でなければゴーレムがあんな姿になってないだろう。

 

「今日はどうだったんだ?」

「18回往復して18回躓いて13回転びましたね」

 

 昨日より2回往復するのが減ってるし、転んだ回数も大分少ない。これが専用ゴーレムの影響か。三葉さんの答えを聞いて少しずつでも進歩が見えて嬉しいものだ。

 

「まだ歩く事に意識が向き過ぎていますね、家具に足を引っ掛ける事が多いです」

「躓いたのにはそれも含める訳ですか……やっぱりお義母さんに頼るしかないですね」

「お任せ下さい」

 

 お義母さんは『バイト長』の頭を撫でながら了承してくれる、本当に気に入ってるんだな。『バイト長』は頭を撫でられて照れつつも嬉しそうだ、ゲーム時代はこんな表情してなかったな。

 

「ご主人、今日も家に居るでござるか?」

「ああ、ちょっと工房と部屋の掃除しないとな……」

 

 流石に激戦を越えたこの2箇所の戦場を掃除しなければ拙い、主に(にお)いが。俺の放った大量の精液の臭いで部屋の中は大分(くさ)い。

 

「それでも1時間くらいで終わるから、それからは『バイト長』の事を邪魔にならない程度に見るつもりだ」

 

 元々は俺が受けた依頼なのにお義母さんに任せっきりなのは本当に申し訳無い、お義母さんが楽しんでくれているのが唯一の救いである。

 

「私は探索に行くつもりだよ」

「妾もじゃな、タチアも行くであろう?」

「はい、間もなく都市祭も始まりますから追い込もうかと」

 

 エテル達3人は探索か、エテルは最低でもレベル50までは戻すつもりかなコレは。

 

「……今日は拙者も探索に参加するでござる」

「一華も?」

「拙者が居れば60階層くらいまで潜れるでござる、奥様に次の存在昇華の準備をしてもらうでござるよ」

 

 成る程、それは心強い。それに60階層まで潜れれば『ムゥ(たみ)』と出会えてステータスアップアイテムが稼げる可能性が高い。

 

「分かった、4人ともくれぐれも気を付けてくれよ?」

 

 俺の言葉に其々が頷く、不安は消えないがそれでも大丈夫だと送り出す事も必要だろう。

 

「儂は朝からアーレム劇の稽古だ」

「送迎は私が請け負いますのでご安心を、マスター」

 

 次に予定を教えてくれたのは当主代行とダリアだ、此方も此方で追い込み状態らしく当主代行の目の下に隈が見える。

 

「貴方、激励の台詞を覚えるのと大きな違いは無いでしょう?」

「そうは言うがな、動きを混じえての台詞回しは難しいのだ……」

 

 呆れを含んだお義母さんの言葉に少し拗ね気味に当主代行は返す、基本自分だけで激励するのと定められた動きと台詞で成り立つ劇では別の難しさとは思うのだが……お義母さんは天之鈿女命を拝命した故にその辺普通に慣れてるから言ってるよなコレ。

 

「はぁ……タタラさん、何か記憶力が上がる魔導具や概念武装は無いですか?」

「そんな便利な物は有りません」

 

 俺は何処ぞの青狸でも奇天烈な発明を引っ張り出す小学生でも無い、つかどんな理屈や願いならそんな概念武装が作れると言うのか。

 

「そりゃ、『念話』と『感応』を応用して録音した台詞を伝える魔導具くらいは作れますけど……そしたら全員の台本読み合わせだけしてアーレム操作に集中して貰うアテレコ劇になりますよ」

「タタラ、貴方サラッととんでもない事を言ってないかしら?」

 

 俺の発想に対していばらさんがツッコミを入れてくる。尚、俺の話を聞いたダリアと当主代行の目がそれぞれ別の意味で輝いたが無視する。

 

「その発明、戦争で役立ちそうですね。世の中には『念話』を使えない兵士が大多数ですし」

「俺のサイファーが空中から見た映像を受信する魔導具と組み合わせたなら、戦場の動きを即座に目視して最前線の兵士達に伝えるって事も出来ますね。相手が似た技術を持ってない場合は一方的に叩けると思いますよ」

 

 どこか呆れた物言いだったお義母さんに構想を伝えれば、眉を顰めた。そりゃそうか、俺から戦争って単語が出てしまうのはお義母さんとしては好ましく無いだろうし。俺がコレを作れると言うことは、帝国がこの戦法を使う可能性が出るという事だ。

 お義母さんとしては虎熊家、ひいては陽出國にも同じ戦術を取れる土台が欲しいだろう。しかし、その為には帝国側から技術供与を引き出す必要が有る。お義母さんが外交官として仕事を出来るなら可能性は有るが、多分この技術を実際に作れる俺という存在を知らない者が交渉した場合引き出せない可能性の方が高い。

 

「それってチーちゃんを追っ掛けた時の?」

「それの応用だな、ゴーレム達の視覚を共有しない代わりに俯瞰視点に集中。情報整理の担当者を置いて逆に相手を追い込むように誘導したりとか戦略と戦術で活躍できる方法だ」

「もしやそれ、タタラの事情に関わるものかのう?」

「多少は、な。前世でより特化した道具を使って戦争やってたから応用した」

 

 まぁ、戦術は使えたとしてもこの世界で通用する武器となると難しい。一部の魔法は冗談抜きで核攻撃みたいな事が出来るので、個人戦力ではどうしても勝てないし核兵器なんて心情的に作りたく無い。模倣してもクラスター爆弾かサーモバリック爆弾で留めるつもりだ……サーモバリックは『黒煌』の砲撃で再現してるような物だけど。

 

「まぁ、サイファーみたいな鳥型ゴーレムを作れる事が前提だから広く普及出来る技術かは微妙なんだけどなコレ」

「確かに、これ程に高性能なゴーレムは殆ど見ないですからね」

 

 何度も名前を呼んだ為かサイファーが近付いてくる、追い払うのも何なので肩に乗せてやれば爪が刺さらないよう配慮して止まって来た。心遣いが可愛いなコイツ、頭撫でてやれば擦り寄るし鳥型なのに大型犬味が有る。

 

「そのゴーレムはどうやって作ったのだ?」

「普通にスキルで、ですね。芯になるフレームの鍛造ミスリルと翼に昇華ミスリル、心臓部が『錬金術師の魂』って事が特殊と言えば特殊ですね」

「タタラってるゴーレム様である事は理解しました」

 

 当主代行の質問に答えたら三葉さんからドン引きされた声で言われてしまった、そんなに好きになったのかタタラってる。

 

「応用は出来ぬのか?」

「アーレムの空輸に使ってる魔導具と、アリーナでステージ写してる魔導具を組み合わせるって手段も有りますよ。ゴーレムと違って自立稼働しないので、張り付いて操作する必要が出ますしダリアくらいに上手く使えないと映像見たら酔いますけど」

「……私は、マスターの魔導具は好きですがアーレムを戦いの道具にするのは嫌です」

 

 俺の言葉にダリアは心から嫌そうにそう言ってくる。娯楽品であるアーレムを軍事品として使える事、本来は楽しむ為の技術を血で汚す事を厭う姿は生来の優しさが滲んで見える。まぁ、武器は武器で嬉々として使うのがダリアなのだが。50人からなる破落戸を母娘二人で殲滅させたの忘れて無いからな?

 

「何にしても、タタラの技術は現時点でタタラにしか作れないのでしょう?」

「他人に教えた事が無いので分からないですけど、基本他の人は作れないみたいなんですよね俺の発明品」

「安易に手を伸ばせる技術では無い事の証左、ひいては貴方の腕の証明よ。誇りなさいな」

 

 いばらさんが俺を褒めてくれる、実力を認めてくれるまでは態度が悪かったけど認めたあとは大分優しいなこの人。

 

「朝から重い話題になってしまいましたが、そろそろ締めましょう。それに、まだ今日の予定を確認出来て無いですよ」

「技術の話からの脱線が凄かったですね……」

 

 お義母さんの言葉で戦争の話を締めて、予定の話に移る。とは言え、結局一華も含めたパーティメンバーが探索に向う以外何時も通りだったのだが。

 

 

 この家には工房の清掃は基本的に俺以外にさせないというルールが有る、家事をする三葉さんに言い含めた事の一つで理由としては中にある設備が俺以外に扱えないからだ。何かしらの拍子に壊してしまえば俺にしか直せないし、何が切っ掛けで壊れてしまうかも分からない。それ故に俺と同伴で無ければ入っては駄目だと説明した。……皆が寝落ちした俺を起こしにくる場合はだいたいルールを無視してるから形骸化してるに等しいんだけどな。

 床に落ちた俺とエテルの体液やらを特殊な洗剤で洗ってから換気し、プレイに使ってしまった作業台を点検する。普段は中々掃除をしないので思い切って細かい所も含めてやれば空気がスッキリした気がする。

 最後に作業用の設備を起動して精密点検をして工房の清掃を終える……鍛冶場は終わる度に掃除してるから綺麗なんだが、工房はゴチャ付いてる方が落ち着くからそのまんまにしがちなんだよな。子供が出来たら入らないようにするとは思うが、間違って入って怪我させると拙いしもっと整理整頓を普段からするかな。基本的な資料やノートしか整理してないし。

 続いて自室の掃除をしようと部屋に入る、すると──

 

《おはようございます、タラシ様。良い朝ですね》

「タタラです。おはようございます『清掃長』……なんで居るんですかね?」

 

 まさかの『清掃長』である、昨日の『料理長』に続いての来訪に戸惑いしか無い。尤も、掃除しようとしていた部屋が新築の如く輝いている事から目的はだいたい察したが。

 

《幾つか理由が有りますが、その前にタラシ様の獣臭渦巻くこの地獄を綺麗にする事が先決と判断しました》

「タタラな。獣臭は分かるけど地獄扱いはひどくないか?」

《昨日、妹に誘惑されかけていた猿相手ですからコレくらいの言葉はいいでしょう?》

「バレテーラ」

 

 まさか『清掃長』にバレるとは思わなかった……いや、この人だから分かるのか。

 

「それで、来訪の理由を聞いても?」

《一つは可愛い末っ子の様子見です。あの子、遠目で見られてる事も気付かずに楽しそうな顔で格闘の練習をしてるんですね》

「ええ、先ずは上手く歩ける様にって試行錯誤してます。成果はまだまだ先になると思いますけど、そのうち転ばなくなると思いますよ」

《それは重畳、笑顔も増えて苦手が無くなるなんて素晴らしいですね》

「まぁ、まだ皿を割ってますけど」

《一朝一夕で治るようなモノでは無いですから、歩くような早さでも前に進む事が大事ですよ》

 

 何だかんだ、妹を心配している辺りが姉妹だな。

 

《次に、コレを貴方にと》

「弁当か、『料理長』も律義だな」

《契約ですからね、世界法則(わたしたち)はその辺りにより強く縛られてしまいますから》

 

 サラッととんでもない事を言われた気がする、世界法則(システム)側の存在はより強くルールに縛られてしまう……つまり『天使長』から翼を奪った奴はこの在り方を使って『天使長』の意識の穴を突いたって事か?

 特殊な法則を敷いた結界は、適用範囲を狭めれば狭める程にその対象への効果を強くする。昨日『料理長』は俺の厄切を魔神の力すら退けると言ったが、下手をすればこの手の結界に負けてしまうかもしれない。

 

《つまり、結婚や奴隷契約を結べば逆らえないのです!》

「今その情報を言う必要有った?」

 

 ドヤ顔して言った『清掃長』に思わずツッコミを入れる、なんでそんな自信満々に言ってんだこの人。

 

《それに、口約束でも契約は成立してしまいますからね》

「厳しすぎないか?」

《常に世界法則(システム)からの監視を受けているようなものですからね。人も神々に監視されているのですから同じですよ》

「そう言われるとそうなのか……?」

 

 超理論と言うか煙に巻かれた気がしないでもない。しかし、口約束でも契約が成立するのか……だから『看板娘』達は他と会話が出来ないのだろうか?

 たが、幼い頃に『天使長』を救った流れで『お嫁さんになって』とか言ってたら契約成立してたのか……転生した意識が無かったら危うかったな。しかし、俺はあの時『天使長』に何と言ってお礼を回避したんだろうか?

 

「他に用事は?」

《修復依頼……と言うより、殆ど制作依頼ですね》

 

 そう言って差し出される物を見て、思わず眉を顰める。

 

「砕けた剣の修復って……確かにこの状態なら修復よりも制作ですけどね」

《少し事情があり、この剣を元に戻す……或いはより強力に生まれ変わらせて欲しいんです》

 

 刀身が数十の破片に砕けた剣。無事なのは柄と鍔、そしてそこから5cm程伸びた刃くらいか。柄は黒、塚頭と鍔は金で鍔元に紅い宝石……この意匠、確か前に見たぞ。そう考えてインベントリから一本の剣を取り出す、以前『料理長』から報酬として貰った剣だ。

 

《それは……妹から預かったのですね》

「分かるんですか?」

《ええ、鍔元の宝石で分かります》

 

 つまり、この二本は姉妹剣と言う事になる。何故、基本的に剣を使わない二人がそんな物を持っているのだろう?

 

《少し事情が有りまして、末の妹も同じ意匠の剣を持っています。姉様を除いた三姉妹共有のお守り、そう思ってください》

 

 この話を聞く限り、恐らくは『天使長』から妹に贈った物なのだろう。そんな大切な物が何故砕けていたり、俺に渡されたりしているのだろうか?

 

《依頼は先程言った通り、その剣の修復です。妹の剣を調べれば素材は分かる筈です》

「……『天使長の羽』が要るんだが、手持ちが無いぞ」

《タラシ様なら姉様を呼んで、胸やお尻を揉みながらお願いしたら沢山貰えますよ》

「俺に死ねと申すか」

 

 流石の『天使長』もセクハラされたら抵抗して殺しに来るだろ、事情は伏せて頼んだ方がワンチャン有る。

 

「つか、大分希少な物が多いな。龍骨結晶とか邪竜からの低確率ドロップ品だぞ」

 

 剣を『鑑定』で調べて出て来る素材に慄く、本来は死した後に化石化する龍が魔力の満ちた地で化石化すると高密度な魔力を取り込んで結晶化する為に生まれる素材だ。邪竜は高密度な魔力を体内に取り込む影響で、一部の骨や鱗が結晶化してしまう事が有ると過去作で語られている。そしてその邪竜がこの『ワールウィンド』で出て来るのは91階層以降の最深部攻略時、当然今すぐ手にはいる物では無い。その他も『魔王の剛角』やら『空の欠片』なんて言う最深部で取れるドロップ品のオンパレードで、魔神を封じる器でも作るのかと疑いたくなる。

 

《ですが、それを直す……または作ることはタタラ様の為になります》

「……俺の為?」

 

 以前『料理長』がこの剣を渡して来た時、扱いは自由だと言っていた。対して『清掃長』は俺の為と言い切っている……本当なら『料理長』も俺に持っていて欲しかったのだろうけど、この違いは何だ?

 

「……理由は俺が聞いていい事、なのか?」

《……ふふ、話せませんよ》

 

 俺の質問に、『清掃長』は笑ってそう返した。

 俺が知る事(・・・・・)が許されない、『清掃長』は言外にそう伝えて来る。この砕けた剣は、果たして何時砕けてしまったのか……それこそ未来で砕けた(・・・・・・)可能性すら有るのではないだろうか?

 もしそうなら、何故砕けたのかも重要だ。この剣は人の手では無く(・・・・・・・)世界法則が創り上げた物(・・・・・・・・・・・)なのだ。破壊不可の概念こそ持っていないが、実質破壊不可能な耐久値を持つ代物でそれこそ俺の試剣術でも使わないと人の手で壊れる事は無いだろう。

 

「……分かった、今すぐ素材が手にはいるわけじゃないから修復には時間が掛かるがそれは承知してくれ」

《ええ、大丈夫です……何時迄も待ってますから》

 

 そう言い残して『清掃長』は去っていった。何故だろう、最後の表情が何処か俺の言葉を久し振りに聞いたかのように見えたのは。

 

 

 リビングに降りれば、昨日は見逃した『バイト長』の型稽古を行っていた。お義母さんが先に型を見せて『バイト長』がそれを真似して動く、その型を止めさせ身体に触れて修正し型をやり直させる。特に脚、踏み込みの距離を意識させているように見える……普段の歩行にも繋がるからかな?

 まだ馴れてないのか、踏み込みが浅かったり逆に深かったりと上手く出来ていない。難しそうな顔をしては足の位置を何度も確認し、真っ直ぐ前を向いてから踏み込みを行なっている。踏み出し、位置を見直してまた踏み込む。お義母さんは厳しくも、上手く出来た所を褒めて『バイト長』に自信を持たせながら稽古を付けている。本当、飴と鞭が上手いな。

 そして『バイト長』も褒められた所に自信を持つとその箇所をより良くしようと頑張るタイプらしく、努力する事に良い影響を与えている。成る程、これはお義母さんがベタ褒めするのも分かる。教えれば教えた分だけ頑張って、褒めれば褒めた分だけより良い物にしようと自分で考えて磨く。確かに歩みは早くないが、それでもずっと邁進する努力家なんて教える側としては最高の生徒だろう。

 

《ふにょ!?》

「あっと……大丈夫か?」

 

 何度目かの踏み込みで転びそうになった所を思わず抱きとめてしまった、稽古中に手を出すのは駄目だな。

 

《あ、タタラくんありがとうです。でも……》

「ふぅ、タタラさん。転んでも手を出しては駄目です、受け身の練習も兼ねてますから」

 

 やはり叱られてしまった、俺は少々過保護かも知れないな……『バイト長』の努力に水を差してしまっている。少し離れて、改めて『バイト長』の動きをみながら演武用の靴について考える。

 以前見た『バイト長』の脚なのだが、全長は違うが膝迄の長さは同じだった。なので、靴の底を削る形で脚の長さを合わせる様にしていた。仮に演武で靴を履くとなると、やはり足首周りの柔軟性が重要だろうか。底の厚さを調整しつつもややカーブを付けてすり足がしやすい様にする必要もあるかな、踏み込む際にグリップが働く様にもしなければ転びやすくなるだけか。前世、趣味で和太鼓をやっていた友人が底にラバーグリップのついた足袋を持っていたからアレを参考に靴底を作るのもいいかも知れない。『バイト長』の足は先に測ったのだから靴底を合わせるのは後にして、本体だけ作っておくか。

 

「……それで、休憩になるまでに一足作り終えてるのはどうなのです?」

「そこはまぁ……俺なので」

「最高最悪に説得力のある言葉ですね……」

《あの、流石にこれは恥ずかしいです……》

 

 訓練用の靴を仕立てつつも、仕上げは『バイト長』に履かせながらと考えて稽古の中休憩を待っていたが時間いっぱいまで使っていた。本当にスタミナが底無しだな『バイト長』、集中力が切れただけだったぞ。

 そしてそんな『バイト長』を膝に座らせて出来立ての靴を履かせて底を調整している。削る度に足を付かせて、すり足を軽くさせては再度調整。削りすぎない様に気を付けつつ、最適な具合を見極める。調整する事に30分、ようやく出来上がる。

 

《凄いです、すり足も踏み込みの止まり具合も全然ちがいます!!》

「ピッタリに合わせたからな、明日からの稽古はそれを使ってくれ。歩行訓練は何時ものでな」

《はいです!》

 

 はしゃぐ『バイト長』に微笑ましさを感じつつ注意すると、元気な返事が返ってきた。言葉は伝わってないだろうに、俺の言葉と笑顔からどんな会話が成されたのか予想したお義母さんも笑っている。

 三葉さんに任せっきりになってしまった昼食を挟み、歩行訓練に移る『バイト長』とお義母さん。俺も参加しつつ、ゆっくりと歩く『バイト長』の様子を見て途中途中で意見を挟む。

 前世で見た車輪付きの歩行補助具で歩き方の矯正とかって出来るのだろうかと悩む。一度試すのも有りかも知れない、物を見せてお義母さんと相談してみようかな。

 そうしてまた3時間ぶっ続けで歩行訓練を終えた『バイト長』に労いと注意点を教えるお義母さんと、ある程度離れた位置から見て気付いた点を上げる俺。そんな二人からのアドバイスを真剣に聞く『バイト長』に気を良くして、明日もまた真剣に取り組もうと決意する。

 

「──って、感じの1日だったな」

「ご主人、仕事に集中すると家事が一切出来なくなるでござるから支え甲斐があるでござるよね」

 

 またも三葉さんに夕飯を任せる事になってしまったために一華からそう言われてしまった、家事に参加しないとと思うがどうしてもこの辺を集中してしまうと手が出せない……治さないとな。

 

「タタラ、二人暮らしの時は特にそういう事無かったよね?」

「あの時よりもやる事が増えたからな、正規に依頼を受ける事が少なかったしそこまで没頭する研究も無かったし」

 

 両親が生きてた頃にある程度大きな研究をしていたのも大きいと思う、目標だった簡易魔導鎧が初等部の頃に完成させられたから没頭する程に研究する事が無かった。まぁ、その為の資金と素材が無かっただけとも言えるが。

 

「ですが、タタラさんの意見は助かりましたね。側で見てる身としては客観視は中々に難しいので」

「いまいち役に立てたかは自信無いですけどね」

 

 靴を作ったり歩き方で気になった点は上げたが、やれたのはそれだけとも言える。やはり実際に武術を修めてるお義母さん程に意見を上手く言える気はしない。

 

「ふむ、儂は直接的に関わってはおらんがタタラ殿には創造者としての知見が有る。それは華澄には無い視点からの意見が出るものだろう、その気付きから別の気付きになるのは確かな筈だ」

「そうだといいんですけどね……あ、おかわり要ります?」

「いただこう」

 

 悩む俺に当主代行が慰めとも取れる言葉をくれるが、それよりも空になった汁椀が気になっておかわりを確認してしまう。頷かれたので味噌汁を注ぎに台所へ行く、因みに今日の味噌汁は蕪と法蓮草だ。赤味噌の濃い目の味付けを蕪がたっぷり吸い込み、法蓮草の後味がスッキリとしてくれる。

 そして大量のおにぎりとおかずとして大皿に盛られた唐揚げ、レタスとプチトマトにポテトサラダ。ピクニックのお弁当のメニューだが、やはりこう言った組み合わせが美味いのだ。

 汁椀を当主代行に返してから、取り皿に有った唐揚げを一つ頬張る。一口大に切った鶏もも肉に薄い衣、さくりとした軽い食感の後に簡単に噛み切れる肉。その奥から溢れ出る肉汁が舌を包む。王玉の扱いの練習用に作った魔導式ノンオイルフライヤーは油で揚げるのと同じ熱量で表面の衣を固まらせ、その後もじっくりと中へ熱を通して肉汁を閉じ込められたようだ。前に油の節約用として作っていたが、俺よりも一華や三葉さんの方が上手く使えてるらしい。

 誇らしいのか情けないのか分からないが、唐揚げが美味い事実には変わらないので気にしないでおこう。

 

「天麩羅とはやや違う塩梅なので難しかったですが、上手く揚げられたようですね」

「美味しいですよ、この揚げ物。ワールウィンドで主流の物とは違う感じで新鮮ですし」

「ふふ、ありがとうございますエテル様」

 

 三葉さんの安堵した言葉に、エテルは手放しで褒める。その賛辞を受け止める三葉さんも嬉しそうに笑っている。うん、いい光景だ。

 

「のうタタラ、この馬鈴薯のサラダに使われておるたしかまよねぇずと言ったか?」

「ああ、マヨネーズで合ってるぞ」

「コレ、以前作るのに時間が掛かるとか言っておらんかったか?」

「そこそこ時間は掛かるが、三葉さんにレシピは教えてるから普通に作れる時間が確保出来ればいけると思うぞ」

 

 前に俺が作った時は唐突に思い付いた事が原因だ。事前に準備して更に料理に集中出来る環境なら、手間では有るが十分間に合わせられるだろう。まぁ、それでも朝に作るのはちょっと遠慮したいがな。

 

「このねっとりとした感触は良いわね、甘酸っぱい味が野菜だけでなく揚げ物にもよく合うわ」

「その代わり、栄養価が高いので食べ過ぎると肥りますけどね」

「鬼は代謝が高い上に私はよく動くから問題無いわ」

 

 いばらさんはマヨネーズを気に入ったらしい、肥らないように気を付けてと言ったらサラッと流された。まぁ、あの糞野郎と日々やり合って運動してるから本当に問題無いとは思う、多分。

 

「ところでタタラ殿に相談なのだが」

「はい、なんですか?」

 

 そんな会話の中で、当主代行がやや真剣な……と言うにはなんかちょっと雰囲気が違う空気で相談を持ち掛けてくる。そして、そんな表情の当主代行を見たお義母さんは目が細まった……つかジト目かアレ?

 

「劇の台詞が覚えられぬのだ、何か解決出来る魔導具を用意してくれないだろうか?」

「あなた、後でお話が有ります」

 

 結構切実な雰囲気で言った当主代行の言葉をお義母さんがバッサリ切り捨てる。うん、何か作っておこうかな。




※エテルはメインヒロインです、ラスボスではありません。

オマケ『雪女』

 それは冬の寒い日、雪山の中での事。
 一人の青年が迷い込んでいました。

「出だしから死にかけだし、本来は親と二人だっただろここ」

 青年は吹雪く中、生き残る為に必死に歩きました。
 雪風が防げる場所を求めて白く染まる視界の中を真っ直ぐ進みます。

「……雪山とか夜の森とかでこれやるって普通は死ぬよな?」

 細かい事に気付くなよ。つかその場で留まってても死ぬぞ?

「地の文が自我出すなよ……お?」

 白い視界の中、微かに影を見たタタラは意を決して進みます。そうして、一軒の小屋の前へと辿り着きました。
 地獄に仏とはこの事かと思いつつ、人里離れた場所にて一軒だけ建つこの小屋への不信感もありました。

「いや、前回の『鶴の恩返し』で俺も人里離れた山で鍛冶師やってたが?」

 此方にツッコミ入れんな、つか前回の記憶とか持ち出すな。また『天使長』と家族になりたいのか?

「はいはい……すみません、何方かいらっしゃいますか?」

 小屋の戸を叩き呼び掛ける青年、吹雪の中で風音に声を半ば掻き消されながらも大声で叫びます。
 しばし時を置き、戸が開かれました。そこに居たのは幼さを残すものの、その身体は成熟した銀髪の女性でした。

「……何やってんの『料理長』?」
《……姉さまから出なさいって》

 その美しさに息を呑む青年でしたが、自らの命が危ぶまれている状況を思い出して吹雪が止むまで泊めて欲しいと願い出ます。

「この吹雪の中外を歩けば死んでしまうので、どうか泊めて欲しい」
《……いいでしょう、どうぞ中へ》

 そうして案内された先は──

「いや、汚いな!?」
《か、片付けられないのは仕方ないじゃないですか!!》

 家主の趣味で様々なぬいぐるみやフィギュアに溢れた屋内は、家主の趣味スペースがとても酷い状態でした。
 タタラに言わせれば『この汚部屋でどうやって寝てるんだ?』となる程で、足の踏み場もないと言える状況です。

「このままじゃ寝れないから片付けるぞ、フィギュアとぬいぐるみは触れないからそっちで持っててくれ」
《え、あの!?》
「趣味の品は下手に触れないだろ、レイアウトとかに拘った結果だろうし繊細な物は壊しかねん」

 この辺は青年の前世でのトラウマだったりします、部屋を片付けに入った母親にプラモやパソコンを破壊されガチ泣きした経験からの心遣いです。
 そうして始まる部屋掃除、1時間程で40lのゴミ袋が6個はパンパンになる程のゴミを片付ける事と成りました。

「……せめてさ、下着類は纏めとこうぜ?」
《そ、それは普段下姉さまがやってくれるからつい……》
「好きな男を部屋に上げる時に絶望しかねないぞ?」
《今まさにその心境ですよ……》

 共同作業で早速仲良くなった二人、しかし雪山を歩き更に部屋の片付けまでした青年は空腹に襲われます。腹の虫を鳴かせた青年は恥ずかしがりながら腹を押さえました。

「……悪い」
《もう、仕方ないですね。今からご飯を作ってあげますよ》

 そんな青年に微笑みながらそう言った家主は、早速台所に入り食材を切り始めました。肉や野菜を籠に入れた後、土鍋を取り出して出汁になる昆布と調味料を入れた後に具材を入れてから青年の座る炬燵の上に焜炉と共に置き火を点けます。

「鍋か、寒い中だと最高の飯だよな」
《ふふ、そうですね。こうして二人で囲みながらつつくと尚美味しいでしょう》
「なんだ、『料理長』もご飯まだだったのか」
《出番まで待てって指示でしたから。それに、タタラさんに出来立てのご飯を食べてもらえるチャンスでしたし楽しみだったんですよ》
「俺は配役聞いてないから誰が相手かも分かんなくてな、不安も有った」

 和気藹々と語りながら温まるのを待ち、具材が煮えた所で家主が取り分けて振る舞います。その至上とも言える味わいに舌鼓を打ち、何度も美味と伝える青年に家主は満足そうでした。
 遂には家主が酒まで出して青年を歓待し、最後には青年は酔い潰れてしまいました。
 夜が深まる頃、酔い潰れた所を家主に布団へ運んで貰った青年は身体に触れられる感触を感じて目覚めました。
 上手く動かない頭で視線を巡らせた先、裸に剥かれた胸を家主が舐めていました。

「ちょっ、何やってんだよ『料理長』!?」
《あの、雪女のシナリオ通りですよ?》

 ※原作『雪女』だと親子二人で雪山の小屋へ入った後に父親が雪女に凍らされてる場面が有ります。この場面一説では雪女は罪人であり、迷い込んで来た親子の父親を逆レして子をなした後に殺していたなんて話が変化したなんて物が有るのでエロ小説らしく肖りました。

「くっ、上手く身体が動かない……」
《アレだけ吹雪いて雪が積もる中を歩いけば疲労で動けませんよ》
「しかも勃起まで……」
《疲れマラってヤツでしょう》
「……詳しいな?」
《私はシステムアナウンスですからね、解説は得意です》
「……耳年増」
《あの、一応これでも世界が生まれた前後に誕生してるからタタラさんよりも歳上ですよ私》

 身体が刺激され息の上がる青年に気を良くした家主は、遂にその下半身を向きその性器を露出させます。雄々しく天を衝く様にそそり勃つその大きさに、家主は息を呑みました。

《ちょちょちょちょちょちょちょちょっと、フィギュアで見たよりも遥かに大きいじゃないですか!?》
「いや、フィギュアよりは大きいだろ……」
《いや、比率がバグってますって!?》

 因みに、タタラのフィギュアで再現されたモノは本体の半分ほどで『料理長』が部屋でお楽しみしたモノに比べて本当に大きかったりします。
 完全再現出来て無いやん、どうしてくれんのコレ?

《前回の姉さま、コレを受け入れてたんですか!?》
「いや、劇だし本当にヤッてた訳じゃないし……」

 息を荒くする家主に恐れを抱く青年ですが、身体は上手く動かず。そうして家主は青年を貪りました。

「……だからな『料理長』、劇だから本気でやる必要無いんだって。モノローグで終わるから」
《いや、でも……何れは本編でも私がタタラさんのお嫁さんになる為には必要ですし》
「いや、成れるかも分からんだろ。一応、『看板娘』はエロ禁止だし」
《でも私、脱ぎましたよ?》
「アレもどうかと思ったけどな……」

 髪を振り乱し快楽に耽る家主と、貪られながら極上の女体を味わう青年。吹雪は一週間続き、その間に家主と青年は只管にまぐわいを続けました。
 時に青年が家主を壁に押し付け背後から犯し、時に家主が風呂へと誘いその身体で洗いつつも青年の胤を絞りました。互いの身体を開発しあい、身体を貪り合い……二人は快楽に溺れて行ったのです。

「遂に地の文が勝手に進めたな……」
《わ、私とタタラさんって二人暮らしだとこんなにえっちにされるんですね……》
「いや、これ基本的に俺とエテルの二人暮らしの日常だと思う」
《ふぁっくってヤツですね》

 やがて吹雪が止み、家主との性活に終止符が訪れました。
 青年は小屋を後にし、村へと戻りました。長い期間留守にしていた青年を心配した村人達でしたが、青年は何が有ったかを頑なに話しませんでした。
 やがて雪が溶ける季節になり、青年があの山へと向かおうと考える頃に一人の尋ね人がやってきました。

《もし、失礼ですがご在宅ですか?》

 聞き覚えのあるその声に戸を開けば、そこにはかつて見た女性が一人。その姿はかつての美しさのままに、一つだけ違う場所が有りました。
 大きくなった腹部を撫で、かつて共に過ごした家主の女性は告げます。

《責任をとって娶ってください》

 何処か勝ち誇ったように、そう言った。

−終幕−

「……雪女要素が遭難くらいしかねぇな!?」
《正体を明かしたら殺すとかの話がぶん投げですね!?》

生存するか否か

  • 生き残る(元は生き残る予定)
  • 生き残らない
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