既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント進行中。
最近、コーエーテクモゲームスの三國無双ORIGINSに再度ハマっている体たらく。個々の武将と絆を積み上げていく度にかつて一世を風靡した恋姫無双にこの主人公出してイベントをORIGINS風にしても成立するなと思考した次第。誰か書いてたりするんだろうか?
それはそれとして、虎熊家関連は話が迷子になるのなんで?
夕飯を終えた俺はダリアと当主代行を工房へと誘い、作業台の前で魔導式ワードプロセッサを取り出す。そのまま朝に話した『念話』と『感応』を活用した録音機の設計図を描き、説明する。
「コレは朝に話した魔道具で、録音した音声を『念話』で飛ばして『感応』で受信する事で相手に伝える魔道具になります」
「原理としてはとてもシンプルですね」
「複雑化する必要は無いからな、そもそもがアリーナでカメラや照明なんかの設備スタッフが連携する為に作った魔道具の応用でも有るし」
そう、あの時片手間に作った魔道具と録音機を繋げただけのシンプルな代物だ。
「そりゃ極短時間だけ『念話』を使って対象の頭に文章を記憶させる魔導具も思い付いたけど」
「ほう、それ程に便利な物もか」
「脳に直接的に叩き込むから下手したら脳が焼き切れる兵器になります」
「うむ、そちらはやめよう!」
以前思い付いた事が有る物で、脳へ直接的に高負荷を掛ける代物である。だいたい俺の書いた翻訳本1冊分、100頁でだいたい600程の単語と翻訳過程を10冊分も叩き込めばギリギリ死にはしないがぶっ倒れるくらいまでは追い詰められのではと思っている。それこそ都営図書館に有る古代書103000冊分もぶち込めば廃人へ確実に追い込める……いや、これにすら耐えられるであろう奴が過去作に居たけど。
あの前皇帝と共に建国に携わった魔法使いどうしてるかな、建国直後の王国時代は王立魔法学校の校長やってその後魔法研究所の所長やってた筈だけど……前皇帝の子供産んでから失踪してるらしいけど詳細が分からないんだよな。
「マスター、その兵器の作成については?」
「実験にはモンスターを使えばいいとは思うが、発信器と受信機が必要だから相手に付ける必要あるし何よりコストがな……行き着く先は拷問器具か処刑用具じゃねぇかなコレ」
某
末路を聞いた当主代行は顔を蒼くしている、そりゃそうなるわな。
「取り敢えず、音声を流すインカムにするかな。台詞を何処かに映そうとすると観客席から見えるし」
「儂が姿を隠す、と言うのは……」
「肝心要の国交相手が姿見せないとかあり得ないでしょう?」
俺の返答に諦めの溜息を吐く当主代行、そんなに台詞を言うのが難しいのだろうか?
「当日ってお義母さんも参加しますよね」
ここ最近は俺の無茶振りで『バイト長』の稽古に時間を割いて貰っているが、お義母さんも国交樹立の宣言辞にはアリーナに居る予定では有るのだ。段取りとか全く参加してない様にしか見えないんだけど大丈夫なのだろうか?
俺の言葉に対して当主代行は物凄く言い難そうな顔をして、口を開く。
「儂が渡された台本を1時間読んだら完全に覚えた……と言ったら信じるかね?」
「……お義母さんならやりますよね、それ」
多分、お義母さんは暗記が得意で更には演劇にも造詣が深い。舞手をやってるくらいだから作者が意図した演出に対しての理解力も高いだろうし、下手したら出演者全員の台詞を覚えていても納得する。
この事をある程度噛み砕いて話したら苦笑いと共に頷かれた、四葩とは方向性が違うけど天才の類なんだよなお義母さん。
「華澄は儂に出来ると言うが、正直算術や話術に脳が向いておらん」
「台詞を覚える事が算術や話術に繋がるとは思えないのですが」
「数式を台詞、話術を滑舌って思ってるんじゃないか?」
それでも大分支離滅裂な例えだと思うけどな、それだけ参ってるってことなのだろうか?
「……少し、台本を見せてもらってもいいですかね?」
「む、台本をかね?」
本当は当日の楽しみにしておきたかったのだが、背に腹は代えられない。台本を読んで学習装置って訳では無いが、楽しく覚える教材くらいのノリでなら何とか出来るかも知れない。まぁ、多分に
そんな事を考えている間に当主代行は台本を取り出して渡してくる、何度も捲って読み直したのが分かるくらいに膨らんでいて、読み返しやすいように付箋が貼られている。本当に向いてないなりに努力してきたのが分かりやすい。
早速台本を開いて読む。が、3分で挫折した。
「なんだろうこの仰々しく詩的でやたら迂遠な言い回し……」
頭痛に襲われて額を抑える、こんな長台詞を覚えろとか鬼畜かよ。
「むぅ、此方では普通なのではないか?」
「いや、俺も歌劇には詳しくないですけど言いたいことが1/3も伝わらないってか伝えるべき言葉はこの中の1/4くらいしかないですよ」
空回りする純情な感情でもあるまいに、つか国公樹立の宣言なんだから当人達にはシンプルな言い回しをさせた方がスッと耳に入るだろ。
「マスター、言うほどでしょうか?」
「なら前に俺がゴーレムに伝えた前世の作品の演説、こんだけ装飾語付けられてたらどうだ?」
「シンプルに駄作ですね」
あの艦長の演説はシンプルに大人として語り掛けている言葉だからいいのだ、やはり感性の近いダリアは分かってくれる。何か当主代行も頷いているけど。
「……その演説と言うのは?」
「アリーナ建築時に悪乗りして前世の作品で大好きな場面を再現したんですよ、そしたらウケがよくて……って」
質問に答えたがその相手は今まで居なかったはずのお義母さんだ、当主代行も驚いている。
「あれくらいの長さの台詞を覚えられないのをどうかと思いましたが、夫とタタラさんにとってはそれだけ無駄が多いのですね?」
「ええ、まぁ……いや流石に帝国と陽出國の美辞麗句だけで何行使ってるんですかねこれ?」
流石に話の流れが滞ると思う、台本作ったのって誰なんだろうなコレ?
「読み物としては面白いですよ、会話劇みたいで」
「小説なら許されてもコレ舞台上でやる演劇なんですよ」
会話劇ってか前世で一部に流行ってた台本小説まんまである、それでもこんな無駄に単語を組み合わせた長台詞は嫌われてた訳だし延々と聞かされてたら寝るぞ俺。
「ふむ、ではタタラ殿ならどのような脚本にするかね?」
「え、俺なら以前言ったそのままですよ」
商会長、成金さん、法務長の三人のアーレムお披露目から当主代行の空挺で終わり。台詞はだいたい『この二つの異なる文化を待つ国が繋がる善き日、願わくば共に支え合い発展し続ける事を願う』くらいで終わらせるだろう、長々と『素晴らしき歴史〜』とか『神に愛されし王権の〜』やらの長文は語らない。そんなのは吟遊詩人にでもぶん投げていればいい。
「ふむ、でしたら前に行ったという演説を聞かせていただけないでしょうか?」
「それなら私が記録を残しています」
「お前それ幾つ持ってるんだよ……」
「儂も写しを貰っておるぞ、楽曲を追加した編集の物が特にお気に入りだ」
「なんでそんなのまで増えてんだよ……」
あの演説には相応しい楽曲が存在してるのだが、魔導式ワープロの思考制御機能で流せねぇかなアレ……試してみるか。
「それならこの魔導式ワープロで本来の物が見れるか試してみていいですかね?」
『本来の物?』
三人が疑問に思った所で以前のように魔導式ワープロと空間投影式プロジェクターに繋いであの名シーンを思い出す、するとプロジェクターには画像が流れ始め魔導式ワープロからは音が流れ始める。流れる映像は太腿にマーキングされた量産機が並ぶ場面で、艦長の一言目が終わるタイミングで楽曲がスタートした。
「この音楽は……」
「俺の前世の作曲家の物ですね、上手く流れてくれたな」
「始まりのなんと引き込まれる事か」
お義母さんの呟きに軽く説明すれば、当主代行は早速最初の弦楽器による始まりで心を掴まれているらしい。わかる、俺もこのシーンで一気に引き込まれた要因だし、何なら後に出たこの曲を元にして作られたボーカル曲は一番のお気に入りになったくらいだ。
映像は続き、艦長による演説を背景に様々な人が最後の作戦に向けて慌ただしく準備を終えていく様が映されている。虎熊家夫妻は子供達が出撃する様子に眉を顰めるが、同時に人より遥かに巨大な鎧の姿にこれならとも考えているらしい。
「これは、何故自然と人は浮いているのですか?」
「この戦艦は星の海を航海していて、星の海には地面へ引かれる重力が無いからだ。だから戦艦の床に立てるように足裏には電磁石が仕込まれてて、それのオンオフで人は移動を楽にしてる」
「なんと……マスターの前世の科学について詳しく知りたいですね」
「くっそ難しくて俺も上手く説明出来ないから勘弁して欲しいな」
ニュートン先生の万有引力と、アインシュタイン先生の特殊相対性理論を説明しろと言われても目茶苦茶難しいのだが……ダリアに納得して貰えるくらいに細かく話せるだろうか?
そんなやりとりの横で映像はクライマックスへ、ロングレンジのカメラアングルから近付いていく先に移る白亜の宇宙戦艦に続き主人公の白い一角獣が映り込むタイミングで楽曲は最高潮に。当主代行はもう男の子を前面に出して身を乗り出しているし、お義母さんは艦長のシンプルながら軍人を……いや大人が未来を守る為の演説を聞いて頷いている。
最後に一角獣の背後から量産機がアタッチメントを接続し、主人公の出撃する旨の声の後に一角獣が出撃するシーンに続いた事でダリアはその機構に興奮している。外部接続で燃料直結式のブースターとか確かにダリアは好きだろうな。
演説も終わっていたので画面を消そうと思ったのも束の間、そこから黒い2号機が近付き味方が無力化されるシーンをチラッと流してしまえばダリアと当主代行が切り上げようとする俺を止めてくる。目が血走っててマジで怖い。お義母さんも異世界の演劇を楽しみたいのか映像からは目を離していない。
そして主人公を感知して上を向く作中の被害者の一人とも言える若い軍人の視線の先、一条の光を放ちながら急接近してくる一角獣。エンディング曲が流れ始めるのと共に二人が互いの名前を呼んだあと、光の剣を抜き放ちぶつけ合い離れた所でカメラが移動し暗転。やっぱりこのエンディングの入りは神がかってるな。
此処で映像を終えようとすれば今度はお義母さんから睨まれた、異世界の歌が気になるらしくやめさせて貰えない。いや、前世でストレス発散の一人カラオケでMV見ながら歌うの好きだったしエピソード5の英語のヤツ以外は歌詞も覚えてるからちゃんと流せるけどさ。怖いのでスタッフロールも含めて全て流し終えた所でようやく終わる事が出来た。
「前世で特に好きだったシリーズ物、その中でも特に好きな演説のシーンですけどどうでした?」
『系統物全話の視聴耐久で一つ』
「勘弁してくれ」
数十年の歴史を持つアニメのシリーズ視聴耐久とか何日必要だと思ってるんだよヲタク二人、殆どのシリーズが50話近いんだぞ。
「……コレがタタラさんの触れてきた演劇ですか」
「前世のって頭に付きますけどね、更に言えばコレは絵を高速で流し続ける技法で作られているんですよ」
「絵巻なのですか!?」
「原作は小説で、それの売り上げがとてもよくてこうして映像にされたって経緯は有りますけどね。前世ではああ言った巨大な兵器は完成して無いので殆どが想像された物です」
まぁ、現実に無いから憧れてドハマりする人達が多かったのだが。妄想の世界に浸る事に世間の目は冷たかったし、現実に向き合えとかいう人達だっていた。人の趣味にとやかく言ってほしくはなかったが……まぁ、語りたがりのヲタク達とコミュニケーションが取り難くて嫌厭されているのは仕方ない面もあると思ってる。
「もしやタタラ殿、アーレムと言うのはコレを参考に?」
「いえ、その辺は全く関係ないです。競技についてはまぁ、此等の作品を元にした外伝で自分の作った物を戦わせる遊びが流行っていた世界の物が有ったので多少は参考にしましたけど」
残念ながらそっちは未履修なので映像は流せないのだが。仕事の忙しさに追われて見れず、退職して落ち着いたから一気に観ようとしたら死んだからな……あの青春物楽しみにしてたのに。改めて腹立ってきたな。
しかし、魔導式ワープロが想像以上に高性能だな。ちょっと思い出すと映像が流せるのは前に知ったがまさか好きなシーンを再現出来るとは。頭の中で特務機VS専用機のシーンを流してみれば見事に映像は再現され、3vs1の状況下で尚打ち勝つ例のシーンを完全再現出来た事に満足する。
「マスター、今のシーンもう一回!」
「タタラ殿、他に好きな場面が有ればそれも!!」
「落ち着きなさい!!」
大興奮のダリアと当主代行に対して拳骨を落としながら叱るお義母さん、二人が頭を抑える姿を見て溜息を吐いた後に俺へと向き直る。
「タタラさん、此等の映像を記録結晶に入れて貰えませんか?」
「前世の著作権上の問題でやりたくないんですけど」
違法アップロードや盗撮、コピーして配布はダメ絶対。
「当主代行がこう言うの好きなら台本を映像化して観れば自然と覚えるかなって浅い考え方から試してみたんですよね、俺が台本を覚えるのが苦しいんで無理そうですけど」
「なる程……例えば今の絵巻で、この人が好きそうな場面って他に有りそうですか?」
「そりゃ長めの台詞付きですけど複数有りますよ」
戦う事に嫌悪感を持つ主人公に対して歯車として生きる軍人が心の大切さを説く所とか、敵対してたキャプテンと砂漠を旅する中で戦争と社会システムと人の複雑さを説く所とか。何ならキャプテンをお父さんと呼ぶ彼女のシーンとか大好きだろうし。
と、思い出すうちに自然と映像化して流されたらしく当主代行はガン見してる。尚、軍人が主人公に敬礼を向けた後に殉職する場面で悲鳴を上げたし、キャプテンが死ぬかも知れない場面で発狂しかけてた。うん、気持ちは分かる。
一通り見終えた後、少し疲れ気味の当主代行に向けてお義母さんが声を掛ける。
「……貴方、かの軍人が少年へ向けた言葉。覚えてますか?」
「無論」
お義母さんの質問にそう答えて、俺の胸に人差し指をついてあの台詞を言う。声音から動きまで完璧である……マジかよ。
「なら、あの船長が少年と語り合った言葉は?」
「当然だな」
俺を主人公に見立てて一芝居、俺は映像を何度も観たことがあるので普通に台詞を覚えているが当主代行は一回見ただけなのに普通に台詞を言えている。何なのこの人。
「……タタラさん」
「はい」
「台本の映像化、お願い出来ますか?」
「無茶だよそれは」
あの長ったらしく無意味に単語を付けられた台詞を覚えて場面想像しろとか苦行だよ、せめてもっと台詞をシンプルにしてくれ。
「マスター、もっとこうこの兵器達が戦うシーンを観たいのですが」
「正直、あの特務機3機と専用機が戦う場面以上の戦闘シーンは無いぞ」
あの場面だけで最初に渡された製作費全部使い切ったとか噂のある伝説の数分だ、ワクワクするってのならエピソード3で様々な巨大兵器が出て来て戦う場面の方も有るけど……アレはラインナップがマニアック過ぎるしな。それならライバルが逆襲してくる昔の劇場版の主人公とライバルの戦いの方が作画は古いが見応えあると思う。
「先程とは違う兵器のデザインですね」
やってしまった。プロジェクターからは白い主人公機と深紅のライバル機が互いに武器を消耗しながら殺し合う最終局面が映像で流れている。驚く事に、俺の記憶を読み取っている筈なのに作画が当時のものでは無く翼をタイトルに冠するアナザーの劇場版とか星屑の記憶クオリティである。それならいっそ一角獣もセル画風味で出力して欲しかった。
相変わらず演出が化け物じみている所に作画の暴力も相まって目茶苦茶引き込まれる、時代劇を参考に光剣での殺陣を作ったらしいが余りにも動きに無駄がなくどういった理論で動かしているのかを何となく察せるのが流石の演出か。
「……この殺陣を考えた者、只者では無いな。足を付けずに行うすり足の活用法、瞬間的に飛べる事を活用し空振りを誘発する戦術。上下の交差で光剣が途切れなければ赤い方が勝っていたが、これは恐らく魔力切れか。継戦能力の高い白い方が戦場では有利、とは言え紙一重の差よ……すれ違い様に顔を蹴る抜け目の無さも相当なものだな」
「私はそれより前の白い方がやった魔導銃の罠に感心しますね、遠隔で射撃し的に当てるのはどれだけの計算と経験のうえに成り立つ物なのか。その後に赤い方が投げた手斧が白い方の魔導銃を破壊した点も見事に過ぎます、少しズレていたら白い方を撃墜していたのではないでしょうか?」
武芸者としての視点を持って2機の戦闘を分析する当主代行、早口オタクの素質十分である。因みにダリアは戦闘シーンを食い入るように観ていて、今後『トリテレイア』で空中戦をやる際にコレを参考にするつもりなのだろう……目茶苦茶怖いなおい。
場面は進み巨大な隕石を地球に落とさせない為に押し返そうとする主人公と、それに賛同した兵器達が敵味方問わず隕石に取り付いていく。主人公の悲痛な叫びと、限界から爆発して離れてしまう兵器の姿をダリアと当主代行は固唾を呑んで見守っている。
そして溢れ出る緑色の光、それに弾かれる兵器達と光に包まれて地球から離れていく巨大隕石。それを見守る人々が映され最後に赤ん坊の声が流れて始まるエンディング、コレまた名曲で好きなのだが……うんお義母さんが睨んできたのでスタッフロールを最後まで流す事になる。
「マスター、今の物は」
「シリーズ初代主人公とそのライバルが決着を付ける物だな。だいたい2時間くらいの作品だ」
「ならば!」
「あの、目的はあくまでも当主代行が演劇の台詞を覚える手段を探すことですからね?」
流されるままに魔導式ワープロで映像を流しているが、主目的は当主代行の台詞を覚える手段の模索である。俺の言葉で三人がバツの悪そうな表情をするが、好きになった場面なら覚えられると分かっただけでも良しとするべきだろうか?
「仕方ないですね、明日は歩行訓練も兼ねて私と『バイト長』さんも夫についていきましょう」
「へぁ?」
お義母さんの突飛な発言に変な声が漏れる。
「夫が台詞を覚えられない理由は分かりました、改めてタタラさん……先程の映像を頂きたいのです。ただし、条件付きで」
「条件……?」
映像を渡すのは忌避感が有るが、お義母さんの条件って一体?
「出て来る人物や兵器達を私達やアーレムに置き換えた物、それを出力して記録させて下さい」
「最悪な二次創作じゃねぇか」
人物や団体をすり替えて物語をなぞってるのにオリジナルです、とかオマージュ通り越して虚仮にしたパクリである。何かこの世界に対してとんでもないブーメランを投げた気がしないでもないな今の。
「役者や兵器の肖像権は守られていますのできっと赦されますよ」
「重要なのはそこじゃねぇんだよなぁ……」
例え兵器の見た目をアーレムに差し替えようが、主人公達を俺達にやらせようが物語をパクってる時点で致命傷である。とは言え、当主代行の覚えられる台詞の取っ掛かりはその場面を好きに成れるか否かと言った具合だ。お義母さんの考え方にも一定の納得が出来てしまうえるのが状況を複雑にしている。
「……映像はお渡し出来ません、これは絶対です」
「そう、ですか」
「なので、明日は俺もついて行ってその場で映像を流します。その上で人物を俺達に置き換えて、オリジナルでは無く本来の物を見せられない為に差し替えた物だと伝えて、記録媒体に残さない……それが条件です」
台本書いた人が誰かは分からないが、シンプルな言葉でも人の心を動かせると理解させればいいのだと思う。なので、台詞や場面で演出とは引き算であると理解させる事に前世の作品を活用する。
正直、これですら罪悪感というか気持ち悪さが残るが。
「いいのですか?」
「今は『バイト長』に出来る仕事を一つでも増やす事が課題ですから、秘書代わりとして置いて適性を見出しつつ出来ないなりに慣れさせる事が大切でしょうしね」
お義母さんはきっと俺の心情に対していいのかを聞いていると思うが、『バイト長』を利用する形でそこからは目を逸らさせて貰う。俺もまだまだ納得が出来ていないのだが、それでも当主代行には必要だし国交樹立の宣言は失敗すると幸先が悪い。なら、ある程度は清濁を飲み込んでしまわないとならない……これが大人になるって事なんだろうか?
「分かりました。それではタタラさん、『バイト長』さんの外行き用の靴をお願いしますね?」
「……お義母さん、実は『バイト長』を着せ替えさせたいとか思って楽しんでません?」
「あらあら……」
俺の言葉に笑って返すお義母さん、否定を一切してねぇのよ。
都市祭まで後少しって所で台本変更とかとんでもない事案になりそうだが、それでもと挑む当主代行を筆頭とした3人を見送った後で『バイト長』に来てもらう。
《あの、どうしたのです?》
「明日、急遽お義母さんと一緒に外に出る事になった。だから『バイト長』は外履き用の靴を作る必要がな」
《それは勿体ないのです……》
「いや、まだ歩くのには馴れてないだろ。上履き用と鍛錬用で分けてるのは靴底がすり減って転びかねないからだし、外履き用も用意してないとまたバランスが崩れるからな」
遠慮しがちな『バイト長』に必要だからと説く、この子は基本自己評価が低いから必要生を伝えて受け取らせるしかない。手の掛かる妹感覚であるが、日に日に距離が近付いている気がする。まぁ、性根が素直で良い子だし好ましく思うのは普通だよな。
渋々と言った『バイト長』を早速椅子に座らせてから以前と同じ様に靴を作り底を削る、思えば靴の色分けとかしてなくてパッと見て間違えそうだなと考えてこの外履き用は赤く染める。
《赤いのです》
「視覚的に分別がつくように、な。家と稽古用の物と間違えるなよ?」
《はいです!》
気合の入った返事に苦笑いしつつ、少し意識を切り替える。
「『バイト長』、聞きたいことが有るんだけどいいか?」
《?》
俺の前置きに疑問符を浮かべる表情で答える『バイト長』の前で、俺は二本の剣を取り出す。『料理長』と『清掃長』から其々預かった剣だ。
《中姉さまと下姉さまの剣……なんでタタラさんが持ってるです?》
「『料理長』からは報酬として貰った、『清掃長』からは……ほら」
見慣れている物なのだろう俺が持っている事に疑問を持つ『バイト長』へ事情を説明しつつ、『清掃長』から預かった方の剣身を鞘から抜いて見せる。見事に砕けているその惨状を見て、『バイト長』は大きく目を見開いた。
《なんで
文字通り悲鳴を上げる『バイト長』に対して疑問を持つ、何故『バイト長』は今砕けている事に驚いているんだ?
何れは砕ける、という前提が有るとしてそれはまだ先の事なのだと彼女は言っている……いや知っているのか?
「なぁ、『バイト長』……この剣は何なんだ?」
《何を言ってるですタタラさん、これは……あっ!?》
何かを言おうとして、『バイト長』が固まる。何だ、この剣は『清掃長』が言っていたような御守りでは無いのか?
であるならば、コレが作られた経緯と理由は果たして何なのだろうか。何故コレを俺に渡した『料理長』は溶かしてもいいと悲しげに伝えて、『清掃長』は渡す時に懐かしそうな顔をしていた?
彼女達が本質的に俺達と同じ時間の流れの中で生きていないにしても、このズレは一体何なんだ?
「俺は『清掃長』からこの剣は姉妹共通の御守りだと話を聞いた、しかし……」
何となく、あくまでも何となくの勘でしかないがこれと同じ物を『天使長』も持っているのではないかと思う。『清掃長』は『天使長』を除いた三姉妹が持っていると言っていたが、『天使長』も同じ物を持っていてそれを隠している……または、『清掃長』の言う通り『天使長』が持つ物は同じでは無いのか。
「正しくは違うんだな?」
《……言えない、です》
肯定も否定もしていないが、実質答えたような物だ。『清掃長』は俺に嘘を吐いていて、『料理長』は俺にこそこの剣を持って欲しかった。ならば、この剣は何なのだろうか?
御守りと言った『清掃長』の言葉は正しくは無いが、間違ってもいないのかも知れない。正しくは、『
ここ最近の『看板娘』達の動き、『常闇の洞』の深部へと向ううえでの戦力の拡充に繋がるような動きが果たして偶然なのだろうか?
それに、『バイト長』が言っていた『清掃長』の剣が『今』砕けている事がおかしいという点。彼女達の時系列は恐らく、『深く深い闇の先で』の『看板娘』イベントを一度完走してからの2周目である筈だ。でなければ俺と出会った時の『天使長』が取り返した翼を抱いて泣いていた筈が無い。
仮に3周目以降だとしたならば、取り戻した翼を今度は誰に奪われたのかが疑問が残る、今朝『清掃長』が言っていた事に照らし合わせたとしても『天使長』に対して徹底的なメタを張って油断させなければ口約束という形でも契約する事は無い。一度翼を奪われた『天使長』が、同じ事を警戒しない訳もない。『看板娘』は地上のどの存在よりも学習能力が高いとされているのだ、屈辱とも言える記憶をそのままにする筈がない。
何か、それこそ他の姉妹達よりも信頼した誰かが裏切らない限りあの『天使長』の油断をする事などある筈がないのだ。そして、この世界で『天使長』から全幅の信頼を預けられてなお裏切られるような存在が有るとも思えない……いや。
「……分かった、言えないのなら言わなくていい。だが、一つ教えてくれ」
《……答えられることなら》
俯いてしまった『バイト長』へ向けて、やたらと乾く喉で無理に唾を飲み込んでから言葉を放つ。
「俺は、お前達『看板娘』の味方でいられるか?」
そう、コレだ。俺自身が疑う裏切者である可能性が一番恐ろしい。俺が何か、それこそ最深部の魔神やその協力者にしてイベントで『天使長』から翼を奪った存在に操られて『天使長』を害した可能性。俺の傍らには神々からの干渉すら弾けるポテンシャルが有ると『料理長』が語った『厄切』が存在しているが、同時にまだこの概念武装は世界に存在している歴史が短過ぎてそのポテンシャルを十全に発揮出来ていないのだ。そんな『厄切』の限界を越える洗脳系の魔法を使われてしまった場合、俺は『天使長』の敵になってしまう。
それは駄目だ、俺はあの人が例え
《タタラくんは、ずっとボクの……ボク達の味方です!!》
そんな俺の思いなんて知らない筈の『バイト長』はそう叫んだ、その目には涙が溜まっていて激情に駆られているのが分かる。
《タタラくんはずっとずっと私達を大切にしてくれたです、今だって仕事が出来ないボクの為にいっぱいアイデアをくれるです。自分の事で忙しい筈なのに、ボクの為に靴も作ってくれたです。師匠にお願いもしてくれたです、ゴーレムくん達がボクを助けてくれるようにお願いもしてくれたです。そんな、そんな大好きなタタラくんが進んでボク達を裏切るなんて無いです!!》
転びそうになりながら俺に近付いて来た『バイト長』は、俺のシャツを掴んで必死に訴えてくる。
《そうです、タタラくんは裏切って無いです……むしろ裏切ったのは──》
何かを続けようとした『バイト長』の身体から力が抜ける、そして再び顔を上げた時には無表情を作っていた。雰囲気が違う、この空気感は以前も相対した記憶が有る。
「……身体は作ってないのかよ、
《緊急でしたからね》
前は『天使長』、今回は『バイト長』の身体を依代にして
「『バイト長』が俺に何を言おうとしたかは聞かない、お前が緊急で出て来るって事は俺が知ったら駄目な事だろうからな」
《理解が早くて助かります、タタラ・ジュロン》
「……まぁ、それはそれとして後でお前のいない所で神像は作るから」
《やめて!?》
有言実行、約束は果たさなきゃならないから仕方ない。
「それで、『天使長』に続いてか」
《この子もあの子も貴方に肩入れし過ぎなのですよ、不用意に因果を捻じ曲げる事を伝えようとして本当にもう》
「いや、それなら『清掃長』はどうすんだよ。俺の
《そもそも、
俺のシャツを掴んだままの『バイト長』の身体を借りた
「幾つか確認したい」
《答えられる事であるなら》
「それなら……この世界は今、
俺の質問に対して
《……この世界は現状、幾つかの
まさか時間を置いてから答えられるとは……答えて貰えない問いか(キリッ)とか言ってたのが恥ずかしいな。
「最悪、この都市が滅びる可能性は?」
《
「いや、高くねぇか!?」
俺が本来背負う
《貴方の存在が
「状況がマジで災厄じゃねぇか」
つまり、前に想定したというか考えた各ヒロインルートのラスボスが徒党を組んで現れるって事だろ……四葩が出張れば二体は瞬殺出来るし古代兵器相手は俺が出張れば何とかなるか。特に大したことでは無いか?
《そして最大の問題なのですが……》
「……いや、溜めないでくれ。不安になる」
言うべきか逡巡する
《その災厄に合わせて最深部の問題が表へ噴出してくる可能性が非常に高くなります》
「馬鹿じゃねぇの?」
間違いなく俺達は地下最深部へと降りてないと駄目だろう、単体で『ワールウィンド』を消し飛ばすような存在がラスボス揃い踏みに乗っかるとか絶望するわ。と言うか、それなら気になる点が出る。
「『料理長』が言っていたが、『天使長』がその一番奥にいる奴と戦って封印してるんじゃないのか?」
《あくまでも撃退が出来る前提、弱らせた上での封印ですよ。相手も長女との戦闘を重ねて学習します……貴方の寿命までは保たせるつもりでしょうけど出来る筈がありません。最後には敗北して吸収されます》
「……は?」
あの『天使長』が負けるのはまだ理解出来る、納得はしたくないが。だが、その上で吸収されるって何だ?
「待ってくれ、なんで『天使長』が敵に吸収されるんだ?」
《……それは、あの子が貴方に話す決意が出来たとき本人から聞くべきですね》
「それならなんで『天使長』はそんな危険を冒してるんだよ!?」
《……貴方のため、それ以外にありますか?》
納得出来ない、理解出来ない。ただ家に帰る手段を作っただけの男に何故そこまで親身になれる?
身を捧げるにしても献身が過ぎる、俺はあの時何を言って『天使長』を縛り付けたんだ?
《忘れてはいけませんよ、タタラ・ジュロン。あの長女は貴方を想い、貴方に献身する事を厭いません。その身が砕けようと、汚されようと……貴方の為と定めた事を突き進むのです》
目の前の
《もしもあの長女を止めたいのなら、押し倒して犯せばいい。貴方の押し潰した本心を解き放つだけなのですから、簡単でしょう?》
「ブチ殺すぞテメェ!」
その身体が『バイト長』でないのやれないが、もしもコイツが自身の身体を持っていたのなら殴っていただろう。そんな俺の姿を見た
《何を怒るのですか、あの長女なら喜んで受け入れて貴方の子を産みますよ?》
この
《尤も、それをして
殴りたい、この笑顔。何時もの『バイト長』の笑顔とは真逆の不快感を覚える物で苛立ちが加速し続けて重力圏を突破しそうだ。
「……『看板娘』にはそう言った事が出来ない制約が有った筈だ」
《貴方の前で脱ぎ、関係を持とうとした三女が居るのにそれが今も働いていると思い込むのは無理でしょう?》
「なら聞きたいんだが、何故俺にはそれが働かなかった?」
コレは前に覚えた違和感の答えを求めての質問でもある、何故本来ならエロに関われない『看板娘』達が俺を前に肌を晒せたのか?
《次女が言っていたでしょう、貴方は最大の特異点だと》
「確かに言っていたが、それが?」
《アレは単純に今存在しているという事では無く、現在に過去そして未来で貴方を越える存在の歪曲を引き起こす存在が居ないのですよ》
《そんな特大の影響力の下に存在していた娘達が、変容せぬ訳も有りませんよね》
《あの娘達を歪めたのはタタラ・ジュロン、貴方が原因です》
聞きたくなかった、向き合いたくなかった事を言われて鼓動が早くなっていく。
《有り様を歪められ、恋に囚われ……そして加速度的に壊れていく》
《この子も可哀想に、本来の在り方から歪められてその役割を失いつつある》
《貴方の知らない事実を語りましょう、貴方の世界で貴方の読んだ資料には載っていなかった物です》
目前の存在の言葉に囚われる、どうしても抜け出せない深みに嵌まるのは分かっているのにその言葉の続きを聞かない選択肢が取れなかった。
意図は察せられる、コレから告げられる言葉は俺の心を殺す目的の物。俺の心に確かな罅を入れる物だと。
《貴方達が『看板娘』と呼ぶこの存在は、長女を殺す為に妹達が作られたのですよ》
それは『看板娘』の姉妹愛を否定する言葉だと、俺には感じられた。
おまけ『赤頭巾』
昔々そのまた昔、ある所に無垢な白き頭巾を獲物の血で赤く染める『赤頭巾』と呼ばれる者有り。名をタタラと言う。
「えらい物騒な設定付けられたなおい」
タタラは森の奥に住む祖母が病にて倒れた為、母の命を受けて森の奥へと進む事となる。
「……今回は此方のポジションなのね、私」
「祖母のポジションじゃなくて良かったですね都市長」
「ぶん殴るわよ?」
母から届け物を受け取り、鬱蒼と茂る森を進まんとするタタラ。その姿を見て、声を掛ける者あり。その者こそ赤頭巾と共に技を競い、磨き、双璧として語られる女狩人であった。
「こらこらそこ行くタタ頭巾、この先の森は狼が現れるぞ?」
「……狼役だと思ったら狩人役なのなエテル」
「えー、私が狼役って何?」
「肉食だろお前」
「この場で狩られたい?」
「すみませんでした」
森を行かんとするタタラに狼が現れる旨を伝える狩人だが、タタラはそんな事を気にする器では無かった。
数多の獲物を狩り、無垢な頭巾を赤で染めたタタラは心配無用と森へと歩みを進めていく。その後ろ姿を見届けんとする狩人はしかし、森の狼を警戒してタタラとは別方向の森へと進んでいった。
タタラが進む道には狼の群れ、一頭一頭が飢えタタラへ向かい唸り声を上げる。
「たー!」
「らー!」
「……お前達までやってんのか、ご丁寧に犬耳付けられて狼仕様かよ」
『たー!!』
タタラへと一斉に飛びかかる狼達。しかし、相手は返り血にて頭巾を染めた赤頭巾。その武、その暴はまさに万夫不当。向かってくる狼達を打ち払い、屍の山を築きながら血の川を進む。
「たー……」
「らー……」
「うん、なんか胸が痛くなるな」
そうして、狼の一団を殲滅した頃に乾いた音が響く。タタラがそちらに目を向ければ、東方の衣服である着物を崩して纏い頭頂から獣の耳を生やした一人の女がいた。それは以前、タタラが怪我をしていた所を助けた逸れの狼であった。
「……狐なのに狼役?」
「拙者、そろそろ自分が分からなくなりそうでござるよ……」
まるでこの群れをけしかけたのが己であるかのように振る舞う狼に向け、タタラは構えを取る。しかし、狼はその姿に軽薄な笑みを浮かべながら躱す。
「根拠も無く拙者を疑わないで欲しいでござるねぇ。これでも拙者、一途で正直と巷では評判でござるよ?」
「はっ、俺がお前を罠から救った際に騙した奴が何を言う」
「そんな昔の事は忘れたでござる」
タタラが狼と出会った時、罠により足を怪我していた。その怪我を手当てし、家で料理を振る舞い寝床を貸したのだが狼はタタラの家の食料の殆どを盗み姿を消したのだ。幸い金品には手を出されてはいなかったが、食料を買いなおす必要があり出費が痛かったのだ。
「そも、拙者は礼として身体を差し出したでござる。お釣りくらいはいいでござるよね?」
「……」
「ふふ、どうしたでござるか?」
「いや、役とは言え男性恐怖症の一華にやらせんのは解釈違いじゃねこの設定」
「や、あの……拙者の身体的に男に身体売ってる説得力があるでござるし」
「ふざけんな、お前の身持ちの硬さ無視すんのは違うだろ」
「ま、前の『こんいちげ』でも拙者はご主人といっぱいしてる設定でござったし……」
かつての裏切りに対して怨み節を零すタタラ、それに対して飄々と躱しながらも嘲笑を返す狼。こんな関係を数年続けながら、それでも縁を切ることを何方もする事は無かった。その心の裡に秘めた本心、それは誰が語る事も許されない。
やがてその場を離れたタタラを見送り、森の奥へと潜り行き先を定めた狼。彼女は森を遥かに速い脚で駆け抜け、やがて一つの小屋へと辿り着く。タタラより先、その祖母の家へと着いたのだ。
「あら、貴方は」
「なんであとがきのおまけにご主人の育て親みたいな人が居るんでござるかね……」
「ふふ、シスターも人ですから。楽しそうな事には積極的なのですよ」
狼はタタラの祖母が療養出来るよう、少し離れた温泉へと配下の群れを使い送りました。
「たったっらっらっ」
「小さなタタラさんに運ばれるのは新鮮ですね……」
「落ち着いてるでござるな」
そうしてタタラの祖母を見送った狼は、着替えて寝ていたベッドへと潜り込む。
「む、胸元がキツすぎてシスターの服は無理でごさるよ……」
そうして待つこと暫く、ノックの後に合鍵で扉を開けたタタラが部屋へと入ってくる。
「お邪魔します。婆ちゃん、体調崩したから看病に来たよ」
「よく来たねぇタタラ」
家族へと向ける気安い口調を聞いた狼は笑い出すのを堪え、罠に掛かった獲物を貪る為に待ちの姿勢を取る。
そんなベッドの上から動かず、僅かな返事しかしない祖母を気に掛けたタタラは静かにベッドへと近付きそれを見た。先程邂逅した狼、その脱ぎ捨てられた衣服。それは目の前で横になっている相手が祖母では無く、狼であるとタタラが察するに十分な証拠。故に、タタラは警戒をしつついつかの反撃を試みる事に決めたのだ。
「……婆ちゃん、どうして婆ちゃんの耳は大きいんだ?」
「それはねぇ、タタラの声をよく聞くためだよ」
ナイトキャップからはみ出た耳を認識し、タタラはそう問い掛けた。直ぐ様返答した狼だが、タタラの名を呼ぶ事に気恥ずかしさを感じている。
「婆ちゃんの目はどうしてそんなに大きいんだ?」
「それはねぇ、タタラの姿をよく見るためだよ」
実際、狼は遠くからタタラの姿をよく見ていました。子を腕に抱きながら健やかに日々を過ごす姿を見守る事を日課とし、他の女と言葉を交わす姿に胸を痛めていました。
「なら……最後、にっ!」
「きゃあ!?」
ベッドまであと一歩まで近付いたタタラは、徐にその掛布を剥ぎ取り……隠れていた狼の身体を白日の下に晒しました。身をすくめ身体を隠そうとした狼の身体を押さえ付け、その豊かな乳房を揉みしだく。
「どうしてこんなに胸が大きいんだ?」
そう嗜虐的な笑みを浮かべて問い詰めるタタラと、久しく交わりから離れ性的な刺激を受けていなかった為に甘い声を漏らすに至る狼。
「どうして答えないんだ?」
「それは……あんっ」
答えようとする狼の言葉を遮るように、タタラは狼の素肌に触れて刺激を与える。抵抗らしい抵抗を見せない狼を脱がせ、タタラは己の肉棒を取り出す。その禍々しく反り上がった様を見て、狼は悲鳴を上げた。
「な、何故そんな大きくしているでござるか!?」
「それはな、狼……」
腰が抜けて逃げられ無い狼の秘処へと己の肉棒をあてがったタタラは、狼の耳元で静かに告げる。
「お前を食べる為さ」
そうしてタタラは久し振りに狼の身体を貪る事になる。幾度も幾度も狼を犯し、その心を削っていった。
しかし、そこへ乱入者が現れる。狩人がタタラを心配して祖母の家を訪ねたのである。
コレこそ天の助けと思う狼であったが、直ぐに絶望へと叩き落とされた。狩人は己の婬技を持ってタタラと共に狼を責め、その身体を雌へと堕としていく。やがて言葉を喋る事も忘れ、ただの雌奴隷へと堕ちてしまった狼。その身には、新たなタタラの子を宿してしまったのです。
狼が限界を迎えた故に、次に始まるのはタタラと狩人の勝負でした。互いが互いの弱点を知り尽くす二人の戦いは激しく、三日三晩続いたのです。
そうしてタタラの子を宿した二人は、タタラの嫁になったのでした。
−THE END−
「なんだこの……何?」
「拙者、此処だと基本ご主人のお嫁さん役でござる……」
「いいじゃんお嫁さん役、私基本的にラスボスだよ?」
「タタラ、少しは自重しなさい」
「好きな方と盛り上がるのは良いですが、他人の家でそうなるのは控えるべきかと」
「否定できない……」
「因みに候補には『狼と7匹の仔山羊』が有ったみたい」
「狼の俺と分身した7人のエテルか、死ぬしかないな」
「ううん、狼役のイッさんと7人に分身したタタラのお話だよ。ショタのタタラにイッさんが数の暴力に負けちゃう話」
「4Pで脳がオーバーフローする作者が8Pとか死ぬだけでござろう」
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない