既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント進行中
エウシュリー発売の『闇夜のPARENTE 幻燐の姫将軍Remastered』にハマってて執筆が遅れました、本当に申し訳有りません。
正規兵さんと並んでアーレム劇の稽古を眺めつつ、当主代行の台詞を必死に頭の中で構築し直す。
「……駄目だな、台詞を最適化しようとしても装飾語が多過ぎて最適化がそのまま台詞の短縮にしかならねぇ」
どうやら俺と同じ事をしていたらしい正規兵さんからそんな言葉が溢れる、俺も同じ結論に至っているために否定できない。
正規兵さんは俺に顔を向けて来る。
「タタラはどうだ?」
「俺も同じですね、あれならもう……」
相手を強者として見て台詞を言う方が合ってると思う。
頭の中に浮かぶのは某
「なんか有るのか?」
「俺の知る物語の台詞なんですけど、『貴様が挑むのは無限の剣、剣戟の極致。臆せずしてかかってこい』って台詞が有るんですよ」
「ほう、少し弄れば虎熊家の当主殿にも使えそうだな」
「因みに格上の狂戦士を前にした弓兵の台詞です」
「弓兵なのに剣戟の極致なのか?」
まぁ、アレはあの
「因みにコレを言った後に足止めをはたして言った奴は死にます」
「死ぬのか、つか足止めなのか」
「戦った相手は神の血を引いてるためにそいつの神性以下の攻撃が通らない上に、12回殺さないと死にません」
「化け物かそいつ」
「因みに6回殺したそうです」
「半分持ってくのも大分狂ってないか?」
「因みに当時の設定では一度受けた攻撃は次から通用しなくなるってのが有りました」
「なんでそれで6回殺せてんだ」
正規兵さんからの適宜入れられるツッコミを流しつつも話す。あの大英雄から弓兵が半数の命を奪ったのは原作からだが、まさか始まりだけでも映像化するとは思わなかった。結果として名台詞も生まれたが、音声付きでその前の名台詞を流されなかったのは遺憾の意であったな。
「そんな役の台詞ですけど、当主代行に少し改変して言ってもらったり」
「確かに覚えそうではあるが……因みにその、大英雄にはそう言った台詞は無いのか?」
「基本的に言葉を発する知能を奪われてるんで無いですね」
「狂戦士が狂戦士たる所以か……」
まぁ、死に際には言葉を遺せてたりはするのだが。それに外伝と言うか別作品でやたら紳士的な言葉使いで会話もしてる……
因みにこの世界であの作品はほぼ再現出来ないと思っていい、過去の英雄を召喚するのは召喚石と言う物が有れば普通に出来るのはいいとして
恐ろしい事に、神々に選ばれて永遠の命を持っている聖人なんかが居るんだから当人達による宗教戦争みたいな事は数十年に一回は有るのだ……何となく軍神様と乙女様は神様どうしでプロレスやってそうな雰囲気は有るけど。
それに、名もなき英雄と言える存在を呼ぶのも無理だろう。この世界は死に際して召喚石を残せない程度の力の存在は速やかに魂が輪廻の流れに乗る。前皇帝の正妃もそれによって復活を望めないと結論付けられていた。
この結論を出すまでに前皇帝と神殺しがぶつかり合う作品がまた何とも言えない寂しさを与えてきたりする、エンディングによっては正妃の転生体と話せたりはするのだがアレは正史扱いじゃなかったしな。
「因みに、うちの国の王が演じたりするなら似合う役はあるのか?」
「少し難しいんですよね」
その苛烈な逸話から
「兵士さんなら似合う役を思い付くんですけど」
「お、俺か?」
「ええ、槍兵なんですけど兄貴肌で平時なら敵とも仲良くなれるさっぱりした性格。しかも能力が強い」
「へぇ、俺はそんな印象持たれてんのか」
何処か嬉しそうな声音の正規兵さんを見つつ、この人なら光の神子役だよなと思う。運こそ悪いが実力はあの中でも上積み、というか逸話から見れば弱体化著しいまである。どう考えても大英雄と肩並べるぞアレは。シナリオでは全ルート死んでるけど。
持ってる武器やどんな為人かを語れば正規兵さんは照れてしまった、『俺はそんな格好良い人間じゃねぇって』と言われたが多分凄く似合うと思うのだが。
「前皇帝は……同じ系統の物語で星を落とした射手の方が似合うかな?」
「ほう、それはどんな人物なんだ?」
思考を巡らせるうちに口から出た言葉に、正規兵さんが興味を持つ。
まぁ、
名前をぼかしつつ、狩人を中心とした星見の旅人達とそれを彩る英雄達の冒険譚。ある程度の概要だけの簡略化した物とは言え、元が元だけに非常に長い。狩人に焦点を当てつつも、その道を共にする英雄たちもまた魅力的な面々だしコレを省き過ぎても味が薄くなる。故にこの辺もある程度語る。
各々の反応は様々だ、中心に語っているのは狩人では有るが脇を固める英雄に感情移入する人も居る。そうして話はクライマックス、狩人が月女神を射落とす所に至る。
「狩人は己に与えられた世界からの役割を捨てる代わりに、最後の一矢に尋常ならざる力を込めます。そうして、月女神へと語り掛けました。【孤高の空はお前には似合わない、落ちてこい!】」
迫真の、力強い声で台詞を言う。此処、是非ともフルボイスで聴きたかった。が、アニメ化も無ければドラマCDすら出なかった。出されてたら普通に買ってたのに勿体ない。
「【──俺も一緒に、落ちてやるから】」
此処は逆に力を抜いて、愛を語り掛ける様に言ってみる。俺自身が読んだ上での解釈でしかないが、此処はこの印象で言ってたと思う。あの優しげな表情で言うならこの感情、と決めては居るが……本当にフルボイスで聞かせてくれ公式と思ったな。まぁ、今頃出ていても俺にはもう聞く手段がないんだが。
「そうして狩人は愛を持って月女神を落とし、狩人もまた限界を越える一矢に身体が耐えきれずその命を散らせました……」
そこまで語り、正規兵さんに向き直る。
「俺の中での前皇帝陛下の印象はこの狩人ですね、愛する人の為に己の死も厭わず全てを掛けられる人です」
「……いや、そんなに一途にはなれないと思うぞ。後追いすら出来なかったしな」
俺の言葉に正規兵さんは自嘲する様に笑ってそう言うが、俺はその言葉を否定する。
「正妃様と共に築き上げた、それこそ我が子と同じような国と己の心を天秤に懸けた上でそれを守るって決断をしたんですよ。どれだけ苦しかったのか、同じ場面に遭ったことのない俺ではその心を察するには難しいですけど……」
正規兵さんの言葉に今度は俺が否を答える。前世でゲームをやった時に前皇帝が正妃に何を言われ、殺したくなる程の怒りを持ちながらもその最後の願いを受け入れ死の切っ掛けになった正妃の姉を見逃したのか。
「それでも、気が狂いそうになる中でも正妃様の願いの為にこの国を守り続ける決断をして下さったんですよ。後を追いたくなるであろう苦しみと哀しみを飲み込んで、国の為に献身してくれたんです。そんな人が何にも縛られず、己の死だけで愛する人を苦しみから開放出来ると知ったなら……きっと同じ選択をしたって確信してます」
別に根拠の無い話では無く、正妃を失うまでに至る作品では自身の命を賭けて正妃の姉を救うルートが存在している。因みにそちらでは正妃共々生き残り、正妃の姉とも関係が良くなっていて大団円だった……一人だけ確定で死んでしまう人は居るのだが。
そんな事を考えつつも表には出さない俺の言葉に正規兵さんは複雑な心境を吐き出すかの様に息を吐く、何処か清々しい雰囲気で口を開く。
「ったく、タタラは人を見る目が無いな?」
「その言葉はひどくないですか!?」
何故この感想でそんな事を言われにゃならんのだ。まぁ、正規兵さんが何処か嬉しそうだからいいか。
しかし、脇道に逸れてるが本来はアーレム劇の問題点の修整をする為に居るんだよな俺。どうしようか。
「さて、タタラ」
「え、なんです?」
「あの劇の問題点だがな、お前のさっきのやり取りで何となく劇の改善方法を思い付いたぞ?」
「え、もしや俺の知る劇から台詞を持ってくるんですか?」
「いや、そっちじゃない」
正規兵さんの提案にまさかと思ったが、どうやら俺の考えとは違うらしい。兜の奥から覗く瞳は強い光を放っていて、その眼光を前に気圧される。
「タタラ、お前は建国王の宣言をどういう理由かは知らないが知っている。そうだな?」
「……はい、それは否定しません」
「事情は聞かない、それはそこの都市長が吟味して報告してくるだろうからそれを待つ。だが、此れだけは聞かせろ」
圧がどんどん強くなってきて、息苦しさすら感じる。そんな俺を後ろから引き寄せ背中に庇って来たカラムスさん、思わずと言った様子で剣の柄に触れている。
「別に取って食いはしないが……まぁ、心配か」
そんな様子を見た正規兵さんは苦笑い、しかし頭を振ってから質問を投げてくる。
「お前はこの世界における歴史の大きな転換期、それに纏わる記録を持っている……違うか?」
「……仮にそうだとして何故、そう考えたんですか?」
「そうだな、あの記録が理由の一つ。そして……」
正規兵さんは俺の言葉に答えつつ、視線を『料理長』達に向ける。成る程、この二人を知るなら俺の持つ記録に関して出処を絞れるか。まぁ、記録は自前なんだけど。
視線を俺に戻した正規兵さんの目は俺に理解を求めているようで、俺も正しいかは分からないが頷く事で答える。
「ある程度の事は分かります、細かすぎると無理ですけど」
「……それなら、何かしらの言葉を持ってこれないか?」
「それは前皇帝陛下達の物なのか、神殺しの旅路の物なのかはてまた世界の重なる場所にある迷宮都市の物なのか。それとも……」
「待て待て待て、流石に予想を遥かに超えて多い!?」
遊んだ過去作のテキストはそこそこ覚えている、例を挙げていけば正規兵さんは焦った様子で止めてきた。
「いや、流石に多過ぎないか?」
「まぁ、その……色々言えない事情が有りまして」
「なんと言うか立場的に追求するべきなのに一番やったら駄目なことに思えて来るぞ」
若干引き気味の声で正規兵さんに言われてしまった、チラッと俺の事情を知る都市長とカラムスさんが頷くのが見えた。俺の扱いってこんなんだよね、知ってた。
「それならあの腹立つ男女……じゃねぇ、神殺しの中で何か無いか?」
腹立つ男女って前皇帝陛下が剣交えた後から呼んでたやつじゃないかな……でも前皇帝陛下が兵士に扮してアーレムに熱を上げてるのも変だし、前皇帝陛下から聞いてるんだろうか?
まぁ、それは置いとこう。目を閉じて記憶を巡る、有るとしたらあの『剣の魔神』と戦う所か……それとも相棒の魔剣の力を引き出す為に封じられている魔神と戦う直前の物か。それとも──
「……一応、それっぽいのは」
「ほぅ、期待して無かったが有るのか」
「ええ、まぁ」
そうして魔導式ワードプロセッサを使って記憶を再生する。映るのは初代RPG主人公が住む国に落ち着くまでの物語で、旅路の中で惹かれ合い結ばれた軍神様の聖女がとある理由で同棲を始めた果に目前で喪った時の場面の後だ。抱き締めていた聖女の亡骸を優しく地に寝かせ、その瞼を手で閉じさせてから立ち上がる神殺し。呼び掛ける相棒の魔神の声を無視し、剣を抜き放つ。
【──お前達の意思は分かった】
静かな語り出しだ、内包する怒りが強過ぎて凪にも似た感情表現に陥っている。まぁ、神殺しは感情表現が殆どされないキャラでもあるのだが。
【お前達の思想も、信仰も理解しよう】
抜き放った剣を天に掲げて、魔力を流す神殺し。短剣形態だった魔剣が長剣になり、更に巨大化して大剣になる。普通はこの系統の装備を使用出来ないのだが、この時だけは使えた……元になってる星の女神様の愛用している武器が大剣だから肉体に引っ張られて使えたのではと考察されていたな。
でも人間の時の神殺しと通じる時はデカいナニを前に上手く扱えてなかったんだよな……処女だったし仕方ないのか?
【俺が神殺しであり、お前達にとっては拠り所を殺しかねない存在だと恐れるのも理解しよう。だが──】
僅かに俯いていた顔が上がる、その瞳には怒りと憎悪そして悲哀が織り混ざった炎が揺れている。
【だが、俺の愛しい者を殺すのは違うだろう?】
右手一本で保持していた魔剣を空いていたもう左手でも延びた柄を握って構える、あまりの力で握られた柄からは軋む音がする。
【殺したのだから、殺される覚悟をしろ】
向かい合うのは万を越える軍勢だが、この時の神殺しの前では塵芥にも等しい。相手は軍神様からの加護を得て強化されてるにも関わらず、この時の神殺しの力はそんな事を歯牙にもかけない程の力をその女神の身体から引き出していた。
【これは俺の怒り、俺の憎悪だ】
魔力が光の刃となって展開していく。そう言えば、ダリアの『フォルジュロン』はこれに似ているな……今の神殺しには出来そうに無いけどどうなんだろう?
【──星よ巡れ、天道を進みて流れを生め】
そうして始まるのは詠唱、此処から星の女神が如何に協力無比であったかを示す場面だ。
【我が手には輝ける地上の星、刹那の瞬きの先に導くは死への旅】
本来は剣の形態変化や魔力刃の展開はこの詠唱の後に発生する物なのだろうが、怒りで制御が疎かになっていたから半ば暴走状態でこれが起きたのだろう。後付けで詠唱する事で何とか制御をしようとするのが何となく分かる。
【この星光は断罪、我が星女神の名の下に罪を雪ごう】
その言葉と共に大剣を振り被り一歩踏み込む。
【母なる星に抱かれて眠れ──】
その言葉と共に振り抜かれる光刃、その先に居た軍神様の兵士達は光に薙ぎ払われ塵も残さずに消滅する。
その一閃の直後に場面は暗転した、流石に過去作で主人公では最強と言われるだけはある神殺しの力に見ていた一同は何も言えない状態だ。正直、場面のチョイスを間違えたと今更ながら後悔する。
「……これは」
「彼の神殺しが軍神様の聖人と愛し合う事になって、神殺しをどうしても排除したかった派閥がやらかした時の記録ですね」
「……私が生まれる前の、聖人ルーティア様の話か」
呆然とする中で思わずと言った風に声を零したのはカラムスさんだ。まぁ、自身の所属する宗派でこんな事が有ればこうなるか。
因みにこの聖人ルーティア・ハーケンマイヤーさんはこの後に転生して神殺しと再会してたりする、『深く深い闇の先で』の中ではさり気なく神殺しの子を三人ほど産んでると神殺しから語られているので幸せな生活を送っていると思う。力を奪われていないのは多分、前世の事で軍神様が気に病んだからだろうな。
「聖人ルーティア様がこうなるまでの記録も有るには有るんですけど、あんまり出したくないというか」
「ほう、そうなのか?」
「新婚イチャラブ夫婦の光景そのものですけど、見たいですか?」
「聞かなかった事にする」
嫌がる俺に興味を持った正規兵さんが秒で興味を投げ捨てた。
誰だって他人の歯が溶けそうなくらいに甘い
「それよりもタタラ、詠唱なんかは分かったのだけれどこれは劇の台詞に使えないわよ?」
「俺も記録引っ張り出した後に後悔しましたよ、場にそぐわってない」
流石に真面目な都市長は俺の失敗を指摘してくれるか、まぁ絵面が宇宙の帝王みたいでシュール過ぎるんだけども。
正規兵さんはそのまま考えを巡らせて、それから口を開いてきた。
「なぁ、詠唱を外さなくてもいいから神殺しが何かしら他者から手を借りて事を成す場面は無いか?」
「……あっ」
正規兵さんの言葉で頭に浮かぶ場面が有り、魔導式ワードプロセッサはその記録を映し出す。
場所は切り立った崖の上。そこから神殺しを中心にその使徒たるメイド達や魔神、そして神から遣わされた聖人や天使達だ。
【ご主人様、準備は宜しいでしょうか?】
澄んだ女性の声が流れる、正規兵さんはその使徒──メイド長にして第一使徒の元王女の姿に驚愕の表情を浮かべている。正統派のクラシカルメイド服なのは開発と言うかイラストレーターの癖らしいが、『天使長』のデザインと被るからアレンジしろと言った代表取締役と殴り合いに発展したとかインタビューに有ったな。
結局イラストレーターが殴り勝ったらしいが。
【ああ……悪いが、お前達の力を貸してくれ】
メイド長に答える神殺しの言葉に頷き、メイド長が其々の使徒達に声を掛けて円陣を組む。
【神殺しよ、我等の準備も整っている】
【分かった、合わせて俺に送ってくれ】
【心得た】
かつて神々と戦い恐れられた魔神の言葉に答える神殺しと、その意志を汲んで魔力を高めていく魔神達。神殺しの身体を魔力が包み込み、その有り余る出力に空間が歪み紫電が走る。
見据えた先には数kmは有りそうな龍の姿をした存在、世界からの加護を受け『傷付けられない』と定められた神殺しの肉体である魂と、愛し合った勇者の子を核にして生み出された超越存在。
神殺しに集まった魔力に気付き付近一帯を消し飛ばそうとブレスの準備をした直後、その身体に幾つもの爆煙による花が咲く。俺達が住むナーハズヒト……当時の王国軍が保有する機甲師団による砲撃支援だ。全く傷付いてはいないのだが、衝撃と爆煙に対する不快感から目的通りに神殺し達から狙いがそれた。
そうして準備が整っていく神殺しに、相棒たる魔神から念話が届く。
【ふむ、コレから使う技に名前の一つも付けたらどうだ?】
【遊びでは無い】
【阿呆、名とは重要な要素だ。在り方を、存在の方向性を定める原初の
【……そういうものか?】
相棒の言葉に疑いを持つ神殺し。正直、相棒の悪ノリとしか思えないのだが神殺しは神殺しで己が落とした隕石に名前を付けている場面が有るのでこの辺の事が嘘と言い切れなかったりする。シリーズ総まとめのファンブックにその辺がかなり重要って書いてあるし、何なら俺もこの世界に無いものを生み出して名付ける事でこの世界に繋がる感覚を体験しているのでかなり重要なのだと理解している。
まぁ、神殺しはクラフターじゃないから俺と同じ経験は無いだろうけど。
【そうだの、遥か東の地にはありとあらゆるモノを断つ刃があるそうだ】
【遥か東……陽の昇る国の刃か?】
【おう、知っておったのか】
【……まぁ、な】
【あのサムライ娘との睦言辺りか、仕方の無い奴じゃ】
【口に出すなド阿呆】
絶対悪い笑い方してるだろうな、この時の相棒。まぁ、流石にこの魔導式ワードプロセッサには顔が出て来る事はなかったが。
【だが、かの刃に肖るのは悪くない】
【ああ、名は覚えておるか?】
【お前に言われて思い出した】
日常会話の延長の様な気軽さを感じさせる応酬の後、神殺しが動き出す。対象は遥か彼方、本来ならば届く事の無い距離の筈だ。
しかし、この一刀の前には距離という概念が無意味だ。
身体を巡る魔力を制御し、無駄の一切を省いた芸術なまでの美しい挙動で神殺しは刃を振るう。瞬間、世界そのものを切り裂くように画面がズレて、その延長線上にいた超越存在に一筋の線が走る。
【──今宵、この時限りの一刀。名付けて……『空裂』】
遥か先で超越存在が悲鳴を上げる、一拍遅れてその身体から血が噴き出した。
その光景を最後に、記録の再生は止まる。うん、思った以上に参考にならなかったなコレ。
「今のはたしか……150年くらい前の魔神龍の記録か?」
映像が途切れた後に正規兵さんがそう特定してくる。正確な時期は覚えてないというか年表が明かされて無かったかから分からないが、魔神龍討伐はスチルの名前で有ったので合っているかな。
「えっと、すみません勉強不足でその辺りの年代までは」
「それは意外……でも無いな、つかこれ軍事的な記録で一般に広まってねぇや」
「何トンデモナイ事実言ってんですか」
軍事機密じゃねぇか。いや、それを記録として持っている時点で俺もヤバいんだけど。つか、複数人に公開してるし。
改めて自分のやらかしに頭が痛くなる。
「とは言え、あのムカつく男女側の記録とかうちの国は持ってないからな。軍部からは特に何か言い出すことも無い、ってかさせねぇよ」
「……いいんですか?」
「おう。それよりもこの『空裂』って刀の話の方が気になる、陽出の大貴族なら知ってっかな?」
軍部からは守ってくれると軽く言ってくれるが、はたしてこの人の立場っていったい。それよりも神殺しと相棒が語った『空裂』に気を向けている様子だけど、コレを作れるとか言ったら流石に俺もヤバいかな。コレ、まだ都市長に報告してないし。
《タタラさん、鑑賞会もいいですけどそろそろお昼の時間ですよ》
「え、もうそんな時間か?」
後ろから『料理長』からそう言われて時計に目を向ければ、たしかに時計の針は昼時を指していた。
「……どうしたいきなり」
「いえ、『料理長』から昼メシの時間って言われて」
「……そいつ等は言葉を発さないだろ?」
「どうも俺は言葉が聞こえるんですよね、色々教えてもらえたりもしますよ」
「……へぇ?」
俺の言葉を聞いた正規兵さんが『料理長』に視線を向けるが、『料理長』は視線から逃れようと俺の後ろに隠れてくる。そう言えば人見知りだったなお前。つか、座ったままの俺の後ろに隠れようとして態々かがむのは何だあざといな。
「あ、沢山作って貰ったので一緒にどうです?」
「……まぁ、ご相伴に預かろうかな」
俺の言葉に深く考えるのをやめたらしい正規兵さんは、頭を振った後にそう言った。
稽古をしていた面々も含めて、立食式にして『料理長』の作った弁当を食べる。何時も家で食べている食材だと言うのに、味が全く違う。包丁の入れ方、火を通す僅かな時間、調味料の量、具材の合わせ方……そんな小さな一つ一つの積み重ねでまさに異次元と言える程の美味を生み出している。
俺が口にしているフィッシュサンド、パンこそ何時もの物と同じだ。しかし、表面を焼いたその加減一つで香ばしさと食感が全く違う。軽い歯応え、パンの表面は確かなカリッとしているがその下にはフワリとした食感を保たれている。挟まれている焼き魚は塩加減もさる事ながら、焼くことで旨味をうちに閉じ込めていて身が解れると共にその脂を口の中に広げていける。それを白ワインのビネガーの芳醇な香りと爽やかな酸味が受け止め、更に僅かに含まれたスパイスが磯の味とも言うべき魚の旨味を高めている。その下に敷かれていたレタスも軽い食感の後に含んでいた水分を吹き出し、甘味をもたらし全ての味が一つへと纏まり得も言われぬ程の幸福感を齎してくる。
こうして彼是と分析しようとするのも無粋、俺の口から漏れ出るのは簡単な一言に尽きる。
「美味い……」
丁寧な咀嚼と嚥下、万感の思いを込めてこの一言を溢した。以前に淹れてくれたお茶を飲んだ時から分かってはいたが、想像以上の調理技術を前に敗北感すら浮かばなかった。
そんな俺の前で小さな身体に不釣り合いな大きな胸を張り、ドヤ顔を決める『料理長』。
《どうですか、惚れ直しました?》
「惚れた腫れたは無いけど純粋に感動した、下手したら依存症になってたかも」
《もう、タタラさんってば》
語尾にハートマークでも付いてそうな明るい声に苦笑も浮かばず、次々におかずを口に運ぶ。プチトマトのベーコン巻きは焼くことでトマトの甘味が増していて、そこにベーコンの塩味が後味を軽くしてくれる。更にベーコンの脂もプチトマトの酸味がクドくする事を防いでいるので、どちらが欠けてもこの美味さは無かっただろうと確信する。
「……ねぇ、タタラ。このお弁当を一口食べてから身体の調子が頗る良いのだけど、何かしたの?」
「いえ、単純に世界最高の料理人の作った物なので身体の不調を治しただけですよ」
「意味不明ね……この味を知ってから他で食べる物が味気なくなりそうで怖いわね」
そんな事を言いながら、取り分けたポテトサラダを口にしてから幸せそうに微笑む都市長。口元を隠して咀嚼してる辺りやはり育ちが良いなと思わせてくる。
「タタラはん、本当に僕らも食べていいん?」
「ええ、元々そのつもりで作ってもらいましたから」
「ほ、本当に私も良いんですが?」
「久し振りの動物性蛋白質……」
「ええ、遠慮せずにどうぞ」
商会長に答えつつ、口元から垂れる涎を隠しきれていない劇団ハカンサスの二人も促す。いや、動物性蛋白質が久し振りってスオーノさん、普段どんな食生活をしているんだ?
許可を貰った直後から勢い良く食い始めた劇団の二人を他所に、俺はフィッシュサンドを片手に自身のアーレムを動かしている成金さんの所へと向かう。
「どうです、操作にはなれましたか?」
「ん、ああ店主さん。ぼちぼちってところですかね」
手製らしいある程度の高さを持つ台からアーレムを飛び立たせて、空中での姿勢施行の訓練を繰り返している。なんと言うか、俺が無茶な空中機動をお願いしたせいで大分苦労させてしまっているようだ。
「あの、その挙動が難しかったら……」
「何を言い出すかと思えば、男なら見込まれて頼まれた事を完遂せずして何だってもんですよ。それに、壁は高ければ高い方が達成感が有るんですよ?」
心配で声を掛けたら全く心が折れてない様子で、寧ろ言葉に出さず任せろと言ってくる成金さん。本当、この人は格好良いな。
「なら、本番で華麗に空を舞う姿を楽しみにしてますね?」
「ええ、ところで……」
「はい?」
「今日の稽古前に流してた映像なんですけど、他にも無いですかね。お金貯めて観たいんですけど」
「……公開予定は無いですね」
流石に話題の緩急が強過ぎやしませんかね、つか本気で落ち込まれて心が痛いんだけど。後そこの法務長、盗み聞きして一緒に落ち込むな。変な所で親子だなこの二人。
「……マスター、少し宜しいですか?」
「構わないが、飯はもういいのか?」
「腹七分目と言ったところですが十分です。それに、あまり入れ過ぎても頭が動かなくなるので」
何気に健啖家なダリアが早々に食事を切り上げて話し掛けて来て疑問を抱く、どうしたのだろうか?
「一緒に来たあの『料理長』とかいう小柄巨乳がマスターを御飯で笑顔にしているのにムカつきました、少しアーレムでわからせてやろうと思いますので許可を下さい」
「出せるか馬鹿」
無表情気味にとんでもない事を言われたので秒で却下する。
「何故ですか、直接乳房をもぎに行かないだけ理性は有りますよ?」
「それを理性と言い切る事が正気だと思うな」
まさかダリア、エテルの爆乳をもぎ取ろうとか考えてないだろうな?
「マスター、私は奥様の乳房に嫉妬した事は有りますがもごうと考えた事は10回に届きません」
「考えた事は有るんだなお前」
「しまった」
語るに落ちてんぞ、油断も隙もないな。
《今、アーレムの話題を出しましたね?》
「……いきなり背後に立って声を掛けてくんな」
俺の背後から思念を飛ばしてくる『料理長』、いきなりの事で正直かなりビビってたりする。振り向けば目が此れ以上無い程に輝いている『料理長』が俺を見ている。どうしようかなコレ。
「マスター、見るからにその小柄巨乳はやる気を見せています。許可を」
「良い訳ねぇだろ、つかお前等のアーレムが暴れたらこの施設が消し飛びかねんわ」
絶対お前等この場で自前のアーレム使う気だろ、あんなもん見られたら都市長に命令されたカラムスさんに拳でぶん殴られるわ。
「む、まさかダリア殿のアーレムが見れるのか?」
そんな俺達の言葉が聞こえたのか、興味津々に近付いてくる当主代行。
「ダリア殿からタタラ殿に禁止されているからとアーレムを見せてもらえなかったのだ、よい機会だしどうだ?」
「ダメです」
当主代行の言葉を一刀両断で切り捨てる、ダリアのは
つか、『料理長』のヤツなんて性能が現状のアーレムからかけ離れた超高性能機で普通にドラゴンと戦っても何とかなるような性能してるのに機巧聖女特性で強化されててもダリアの一般の範疇に収まる性能でどうにかなるとは思えん。
「なぁタタラ、この二人のアーレムってのはそんなにヤバいのか?」
「ダリアのは構造的にお披露目には早いと言うか、他の人達にはズルいって言われかねないので見せられないです。『料理長』のは素材の暴力過ぎて身持ち崩す人達が出かねないので見せられません」
そもそも美少女アーレムとかまだ早すぎる、10年後くらいに認められるべき概念だろ。
ただ、俺の話を聞いた正規兵さんは腕を組んで軽く考えてから口を開いた。
「そんなにヤベェならなんで作ったんだ?」
「クラフターが作れる可能性が見えた物を抑えられる理性を持つとでも?」
「……賢者の石とか作るやつが言うと説得力が違うな」
なお、その生態のせいでこの世界から弾かれかけてたり魂が肉体の強度を越えて死にかけていたりする。胸を張って言うことじゃ無いな本当。
「工匠長、何故あの二人にはそれだけのモノを?」
「……ダリアには身内贔屓、『料理長』からは依頼品で」
「ふむ……」
ぬるっと近寄って質問してきた法務長に聞かれたので答えると、少しの思考を置いて口を開いた。なんだろう、嫌な予感と共に胃がキリキリしてきた。
「工匠長」
「はい」
「この場で見たい見たいと子供のように駄々を捏ねれば許可は降りますかな?」
『やめてください!?』
以前と同じ様に渾身の駄々っ子ダンスで脅しをかけられ、成金さんと一緒に全力で止めに入る。他の人達には冗談に聞こえたかも知れないが、俺と成金さんはそれが冗談でも何でもないと分かる。何よりも目が本気だった。
そんな俺達に今度は当主代行が近寄ってくる。嫌な予感しかしねぇ。
「タタラ殿」
「なんでしょうか、今は法務長を止めたいんですけど?」
「儂も法務長殿と一緒に駄々を捏ねようと思うがどうだ?」
「お義母さんに泣かれんぞ本気でやめろ!?」
思わず声が裏返る、お義母さんをチラと見れば複雑そうな表情だ。あれ、もしかしてダリアと『料理長』のアーレム見たさで止める気が無い?
他の人達に助けを求めて視線を巡らそるが、一斉に目を逸らされた。都市長は『料理長』のお弁当で治り掛けていた胃をやられたのかお腹を押さえている、コレも俺が原因なのだろうか?
法務長と当主代行を抑えるも、ダリアと『料理長』から圧を掛けられ続け……遂に俺の胃に限界が来た。
「……分かった、分かりました。制限時間は5分、互いにアーレムを大破させない程度に抑えること。この2つが条件だ、いいな!」
『はい!』
余りにも元気にダリアと『料理長』から了解の返事を貰う、余りにもいい返事だが俺の胃の痛みが引く事は無かった。
さて、こうして始める事になった史上初のアーレム戦、非公式ながらも本格的なアーレムのバトルと言う事もあって映像記録をしっかりと残す事と更にはこの時に起こる不具合や問題を元に公式戦のルールを定める為のテストケースにする事に決まった。
そうとなれば俺の前任であり都市最高のクラフターである都市長は手早く欲しくなるデータを俺に伝達し、俺もそれに必要な代物を作製する。都市長も手伝ってくれているが、速度と精度は俺の方が上になっている様子だ。
まぁ、俺の作業を見て次の指示を出しくれるのは都市長ならではだろう。俺には出来ないし、指示するよりも自分でやった方が遥かに早いから他人を頼る事が思い浮かばない……コレも前世から引き継いでしまっている気質か。直さないとな。
そうしてカメラを録画機器に繋いで、コレから始まる戦闘を余さず記録する準備が整った所でダリアから注文を受ける。
「では、入場のアナウンスをお願いしますねマスター」
「……は?」
この人形娘はなんと言いやがりましたかね?
「ですから、以前と同じ様に入場のアナウンスを担当して下さいマスター」
「いや、言葉が聞こえ無かった訳じゃねぇよ」
思わず頭痛で頭を押さえる、気休めにもならなかった。
「やはり、あの時に聞いたアナウンスに勝るものは存在せず……」
「そもそもアナウンス自体があの時しかしてなかったと思うが?」
つか、それこそそこに居る劇団ハカンサスの団長さんに頼めよ。本人の練習も兼ねて。
そんな俺の気持ちを無視して、ダリアどころか『料理長』すら期待の目で見てくる。それどころか、当主代行を筆頭にあの時聞いていた面子まで期待の眼差しだ。
そんな目を向けられて、諦めと期待に対する少しの嬉しさから溜息を吐きつつ了承してしまう俺も大概か。
二人を其々控え室へと送り出し、更には全館アナウンスと選手用アナウンスが混同してないかのテストを実施する為に複数の場所に人を配置する。この場にいる人達だけなのかと思ったら、売店や食堂への搬入やらで商会の職員が結構な数居るらしいので協力を頼んだ。そして、テストを兼ねてマイクへと声を放つ。
「それでは、間もなく試合を開始します」
最初は全館放送、コレが聞こえる場所から其々報告が入る。音量の問題も有りそうなので、後で調整もしなければならないな。
「それでは両選手、フィールドへ向かって下さい」
続いて選手控え室に絞ったアナウンスを流す。コレには何箇所か混同している場所が有ると報告が上がって来たので一旦アナウンスを止めてから術式を調整する。物理的に接続を弄らないと駄目かもとヒヤヒヤしたが、術式の調整だけでも上手くいった。術式のエキスパートであるお義母さんが居るし、協力を仰ぐのも良かったかも知れないな。
さて、選手入場用のゲートにダリアと『料理長』が到着した。今は入口に赤のシグナルが点っていて2人が待ってくれている。
さて、覚悟を決めてやりますか。
「レディース・アンド・ジェントルメン、ようこそいらっしゃいました今宵のアーレムの祭典へ。本日はこのタタラ・アーレムアリーナへお越し頂き誠にありがとうございます。本日の司会は私、タタラ・ジュロンが務めさせて頂きます」
これはフィールドの有るこの場のみに絞られたアナウンスだ、他の所からは聞こえてこないと報告が入るので軽くガッツポーズをした。
前回を出来るだけ思い出しながら言葉を紡ぐ、実は細かい所までは覚えていない。なのであくまでもそれっぽい語り出しにとどめる。
まぁ、本当なこの挨拶こそを定型文にして馴染みある物にするべきなのだが。どうせテストのアナウンスだし細かくは気にしなくていいだろう。
「それでは今日という日に祭典を彩る花達をご紹介しましょう」
俺の操作に合わせて先ずはダリアが出て来るゲートにスポットライトが集中する。入口内のシグナルを青に切り替えて、ダリアの入場を促す。
「先ずは東の門から入りましたのは我等が『ワールウィンド』代表、不法入国をして来た天使族を撃退した立役者!!」
ゆっくりとした足取りで入ってくるダリア、俺の言葉に合わせて少しの間だけ立ち止まり堂々と観客へ自分の姿を見せる。
「世に有る魔導具を従え、操る事に特化した美しき乙女達の代表!!」
足取りはゆっくりと余裕を見せる様なそれで、背筋を真っ直ぐに伸ばして歩く姿は淑女を思わせる優美さだ。スポットライトで照らされ光を反射する肌や髪は硬質さを感じさせ、その相貌は人形の様に整っていて人間大のビスクドールを思わせる。
改めて見ると本当に美少女だなコイツ、本人に言うと調子に乗るか固まるので言えないが。
「機巧乙女『ダリア・ジュロン』、その手で踊るアーレムの名は……『ヴァルキュリア』!!」
名を呼ばれた事には反応らしい反応を見せない、戦いを果たす為に生み出された人形の如き所作だ。当人を知る人間としては、キャラを作っているのが分かる。つか、アーレムの公式競技ではあのキャラで貫くつもりだな彼奴。
「対するは此方、我等が国の外からの稀人!!」
今度は反対の入場口にスポットライトの光が集まり、『料理長』の入場を促す。
人見知りの気が有るから心配だが、俺の心配を他所に『料理長』は静かな足取りで入場してくる。スポットライトの下にその身を曝した後、優美にスカートの裾を持ち上げる礼であるカーテシーを決めて見せる。これは『天使長』が見たら喜びそうだなと思い何となく視線を巡らせれば、いつの間にか『天使長』が居て感涙している。取り敢えず視線を逸らして見なかった事にした。
「その身に絶大な力を宿すも人の営みに触れて理解する、残念な事に名を知る事は許されませんでした。が、それ故に強者としての貫禄を見せ付けた!!」
静かな歩みのまま、フィールドの側まで来た『料理長』は再びカーテシーをする。最初のは観客達へ、今度のは対戦相手のダリアに対してだ。戦う相手への礼儀、なのだろう。
「リングネームは『料理長』、操るアーレムの名は……『ジェネシック』!!」
因みに『料理長』のアーレムの名前は明確に決められて無かったので見た目から咄嗟に付けた物だ。流石に『料理長ジェネシックガガガ』とかは駄目だと思って回避した。
「双方、アーレム
俺の言葉に従い、ダリアと『料理長』がインベントリからアーレムを取り出す。『料理長』の完全魔法金属製の『ジェネシック』にもざわめきが起こるが、一回りは通常のアーレムより巨大なダリアの『ペガサス』により大きなざわめきが起こっている。
「それでは……カウント3!」
相対する2人はアーレムをフィールドに起き相手を見据える。
何時の間にかギャラリーが増えていて、一斉にカウントを始める。2騎のアーレムから拘束が外れ、『ペガサス』が開き中から『ヴァルキュリア』が姿を見せた事に
アーレムの目に光が灯り、構えを取る。軽く腰を落とす『ジェネシック』に対して、スピードスケート選手のスタートを思い起こさせる様に低い姿勢を取る『ヴァルキュリア』。つかダリア、履修してないのに反逆皇帝の最後の騎士みたいな挙動を取らせるの何なんだ?
一瞬の静寂、息を飲む音すら聞こえそうな中で俺は開戦を宣言する。
そして、史上初のアーレムバトルは始まった。
因みに作者のロボ物戦闘描写は処女作のビルドファイター系の小説レベルなので期待しないで下さい。というかスキップしてもいいよね?
没案:クソ真面目に語っていたら。
「……遥かな過去に星の海を渡り訪れた異星の神々、その一柱の女神と恋に落ちた逸話を持つ一人の狩人がいました。しかし、有る存在の策略により彼等の恋は無かった事になってしまいます。そんな世界に呼び出されてしまった狩人は、自身の事を知らない女神と出会うことになります」
語り出しに対して身を乗り出してくる正規兵さん、だけでなく稽古に参加していない『料理長』と都市長にカラムスさんまで寄ってくる……ってスオーノさんまで来てるじゃん。いや、劇団に所属してるなら仕方ないか。
「別世界の自分の情報を得ている女神はしかし、狩人と恋に落ちる事はありませんでした。狩人も自身が呼び出された理由が他に有ることを理解していて、互いに不干渉である事を約束しました」
「不干渉、ですか?」
「ええ、これは理由が有るんですけど……それは後々に」
スオーノさんの疑問を流しつつ、視線で先を促してくる正規兵さんに頷いて続ける。
「そんな折に、狩人が居た世界とは違う歴史を歩んだその世界を終わらせる目的の旅人達と出会いました。この目的を果たすには力があまりにも足りず、狩人も含めて強い仲間を集める事になります」
離れたところで稽古している面々が此方を気にしている、特にお義母さんの目が怖い。
「そうして集まるのは世界を変えようとした暗殺者、英雄たちを率いた船長、規律を敷いた海賊、己の伝説に懐疑的で卑屈な王子、蛇の呪いを受け継ぐ忍者、不死身の肉体を持つ英雄、そんな英雄の唯一の弱点を射た幼き復讐者と一癖も二癖も有る者達でした」
しかし、あの海賊は何と称すればいいのか悩むな。
「旅をする中で神々の遺物を集めたり、仲間同士の結束が強まったりとありました……しかし旅人達の目的を果たす為に立ちはだかる壁が有りました」
「壁、とは?」
俺の語りに疑問を溢したのはカラムスさんだ、まぁ全員気になっているみたいだが。
俺は上を指差しつつ、その正体を明かす。
「衛星軌道上……星の海から地上を焼く光の矢、それを放つ月女神。本来の世界で、狩人の恋人である女神です」
その相手に息を呑む面々。そして、後ろから何かが落ちてきたかの様な衝撃が伝わる。思わず振り返るが何も無い、気の所為だったろうか?
首を傾げつつ、顔を正面に戻して続ける。
「その月女神を撃ち落とす為に選ばれた者、それがこの世界に呼び出された狩人でした。月女神はその腕を知る為、互いに不可侵である約束をしましたが……狩人はコレを受け入れます。ほして不死身の英雄の鎧から射落とせる矢を作り、最も月女神に近い島へ向かい一行は進みます」
さて、此処からが畳み掛けである。
「一人、また一人と仲間が死力を尽くし、命を掛けて時間を稼いで散っていきます。不死身の英雄は本来は師となる者とそれが率いる軍団を相手にし、蛇の呪いを受け継ぐ忍者は己を犠牲にし兵器製造用のプラントを暴走させ、世界を変えようとした暗殺者は全てを捨てて敵の将軍を討ち、規律を敷いた海賊は海戦の中で散る。そうして稼いだ時間の中、狩人に許された矢は僅か三射のみ。しかし、月女神との撃ち合いによりそれらは全て防がれました」
「防がれた、だと……?」
正規兵さんは大分ショックを受けている。そりゃ、仲間達が稼いでくれた貴重な時間を無為にされたとなればそうなるか。
「そんな中、女神の一矢が一行を襲います。迎撃が間に合わないと思われる中、旅人に赦された英雄を召喚する術式が起動します。散って行った仲間の縁を辿り、不死身の英雄が討った宿敵でした」
「宿敵が来たの?」
「ええ、この宿敵は幼き復讐者の兄であり……卑屈な王子の憧れた英雄でもありました」
この辺を語るのはまだ長いので申し訳無いが省かせて貰う、スオーノさんは凄く聞きたそうだけど勘弁願いたい。これらの出処を教えられるのは俺の転生を知っている面々だけだしな。
「宿敵は己の腕を犠牲にし、全力で得物である槍を投擲。これにより女神の一矢は防がれました、しかしもう狩人が放つ矢は有りません……まさに万事休す」
生き残れた事への安堵は無い、この厳しい世界で生きる面々は当然その場からの撤退も含めてどうしようもない状況を察している。
しかし、これは物語なので当然起死回生は控えている。
「その兄の姿を見た幼き復讐者は決意を固め、己が信奉する太陽神へ願い己の身を矢へと変じます。しかし、僅か10秒……その時間が無ければ一同は女神の一矢で焼き払われてしまう。そこで卑屈な王子は女神の一矢でも焼けなかった英雄の槍を手に取ります」
あまりにも出番が無く忘れかけられていた卑屈な王子の行動に、其々が反応する。
「王子はそれまで自作の木剣を英雄の武器に見立て、憧れを昇華して技へと変じていました。しかし、その英雄よりこの時にのみ正しく継承し……槍を剣へと変じさせてその技を使うに至りました」
まさかゲーム中では再現不可と言われ、シナリオのみで終わるとか中々に酷いと思ったなアレは。まぁ、この度の面々を召喚しても一緒に旅した当人達では無いと中々に酷い仕様なのだが。
「その剣を振るい、旅を通じて友となった旅人を守れた事を誇りに……卑屈な王子もまた命を散らせます」
「そうか……友を守れたのは確かに誇りだな」
正規兵さんは何処か寂しそうな、羨ましそうな雰囲気だ。きっと、共に戦った戦友を喪ってきたのだろう。
そんな姿を見つつ、物語は月女神を射落とす場面に至る。
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない