既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント進行中。
や、やりたい所まで話が進まない……orz
「お、お祖父様!?」
「お義父様!?」
ミーアとママエンティアの叫びが聞こえる、意識が飛び掛けてるのかやや声が遠い気もする。何とか意思を繋ぎ合わせる、何故この国の皇族は俺の意識を飛ばそうとするのだろう?
しかし、スキエンティアを名乗っているというとパパエンティアは皇族から籍を抜いているという事だろうか?
疑問は尽きないが、皇族から抜けた先で神殺しの娘の一人を捕まえるとかどんな運命に取り込まれてるんだ?
「ところでタタラ」
「ぅぶ……はい、なんでしょうか?」
与えられたストレスから胃液が登ってくるのを抑えつつ、何とかカラン様に応える。そんな俺に苦笑いを浮かべつつ、カラン様は言葉を続ける。
「さっきターチスの奴のこと、なんて呼んだ?」
「え、スキエンティア所長……だと思いますけど」
何と呼んだと言われても、多分普通に呼んだだけだと思うが。
そんな俺に対してカラン様は『無意識か?』と溢しつつ、更に絶望の言葉を続けて来た。
「お前、ターチスの事をパパエンティアって呼んでたぞ」
「……え」
嘘だろ、心の中で呼んでたあだ名が口に出てただと!?
「あ、前に呼んでたの聞き違いじゃなかったんだね」
「前に……!?」
本人に向かって呼んでいただと……そんな馬鹿な!?
「初めて会った時かな、ルミを苗字で呼んでたしリーと一緒に反応してれば名前で呼ぶかなって思ってたらフルネームで呼んでくるし。かと思えば偶にボクをあだ名で呼んでたしね」
「こ、心の声が漏れていただと……!?」
軽く死にたい、俺は同級生の親に向かって何を言ってるんだ。
「ふふ、なら私はママエンティアかしら。次からはそう呼んでね」
「あ、リー狡い……ボクもパパエンティアでね!」
「なんでノリノリなんだあんた達は!?」
急にノリノリで呼び方を要求してきた親エンティア二人に頭が痛くなる。そんな俺の肩を叩いて来たのはセラス前皇后陛下、その顔は満面の笑みだ。
「私はババエンティアね!」
「乗るなよ!?」
「なら俺はジジエンティアな」
「もうヤダこの皇室!!」
なんでこの人達こんなノリノリなの?
「あの、タタラくん……」
「……ミーアはスキエンティアに戻せばいいのか?」
「嫌だよ!?」
呼び掛けてきたミーアに思わず聞けば、逆に嫌だと大声を上げられる。ちょっと助かる。
「冗談は此処までにして、都市長とタタラくん。父様が言ってた事を説明して貰えるかな?」
「ええ、前置きとして簡単に伝えるなら都市祭最終日にテロが起こるわ」
「特大の爆弾を投げ込まれると思わなかったな……」
ミーアに背中を擦られながら遣り取りを眺める。うん、もしかしたらパパエンティアとは仲良くなれるかも知れない。尚、孫娘に背中を擦られる俺を見たママババジジエンティアの顔は怖くて見れなかった。
都市長は簡単にだが、学生運動の事について説明してくれた。最初は困惑気味だったパパエンティアは表情に真剣味を帯びていく、情報提供元が俺のパーティメンバーだと聞いて直ぐに俺へと向き直る。
「タタラくん、本当かい?」
「本当です」
「根拠は?」
「……今の彼奴は俺と騎士の誓いで結ばれてます」
パパエンティアの知識頼りに騎士の誓いの事を伝える、複数の騎士を抱える家系や研究者なら分かると思って伝えればパパエンティアでは無くママエンティアの方が驚いた表情を浮かべる。
「……タタラくん、その歳で本当に騎士の誓いを結んだの?」
「はい、実際にクラスアップが起こったのも確認しました」
「待て待てタタラ、王族か皇族の血を引いてるのかお前!?」
パパエンティアを押し退けて俺に聞いてきたママエンティアに答えれば、
原作知識というか、この世界を作った者達が敷いた設定そのものの知識。
伝えない場合のデメリットはこの場の面倒臭さが続く事、メリットは話が終わる事。
伝えた場合のメリットは話が早期に終わる事、デメリットはこの国に於いて研究対象として重要になること。
どうしてもデメリットの方が大きいし、俺の言葉を元に起こる研究で莫大な金や人が動く事になる。
流石に自惚れが過ぎるかも知れない、しかし一番の問題はジジエンティアだ。
彼は俺が『看板娘』の会話が出来る事を知っている。彼女達がどんな存在かまでは知らないが、同時に彼女達がどれだけ強力な力を持ち超常の存在に近い何かだと目撃している。
それは俺の言葉は信憑性を強くしてしまう。
平穏な生活を捨て去る切っ掛けになりうる……今も既に平穏な生活を送れてない気もするが。
俺の中で思考が渦巻く、何方を選択するべきか迷う。
「お母さん、お祖父様落ち着いて!」
そんな俺を軽い衝撃が襲う、思考から抜け出して見ればミーアが俺を庇うようにして抱き締めて来ていた。え、どうしたコレ?
「いえ、ルミあのね……」
「あのねも何も無い、二人に詰められてタタラくんが困ってるでしょ!」
「あ、うん。あのな?」
「あのねもなにも無い!」
ミーアからそう言われて戸惑う二人、そんな二人を睨み付けるミーア……若干涙目っぽいなコレ。
「アンタ、また増やしたの?」
「またとか増やしたとか言わないで下さい、身に覚えが無いんですよ」
ミーアに抱き着かれている俺にそっと近付いて来た都市長からそんな事を言われるが、ミーアに好かれる理由なんて──
『タタラくん』
そんなの──
『タタラくん、あのね』
無い、筈だ。なのに……微かに引っ掛かるコレはなんだ?
『タタラくん、わたしと──』
『いいよ、ミーアちゃん』
「タタラくん?」
「……えっ」
何時の間にか額を押さえていた俺を心配したのかミーアが顔を覗き込んで来ている、何処かでこんな表情を見ていたような気がするが……果たしてそれは本当に何の記憶なのだろうか?
「……何でもない、少しだけ頭痛がしただけだから」
「……それって、お祖父様とお母さんから迷惑掛けられてるからじゃないよね?」
「……ノーコメントで」
仮に、例えそうだとしても言ったら不敬だから言えねぇよ。地味にこの子も皇族の血なんだな、祖父への扱いが若干雑じゃ……いや普通なら皇位に就いていた相手だからもっと扱いが丁寧か。
「カラン、これ以上は孫に嫌われちゃうわよ?」
「とは言うけどよ……タタラの知識、何かしらを聞いて保存するべきじゃねぇかと俺の勘が訴えてきてんだよ」
「……ジジエンティア様」
「マジでそれで呼ぶのかお前」
ツッコミ入れる割には嬉しそうな表情ですけど本音はどっちよ?
まぁいい、反応してたら話が終わらなくなる。
「先ず、騎士の誓い……と言うかクラスアップの条件については正直分かってはいません。ついでに、俺の両親は血筋を遡っても純粋な人間です」
この世界の国の王族は神々やそれに類する血を引いて、特定の神から王権を認められている事が殆どだ。このナーハズヒト皇国の前身だったアクエルド王国も古い神の血を引いていたし、亡くなった正妃様も軍神様と敵対的である戦神の血を引いていた。
何なら
「それなら何でお前は騎士の受勲が出来たんだ?」
「理由についてはさっぱり、そもそも俺は宗派に所属もしてないですし」
「……それが一番の謎なのだがな」
俺の言葉を聞いたカラムスさんが、俺頭上にチラリと視線を向けている。何か有るのかと上を見るが何も無い、何なんだろう。
信奉はしてないが敬いを持つ、前世のお国柄こんなスタイルが魂に染み付いてしまっているので俺は神々の祝福を受けられない。
信仰心を媒介にして神々は信徒へと奇跡を与えると言うのが
「ただ、国に仕える騎士と世界の定めるクラスとしての騎士は少し違うのでその影響ではないかと」
俺のこの言葉に視線を鋭くするパパママジジエンティア……親エンティアは研究者だからこの反応も納得だな、
「国に仕え、国を守り、そこに住まう王……つまり王権を守るのが職務というか爵位としての騎士です」
「……間違ってはいないな」
「対してクラスとしての騎士は、その個人が仕え護るべき相手を定め相手からも受け入れられた時に与えられます」
「待て、クラスアップの条件を知っているのか!?」
「全てでは無いですけどね」
俺自身のクラスアップは無理だが、騎士や戦士等のメジャーな役どころなら前世のゲーム時代で検証されていた。そして、この世界に生まれてから過去の文献を読み漁ってた時期に裏付けも取れている。
この辺、国で管理してると思ってたけど違うのか……知識だけ伝えて研究所にぶん投げようかな。
「神々と世界法則は同じに見えて違いますから、本来は神を通してから世界法則が認定するのがクラスアップのシステムです。対して俺みたいに無宗派な人間の場合、世界法則からの直接的な認定を貰わなければ受勲は出来ないので非常に難しい」
「成る程、だからこそ神に王権を認められている王族が騎士へとクラスアップさせられるのか」
俺の言葉を聞いたパパエンティアが納得と言った具合に言葉を漏らす。
「でも、コレが事実だと証明されてないわよ?」
「それを研究するのがボク達の仕事だよ。タタラくん、研究資料は?」
「都立図書館……じゃない、資料館の歴史書と自伝更には民俗学の所にそれぞれ有りますね」
そのまま書籍の名前と管理番号を思い出して読み上げていく、だいたい60冊程なので冊数はそこまで多くないが対象となっている人達は1000人近い人数に届いているので参考にはなる筈だ。
……ところで、何で本の名前と管理番号言ってる途中からそんな化物を見るみたいな目になるんですかね皆さん?
「タタラは勉強熱心で記憶力がいいのね」
「なぜ若干引き気味に言うんですかね?」
ママエンティアの反応に若干ダメージを負う、そんなに変なのかな。それとミーア、なんでそんな悲しそうな表情するかな。
「……他にも色々と隠してる知識とかないか?」
「えっと……そう言えば存在昇華前にステータスを最大にしてからだと、次に上げる際『地母神の祈り』と『地母神の祝福』を装備してると確定で最大値を引けるとかって知ってます?」
『知らないよ!?』
前に四葩達から知らないと言われていた情報を提示すれば、全員から大声をだされた。コレも国が持ってない知識なのか。
「と言うかタタラ、その二つを装備すれば確定で最大値を引けるって何なんだ!?」
「先ず『地母神の祝福』と『地母神の祈り』は同時に装備すると確定でレベルアップ時にステータスが上がるのは知ってますよね?」
「先ずそれが常識だと思うなよ!?」
あ、コレから説明しないと駄目な奴かな。
「えと、『地母神の祈り』がレベルアップ時にステータス上昇の確率を2倍にするって言うのは分かりますか?」
「……そうなのか」
「ええ、そして『地母神の祝福』が確率を5倍にする効果が有ります」
この辺の装備は過去作から伝統的に存在している、レベルアップ時にステータスが上がりづらいゲーム故にお気に入りのキャラはコレを持たせつつ介護して敵を倒すのが定石だった。
最初期は装備が一つだけなのでより確率が高い方だけを使っているだけで終わったのだが、問題はアクセサリーが二つ装備出来るゲームが出てからだ。
この『地母神シリーズ』、同じ装備を重ねても効果は片方しか採用されない。つまり『祈り』を二つ付けても効果は重複しないし、これは『祝福』も同じ。しかし、『祝福』と『祈り』を同時に装備すると効果が乗算されたのである。そう、加算では無く乗算。
しかも計算式も大分ガバガバで、元になっている上昇する確率の数値に50を掛けたり20を掛けたりしていたらしく結果として元の数値に1000を掛ける結果になったらしい。流石に数値が馬鹿過ぎる。
公式もコレは想定外だったのだが、そもそもが難易度の高いゲームシステムだったが故に『地母神様からプレイヤーの皆様への贈り物です』と公表した。そして、以降のゲームでもこの挙動は残されたのだ。
因みにファンアートで存在しない地母神様が多数生まれた上に、コスプレイベントで着てくる益荒男も居た。お前等の見た幻覚で公式に宇宙を背負わすなよ。
「上がり幅とかはどうなんだ?」
「その辺りは本人の素質と言うか才能ですね、更に言えばどれだけ人間から離れた血が入っているかによります」
「何だそりゃ、何か根拠が有るのか?」
「俺がそうですね」
「……何?」
「この世界で最も脆弱な存在は人族、これが大前提です」
俺の言葉を聞いた
「人族は心体的には平凡、突出した所がない。寿命もエルフやドワーフなんかの妖精族の十分の一程しか無ければ魔力も無いし、獣人種には身体能力で負ける。昔の悪魔族からは魂や魔力を餌として見られたり、性欲の捌け口にされた歴史も有ります。それと──」
「なぁ、ちょっとそこまでにしてくれないか?」
人族の特徴を上げていったら
妙に居た堪れないような表情をする
「そんな人型最弱の人族は、他の種族から血を分けて貰ってない限り体力魔力技力以外、レベルアップ時のステータス上昇が最低の1で固定されます。実際、俺のレベルアップで上がるステータスは体力が最大で5、魔力と技力が3、その他は1で統一されてます」
「……お前、それでよく探索者続けられてるな」
「生きる為ですから」
俺が必死にレベルを5上げても、四葩は1回のレベルアップで差を無くす。その事実に傷付く事も少しは有るが俺は俺だ。父さんと母さんから貰ったこの身体を厭う理由にはならない。
「でも、タタラがそうだからって他の人族がそうとは限らないんじゃないか?」
この疑問は当然だろう、だけど俺には前世のビジュアルファンブックでそう設定されている事を知っている事実と、此方で答え合わせが可能な存在が居るのだ。
「ジジエンティア様」
「うん、律儀に呼ぶのはいいけどちょっと長いから戻していいぞ」
「カラン様、俺の近辺でこの辺の答えをくれる相手……分かりませんか?」
「いや、そんなの……まさか」
俺の問い掛けに眉を顰めるのも一瞬、即座に思い至って目を見開く
「だが彼奴らは言葉を……そう言えば分かるんだったなお前」
「ええ、因みに何故俺だけに分かるのかも原因不明で俺だからって結論みたいですね」
「成る程、こう言う面でもタタラってるのか」
因みにその『タタラってる』も世界から認知されてるって言ったらどんな反応をするのだろうか……言いたくないから言わないけど。
「……カラン様、タタラの言っている事はどう言う意味ですか?」
「いや、コレは少しな……多分何かしらの縁か運命みたいな物だ。俺からもタタラからも話せんだろう、何をされるか分からん」
都市長の質問に対して難しそうな表情で答える
序に、そんな相手からこのままだと20年前後で死ぬと教えられてるとか言ったら『看板娘』達を死神扱いするかも知れない……余計に言えないな。
「話を戻しますね。人間は弱過ぎてこの世界で生きるのに向いてないのが前提です。しかし、他の強い種族と交配出来るという強みが有ります」
「……それで、外部からの血を受け入れた結果が成長のバラつきって訳か?」
「はい」
俺の説明を聞いて考え込む
「ねぇ、タタラちゃん?」
「ちゃん!?」
そんな中で
「タタラちゃんは、もしかして私達夜闇の眷属についても何か知ってるの?」
「つ、続けるんだ……知ってるの範囲にもよりますけど。例えば闇の女神様がどうして夜闇の眷属達を生み出したのかとか光の女神様や『天使』族からなんで敵に見られてるかとか」
「……タタラ、アンタそんなに私の胃を爆散させたいの?」
「一応聞く、何で光の女神や『天使』達は俺達を厭う?」
「思想の違いですね。夜闇の眷属は過酷な環境に人族が耐える為、闇の女神様が人族をその力で変異させたのが源流です。対して『天使』族は光の女神様が過酷な環境の中で人族が生きられるように外敵から守る為に作り出して遣わせて来ています。人族が外敵と同じになっている故に『天使』族は夜闇の眷属を敵として認識、攻撃されるから夜闇の眷属達は『天使』族を敵として認識……それがこの長い隔絶の歴史ですよ」
「そんな理由で俺達の国は何度も『天使』共とドンパチやらされてんのかよ……」
「何がヒドイって闇の女神様としては光の女神様相手に何も思ってないのに、光の女神様が自分の方が正しいって一方的に殴り付けてる事なんですよねコレ。昔は人間が弱かったから信奉されてましたけど、長い時間をかけて混ざり合い多様に力を伸ばした今の人族は光の女神様相手に信奉する事が少なくなってるから時代に合ってない……価値観が今に合わせられないから信者が段々減ってるんですけど」
「……まさかそれを夜闇の眷属のせいにしてたりすんのか?」
「上手くいかない事を上手くいってる人達のせいにする奴って居ますよね」
「あ、はい」
遠回しの肯定に
「……あれ?」
「どうしたミーア」
俺の説明を聞いていたミーアが疑問の声を上げる。
「夜闇の眷属は人間を闇の女神様が変異させたのが元なんだよね?」
「ああ、そうだ」
「なら、エルフやドワーフに獣人は?」
「ぶっちゃけて言うと、大本は皆人族だぞ。敢えて言うなら獣人族は夜闇の眷属の派生で魔獣とも交配出来た結果多様化したってのが前提、妖精族は妖精種の最上位である名前も分からない精霊達の根元から因子を与えられた人族達が数を増やして行った結果別れただけだからな。つまり、遺伝子の根本が全部人族だから人型生物は交配が可能なんだ」
「なんだその地獄の結論は」
ミーアの質問に答えたらカラムスさんからそんな声が漏れて来た。結局この世界、前世の肌色問題より見た目がデカいだけの人種差別してるようなもんだからな。それで言うなら全種族から普通に妾を取ってる
「……なんか、また何か不名誉な思念を受けたような?」
「妥当な思念じゃなかった?」
中枢を出発する前にジジババエンティア似たような遣り取りをしてた気がするけど、まさか本当に俺の考えが届いてたりする?
「……胃が痛くなる事実な上、下手に公表したら世界が荒れそうねコレ」
「研究したら結論出ますけど、サンプル集めた時点で神々から不敬とか不遜とか取られて異端審問……どころか人類の敵認定されそうかな」
「調べたいけど死にたくないから手を出せないわね、コレ」
都市長と親エンティアが諦めたようにこの結論を出した、確かにこんな事を調べようとしたら神々から大不評を買いそうだし無理だろうな。この場の面々で死ぬまで心に抱えておくべき事実だろう。
「そう言えば、『天使』族と子供が出来るのは何でだ?」
「光の女神様が人族をベースにして作り上げてるからですね、遺伝子情報が一緒なんですよ」
「……一応、世界の嫌な事実を色々語って貰ったところで悪いんだけど」
「はい」
「そろそろ魔導具の設置に移って欲しいかな、ボク達にも仕事が残ってるし」
「あ、そうですね」
本来の要件に戻ってくれと頼まれたので了承する。
「あ、待て。まだ聞くべきことが……」
「カラン、タタラちゃんは仕事を優先ね。聞きたいことは後で別のところで聞きましょうね」
止めようとする
調度品の少ない所長室の中、掛かっている営業許可証や認定証を許可を貰って移動させて広いスペースを確保した壁に魔導式モニターを掛ける。研究設備の稼働で魔力不足になった場合も想定して、内部にコンデンサーを増設して緊急時にも対応出来るように少し改造しておく。しまったな、自警団のもこうしておけばよかったかも。
「ねぇねぇタタラ、コレ家庭用に欲しいって言ったら出来る?」
設置を終えてテストの為に点けたり消したり中枢の親機と接続をしたりをし終わった辺りでママエンティアからそう声を掛けられる。
「出来ますよ、1台辺りの値段は……都市長?」
「アンタが総ミスリル製とかのぶっ壊れたモデルでも作らなければ1台50万から100万ってところね、大きさのオプションでその辺り変えなさい」
「この壁のだったらいくらかしら?」
「150万から200万よ、最後にした改造で値段が上がってるわ」
前世の液晶テレビの10倍くらいの値段かな、技術が普及して行けば安くなるかも。
「でも、今は有っても接続出来るのなんてこの研究所とか中枢……それと今日他に設置した中央病院とか入管に自警団本部くらいですよ」
「あら、タタラの家は使ってないの?」
「まだ設置は……あ、そうだ」
一つ思い出してインベントリから魔導式タブレットを取り出す、念のために『念話』と『感応』の接続先に中枢の親機と他も指定していく。
「これで、一応俺とも繋がりましたよ」
『いや待て何だ今の!?』
タブレットを見た全員からツッコミが入った……そう言えば魔導式ワードプロセッサーは出してるけどタブレットは初めてだったかも、やらかしたな。
「コレはまぁ、ちょっとした理由で作った……このモニターのプロトタイプというか」
「……アンタこれ、どんな阿呆な思考して作ってるのよ」
タブレットを『鑑定』したらしい都市長からそんな言葉がこぼれる、理由が逃げるタチアを追うためとか口が裂けても言えないな。
「コレはまぁ……『出てこい』」
「たー!」
俺の命令でインベントリからゴーレムのリーダーが飛び出してくる、突然の事で
「此奴の力を借りる為ですね……『視界を借りるぞ』」
「らー!」
リーダーから了承を貰い、タブレットにリーダーの目から見た世界が映る。その機能に息を飲む都市長。
「アンタ、コレって……」
「他の人のゴーレムで同じ機能を付けられるかは分かりません。ですが、アリーナのカメラと同じ物を作れば同期させて同じ様な事は出来ます」
病院や此処に設置したモニターにもカメラ機能が付いているのでテレビ通話は可能だが、ゴーレム達から視界を借りれるのは恐らく俺が作った此奴らと俺のタブレット間だけだ。他の人のはそれこそ専用のカメラを作らないと無理だろう。
「……タタラ、コレで戦術が有ったりするか?」
「ええ、有ります。昨日アリーナでダリア……機巧乙女が使っていたのと合わせて上空から戦場を俯瞰し情報を取得するって物が」
「……竜騎士を必要としないか。戦場で革命が起きるな」
「……あの空を飛ぶ玩具が、玩具のままでいて欲しいのは本音なんですけどね。でも、戦場で味方を死なせない為に有効活用するっていうのも仕方ない事だとは思ってます」
「割り切れ、って言えるのは俺が元為政者で戦場に立つからだ。お前は兵士じゃなくてクラフターだ、割り切らなくていいし納得なんてしなくていい」
「つか、この視点一つでそこまで多く人を殺せる訳でも無いだろうに」
「あ、コレは今のところ俺の持つ全てのゴーレムに対応してます。地上用201体、鳥形1体からの情報を取捨選択可能ですね」
「前言撤回して悪いが普通に使い方次第で大量に殺せるわコレ」
「何だったら3体も居れば縦横の軸を地図と合わせて超長距離砲撃とかも出来ますしね」
「予想よりも物騒過ぎる」
魔導鎧用のマイクロミサイルではなく、長距離弾道ミサイルでも作れば一発だろう。流石に俺は開発したくないが。つか、飛行型アーレムからマイクロミサイルばら撒くだけでも被害デカいよな……駄目だこの手の事を考え出すとあまりにも前世で見た戦法が思い浮かんで人道って言葉を明後日の方向へ投げ捨ててしまう。
「……タタラちゃん、何か凄く物騒な考えが有るかも知れないけれど出しちゃだめよ?」
「出しません、自分でもこんなのどうよって内容ですしやったらこの国がバッシング受けそうだし」
「気になるけど聞きたくねぇな……」
それこそカラムスさん達みたいな英雄の価値は残るだろうが、兵士の価値が無くなりそうな戦法だからな。地雷が起爆する前に走り抜けられたり、ミサイルが直撃しても死なない英雄以外は軒並み意味が無くなる。
そう考えるとある意味では人道的なのかも知れないが、英雄への負担と倫理観の欠如を招くだろう。
画面の向こう側で国の威信を掛けてる戦う英雄達、それを見て娯楽へと貶める衆愚。
対岸の火に対して共感性を発揮し難いのは殆どの人間が持ち得る気質だ、実生活に支障が出て初めて実感を得るなんて何処にいてもあり得る。コレは俺自身にも当て嵌まってるだろう、己が死んだ経験が有ると言うのにこの世界で両親が死ぬまで誰かの死に対する想定が薄かったのだから。
「……こんなに小さくて可愛いのに、そんな危ない使い方もあるんだね」
「……たー」
俺達の話を聞いていたミーアがしゃがんでリーダーの頭を撫でている。対してリーダーは視線を逸らす……ミーア、短いスカートでその手の行動をすると見えるからやめろ。白のレースが一瞬だけど映ったぞ。
「つか、タタラが本気出したら相手に何もさせずに終わらせられるんじゃねぇか?」
「残念ながら俺は学生で、探索はしてても対人戦闘訓練は受けてないんですよ」
「いや、普通にゴーレム作って人海戦術とか」
「俺の作るゴーレムって基本コレですよ?」
インベントリから新たなゴーレムを出す、相変わらずのへちゃむくれた俺の似姿に気が抜ける。
「……敢えてこう作ってるんじゃなく?」
ミーアに撫でられているリーダーと、一回り小さい俺に脇抱きされているゴーレムとを交互に見る
「いや、スキルで作ると自然とこうなって……」
「……苦労してるんだな」
見た目からして油断を誘えるのは確かではあるが、此奴らは25階層の『ミスリルゴーレム』に毛が生えた程度の能力しか無いのだ。足もそこまで速くは無いし身体も小さい、そこまで頼り切りに出来る程に強くは無いのだ。
「人手不足を補う上ではまだ使えるでしょう、医療班の手伝いとか避難誘導に回したりしなさい」
「成る程、それなら此奴らにも出来そうですね」
此奴らは『た』と『ら』しか発声出来ないが簡単な意思疎通は可能だ、何なら『看板娘』の方が無言故に難易度高いまで有ると思う。
ふと思い付いてインベントリから『バイト長』達の意思を文字に起こそうとして失敗した魔導具を取り出す。
「リーダー、少しいいか?」
「たー!」
ミーアに撫でられているリーダーに声を掛けると嬉しそうに返事をして近寄ってくる、見上げてくるリーダーに魔導具を渡して『感応』を繋げる。
「これ、持ってみてくれ」
「たー!」
──わかりました!
持たせてみた所、魔導具は早速効果を発揮した。
「よかった、お前達の言葉は翻訳出来るみたいだな」
「らー!」
──おやくにたててうれしいです!
笑顔で答えるリーダーと手元の魔導具は表現が一致している、これなら量産して持たせれば避難誘導が楽になるだろうな。
「……タタラ、説明」
「昨日の喋らない天使族っぽい娘達用に作った意思疎通を行う為の魔導具です。ただ、彼女達のは言語化不可能で表情と言うか変な何かの表記になりましたけど……あ、これもしかして何かしら言葉を話せなくなった人達用の医療器具に認定って」
「都市祭後にしなさい、私も胃が限界なのよ」
会話が出来るようになったリーダーが嬉しそうにミーアと戯れ始めたのを見つめつつ、話し掛けて来た都市長に答えたらこの反応をされる。
最終的に都市長までこれを使う事になるとは、神の身では無い俺には想像も付かなかった。
「……今、何か不穏な事を考えなかったかしら?」
「気の所為ですよ」
俺の思念を受信したのか都市長が訝しげに俺を見てくるが、視線を逸らして答える。正直に言えねぇよ。
「ねぇ、タタラくん。アレってこの研究所にも卸してくれないかな?」
そんな俺に話し掛けてくるのはパパエンティア。はて、アレが研究所に必要なのか?
「実はね、実験には声を出せなかったりする物も有るんだよ。そういう時、あの魔導具が有れば凄く助かるんだよね」
「そういう事なら降ろしますけど……都市長?」
「まだ設計図や技術の検証が出来てないから値段は即答出来ないわよ。それでもそうね……1台10から20万ってところかしら?」
「……研究費から出すにしても台数は用意出来ないか」
「タタラ、寄付は許さないわよ」
「……はい」
困ってそうだから何時もの手段を考えたら速攻で潰された、流石は都市長だ俺の考えを理解している。
「常にその数を必要としないのなら、研究所の備品として所内で使い回しなさい。10台も有れば足りるでしょう?」
「そうですね……正式に販売したら欲しい所員達には自費で買わせます」
笑顔でエグい事を言ったな……とは言え、運営費もただじゃ無いのにそんなポンポン買える訳もないか。
「研究所で使う物ならこの所長室のモニターと緊急用の回線を繋ぎましょうか、緊急事態が分かるようになれば被害も抑えられそうだし」
「それは本っ当に助かるよ!」
うん、パパエンティアも苦労してるんだな。向ける視線が生暖かくなるのを自覚する中、
「なぁ、タタラ」
「……王立研究所のは都市長を通して依頼して下さいね」
「分かった、都市祭後に依頼するな!」
うん、親子だな
「時間も押してるから、そろそろ解散だけど……ボク達も学生の乱痴気騒ぎを抑えるのに協力すればいいのかな?」
「そこそこステータスは高いけれど、実戦から離れ過ぎてて危ういわよ?」
そんな親エンティアの言葉を受けて、流石の
「安全策、とも言えないですけど……」
そんな二人に俺は手早く『クラフト』を行い、最早馴染みとなって来ている物を二人に渡す。
「これは……」
「効果は装備して確認して下さい」
パパエンティアが『卵』を受取り、その効果を確認する。途端に目を見開き、俺を見てくる。
「タタラくん、コレって!?」
「無料で配ると怒られるので、後で返してくださいね?」
そりゃ体力・魔力・技力が100ずつ上がって1分間に半分回復するようになればこんな反応もするか。ママエンティアも効果を見て嬉しそうに笑っているの。
「タタラ、コレって買える!?」
「一応、売り物では有りますけど……最低でも9000万しますよ?」
「うわ、流石に私の貯金じゃ買えないわ」
「ボクのだけでも無理だね、家族の共有貯金でもギリギリかな」
研究所の所長と副所長の給料と貯金でもキツイってどうなのか、いや自分の研究で足りない分とか補填してたりするのかも知れない……それでも大分ブラックだな?
「タタラくん、私は……」
「ミーアは駄目だ、戦うより逃げて欲しい。アレは戦う人に渡すものだから」
話し掛けてきたミーアにそう答える。エテル達には関わらせる覚悟は出来ているが、彼女に対して俺は覚悟を抱けない。
「……ルミ、タタラの考えに俺も賛成だ」
「お祖父様……」
「いくらミーアがカラン様と神殺しの血を引いているとしても、探索よりも危険な事には関わって欲しくないんだ」
「……待て、タタラ。お前なんでルミの血について知ってるんだ?」
「え、だってママエンティアって神殺しと【紅焔の魔女】リーベライト・スキエンティアとの子供ですよね?」
「……タタラってどんな知識もってるのよ」
ヤバい、これ突いたら駄目な奴だったかも知れない。だって
「……可愛い孫が生まれたから顔を見に来たら、ムカつく男女の面を見るとは思わなかったぜ」
うわぁ、額にぶっとい血管が浮いてらっしゃる。
「父様が殺し合いを始めそうで戦々恐々としたなあの時……」
「パパが応じて魔剣抜こうとするのも怖かったなぁ……」
親エンティアの前で殺し合い始めかけたんか、都市が滅びる手前じゃねぇかそれ。
「うん、こんな怖い祖父が居るんだ。仮に今回の都市祭に何かの偶然で神殺しまで来てみろ……最悪『ワールウィンド』が消し飛ぶぞ」
「あ、あははは……」
「……まさか、今回に限って来訪する手紙とか来てないよな?」
改めてミーアを説得しようとすれば、神殺し云々のところで顔が引き攣って最後には変な笑いまでし始めた。嫌な予感がする。
「ま、間に合うかは分からないけど歩いてくるって……」
「……転移門で来ないだけマシ、か」
誰を伴にして来るかは分からないが、冗談抜きで一騎当千な戦力なので間違いなく『ワールウィンド』に被害が出る。一区画を一から作り直す可能性を考えてゴーレムを500体まで増やそうかな。
「都市長」
「……何かしら、今の私は胃が限界なのよ」
「一区画を吹き飛ばされた時の事を考えてゴーレムを500体まで増やそうと思うんですけど」
「……準備だけお願い」
結構、切実な声だった。
「でも、私もそこそこ探索で鍛えてるから護身くらいは出来るよ。タタラくんに作ってもらったこの剣も有るしね」
都市長と相談する俺にそう言って、ミーアはインベントリから依頼で作った剣を取り出す。本当に実戦で使っているらしく、その剣身には大小の傷が見える。
「……悪くない剣だな、一角獣の角剣か」
「いえ、分類は鉄の剣です。この『ワールウィンド』のルールでクラフターへの製作依頼するには一度鉄製品を依頼する必要が有るので、鉄の剣に一角鯨の角を被せる形にして安く仕上げました」
「……あんた、本当にルールの隙を突くの多いわね」
「本当は俺の持ってるミスリルとかで剣杖を作ってやりたかったんだけど、販売許可出てないから……」
「大丈夫だよ、この『死霊王の衣』も買えたし」
俺の言葉に笑顔で着ている『死霊王の衣』の襟元に触れる、普段から着ているのか大分着慣れた雰囲気だ。
「……これ、1000万とかする商品じゃねぇか?」
「今は最低値250万ですね、商会に性能から取り過ぎって訴えて値下げさせて貰いました」
「……で、幾らで売ったんだ?」
「250万ですね」
「タタラってんなお前……」
あれ、コレでもソレを言われるのか俺?
「待って、それって『リッチ』の素材で出来てるのよね?」
「ええ、そうですよ?」
「なら、どうやって手に入れたの?」
「普通にぶっ殺してですけど」
「一応、火属性武器を用意すれば簡単ですから」
「属性武器って45階層以降で手に入る素材が要るでしょ、『リッチ』が出て来るのなんて31階層からだしなんで……ってアンタまだ卒業してないから自力で周回してるのよね」
そうなんだけど、ダリアが居なかったらもう少しこの辺遅れてたと思うんだよな。彼奴が進んで攻略に行って核石を集めてくれなかったら、今の攻略ペースは無かった。
特にタチアのスキルでレア敵としか会敵しない俺達では、50階層到達すらも怪しかっただろう。
「属性武器か……タタラのは何か変わり種な印象が有るな」
「まぁ、否定はしないですよ。こんなんですし」
インベントリから『エレメンタルハンマー』を取り出す、グリップを地面につけて、シャフトを持つ格好だ。
俺の武器が気になるのか全員が近寄って見てくるが、真っ先に声を上げたのが『鑑定』持ちの都市長である。
「あんた、属性可変武器って何よ!?」
「俺達のパーティだと皆持ってますよ、何なら光と闇以外なら全属性吸収装備とかも」
「それ、何をどうしたら作れるのよ!?」
そう言えばこの辺報告した記憶が無いな……やらかしたな。
そんな俺達を他所に、親エンティアは研究者の目で武器を見ている。
「……シャフトとヘッドの繋ぎ目、かな」
「ええ、回転する機巧に見慣れない刻印が有るわ。コレでパーツを回転させて核石を切り替えるのかしらね?」
「凄いね、考え付いても実現は出来そうにないよ。コレがタタラってるってヤツなんだね」
「そうね、タタラってるものなのね」
改めて親エンティアの中で俺の扱いはこんなので確定かな、この二人にはまだ渡したいものが有るけど……今日の夜は家に帰ってるのだろうか?
カラムスさんに都市長を押し付けつつ、親エンティアに話しかける。
「あの、親エンティアのお二人いいですかね?」
「うん、何かな?」
「何かしら?」
「もう一つお貸ししたい物が有るんですけど、今日の夜は研究所ですかね。それとも家ですか?」
「一応、毎回家には帰ってるよ」
うん、それなら夜に『厄切』を二本鍛えて渡すか。あ、
「それなら夜に俺の鳥形ゴーレムを送らせて頂きます、住所をお願いしたいんですけど」
「ああ、それなら貴族区の──」
住所を確認して、改めてこの人達が皇族では無くても貴族であると認識する。まぁ、領地は持ってないみたいだけど……逆に持たせられないか。
と、そんな俺にやや不満そうな顔をするミーア。頬が膨れてフグみたいになっている。
「あんまり頬を膨らませるなよ、可愛い顔が台無しだぞ?」
「別に、私は可愛くないもん」
「ああ、そうか。何方かと言うと美人顔だもんなミーア」
「そうじゃなくて!」
怒りなのかそれとも羞恥なのかよく分からない状態で顔を赤くするミーア、少し宥めつつ以前作ったミスリルの剣杖を渡してご機嫌を取っておきたいところだ。しかし、変に譲渡すると角も立つし……
少し賭けてみるか。
「分かった分かった、ごめんって。コレあげるから赦してくれ」
そう言ってミスリルの剣杖を取り出してミーアに差し出す、俺の手元の代物を見て大きく目を見開いた。
「こ、コレって!?」
「あの剣の依頼を受けた日に序に作ってみたんだ、剣杖なんて依頼が無いと作らないから売れなくてさ。余り物でご機嫌取りってのもアレだけど」
驚いた表情で俺の顔を見てくるミーアだが、次の瞬間には首を横に振る。
「ダメ、こんな高価な物は貰えない」
「そうよ、流石にそれのお金を取らないのは許されないわ。そのミスリルを得る為にどれだけ探索者が苦労するか、加工する技術を得る為にクラフターがどれだけ技術を磨くか……分からないアンタじゃってアンタは無理か」
断りを入れるミーアに同調しようとした都市長だが、俺の特性を思い出して途中で言葉が切れる。
「……なんでタタラは分からないんだ都市長?」
「この子、生まれた時から金属なら全てアプローチが少し違うだけでスキルで加工できていたのですわ」
「マジでタタラってんのかコイツ」
「ねぇねぇタタラちゃん、ミスリルを扱えるのって凄いの?」
「普通は『クラフト』のスキルランクがⅡ以上必要なんですよ、俺はⅠから出来ましたけど」
「それはタタラってるって扱いも頷けるわね」
「オリハルコンやアダマンタイトまで鍛えられると自慢にはなるみたいなんですよね、正直そんな魔法金属が鍛えられるかよりもどんな作品を作れるかの方が重要だと思うんですけど」
学生が作ったオリハルコンの剣と、お師様が打った鉄の刀。何方がより価値があるかと言えば後者だ、そもそもお師様の刀は相手がオリハルコンだろうとぶった斬れる地力が存在している意味不明さだ。
俺が新開発をしたり発展技術を生み出しているのは趣味ではあるが、工匠長に求められるのは他に再現性の無い技術を持つか基礎能力が誰にも追い付けない領域かの何方かだろう。
前世知識が前提の発想力、それらを開発を可能とするスキルを併用している俺は確かに次期工匠長になる条件を満たしているのかも知れないが……基礎能力はどうだろう。まぁ、確かに剣一本を一時間足らずで打てはするけど……この辺はスキルを活用すれば誰でも出来そうに思うんだよな。
「成る程ね、タタラちゃんがこの武器とか作れるから工匠長に成るのも納得だわ!」
「ありがとうございます……セラス前皇后陛下」
「あ、あれ?」
褒められた事に礼を言ったら戸惑われた、なんだろう?
「あの、ババエンティアとかお婆ちゃんでもいいのよ?」
「アレ、本気だったんですか!?」
流石に大分歳上とはいえ、見た目の年齢がどう見ても30に届かない女性をババエンティアとかお婆ちゃんとか呼び難いんですけど?
「え、なんで呼んでくれないの!?」
「だってセラス様の見た目でババとかお婆ちゃんとか呼べないですよ、明らかにお姉さんくらいですよねその見た目!?」
「コレでも5人のお母さんしてるんだけど!?」
「見えねぇよ!!」
あ、駄目だ。この人のこの反応、俺の事を完全に身内判定してる。今更思い出したけど、この人は歳下相手だと判定甘くて距離感詰めるのびっくりする程早かった。だって
「じゃ、じゃあ……お母さんとか?」
「いや、確かに都市長とかシスターとか母親代りの人達は居ましたけど……」
「ほら、それなら!」
「いや、流石に義理母以外にこれ以上母親増やす気無いですよ。死んだ母さんに悪いし」
「え、あ……ごめんなさい」
しまったな、言葉の選択を間違えた。謝って欲しいわけじゃないんだけど、それでもこの人を母として見るのは正直無理だ。
いや、エテルに産み直しを言われたことに比べればまだマシかも知れないけど。
「……はぁ。セラス、流石にその年頃の男に距離を詰め過ぎだ」
「ええ……ちょっとはしゃぎ過ぎたわ」
「お前が気に入るってのは珍しく無いが、そんなか?」
「今日半日で大分、ね」
二人の会話を聞いていると、何か俺がまた周囲から誑しって言われる流れな気がする。何だこれ?
「……そうだ、タタラ」
「あ、はい」
「その剣杖、俺に献上しろ」
「……ギャグ?」
「いや、そうにしか聞こえんがそうじゃない」
分かっててワンクッション入れたが、
「……陛下、どうぞ」
「ったく、いきなり畏まるな……だが、特に差免す」
俺の手から剣杖を受取り、その出来を見る。
「……いや、想像以上に出来がいいなこれ」
「一般的な物よりも三段階くらい上の出来ですよ」
「そんなんで済んでるのか……」
「今なら五段階くらい上のも余裕で作れます、ってか手を抜かないとソレ以下にならないです」
「改めて狂ってんのかお前」
日々『空裂』の鍛錬を通して自身の足りない面に向き合い、
凄いな、お祖父様から前皇帝陛下に一瞬で切り替えた。向かい合うミーアがその威厳を前に硬直してしまっている。
「──カルミア・スキエンティア」
「は、はひぃ!」
名前を呼ばれて余りの緊張で声が裏返っている。いや、俺もいきなりアレやられたら同じ反応するだろうから笑えねぇ。つか、実際今朝やったもんな似たようなこと。
「新たなる研究用の魔導具、その試験を熟しこの国の発展に寄与した労に報いを与える。これを受け取れ」
「は、はいぃ……」
若干震えながら剣杖を受け取るミーア、元々コレを狙ってたとは言え流石に可哀想過ぎたな。
「……それ、元々タタラがお前の為に作ってたモンみたいだからな」
「え?」
「使ってやれ、ちょっとやそっとじゃその武器は折れねぇから」
穏やかにそう言ったあと、ミーアの肩を軽く叩く
「タタラくん、これ……」
「売れない余り物だ」
内心は伝えない、男の子には意地が有るのだ。
「……うん、大切に使うね」
そんな内心を知ってか知らずか……いや、多分気付かれてるな。ミーアは優しく微笑んでそう言ってくれた。
「……ところでタタラ、貴族位やるから俺の孫か俺の娘のどっちか娶る気ないか?」
「貴方は俺の胃を破壊したいのか!?」
ゴーレム達の現時点での能力
『たたらゴーレム・リーダー・ペルフェクティビリティ』
体力 999+100
魔力 300+100
技力 300+100
物理攻撃 200+50
物理防御 200+50
魔法攻撃 0 +50
魔法防御 200+50
速力 100+50
運 10
移動力 5 +5
特殊能力『指揮能力』『クラフトⅤ』『魔力充填』『体力回復Ⅴ』『魔力回復Ⅴ』『技力回復Ⅴ』『ゴーレム強化Ⅴ』
タタラが初めて作ったゴーレムにアダマンタイトとオリハルコンを使用して強化された姿。見た目はデフォルメされた『黒鐵』装備タタラで頭にリーダーらしいアホ毛アンテナが生えている。他のゴーレムと違い、単音だけだが喋る。『た』と『ら』の発音しか出来ないが、イントネーションで大凡言いたいことは分かる。リーダーらしく指揮能力を持ち、下のゴーレム達を充填出来る。尚、タタラの『ゴーレムクラフト』スキルが成長している為に能力が増加している。名前の『ペルフェクティビリティ』にはタタラの意思が介在せずに勝手に付いたものである……多分『料理長』辺りが介入した。
『たたらゴーレム・サブリーダー』
体力 800+100
魔力 100+100
技力 100+100
物理攻撃 80 +50
物理防御 80 +50
魔法攻撃 0 +50
魔法防御 80 +50
速力 40 +50
運 10
移動力 3 +5
特殊能力『指揮能力』『クラフトⅢ』『魔力充填』『体力回復Ⅴ』『魔力回復Ⅴ』『技力回復Ⅴ』『ゴーレム強化Ⅴ』
タタラがゴーレムの数を増やす際に用意した追加のリーダー。初期のたたらゴーレム・リーダーと同じ能力で作られている。タタラの『ゴーレムクラフト』スキルが成長している為に能力が増加している。
『たたらゴーレム』
体力 500+100
魔力 0 +100
技力 0 +100
物理攻撃 30 +50
物理防御 50 +50
魔法攻撃 0 +50
魔法防御 50 +50
速力 35 +50
運 10
移動力 3 +5
特殊能力『クラフトⅠ』『ゴーレム強化Ⅴ』
タタラが量産した198体のミスリルゴーレム。リーダーに比べて使っているミスリルが少なく、核が『ゴーレムコア』なので性能は低め。魔力で動いているが活動限界が有り、魔力切れが起きた場合『たたらリーダー』が充填する事で再起動が可能。充填中は手を繋ぐので、傍から見ていると微笑ましい光景になる。タタラの『ゴーレムクラフト』スキルが成長している為に能力が増加している、魔力のステータスが強化された為に活動時間も長くなっている。
猛禽型ゴーレム『サイファー』
体力 300+100
魔力 100+100
技力 100+100
物理攻撃 50 +50
物理防御 40 +50
魔法攻撃 50 +50
魔法防御 60 +50
速力 250+50
運 10
移動力 15 +5
特殊能力『飛行』『偵察Ⅲ』『隠密Ⅴ』『忍び足Ⅴ』『突撃Ⅱ』『視界共有』『体力回復Ⅴ』『魔力回復Ⅴ』『技力回復Ⅴ』『ゴーレム強化Ⅴ』
イーグルを連れた2機編成、尾に鎖を咥える地獄の番犬のマークが書かれている訳では無い。近似値にリボンのマーク付きのラプターが作られるかも知れない。タタラの『ゴーレムクラフト』スキルが成長している為に能力が増加している。
参考までに
傀儡族『ミスリルゴーレム』
体力 400
魔力 0
技力 0
物理攻撃 80
物理防御 80
魔法攻撃 0
魔法防御 80
速力 30
移動力 3
特殊能力 無し
装備 無し
ダンジョン『常闇の洞』25〜29階層に出現する『ミスリルゴーレム』、51〜54階層までに出現する個体はこのステータスに+50された物になる。
傀儡族『オリハルコンゴーレム』
体力 700
魔力 0
技力 50
物理攻撃 100
物理防御 100
魔法攻撃 0
魔法防御 100
速力 25
移動力 2
特殊能力 『飛翔拳』
装備 無し
ダンジョン『常闇の洞』30階層に出現するフロアボス。
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない