既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント進行中。
「ところでタタラ、このアーレムの出来に対してなにか褒美を取らせるって言ったらどうする?」
「え」
「信賞必罰は世の常、労に報いなければ心は離れるばかりだからな。悪いが拒否権は基本無いぞ」
「押し売り……」
「間違っては無いな」
ある意味で相手の願いも叶えられない度量しかないと言われてるも同然とか、貴族の面目を潰す事になるとかこの辺の駆け引きが複雑過ぎて理解し難い。
正直地位も財も今の分ですら分不相応に持っていると考えて、これ以上は多く求めるつもりも無い俺には過剰に過ぎる。
「あっ」
「おう思いついたのか?」
少し思考を巡らせた時に浮かぶ天啓の様な物が一つ、コレは大分無茶を言う事になるかも知れない。
「その、一つ思い付きました」
「よし、言ってみろ」
俺の思い付きを話していくと、段々と訝しげな表情になっていく
「……それがお前の求める報奨か?」
「ええ、そのつもりです」
「何方かと言うと俺が楽しいだけじゃないか?」
「俺個人としては非常に助かるんですよ」
一通り聞いた後も疑問が尽きない様子の
「分かった、それならそれを褒美として採用しよう」
「ありがとうございます!」
受け入れて貰えて感謝すれば、
「……そう言えばタタラ」
「はい、なんですか?」
「魔鉄で作った武器とか見せてくれないか……少し気になってな」
「……いいな、正式採用にするには金が掛かるが値段以上に質が良い」
「ありがとうございます」
「量産出来れば軍の一般兵の武具を更新するのも吝かでは無いな」
「物の生産より人の教育の方が時間も金も掛かりますからね……」
「全くだ、偶にそれを理解してない奴が居て困るんだよな本当」
前世での苦労が漏れ出てしまったが、
「……流石にコレは威力過剰じゃないか?」
「本来は対『オリハルコンゴーレム』用の代物ですから、コレでも即死は無理なんですよ」
「冗談抜きで面倒だろ『オリハルコンゴーレム』」
次に『エレンジウム』を見せれば、その攻撃力にドン引きされる。しかし、コレを叩き込んでも即死を狙うのが難しいのが『オリハルコンゴーレム』というボスだ。今では流れ作業みたいに倒せるが、元は滅茶苦茶苦労してたんだよなアイツ。
「おいおいおいおい、こんなもん作ってマジで何を相手にするつもりだよ!?」
「色々と戦ってきましたよ。それこそ『オリハルコンゴーレム』とか、『不死の王』にも使いましたし」
「活躍してんのかよ……しかし、本気で浪漫しか無いなコイツは!!」
続いて『オウトエイズル』を見せたところ、大興奮である。そりゃ軍の主力戦車など歯牙にも掛けない超火力は浪漫が詰まっているし、一回の使用に一般家庭が消費する10日分の魔力を注ぎ込むのは馬鹿の所業だろう。
「しかし、この『オウトエイズル』だったか。この杭打機のバケモンは使用者から魔力を引っ張ったりしないのか?」
「元々は魔力が少ない人間でも問題なく使える様にって思想で設計してますからね……尤も、本体重量が重過ぎて筋力が無いと使えない代物になっちゃいましたけど」
本体重量120kgは流石に重すぎるし、全長220cmは扱い難さを助長している……扱うには普通に難易度が高くなってしまったのだコイツは。
「今はダリアが機巧乙女としての特性で自分から魔力を引っ張れますし、俺は自分の使う鎧から供給して稼働させるので殆ど問題は無いんですけどね」
「そう言えばタタラは自前の魔導鎧使ってるのか……あの商会の長が使ってるアーレムの元だよな?」
「ええ、今は見た目が殆ど変わりませんけど強化されてます」
言いながらインベントリから『黒煌』を取り出す。見た目は『玄武』と大きく変わった箇所こそ少ないが、装甲素材が魔鉄からアダマンタイトを含有したオリハルコンである為にその輝きは完全に別物だ。何より王玉により強化された各部位が、其々の属性を示すオーラの様な物を放っていて改めて見ると威圧感が凄い。
なお、そんな『黒煌』をハンガーがアームで掴んで支えた後にステータスを表示していく光景に
「マジか、格好良いなコレ!?」
「この浪漫、分かってくれますよね!!」
「当然だ!!」
ハンガーを見て
俺の作った魔導鎧の説明を受けて彼是と質疑応答を交わし、
二人で勝手に盛り上がり、魔導式ワードプロセッサーで魔導鎧の設計を行い、アレでもないコレでもないと機能を盛り込む。
そうして完成した設計図には、防御機能特化型の魔導鎧が記されていた。
『……やりすぎた』
その設計図を見た俺と
「心臓なんかの重要器官を守る為にアダマンタイトを使うのは理解出来る、このフレキシブルディフェンスマントって何だよおい」
まぁ、重要人物が狙われる状況かつ囮にしてるってのがアレではあるが。
「魔導盾の『カラガナ』を搭載してもよかったんですが、マントが動いて迎撃するのが格好良いかなって」
「いや、分かるぞ。分かるがな……うん、今までに無い防衛装置作るのが早すぎねぇかな」
遠回しにタタラってると言われた気がする。
「しかし、どうしますかねコレ……」
概念実証として作れなくはない、そもそも素材には余裕が有るから普通に作れる。しかし、作ったとしてもコレにどれだけの金額が付くかと言うと……俺の試算だと100億に届く。都市長に査定して貰おうとか思ったら血を吐かれそうだから相談も難しい。
「作るって選択肢は……」
「俺は構いませんけど、国庫に少なくない打撃入りますよ?」
「だよなぁ……」
魔神級の霊核と大量の魔法金属が必要な代物だ、国の蓄えで引っ張るには少し高額過ぎる玩具になる。そもそも、元とは言え皇帝が纏うにしても格式が足りないだろうしな。
「砲撃機能の撤廃の代わりに防御性能を引き上げた魔導鎧、皇族に相応しい代物なんだがな」
「そこまでですか?」
「最前線で敵をぶっ殺して来た俺が言うのもなんだが、本来皇族ってか司令官ってのは前に出ない。これは分かるよな?」
「ええ、司令官というか指揮を執る者が居なくなれば集団は瓦解しますからね。それが国の代表ともなれば尚更でしょう」
この辺は言われずとも分かる。指揮官や司令官は集団を一つにまとめて動かす役割と同時に精神的な支柱だ、考える頭という以上に指示に従えば勝てる・生き残れるという安心感が重要になる。
そんな存在を失えばどれだけ鍛えられた集団も烏合の衆に堕ちる、そうなれば各個撃破されてすり潰される。まぁ、戦場を経験した事のない俺の勝手なイメージでしかないが。
何ならそんな状況からカリスマ性を発揮して逆転する、そう言った英雄譚が蔓延る世界でも有るから何とも言い難い。
「だからこう言った防御に偏った装備ってのは一番上の人間には相応しいんだ。俺じゃなく、今の皇帝に着させるならこう言った代物が最上だ」
「……父親、なんですね」
「相手はもう100を越えてるけどな、俺からしたら何時までたっても大事な息子だよ」
言い訳を重ねているが、結局は息子が心配だから強力な装備が欲しいって事だった。その心を汲みたいが、やり過ぎると各方面に角が立つ……なら俺は権力なんて知らない子供として手を差し伸べよう。
「それでしたら、この設計図と試作品をお渡ししますので皇都の研究所で試して貰えませんか?」
「……なに?」
俺の言葉に呆気にとられたらしい
「俺からのカラン様へ向ける指名依頼です。俺がこの魔導鎧の試作品を作るので、試験運転を重ねた上で皇都の研究所で量産が出来るかを試して下さい」
俺の言葉を理解して、
「元とは言え皇帝に依頼を出すか、普通?」
「潜伏期には色んな依頼を受けて活動資金を集めていたでしょう、昔を思い出してする労働もいいものですよきっと」
俺の言葉を受けて、
「ああ、元皇帝としてじゃない……一人の男カラン・ナーハズヒトとしてタタラ・ジュロンの依頼を受けよう」
「本当ですか!?」
「ったく、嬉しそうにすんなよ」
了承の言葉に嬉々として身を乗り出す俺に、
そんな時、扉から控えめなノックが聞こえた。
「あっと、はい?」
返事をして扉を開けると、その先には三葉さんが立っていた。
「どうしました?」
「お昼が出来ましたよ、お連れの方もご一緒にどうですか?」
その言葉を聞いて、俺の腹の虫が鳴く。羞恥で顔が赤くなる俺を見て、
此処最近三葉さんに押し付けっぱなしの料理、今日の昼食は──
「コレは素晴らしい! 表面に香辛料を満遍なく塗りたくられじっくりと炙り焼きにされた鶏肉! 溢れ出る鶏の脂と香辛料が混ざり合い、旨味を引き出されつつも口の中に脂のくどさを残さない丁度良い塩梅! それでいて若鶏を使った為に肉は柔らかく、繊維は口の中でほろほろと解けていく素晴らしさ! 鶏のみの味に慣れた後は味噌と醤油そして鶏に使われたのとは別の香辛料を活用したタレをつける事で別の旨さを見せ、さっぱりした味を欲した時は檸檬の汁と塩を合わせた物で風味を変える! また腕前を上げたのですね、三葉お嬢様!!」
「……タタラ、この御仁は陽出國では著名な美食屋か何かか?」
「いえ、虎熊家が誇る帝の護衛です」
久し振りに
因みに箸に慣れてないであろう
俺はタレを掛けた白米に胡麻を振り、水を切ったレタスの上にスライスした鶏叉焼と白髪葱を乗せて丼にしている。醤油と味噌の組み合わせで大分濃い味のタレに胡麻の香ばしさを足しつつレタスが含む水分と白髪葱の辛みで口をさっぱりする組み合わせだ。尚、俺の丼を見た雛菊さんは凄い目をしていたがスルーした。
「しかし、陽出國の飯は食い慣れてないが美味いなコレは」
「はい、ありがとうございます」
裏も何もなく素直に褒め言葉が出たらしい
「ねぇタタラちゃん」
『ちゃん!?』
三葉さんはなんだが俺をチラチラと見ているが、まさかね?
「タタラちゃんはカランが何でこんなに機嫌がいいか分かるかしら?」
「あぁっと……俺が色々発明を見せたからですかね、実戦で使うのを想定してないような浪漫の塊が主ですから」
俺の言葉を聞いた
「……なぁタタラ」
「どうした?」
「この方々って……」
「姿絵は見たことあるだろ」
「……マジかぁ」
そんな俺と
「タタラ様」
「はい」
「私もちゃんを付けて呼びますか?」
「勘弁して下さい」
三葉さんのいきなりの提案に対して割と本気で頭を下げた、本気でコレは止めなければ何かが終わる気がする。
「あら、可愛らしいから呼ばれればいいじゃない」
「嫌ですよ、なんで義理の姉になる人にそんな呼ばれ方されなきゃいけないんですか」
「……義理の姉の話は立ち消えたのではなくて?」
「あ」
誂ってくるいばらさんに答えたが、結構デカいミスをしたことに気付く。俺と四葩が婚姻関係ながらもトラブルから破談手前だったところで情報が止まってるいばらさんはその後を知らないんだったな……もしやこの家が瓦礫にされるか?
「……いばら」
食器を机に叩き付けるように置いて立ち上がろうとしたいばらさんに、お義母さんが静かに声を掛ける。その声の奥に押し込められている感情が背筋に怖気を走らせる。
「なんですかお母様!?」
「食事中です、座りなさい」
「それはっ」
「座れ」
激して反抗しようとしたいばらさんが一瞬で黙る、直前まで怒りで紅潮していた筈の顔が蒼白になっている。いや、マジでお義母さんが怖い。いばらさんは腰が抜けたように椅子へ座り、それを見たお義母さんは静かに続ける。
「四葩とタタラさんの婚筋は我が陽出國とこの国を結ぶ上でも重要な事、横から口を出す事を許しません」
「それ、は……」
「妹に先を越されて憤るのは筋が違うでしょう、現状は貴方が相手を再起不能にし続けたが故の因果……恥を知りなさい」
いばらさんは完全に意気消沈した様子で俯いている。もしかしてお義母さん、いばらさんが縁談を反故にしてきた事に内心物凄く怒りを溜めてたりしたのだろうか?
「これ以上、四葩達の婚姻について何か有るのなら私とあの人へ文句を言いなさい。いいですね?」
「……わかりましたわ」
俯いたまま力無く答えたいばらさんを気の毒に思いつつ、以前三葉さんが言っていた知られれば暴れるという言葉が貴重でも何でもない事に恐れ慄く。もう少しおしとやかになって欲しいが……無理かな。
「お客様、お見苦しいところをお見せしましたわ」
「ああ、いや……うん。特に気にしては無いから安心してくれ」
今見た虎熊家の恥部については知らぬ存ぜぬで通すって事だろうか?
駄目だな、この手の駆け引きは全く分からん。
「ねぇねぇタタラちゃん」
「はい、何ですか?」
「カランが機嫌の良い理由、私も後で見せて貰える?」
「良いですよ、その代わり作業中に声掛けは控えてくださいね?」
見学者一人追加。尚、気になっているらしいお義母さんは一生懸命ご飯を食べている『バイト長』の指導が有るので不参加である為に恨みがましい目を俺へと向けていた。
食事を終え、食器の片付けをしようとしたら三葉さんが請け負ってくれたので礼と謝罪をそこそこに
「それでは、脱いで貰えますか?」
「おう」
「え?」
俺が言った言葉に了承する
「……凄いですね、弛みが一切無い」
「そう言って貰えて嬉しいが、此れでも多少鈍ってるんだぞ?」
「全盛期どんだけバケモノだったんですか」
言いながら愛用の糸で身体の採寸をしていく、驚く事に身体が完全な対象になっている……もしや『完全なる肉体』持ちか?
「ちょちょちょちょちょちょっと待って!?」
そんな俺達に対して再起動した
「すみません、採寸が終わるまで邪魔は……」
「採寸って何、ナニを採寸するの!?」
慌てふためく
因みに
「何を採寸するって、そりゃ作るためには大きさを見ないと」
「大きさを見ないと!?」
身体の大きさを見ないとピッタリの装備なんて作れないのに、何を焦っているのやら。口で彼是と返しながらも身体の採寸を済ませていく、大して集中をしなくても正確に測れるようになってるのは『クラフト』スキルの影響だろうか。
「凄いですね、バランスが完璧ですよ」
「ほう、あまり言われた事が無いがそうなのか?」
「ねぇ、何のバランスなのそれ!?」
騒がしい
「終わりました。やっぱり戦ってきただけあって凄い身体ですね」
「ま、そこそこ自慢出来ると思ってるぞ」
採寸時に筋肉の状態なんかも見たが、張りが良い上に柔らかさも有った。筋力と柔軟性が高度に纏っているので恐らく衝撃にも強いだろう、戦闘用に完成された肉体はこう言った物なのではないだろうか?
そんな事を考えているといきなり肩を掴まれる、何事かと思えば必死な形相の
「タタラちゃん!」
「は、はいっ」
凄まじく強い口調で名前を呼ばれ、声が裏返りそうになりつつ返事をする。物凄い力で身体を相対させられ、両肩を掴まれて前後に振られる。
「いい、男同士なんて非生産的な事は辞めて!」
「いきなり何を言い出すんですか!?」
泣き出しそうな声で言われる言葉の意味が分からず思わず言い返す。尚、俺の言葉は全く届いてない模様。
「タタラちゃんにはエテルちゃんってパートナーが居るでしょ、悲しませるような事をしちゃ駄目よ!?」
「その発想するのが貴方のパートナーに失礼だって気付いて!?」
何を勘違いしたのかをようやく理解したから発想そのものを注意するが、全く届いてない。偶に俺の声って誰にも届かない事が有るよなこの世界。
初っ端から状況を理解していたらしい
「なんだタタラ、そう言う事か。俺もお前相手ならいいぞ?」
「状況をより混沌に導くなぁ!!」
悪ノリを重ねたその言葉に悲鳴に似た怒声を上げる、
「うぶっ、振られ過ぎて気持ち悪い……」
「ご、ごめんねタタラちゃん」
「おいおい、情けない姿を見せるなよ『ワールウィンド』の次期工匠長?」
「ふざけんなよアンタ」
1時間程して場の混沌が収まり、冷静になった
「取り敢えず採寸は終わったので、コレに合わせて魔導鎧を作ります……最終確認ですけど」
「ああ、それ以上はいい。あのアーマードマッスルスーツとか言うタイプじゃなく、通常の魔導鎧型にしろ」
「……インナーマッスルアーマーです」
何処ぞの
会話をそこそこに、早速魔導鎧の作成を始める。オリハルコンにアダマンタイトを織り混ぜた合金を外装にし、内部は『終焉女神の神核片』で強化した『イヴィルミスリル』と『イヴィルオリハルコン』で作成する。
「……タタラ、その神核は?」
「出処は彼女達です」
「分かった、これ以上は聞かん」
流石に見たことも無いような圧を放つ神核片に疑問を持つ
そんな一幕を挟みつつ、次々にパーツを作成していく。今回は
動きの阻害を可能な限り減らす為に背骨に沿った蛇腹型の骨格や、関節部を邪魔せず保護する『イヴィルミスリル』製の新型人工筋肉等様々な機能を盛込み着用者の防御能力を上げる。更に『イヴィルミスリル』を織り込んだ布を用意し、内と外の両面から人工筋肉を覆う。一見はただの服にも見えるが、ミスリル製の布と人工筋肉でこの部位に当たっても殆どの攻撃は防げるだろう。
着用時の補助用ギミックとして前面装甲を分割、変形して前部を開きそこから乗り込む形に近い着用方法を採用する。
動力としては65階層以降で手に入れた『
「少し着用のギミックを見たいんで、着てもらえますか?」
半ば形になって来た魔導鎧を前にそう頼むと、
「これ、もしや服を着たままでも装着出来るか?」
「基本的にそれを想定してます、より身体にフィットするように採寸でギリギリまで合わせてますけど」
「ふむ……」
疑問に答えたところ、普段着ているらしい貴族服を更に豪奢にしたような服を着てから魔導鎧に乗り込む。魔導鎧は着用者を認識して、自動で装甲が閉じていく。
「うお、おぉぉぉぉぉぉお!?」
その機能に
そうして着用された魔導鎧はオリハルコンとアダマンタイトの合金故の黒金色とも呼ぶべきか暗い金色で、二の腕や太もも部を覆う『イヴィルミスリル』製の布が暗いオーラを放つ事も相まって魔王の鎧みたいだった。
「……なにか、おどろおどろしいというか禍々しい見た目じゃない?」
「夜闇の眷属の向けに魔法金属をそっちに寄らせた結果ですね……」
「タタラ、コレすげぇ格好良いぞ!」
「気持ちは分かりますけど落ち着いて下さいね、機材に当たったりしたら大惨事なので」
素材は『イヴィルミスリル』と『イヴィルオリハルコン』の2種類。形状記憶合金の性質を持つミスリルを術式で一見布の様に見せる形にし、制御としてオリハルコンを使用する。
ショルダーアーマーの内側にこのマントを装着し、背後を守る様に背中にもマントを通す。更には前掛けも用意して一応の完成だ。
「これでどうでしょうか?」
俺の言葉を受け、出来た鎧の具合を確認する
「想像以上にすげぇなコイツは、身体の動きに全くズレなく付いてくる」
興奮覚めやらぬ雰囲気でそう語る
「カラン様、少し頭を覆うイメージを持って貰えますか?」
「頭を覆う……うおっ!?」
俺の言うとおりにイメージを持った瞬間に、後ろ首の辺りからパーツが迫り上がり頭を覆ってから顔全体を包む。折畳式の兜、内側は魔石を活用したモニターになっていて視界はかなり広く確保されている。
頭部のイメージとしては
姿見をゴーレム達に運ばせて、その全体像を
「おま、これ……お前本当にそういう所だぞ!?」
喜色を隠し切れてない兜を通してくぐもった
隣に居る
まぁ、コレを都市長に伝えたら血を吐かれそうでもあるが。
「さて、タタラ・ジュロン」
「はい」
「この魔導鎧の試験運転を所望だったな?」
兜を上げた
「はい、稼働データはそうですね……」
俺はその場で試作型魔導鎧用のハンガーを作成、機能として『鑑定』と『クラフト』を使用出来るようにしてさらにソケットを一つ作りその中へ記録結晶を差し込めるようにする。
「使用後にこのハンガーへ魔導鎧を懸架して下さい。このソケットに記録結晶を差し込めば状態が記録されますので、コレを送って貰えれば修整した情報を返せるので後はハンガーが術式や装甲の配置を最適化出来ます」
「何だって?」
俺の言葉に疑問を返してくる
「ねぇ、タタラちゃん」
「はい?」
「こう言った道具にスキルを付与するのって皆出来るの?」
「皆は分からないですけど、俺は俺が持つスキルなら付与出来ますよ」
とは言え、最低限のランクに落ち着いてしまうのだが。スキルの作用を術式として解体・理解する事で此等の付与を可能としている……存在昇華時の特殊なスキルは無理ではあるが。
それに『物理攻撃上昇』等の基本ステータス上昇系の付与は出来ても魔導具の使用者が自前で持っていたら重複しないので意味が無い、素直に魔導鎧は強化魔法の術式を転用した強化を掛けた方が効果が出るのだ。
まぁコレ、何時から出来るようになったかは自分でも分かってないんだけど……法務長のハンガーとか無意識に出来ると思って付与してたもんな。
「細かい事は置いとけ、多分説明なんてされても『タタラってる』で結論が付く」
「成る程、コレが『タタラってる』なのね」
既に世界から認知されてるとは言え、コレを皇族に言われるのは中々に傷付くな……誰かから『都市長の胃壁を傷付けてるだろ』とか言われた気がする。
「まぁ、こんだけ新機軸の技術をぶち込んだ魔導鎧を目立って『クラフト』スキルを使わずに数時間で作れてるのが既にタタラってるんだろうけどな」
「え、そうなの?」
「研究開発なんだから皇都じゃ組むだけでも2日以上掛かるぞ」
嘘だろ、そんなに皇都の技術って低いのか……コレを口に出すと『お前が異常なだけ』とか言われそうだから黙ってるけど。
「……ねぇ、タタラちゃん。一緒に皇都に行って保護されない?」
「両親が遺してくれたこの家から離れたく無いんですけど」
善意から言ってくれているのは分かるが、この家を手放したくないのだ。死ぬときはせめて、両親と同じこの街で死にたい。
俺の言葉を聞いた
そして、そんな俺達を見て何かを考えているらしい
「……そうだ、タタラちゃんの家に護衛を置きましょう!」
「次から次にこの家と俺のキャパを超えるような事を言わないでくれませんか!?」
今でも既に部屋が足りてないのだから、これ以上の受け入れは物理的に無理だ。そもそも土地が足りないし、家にそこまで大規模な改装を入れたくもない。
そんな事を言い合っている中で、部屋の扉をノックされる。返事をする前に扉が開いて、いつの間にか帰ってきていたエテルかま顔を覗かせた。
「タタラ、晩御飯……あ」
「貴女がエテルちゃん!?」
「んに!?」
「タタラちゃんったらこんな美人さん捕まえちゃってるなんて!」
「あの、その……貴女は?」
「私はセラスよ、よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします……?」
勢いに押されて受け入れてるように見えるが、ただ混乱しているだけだなアレ。そうやって観察していると、
「アレがタタラの相手か、想像以上に美人だな」
「褒めて貰って嬉しいですけど、手を出そうとか考えたらぶった斬りますからね」
「怖い事を言うなよ、そもそも孫と同じ年の娘に手を出すかっての」
そう言えば、神殺しと関わる時の話では性魔術で相手を屈服させる時以外だと基本身内だけと合体してたなこの人。若い娘に手を出してるのは何方かと言えば神殺しの方だったわ。
エテルが晩飯の為に呼びに来たと言う事で時間を見れば、魔導鎧の作製に4時間以上掛けていた事に気付いた。普段は1時間も有れば作っているのに、今回は専用にしたからか時間が掛かったな。
「……御二方、このままご飯食べて行って下さい」
「いいのか?」
「多分、三葉さんの事なので御二方分も多く作っている筈なので」
俺が二人を連れて工房に籠りっぱなしだったのを知ってるので、気遣いで二人の分も作っているのは予想が付く。此処で返すのも何なので、晩御飯をうちで済ませて貰う事にした。
帰ってきていた当主代行が
いや、此処は普通の一般家庭なのだが。それに部屋も無いし……仕方ないから俺の部屋を貸して俺は工房で寝るか。
「取り敢えず、エテルと一華はセラスさんを風呂に案内して使い方を教えてやってくれ。あと、出来ればトイレの使い方も」
俺の言葉に返事を返してくる二人はそのまま檜風呂へと
時間も遅いのでサイファーに日中に打った『厄切』を3本持たせる、高く鳴いた後に飛び立っていく。
「タタラ、今のは?」
「俺が作った鳥型ゴーレムですよ、ミーアの家に『厄切』を運んで貰ってます」
「しかし、悪いなこんな色々と用意させて」
「いえ、学生運動の目的を考えるとミーア達も人質になり得ますからね。本国からガチで軍隊を差し向けられるよりは安く付きますから」
俺の答えに苦笑いを浮かべる
「……あのタチアってのが、アイツの血筋か」
「ええ、チュテレール卿の血を引く騎士見習いです」
静かな声で質問され、肯定を返す。
「どうもお前と通じてるみたいに見えたんだが……どうだ?」
「……はい」
何処か刺すような視線を受けて、視線を逸らして答える。少しして
「まぁ、お前を心から好いているから仕方ないか。それに、お前と共に過ごすならあの時の女が遅かれ早かれそういう関係になるのも分かる」
「え」
「お前は毒みたいなもんだよ、特に色々抱えてるタイプにな」
毒という評価には中々に思うところが有るんだが?
「俺も此処最近で思うぞ、国を取りに行った時にお前が傍らに居ればってな」
「……親友ならチュテレール卿が居たでしょうに」
「彼奴は別にはじめから俺の隣に居た訳じゃねぇって知ってんだろ、お前ならきっと……俺が父さんと一緒にいた頃から側に居てくれたと思うんだよ」
流石にそれは仮定として都合が良過ぎるだろう、俺がそんな幼い頃に一人で魔王の下へ辿り着けるだろうか?
「まぁ、都合のいい仮定なのは自覚しているさ。けど、お前が俺と関わるのが今でないならそれくらいの付き合いになるって感じるんだよな」
何処か別の世界線の記憶にでも触れてるのだろうか、もしそうして
「お前が側に居たのなら、何か変わっていたかも知れないと今日一日付き合ってて思ったんだよ。発想と、それを結実させる技術……お前はきっとそれらを駆使して俺とフローラを助けてくれただろう」
「でも、そうなった場合きっと隣にセラス様は居ないですよ?」
「……そう、なのか?」
「ええ、きっと……胸の奥の恋を押し殺して旅立っていたと思います」
そう、正妃であるフローラを生き残らせた場合の展開は彼の隣に
「……それは嫌、だな」
「それだけセラス様を愛しているんですね」
「フローラと何方を、なんて問われても答えあぐねる程度にはな」
それは余程ではないだろうか、公式ではフローラ以外を正妃として扱ってないくらいに愛が深い人なのだから。
「俺はエテルだけを愛してる、と公言してるのに他から……」
「お前は一人にしか愛を向けられなくても、お前は基本的に一人で支えられるタイプじゃないぞ?」
「それ、幼馴染にも言われましたけど……そんな分かります?」
「お前は基本的に善性が先行して判断をしている、善意で動いてそれを食い物にされ易い人間だ。だから周囲にはお前を悪意から守れる人間が必要だし、お前の善性を受けたお前を愛する人が集まる」
そう言われても、自分の事が一番よく分からない。
「お前は大人に好かれ易いし、色々抱えてる奴を惹きつける」
「……後半のはさっきも言ってましたね」
「確かな事だからな、虎熊家の当主と夫人が息子も同然に扱っているのもそれを証明している」
「俺も、童心に戻って燥ぐくらいに今日は楽しかった。そんな時間をくれたお前を守りたくなった」
その目には穏やかだが、強い決意の色が見えた。
「カラン・ナーハズヒトが誓おう、お前の苦難を払う一助になると」
「それは……」
「前皇帝としての権力は無いが、俺の武力は貸せる。必要なら言え、多少の無理や無茶を通してやる」
そんな風に言ってもらえる事に、嬉しさと申し訳無さが湧く。手を煩わせる事にどうしても後ろめたさを感じてしまうのは前世の影響だろうか?
「……一人で格好つけるとは、中々に狡くないか前皇帝陛下?」
そんな俺達に低く響く声が届く。振り返れば徳利とお猪口を持った当主代行が立っていた。
「くく、信綱殿は格好付けないのか?」
「儂も格好を付けたいのだが、どうしてもタタラ殿の前では上手くいかぬ」
言いつつ、俺達の間に徳利とお猪口を置く形で座り込む。
「ほれ、一献」
「あ、ありがとうございます」
「ふむ、陽出國の酒か……初めてだな」
当主代行から酒を注がれ、恐縮しながら受け取る。全員の手に渡ったところで無言でお猪口を掲げて、一息に呷る。
喉を通り鼻に抜けるアルコールの熱の後、米の香りと甘さが後に残る。普段あまりアルコールを飲まないが、コレは飲み易いな。
「美味しい」
「ああ、美味いな」
俺の言葉に追従する
「そうだろう、タタラ殿が以前振る舞ったこの都市の酒蔵の秘蔵にも負けぬ自信が有るぞ」
「米と魚が好きなら此方ですね」
日本酒……此方だと陽出酒になるのか、米の酒は魚介と合うから肴が魚なら陽出酒が良い。
「ふむ、そうなるとつまみが欲しくなるか……」
「まぁ、肴が無いのは寂しいですけど……ほら」
俺はお猪口を持つ手で上を指す、その先には黄色月が浮かんでいる。
「こうして月を見上げてその美しさを肴にすれば風流ですよ」
「……中々にロマンチストだな、タタラ」
「何を言うか前皇帝陛下、コレは月見酒という立派な酒の飲み方であるぞ?」
「カランでいい、俺も信綱殿を名で呼んでいるしな」
アルコールの影響か、打ち解けた雰囲気が漂う。空に浮かぶのは神の権能が無い月だが、コレが蒼月や紅月だったなら神様へ酒を捧げてる事になるのだろうか?
「そう言えばタタラ、月の女神達の逸話とかしっているのか?」
「大した事は知らないですよ、精々が神になる前に寝てる事が幸せな妹をガーデニングが趣味の姉が叱りながら面倒を見てたくらいです」
「……それ、月女神の信奉者に絶対に言うなよ?」
「でも、蒼い月の女神様はそんな眠りの幸せを守る為に夜の月になって人々を見守ってくれてるんですよ。優しいですよね」
そんな裏話を語ったら、頭を叩かれた感覚がした。周りを見回すが俺達以外に人は見えない、気の所為だろうか?
「なら、蒼い月女神に奉納するなら何が良いんだ?」
「そりゃ、抱き枕とかぬいぐるみですよ。安眠に向くやつだったらいい夢を見れる加護をくれますよきっと」
酒が回ってるのかそんな軽口が溢れる。今度は背中を連続で叩かれる感触がするが何なのだろうか?
「それなら紅い月の女神には鉢植えや良い肥料か?」
「それでしたらきっと翌年まで豊穣の加護をくれますよ」
今度は頬をつねられる感覚がする、本当に何なんだろうか?
「ところで信綱殿、先程言っていたこの都市の蔵にある秘蔵の酒は無いのか?」
「残念ながら儂は持っておらん、タタラ殿の伝で飲めた物であるしな」
「ならタタラは持ってるのか?」
「持ってないですよ、アレも誰に分けてもらったのか分からないですし」
酒造で貰ったのは確かなのだが、誰から譲られたのかははっきりしない。顔はおろか大雑把な見た目すらも覚えてないのだ。
「なんだ、俺も飲んでみたかったが無理か」
「諦めて下さい、そう易々と分けてもらえる代物じゃ無さそうですし」
俺に分けてくれた誰かはよく襲われたり奪われたりしてないな、あの人は今も酒造で酒を造っているのだろうか?
そんな会話をしつつ、俺達は酒を飲み交わす。陽出國の酒が無くなれば次は
次々に酒を出しては空けてを繰り返し、俺はそのまま縁側で酔い潰れる事になった。
試作皇族専用防御機能特化型魔導鎧『プロテア』
体力 +100
魔力 0
技力 0
物理攻撃 +50
物理防御 +60
魔法攻撃 0
魔法防御 +60
速力 +50
移動力 +1
特殊 『アクティブディフェンスマント』『夜闇の眷属専用』
タタラ・ジュロンが作成した防御機能特化型の魔導鎧、その中でも皇族に向けて作成された魔法金属を合金化や強化して最大限使用された物である。ナーハズヒト皇国の皇族へ向けている為に作製には夜闇の眷属の霊核が使用され、夜闇の眷属が使用する際には性能が2倍に引き上がる。
最大の特徴は専用装備である『アクティブディフェンスマント』で、昇華ミスリルを使用したこのマントは接近する攻撃を検知し対象と着用者の間に展開してその攻撃を和らげる効果が有る。
『アクティブディフェンスマント』
着用者の速力+100以下の攻撃に対して反応し、自動迎撃する。
対象の物理攻撃力または魔法攻撃力を−120した後にダメージ計算式を開始する。
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない