既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント進行中。
感想欄で指摘されて婚姻関係がいばらに伝わってるのを思い出しました、前話のその辺の文を少し変更してます。
5月で加速装置が焼け付いたらしい、書けなくなってる……orz
少しの騒がしさと顔に当たる陽の光で目が覚める。場所はリビングで、一瞬状況が分からなかったが昨夜
周囲の音が耳に届く際に届く微かな鈍痛に顔を顰める、どうやら宿酔いになってしまったらしい。
「おはようタタラ、良く眠れた?」
そんな声が頭上から届く、視線を向けようとするが上手く動けない。何かと思って視線を自分の胸元へ向けると、見慣れてきた濃い紫の髪と、同じ色の翼。どうやら『バイト長』が俺に抱き着いて眠っているらしい。
「すっかり懐かれちゃってるね、離そうとしてもギュッて抱き着いて離そうとしないもん」
笑いを含んだ声でそう告げてくる声に首を回して顔を確認……しようとして障害物で不可能だった。しかし、同時にこの障害物になっている二つの霊峰の持ち主を把握する。
「おはよう、エテル」
「うん、おはよう……声ガラガラだよ?」
どうやら酒にやられてしまっているらしい、エテルに言われて俺も喉の調子が悪い事に気付く。どうも完全に脳が動かないらしい、ヤバいな。
「それで、二人してタタラさんを酔い潰した挙句に放置して酒盛りですか?」
「カラン、流石にこれは怒るよ?」
目覚める前に聞こえた騒がしさの正体はどうやらお義母さんと
「お酒大分呑んじゃってるみたいだね、お風呂入ってスッキリしよ?」
「ああ、そうしようか……」
促されるままに風呂へ向かおうとするが、ガッチリ抱き締めてくる『バイト長』のせいで起き上がれない。うん、どうするかなコレ。
と、そんな事を考えて居るとスカートの裾と白い靴下に包まれた足が視界に入る。そしてそのまま『バイト長』の背中を蹴りつけた。
《起きなさい、駄妹!》
《痛いですぅ!?》
見上げると弁当箱を片手に持った『料理長』が怒りの表情を浮かべていた。そう言えば昨日一日を都市内の仕事に充ててたから弁当貰ってなかったな。
蹴りの衝撃で起きた『バイト長』は俺から手を離して起き上がる、拘束が解かれた為に俺も動けるようになった。
《タタラさんに抱き着いて何をやってるんですか、破廉恥ですよ!!》
《ぼ、ボクはただタタラくんがお布団より暖かそうだったから暖をとってただけです!?》
《男女七歳にして席を同じゅうせずです、みだりに触れ合うのはメイドとしての品位に欠けます!》
《何だが下姉さまには言われたくない気がするですよ!?》
うん、俺の前で脱いで一線越える手前まで行った奴が言って良い台詞では無いな。
「おはよう、『料理長』に『バイト長』」
取り敢えず説教がヒートアップしそうだったので挨拶を入れる事で割り込む、目論見は成功して『料理長』は『バイト長』から俺へと意識を向けた。
《おはようございます、タタラさん》
《おはようです、タタラくん!》
見事なカーテシーを決める『料理長』と、ほにゃっとした笑顔で俺に挨拶をしてくる『バイト長』。大分慣れてくれたな。
《タタラさん、声が酷いですよ》
「ああ、昨日酔い潰れた上に此処で寝てたからな……酒で焼けてるだけだから風邪では無いよ」
俺の言葉に軽く溜息を吐いた『料理長』はインベントリから水筒を取り出して、中身をコップに注いで差し出して来た。受け取って軽く匂いを嗅げば、少し酸味のある刺激臭。
「……レモネードか?」
《はい、昨日は忙しそうだったので疲れを残さないようにと用意して来ました》
「そうか、ありがとう」
心遣いに感謝しつつ、少しずつ飲んでいく。流石に宿酔いを無くすには至らないが、喉の違和感は消えた。
しかし、凄く美味いなこのレモネード。檸檬の酸味と蜂蜜の甘み、少量の生姜とスパイスが加えられていて甘さがくどく無い。
「ご馳走様、美味しかったよ」
《当然です、貴方の為に用意したんですから》
成る程、味覚を把握された上で最適な物を用意されたか。
「それじゃ、取り敢えず酒の臭いを落とす為に風呂行ってくるわ」
《はい、朝食のお手伝いをしておくのでサッパリして来て下さい》
立ち上がると軽くふらついてしまい、エテルがそっと支えてくれた。『料理長』は『バイト長』を急かして着替えさせ、朝食の準備を手伝わせるつもりらしい。少しずつ矯正されて来てるし、いい機会かもしれないな。
浴室の中で湿った音が響く。音源は俺の股間に顔を埋めているエテルが、俺の愚息を舐めている音だ。
「ぐ……エテ、ル」
朝から凄まじい快楽を与えられ、思考が乱れ続ける。俺の呼び掛けを無視してエテルは愚息の根本から先端へと舌を這わせ、先端を咥えて吸ってくる。
歯を食いしばって耐えているが、開始から10分程で既に爆発寸前である。
「にゅふ、ふぁふぁらふぁまんひなひでひっはひはひへ?」
「咥えたまま喋るな、刺激で
何か前にしてもらった時よりも上手くなってる気がする、俺の弱い所を把握しているのもそうだろうが舌の使い方のような物が上手くなってると思う。
反撃に愛撫をしようと考えるが、そんな余裕は愚息に与えられる刺激の前に霧散する。食い縛り快楽に耐える俺の顔を見たエテルは嫣然と笑い更なる刺激を与えて来た。
カリの裏や裏筋だけでなく鈴口に舌の先端をねじ込まれ、代わる代わる与えられる刺激に脳が焼かれるような感覚を味わう。
勢いを増したエテルの責めに翻弄され、遂には耐えきれずに射精してしまう。
勢いよく、更には大量の精子がエテルの口内へと吐き出される。エテルは目を瞑り嚥下に集中しているが、口の端から溢れた精液が流れている。
一分近い時間の射精を終え、エテルは仕上げと言わんばかりに鈴口を吸って残っている精液を全て吸い出した。
それと同時に、頭の中で響いていた鈍痛が綺麗に消える。
「どう、頭はスッキリした?」
「あ、ああ……コレも性魔術か?」
「うん、回復魔法の一種で『性掃』って言うんだよ。身体から悪い物を文字通り吸い出すの」
また知らない能力である、この世界で俺が一番把握出来てないのはエテルの性魔術かもしれない。
「すげぇ助かったけど、吸い出した悪い物を飲み込んで大丈夫なのか?」
「タタラ、私達夢魔は精気が主食だよ。悪性の物が混ざってたって問題なく消化できるよ」
本当、性に関する事が混ざると無法に過ぎるな夢魔は。感心なのか呆れなのか分からない俺を無視し、エテルは浴槽に手をついて此方へ尻を向けてくる。
「いや、妊娠してるだろ!?」
「それでもやっぱりタタラが欲しいんだよ、夢魔なんだから!」
そう言われても、お腹の子供に悪影響与えそうだから怖いんだが。
「それに、タタラの精液だって赤ちゃんの栄養に出来るんだよ?」
「え、なにそれ」
「私達夢魔は相手からの精気を魔力に変換出来るから、タタラの精液を魔力に変換して赤ちゃんの栄養として使えるの」
本当に便利な体質だな夢魔って。
「だから、タタラのオチンポミルク頂戴?」
「その手の語彙って何処から拾ってくるんだ?」
エテルの言葉にツッコミを入れつつ、雄を求めてヒクヒクと蠢くエテルの性器に愚息を当てそのまま挿入した。
エテルは歓喜の声を上げて、俺は幾度と味わっても尚飽きることの無い快楽に脳を焼かれる。そのまま背後から重力に従うエテルの乳房を揉みし抱きながら、腰を打ち付ける。
固く尖った先端を指で弄ぶ、前世の何かで乳首が硬いと赤ん坊が異物と誤認して吐き出してしまうという情報が有ったのを思い出して、解す事を名目に摘んで離すマッサージもどきで刺激を与える。
我慢の限界に達し、エテルを抱き寄せ俺の上に腰掛けさせる。エテルの体重で深く愚息が奥へと入り込み、そのまだ薄い腹を内側から変形させる。
呼吸すらもつらそうにするエテルの顎を掴んで、唇を重ねる。
息苦しさからか膣壁が蠢き、その刺激に耐えられずエテルの奥へと精液を吐き出した。先程と劣らぬ量を吐き出し続け、射精感が終わったところで愚息を引き抜く。
粘性の強い白濁はその入り口から流れ出ることは無く、エテルの膣は俺の子種を全て飲み込んでいた。
朝からハッスルし過ぎた。昨日出来なかったからと朝に済ませるのは自分でもどうかと思うが、エテルのおかげで宿酔いは解消したし身体の調子も良くなったし結果としてはプラスに働いてると思う。
リビングではまだ朝食の準備は出来ておらず、朝の鍛練では
そうして少し眺めていると、
「おはようタタラちゃん、スッキリした?」
「え、ええ……寝汗を流せてスッキリしました」
縁側で寝てる姿を見られているから心配されたのか、体調を確認された。
「朝から愛を確かめ合うなんて、本当に好き合ってるのね!」
『……え?』
何故
「な、何故……?」
「なぜって……お風呂場の声、普通にお庭まで聞こえてたわよ?」
これ程までに死にたいと思った事は早々無いな、ダリアにお兄ちゃんと呼ぶべきか聞かれた時以来か?
「あ、あの……その……」
「もう、エテルちゃんも恥ずかしがらないの!」
顔が赤くなったり青くなったりと忙しいエテルに微笑みかける
「好き合ってるの者同士、愛を確かめ合うなんて当然なんだから。むしろ互いに求め合ってる事を誇りに思わなきゃ!」
夢魔の思考ってすげぇ、全く理解出来ないや。
「あ、ご主人おはようでござる」
「……ご主人?」
そんな俺を心配して近寄ってくる一華に、錆びたブリキ人形のようなぎこち無い動作で顔を向ける。
「なぁ、一華」
「どうしたでござるかご主人、挨拶もしないって珍し──」
「俺とエテルの声、風呂場から此処まで筒抜けって本当か?」
俺の言葉を聞いた一華は一瞬何を言われたのかを理解出来ていない顔をし、直後に物凄くバツの悪い表情になった。そうか、筒抜けだったのか。
インベントリからミスリルの銀糸を取り出し縒り合わせ、ロープを作製する。近くの梁にそれを引っ掛けて台を用意。
「……タタラ、私の分もお願い」
「分かった」
俺の意図を察したエテルに頼まれたので、もう1セット作成して渡す。
「おはようなのじゃ……タタラとエテル、何しとんじゃ!?」
元気よく挨拶してリビングに入ってきた四葩が俺達を見て悲鳴に似た大声を上げる。瞬時に『手毬花』をインベントリから引き抜いたと思えば、残像を残す程に速い斬撃でミスリルワイヤーを斬り裂いた。
「止めるな四葩、この大人数に諸々聞かれた上で生きてても恥にしかならねぇ!!」
「お願いだからトラっちゃん止めないで!!」
「止めるに決まっとるじゃろうが!!」
そこからは他の面々も俺達を止めに入っててんやわんやの大騒ぎ、俺とエテルの行動の切っ掛けになってしまった
「さて……セラス?」
「……ゴメンナサイ」
俺とエテルを思い留まらせた後、朝とは真逆に正座した
状況の切っ掛けになった事に色々と責任を感じているらしく、
「取り敢えず落ち着いたんでいいですよ」
「本当に落ち着いてたら目に光が戻ってんだよなぁ」
俺の言葉に対して
「少し励み声が聞こえたくらいで死のうとするでない、二度目じゃぞこれ」
「……俺とエテルの情事覗いて我慢できなかったの誰だっけ?」
「おう、そんなに戦争がしたいのかお主は?」
箱推し鬼に軽く反撃すれば目が座った表情でそう言われた、心に大分余裕が無いな俺。
「ご主人、きっとお腹空いてるから考えが悪い方に行くでござるよ。はい、あーん」
何とか俺を宥めようと一華が玉子焼きを一切れ摘んで差し出してくる。その匂いを嗅いだら空腹を自覚したので、指ごと玉子焼きを口に含んでやる。
「あぁっ!」
「おう、エテルは復活かのう?」
「軽い脳破壊で精神を復活させるのは流石に荒療治に過ぎるのでは?」
そんな俺を見たエテルが大声を上げて、それを見た四葩とタチアがそんな会話を交わす。
俺は俺で軽く一華の指先を舐めてから玉子焼きを舌で回収し、咀嚼。今日はどうやら砂糖の日らしく、優しい甘さが心に染みる。
表面をほんの少しだけ長く焼いて焼き目を付けていて、香ばしさを齎している。そのくせ内側は半熟でトロリとした卵黄が舌を包み、巻いた卵の層はホロリと解ける。
料亭の出汁巻き等とは違う、家庭的と言うか子供が好むタイプの玉子焼きだ……焼き加減はちょっと真似できそうもないが。
「相変わらず美味いな」
自然と笑みを浮かべて一華を見れば、俺の唾液の付いた指を口に含んで舐め取っていた。流石に笑顔のままで固まってしまったが、これは赦されると思うんだ。
「此方こそ、お粗末様でござるよご主人」
答える一華の唇からは指に架かる唾液の橋が有った、朝から淫靡な姿である。先程までエテルと合体していた俺が言えた事では無いが。
《……何時まで固まってるんですか、朝ご飯が冷めちゃいますから早く席に着いて下さい》
そんな俺に不機嫌な雰囲気で注意してくる『料理長』の思念でようやく正気を取り戻し、俺は他の面々に睨まれつつも食卓に着いた。
「素晴らしい! このとぉすとさんど、さぁもんとれたす更にとめぇとの配分が最高です! わいんびねがぁが醸し出す舞踏の香りととめぇとの酸味、そしてさぁもんの塩味がれたすの甘味を引き出して調和しています! そしてこのこぉんぽたぁじゅ!! 玉蜀黍の甘味を限界以上に引き出し、それでいてくどくなりすぎないよう牛乳を足す事でまろやかな口当たりにしている! とぉすとさんどと相互に高め合うこの味の組み合わせ、まさに至福!!」
「……タタラちゃん、この方は本当に陽出國の帝王の護衛なの?」
「俺は仕事を見たこと無いですけど、虎熊家からはそう聞いてます」
《タタラさん、美食家の家系と言われた方が納得されますよこの天狗さん》
朝から絶好調な雛菊さんの食レポに疑問を持つ
因みに雛菊さんが高評価したコーンポタージュは『料理長』の作であるが元は買い置きしているインスタントだ、その筈なのだがアレンジを加えて別次元に美味くしているのは本気で意味がわからない。
「タタラは今日の予定どうなっているんだ?」
食事もそこそこに進んだ中で、
「俺は工房に潜ってゴーレムの作成ですね」
「あのちょこちょこした子達よね、増やすの?」
「ええ、あと300程増やそうかと」
俺の言葉を聞いてドン引きした表情になる
それを見て更にドン引きされたような気がしないでも無いが、もう
「それだけ作って何をするつもりだお前は……」
「一区画を一日で復旧するならコレくらいは要るかなって思いまして」
「それでゴーレム100体単位で増やすって、これもタタラってるって言うのかしら?」
「そうだタタラ、悪いんだがお前の鳥型ゴーレムに手紙を届けさせて欲しい」
「俺のサイファーにですか?」
「宛先は都市の長宛だ、悪いが庭先の転移門で皇都に直帰する」
「それは分かりましたが、急ですね?」
「そりゃ、急用が出来てるからな」
もしやそれ、俺の依頼に対しての事だろうか?
いや、よくよく考えると今日を含めてあと2日しか都市祭の準備期間が無いのに視察に来る皇族に対して腕利きの護衛を頼んだのだから1日で許可を取った上に準備を終えると言っているのだから相当な無茶を強いてるなコレ。
「分かりました……って、あれ?」
早速サイファーに手紙の運搬を頼もうと思ったら、何時もの止まり木に居なかった。もしや、昨夜スキエンティア邸に手紙を届けたきり帰って来て無いのだろうか?
「どうした?」
「いえ、昨日物を届けに行ったきりサイファーが帰ってないみたいで」
疑問を投げ掛けて来る当主代行に答えつつ、サイファーへ向けて意思を向ける。『念話』は取得してないが、自作のゴーレム相手なら何となく繋がっている感覚がするのでそれを活用してサイファーへと戻るように命令を出す。
3分程してサイファーは結界を突破して帰って来た。減速しつつ俺の胸元に飛び込んで来るサイファーの姿に、大型の鳥類をベースにしたのに大型犬を幻視してしまった。
「悪いんだけど、都市長に向けて手紙を届けて欲しいんだ」
首筋を撫でてやりながらそう伝えると、何処か気落ちしたような雰囲気が伝わってくる。つくづく思うが、お前等ゴーレムだよな?
気を取り直した様子のサイファーは一鳴きして、手紙を探してキョロキョロと首を動かす。そう言えば、運ぶ手紙をまだ渡されてないな。
「うむ、悪いな鳥型ゴーレム……サイファーでよかったか?」
そんなサイファーへ向けて謝罪しながら
「コレをこの都市の長へと運んで欲しい、出来るな?」
殆ど是非の確認じゃなくて断定で聞いてんだけど、王命みたいなもんだから拒否権無いよなコレ。
「コレでよし、後は転移門か」
「あ、コイツは特別製なんで少し……転移先の座標を貰えますか?」
転移門へ向かう
「元々虎熊家との連絡用としか想定してないので、一般的な転移門と違って入力に特殊なロックを掛けてるんですよ」
「いや、何を目的としてそんな物を?」
「押し入り強盗やこの家を占拠された時のことを考えて、ですかね」
この機能を付けたのは転移門が完成した後だ。ダリアが外部からの干渉で転移門を突破して来た事から、この転移門が占拠され勝手に登録外の所へ繋げられて外敵を招き入れられる事を懸念した結果付けるに至ったのだ。流石に機巧乙女相手では意味を成さないだろうが、俺に並ぶクラフターでも無いとこのロックを解除するのは難しいだろう。
術式への干渉、毎秒ランダムで変わる一万四千桁の数式を読み解いて正しいパスコードを入力する事で座標の入力を可能にする。しかし、俺のステータスが上がっているせいか計算速度が上がって入力に余裕が出て来たな。後で数式を16進数で作り直すか、世の中には俺よりも計算が速い人間だって居るだろうし。
「ロックを解除しました、座標の入力をお願いします。あ、1回きりで即座に消去されるのでご安心を」
「いや、何でそんなに安全意識が高ぇんだよお前……」
「そりゃ『
「……他者の胃痛には鈍感みたいだけどな」
そんな事を考えてる俺を他所に、
「いや、何を」
「クラフターでも無い俺が転移門に座標入力とか出来る訳無いだろ。それと、その座標は常設しとけ。いざとなった時の緊急避難先に使う事を許す」
「何とんでもない事を言ってんだアンタ!?」
前半の入力が出来ないには納得するが、後半のは欠片ほども納得行かない。確かに安全度で言うなら一番だろうけど、それはそれとしていきなり行っていい場所じゃねぇだろそこ。
「あら、いいじゃないタタラちゃん!」
「良くねぇよ、何をどうしたら一般市民が皇族の居場所に転移してよくなるんだよ!?」
「そりゃ、いずれは俺の娘か孫をだな」
「その話まだ続いてたのか!?」
「……タタラ、どういう事?」
真っ先に疑問を呈してきたのはエテルだ。いや、真っ先にというか代表してかこの場合。
「簡単に言うと、俺に貴族位を与えて国に縛られてくれって頼みだな」
「お前の事情から考えると悪く無いと思うぞ。つか、陽出國の大貴族である虎熊家の姫が輿入れするなら一代貴族とはいえある程度の格は無いと駄目だろ」
否定出来ない事象を
「それに、貴族なら血を残す為に妾を取っても合法だからな。お前のパーティメンバーは全員お前の嫁みたいなもんだろ?」
「おのれ否定出来ない事を……」
エテルは短くとも一生を共にする事を誓ってるし、四葩もタチアも一華だって俺がいいと言ってくれた。それなら貴族の特権として妾を持つ事に正当性を持たせれば後ろ指を指される事も無くなるからその方がいいだろう。
とは言え、貴族と言うなら俺も領地を持たされるだろう。運営を考えると自信も経験も無い、そう言ったゲームも遊んだ事は有るが現実でやれと言われたら絶対に拒否するぞ。
「ほれ、お前も大人しく貴族になって……気軽に皇都へ遊びに来るんだよ!!」
「目的はアーレムバトルだなさては!?」
「当たり前だろ、何だったら信綱殿も連れてきて皆で遊ぶからな!」
「本気出しすぎだろ!?」
因みに、皆で遊ぶ云々のところで当主代行がめっちゃ乗り気な顔をしててお義母さんを苦笑いさせていた。当主継承の儀、まさか息子を指定して自分は楽隠居決めようとかしてないだろうな?
そんな俺達を見ていた中、疑問の声を上げたのは四葩だった。
「なぁ、タタラ。その御仁が相当な権力を持っているのは何となく分かるのじゃが……お主、寿命の話をキチンとしておらんのか?」
「……なに?」
その四葩の言葉に、それまで楽しげにしていた表情を瞬時に鋭い物に変えた
俺は溜息を吐きつつ、『バイト長』を手招きで近くに呼ぶ。戸惑う彼女の頭に手を置いて撫でつつ
「話を持ってきたのはこの二人の姉、一番最初にカラン様が出会った彼女です」
「……なぁ、なんでお前その二人の頭撫でながら真面目に話をしようとしてるんだ?」
「説明では俺の作った物があまりにも異質かつこの世界にデカい影響を与えるみたいでして」
「そうか、ところで何時まで頭を撫でてるんだ?」
「なんでもそうして生み出した代物の影響で魂が肉体の許容量を越えたらしく、このままだと40前後で死ぬんだそうです」
俺の説明に対して納得しつつも二人の頭を撫でている事に注意が向いているらしい
「死ぬって、それは確かなの?」
「伝えて来てるのが
「まぁ、開発云々も現時点で新しい技術を生み出すと世界そのものから弾かれる可能性が残っていますけど」
「お前、厄ネタ抱え過ぎじゃねぇか?」
世界追放についても口に出せば
「つか、世界から弾かれるとか言ってるがあのアクティブディフェンスマントは新技術じゃないのか?」
「いえ、アレは強化ミスリルの人工筋肉とその制御機構をベースにした技術なので既存技術の応用の範囲内ですね」
「判定が緩くないか……?」
俺の言葉に疑問を持つ
「タタラちゃん、寿命問題の解決法は無いの?」
「一応、存在昇華を一度する事で上限を10年延ばせてますよ。レベル100まで解放すれば魂を受け入れる器は完成するので、そこまで行けば問題は無いですね。とは言え、この世界での人族なんて平均50歳で寿命迎えてますし今でも平均の範囲で収まりますからね」
「その発想は即座に捨てろ、特に俺達長命種が居る前ではな」
「それで、長命種に囲まれておきながらお前はそれ以上の存在昇華をしないのか?」
「え、それは」
「するつもりが無いんだろう?」
何故、見透かされている?
「お前の事はここ2日で大凡は理解したつもりだったが、まさかこんな爆弾を抱えてるタイプとはな」
溜息を吐く
「タタラちゃん、パートナーになったって事はエテルちゃんと寿命を共有しているでしょう?」
「それは……はい」
エテルから以前言われたな、エテルの寿命を半分ずつ共有していると。
「本来、私達夢魔は1000年は生きられるのよ。それをタタラちゃんと共有している、つまり本来なら500年は一緒に居られた筈なの。それをタタラちゃんのわがままで捨てちゃうのはヒドくないかしら?」
それは俺も確かに思っていた事だ。エテルを道連れに、俺の短命を押し付けるのは違うと思っていた。しかし、もうそこは越えてしまっているのだ俺達は。
「……私は、タタラとならいいって思いました」
エテルが
「確かにタタラとは100年も一緒に居られません。第一子が成人するのは見届けられますけど第二、第三と次の子供の成人までは見届けられないかも知れません。それでも、タタラと一緒に死ぬ事は出来ます。子供たちには不誠実かも知れません、それでも……私がタタラと共に死ねる事は確実ですから」
「……辛く、ないの?」
「それはその時にならないと分からないですから」
「……そう」
エテルの言葉を聞いた
多分、本当はエテルの中でも俺と死ぬ事は受け入れ切れてないのだろう。それでも俺の我儘に付き合うつもりなのはあの時の後悔からだろうか?
「……タタラ、お前に俺が何かを言っても通じないのは何となく分かる」
エテルと
「例え俺が皇帝の時代で、勅令をもってお前に存在昇華を言ってもお前は聞かなかっただろう。何なら、世界からそんな宣託を受けたとしても今のお前は聞きゃしない」
「……そこまで言いますか?」
「お前、何だかんだ頑固で自分が決めた事なら殉じるだろ。寿命を延ばさない決心が何を切っ掛けかにしたかは聞く気なんざ無いが、仮にそれを変えられる奴が居るなら一人だけだろうな」
そう言って
「お前を変えられるのは愛だけだ、俺を変えたのが一人の愛で有るのと同じようにな」
その何処か預言めいた言葉が、俺の心の深い所に突き刺さったような気がした。
そんな一騒動を挟んだ後、庭先の転移門を使って
「あの……」
「今日のエテルちゃんはどんな予定なの?」
「えっと……探索してレベルを上げようかなって」
「それなら私も着いて行くわ!」
「あの、ダンジョンに入る為には身分証明書と許可証が……」
「それなら大丈夫よ、ほら!」
押され続けるエテルが口を開くも、元気いっぱいにインベントリから明らかにヤベェ輝きをしている身分証明書と急拵えにしか見えない許可証を取り出す
「あっと……その人、連れてってくれ。何なら70階層のフロアボスも単騎撃破出来るくらいには強いから頼りになるぞ」
「……この婦人、それ程迄に強いのかのう?」
「下手しなくても当主代行並みには強いぞ」
一応、単純な剣技だけでも
性魔術だけでは無く闇属性魔法を使いこなす上に、連接剣が主武装なので戦闘方法がかなりトリッキーだ。何なら性魔術を応用した幻惑戦法みたいな事までしてたからな過去作、これはエテルに夢魔特有の戦闘方法を教授してもらういい機会か?
それに、闇属性魔法が使えるなら50階層のクソボス相手でも十分以上に戦力になってくれる。エテルの70階層攻略に協力して貰うべきか?
とは言え、兵士の恰好でも顔を出した状態でもダンジョンに向かわせるのは色々と拙い。
「セラス様」
「あら、何かしらタタラちゃん?」
「今の恰好のままなのは流石に拙いんで、代わりの防具を作りましょう」
俺の言葉に目を瞬かせてから頷く
魔法剣士である
そして、本来彼女が使う武器は連接剣で更には大剣に分類される珍しい代物だ。今でこそ一般兵に偽装する為に基本的な片手剣を持っているが、連接剣もしくは大剣を持たせないと本領発揮には程遠い。
「カランに防具作ったでしょ、私にも作っちゃっていいの?」
「使えても精々がこの都市内で通用する程度の性能ですよ、貴女が本来使っている筈の物には届きません」
「タタラ、この御仁の装備はどうするんじゃ?」
「胸甲と腕甲、あとは脚甲の三点だな。王玉使って属性吸収にする」
「……この御仁、何かとんでもない役職だったりするのかのう?」
「まぁ、重要人物では有るぞ」
俺が用意する装備、しかも属性吸収なんていう本来なら人の手で作れるような代物では無い物を用意する事から四葩が少し察している様子だ。まぁ、さっき帰ったのが前皇帝で目の前の人がその妃なんて言ったら阿鼻叫喚になりそうだから黙ってるけど。
「あの、タタラ殿……」
「どうしたタチア?」
「先程の男性と此方の女性……聞き間違いでなければ前の皇帝とその妃では」
「気付かない方がいいぞ、胃が破壊される」
「それはもう肯定なんですよ」
質問の答えに対してタチアが引いた表情になる、朝食の前に皇帝から剣の稽古付けられてた事に思い至ったら気絶するんじゃないか?
「それじゃ、セラス様の装備を作りましょうか」
「よろしくね!」
工房にて二人きりになるのが正直嫌では有るが、流石に他の人の目に触れさせるのも憚れる。
工房に入り、早速採寸を行う事になるのだが……俺はエテル以外の夢魔を甘く見ていたらしい。
うん、俺の命運は此処までかな?
オマケ
夜も遅くなる時間、地方都市『ワールウィンド』の貴族区にある一つの屋敷のベランダにて一人の少女が星空を見上げていた。
都市の頃は10代後半、女性として成熟を迎え始めた悩ましいボディラインを薄い衣で包んだ少女の名はカルミア・スキエンティアと言った。
入浴を終え、火照った身体を冷まさせる目的で自室のベランダに出ていた彼女はふと遠くに羽撃きの音を聞く。
「あれ?」
その音が凄まじい勢いで近付いて来るのを感じ取り疑問を持つ中、その音の正体は目前に現れる。
銀色で、月明かりを反射する銀の猛禽類。そんな物が近付けば普通は身構えるのだが、カルミアは何となくレベルでしか無いが警戒心を抱けなかった。
やがてその銀の猛禽類はカルミアの前に辿り着き、一度大きく羽撃いてからベランダの縁に止まる。モチーフは鷲だろう、その美しくも巨大な身体にカルミアは魅入られる。そして、その嘴に咥えられている場違い感すら醸し出す安っぽい布の包みに小首を傾げた。
「……キミはタタラくんのゴーレム?」
カルミアの問い掛けに一声鳴いて答える白銀の鳥型ゴーレム、嘴は包みを咥えたままなのにどうやって発音しているのか疑問を持つカルミアだったが、それはそれとしてタタラ・ジュロンからの預かり物を受け取る。
「ありがとうね?」
その首筋を軽く撫でてやれば、鳥型ゴーレムは心地良さそうに身を寄せてくる。その大きい上に白銀の美しさで構成された姿は霊鳥にも見えると言うのに、懐っこいその姿に微笑ましさが湧いてくる。
思わず胸元に頭を抱き寄せるが、鳥型ゴーレムは嫌がる素振りを見せない。それが創造主と同じ巨乳好き故にカルミアの豊かな胸を堪能しているのか、はたまたスキンシップを好む性質から優しく撫でてくるその手を好み受け入れているのか。正確なところはわからない、何よりも追求したとて誰も幸せにはならないだろう。
暫く手を受け入れていた鳥型ゴーレム──サイファーは思い出したかのように身を離してその口元の包みを差し出す。
改めてその行動にサイファーの目的を思い出したカルミアはその包みを受け取り、その軽さに疑問を持つ。
「あれ、コレってナイフだよね?」
布越しに手へ伝わる感触から判断するが、ナイフとは思えない軽さにサイファーへの問い掛ける。サイファーは当然人語を話す事など出来ず、鳴き声を上げるだけで肯定か否定かは分からなかった。
何となくカルミアはそれを肯定と受け取り、包みを解く。中から出て来たのは3本の短刀、陽出國風の造りで白鞘に納められた物だった。
「木で出来た鞘と柄、それも殆ど手を入れてない物なんて珍しいね」
そうサイファーに語りかけながら、一本を手に取る。残りの2本を近くに置いて、鞘からその刃を引き抜く。
月下に晒されるのは静謐な雰囲気を持つ白刃、磨かれた刀身は夜空を写し月明かりを反射する。
「……綺麗」
呆然と呟くカルミア、想い人であるタタラの技術は作成依頼を出した剣で知っていたつもりであったが、目前の短刀はその比ではない。彼が存分にその技術を振るうと言う事の意味を、カルミアは初めて理解出来た気がした。
「これがタタラくんが次期工匠長になる理由、なんだね」
カルミアが勘違いしているのはタタラがこの作刀技術に至ったのが次期工匠長を打診された後だと言うことだが、この技術を現工匠長でもある都市長が真似できないのは確かな事だ。
確かに受け取ったのを見たサイファーがその翼を広げ飛び立とうとした瞬間、カルミアは咄嗟にその脚を掴んでいた。
「あっ」
自信の行動が信じられない様子で声を漏らすカルミアの姿に、サイファーは翼を止めてその姿をジッと見詰める。そんなサイファーの視線に暫し戸惑う様子を見せた後、カルミアは口を開く。
「……あの、今この邸には私独りなの。寂しいから、もう少し側に居て欲しいんだ」
それは、研究で家を空けがちな両親にカルミアが幼い頃から持っていた小さな不安であった。
自覚は無いがカルミアは剣と魔法に対して凄まじい才能を秘めているのだが、生来の気質からそれを十分に発揮する事が出来ていない。街に現れる程度の不審者や押し入り強盗程度なら問題無く秒殺出来る実力は有れど、それを発揮する事がほぼ出来ないのだ。
そんな彼女が幼い頃より独りで広い邸に残されて居れば、自然と寂しがりやな性格に育ち不安を紛らわせる為に勉学へ逃避する。
そんな彼女の幼い頃に抱いた寂しさや不安を一発で晴らした何処かの人誑しは、諸事情によりその記憶と人格の一部を無くしている始末。最近少しだけその人誑しと最接近し始めているが圧倒的に時間が足りてない、彼女の気質を今のマイナス状態からプラスにする為にはもう少し時間を掛けるか肉体関係を持つかの二択だ。
そんなカルミアの気質を知ってか知らずか、サイファーが主に『念話』で確認を取ろうとするも当のタタラは偉い人二人との酒盛りで早々にダウンした為に応答しない。応答が無い事にサイファーは戸惑うも、目前の少女を放っておけないと主から引き継ぐ気質にて了承する。
「いいの?」
確認に対して鳴き声を上げる事で答えつつ、カルミアの肩に爪を立てないように止まったサイファーはその頬へと身を擦り付ける。
「ありがとう」
そんなサイファーへ礼を返しつつ、カルミアもサイファーの身を撫でる。
結局、夜が明ける迄スキエンティア夫婦は帰ることが無くカルミアはサイファーに見守られながら眠りについていた。
なお、サイファーの影響か想い人との新婚生活の夢を見た事は余談である。
生存するか否か
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生き残る(元は生き残る予定)
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生き残らない