※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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誤字報告をしてくれる方々、本当にありがとう御座います。
書き溜め無し、衝動的に書いている小説なので誤字脱字で苦労をおかけしてしまって申し訳ない。
コレでチュートリアルは後1話、明日には出せるかな?


事務パート

 転移結晶の発動により、ダンジョンの入口まで戻って来た。

 

 俺と少女はよくこの方法で地上に戻って来るので、管理委員会の職員達は慣れた物だった。虎熊の存在を見るまでは。

 見慣れない鬼族の美しい女性に、警戒心を出した職員達に俺は事の経緯を話す。最初は信じられなかったのだろうが、都市の外交関係に話が通った瞬間蜂の巣を突付いたような騒ぎに発展した。

 

 外交関係者曰く、虎熊の住んでいる国に連絡を取ったら案の定名家の令嬢が行方不明だったらしい。

 もっとも、虎熊の家は連綿と続く方向音痴の家系で、国の方も把握していたらしい。島国の外へ行っているのは予想外だったらしいが。

 

「随分と騒がしくなったのう……」

「まぁ、他国のお姫様が来たらな」

「妾は虎熊家の娘では有るが姫では無いぞ?」

「此方では未婚の貴族令嬢は揃って姫って呼ぶんだよ」

「成る程そう言う……」

 

 そんな会話をしつつ、職員が用意した紅茶を3人揃って啜る。

 外交関係者が俺達3人を呼びに来た、何でも虎熊家の当主が娘とその恩人に話をしたいらしい。

 簡単に礼を言われる程度だろう、名家の伝が有るならダンジョン内で手に入った『鬼神の腕輪(厄ネタ)』の情報も得られるかも知れない。鬼の家系だし、情報が無くても悪いようにはならないよな?

 そうして映像投影型の通信魔導具による通話室へ通された。

 魔導具の姿を映す鏡面には、外見的特徴が虎熊に似た壮年の男性鬼が映っていた。

 

『お初にお目にかかる。儂は虎熊家の現当主代行をしている者だ、此度は娘が世話になったようだ。感謝する』

 

 開幕、いきなり頭を下げられた。外交関係者が慌てて居るが、虎熊家と言うか向こうの国の文化なのだろう。元日本人としては逆に馴染み深い。

 

「いえ、此方こそ御息女と出会えて無ければ危ない場面もあり助けられました。礼儀の無い若輩の探索者なれば無礼も有ると思いますが、平にご容赦願います」

 

 此方も頭を下げて助けられた感謝をしつつ、高い教養が無いので無礼を働くかも知れないからと許しを貰おうとする。

 さて、腹芸は苦手だがどう受け取って貰える?

 

『……ふむ。相分かった、此方も異国の礼をする故にそちらへ無礼を働くやも知れぬ。互いの間には無礼講としよう』

「有り難く」

 

 よし、向こうからも『互いの国で礼儀が違うから大丈夫』と言質取れた。コレで多少ボロが出ても大丈夫の筈。後は丁寧な対応を心掛けよう。

 

『まだ歳若い様だが、随分と受け答えが確りして居るな』

「いえ、恐らくそちらの国では既に成人している年齢ですので。コレくらいは出来なければ笑われましょう」

『ほう、元服済みとな。しかし、それでも自覚を強く持ち得ている。そちらの国は安泰だな』

「身に余る御言葉、有り難う御座います」

 

 お世辞を織り交ぜての牽制だろうか、高評価されているかも初対面だから分かりづらい。虎熊、何とか口を挟んでくれ。

 

『ところで、その隣の女性は?』

「んに!? え、あの! わ、私は!」

「焦り過ぎじゃぞ、落ち着け」

 

 少女の取り乱し様に苦笑いで声を掛ける虎熊、こう言う場が初めてだろうから許してやって欲しい。

 

「父上、この方は妾を共に助けて頂いた伴侶です」

「んにぃ!?」

『ほう、夫婦揃って荒事に挑むとは余程信頼して居る様子』

「いえ、夫婦では無いです」

『なに?』

「あの距離感で夫婦じゃないは無理じゃろ」

 

 俺の言葉に眉を顰める当主代行と、ツッコミを入れてくる虎熊。

 

『……娘はこう言っている様だが?』

「確かに行き場を失っていた彼女を拾い、生きる場所も与えました。人生を背負った事の責任は負います。が、夫婦では無いです」

『え、その覚悟持ってるのに夫婦じゃないの!?』

 

 おい、鍍金剥がれてるぞ当主代行。

 

『そこ迄の覚悟持ってたらもう夫婦だろう』

「父上、この二人恋人以上夫婦未満です。隣に居ると砂糖吐きそうになります」

「トラッちゃん、なに言ってんの!?」

『トラッちゃん!? 距離近くないか!? 遂に友達が出来たのか!?』

「お前ら落ち着けツッコミが居ないんだから!」

 

 全員が好き勝手喋ったら収集付かないだろうが、俺はツッコミ役じゃねぇんだよ。

 

『ふぅ……失礼、取り乱した』

「友達出来て取り乱すなら恋人出来たらどうするんですか……」

『こ、恋人!? 何処の馬の骨だぶっ殺してやるから情報出せ!!』 

「父上!? ま、まだその様な相手は妾に居ませぬ!」

「しまった俺が引き金になっちまった」

 

 当主代行が俺の言葉で再び取り乱した。少し話して分かり過ぎるくらいに分かったが、完全に親バカだこの人。何やら側近みたいな人達が映像に映り込んで来て、当主代行を取り押さえる。複数人で取り掛かってるのに振り払いそうな辺り、相当ヤバいなこの人。

 と、そんな当主代行の背後から静々と近付く影が一つ。着ている物から女性の様だが、顔が映っていないから分からない。そして当主代行の背後に立った直後。

 

 ゴガン!

 

 と、まるで金属同士が衝突したかのような音の後に畳に当主代行の頭が突き刺さる。さっきまで止めようとしてた人達がビビって逃げて行ったぞオイ。

 

『貴方、落ち着いて下さい』

 

 涼やかな、落ち着いた声が届いた。しかし、それはあくまでも表面上でしか無い。明らかに裏側で怒りの炎が燃えている声だった。

 

『娘が人を好いたのなら応援して差し上げなさい。手を伸ばすのなら、失敗した後でも十分です。子供が成長する時、親ならそう在って下さい』

『し、しかしだな……』

『……まだ頭に血が登っているなら、抜けるまでいきましょうか?』

『いえ。大丈夫です』

 

 当主代行の威厳が消えた。カカァ天下ってやつだろうか、何時の時代だって男は女性に勝てないのだろう。

 そんな事を思っていると、女性は膝を折って映像に映り込んでくる。

 豊かな黒髪を高い位置で纏めて、瞳は異形を示す金、肌は黄色人種系の白雪を思わせ、額には紅い一本角。

 

『お初にお目にかかります、此の度娘を助けて頂き有り難う御座います。私は虎熊家、当主代行の妻を務める者です。以後お見知り置きを』

「はい、此方こそお初にお目にかかります」

 

 美しく一礼した虎熊母に、此方も礼を返す。相手が頭を上げた気配を察して此方も上げる。虎熊母の目は俺を値踏みするかの様な観察を含んでいる空気だ。

 チラっと娘の方へ視線を向けて、何か得心が行った様に一つ頷く。

 

『それでは、娘を助けて頂いた御礼に関してですが』

「はい、そちらは御息女ともお話をさせて頂きました。そちらの文化の武具、実物か製法を見せて頂けたらと」

『……それは、礼になるのでしょうか?』

「我が身はそちらで言う鍛冶師です、異文化の製法などそれこそ至上の情報なれば」

「母上、妾も約束した故に刀を一本と織物と着物を贈れればと思います」

『……左様ですか。では、そちらのお友達は何か有りますか?』

「ひぇ!? あの、その……一緒に探索出来て沢山おしゃべり出来たのでそれで満足です」

『……成る程、分かりました。刀と着物、その製法を纏めた写本……後は我が国の酒を一本お付け致しましょう』

「過分な心遣い有り難う御座います」

『いえ……ふふ、娘も貴方を気に入っているご様子。伴侶が居なければ婿に、とでも思いましたのに』

「いえ、伴侶は居ませんが」

『……おや、その隣の方がそうなのでは?』

「違います。彼女の人生の責任は取りますが、夫婦ではありません」

『……その覚悟で夫婦じゃないは無いでしょう?』

 

 この家族は皆同じこと言うの何なんだろう?

 

「もしこの者が振られたなら慰めると言う約束は取り付けました!」

「それここで言うか?」

「なにそれ聞いてない……」

「あの時気絶してたからな、お前」

『あらあら……』

『娘を助けて頂いたのは感謝している。が! 儂は認めんぞ!!』

「いや、認めちゃダメでしょうが血を重んじろ名家」

 

 またもや混沌に入りそうになっている。そう言えば、当主代行とその伴侶が居るなら見せたら情報を貰えるだろうか?

 

「あの、そう言えば聞きたい事が有るのですが」

『あら、娘を娶る条件ですか?』

「んな訳ねぇでやがりますよ。ダンジョンで少し厄介そうな物を見付けたのですが、そちらの文化圏に関わりそうなので見て頂きたいのです」

「あ! トラッちゃんと会う直前に宝箱から出たやつ!!」

「む? その話は知らんぞ?」

「そりゃ、拾った直後にトンデモネェ圧の持ち主が出て来て意識から飛んでたんだよ。拾った直後で厄ネタ臭くて脱出するか迷ったくらいだった中にお前が来たしな」

 

 そんな会話をしながら、インベントリから『鬼神の腕輪(厄ネタ)』を取り出す。

 会話の合間に湯呑みで茶を呑んでいた当主代行と虎熊が同時に吹き出した。

 

『そ、そそそそそソレは!?』

「何で継承の証がこんな異国に有るんじゃ!?」

「おぉう……厄ネタだと思ってたら想像以上だった」

 

 二人の取り乱し方が凄い。そりゃまぁ当主“代行”と言うだけあって当主では無かったみたいだし、理由は過去作と同じく証が無かったからか。あのヒロインは好きな相手の為にコレの探索を止めたし、その後の顛末も無かったからな。

 

 ゲーム『深く深い闇の先で』には欠片程も情報出なかったしな!

 

「あー……そちらのお家で重要な物なら返還したいのですが」

『も、もももも勿論だ! な、何か謝礼を……何が欲しいかね!?』

「凄い食い気味……」

「平民には分からない貴族の彼是が有るんだろう、面子ってヤツかも知れない」

『流石にそれなりの礼を出さなければ家名に関わり得る物ですから、どうしましょうか?』

『そ、そうだ! 名刀や名工の甲冑等はどうだ!! その鎧も中々の様だが、我が国でも最上級の者の手で打った物だ!!』

「いえ、コレ自分で作った物なので。一級の名工の作より、自分の渾身の作品と共に死ぬほうが」

『あら、その歳でそれ程の物を? そちらの方のもそうでしょうか?』

「あ、はい。俺達二人の装備は全て俺が作りました」

『あらあら……将来有望ねぇ』

 

 作品を見て認められるのは純粋に嬉しい、ゲーム知識を応用したが自分のオリジナルなので余計に。

 

『失礼ですが、お友達は何を使うのでしょう? 見たところ、力はそれ程高く無い様子……呪術使いかしら?』

「あ、いえ……コレです」

 

 そう言って『ロニセラ』を見える位置に置く少女。虎熊母は目を少し開いた後、じっくりと造りを見ている様子だ。

 

『驚きました、使用者は限られますがとても強力な鉄砲ですのね』

「……分かるのですか?」

『コレでも目は肥えてますので』

 

 初めて『ロニセラ』の構造を看破された、これ程の人が居るのか……世界は広いな。

 

「ちょっと、何でそんな嬉しそうなの?」

「だって『ロニセラ』の設計理念を初見で見極める程の人だぞ、嬉しくない訳無いだろ」

『あらあら……』

 

 俺が興奮気味に少女へ答えると、それを聞いていた虎熊母は頬に手を当てて困った様な声を出した。それは『ロニセラ』を理解出来ない『ワールウィンド』のレベルの低さからか、娘の恩人の子供っぽさをみたからかは分からない。

 

『それで、そろそろ落ち着いて下さい貴方』

『し、しかしだな! 100年以上行方の分からなかった継承の証だぞ!?』

「あー……何か有るか?」

「うーん……特には無いな、トラッちゃんも帰っちゃうし」

 

 虎熊が帰る事を淋しく思っているらしい。コイツは出自とステータスが影響して人間不信気味で、友達が殆ど居なかったな。

 その時ふと閃いた、金銭が発生せず双方に大きなマイナスの無い報酬を。

 

「それなら……御息女を此方へ留学、または大使として送ると言うのは如何でしょう?」

『ふむ?』

『あら?』

「え?」

 

 俺の言葉に虎熊家の面々が疑問を浮かべる。

 さて、出来るかは分からないが少女の友達が残れる様に交渉の真似事といこう。

 

「失礼ながら、今の御息女は転移事故とは言え不法入国を果たしている身になります」

「ぐふっ」

『ふむ、確かにな』

「古い文献に『運命の迷い子』と言う記述を見たことが有ります、その一族は虎熊家の事ではと思いますが如何でしょう?」

『……恥ずかしながら、我らの家はそう自称している時代が有った』

「自称なのかよ……失礼しました。兎に角筋金入りの方向音痴で、悪意なく次元の壁を越えて現れる神出鬼没の迷子とは言え迷家の御令嬢。このままでは立場的に拙いのでは?」

「のう、今こやつ名家の発音変じゃなかったかの?」

「しっ! 今真面目な話ししてるから!」

『外交問題、と言いたいのか』

「はい」

 

 俺の言葉に当主代行は考え込む。遠い異国で交流が薄いとは言え、敵対国では無いのだ。コレを切っ掛けに転移門の作成と、交易を始めて貰えれば『ワールウィンド』にも益が出て虎熊の立場が向上する筈。そうすれば怪我の功名として酌量の余地が認められるかも知れない。

 

「俺は文官ではありませんので、専門的な事は分かりません。しかし、御息女を始まりとしてこの国とそちらの国を繋げる事が出来たならきっと楽しいと思うんです」

「お主……」

 

 虎熊の声が聞こえた。何を思っているかは分からない、俺に誰かの心の機微なんて分かりっこない。

 前世から交渉なんて苦手で、今も無理だ。なら、大人を動かし得る若者の熱、青臭いそれをぶつけるだけだ。

 

『……仮にそうしたとして、君に何の益が有る?』

「友に会えます」

 

 当主代行の言葉に自然と返していた。少しの時間だけだが共に冒険をして、語り合った得難い友達、そんな彼女ともう会えないのは寂し過ぎる。

 

『仮に、あくまで仮にだ。転移門を建てるとして何処に建てるのだ?』

「そちらは都市長や役人と話して頂けると……」

『交易用では無い。あくまでも虎熊家専用の転移門を建てられる土地は有るのかね』

「我が家の庭先で宜しければ」

『その様に軽く決めて良いのかね、両親に許可を取らずに』

「失礼ながら、俺にもう両親は居ません」

『それは……』

「何年か前にダンジョンの深い層で強大な特殊個体が発生しました。それの討伐団に参加し、亡くなりました」

 

 両親の死を語る時、胸の奥で何時も痛みが走る。

 口に出す度に心の弱いところが悲鳴を上げる。

 少女と虎熊から視線を送られる、心配されているのだろうか?

 

『……監督する大人の居ない家、若い男が居る場所へ娘を送ると思っているのか?』

「失礼ながら、御息女は強過ぎて俺ではどうにも出来ません」

『ちょっと嫁の貰い手で困ってる部分なんだから指摘しないで』

「どう言う心配事してるんですか」

『えっと……薬使ったり』

「人間種に効く薬って鬼族に殆ど効果無いんですが?」

 

 傷薬も効きにくく、『祝福の癒薬』の様な魔法薬でも無いと通らない。しかも、一般クラフターでは鬼族に効く様な強力な効果の薬を作れば劇物所持でその時点でアウトだ。

 

『酒を大量に飲ませたり』

「……人間が生きてる量で酔うんですかね?」

『無理だな、娘の許容量は湖一杯分とか言われてる』

「人間はまずその量の酒の匂いでぶっ倒れます」

 

 揮発したアルコールで急性アルコール中毒待ったなしだ。

 

『そうだ! 性魔術を使用したなら娘の意思を無視出来るぞ!!』

「そう言えば『オーガ』相手に『魅了』通ってたな?」

『それ見ろ! 君も性魔術を取得しているのでは無いか?』

「取ってますね……」

 

 虎熊も持っている事に驚いたようだ、確かに俺は使わず少女が使用してる場面しか見てなかったな。

 

『その性魔術でどれだけの女性を手籠めにして来た!』

「自分の女性経験は隣のコイツだけです」

『ふ、娼館通いくらいはしただろう?』

「いえ、コイツ以外に消耗してたらミイラにされますので無理です」

『……失礼ですが、そちらの方は夢魔の血を引いてらっしゃいますか?』

「……はい、お母さんがそうでした」

『よく君耐えられるな』

「その為の『性魔術』ですので……」

『切実過ぎる』

 

 少女の出自が分かった瞬間、当主代行から同情と言うか納得の視線が飛んできた。

 

「……失礼ですが、昔夢魔に襲われましたか?」

『妻に助けられなければ干物になっていただろうな』

「心中お察しします」

 

 ヤバい、謎の共感持っちゃった。

 

『……コホン。君の誠実さは分かった、だが最後に聞きたい。娘を君の庭先で送迎するとして、君が望む物は何だ?』

「それは、通行料と言う事で宜しいですか?」

『そう取って貰って構わない』

「……でしたら、食事を共にする権利を」

『……何?』

「食事を共にする権利、です」

『馬鹿な、それが何の益に繋がる』

 

 俺の言葉に混乱気味の当主代行。

 確かにこんな事を益だと言うのは怪しいだろうな。

 だが、俺に取っては──

 

「俺は元々両親と俺の3人家族でした」

『ふむ』

「ですが二人が亡くなって、独りになりコイツを拾いました」

『……それで』

「独りの食事は味気なくて、コイツが居てくれて俺は寂しさを紛らわせて居ます」

『……それで』

「ですが、コイツと二人きりの家はとても広いんですよ。コイツが出掛けて居る時、独りを自覚すると泣きそうになる。隣に居てくれる時も、孤独で潰れそうになる瞬間が有る」

『……それで』

「もう一人は必要なんだ、心を委ねられる相手が欲しいんだ! だから、だから……お願いします。俺と友達を一緒に居させて下さい!!」

 

 感情が氾濫して自分が何を言いたいのか分からない。支離滅裂とはこのことだろう、俺も何を伝えたかったのかが分からない。

 俺は心のままを相手にぶつけて、頭を下げる。

 

 そんな時、スッと隣で気配が動いた。

 

「父上、妾は此処に居たいです」

『……そうか』

「妾は末姫、所詮なれても政略結婚の道具でしょう。上には優秀な兄姉も居ます」

『いや、戦闘力に関しては随一だからな?』

『貴方、少し黙って』

『はい』

 

 虎熊が意思を示す中、当主代行が凄い事を零した気がする。

 戦闘力が随一な名家の存在って、それだけで抑止力になるやつでは……?

 

「妾はこの力で友も出来ず、家に護られて来ました。しかし、今日初めて対等に向き合ってくれる友と出会えました」

『……』

「所詮は泡沫の夢と、胸に抱いて帰ろう。そう思っていました」

 

 そっと、虎熊の手が俺の背に触れる。力強さに反して小さな柔らかな掌だった。

 

「ですが、その友が此処まで求めてくれるなら。虎熊の血を引く者としてその者に寄り添えぬなら、この血に誇りなど抱けませぬ」

 

 すっと、虎熊が息を吸った。

 

「お父さん。妾はこの人と生きていたい、お願いだから許して欲しいのじゃ」

 

 それは虎熊としてでは無い、娘としての、一人のヒトとしての言葉だった。

 

『……はぁ、娘を嫁に出す時ってこんな気持ちなのかのう?』

『あらあら、娘の成長を喜んで下さいな』

 

 何か、空気が一気に軽くなった気がする。

 

「あの……?」

『滞在先として君の家を認めよう』

「えっと……ありがとう、ございます……?」

 

 弛緩した空気に混乱する。認められた、のか?

 

『それでは、一度娘を我が家に帰す為に使いを送る』

「わ、分かりました。外交専門の人とお繋ぎします」

『うむ、頼む』

「あ、それと」

『何だね?』

「迎えには迷子にならない人をお願いします」

『「ぐふっ」』

『ええ、承りました』

 

 俺が追加した条件は奥さんの方が了承してくれた、迎えに来て揃って迷子とか洒落にならないからな?

 少しして、役人が入って来た。挨拶を最後に交わして、入れ違いに俺達は席を外す。

 

 職員の人達に色々と確認する、虎熊は何処で滞在するのか?

 異国の貴族令嬢みたいなモノなので、下手な施設には預けられない。結果、二〜三日都市長の屋敷に滞在するらしい。手続きが終わり書類が出来たら滞在先を俺の家に変更するとの事、更に転移門の資材も用意してくれるのだそうだ。

 至れり尽くせりと言うべきか、先行投資と見るべきか。

 

「では、またの」

 

 再会の約束を、虎熊はあっさりと口にする。

 

「あぁ、またな」

「うん、またねトラッちゃん」 

 

 それに応える俺達も、合わせてあっさりと再会を約束する。

 だが、それが何処か俺達らしくて揃って笑い出してしまった。

 離れる俺達に、虎熊は姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。

 

 今日は良い冒険をした1日だった。

 

 俺達は肩を並べて家路を歩く。今度の休みは、新しい住人の為に家具の設計図でも描こうか。




【鬼哭】
ゲーム『DAWN〜深く深い闇の先でRemake〜』にて追加されたイベント。
ダンジョン『常闇の洞』15〜19階層、または81〜84階層で起こるランダムイベント。
鍵付きの宝箱からランダムで手に入る『鬼神の腕輪』を取得すると発生する。
取得した階層にてダンジョンの魔力に当てられ暴走した女鬼が襲ってくる。
特定の条件を熟し撃破すると、性魔術による隷属が出来る様になる。
過去作に出て来たヒロインの血族で、何故遠い異国の地のダンジョンに居たのかは不明。

主人公とヒロインの容姿ってしっかり書くべき?

  • 見せてみろよお前の癖。両方に要る。
  • 理想の男と女を妄想してるから要らネ。
  • どんな女がタイプだい?
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