既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
基本緩めの日常が続くと思います。
設計図を渡しても作れないと怒られる
エテルと未来を約束した翌日。
集めたミスリルインゴットを使い、新たな魔導銃を製作する。
物としては物理弾頭使用の対物狙撃銃型を予定している。
元々、エテルの物理攻撃ステータスが低く扱いきれないからと製作は見送っていた。しかし、装備できるステータスが視野に入ってきたので此の度製作する事と相成った。
ゲーム『深く深い闇の先で』に於いて対物狙撃型の魔導銃は存在していたが、使い所が難しいと言うか産廃に近い武器だった。
射程距離は驚異の150マス、此方に換算すると1500mと言うトンデモ射程。しかし、ゲーム中では一番広いマップで50マスがせいぜい。更に言えば遮蔽物が有ると射線が通らないというおまけ付き。
では何故この武器を今選ぶのか、と言う話に移ろう。
この産廃、純粋に火力が高い。消費魔力50〜100と少し大きいのだが、物理攻撃力が40〜90とコストパフォーマンスが良い。
そしてこの武器、漏れ無く物理防御を無視する『貫通』が備わっている。
前回エテル達と潜った22階層は『トロール』が巣食っていたが、その先の26階層からは『ゴーレム』種が蔓延る。
30階層のボスも『ゴーレム』種。初期のゴーレムなら問題は無いのだが、希少魔法金属である『ミスリル』や『オリハルコン』で出来たゴーレムは恐ろしい事に物理と魔法の何方も防御力が高い。
あの虎熊でもまともにダメージが通らない可能性が有る、それだけ『ゴーレム』は堅牢なのだ。
其処で有用になるのが『貫通』持ちの武器だ。
ある種の自給自足になるが、26階層以降の『ゴーレム』から得られる素材を使えば『ゴーレム特効』と『貫通』を持った武器が作れる。コレを活用出来れば26階層から30階層は対応出来るのだ。
しかし、この武器群の中に魔導銃は含まれていない。
その為、銃使いにこの時点で作れる武器候補は対物狙撃銃に絞られてしまう。
他にこの武器が活躍する場面など、それこそ原作ヒロインルートで超巨大な魔導兵器を迎撃する時くらいな物だ。その時は物語的にも盛り上がる、一枚絵まで付いた熱い演出だったが武器の性能は……まぁ。
さて、長々と語ったが此処からどんな物を作るかである。
俺の『クラフトⅣ』なら既存武器で上位の武器を作れる所まで来ている。正直、この時点でそれを作れはするのだが恐らくエテルの『銃適性Ⅱ』では装備制限が入る。高威力の武器は基本的に高い武器適性を求められる為、確りと鍛えてから使えと開発から言われているような物だ。
ではどうするか? ゲームシステムに縛られないオリジナルを作れば良い、が俺の結論である。
対物狙撃銃と言ったが、要は『貫通』付きの高威力・長射程で物理弾頭な狙撃が出来る銃なら良い。
そしてこの世界は魔法と言う便利な概念が有る。
現実に無いものが有るなら、現実で叶えられていないものを作る事も出来る。
そうして俺が作成するのが魔導加速砲、前世で言う架空の武器『
使用者の魔力を起点にし、銃身となる3本の突き出たレール間に合計8の加速術式の魔法陣を形成。一つを通る毎に速度を2倍にさせ、最終的に初速を256倍にして発射する。
発射時に発生する衝撃波や音を遮断する為の防御・遮音の術式を発動する盾を装備。
弾頭の発射に火薬を使わない、全てを魔力で発動させる構造である為に魔力の消費が従来の対物狙撃銃型に比べても跳ね上がる一種の欠陥兵器だ。
そんなこんなで、理論をノートに残しつつ設計を開始。
ミスリルによる魔力伝達率と頑丈さに頼る筈だったのだが、まさかの加速時に発生する空気摩擦の熱でミスリルが融解しかねないと言う事態が判明。
術式を減らして計算をしたところ、魔法陣を2枚減らせば耐えられる事が分かったので泣く泣く減らす。
消費魔力は3割程減ったが、弾速は四分の一になり威力が落ちてしまった。
いっその事、ミスリルも魔鉄や形状記憶合金のように強化する研究も始めようかと考える。が、如何せんエテルを21階層以降で連れ回さないといけないので却下。
危険と言うよりも、そんな色気の無いことを続けたくない。
俺だって好きな相手と連れたってデートくらいはしたいのだ。
それに、ミスリルは見た目も綺麗だから武器だけでなくアクセサリーを贈りたい。髪飾りとか、指輪とか。
思考が逸れた。魔法金属の研究は取りあえず都市長に相談するとしよう。
魔力の通る回路を構築し、各部位の強度計算を行い、発生する魔力の無駄を可能な限り潰す。
そうして出来上がったのが、試作魔導加速砲『エリンジウム』である。
出来たは良いが、庭で試射とか出来そうに無い。
こう言う時、頼るべき相手は決まっている。
「……で、いきなり呼び出した理由がコレな訳ね」
口元を盛大にヒクつかせた都市長が、工房に来て言った台詞がコレである。
「まだ試射とかしてなくて、取り敢えず何処かで出来ないかなって」
「都市内で出来る訳が無いわね」
俺の書いたノートを高速で読み耽る都市長、読み進める毎に目が据わっていく気がする。
「取り敢えず聞きたいんだけど、何を想定したらこんなとんでもない砲を作る事になるのよ」
「『ゴーレム』ですかね」
「こんなので相手する敵なんて機動要塞くらいよ」
俺のノートを自身のインベントリにしまう都市長。そうか、コレも何か問題有りなヤツですか。
「第一、コレの性能は把握してるの?」
「物理攻撃とかのステータスはまだ出来て無いですね。最低一射は済ませないと鑑定出来ないみたいで」
「呆れた、自分で未知の物を作っておいてそれなんてね」
「未知だからこそ情報が無いんだと思いますよ」
計算上の破壊力なんかは予想出来る、しかしこの世界でどう言う判定になるのかが分からない。
「取り敢えず、北西にある古戦場跡で試射ね」
頭痛を抑えながら、それでも新たな技術に興味を抱くのはクラフターとしての姿なんだろう。
「で、いきなり起こされて試し撃ちするって言われた私の気持ちを考えてもいいんじゃない?」
「正直悪いと思ってる」
俺の部屋で眠っていたエテルを起こし、『エリンジウム』の完成
起き抜けに甘く声を呼ばれ濃厚なキスを交わしたのだが、都市長に見られて無ければ我慢出来ずにおっ始めていただろう。
ただ、何となく都市長は俺とエテルの関係が変化している事に気付いて居そうな気がする。
「それで、この凄く大きいのは何なの?」
「ダンジョンで先の階層対策。『ロニセラ』で火力不足に陥った際の切り札でも有る」
「そっか、私の為なんだ……ふふ」
小さく嬉しそうな笑い声が聞こえた。
俺が何かを自発的に作る時はお前の為なんだって、ちょっとは気付いて欲しい物だ。
「取り敢えず、イチャついて無いで試射をお願い出来る?」
「んに!? す、すみません都市長さま!」
「……いいわよ、そんな焦らなくて」
エテルの反応を見て力が抜けたらしい都市長が、思わずと言った風に苦笑いが浮かんでいる。
そんな都市長を前におずおずと『エリンジウム』の側に座るエテルに、俺は使い方を説明していく。
「……このまま横になると服汚れちゃうね」
「あっと、シート今出すよ」
エテルの言葉に少し焦りながら、ブルーシートを敷く。
狙撃銃らしく伏射の姿勢になるエテルは、少し嫌そうな顔をする。
「どうした、何か違和感有るか?」
「……うつ伏せだとおっぱい潰れて苦しい」
その言葉に思わず其処を見る。服で分かりにくいがその下にはあの軟肉が押し潰されていると思うと中々に絶景なのではなかろうか?
「今度専用の何かを考える」
「お願い……それと、色々してあげるけど夜まで待ってね」
小さく囁かれた言葉は中々に破壊力が高かった。
「第一射、始めるよ」
「了解、魔力充填開始」
「魔力充填、よし!」
エテルから『エリンジウム』へ魔力が送られて行くのが分かる。
銃把から機関部、そしてレールへと魔力が伝わり加速用術式の魔法陣が六枚形成される。
「魔法陣展開確認」
「魔法陣展開、よし!」
「防御、遮音障壁展開確認」
「防御、遮音障壁展開、よし!」
「目標、1000m先の静止目標」
「目標確認、よし!」
そっとエテルの横で膝立ちになり、都市長もエテルの背後に立つように促す。
確りと後ろに回り、障壁の範囲内に入ったのを確認して続ける。
「最終安全確認」
「最終安全確認、よし!」
都市長に視線を向けると頷かれる。
「発射」
「発射!」
エテルが銃爪を引いた瞬間、障壁越しとは言え凄まじい衝撃と爆音が襲って来た。
撃ったエテルはと言えば、余りの反動に伏射の状態でも地面を削りながら動いていた。
「……も、目標確認」
「も、目標確認……被弾は確認出来ず」
双眼鏡を使って目標を確認するが、的は健在だった。
ただ、的から何メートルか離れた位置の地面が砲撃でもされたかのように抉れていた。
「ごめん、外しちゃった」
「試射だし問題無い、スコープの調整だってまだだしな」
そう言って『エリンジウム』に鑑定を掛ける。
魔導銃『プロトエリンジウム』
物理攻撃力/200
消費魔力/250
射程/2500m
速力/ -30
移動力/-5
特殊/『貫通Ⅲ』、『必要物理攻撃力20』
さすがにちょっと引いた。エテルの魔力量ですら一発で息切れを起こすが『オーガ』や『トロール』の上位種相手でも当たり所如何で即死させられる火力である。
速力のマイナスが命中にも作用したのが外れた原因だろう、次は精密射撃で試して貰うのが良さそうだ。
そして、撃った反動を抑えられなかったのは必要攻撃力にステータスが届いていなかったからだろう。
「なんか、『ロニセラ』よりずっと疲れた」
「そりゃ『ロニセラ』の50倍の魔力消費量だからな」
膝を付いて『エリンジウム』の点検を開始する。
銃身のレール部分は過熱が過ぎて現状触れない、冷却用の何かを考えるべきだろう。
薬室内は問題無し、エテルの魔力を効率良く炸薬代わりに出来たらしい。
銃把は衝撃を大部分殺してエテルを怪我させない働きをしてくれたらしい、罅も歪みも無いし素材の選定は成功したらしい。
大部分が冷えた銃身のレールを確認する、やはり熱の影響か歪みが発生していてこのままだと正確な射撃の精度が出ない。『クラフトⅣ』で簡易整備を行い、初期の精度に戻す。完成を目指すにはミスリル以外にもオリハルコンとアダマンタイトが必要になりそうな気がする。魔法金属3種の合金、出来れば研究したい。
「第二射、いけるか?」
「うん、大丈夫。タタラの女は結構タフなんだよ」
ちょっと赤く成りながらエテルはそんな事を言ってくる、昨日の告白から好意を口に出すのを躊躇わなくなった。
やっぱり、今度一緒にデートとか行きたいな。
「それじゃ、準備頼む。次は精密射撃を使ってくれ」
「分かった」
再び伏射姿勢に入る。都市長も直ぐ後ろに回り、スムーズに第二射を放った。
「目標、消滅」
「掠っただけだろうが根こそぎ持っていくか、ヤバいな」
「これ、対人使用は禁じないと駄目ね」
一射目と違い目標にしていた的が消し飛んでいる。直撃はしなかったかも知れないが、掠っただけでも必殺に近い攻撃力だ。
都市長の言う通り、コレは対人使用は法で禁じて貰わないと拙いな。
「それで、コレの設計図は提出で良いわね」
「確認じゃなくて断定じゃないですか、まぁ都市長なら色々手を回してくれそうですしお願いします」
俺の返答に一つ頷いて、都市長は踵を返して立ち去る。
その最中、此方を振り返り微笑みながら言ってきた。
「それと、正式に付き合い始めたみたいね。おめでとう」
何かと世話を焼いてくれた人からの祝福は、想像よりずっと嬉しい気持ちが湧いてきた。
「ありがとうございます」
「それで、結婚式は挙げるのかしら?」
「籍は入れますし、エテルが望むなら挙げようかと」
「ちょっ、タタラ!?」
「その時は呼んで頂戴、参加するわ」
そう言い残して都市長は今度こそ立ち去った。
「なんで気軽に結婚式とか言うかな、タタラのバカ」
「バカでいいよ、好きな女の事でそうなれるなら幸せだろうが」
「……もう、本当にバカだなぁ」
腕に抱き着いて来たエテルはそう嬉しそうに言う。
「この辺デートスポットみたいな飯屋って有るかな」
「どうしたの急に」
「ついでになって悪いけどさ、お前ともっとそう言う事がしたいからこのまま飯だけでもって思ってな」
「雰囲気無いなぁ……ま、そんなタタラを好きになっちゃった私も私か」
クスクスと笑うエテルの顔を見て、自然と俺も笑っている。
「タタラ好みのガッツリ系はちょっと遠かったかな」
「なら散歩デートも追加か」
「本当そういうところがバカだよタタラ」
そんな風に笑い合いながら、穏やかな1日を過ごしていく。
なお、俺の設計図を使っても同じ物が作れ無いとクレームが入った。
解せぬ。
基本、タタラのハチャメチャクラフトとエテルとイチャイチャで感想にリア充爆発しろと言わせられるかのチャレンジと思って下さい。
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