既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
何となくやってみたかった展開。
朝、ご飯の準備等をエテルに任せて店舗スペースのレイアウトを弄っていた。
素材が揃った為に出来たもう一本の『ゴブリンキラー』を元から有った物と交差させ、X字状にする。
更にカウンターのショーケースに新しい商品を追加する。
他店での扱いが0と言う事実から迷っていたが、カラムスさんから以前『お前の店特有の武器の一つでも並べておけ』と言われて決心が付いた。
ショーケースに有るのは飾り気の無い黒く光を青く反射する両刃の長剣の刀身が一本、素材に魔鉄を使用した『魔鉄の刃』である。
商会に相談したら値段は刃だけで70000はすると言われた、鞘と柄を併せて75000を想定している。
鉄と魔石さえ用意して貰えれば作成を請負う旨を告知する為、店の窓に『魔鉄装備承ります』のポスターを貼っておく。
魔鉄の武具精製は技術料を最低30000で請負うように言われている。
商会からはもっと吹っ掛けられると言われたが、他のクラフターに奮起して欲しいが為に最低値で設定してる。
なお、彫金やらのオプションは別途料金を請求する事は脅されたので承諾している。
ミスリル装備は店頭には並べられない。探索者として潜って取ってきた素材ではあるが、都市長から『俺が』販売する事を禁止する旨を商会に厳命したと聞いた。
商会としても、魔鉄を都市内で唯一安定供給出来るクラフターがミスリルまで販売したら動かなければならない案件だと納得したらしい。ただ、製作依頼は受けてもいいと都市長と商会が揃って許可を出してくれている。
なお、都市長から新規特許申請が必要な技術で装備は作るなとカラムスさんの『フィエルテ』を指差されながら警告された。
「ご飯出来たよ、一緒に食べよ」
一通り商品を並べ終え、ケースやカウンターの机を拭き終わったタイミングでエテルが呼びに来た。この辺ベストタイミングなのは阿吽の呼吸と言うか……体内時計とかがピッタリに感じて嬉しく感じてしまう、俺は変態なのかも知れない。
「分かった、手を洗ってくるから待っててくれ」
そう返し、出入り口に向かいエテルとすれ違うタイミングで頬にキスをする。
エテルは驚いた表情をして、次に唇が触れた頬に手を当てながら蕩ける様な笑顔を浮かべた。
「まったく、タタラはバカだなぁ」
と、緩みきった顔で言われた。きっと俺達はバカップルと呼ばれる人種だろう、からかわれたら胸を張って『ならバカになれるくらい好きな相手を見つけてみろよ』と返す自信がある。
エテルが朝食を作ると、必ずと言って良い程にスクランブルエッグとオニオンスープのセットが出てくる。コレはバーラル夫人のレシピノートを回収して彼女へ渡した後からずっとだ。
初めはあまり上手では無かったのだが、少しずつ上手くなっていき今ではこのセットだけはプロ顔負けの味になっている。
何時も同じなのでは無く、スクランブルエッグなら中にチーズが入ったり輪切りのウインナーが入ったりとアレンジされるし。オニオンスープもじゃがいもやベーコンが入る事がある。
エテルが前に『ジュロンスペシャルレシピ』と呼んでるのを聞いたので、嫁入り用のアレンジなのかも知れない。
その時、俺が聞いていた事に気付いて真っ赤になり怒ってきたエテルを押し倒してしまった。何度もバカと連呼されたが後悔は無い、恋人が可愛すぎて理性が持たない俺が悪いのは分かってる。
「今日はお店のお手伝いでいいんだよね?」
「ああ、昨日手伝ってくれるって言ってたしな」
「私、タタラが許してくれなかったからお店手伝えなかったんだけど?」
「老若男女問わず誰かが近付く度に硬直する奴に接客させられるか」
「うっ……ごめん」
そう、俺は最近までエテルに店の手伝いを許可して無かった。
というのも、エテルは過去の経験から対人恐怖症の気が有った。しかし、最近は俺が側に居る限り耐えられるようになって来たので社会復帰とは違うが人と接する仕事をさせる事にした。
「謝る事じゃ無いだろ、そう言うのも含めて人生を背負うって決めてるんだ」
「そっか……ありがとタタラ」
エテルは俺に礼を言ってふわりと笑う。
俺がエテルの笑顔を好きだからと大盤振る舞いしてくれるのだが、他の男の前ではやめて欲しい。
そして、俺はエテルに我慢出来ずキスをしていた。
開店前なのだから触れるだけ、そんな考えは早々に捨てて深く舌を絡ませる深い物を交わしていた。
椅子に座ったままのエテルの肩を抑えながら、顔を上向かせる形での口吻はエテルにやや辛そうな表情をさせている。
普段ならそう言う表情を見たく無いのだが、事こういう場においてはそれすらも興奮材料になる。
「……オニオンスープの味がする」
インターバルを置こうと一旦キスを中断すれば、エテルがそんな事をこぼした。
「飯の直後だからな、最高のデザートが食べたくなっちまった」
「……タタラのヘンタイ」
「ヘンタイ相手ならそれは褒め言葉になるぞ?」
俺の言葉にむぅっと唇を尖らせるエテルの顔が可愛くて、その尖った唇に再び口吻をする。今度は軽く、触れる程度に。
「えっち、ばか、へんたい」
「そんな俺が嫌いか?」
「……きらいになれないからわたしもへんたい」
幼くなっている口調が愛らしく、また唇を合わせる。
着ていたシャツを捲り、その大きな胸を露わにする。探索する時には揺れて邪魔なのでブラをするらしいが、寝る時や普段はしないと前に言っていた。夢魔は胸の形が崩れないんだとか、男の欲望の塊みたいな特性をしている。
「たたら、おっぱいすきだよね」
エテルの胸を堪能している俺に対してそう言ってくる。
元からおっぱい星人の気は有ったが、エテルと過ごすうちに強くなった気がする。
ただ、問題が有るとするならエテル以外に興味が無い事くらいだろうか。
「好きだな、エテル限定で」
「そういうこといってるのがほんとばか」
何度もばかと繰り返しながら、エテルは胸に顔を埋める俺の頭を撫で続ける。コイツはコイツで俺の頭を撫でるの好きだったりするのだが、気付いてるんだろうか?
そして、そろそろ下半身の方が我慢出来なくなって来た。
今にもズボンとパンツを突き破りそうな程に勃起した愚息が、エテルの膣内を求めて悲鳴を上げている。
エテルと目を合わせると、察したのか徐ろに椅子から立ち上がり俺を座らせる。そのまま自分が穿いていたホットパンツとショーツを脱いだ。
内股を愛液が伝っているのが分かる。
前に本人から言われたのだが、エテルは俺が求めようとすると身体が自然と準備を始めるらしい。夢魔の特性の一つらしいのだが、パートナーが自身を求めていると察知すると何時でも出来る様になるらしい。なんて都合の良いエロゲボディ、大変有難いです。
此方も抜かねば無作法と、ズボンのファスナーを下げて少しポジションを変えてやればビンっと相棒が天を衝く。
エテルは俺に跨り、そのまま腰を落として受け入れた。
開店前から一戦を始めてしまった関係上、あまり長い時間が掛けられない。この場合、エテルが本能のまま動いた方が早く終わる。正直、夢魔の本能で腰を使われると快楽が強過ぎて下手すると気絶する。
それでもこうするのは、単純に時間が無い事と非暴走状態のエテルがこうすると恥ずかしがって可愛いからだ。
夢魔としてパートナーに求められた喜びと奉仕する悦び、それらに対して理性が抱く羞恥で浮かべるエテルの表情が堪らなく愛らしい。独り占めするからどんなのかは言わない、独占禁止法違反とか知らん。
互いに強く抱き合い、舌を絡ませる深い口吻を続ける。
エテルはその間も腰を振り、俺も自然と腰を合わせて打ち付ける。
直ぐに限界は訪れ、エテルをそれまで以上に強く抱きしめて深く彼女の膣内へ射精する。
首筋に何時もの様にマーキングしてくるエテル、そんな彼女の頭を出来るだけ優しく撫でる。
何方からとも無く目を合わせ、軽いキスをした後に思わず2人揃って笑う。
こんなバカップル丸出しな関係が、楽しくて仕方ない。
2人揃って風呂で汗を流した後、店の開店に向う。
この店には基本的に制服と言えるものは無く、有るのはひよこ色の厚めの生地の胸元に店名の『forgeron』と入ったエプロンくらいのものだ。
エテルはリブ生地の肩出しセーターとスカートと言う童貞を殺しに掛かってそうな服装の上にそのエプロンを着用している。
生地を押し上げる双子富士のせいで店名が横に延びてて可哀想な事になっているが、個人的には眼福なのでOKである。
店の扉の外に掛かる看板を裏返し、本日も『forgeron』が開店した。
最初に来たのは成金っぽい服装の冒険者だった、前に鋼の剣を物欲しそうに見ていた彼である。
「店主、回復薬を有るだけ欲しい!」
「かしこまりました、現在お出し出来るのは2798個になります」
「更に増えてる!? あ、すみません50個でお願いします」
「それでは150が50個で7500ですね。正直、普通の鋼の剣ならお求め出来ますがよろしいですか?」
「あ、大丈夫です。はい、失礼しました」
出て行く時に、じっと装飾剣を見てから出るのは変わらなかった。50個も傷薬買っていくくらいなら武器や防具を新調した方が身の為だと思うんだけどな。デリカシー無さそうなので言えないが。
「おっす邪魔するぜ……ってエテルじゃん、遂に店頭デビューしたのか!?」
「いらっしゃい。今日からタタラと一緒に慣れていこうってね、私も少しは成長しないと」
次に入店して来たのはバカである。エテルの存在に気付いて驚いているが、コイツは常連なので普段との違いを直ぐに分かる。
エテルが人前に立つのが苦手というのも知っている故に、驚きも大きいのだろう。
「今日は製作依頼か?」
「おう、整備も一緒に……って、マジで魔鉄扱ってやがる」
カウンターに近付いて来たバカが目敏くショーケース内の『魔鉄の刃』に気付いた、どうやらポスターは見てたらしいが半信半疑だったらしい。
「売値は商会から最低でも70000って言われてるから、今はやめといた方が良いぞ」
「くっそ高ぇな、やっぱり作るのって大変なのか?」
「いや? 俺は難しく感じないが」
「タタラは自分の規格外さに気付いた方が良いと思う」
「やっぱりコイツおかしいよな?」
「うん」
「お前等ひどくない?」
仲の良い2人に言われたら流石に傷付くんだが。
「取り敢えず、武器の方を預かろうか」
「あ、悪い」
俺の言葉にインベントリから鉄の剣を取り出して渡してくる。
鞘から抜いて刀身を見れば、丁寧に使っているのが分かった。
大きな歪みも無いし、モンスターの脂もあまり残っておらず刀身はまだ奇麗な物だ。
「丁寧に使ってくれてるな、何度かモンスターの骨を無理矢理切ってるみたいだが良い使い手に恵まれたのが分かる」
「お前のそう言うところ、本当にスゲェって思うぞ」
「タタラの得物でその人の事を見極める姿、良いでしょ?」
「いきなり惚気けんな新婚夫婦」
「まだ夫婦じゃないし! 結婚は……するけど」
何やらエテルが恥ずかしい目に遭わされてるが、まぁ俺が原因なので口出しは出来ない。正直新婚夫婦と言われて嬉しがってる俺が居る。
「で、どうする? 直ぐにやれば整備に10分、装備製作は1時間で終わるけど」
「バカな俺でもコレが異常ってのは分かる、普通そんな早くないだろ」
「それ、カラムスさんも言ってたな……」
「カラムスって……騎士カラムスか!? そんな大物にまで異常扱い受けるタタラって……」
「おう、言いたいこと有るなら言えや」
出来るんだから仕方ないだろ、ゲーム時代なら1ポチで出来てるんだから原作よりは遅いぞ。
「取り敢えず、今日は休みにしてるから急がなくていいや。製作は……片手剣いけるか?」
「うーん……ギリギリだけどいける。片手剣だな、承った」
「ところで」
一旦言葉を切ったバカが真剣な表情をする。聞きたい事は多分、魔鉄の武器の作成辺りか。
「魔鉄の装備一式、作るとしたらどれくらいになる?」
「素材持ち込みでも1個30000だ、お前なら剣と上半身……後は篭手と脚甲の4つだな」
「最低でも120000か、遠いなぁ」
「それにプラスして鉄のインゴットと魔石が多数だからな」
「マジで遠いじゃねぇか……22階層辺りでミスリル取って来た方が早いな」
肩を落としたバカの姿に、エテルがやや戸惑い気味だ。
少ししたら勝手に復活するから、気にしなくて良いぞ。
少しして復活したバカは、ついでに傷薬を10個買って出て行った。製作依頼3000と整備費500、傷薬が1500の合計5000の売上である。
来店二人で12500、好調じゃないかな?
次に訪れたのは、近接職っぽい女性探索者だ。露出多めの服を着ているが、全体的にエテルの方が魅力が上な気がする。
「表に有る魔鉄装備を受けると言うのは本当かしら?」
「ええ、本当ですよ」
来店して最初に聞くのが魔鉄装備について。さてさて、何方だ?
「物は有るのかしら?」
「ええ、見本としては此処に」
そう言ってカウンターのケースを指で示せば、視線を『魔鉄の刃』へ向け膝を折って物を見る。
「コレ、本当に魔鉄かしら?」
「ええ、本当に魔鉄ですよ」
「以前別の店で見た時はもっと違う色だったわ」
へぇ、別の店で魔鉄を見たと。
離れたところで商品の埃を払っていたエテルも訝しげに俺の前に居る女性探索者に視線を向けた、当然俺と一緒に居るからカラムスさんの愚痴を聞いた事が有るはずだ。
都市長が魔鉄を作れるクラフターが居ないと嘆いていた事を。
魔鉄は基本市場に出回る事がない。鉄の2倍の性質を持つ人造の魔法金属、しかし作れるのはこの『ワールウィンド』内でも現状僅か2名。魔鉄の精製自体はレシピを公開しているが、製作可能になったクラフターが居ない事が問題になっている。
そうでなければ俺と『forgeron』がミスリルを販売出来なくなっていない。
現状、他店で魔鉄を扱い始めたとなったら真っ先に噂になる。
それだけで超一流の腕、と証明されているも同然だからだ。
何より、都市長が噂を聞きつけその店に襲撃を仕掛けて物を確認したなら俺に報告しない筈が無い。特許に触れているのだ、当然技術の使用料が発生するのだから。
「失礼ですが、他店とは何方の店舗でしょうか?」
「あら、ライバル店の情報が欲しいのかしら?」
「ええ、魔鉄装備が販売出来る店など聞いた事がありませんので」
俺が今日から魔鉄装備を受付し始めた事はまだ噂にはなっていない、匂わせもしなかった事だ。
中央からやや離れた此処は即座に噂が拡散出来る位置にも無い、あの成金さんは儀礼剣に御執心なので魔鉄には気付いてなかった。バカは今日を休みに当てると言った。
偶然通り掛かって魔鉄装備の購入が目的、他店を出汁にして値下げを言ってくるくらいか?
技術料抜きで最低価格だから値下げ不可なんだがな、これ以下は商会が許さない。
「あら、噂に疎いのね?」
「そうですかね、これでも最新技術にはそこそこ耳が早いのですが」
「でもライバル店の情報が無いじゃないの」
「そもそもクラフターの中で魔鉄の精製に成功した事例が特許保持者と都市長しか居ませんからね」
「あら、なら答えは出てるじゃない?」
「そうですね」
お前が詐欺師って事が、な。
都市長はその立場上、作品の売買を許されていない。故に特許保持者である俺が魔鉄を作って売らない限り、市場に魔鉄が出回らないし都市長と商会から値段が無制限に上がるからと他のクラフターに魔鉄そのものを売る事が禁じられている。
「そのお店ではこの魔鉄より良質な物が半分の値段で売っていたわ」
思わず吹き出しそうになる。商会が定めた最低価格の半分ってお前、その店営業停止を食らうぞ。あと、都市長もキレる。新技術の安売りすんなってクラフターとして活動を停止させかねない。
「これより良質な魔鉄を半値で、ですか……」
「ええ、そうよ」
都市長ですら俺と同じ質に出来ない物を、俺より良質に作れると。本当に居たなら見たいなソイツ。
エテルがそっと連絡用の魔道具を使ったのが見えた、衛兵が突っ走って来る迄10分って所か?
「ふむ、この半値で売れるとは余程ですね」
少し付き合ってやるよ、阿婆擦れ。
「ええ、だから」
「ならそのお店で購入を、申し訳ありませんが当店ではこの値段以下ではお売り出来ませんので」
「安く……は?」
おいおい、何鳩が豆鉄砲食らった見たいな顔してんだよ。
「なんて言ったのかしら?」
「ですから、その安くて高品質な魔鉄を見付けた店で購入しろって言いました」
「……」
俺の言葉に絶句と言った雰囲気だ。俺の店で安く買った『魔鉄の刃』を他所で転がすつもりか何か知らんが、造り手の逆鱗に触れていてただで済むと思うなよ?
化粧が濃い顔をヒク付かせてんじゃねぇよ可愛くもない。
「……ふぅ、いいのかしら? 折角の売上を」
「そもそも貴女一人が買わなくても店は保てますので」
「私がこの店の噂を流せばどうなるか分かっているのかしら?」
「それは良いですね、魔鉄を扱う唯一の店として宣伝になる。なら今すぐ退店なさって噂を流して頂けますか?」
「こんな店、簡単に潰れるわよ!」
「へぇ、どうやってです?」
「客足が遠退くし、破落戸が来るでしょうね! そこのお嬢ちゃんが複数の男に囲まれて犯されるかもね!!」
その言葉が耳に届いた時、目の前のモノを殺すべきかと冷静に思考が走った。
もっとも、俺よりも余程キレてる人が来たので大丈夫だったが。
「ほう、我が神の名の下守護を約束した者達に無体を働こうと?」
連絡から僅か3分、事情を確認しようと都市長が使いを送ってきた。
都市最強と呼び名高い人をお使い感覚で送り出せるのが強過ぎるだろ、ヤベェな本当。
「何よアンタ!?」
「コイツ、マジかよ」
相手の鎧が正式な軍神教会の装備って気付けないとか、義務教育ちゃんと受けたか?
「何、と言われてもな。貴様に聞かなければならない事が有る一騎士だ」
「たかが騎士が何よ!」
「コイツ、マジかよ」
教会の所属って事を無視しても、騎士って最低位だが貴族だぞ?
自らが成した功績で成るから誇り持ってる奴が大半なんだが、あーあカラムスさんガチギレしちゃってる。
「ほう、不敬罪も追加だな」
「はぁ!? アンタ何を……」
「あの、もうやめた方が」
「うっさいわね!」
「んに!?」
エテルが見兼ねて止めようとしたら、八つ当たり気味に怒鳴られてビビってしまった。
コレ、殺そうかな。
「ジュロン、記録結晶を寄越せ」
「はい、どうぞ」
「はぁ? 何よそれ」
「貴様には聞かねばならん事が有る、抵抗は自由にしろ。出来るならばな」
カラムスさんから記録結晶を求められたので、カウンター裏から取り出して渡した。
事実確認の為に商会も動くかコレ?
ご愁傷さまだな。
「それでは、な」
「ちょっ放しなさ……放せ!」
抵抗を無視して出て行くカラムスさん、途中でエテルを見て口パクで何か伝えて行ったな。
「大丈夫かエテル?」
「え、うん。おっきな声出されてびっくりしただけだし」
取り敢えず精神的にも問題は無さそうで安心した。
カラムスさんの口パクに付いては触れないで置こう、重要なら後で言ってくれる筈。
次に入ってきたのは大男、はち切れんばかりの筋肉に軽装。頭は剃り上げていて、背中には大型の戦斧を背負っている。
「おっと、嬢ちゃん珍しいな。店に出てるなんてよ!」
「お久しぶりです」
「元気そうでよかったぜ、お前も久しぶりだな坊主!」
「久しぶりですねダルマさん」
おっちゃんのパーティーメンバーの一人、ダルマ・ギークさんだ。見た目は厳ついが気配りが上手い人で、軽装なのは肌が敏感で荒い目の布服が着れなかったり金属アレルギーでかぶれてしまうからなんだとか。
「今日はどうしたの?」
「ちょっと武器を、な」
そう言って背中の戦斧を渡してくる、刃や柄等の状態はかなりヤバい。
「これ、何をどうしたらこんなヒドイ状態になるの? ダルマさん達ほどの実力でコレって」
「ローガス達と潜ってる時に強化種と当たっちまってよ、攻撃捌く為に皮膚に当ててただけでコレよ」
ダルマさんの戦斧は鋼製だがドワーフの名工が打った物だ、ステータスにして+9辺りの相当に出来が良いものだった筈。
それでこうなるとは。
「質量武器でも有るからな、ミスリルとは相性悪いから拾えても斧にすんのはちげぇし」
「刃だけにコーティングすればいいじゃん、後は芯金に入れるとか」
「……そう言う加工の話出来るのこの店だけなんだよなぁ」
ダルマさんが俺の言葉を聞いて頭を抱える、なんでそんな反応をするのか。
「兎に角、コイツ直せねぇか?」
「俺がやったらバランス崩れて前と同じには無理、大人しくドワーフの所に行くか新品買ったほうがいいよ」
こういう事が有るので作品は買った店に持ち込むのが常だ、他店ではその人の癖が入るので元の性能から下手すれば下がる。
「はぁ、良い武器ねぇ……お?」
そんな悩めるダルマさんがカウンターの魔鉄武器に気付いた、値段を見て真剣な表情で考え込む。
「坊主、この魔鉄で出来た武器ってのは一律この値段か?」
「そうだよ、商会から言われてる最低値だからコレ以下に出来ないから値段交渉は受け付けないよ」
「ミスリルより遥かに安いってのに文句出るかよ」
さっき出てたんだよね、身の程知らずにも。
「コイツで戦斧を作れるか?」
「お安い御用。要望無いならそこに掛かってる戦斧と同じになるけど大丈夫そう?」
俺が壁に架かってる戦斧を指差すと、ダルマさんは近付いて手に取る。
何度か振ると元に戻し、戻って来る。
「もっと重く出来るか?」
「今迄のヤツと同じ重さにするには素材持ち込みの上での注文になっちゃうけど」
「物は鉄のインゴットと魔石でいいんだったか?」
「合ってるよ。元の重さ的にインゴットは……9は必要かな、魔石は小型のを9か中型を1個かのどっちか」
前世の斧とか重さ3kgも無いんだけど、なんで10kg近いんだコレ。
「ならローガスと相談してくる、受けてくれるか?」
「技術料は素材持込で30000だからそれさえ守ってくれるならね、全部魔鉄製でいいの?」
「ああ、柄は此方で手を加える」
ダルマさんは挨拶を残して出て行った、鋼以上ミスリル未満な辺り魔鉄はそこそこ需要が有るかも知れない。
そのまま時間が過ぎ、そろそろ閉店かと思った頃にけたたましい音と共に扉が開いた。
俺とエテルが驚いて入口に目を向けると、肩で息をした俺達と同じ年頃の女の子が立っていた。
髪は赤と金が混ざった色、服装はそこそこ仕立てが良く良質な布で作られているが縫った奴の腕が悪いのが目についた。
腰には細剣を佩いている。
大きく息を吸ってから、顔を上げた。瞳は蒼、晴れた空みたいな色だなとそう思った。
「失礼! 此処に都市最高のクラフターが居ると聞いてきたのだが!?」
「都市長の所へ行け」
バカでかい声で変な事を言い出した。
タタラの思考が大部バカになってますが、気にしないで下さい。
彼も初めて彼女が出来て浮かれてるんです。多分。
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