既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
「すまない、私はタチア。騎士見習いをしている」
「おう、いきなり自己紹介始めてるところ悪いが都市最高のクラフター探してるなら都市長の所へ行け」
「なんか話聞いてくれそうにないよタタラ」
堂々と胸を張り自己紹介をしてくる騎士見習いのタチアとやら、取り敢えず都市最高のクラフターなんて言われてるのは間違いなく都市長なのでそっちに行ってくれ。見習いとはいえ騎士なら顔見せくらい叶うだろう?
「今度、我が隊は式典に出る事になってな! その為に実戦に耐え、更には美麗な鎧が必要になったのだ!!」
「お前の話は聞いてねぇって、そして俺の言葉も聞いてねぇコイツ」
「ごめんタタラ、私この人ちょっと苦手」
エテルは話の通じない、話を聞かない相手が苦手である。その点はバカとか人と距離を測るのが上手いので苦手意識は無いのだが、似てるようでまったく別のこのタチアとやらは苦手判定を出したようだ。
正直、俺も苦手だけどなこの手の人間。カラムスさんと同じ騎士としての扱いは無理そうだ。
「そこで! この都市最高のクラフターと名高い貴殿に作品を依頼したい!!」
「拒否します」
「うむ! 快く受けてくれて嬉しいぞ!!」
「いや、拒否するっての」
マジで人の話を聞かねぇ、エテルが再び呼び出し用の魔道具を使おうとした。
その瞬間、扉が物凄い勢いで開き黒い影がタチアとやらの背中に迫る。
次の瞬間、コレまた重々しい音を立ててタチアとやらの頭に何かが衝突しそのまま床に顔面を打ち付けた。
黒い影の正体は黒い鎧と赤い髪をした偉丈夫、ローガスのおっちゃんだった。
「こんのバカ娘が! 何を他人様に迷惑掛けてやがる!!」
聞いた事が無いおっちゃんの怒声に、エテルが縮こまる。俺も度肝を抜かれた、あの広場消却事件ですら怒鳴ったりしなかったのに……おっちゃんも人間だったんだなって。
「坊、本当にすまん」
「いや、おっちゃんが謝らなくても……ていうかコイツ何?」
いきなり現れいきなり謝られると戸惑いしか無い、おっちゃんが今まで見たこと無いくらいに余裕を無くしてるのも気になる。
「あー……何と言うか」
珍しく歯切れが悪い、もしやおっちゃんの身内だろうか?
正直、父さん達の友人だった事以外でおっちゃんの事を俺は知らない。探索者をしている事と、ダルマさんを筆頭に複数人でパーティーを組んでダンジョンの深い階層まで挑んでいる事くらいだ。
ローガスって名前は知っているが、家名を知らない。
まぁ、面倒を見てもらってるし特に追求する事でも無いから気にした事は無かったが。
「痛つつ……おぉ! 親父殿、何故此処に!?」
「テメェが坊に迷惑掛けるのが分かったからだバカ娘!」
起き上がったタチアがおっちゃんを見て驚いた様子で聞いているが、おっちゃんは怒り心頭といった様子でタチアを睨んでいる。
俺に迷惑を掛けるのが分かった……?
「おっちゃん、聞きたい事が有るんだけどさ」
「どうした坊、俺はコイツに説教せにゃならんのだが」
「いや、このタチアって奴は俺の所に『都市最高のクラフター』を探して来たみたいな事を言ってたんだけど何でかなって」
俺の言葉におっちゃんが固まる。錆びた機械が動くようにギギギと不協和音が出そうな動きでタチアを見る。
「親父殿が言っていたではないですか! この『ワールウィンド』にて最高のクラフターになり得る若手は工匠タタラ・ジュロン殿だと!!」
「だからといって今がそうとは言ってねぇだろうがよ!」
「ぶべっ!?」
おっちゃん、渾身の右ストレート。タチアの横っ面に直撃しているが、コイツ大丈夫なのか? おっちゃん、最低でも物理攻撃力50越えだが。
「坊、心配するな。コイツの物理防御は40以上で体力は300を越えてる。此処までやっても1割にも届かん」
「嘘だろ……」
無装備状態の俺よりも物理防御が上なのかこの女。騎士見習いって事はまだ訓練生とかだしレベル低いだろうに……先天的な壁役か?
「お、親父殿……もう少し強くても大丈夫ですよ?」
「お前、本当になんでそんなになっちまったんだ……」
タチアの言葉でおっちゃんが本格的に頭抱えちゃったよ、コイツこういう所は凄いのかも知れない。
見習いたくは無いがな!
「ねぇタタラ、この二人って親子なのかな……」
「どうだろうな、顔のパーツはそんなに似てないし……」
匂い立つ程のダンディズムを発するおっちゃんに対して、タチアの顔は何方かと言うと愛らしいタイプだ。目は大きくクリっとしたアーモンド型、鼻はやや低めで口も大きく少し下唇が厚い。
反して輪郭はやや鋭利さを持っていて、口を閉じて真剣な表情をしたらかなり印象が変わるだろう。それでもおっちゃんの雰囲気とは似てないが。
「で、そろそろ何で俺が都市最高のクラフターなんてデマ言ったのか説明した貰っても?」
「タタラ、今はまだって言ってたからね? 将来的にはなるって期待だから落ち着いて」
話が進まないのでおっちゃんに事の詳細を確認しようと思う、エテルが先程の言葉から訂正を入れてくるがそも何故俺が都市最高のクラフターになるのかが分からない。
それは原作主人公の役割だろうが。
「はぁ……坊、説明するから家の方に上がらせて貰ってもいいか?」
「……仕方ない、か。エテル、二人をリビングに案内して上げてくれ。俺は閉店作業するから」
「うん、分かったよ。お茶とお菓子の用意もしとくね」
「助かる。じゃ二人共、エテルについて行ってくれ」
おっちゃんとタチアをエテルに任せて、俺はさっさと閉店作業を行う。
魔導式のレジは出納の確認が楽、作った人は天才だなと思いつつ手早く閉店する。
店の釣り銭なんかはオリハルコン製の金庫に入れる。壊そうとしても外部には俺謹製の防御関係の細工をしているし、持ち出そうにも空間に固定する術式を使用しているので魔神でもないと手出し不可な代物だったりする。
急いでリビングに行けば、カップを傾けてるおっちゃんとオロオロとしてるエテル……そして床に沈んだタチアが居た。
「……マジで何が有ったんだ?」
動かないタチアを見つつ席に着けば、エテルがカップにお茶を注いで出してくれる。一口飲めば柑橘系の爽やかな香りと酸味、そして僅かなお茶特有の甘味が口に広がる。疲労に効くお茶のチョイスにうちの嫁を誇らしく思う。
「ふぅ、で? 何でこの人型オリハルコンゴーレムは俺を都市最高のクラフターなんて言ってたんだおっちゃん?」
「人型オリハルコンゴーレム……」
「言い得て妙だな……コイツに期待の若手の話をした事が以前有った。贔屓目無しで次期工匠長になり得る人間は坊、お前しか居ないと俺は思った。だからコイツにはそう話した」
「次期工匠長って、俺がなれるとかありえないだろ」
「いや、お前以外に有り得ない。都市全体でお前以外に再現性の無いクラフトが出来るんだからな」
何故、おっちゃんや都市長は俺を買い被るのだろう?
俺は再現性の無い発明よりも遍く人々が受け継げる技術の方に価値が有ると思ってるんだがな、一代限りの技術なんて無意味で寂しいだけだろ?
「はぁ、取り敢えず次期工匠長云々は他所に置いとこう。次、これとおっちゃんの関係って何?」
「……娘、と言ったら納得するか?」
「誤魔化されて欲しいなら納得しとくよ」
俺の返しにおっちゃんが悩む様子を見せる。少しして息を一つ吐き、お茶を一口飲んで俺を真っ直ぐ見る。
「今から言う事は他言無用、誓えるか?」
「俺は大丈夫、エテルは?」
「秘密を守ればいいんだよね、大丈夫」
俺達2人の答えを聞いて、おっちゃんは覚悟を決めた表情をする。
「この娘の本当の名はオルサイア。とある貴族の庶子であり、落胤。継承権こそ無いが、流れる血が厄ネタそのものの娘だ」
「聞いた事を後悔したよ」
「落ち着けエテル、高々どっかの貴族の落胤ってだけだろ。何処かの王家でもあるまいに俺達に災厄が降りかかる事なんて……」
「……」
「……おっちゃん、貴族って言ったけど公爵家じゃないよな? 王族の血、流れてねぇよな?」
「……」
「否定してくれよ!?」
厄ネタも厄ネタじゃねぇかよ、この世界の王族には地上に居た時の神々が残した血だとか封印された魔神に連なる血を持ってたりとわりかし地獄のフラグ持ちだぞ。
「出自を知らない故にこの都市に送られてな。義務教育課程は兎も角、高等教育は中枢の騎士学校へ通っていたんだ」
「騎士号貰って一代貴族になってもよし、戦場で散ってもよしってか? 地獄以外に選択肢ねぇんか貴族ってのは……」
エテルの家を奪った奴等も貴族、もうこの世界で貴族にいい印象無いんだけど。
「で、その厄ネタなタチアが俺に鎧を頼んで来たってのは何故?」
「そういえばソレが発端だったよね」
頭が痛くなる中、俺達に不幸が訪れた切っ掛けを探る事にした。式典が近い内に有るようだが、『ワールウィンド』内で何か祭事が有るなんて話は聞いた事が無い。
「近い内に本国王都の方から視察団が来る」
「おっとぉ?」
「ねぇ、コレって機密情報……」
「その際、出迎えとして騎士学校の者達で歓迎のセレモニーをやるんだそうだ。見習い達は当然制式採用されている鎧など無く、各々で装備を揃える必要が出た」
「それなら『ワールウィンド』の一般的な騎士甲冑か全身鎧を発注すればいいのでは、都市内の装備は規格が統一されてるからどの店に入っても同じ性能だし……あれ?」
自分で言ってて思ったが、俺の所で注文するメリットが殆ど無い。俺の店ならでは、となると魔鉄等の最新技術をフル活用した装備になる。が、魔鉄はミスリルやオリハルコンには劣る。
実家の太い貴族ならミスリルやオリハルコンの装備を購入する、庶子とは言え王族の血を引いているタチアに対して資金提供をしないなんて事があるだろうか?
「……タチアの実家は、タチアの存在を認知してない」
「坊、どうした」
頭の中のピースを嵌めてパズルを完成させようと言葉に出す、確認作業でしか無いが何故”俺“の所へタチアが来たのかを推理する。
「タチアは騎士学校の学生、将来的な活躍を期待され兵士としてひいては指揮官としても望まれる為に在学中も一定の賃金を支払われる……」
「タタラ?」
騎士学校、と呼ぶとファンタジーで遠く感じるが前世で言う自衛隊の幹部候補生学校みたいな物だ。さらに特権階級としての意味を持たせる為に国が給与の支払いを行っている。
その学生に支払われる給与の範囲内で高品質な装備を求めるしかないとしたら、同年代で最高の技術を持つクラフターの所へ装備を依頼する?
クラフターもピンキリだ、名門の子息が勤めてるものもあれば流派を継承してるものもある。更には俺のように、何の歴史も無いポッと出の突然変異みたいな存在もある。
「タチアは学校内で後ろ盾が無い庶子、それは学生生活で大きなマイナスなのか?」
家を継げない貴族の第二子以後の子供が通った場合、家格での殴り合いが起こるのかも知れない。そうすると、高名なクラフターが作ったブランド物での
一般家庭として扱われる庶子の出、ブランド物は高くて買えないとなるなら……育て親のおっちゃんが話していた若手で将来有望なクラフターの作品を求めた?
「つまり、貴族が使うハイブランド品が買えないから俺の店で妥協した。そんな感じだな」
「坊、お前のその自己評価の低さは何なんだ」
自己評価の低さと言われてもな、貴族って見栄を優先するナマモノじゃないのか?
「痛たたた……おお! 工匠ジュロン、私の鎧を仕立てる気になってくれたか!」
煩いのが起きた、おっちゃんもタイミングの悪さで頭押さえちゃったよ。
そも、何故先程のコイツは俺の話を聞かなかったのか。人の話は聞けよマジで『オーク』並みに猪突猛進するんじゃねえ。
「仕立てるのは構わんが、何故俺なのかキチンと説明してくれたらな」
「そうかそうか引き受けてくれるか! ありがたい早速っ!」
「話を聞けやこの猪が!」
客として見なくていいかコイツ、エテルにカラムスさん呼んでもらおうかな……おっちゃん持ち帰ってくれない?
「……タチア、いい加減にしろ。そろそろ俺も堪忍袋の緒が切れるぞ」
瞬間、怒気とも殺気ともつかない強烈な圧がおっちゃんから放たれた。余程腹に据えかねてたらしい、まぁ今は亡き友人の子供にあんまり迷惑掛けられないだろうしな。
「しかし、親父殿!」
「黙れ、協力を仰ぎたいなら相手の話を聞け。自分の話など二の次三の次だ、お前は何時からそんな傲慢になった」
「……」
おっちゃん、スゲェ圧だな。都市内でも最高の探索者として挙げられる時に5番以内に入るって前にバカが言ってたが、まったく否定出来る要素が無い。
「……落ち着いて話を聞けるようになったか、タチア」
「……ああ、すまない。貴殿の意思を蔑ろにしていた」
ようやく話が出来る所まで落ち着いたか、事情を聞かないとな。
「おっちゃ……ローガスさんから聞いた、今度デカい催しが有るんだって事は分かった。その為に鎧が欲しいってのも」
「うむ、合っている」
「だが何故俺なんだ? 俺ははっきり言って学園を卒業前の半人前だ、そんな俺の作った鎧で何がしたい?」
「……半人前?」
「半人前だ、この都市内では学園を卒業しているかで判断される」
「そう、なのか……だが親父殿は貴殿が若手最高のクラフターだと言っていたぞ?」
「若手って言ってるだろ、高々学園を卒業する前に都市内で特許の最多保持者になっただけだ。大した事は無い」
「最多保持!? 卒業前で!?」
「最初に取得したのは初等部ってだけだ、大した事は無いだろ」
「おかしいだろ!? 親父殿、おかしいですよね!?」
「はっきり言って異常だな」
「タタラはもう少し自分の異常性に気付こう?」
「いきなり味方が居なくなったんだが」
おっちゃんとエテルに裏切られた、君等どっちの味方よ?
「俺が仕立てられるのは鉄、鋼、魔鉄の三種。コレも販売に限った話ではあるがな」
「販売に限る? 魔鉄というのも聞いた事が無いのだが」
「魔鉄は俺が初等部の時に出来た研究の失敗作、高々鉄の2倍の強度を持ってるだけの疑似魔法金属だ」
「親父殿、おかしくないですか?」
「坊の基準は基本おかしいぞ?」
「しまいにゃ泣くぞお前等」
タチアの反応が一々心を刺激しておっちゃんの追認で抉られるんだが、そんなにして楽しいですかね?
「んで、販売に限ってるのは俺が商会と都市長からミスリルとオリハルコンの製品を販売する事を禁じられてるから」
「何をやったらそうなるのだ?」
「魔鉄の限定販売してる店でミスリルやオリハルコンまで売ったら他の店から客が消えるって言われた」
「……貴殿、人間よな?」
「まごうこと無く
「……親父殿?」
「間違いなく坊は人間だ、色々疑わしいがな」
「ねぇ、泣いていい?」
半分イジメだと思うんですよね、俺のこの扱い。
エテルが心配そうに此方を見るので何とか泣くのは耐えた、あんまり格好悪い所は見せたくない。
「しかしそうか、ミスリルとオリハルコンは無いのか」
「素材持ち込みで制作依頼を受け付けるくらいしか許可されて無い、作り置きは無いな」
「作れはするのだな……」
「たかが金属の延長だろ、何が難しいんだそんなの」
「親父殿」
「分かったか、コレが次期工匠長だ」
「まだその話引っ張るの?」
金属に変わりないなら鉄や鋼と違いは殆ど無い、要は構成されてる元素がちょっと違うだけで金属の特性は共通なのだ。なら少しアプローチを変えればそれで終わる。
「坊、一つ質問良いか?」
「何、ローガスさん」
「魔法金属の強化とかやってたりするか?」
「はは、何を言ってるのさローガスさん」
「あぁ、そうか」
「材料が足りなくて成果出てないだけでやってるに決まってんじゃん」
「……そうかぁ」
当たり前の事を聞いてくるおっちゃんに当たり前に返す、やらない訳が無いだろそこら辺。
ミスリルはエテルの協力が有ればもう少し進められそうだが、今はのんびりと進めるつもりだから停滞中である。あと、純粋に魔石の出力が足りてないから大型の物か霊核クラスの物が必要になりそうだと何となく分かってきた。
コレを前に都市長へ茶飲み話でしたら盛大に吹き出してカラムスさんがびしょ濡れになってたな、目元を伝ってたのはお茶で涙では無かったと思う。
「……親父殿、私はもしかして選択を間違えたのか?」
「そうだな、間違えてるな。騎士鎧が出て来るかも怪しいレベルだ」
「ひぃっ」
タチアが何やら俺に頼ろうとした事で今更ながらビビったらしい、本当に今更だ。
「はぁ、制作依頼を受け付けるのは構わない」
「えっと、その……」
「ただ、前提として商会から『最初に鉄装備を依頼する』ってルールが出されてる」
「初めて聞いたのだが」
「騎士学校では教わらんだろうが『ワールウィンド』内の共通ルールだ、どの店でも必ず言われるぞ」
「親父殿、そうだったのですね」
コレばっかりは商会が定めたルールだから俺には覆せない、破った結果営業停止処分とか食らったら流石に泣く。
「ダンジョンに潜って鉄のインゴットを一つでも手に入れたのなら、先ずは武器を作ってやる。鎧はその後、おっち……ローガスさんと素材を集めるなりしてくれれば作るさ」
コレがギリギリの妥協点か、おっちゃんの拳に耐えられるなら浅い階層なら絶対に死なないだろうし。
「それとおっちゃん、確認なんだけどこの素材持ってる?」
「うん? どれどれ……」
俺はインベントリから1枚のメモを取り出しておっちゃんに渡す、あるアクセサリーを作る上で必要な素材だ。
「コレ、結構深い所の素材だな。余りは有るが……何をする気だ?」
「タチアが舐められないようにするドーピングアイテム」
「不穏だなオイ」
おっちゃんが流石に引いた表情をする。しかし、まだレベルが低いうちに始めた方が将来的には良い物だ。
おっちゃんは自身のインベントリからメモに有った素材を取り出して、メモごと俺に渡してくる。
量は問題無し、これなら作れる。
「それと、タチアは鎧に必要なコレを集めてくれ」
インベントリから1枚のメモを取り、サラサラと素材を書いて渡す。
タチアはそれを見た後、顔が引き攣った。
「鉄と鋼はいいのだが、何なのだこの魔石の量は」
「俺に頼むんだ、ただの鎧な訳が無いだろ?」
魔法金属化させる為に必要な量を書いて居るのでそこそこ数が必要だろう、全身甲冑なのだから元々鉄と鋼は大量に必要なのでそこに足しただけだ。
「ま、コレなら舐められないだろ。必要な採寸するのは取り敢えず後でいいし」
「む? 採寸が必要なのか?」
「専用に仕立てるんだから当たり前だろ」
「ならば早速やってしまおう!」
「は?」
後でいいと言ったのだが待て待て待て!?
徐ろに立ち上がったタチアはその場で騎士服を脱ぎ始めた。
「おいバカマジでやめろ本気で俺を社会的に殺す気かこの猪が!?」
「止まれこのバカ娘、騎士とか関係なく妄りに肌をさらすな!!」
いきなり脱ぎ始めた事に焦った俺とおっちゃんがタチアを止めようとするが、此方の言葉が聞こえてないのか完全に服を脱ぎ捨てた。
色気の無いブラに抑えられている固い服の上からでは分からなかった豊かな胸、流石にエテル程ではないが十分デカい。
騎士として鍛えている身体は引き締まり、肩や腕、腹筋周りは彫刻を思わせる程の美しさだ。
そして一際目を引いたのは──
「……翼?」
その背に一対の翼が有った事だ、服の下に隠れていたにしてはサイズがおかしい。髪と同色の、猛禽の翼。
「まさか、天使族とのハーフ……!?」
最悪を通り越して災厄である、王族の血と天使族の血の掛け算とか地獄待ったなしの組み合わせである。
おそらく、騎士服を着ている間は意図して羽根を隠して居たのだろう。魔力に還元して体内に格納していたのかも知れない。
それを脱いだ拍子に展開した……コレ、マジで墓場まで持っていく必要が有る秘密じゃねぇかよ。
「おま、お前な!? このバカ! バカ娘!!」
おっちゃんの語彙力が完全に崩壊してる、そりゃそうだろ……混血はまだ世の中で色々厳しい目で見られるのがこの世界の風潮だ。はっきり言って、過去作で国盗りをした魔王と恐れられる主人公の国でもないと息苦しい筈だ。
「はぁ、ソレが一番の事情か」
「うむ! コレも私だからな! 仕立てて貰うならば見せるしかないだろう!!」
「……タタラ、後で話が有るからね」
「はい」
回避不可の事象だが酌量の余地無しとエテルに判決された。
朝は幸せだったのに何でこうなる?
「……天使族の血、高い物理防御力……なぁタチア」
「ふむ、なんだろうか? スリーサイズなら上から」
「やめろバカが! 俺が聞きたいのは魔力量の事だ!!」
「なんだそうなのか。私の魔力量は結構大きいぞ、現時点で150を越えるからな!」
「レベルは知らんが本当に大きいな……なら、魔法攻撃力は?」
「聞いて驚け、1だ!」
「本気で驚いたぞ、宝の持ち腐れだな」
「魔法防御は60以上有るのだがな!」
「本気でスゲェなお前……」
物理で40以上、魔法で60以上って本気でゴーレムか何かかコイツ。しかし、魔力に余裕が有る低魔法攻撃力……エテルに似ているが此方はフィジカルエリートか。
「製作方面でちょっと方針転換だ、さっきのメモちょっと貸してくれ」
「うむ?」
疑問符を抱きながら俺にメモを返してくるタチアに、素早く書き直したメモを渡し返す。
内容を見て、タチアの表情が固まった。
「こ、工匠ジュロン? 先程の倍近い素材の量になっている上に少量とはいえミスリルが増えているのだが?」
タチアの言葉におっちゃんが慌ててメモを確認する。インゴットにして3つ、そんな大した量じゃない。問題は鉄が30kgと鋼が20kgだと思うが。
「坊、いったい何を作ろうとしてる? 魔鉄で作ると言うだけでは済まんぞコレは」
おっちゃんが俺に強い視線を向けてくる、面倒を見てる娘みたいな人物を心配しているのだろう。
「気乗りはしなかったけど、この際だ。俺の店の宣伝も兼ねさせてもらう」
貴族のアレコレに巻き込まれるのだ、なら俺自身も旨味を得ないとやってられない。
なら大々的にやってやるさ。
「ただの全身鎧じゃない、俺の研究開発した技術の集大成である『魔導鎧』を作ってやる。その翼、誰にも否定されないものにしてやるよ!」
尚、タタラの魔導鎧関係は新規設計の為に都市長への特許申請が必要だったりする。
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