既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
「私、タタラと2人で主にやってたから知らなかった……新人探索者との探索って大変なの初めて知った」
ボロボロと言うか汚れが目立っていた装備を預かり、エテルとタチアを風呂にぶち込んだ後に経緯を聞いて開口一番に出て来た言葉がコレである。
斥候としては前回で少しは慣れただろうエテルをしてコレ、タチアがダンジョンで何をやらかしてるのか聞くのが嫌になってきた。
「いや、すまない。初めてのダンジョンとレベルアップで興奮してな!」
「……おっちゃんから慎重さを学べなかったか」
カラカラと笑うタチアに対して思った言葉は何故か『義務教育の敗北』である、おっちゃんこの性質知ってたんだろうか。
「それとタタラ、驚きの新事実」
「このタイミングって事はタチア関連か……いや待て、初めてのダンジョンとレベルアップ?」
「そう、タチアは今日までレベル1だった」
「……嘘だろ」
レベル1の相手に防御関係のステータス負けてたのか俺。いや、普通にこのタチアが防御力おかしいだけか。
「物理攻撃も高め、初手から『ゴブリン』を一撃で爆散させてた」
「爆散」
タチアの武器を見る。何の変哲もない細剣では有る、何をどうしたら刺突で爆散なんて事になるのか。
「初の実戦で力んでしまってな、魔石の回収が中々に大変だった」
「むしろ爆散した身体が消滅すれば魔石だけは残るだろ」
「……タタラ、そんな生易しいものじゃなかった」
「エテル、どういう意味だ?」
「『ゴブリン』は魔石ごと爆散してた」
「嘘だろ」
身体の中央、心臓の隣に有るとされる魔石。それを貫いた?
「……爆散ってのはまさか、貫いた拍子に魔石の魔力が解放されたのか?」
魔石内部に収まっている魔力は、小型の物でも一般家庭魔具の1日に消費する魔力を賄える程度には多い。それが解放されたとなれば、『ゴブリン』の脆い身体など確かに爆発四散するだろう。
「タタラ、普通そんな爆発に巻き込まれたらタチアを心配しない?」
「え、コイツの防御力で何か心配する事有るか?」
「……無いね」
正直、罠宝箱の即死トラップくらいだけだろコイツを上の方で殺せるの。『ゴブリンロード』や『ゴブリンコマンダー』辺りの軍団とやっても恐らく無傷で乗り越えられるぞ?
「そう言えばタタラ殿、このアクセサリーはどの様な役割が? 正直、身に着けて居ても特に身体に変化は無かったようですが」
そう言って見せてくる『地母神の祝福』と『地母神の祈り』のセット。確かにコレを身に着けただけだと何の変化も無いし、分からないよな。
「ソレの意味を話してもいいが、おっち……ローガスさん含めて誰にも言わないって約束出来るか?」
「むっ、親父殿相手でもか?」
「そうだ。ローガスさんなら黙っててくれるだろうが、それでも伝えないに越した事は無い」
このある意味厄ネタなアクセサリーの存在は、都市内で無茶な探索を誘発させかねない。おっちゃんは素材が余ってると言っていたが、コレは50階層を越えて取れる様になるモンスター素材が必要になる。そして、50階層を越えた先に挑める探索者は少ない。
虎熊には家で留める事を条件に製法を伝えはしたが、恐らく一族内部で共有するだけで広める事は無いだろう。虎熊自身も厄ネタと認識していたし、仮にコレを国全土に広めようとも素材が絶対的に足りなくなる。持ってる人間も危機に晒されるだろう、俺とエテルが常に身に着けている事を少なくとも学園関係者は知っている。平穏な生活が脅かされる可能性は出来る限り無くしたい。
都市長にも言われたがおっちゃんにも立場が有る、報告を義務付けられた際に答えかねないなら伝える訳にはいかない。
「……親父殿含め、と言うなら無理だ」
「なら、それに付いては教えられない」
「ならばこの装備は着けられない、と言ったら?」
「外せばいい。それは所詮お前の未来に対する保険と言うだけ、俺からの単純な善意だ。受け取らないなら構わない」
エテルは俺とタチアのやり取りを見て沈黙を保っている。効果を知るからこそ着けるメリットが分かるし、俺が伝えない理由も虎熊とのやり取りを思い出して理解したのだろう。
「知らねば黙らねばならない理由が分からないだろう」
「知って思わず溢すデメリットが無いとでも? 必要が無いなら知るべきではないし、お前のコレまでの行いで俺から信用される要素がどれだけ有るのか考えて欲しい」
「……」
この後、関係が険悪になるだろうがコレはちょっと譲れない。
人の話を聞かず、止まらず突っ込んでいくコイツの気質を見せ付けられてから信じるには時間が足りなすぎる。
その背中の翼の厄ネタ具合が分かっていながら、おっちゃんの静止を振り切って俺達に見せてるのは立派な前科だと自覚して欲しい。
もし自覚ありでやってこの状況を作っていたのなら立派な策士だ、油断ならない貴族の血ってヤツだろうな。
「……ビジネスパートナーを信用出来ないのか?」
「そっくりそのまま言葉を返すぞ、担当したクラフターの作品を信用出来ないのか?」
「……分かった。言わなくていい」
何処か諦めたように溜息を吐くタチア、アクセサリーはそのまま身に着けて続けるようだ。
「今はコレに付いてはこれ以上聞かない」
「助かる。それで本題、鉄のインゴットか鉄鉱石は取れたのか?」
エテルとタチアが2人でタンジョンに潜った理由はコレなのだが、不安しか無い。
「鉄のインゴットも鉄鉱石の一つも手に入らなかったよ……」
「いや、宝箱に鍵が付いていてな? 無理矢理開けたら中身も壊れてしまった!」
「……」
なんとなく予想は付いてたが、やはりなとしか言えない。エテルの押しの弱さとタチアの猪が最悪の化学反応を起こした結果だろう。
15階層から出て来るのが常の罠宝箱はその実低確率で5階層から出現する。前回、前々回と潜った時も罠宝箱に遭遇している。
エテルの運も影響しているかも知れないが1%前後の確率を引いているので、今回タチアが鍵宝箱を破壊した程度で済んで良かったとも言える。
罠宝箱だった場合は、最悪は即死トラップで次にサモン・モンスターだろう。即死トラップの原理は分からないが、怖くて解析したくないというのが本音である。サモン・モンスターだった場合、現状のタチアでも耐えられるだろうが打撃力不足で押し負けるだろう。モンスターハウスなら大丈夫かも知れないが、それでも精神的な疲労からミスは増える。
どうしよう、おっちゃんに協力して貰いたくなって来た。
性格矯正から始めないと、タチアはダンジョン入りが絶望的に向かない気がする。
「取り敢えず、明日は俺も一緒に潜るか」
「むむ、タタラ殿もか? そんなに心配はしなくても」
「普通は一つくらい持ち帰れる物が一個もないってのが完全に心配の種なんだよ。力加減とか以前に、斥候でも無いのに宝箱を調べもせずに開けようとしたりなんて……学園なら落第食らう案件だぞ」
俺の言葉に痛い所を突かれたといった表情になるタチア、エテルはそっと眼を反らしている。そうだな、前にレベルアップを焦って罠宝箱を開けようとしてたなお前。
「でもタタラ、何処まで潜るの? 確定で手に入る階層って22階層だよね」
「アレも正しくは確定じゃないんだけどな、ミスリルのオマケ程度だし。一番可能性高いのは26階層前後だが正直途中を考えると攻撃力が足りないんだよ……」
正直、虎熊に付いてきて貰えたなら楽では有るのだ。しかし、アイツは今も入国手続きが終わってない上に他国のお姫様だ。いくら何でも頼めるものじゃない。
「レベルを考えるなら10階層の『ゴブリンロード』までを周回って感じになるが……鉄製武具でも落としてくれれば溶かして使えるんだけど」
鉄鉱石やインゴットがどうしても出ない場合に協会が推奨する手段がコレだったりする。ダンジョン産と分かる装備を持ち込み溶かして再利用、協会側もドロップ運まではどうしようも無いと割り切ってるので本当に苦肉の策だったりする。
「むぅ、ままならんのだな」
「お前が壊した鍵宝箱の中身が鉄鉱石の可能性だって有ったけどな」
「うぐ……以後気を付ける」
「そうしてくれ、即死トラップだって有るんだからな」
ダンジョン内は自己責任とは言え、ベテランが一緒なら責任はそっちの方が重くなる。いくら後輩が指示を無視して暴走する猪でも、制御出来なければ共に行動してる先達が責められるのだ。
本当、タチアの性格何とかしといてくれよおっちゃん。この性格のままだと騎士団とか軍でも腫れ物扱いになるぞ。
「そう言えば今回は何階層まで潜ったんだ?」
「8階層、邂逅する羽目になった『ゴブリンコマンダー』を倒した後に戻ってきた」
「倒せたのか……」
エテルのレベルはまだ20になってないと思うが、レベルの低いタチアと一緒に潜って『ゴブリンコマンダー』を倒せるのは大分成長したな。
「うん、タチアを囮にしてゴブリンを集めた所を広範囲の『エナジードレイン』で一網打尽」
「やり方がえげつない」
「アレは驚いたな、いきなり身体の力がゴソッと奪われて」
「しかもタチアまで巻き込んでるのかよ」
「いや、私が囮になると進み出たのだ。多少の魔法は防げるからな」
ならエテルの『性魔術』は多少の範囲から逸脱してるって事になるんだが。エテルの『性魔術』スキルの深化がヤバいのでは?
「私も『コマンダー』を仕留められたからな、レベルも上がって気分が良かった!」
「仕留めたのか」
「『エナジードレイン』に耐えてたけど『魅了』で行動不能にした所をタチアにトドメ刺して貰った」
「酷いコンボを見た気がする」
エテルが自由になると途端にエグい攻撃始まるの、敵からしたらたまった物じゃ無いよなコレ。
「取り敢えず、タチアのブレーキ役を増やして明日も挑もう。ボスドロップなら多少は希望も有るだろうし」
「私はそんなに頼りないか?」
「頼りないと言うか、エテルが手綱を握れてないのがヤバい。今回は偶々運が良かっただけだからな?」
「むぅ……」
正直、タチアの壁としての能力は一級品どころでは無い。初期レベルで30レベルに近い俺よりも防御力関係が高く、体力も豊富。コイツにミスリル装備を持たせたら多分50階層まで普通に通じる、ゲーム時代のデータそのままなら恐らくボスの魔法ですら普通に耐えるだろう。
マジで何なんだこのバグみたいな存在。
「そろそろ寮の門限か?」
ふと壁掛けの時計に目線を送ると、結構遅い時間になっていた。騎士学校の生徒ともなれば、この辺うるさいと思うが。
「む……おぉぅ!? もうこんな時間か! すまない、コレで失礼する!!」
時計を見た瞬間、タチアが席から立って走り出す。
焦るのは分かるが……まぁいいか。
「明日も潜る予定でいいのか?」
「構わない! 明日も頼む! それではな!!」
結構な大声で答えたタチア、近所の犬が声に反応して吠えだしてる。忙しない奴だな。
そうして家に二人きりになれば、エテルが疲れを訴えるように寄り添ってきた。食事の時に使う椅子ではなく、庭に面した窓近くに有るソファまでエテルを横抱きで運ぶ。
突然の事に驚いた様子のエテルだったが、俺の胸に頭を預けて笑った。
エテルを膝に乗せる格好でソファに座り、その髪を撫でる。肩口を越えて背中に届く程の髪は上質な絹よりも触り心地が良く、手櫛を通せば手から逃げる様にサラサラと流れていく。
「お疲れ様、エテル」
労いの言葉を掛けてやれば、エテルは俺の首に腕を回してギュッと抱き着いてくる。俺の胸板で潰れる乳房の柔らかさで下半身が反応しそうになる。
「んふ、タタラのえっち」
「ん、悪い」
夢魔の特性として俺の興奮に気付いたのだろう、エテルが耳元で囁いてくる。労ってやりたいのに、身体は自然と相手を求めてしまう。
「ごめんね、今日はタチアと一緒だったから疲れちゃってて」
「気にしないでくれ」
俺の肩に額を当ててエテルが申し訳なさそうに言ってくる。下半身は辛いが、好きな相手に無理をさせたい訳じゃ無い。
頭と背中を撫でて、今日一日の出来事を話していく。
工匠長に就く話、虎熊と久し振りに会えた話、俺の技術を伝授して『ワールウィンド』を何れ変える話と印象が強かった物を特に詳しく。
エテルは虎熊にまた会いたいと言ったり、俺の技術が広がる事に不安を見せたりと表情を変える。工匠長については何となく知ってたと言いたげだった。
話を聞いて笑っていたエテルだが、その目は眠たげに瞼が落ちている。
撫でる手を出来るだけ優しくし、エテルを睡眠へ誘える様に気を使う。もっともっとと強請る姿は何処か懐いた猫を思わせ、可愛いなとそんな思いが出て来る。
そうして遂に寝息を立て始めたエテル。起こさないよう慎重に彼女を自室へ運び、布団を掛けてから額にキスを一つ。
「お休みエテル、愛してるよ」
そんな言葉を残して部屋から出る。受け取った装備の整備をして今日は寝ようと決め、俺は工房へと向かう。明日は大変そうだなと、そんな事を考えて。
翌朝、万全に仕上げた装備を用意してタチアの来訪を待つ。
驚く事に、エテルの『ロニセラ』が強化されてその性能を引き上げただけでなく新たに特殊能力を得ていた。
能力名は『オーバーロードⅠ』、一度だけ消費魔力の5倍のダメージを発生させる切り札だ。ゲーム時代では見たことが無かった能力なので、この世界特有の物なのだろう。
「待たせてしまったな! 二人共!!」
相変わらずの騎士服姿で現れたタチアに、預かっていた細剣を渡す。何やら変な癖が付いていたので手直ししておいたが、コイツ本来の武器は別だったりしないだろうな? 何か長物使う癖っぽかったぞ。
「俺達の方は大丈夫だが、タチアはどうだ? 調整した武器に不具合は有るか?」
「いや、問題無い。寧ろ昨日よりも手に馴染むと言うか……何をしたのだ?」
「単に武器に癖が付いてたから全体的に合わせただけだ、クラフターとしての基本だ」
「ふむ、そうなのか。騎士学校ではそういった事は教えてくれないのでな」
騎士学校なら其の辺は教えないかも知れないな、と思いつつ。
俺は普通に直しているが、バカは以前預けた店でその手の手直しを受けなかったと言っていた。もっとも、初見の店で他店の物を持ち込んだらしいから武器の癖を弄ってバランスを崩す訳にいかなかったのではと予想している。この辺は前にダルマさんにも説明したなと思い出した。
「しかし、何度見てもタチアの軽装は違和感が有るな……」
「仕方ないだろう、鎧を借りて壊したら少ない蓄えが無くなってしまうしな。それに、私の身体は硬い!」
「否定要素が無い事なんだが、大丈夫なのかお前……」
何か不安になってくる、死亡フラグに見えるのは前世に毒され過ぎているのか。
連れたってダンジョンの『常闇の洞』へ着く、手続きをしようとした際に聞き覚えの有る声が聞こえた。
「おーい! タタラ、エテル!」
大声で手を振りながら此方へ近付くのは何と此方の国の平服を来た虎熊である、傍らにカラムスさんが居る辺り散歩という訳では無さそうだが……いや、あの迷子遺伝子のせいで一人歩きは無理かも知れん。
都市最高戦力と目される教会の聖人を御目付役で送り出すってよく考えなくても凄いな。
「トラッちゃん! 久し振り!」
横から嬉しそうなエテルの声が聞こえ、虎熊に駆け寄っていく。勢い良くハグする二人を見て何とも微笑ましい物を感じる。
「昨日ぶりだな虎熊、遂に手続きが終わったのか」
カラムスさんが側に居るとはいえ外に出ている事に、その理由を察する。虎熊はエテルとのハグをやめて満面の笑みで頷いた。
「ジュロン、すまないが頼まれて欲しい」
「え、唐突に何を……」
いきなり真剣な表情で俺を見てくるカラムスさんに戸惑う。いきなり面倒事だろうか?
「ヨヒラ様が運動不足になるからダンジョンに潜りたいと言っていてな、本当に申し訳ないがお前に頼みたい」
「うむ、今朝方都市長殿に届いた書類の中に今日はダンジョンに潜ると有ったからな! 悪いと思うたのじゃが妾も連れてって欲しいのだ!」
「えっと……」
因みにヨヒラは虎熊の名前である。虎熊四葩が彼女のフルネームでは有るが、俺は基本家名で呼ぶしエテルはあだ名だしでこの先呼ぶ事が有るのか不安である。
取り敢えず、本日の主役であるタチアに目を向ける。
本人は状況がわからず目を瞬かせている、どうするかな。
「すまないタチア、連れを増やしたいんだがいいか?」
「ふむ、その御仁をお連れするということか?」
「ああ、ちょっと訳ありだが戦闘能力は凄まじいぞ」
正直、純粋にタチアの防御を抜いてダメージ入れられるであろう虎熊は無理せず22階層を目指せる為に是非とも連れて行きたい人員である。『ゴブリンロード』までで鉄関係が出ないとある程度深く潜らないとダメな辺り結構酷いな。
鉄と鋼を一気に収取する為に26階層以後を目指すのも有りだろうか、虎熊が居るなら無理も効くし。
「ふむ……うむ、いざとなれば私が前に出て盾となろう! 問題無い!!」
ある意味、単純な奴で助かった。
「のう、タタラ」
そうして居ると、虎熊がそっと耳打ちして来た。
「アレが昨日言っておった見習い騎士かの?」
「ああ、そうだ」
虎熊は俺の返答にふむ、と一つ頷く。
「自己紹介が遅れたの、妾は東の日出る国より来た虎熊 四葩と申す。以後よしなに」
タチアの前に進み、そう告げて一礼した。所作の美しさはやはり名家の出だなと、そんな事を思わせる。
そんなこの国とは違う礼儀で行われる、しかし高貴な雰囲気を出す虎熊にタチアも騎士の礼を取って返す。
「丁寧な挨拶痛み入ります。私は見習い騎士のタチアと申します、家名を持たぬ故に名乗れぬ無礼をお許し下さい。ヨヒラ様」
「いえ、丁寧な返礼を有難う御座います」
互いに礼を解いて目を見合わせる二人。なんか、中身を知ってる筈なのに真っ当なお姫様と騎士に見えるな。中身は別物だけど。
「ところでカラムスさん、一ついいですか?」
「む、なんだ?」
「虎熊ってダンジョンに入れて良いんですか? 許可証の発行とか」
「ああ、問題は無いぞ。その辺りの手続きに時間が掛かってたが、諸々済んだからな。その間にお前から胃痛を誘発する書類が来たから我が主は発狂してたが」
「だから昨日顔出したら睨まれたのか俺……」
若干八つ当たりに感じるが、正当な怒りなのだろうか?
「では、後を頼んだぞ」
「はい、ありがとうございました」
俺の礼を背に立ち去るカラムスさん。エテルに目線を向けた後、何かを伝えた様に見えたがよく分からかった。
「それじゃあ、現状の陣形の確認だな」
取り敢えず、ダンジョンに入る前にパーティーの陣形を確認しする。
「うむ、私が先頭だな」
「「却下」」
「なぬ!?」
真っ先にタチアが先頭に立つと言いだすが、俺とエテルが声を揃えて却下する。前日に聞いた内容だとコイツ、敵に突っ込むだけ突っ込んで索敵とかしないらしいからな。エテル並みに出来る様になってから言え。
「先頭はエテル、索敵を頼む」
「分かった」
納得いかないと表情に出てるタチアに対して、人選の説明をする。
「エテルの移動力、索敵範囲、反応速度からこの人選だ」
「だが、私は騎士だぞ。矢面に立つのが仕事だ!」
「ダンジョン探索で索敵能力を持たない壁がヘマして真っ先に倒れたら誰がそのフォロー入れると思ってる」
「しかし!」
「……ローガスさんに何を言われて来た、お前」
頭に過るのは出会ったその日、おっちゃんが言い聞かせてた言葉。
「お前、ダンジョンを昨日初めて潜って余裕だと思ったのか?」
「それは……」
「おっちゃんが都市最高の探索者の一人って言われてる物が、そんな簡単な物だと?」
「しかし」
「ダンジョン探索はお前達騎士が得意としている地上での戦闘とは違う、閉鎖空間内で罠や奇襲を警戒して進む場所だ。頑丈さにかまけて先行して、その結果毒や分断の罠に掛けられたらどうする?」
「それ、は……」
「答えられないか? ……なら、ダンジョン内では指示に従ってくれ」
相手の言葉を聞け、とおっちゃんに散々言われて来た筈だ。
騎士は確かに強い。俺達探索者と比べても正規の訓練を受けて、正しく戦闘経験を積めるのだから基礎が違う。
しかし、ここは騎士の戦いがまともに通せる場所では無い。
平地での集団戦とは違う、ダンジョンそのものが罠を仕掛けてくる場所だ。タチアは、学園でその辺りの基礎を教わる俺とエテルとは違い騎士学校での陣形や戦法の訓練が主だろう。
此処ではそれらの知識を十分に活かせない、求められている技能が違うのだ。
確かに、個の戦闘力は有用だ。モンスターのレア種や、ボス相手でも通じる防御力も助かる。
しかし、本来の目的である鉱石や資源である魔石の回収がままならないのは損失が大きい。昨日回収出来た数を確認したが、目標の十分の一にも届いてない、それではダメなのだ。
「続けるぞ? タチアの後ろが俺、殿は虎熊に頼む」
「任されたのじゃ」
最後尾には一番高い戦力を置く。火力は兎も角防御力が不透明な虎熊のフォローに俺が入れ、一番低い防御力のエテルにタチアがフォローに入れるコレが現状の最適解の筈だ。
「さて、少し長いミーティングになったが陣形はコレでいこう。タチアはエテルが奇襲に有ったらすぐフォローに入れる様にしてくれ」
「……分かった」
どうやら考え込んでいるらしい、少し強く言い過ぎたか?
いや、あの暴走癖を矯正するには多少荒療治をしなければ無理だろう。
鎧が完成するまでの付き合いだとはいえ、知り合いがこのままでは危険に晒されるというのは気分が悪い。
おっちゃんには悪いが、ちょっとキツめに修正させて貰おう。
虎熊 四葩(鬼:虎熊童子 花:紫陽花)
この小説は……
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永遠と愛の絆
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娘さん、親父殿を俺にください