※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント、探索編その1


翼は深く沈む

 俺とエテルの2人に虎熊とタチアを追加した即席4人で挑むダンジョン探索。

 最早見慣れた『ジャイアントバット』と『ジャイアントラット』を俺とエテルの『エナジードレイン』で片付けつつ、下層へ降りる階段を目指す。

 無意識下の作業の様に淡々と処理をしていくエテルに、タチアは驚いている雰囲気が背中から見て取れた。昨日の話を聞く限りエテルの前に立ち勝手に進んでた疑惑が有ったタチアは、エテルの本来の仕事を見ていない可能性が有った。

 完全に初見の反応な辺り、コイツをダンジョンに潜らせたのは早まったかと少し後悔する。しかし、俺がコイツの求める鎧を作るには前提を幾つも満たさなければならない。

 探索者として、上層で入手出来る素材の基本である鉄鉱石と鉄のインゴット。正直、宝箱の一個でも開ければ一つは手に入る物なのだ。ソレを、エテルが居る上で入手出来て無い。

 宝箱の発見と、鍵開けも出来るエテルが居て一つも入手出来ていない。正直、探索を行わず先に進んだだけと言うのが昨日の顛末だろう。

 初ダンジョンとはいえ、目的を忘れてるのはちょっと擁護不可だろう。単独ソロで初めて挑んだ際のエテルですらレベルアップが目的だったが『ボスに一人で挑まない』と『レア種からは逃げる』の約束2つは守って帰って来たのだ。

 そういった目標や目的を忘れての行動、このままにしたら恐らく騎士団の中でも居場所が無くなる。それではダメだ。

 一度では無理だろうが、何度か挑みある程度は矯正する。

 一応、次期工匠長としての鎧の宣伝を兼ねる関係でタチアの立場を少し良いものにしないとならない。与えた相手が大した活躍をしなければその程度、そんな風評を受ける。

 

「……エテル殿一人でこれ程働くのか」

 

 忙しなく動くエテルの動きを見ていたタチアがそう呟いたのが聞こえた。前回の自分の動きと比較しているのだろうか?

 

「まだ敵が『ジャイアントバット』と『ジャイアントラット』だから落ち着いている方だ。5階層からもっと増える」

 

 味方との意思疎通や襲撃する上での挙動など、敵がしぶとくなれば追撃や撤退についての判断だってエテルの情報から判断する事が多いので彼女のやる事はどんどん増えていく。

 そんな事を軽く説明しているうちに、分かれ道に遭遇した。

 何時もの通りに濡れた指先で空気の流れを見て、階段と別の行き止まりを判断する。

 

「右が行き止まり、左が階段だね」

「ふむ、では左だな」

「はいストップ」

 

 エテルの言葉にそのまま左転進しようとしたタチアを止める。

 訝しげなタチアを見て、今回の目的を忘れてるんだろうなと感じつつ言葉を向ける。

 

「階段とは逆方向へ先に行く」

「何故だ、先に進むのが目的だろう」

「いいや、主目的は『鉄鉱石か鉄のインゴットを集める』事だ。まとまった数を集めるのに効率的なのが26階層以降ってだけで、集められるなら上階から集めたい」

 

 完全に目的を忘れてたなコイツ。騎士団に入った後、作戦目的を忘れて強行突入して敵の殲滅始めたりしないだろうな?

 

「単なる行き止まりの可能性が高いだろう?」

「その行き止まりに宝箱が有るかも知れない、ソレを確認するのも探査だ」

 

 一つ息を吐いて言葉を続ける。

 

「コレは行軍じゃない、探索なんだ。目的を持ってダンジョンに潜っているなら、最大限果たされるように動かなきゃならない。騎士団に入った後、捕縛命令が出てるのに殲滅したら事実上の失敗だろ?」

「……何故、失敗扱いになるのだ?」

「コイツ、マジか」

 

 おっちゃん、ちゃんと教育したの? 学園の中等部まで通わせた? もしかして、高等部まで別の国に居たとか?

 コレで学園に通ってたなら義務教育の敗北だぞ。

 

「騎士団が出動する任務が有ったとしよう。人質を取った立て籠もり、犯行に及んだ相手が仮に何処ぞの王族だとする」

「ふむ、王族による事件か」

「その国との関係の為にその王族を死なせずに捕縛して、自国が優位に立って交渉をしたいのが上層部の考えだとする」

「間怠っこしいな」

「……そんな時にタチアが任務に従事して、犯人の王族と相対したらどう行動する?」

「一罰百戒、犯人を殺すな!」

「話聞いてた?」

 

 そんなに戦争がしたいのか、お前は。

 

「高度な政治的取引まで持っていきたいのに、何故交渉の札を態々自分から捨てるんだよ。上層部の目的は話しただろ」

「だが、我等騎士団はその様な反乱軍との交渉は応じない。例え相手が王族であろうと、必要なら一族郎党皆殺しにする」

「どうしよう、国を滅ぼす戦争を始めようとしてる……」

 

 エテルと虎熊が凄い顔でタチアを見てる、流石の俺もコイツ騎士にするの止めた方が良いと思うんだけど。

 おっちゃん、本当にどんな育て方したの?

 

「……流石にな、他国の王族を故意に殺害すんのは止められて然るべきなんだよ。それやると自国の王族の扱いに関わるからな?」

「なら偶然を装えば問題無いな!」

「大問題だよ!?」

 

 エテルが思わず突っ込んだ、虎熊の方は俺がクラフトの話をした時より引いてる気がする。

 なんでこんな悲しいモンスターが生まれてるんだよ。

 

「騎士団はこんな思想の奴入れて大丈夫なんだろうか……」

「騎士学校はこんな感じの奴ばかりだぞ?」

「お前の通う学校って蠱毒の別名だったりする?」

 

 嫌だよそんな危険思想の煮凝りみたいな学校、騎士団とは名ばかりの害人部隊じゃん。

 おっちゃん、悪い事言わないからコイツ騎士学校から離した方がいいよ。言ってる事が合ってるにしろ違うにしろ、コイツを騎士にしたら開戦に加担する事になるよ。

 確かに出した会社の過去作では侵略した国の王族皆殺ししたり陵辱したりしてた作品は有ったけど、この世界の歴史だと普通に天寿を全うしてる王族の方が多かった。後に出た作品で辿った正史に於いて、滅んだ国の方が少ないとテキストが出ているしそれに添っているのだろう。

 それなのにどうしてこのモンスターは皆殺し前提なのか。

 

「……タタラ、この国の騎士が揃いも揃ってこの思想なら妾達も付き合いを考えねばならんと思うのじゃが」

「俺もそう思う、エテル共々虎熊の国に亡命させて欲しいくらいだ」

「異論は無いかな、流石にちょっと……」

 

 引攣った顔の虎熊の台詞を聞けば、俺とエテルは同意するしか無かった。都市長に話して工匠長の立場を辞退しようかな……?

 俺達のやり取りに疑問を持ったのか、タチアが声を上げる。

 

「そんなに変か?」

「変と言うか危険、騎士学校の人間でクーデターでも考えてるのを疑うくらいの異質さ」

「そこまで言うか」

 

 言うに決まってるだろ。

 原作のイベントにそんな話は無かったし、サブイベントに出て来る騎士は謹厳実直な正に騎士といった性格をしていた。

 あと何年かしたら原作なのかも知れないが、あれだけの人員を育てる機関が今このザマなら関係者総入れ替えになるような不祥事が有ったとか前提が無いと意味不明過ぎる。

 単純に、教師はまともなのに学生側が最悪な世代の可能性も有るが。

 

「そもそもの話、鉄製の武器を依頼出来る実力を示さないと鎧を作る事が許されないし、素材集めないと作れないしで探索しないと駄目なんだが」

 

 集める理由すら忘れて無いよな?

 

「そ、そうだな……探索は必要だな!」

「嘘だろ……」

 

 コイツ、完全に忘れてやがった。

 

「のう、タタラ。此奴本当に大丈夫なのかの?」

「依頼のキャンセルした方が良い気がして来たよ、タタラ」

 

 やめろ、二人して不安を煽るな。都市長からの依頼も有るからキャンセル効かないんだよ。

 不安を抱えながらも陣形を戻し、エテルを先頭に道を進む。

 少し歩いた先には木製の宝箱が有った。

 エテルは振り返り俺を見る。先ずは『鑑定』を掛ける為に意識を向ける。

 

「おお、宝箱! では早速」

「取り敢えず、“待て”じゃ」

「ぐぇ」

 

 指示も待たずに突撃しようとしたタチアの襟首を、俺の背後から手を伸ばした虎熊が掴んで制止させる。

 虎熊は前回、宝箱を勝手に開けて罠を発動させた経験が有る。本人も反省したのだろう、同じ事をしようとするタチアを真っ先に止めに入った。

 

「タタラが鑑定を掛けておるし、鍵付きや罠の疑いも有る。突撃せんで先ずは待つのじゃ」

「っ!! っ!?」

 

 虎熊はタチアの襟首を掴みながら言い聞かせているが、タチアは首が締まって苦しいらしく暴れている。

 小揺るぎもしない辺り虎熊はどんな力をしてるのか?

 

「取り敢えず虎熊、息できて無いみたいだから一旦手を放してやれ」

「……はっ!? すまぬ!」

「──っぷは!?」

 

 俺の言葉で状況を理解した虎熊が慌てて手を放す、唐突に訪れた解放感でタチアが荒い呼吸を繰り返している。

 なんか扱いが雑だなと、何となく思った。

 

「よ、ヨヒラ殿……助言ありがとうございます。しかし、この身は頑丈で有りますれば罠などビクともしません!」

「その前に中身が駄目になるってのが問題だろ、回収が目的なんだから」

「……はっ、確かに!?」

「のう……此奴本当に、本当に大丈夫か? 何かの呪いにでも掛けられとるんじゃないかの?」

「それは無い……と思う、多分」

 

 虎熊の血に宿る迷子遺伝子並みに強力な、頭が残念になる呪いでも有るんだろうか?

 コレ、エテル一人で対処しろとか完全に無理ゲーだろ。さっきから喋って無いのトラウマになってるからじゃないだろうな?

 おっちゃん、コレ本当にどうやって育てて来たの?

 

「取り敢えず、鑑定は掛けた。普通の宝箱だから開けても大丈夫だ」

 

 鑑定が終わっている事と、普通の宝箱である事を言って開ける事を促す。タチアは一度此方を見た後に宝箱へ近付き、開ける。

 コレで鉄のインゴット出てくれればとは思うが、現実はそう甘く無かった。

 

「ふむ、傷薬だな」

 

 出て来たのはオーソドックスな傷薬、上層階では定番と言える道具である。

 

「そのまま持っててくれ」

「あ、ああ……しかし鉄関係のアイテムが出ないのでは此処に来た意味が無いのでは?」

「それは結果論だ。傷薬1つの収入が有ったなら十分な利益だろ」

「むぅ……」

 

 店売りを買うと1つ150する傷薬をただで手に入れるのは中堅以上の探索者でも緊急時に使用する事を考えても高めの収益と見る、騎士団では配給品でありがたみが薄いのかもしれない。

 

「探索は目的を果たさなきゃならない。一度でダメなら何度も挑む必要が有る」

「それは」

「騎士団からすれば甘いか? 失敗出来ない一発勝負が主だ、と」

「……そこ迄は思っていない」

「近い事は思っていたんだな?」

「むう」

 

 騎士という物に余程拘りが有るんだろう、最低位でも爵位である事が理由かも知れない。

 騎士学校での教育に平民と貴族の違い、みたいな科目が有るのなら平民(俺達)の言葉が通らないのも道理なのだろうか?

 

「まあ、いいや。どうせ鎧を作るまでの付き合いだし」

「……」

「お前が人の話を蔑ろにしようが平民を人間として見なかろうがどうでもいいな」

「なっ!?」

「話を聞かないってのはそういう事なんだろ? 普通は制止の言葉とか、注意ってのは意識する物なんだ。ソレを理解して無いって事は、言葉じゃなく鳴き声とでも思ってるって事だろ」

「ち、違っ」

「違うならっ! 何でおっちゃんの言葉も俺達の言葉も理解してねぇんだよ」

「……っ」

「……コレも通じないんだろうな、どうせ犬が勢い良く吠えたとかその程度の認識だろ」

「違う、違うんだ……」

「……違うならさっきから俺達が言ってる事を理解してくれよ。おっちゃんが教えた事を実践してくれよ」

「……違うんだ」

「……先に進むぞ」

 

 コレで、少しは意識改革に向かうだろうか?

 おっちゃんが育てたタチアが、人を蔑ろにするような思考を持ってるなんて思いたくない。これだけ厳しい言葉を送られて、今迄の行動を顧みてくれるだろうか?

 カラムスさんっていう騎士の見本みたいな人を知っている身としては、彼女程ではなくても少しは近付いて欲しい。

 俺が、誇りを持って鎧を贈れる騎士になって欲しい。そんな考え方は少し傲慢なんだろうか?

 

 探索を再開する。タチアは背中から見ても分かりやすいくらいに落ち込んでいて、先程の言葉が効いたように見える。見えるだけで本当に効いたかは分からない、人の心なんて覗けないから。

 階層を1つ2つと降りる中、タチアは少し変わった。宝箱に突撃をしなければ、エテルより前に出ようともしない。

 宝箱から手に入る物は傷薬と石材だけだが、特に不満は溢すことは無い。

 それ故に油断した。

 心を折に行った階層から3階降りた時、少し豪華な仕様の宝箱が見付かった。鑑定を掛ければ正体は『ミミック』だと分かり、全員に注意喚起をしようとした際に進み出て『ミミック』に手を出した奴が居た。

 そう、タチアである。

 俺もエテルも虎熊も、直前まで大人しかった為に完全に意識から抜けていた。

 

「おま、バカ! ソイツは『ミミック』だ!!」

 

 咄嗟に叫ぶが、時すでに遅し。タチアの手は宝箱に擬態している『ミミック』に触れていた。

 

「へ?」

 

 俺の声に振り返ったタチア、完全に硬直したタチアに向かって『ミミック』は飛び上がり頭から食い千切ろうと噛みついた。

 普通なら、探索者が上半身を丸々失うスプラッタな光景が広がったのだろう。しかし、そこはタチアの防御力。

 『ミミック』に頭から被せられただけで、その牙がタチアの肌を貫くこと叶わず……何か頭から宝箱に突っ込んだ人みたいな愉快なオブジェが完成した。

 

「ぬわっ!? 何だ!? 暗い、臭い、ぬめぬめする……た、助けてくれぇ!?」

「「「……」」」

 

 『ミミック』の中から助けを求めるタチアというシュールな光景に、俺達3人は啞然というか茫然とした。コイツ、結局変わってねぇ……。

 

「……エテル、取り敢えず『盗む』を使ってアイテムの取得頼む」

「……分かった」

 

 何処か呆れというか諦めの混じった吐息の後に『ミミック』へ近付くエテル。適当な動作で『ミミック』へ『盗む』を実行し、その手に何かしらのアイテムを握る。

 

「虎熊、避けて斬れるか?」

「……はぁ、やってみよう」

 

 溜息を1つ吐いて『ミミック』に近付く虎熊、そのまま刀の鯉口を切ったと思えば銀線が三条走り『ミミック』を解体する。

 突然視界が開けた事に驚いた表情のタチアにジト目を向ける虎熊だったが、静かに首を横に振って戻って来る。

 

「いや、コレはその……違うんだ!」

 

 『ミミック』の体液に塗れたタチアが何か言おうとする。

 その足下に『ミミック』のドロップ品、恐らく鉄のインゴットが有った。

 

「足下のそれ回収したら追ってきてくれ」

 

 ソレだけを言い残して探索に戻る。何か言うのも嫌だ、徒労で余計に疲労してる気がする。

 

 そこからの探索は空気が最悪と言えそうな程に悪かった。

 タチアは何とか話題を振ろうとするのだが、あのエテルに

 

「集中したいから話し掛けないで」

 

 と言われ完全に消沈した。

 当然、俺も不機嫌な空気が全開で出ているだろうし。虎熊も擁護不可と判断したのか周囲の警戒に集中する形でタチアを無視している。

 一度背後から

 

「3層潜れば忘れるとは鶏か何かか?」

 

 と聞こえて来た時にはどう反応するべきか迷ったが、スルーした。

 タチアにとって完全なアウェー空間、流石の防御力も胃には作用するか分からないからボロボロになる可能性。同情は一切出来ないが。

 そのまま進み、5階層に到着。此処からは『ゴブリン』が出てくる為、エテルの動きが更に慎重になる。

 先行して索敵を行うエテルだが、早速動きを止めて此方にゆっくり近付くようハンドサインを送ってくる。

 反応からして『ゴブリン』を確認したのだろう、物音を立てないように近付く俺と虎熊。が、タチアのダンジョン経験不足を忘れて居た。

 

「な、何だっ!?」

 

 エテルのハンドサインに疑問を持ったタチアがその場で無駄にデカい声でそう言った。

 ダンジョン内で反響した声は『ゴブリン』まで届いたらしく、複数の鳴き声が上がった。

 

「敵8! 『コマンダー』1、『ウォリアー』2、『ウィザード』1、他4!」

 

 降りてそうそうレア種と邂逅なんて持ってるな。そう思いつつエテルより前に出る、足音からすぐ後ろには虎熊が居る事が確認出来た。中心に『コマンダー』、左右に侍る『ウォリアー』、その前に並ぶ『ゴブリン』4匹。『ウィザード』の姿が見えなかったが、恐らくは『コマンダー』の背後で魔法による援護をするつもりなのだろう。

 最前列の『ゴブリン』までの距離は40m程、鎧の強化による移動力の増加でギリギリ届く距離。全力で踏み込み前に出る、虎熊から軽く離れたのを確認して足裏の炸裂術式と背中の風魔法術式を起動する。思い切り背中を押される感覚、グンッと加速して流れて行く景色。背中の噴射口だけでは上から押さえつけられるような感覚でバランスが悪い、腰辺りにも増設して安定するように再設計する事を誓う。脚が伸び切るタイミングで発動した炸裂術式で加速を狙ったが、脚が跳ね上がるだけだった。

 設計ミスと思った矢先、眼前に迫っていた『ゴブリン』の頭に跳ね上がった膝が激突する。意図せずフライングニーキックとなった格好で直撃した『ゴブリン』の頭は粉砕された。

 崩れたバランスを何とか立て直し着地、ややスライディング気味になり床を削りつつ静止する。

 インベントリに入れたままだったウォーハンマーを取り出し構えれば、目前に立つ2匹の『ウォリアー』が身を乗り出して来た。

 しかし、うち1匹の頭は魔力弾が直撃し爆散した。遅れて届く独特な発射音、エテルによる援護射撃だ。両脇に居た3匹のうち2匹の『ゴブリン』は俺に飛び掛かろうとするが、瞬く間に斬殺される。追い付いた虎熊の剣閃だ、光が走った様にしか見えない剣技は容赦無く敵の命を刈っている。

 残っていた一匹は俺に目もくれずエテルに向かって走って行く。エテルが迎撃の為に『ロニセラ』の銃口を向けようとしたその時、タチアがエテルの前に立った。カバーするにしてもタイミングが悪い、エテルの射線を塞いだ為に射撃が出来なくなっている。

 連携の説明が上手く出来ていなかったかと思いつつ、しても無意味だったかなとも思う。最早、自分の中でタチアへの期待は無い。

 目前の『ウォリアー』が腕を振り上げる。攻撃の動作に入ったのを見計らったか『コマンダー』の叫びが続き、その能力を強化する。

 静かに俺の前に進みでる虎熊、その背には前へ進めと意思が見て取れた。再び踏み出し、加速機構を起動。30m先に居る『コマンダー』に向けて駆け出す。

 虎熊と『ウォリアー』の脇を駆け抜け『コマンダー』へ肉薄する。『コマンダー』に向け『鑑定』を使用、その能力を暴く。

 

 人妖族『ゴブリンコマンダー』 

 体力  80/80 

 魔力  0/15 

 技力  30/30 

 物理攻撃 30+15 

 物理防御 20+5 

 魔法攻撃 3 

 魔法防御 5 

 速力   15 

 移動力  5 

 状態異常 無し 

 特殊   『指揮Ⅰ』

 装備   『指揮官の剣』『指揮官の服』 

 

 前回エテルと相対した個体とは違い、防具が増えている。

 技を選択、『連撃』を使用。防御されたとしても当たれば削りきれる筈。

 武器命中15+39=54−30、判定24。命中判定。

 物理攻撃54+【連撃】10=64−25、判定39。連続攻撃。

 ウォーハンマーを横薙ぎにフルスイングし、振り抜いた勢いで回転を続け3発叩き込む。重々しい打撃音が続き、3発目で骨が砕ける感触と音が伝わった。

 振り切った格好で残心、『コマンダー』は横っ面を殴られ頭蓋骨を粉砕された姿で立っていた。

 大量の血を顔の穴と言う穴から吹き出して、そのまま倒れる。

 そして眼前には『ウィザード』の姿。『コマンダー』を隠れ蓑に詠唱を完了していたのだろう、拳大の水球が3つ浮いている。水属性魔法の初歩【水球】だ。

 咄嗟にウォーハンマーを手放し、両腕を顔の前で合わせて防御体勢を取る。

 魔法攻撃20+【水球】=20−108、判定0。無効化。

 鎧が濡れる程度で大した事のない衝撃、近所の悪ガキに水鉄砲で撃たれたくらいのもので拍子抜けする。

 ダメージを受けていない俺の姿に茫然とする『ウィザード』に対して手を伸ばす。

 命中39−16、判定23。命中判定。

 逃げようとする『ウィザード』の顔面を掴み、持ち上げる。

 物理攻撃39−10、判定29。致命打判定。

 そのまま地面に『ウィザード』の頭を叩き付ける。勢いが付き過ぎて『ウィザード』の頭を粉砕した。

 振り返ると虎熊がマジか、みたいな雰囲気で苦笑いしている。お前は多分、そのまま握り潰せるタイプだろうが。

 と、そんな事を思って居るとエテルとタチアの方から爆発音が響いた。

 何事かと思えば、タチアが少し焦げて煙を吹いている。まさか、『ゴブリン』の自爆をもろに食らったのか?

 エテルはタチアを見て慌てているが、遠目から見てタチアは表面がやや焦げてるだけで騎士服含めて無事に見えた。アレ、普通に威力150とか有るんだけどな……俺が食らった時は爆風と炎熱だけでかなりキツかったのに何だあの防御力。

 

「まさか『ゴブリン』が自爆するとは……」

「……何故お主はほぼ無傷なのじゃ?」

 

 特に問題無いと言う風にこぼして居るタチアを見て、思わず虎熊がツッコミを入れている。

 あの自爆は恐らく『コマンダー』が先に出していた指示で、敵に取り付いてから後に爆発する物だったのだろう。『コマンダー』が死んだ後に発動している時間差はそう言う理由だろう。

 エテルだったら脱落していただろう、そこは感謝するべきか。

 

「タチア」

「む、どうかしたかタタラ殿」

「エテルを守ってくれてありがとう」

「え、あっ……」

 

 遅れて気付いたのか、エテルを見るタチア。あの挙動は無意識だったのか?

 

「ただし、声で相手に気付かれる切っ掛けになったのは減点」

「うぐっ」

「それと、エテルの前に不用意に立って射線を塞いだのも減点だ。お前が真ん前に立った関係で迎撃出来無くなったからな」

「むぅっ」

「……次は期待してる」

「あ……ああっ!」

 

 コレで褒めた直後にまたやらかさなければ良いんだが。

 倒した敵からドロップした魔石を回収する、タチアが疑問符を浮かべたので此等を摂取したモンスターの『昇華』に付いて話せばいそいそと回収に参加した。

 それに、魔鉄と形状記憶合金の生産には魔石が要る。タチアの鎧を作る為にも集める必要があった。

 

 その後、階段エリアに着いた時にスキルの確認をする。俺のスキルに大きな変化は無かったが、エテルの『速力上昇Ⅰ』と『移動力上昇Ⅰ』がレベル最大になっていたらしく、そのまま2つのスキルをランクアップさせていた。

 基礎能力上昇に関するスキルは日々の運動でも経験値が加算される為にレベルアップが早い、エテルの『魔力上昇』も『ロニセラ』により常に魔力の消費を受けていたが故にレベルアップが早かった。もっとも、同時にⅠ〜Ⅴまでの経験値を貯めていたが故にレベルアップに1年以上の時間が掛かっていたが。

 斥候として前に出る関係で『速力』と『移動力』が刺激され、コレだけ早いレベルアップに至ったが正直ランクアップより先に別のスキルを取らせる方が有用だっただろう。尤も、エテル自身が選んだ事なので特に文句は無い。脚が段違いに速いのは追い付くのが大変だが。

 虎熊が自身のステータスを見て何かを考え込んでいる、レベルアップが近くスキルの取得に悩んでいる雰囲気に近い気がする。

 タチアは特に何もして無かった、現状直ぐに迎える変化は無いらしい。

 そうして全員が準備を整え、次の階層に進む。

 エテルが再び斥候として先行し、その後ろにタチアが続く。

 俺と虎熊もその後に続いて行ったが、エテルの移動力が更に上がった為に追い付くのも大変である。

 そしてエテルが壁の影から先を覗いた時、ハンドサインを送ってくる。反応が何やらおかしい、やや焦っている雰囲気だろうか?

 そうして全員で集まり、先を覗いて見る。

 その先には『ゴブリンコマンダー』と率いられた群れが居た。




遅くなって申し訳有りません。
書いててなんか変になってる感じがしてます。

この小説は……

  • 永遠と愛の絆
  • 寛容と一途な愛
  • 信念と翼
  • 鎚を包む花束
  • 誠実と誇り
  • 都市長いっとけ都市長
  • 年増園
  • 太陽の笑顔
  • 星の微笑み
  • 太陽と星
  • 娘さん、親父殿を俺にください
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