※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント探索パートⅡ


翼は羽撃く

「どういう確率なんだろうな、コレ」

 

 現在の階層は10階層、場所はボス部屋の扉前である。

 5階層から9階層までの全てで『ゴブリンコマンダー』とエンカウントし、その全てを倒して来た。お陰で多少の消耗も有ったが、エテルとタチアがそれぞれレベルアップしている。

 途中途中被弾が有り、火力確保の為に技を使って居た俺が恐らくこの中で一番消耗している。虎熊は単純に高い物理攻撃だけで殆どの敵を瞬殺していたので消耗らしい消耗が無い。

 タチアは普通に物理・魔法何方にも高い防御力を持つので『ゴブリン』ではダメージらしいダメージが無い上、低いレベル故にレベルアップがし易く消耗が回復している。

 

「流石に偶然にしても出来過ぎじゃが、誰かの意思を感じなかったのう」

「つまり、幸運か凶運かは分からないが極端な運だったってことか」

 

 虎熊の言葉に頭を抱える。ゲーム時代での『ゴブリンコマンダー』のポップ確率は5%前後だった。ソレを4回連続で引くとかなんだその偏り。挙げ句、妙に鉄鉱石やインゴットが出ない。

 宝箱から出てくるのは鋼が主だった。どうも世界はタチアに専用の装備を作らせたく無いらしい、お前何でそんなに世界から恨まれてるんだ?

 

「ところでタタラ、素材はどうなのじゃ?」

「気付いてるか……鉄が全く出ない。このままだと26階層行きの可能性が高い」

「ふむ、前回妾達が降りた22階層より先か。何故そこなのじゃ?」

「出てくるのが『ゴーレム』族だからな、最下級の『ロックゴーレム』は兎も角として『アイアンゴーレム』に会えれば鉄は何とかなる」

 

 ダンジョンの26階層から出現する『ゴーレム』族。非常に高い物理・魔法防御を持ち、攻撃力も高い。生物では無いので各種状態異常にも高い耐性を持っている。普通に進めていると『オーガ』以上に苦しむ相手ではある。

 鈍重なので無視して先に進めはするが、待ち受けるボスも『ゴーレム』族なので何方にしろ何かしらの対抗手段を用意しなければならない。

 其の為の狙撃銃開発だったりするのだが、まだ挑む予定は無かったので魔導加速式投射砲は完成していないのだ。

 一応、対抗手段を俺個人で持っては居るのだが……また狂人扱いされるんだろうなと思うと気が重くなる。他は落とし穴に落として液状化魔石で熱せば外装は溶かせるし、材料自体は余ってる魔石で直ぐ作れるから出来なくは無い。

 

「二人とも、ボス戦の方はどうするの?」

 

 先の展望を語っている最中に、エテルが声を掛けてくる。

 どうする、と聞かれ一番簡単な方法は1つだ。

 

「タチアを真正面から突っ込ませてターゲットが集中したタイミングでエテルが『ウォリアー』を狙撃、俺が『ウィザード』に接近して撃破。タチアが『ロード』の気を引いている中で虎熊が攻撃に入る。多分、コレが一番速い」

 

 レベルが上がった事を考えると、タチアの打たれ強さは俺を越える。打点がどれだけ出せるかはまだ分からないが、俺に並ぶ事はまだ無いと予想する。流石にそこ迄上回れたら本気でゴーレム説を信じるぞ。

 虎熊の攻撃力はステータスを確認してないから分からないが、100を越えているのは確実だろう。このパーティで一番硬い奴と一番強い奴のコンビでボスを抑える。

 エテルが『ウォリアー』を仕留めるのはかなり早い筈、そうなれば二人の援護に入れるだろう。それこそ『魅了』が通ればそれだけで有利になる。

 俺は俺で『ウィザード』をどれだけ早く片付けられるかだ、せめて『ウィザード』程度は一撃で殺れる火力が欲しい。帰ったらウォーハンマーのアップデートを考えた方が良いかも知れない。

 

「ふむ……妾はその案に賛成じゃ、皆は?」

「私もそれで問題無いよ」

 

 俺が案を出せば、頭の中で吟味した虎熊が賛成しエテルは多分俺が出したからと頷く。

 

「タタラ殿、少し良いだろうか?」

 

 そんな中で聞きたい事が出来たらしいタチアが、俺に声を掛けてきた。

 

「なんだ?」

「ここのボスに付いて私はよく分からないのだ、ある程度詳しい情報が欲しい」

「……ああ! 分かった!」

 

 此処に来てタチアが自らボスの情報を欲しがった、成長が見えて来た。

 

「先ず、ここのボスは『ゴブリンロード』だ」

「ふむ、『ゴブリン』族なのか」

「ああ、ダンジョンでボスを務める種族はその直前の階層に出るモンスターの種族になる。そして此処の階層なら『ゴブリン』族、途中何度も出て来た『コマンダー』の上位互換の『ロード』になる」

「ふむ、指揮官(コマンダー)の上に立つ(ロード)か……見習いとは言え騎士(ナイト)としては、剣を向けるのはやや不敬だな」

 

 冗談交じりにそんな事を言ってきて、俺も思わず苦笑いをする。

 

「『コマンダー』との違いは指揮能力の強化が一番だな、コイツの指揮には『ゴブリン』族の攻撃力を上げる効果が有る」

「む? そうなると『コマンダー』達にはそういった効果は無かったというのか?」

「ああ『コマンダー』はあくまでも作戦指示が限度で、お前に取り付いた自爆型とか武器投げ付けてた奴等みたいなのは『コマンダー』が居ないと行動出来ない」

「……だから道中で飛び付こうとする『ゴブリン』が居なかったのか」

 

 実は、ダンジョンに入る前に説明してたのだが今になって話を聞いてくれるとは。あの『コマンダー』との連戦で上がったレベルのお陰で其の辺も成長したのだろうか?

 

「『ロード』は『コマンダー』の上位互換と言える、基礎能力もそのまま強化されてるから体力もそこそこ高い」

「ふむ……私の防御力は通じるか?」

「通じる。『ゴブリンロード』くらいじゃ問題足り得ない」

「ふむ、そうか」

「ただ、気を付けて欲しいことがある」

「なんだ?」

「道中の雑魚だとほぼやって来ないが、『ゴブリン』には残りの体力が五分を切ると使える切り札が存在している」

「切り札、だと?」

「ああ、名前は【ゴブの魂】で一発だけ攻撃力が5倍になる」

「それは何とも……」

「ボスは体力が高い上に逃亡って選択肢が無い、だから下手に体力が残ると──」

「使ってくる、という訳か……」

 

 タチアは俺の話を聞いて、少し考え込んでいる。

 

「発生した場合のダメージは分かるだろうか?」

「俺の時には240、回避失敗して防御がぎりぎり。ダメージは200通ったな」

「それ程……」

 

 タチアの表情が険しくなる。

 

「一応、当時はまだ鎧も今ほど硬くは無かったからそれだけダメージを通した。だが、タチアなら正面から受ける限りもっと減らせる筈だ」

「そう、だろうか……」

「出来るさ、頑張れよ未来の守護騎士」

「守護騎士……ふふ、良いな守護騎士」

 

 眉間の皺が無くなり、緩く笑うタチア。緊張は抜けたらしい。

 

「ああやって誰かに寄り添うの、タタラの好きな所だけどきらい」

「エテルの場合は特にそうじゃろうな、妾もちょっとモヤッとする」

「ね。友達を奪わないでみたいな事お父さんに言ってたのにすぐ他の娘に優しくするんだもんね」

「いやいや妾はお主とタタラの所謂ハコオシと言うヤツじゃからの、お主以外の女と仲良くなるのは解釈違いじゃ」

「厄介ファン……」

 

 何か後ろからエテルと虎熊の変なやり取りが聞こえてくる。

 何やら俺に不名誉なレッテルが貼られ掛けた気がする。

 

「さて、全員心構えは出来たな?」

「うん」

「おうじゃ」

「大丈夫だ」

 

 俺の言葉にそれぞれが答える、表情には適度な緊張が有る。

 

「それじゃ、行くか」

 

 扉を開ければ、広い空間の中に3匹の人妖が見えた。

 10階層のボス『ゴブリンロード』とその側仕えの『ウォリアー』と『ウィザード』の見慣れた編成だ。

 

「タチア!」

「了解だ!」

 

 名前を呼べばそれに応えて進み出るタチア、その後ろに影のように後を追う虎熊が此方に視線を送ってくる。

 任せた、そう意思を込めて見返せば虎熊の口元が弧を描く。

 俺は向かって右に控える『ウィザード』へ向かう。

 エテルはやや後方、『ウォリアー』を『ロニセラ』の射程内に収める程度の移動だ。

 『ロード』が雄叫びを上げ、3匹それぞれの身体に魔力が纏わりつく。

 突出するタチアを迎撃しようと『ウォリアー』が狙いを定め、持っていた棍棒を振り上げる。が、独特な発砲音が3回響きウォリアーの膝、手首、蟀谷に魔力弾が当たる。

 一発目の膝で体勢を崩し、二発目の手首でタチアに当たる軌道を完全に反らせ、3発目の蟀谷で頭半分を吹き飛ばす。

 事切れた『ウォリアー』は崩れた膝の方向そのままに倒れ、タチアはその前を速度を殺さず駆け抜ける。

 援護に磨きが掛かったエテルの腕に惚れ直しつつ、俺は『ウィザード』に肉薄する。

 距離は60m、二呼吸分。一発目、飛んでくる火玉。腕を楯にしつつそのまま突っ込む。

 魔法攻撃20+【人妖の号令】15+【火矢】=35−108、判定0。無効化。

 黒鐵の鎧になってから爆発的に上がった魔法防御のお陰で気にする事は無い、無傷である事で相手に心理的な圧を掛け次の手を遅らせる。

 残り20m、相手は混乱中。更に一息の間に詰めて、ウォーハンマーをフルスイング。

 武器命中15+39=54−16、判定38。命中判定。

 物理攻撃54−10、判定44。

 横薙ぎのウォーハンマーが『ウィザード』の頭を吹き飛ばす、黒鐵の鎧の補正が『ウィザード』を技無しで殺せるようにしたので探索を楽にしてくれる。

 タチアの方へ目を向ければ、『ロード』と真正面から戦っていた。

 迫りくる鋒を手の甲で逸らしたり、肘でいなしたりと自分の硬さ以外でも防御を成立させている。アレ、おっちゃんの『矢避けの法』か……しっかり親子してるんだなって場違いな感想が脳裏を過る。

 あの動きを見る限り、タチアの攻撃力では『ロード』の物理防御を抜けないのだろう。そのまま『ロード』の攻撃をいなし続け、隙が出来た際に虎熊へ攻撃を繋ぐつもりだと思う。

 そうして観察していると、タチアが『ロード』の攻撃を上に打ち上げた。無防備になった『ロード』の前から立ち位置をずらし、虎熊と入れ替われる。

 虎熊は一呼吸の内に三連撃、苦も無く『ロード』を斬殺する。

 

「……ふむ、良くなったではないかタチア」

 

 虎熊が動きを褒めている、満足では無いが及第点って雰囲気だが此処に来る迄の冷え切った空気より大分柔らかい。

 隊列や陣形を崩さず無理に突っ込まず、連携が可能になるならば対話も叶うかも知れないと思い始めてるっぽいな。

 

「……そう、なのだろうか」

 

 対するタチアは一度完全に否定された影響か、自身の動きに疑問を持っている様子だ。此処では褒めるべきだろう、ダメな事は諌めるが良い所は褒める。成功体験を与えて成長を促す、そうでないと歪んだままになるだろう。

 

「さっきの動きは自信持っていいと思うぞ、自分の攻撃で『ロード』の撃破は無理って判断したんだろ?」

「あ、ああ……しかし騎士としてコレでいいものか」

「独りで勝てぬ相手に挑まねばらんのは騎士では無く勇者の役割じゃ、勝てる者が側に居るなら頼るがいい」

「そう、か……そうだな」

 

 タチアの表情が少し明るさを取り戻した。まだまだ突っ込む癖は抜けきれていないだろうが、それでも初期よりはマシだろう。

 

「それじゃタチア、初のボス撃破を祝してボスドロップの宝箱を開けよ?」

 

 エテルがそう言って宝箱を指差す。タチアは少し戸惑い気味だった。

 

「ボスドロップの宝箱には罠や鍵は付いてないから開けていいぞ」

 

 俺の顔を伺って来たから大丈夫だと太鼓判を押す、それで漸くタチアも行動に出れるようになったらしい。

 

「では、開け!」

 

 気合を入れて宝箱を開けるタチア、中身を確認して何やら首を傾げている。

 

「石……? いや、結晶か?」

 

 宝箱の中から1つの青い物体を取り出す。硝子質の表面が光を反射する宝石にも似た物だ、何処かで見た記憶が有るが物は何だろうか?

 

「タチア、何が出たんだ?」

「いや、私はやはりこう言った物に疎いな見当もつかん。タタラ殿、鑑定を頼めるだろうか」

「お安い御用だ」

 

 出来る事と出来ない事を意識させ、他者に頼れる様に判断させる。あえて俺から協力の確認に行かない事でコレを意識させられたかな?

 頼られたからには仕事をする、タチアの持つ結晶に『鑑定』を掛ける。

 

 アクセサリー『浮遊石』

 速力  5

 移動力 1

 特殊  『飛行』

 

 思わず口元が引き攣る、ピンポイントでタチアの鎧の為に欲しかった物が出て来た。

 この『浮遊石』は装備したユニットの移動を『飛行』へと変える効果が有る。原理は調べないと詳しくは分からないが、どんな重装甲なキャラクターで有ろうと飛ばせた。人工筋肉と軽装甲で仕立てられた現状のタチアの鎧より、より強力な物を作れるだろう。

 尤も、提出した設計図から大幅な変更になる為に都市長から許可を貰えるとは思えないが。

 

「『鑑定』の結果、コイツは『浮遊石』ってアクセサリーなのが分かった」

「あんまり聞かないね?」

「出回って無いからな、コレを装備すると空中に浮けるんだ」

「ふむ、私には必要ないな。自力で飛べる」

「妾も面白そうとは思うが、地に足の着かん状態では剣技にどのような影響が出るか分からんから要らんのじゃ」

「私も要らないかな」

 

 タチア、虎熊、エテルの順で不要と言われる。なら、俺が研究の為に貰っても良いだろうか?

 

「なら、俺が貰って良いか?」

「なんじゃ、タタラは飛びたいのかの?」

「いや、コイツの原理を研究して重装備の重量軽減に活かせないかなって思ってな。今回は見送ると思うが、タチアの鎧に使えば装甲を厚くしたまま翼への負担を減らせそうだしな」

「おお! そんな使い方が!?」

「研究しないと出来るか分からんけどな。でも夢は有るだろ?」

「ああ、とても夢と浪漫の有る物だ!」

 

 少し興奮気味のタチアが、俺に『浮遊石』を渡してくる。重い装備全般に活かせるなら、例えば俺のウォーハンマーの質量を5倍に増やしても重量は軽いままになる。エテルに渡す対物狙撃銃型の魔導銃の重量も軽く出来る。応用は様々だ。

 

「それじゃ、取り敢えず貰う……ってのも変だな。預かっとく」

 

 インベントリに『浮遊石』をしまう。

 

「しかし、此処まで来ても鉄が出んとはの」

 

 虎熊の言葉でタチアの顔がハッとなる、『浮遊石』の影響で主目的が抜けてしまったらしい。まぁ、俺の話で夢を感じたから仕方ないのだろう。

 

「うん、タチアには悪いが」

「いや、待って欲しい! 私はまだ」

「ん? ……ああ、今回は此処までって意味じゃ無いぞ」

 

 俺の言葉に焦ったタチアが静止しようとして来たが、その勘違いに思い至り否定する。自分はまだ進めると言いたいんだろう、実際タチアの防御力ならこのまま進んでも問題は無い。

 

「では、どういう意味なのだろうか?」

「タチアには悪いけど、今日はこのまま26階層以降まで進もうって思ってな」

「26!?」

「え、私の最高階層より先……」

「……無理や無茶が通るのかの?」

 

 俺の言葉に驚きの声を上げるタチア、驚きの感情が出るエテル、疑問を抱いた虎熊でそれぞれ反応が出る。

 タチアはこのまま順当にレベルを上げつつ進めば恐らく『ゴーレム』の攻撃を正面から受けても問題無い程に物理防御が上がる、確かに『ゴーレム』はタフな種族だが弱点もしっかり有る。

 

「無理や無茶にもならない、このままタチアのレベルを上げれば間違いなくこのパーティで一番硬くなるし防御に徹すればダメージは通らなくなる」

「それなら攻撃はどうじゃ? 事前に出るのは『ゴーレム』族だと聞いたが、防御を抜いて攻撃が通るのかの?」

「いける。と言うか……俺の『鑑定』の使い方を戦闘方面に活かすと『ゴーレム』族は余裕だ」

「またタタラ理論なんだ……」

「タタラ殿、具体的に聞いても大丈夫だろうか?」

 

 タチアが俺の使い方に疑問を持ったのだろう。騎士団に情報を上げられて大丈夫か考えるが、都市長と虎熊の反応から知っても再現出来る可能性が低いと判断した。

 

「俺の『鑑定』は集中して使うと物質の情報を詳細に知る事が出来る」

「む、『鑑定』とはそもそもそう言う物では……?」

「あー……タチアは知らんだろうがな、タタラのそれはちょっと特殊なんじゃ。コレばっかりは詳細を聞いても理解出来ん」

「それが先程言っていた『タタラ理論』と?」

「この『ワールウィンド』で詳細に教えられたのが僅か2名、しかも出来るかどうかも分からんと来た」

「……次期工匠長というのは逸脱していないとなれないのですね」

「……かも知れんな」

 

 俺の事をそっちのけで話すタチアと虎熊、続けていいだろうか?

 

「具体的に言うと、俺の『鑑定』は物質の弱点や歪みなんかを認識出来るんだ。コレを応用すると物の破断点……弱点を見付ける事が出来る、尤も『ゴーレム』みたいな無機物限定だけどな」

 

 前世で別の会社の作品ではあるが『モノの死を観る眼』が存在していたが、ソレを鉱物等の無機物に限り出来るようになるのが俺の『鑑定』である。恐らく、俺がクラフターである事から生物には働かないのだと思われる。

 

「それは……タタラ殿も不思議なスキルの使い方をしますな」

 

 タチアはよく分かって無いのだろう、店で俺のクラフトを散々異常と言って居たのが此方では大人しい。

 対し、虎熊は顎に手を当てて考え込んでいる様子だ。

 

「のう、タタラ」

 

 考えがまとまったのか虎熊が話し掛けてくる。

 

「妾にもその『鑑定』の使い方、教えて貰えぬか?」

「え」

 

 虎熊の申出に驚く。

 

「お前、散々ドン引きした『タタラ理論』に触れる気かよ」

「遂に自分でも言うようになったの。出来るかは分からんが、その『鑑定』が出来れば妾でも斬鉄が叶おう」

「……今でも普通に斬れてね?」

「あまり愛刀に無理をさせたく無いんじゃ、此方には打った鍛治士が居らんしの」

 

 刀は繊細な武器だからまぁ、納得は行くか? 前回の探索で鉄鉱石が出てるから、虎熊には武器を依頼出来る資格が有る。今回の探索でミスリルが手に入ったら1本打つか聞いてみるか、まだ製法に付いての資料は届いて無いけど。

 

「……分かった、『鑑定』を取得したら言ってくれ。コツを教える」

「うむ、よしなに頼む」

 

 実際、クラフター以外に俺の『鑑定』が出来たらどうなるのかも気になる。都市長もテストケースが増えて喜ぶだろう。

 

「という訳でタチア、まだレベルが低いお前には無理をさせる……付いて来れるか?」

 

 真っ直ぐ目を見て問い掛ける。

 

「ふふ……私が付いて行くのでは無い、タタラ殿達が私の背に守られるんだ。言ってくれただろう、未来の守護騎士と」

 

 自信を取り戻し始めたのだろう、堂々と俺に返して来るタチア。増長しないように気を付けようとは思うが、成長が見える姿はやはり嬉しい物がある。

 

「取り敢えず、各員スキルの確認をしよう。次に備える事も大事だ」

 

 俺がそう言うと、それぞれがステータスの確認に入る。

 エテルが何かを操作しているのが見えた、タイミングとしては『銃適性』のランクアップ辺りだろうか?

 タチアも操作をしている、彼女のスキル構成は不明なので何を操作しているのか見当もつかない。

 そして虎熊は軽く確認するだけだった、彼女がその剣を振るう回数は少ないのでスキルは上がりにくいだろう。

 俺も自分のスキルを確認する、気付かなかったが『槌適性Ⅳ』が最大レベルになっていた。ランクアップして『槌適性Ⅴ』にする……遂にマスターも視野に入ってきた。次は何を取得するべきか。

 

 それぞれの準備を終えて、階層を進む。タチアは周囲が植物で覆われている景色に驚いている様子。

 

「驚いた、ダンジョンとはこれ程に姿を変えるのか」

「変わるのはモンスターもだ、此処から出るのは『オーク』種だから『ゴブリン』種よりも手強いぞ」

 

 タチアの言葉にそう反して、俺はエテルに目を向ける。

 エテルは1つ頷くと、先行して進んで行く。タチアはやや慌ててその後ろに付いて行く、隊列を乱さなくなっていて良かった。

 俺と虎熊も続き、少し進んだ先でエテルが静止を促す。敵発見という事は、ある意味でエテルのトラウマが出て来たか。

 

「……豚?」

 

 覗き込んだタチアが小さく呟いた。本当、初見だと見た目は可愛くて『オーク』って印象が無いんだよなコイツら。

 

「アレが『オーク』だ。今は無警戒と言うか非戦闘状態だからああだが、敵を見付けたら凄い事になるから気を付けろ」

「……アレの見た目から戦闘出来る印象は無いのじゃ」

「今は、な」

 

 エテルがそっと『ロニセラ』を構える、確実に脳天をぶち抜くつもりだ。

 独特な発射音が響き、30m程先に居た『オーク』の頭を吹き飛ばした。流石に変態する姿を見る気も見せる気も無いらしい。

 

「今回は見れなかったが、コイツらの攻撃方法は主に突進になる」

「豚なのに猪突猛進とはコレ如何に」

「豚も猪を家畜にする為に品種改良したから同じようなもんだろ」

「暴論が過ぎるのう」

 

 探索を再開し、幾つかの分岐路を越えて宝箱を発見。罠は無いが鍵宝箱の為にエテルに任せる、タチアも自ら突っ込んで宝箱の中身を駄目にする事は無くなっている。

 そうして宝箱から取り出された1枚の板。最早見慣れた『オーク材』である。半分死んだ目で俺に『オーク材』を渡してくる。

 

「何故エテルはその板を見てそんな死んだ目をしとるのじゃ?」

「……コイツがオーク材だからじゃないか?」

「「……」」

 

 あまりにも下らない内容の為か、虎熊とタチアが何とも言えない顔をしている。エテルは最初思わず叫んだくらいだから、大分大人しい。

 そうして進んで行くと、進行上に一匹の『オーク』種が居た。

 二足歩行の豚の背には二本のフランベルジュ、前回苦しめられた『オークスレイヤー』である。あまりにもレア種に遭遇するので今日は運が変だと考える。

 

「レア種の『オークスレイヤー』だな」

「……『オーク』の方を殺してそうな名前だな」

「あ、やっぱりそう思うか?」

 

 俺が名前を教えれば、タチアが言葉を返してくる。やっぱり同じ印象を抱くものらしい。

 

「アレも『オーク』種に漏れず防御力は最低の1、デュアルウェポンの影響で2回攻撃をしてくるが……タチアの防御力なら普通に防ぎ切るだろうな」

「そうなのか?」

「前回出会った際に鑑定した時の攻撃力は60、デュアルウェポンは攻撃力を8割に落とすから48になる。多分、頸に致命打入るとかしないとタチアの防御は抜けない」

「確かに、今の私は物理防御が50を越えているからな」

「レベル10未満の初期装備未満で何で50越えられるんですかね……」

 

 多分、『物理防御上昇』と『魔法防御上昇』のスキルは持ってない上でのコレだろう。タチアが取るべきスキルはその2つに加えて『移動力上昇』だろう、戦闘でコイツが最前線に突っ込んで囮になるなら頼りになり過ぎる。

 

「他に気を付ける事は有るだろうか?」

「技で『白刃流し』を使うから回避が無駄に高い、技力も種族特性で回復するから持久戦に強い」

「大分面倒だな……」

 

 情報を与えていく、タチアはその情報から自身の立ち回りを考えているのだろう。まぁ、大分簡単な方法を提示してないのだが。

 

「ちなみに、多分このパーティ限定で簡単に殺す方法は有る」

「そうなのか?」

「エテルが『魅了』使って行動不能にした上でぶった切る」

「……」

 

 俺の言葉でタチアが黙り込んだ。多分、先程迄の情報で構築した戦術が崩れて何も言えないのだろう。

 

「……消耗を抑えて先に進むのはダメだろうか?」

「いいと思うぞ、下手したら此処から15階層までアイツ出てくるし」

 

 レア種な筈の『ゴブリンコマンダー』が出ずっぱりだったのだ、この『オークスレイヤー』もそうなる可能性が有る。

 

「基本は虎熊が斬るのが早いと思うが、タチアも攻撃出来るならしといた方が良いだろうな」

「……私が殺すまで攻撃と『魅了』を繰り返すのはダメだろうか?」

「……エテル、どうだ?」

「魔力は保つからいいよ」

「だそうだ、しっかり経験値貰ってこいタチア」

「感謝する」

 

 階層から考えると『スレイヤー』へのトドメはタチアに相応の経験値を与えるだろう、繰り返せばレベルアップして攻撃力も上がって時間も短縮出来るだろう。

 先に控える『オーガ』は数が少ないが、罠を仕掛けなければ時間が掛かる相手だ。タチアに強くなって貰えれば効率が上がるだろう、先を考えるならエテルに少し無理して貰おう。

 

「それじゃ、始めるか」

「そう言えば、ヤツの体力はどれだけなのだ?」

「前回は80だったな」

「む、なら4回殴れば終るか」

 

 そう言って、タチアが前に進んで行く。『スレイヤー』がタチアを認識した瞬間に変態を始め、スリム体型な『オーク』が出来上がる。此処に来るまでエテルが行動すらさせずに倒してきた為、初めて見た虎熊が驚いた表情をしている。

 興奮して突進しようとした『スレイヤー』だったが、エテルの『魅了』により行動不可になる。そこへタチアが細剣を突き入れてダメージを与える。エテルの『魅了』は強力で『スレイヤー』は抜け出せない。そのまま2回3回と攻撃を繰り返しクリティカルが出たのか『スレイヤー』は倒れ消滅した。

 

「……『オーク』とはあんなに様変わりする種族なのじゃな」

「初見時はエテルが茫然自失としてヤバかったぞ、その後変態する前に殺す事が慈悲って殺し回ったが」

「えぇ……」

「アレはタタラがそう言ったからでしょ!?」

 

 その後に死は救済とか言って淡々と殺したのはお前じゃい。

 そんなやり取りをしつつタチアに近付く。

 

「どうだタチア、続けられそうか?」

「ああ、今のでレベルも上がった、次は10になる」

「なら『スレイヤー』が出たらコレで行くか」

 

 全員が了承したのを見て、今後の方針が固まる。

 そして油断した。

 

「……何かこのパターン多いな」

 

 そこから進み、次の階層へ降りて広場になっている場所。エテルのハンドサインから強敵が出たと判断して壁から覗いた先。

 3匹の『オークスレイヤー』が待ち構えていた。コレ、やっぱり各階層でレア種と毎回戦う流れだな?




タタラの鑑定、無機物限定の『直◯の魔眼』説。
ゲーム効果としては確定でクリティカルと防御無視が発動する感じです。ゴーレム相手のみとタタラは思ってますが、人間相手でも装備破壊が可能なのでそこそこ有用です。

この小説は……

  • 永遠と愛の絆
  • 寛容と一途な愛
  • 信念と翼
  • 鎚を包む花束
  • 誠実と誇り
  • 都市長いっとけ都市長
  • 年増園
  • 太陽の笑顔
  • 星の微笑み
  • 太陽と星
  • 娘さん、親父殿を俺にください
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