既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
大分タチアも精神的に成長して来た感。
3匹の『オークスレイヤー』を相手にした後から、俺達のパーティは余裕を失った。簡単に言えばその後出会う『オーク』が軒並み『オークスレイヤー』になったのだ。レア種とはいったい?
3匹同時はまだタチアを前線に出してターゲットを集中させ、エテルの広範囲『魅了』からの各個撃破で済んだのだ。流石に5匹、6匹飛び越えて10匹になれば形振り構わず全員で対処する羽目にもなる。
出てくる数が数なので流石の俺と虎熊もレベルが上がり、タチアもレベルが10に上がってスキルを1つ追加している。状況的に『物理攻撃上昇』を取得すれば楽になるのだが、当人に後々役立つスキルを聞かれ勧めたのが『移動力上昇』だった。
俺は基本クラフターとしてのスキル構成で取っては居ないのだが、実際近接としては移動力の高さ如何によって攻撃に移る迄の時間が変わる。それに、タチアの壁適性から考えて即座に仲間の前へ出れる移動力は必要になる。それ故のアドバイスだった。
俺からの説明を受けてタチアも納得したのだろう、スキルに『移動力上昇』を取ったと言っていた。因みに、他の案としては『解錠』と『罠解除』だ。前に出たがる性質から宝箱への対応手段を持たせておけば活かせるだろうし、まだ出てないが罠床等のギミックを外せる様にしておけば生来の硬さも相まってかなり有用だろう。エテルもまだ『罠解除』を持っていないのでスキルの被りも無かっただろうしな。
「……タタラ、ちょっといい?」
一通り敵を片付けた時にエテルが声を掛けてきた、大分悩んでいる様子だ。それと、何か翼が大きくなってる。
「さっき『性魔術』のレベルが上がってコンプリートってなったの」
「何故かやっとかって感想が浮かぶな」
二人で探索していた時は爆速でⅣまで上がっていたのでⅤの最大レベル迄の時間は大分掛かった印象だ。
「それと、レベルが20になった」
「おめでとう、というとスキル枠が2つ空いたのか」
「うん、それの話もしたいんだ」
「ふむ……ん? それの話“も”?」
「うん、さっき聞き慣れない啓示が降りてきたの。くらすあっぷって」
「嘘だろ」
クラスアップ、ゲーム時代では主人公やヒロインが一定レベルに達したりイベントを終えたりすると行われる強化だ。プレイヤーキャラにも設定されていたらしいのだが、条件が分からず攻略サイトですらデマが飛び交う物だったのを覚えている。
エテルはレベルが達したから、とは何故か思えなかった。何となく『性魔術』をマスターした事が切っ掛けの1つな気がする。
「ステータスはどうなんだ?」
「体力が20、魔力が30、技力が10それぞれ上がったかな。物理攻撃と物理防御は5、魔法攻撃が15で、魔法防御と速力が20。運は据え置きだけど移動力が1増えて、移動に『飛行』が出てる」
「滅茶苦茶強くなってるなおい」
ステータスが軒並み上がってるのもそうだが、移動力と飛行が地味にエグい。飛行は罠床の無視が出来たり、同じく飛行のユニットのみしか近接戦闘が出来なくなったりとかなり強力な能力だったりする。反面、飛行禁止区域なんていう厄介な結界も存在してはいるが。
移動力を伸ばすにはスキルや装備、または超低確率ドロップの上昇アイテムを使用するしか無い。他の能力に比べても上げ方が限定されるのだ。エテルの移動力が高くなるとその分後に続く俺達も苦労するが、威力偵察等の行動も出来るようになるのは大きい。魔法防御と速力が大きく上がっているので前線でも敵の攻撃を受け難いというのもかなり大きいだろう。
「それで、スキルの相談なんだけど」
「あ、ああ。方針としては3つだな」
最初は『狙撃術』と『不意打ち』。『狙撃術』は遠距離攻撃の命中にボーナスが掛かる。『不意打ち』は攻撃を実行したユニットが攻撃対象のユニットに気付かれていなければダメージとクリティカル率にボーナスが掛かると言うガンナーキャラには有用な組み合わせだ。敵の索敵範囲外から長距離攻撃で倒す、特に固定攻撃力の魔導銃にはかなり助かる物だった。
次に『忍び足』と『隠密』。コレはエテルが斥候としてこの先も活躍出来る組み合わせになる。天然の忍び足とスキルが相乗すればほぼ足音を聞き取れなくなるだろうし、『隠密』もレベルが上がれば相手の隣をすり抜けても気付かれないようになるだろう。その上で『不意打ち』と背面から攻撃した際にダメージが上昇する『闇討ち』を取得すればエテルの攻撃力が爆発的に上昇するだろう。以前悩んだ暗殺者スタイルの完成形がこれだ。
最後は『罠解除』と『不意打ち』。『不意打ち』で火力を上げつつ、『罠解除』で罠宝箱や罠床に対応する。現状ではある意味中途半端ではある組み合わせになるが、罠宝箱との遭遇率が無駄に高いので助かる物ではある。
上記の方針を説明したところ、エテルは『狙撃術』と『不意打ち』を選択した。コレからも『ロニセラ』を使っていきたいのだと、そう言って。
もしかしたら『ロニセラ』の強化、エテルのクラスアップの影響をそのうち受けるかも知れないな。ゲーム時代、ヒロインの専用武器をクラスアップさせる条件にヒロインのクラスアップも含まれていたし。
「エテルはコレで大丈夫そうか、虎熊はどうだ?」
「ふむ、まだスキルに空きは出来とらんな。鑑定はまだ先になりそうじゃ」
自身のステータスを確認した虎熊はそう返してきた。
俺としても虎熊に鑑定を教えるのが楽しみなので、後どれだけ戦えば虎熊のレベルが上がるのか気になる所だ。
階段を降りると、壁は赤く染まり死相が彫り込まれた意匠に変わる。16階層、此処からは敵が『オーガ』族に変わる。
前回来た時は出会わなかった『オーガ』のレア種、『オーガグラップル』と今回は出会うかも知れない。コイツは通常の『オーガ』よりも大分小柄で、体長は170cm半ば程。全身に入墨を施した青白い肌に赤髪といった様相である。速力が通常の『オーガ』よりはるかに高い上、『再生』も通常種を凌駕する『再生Ⅲ』で持久戦になればなる程厄介になる性質を持っている。正直なところ、ボスの『ハイオーガ』よりも強い。
エテルの先導の元、ダンジョンを進む。早速大きくなった翼による飛行を試すエテルは、羽撃く音を最初こそ響かせていたが少しすると殆ど音を出さなくなった。翼により空気を打つ感覚なのかと思ったが、どうも魔法的な作用が発生しているらしい。少し調べさせて貰えればタチアの鎧にも応用が効くかも知れない。
後に続く此方を殆ど置いてけぼりにする移動速度で進むエテルだったが、壁から先を伺ってからハンドサインを送ってきた。早速『オーガ』を見付けたらしい。
追い付き、壁から覗いてみると通常の『オーガ』が一匹確認出来た。
「タタラ殿、あの敵は『オーガ』というやつか?」
「合ってるぞタチア、無駄にしぶとくて無駄に力が強い『オーガ』の通常種だ」
「……なにやら恨みを感じるな」
実際、ソロで潜っていた時に一番厄介だった敵はコイツら『オーガ』だった。真正面からは先ず勝てず、罠を仕掛けて丁寧に殺さなければならなかった。
ベトコン戦法を応用し始めたのもコイツらのしぶとさを体感したからだ。
「……のう、タタラ。まさか前と同じような事をするのではないか?」
「え、やるぞ? そうしないとタチアと虎熊の負担が大分大きいしな」
「……」
虎熊は前回の光景を思い出したのか青褪めている。
「それで、ちょっと思ったんだが」
「な、何をじゃ?」
「落とし穴、すり鉢状にしたらどうかなって。壁面をおろし金みたいにして、登ろうとするとこうズルっと」
「やめい!?」
光景を想像したのか両耳を抑えて涙目な虎熊、有効になりそうなアイデアが欲しいから案を言ったのだが。
「なら、前と同じく突起物付きかな……」
「そもそも、妾が居るから正面から倒せるじゃろ!?」
「でもそうすると虎熊の負担が大きいしな……」
「気遣いの方向音痴!」
虎熊が頭を抱えてしまった。何となく頭を撫でたら複雑そうな顔をされた、振り払われると思ったんだが。
「取り敢えず、一回は普通に『オーガ』と戦ってみるか。タチアと虎熊が普通に何とか出来るから問題無いし」
問題が有るとしたら俺とエテルが純粋に通せる火力を持たない事だろう、本格的に武器の強化を考えなければ。
「じゃ、仕掛けて此方に誘き寄せるね」
「此処からの距離が20m程になったら、私は前に出よう。エテル殿は私の後ろへ」
「分かった、お願いね」
「任されよう」
エテルとタチアのやり取りがスムーズだ、前は作戦を立てる事も出来なかったとの事なので大分良くなったな。
「タチアが受けに回ったのなら、妾は側面から仕掛けるかの」
「ヨヒラ様、お願いします」
「なるべく早く片付ける、上手く敵を捌いて欲しいのじゃ」
「見習いとは言え騎士です、この身を賭しましょう」
タチアと虎熊も上手く作戦を考えている、ダンジョンに入ったばかりの頃はこんな会話が出来るとは思ってなかった。
「タチア、ヤバいと思ったら俺が役割を代わる」
「タタラ殿、それは……」
「回復したらまた入れ替わってくれ、俺でも回復する時間ぐらいは稼げるからな」
「……ああ、私も直ぐに薬を口にして復帰しよう。大丈夫、私は騎士だからな!」
役割を奪うのではなく肩代わりする、しかし直ぐに戻ってくれと言外に伝えようとしたら成功したらしい。実際、タチアの防御力は鎧を着ている俺よりも上だからかなり頼っている。
タチアの緊張も適度に抜けたのを見て、エテルに視線を合わせる。エテルは1つ頷くと、ふわりと浮き飛んでいった。
『オーガ』を『ロニセラ』の射程内ギリギリに収めて、発射。
スキル『不意打ち』の効果が働き『オーガ』の頭皮が大きく抉れた、エテルは『オーガ』が振り向き自身を認めたのを確認した瞬間空中へ浮き、此方に向かって飛んできた。
『オーガ』が見失わないギリギリを見極め、エテルは俺達の所まで『オーガ』を誘導してくる。
目測で『オーガ』が20mの距離まで来た瞬間、タチアが飛び出した。そのまま全身で体当たりをする勢いで細剣を『オーガ』へ突き入れる。騎士として習った対人剣術を捨て、効率的に刃を深く突き立てる攻撃だ。
タチアの突きを腹部に受け、深々と刃が刺さった『オーガ』だがまるで意に介せず得物の棍棒を振り上げた。
タチアは細剣から手を放し『オーガ』の攻撃に備える。振り下ろされた棍棒を交差した腕で受け、その身を沈ませて衝撃を逃がす。
その瞬間飛び出した虎熊が『オーガ』を側面から斬り付ける。一呼吸で3閃、タチアを打った棍棒を持つ腕を輪切りにする。
腕を喪失した痛みで悲鳴を上げる『オーガ』へエテルが追撃、頭部に3発の魔力弾が当たり片目と頬の肉を吹き飛ばした。
俺も虎熊の逆側へ飛び出し、ウォーハンマーを『オーガ』の膝裏へ向けて振るう。所謂膝カックンの原理で体勢を崩す『オーガ』に、痺れが抜けたタチアが向かう。
腹部に突き立ったままの細剣の柄を握り、何度も捻る。内臓を掻き回され千切られた『オーガ』が更に大きな悲鳴を上げた。
膝を崩し痛みで仰け反った体勢の『オーガ』は、虎熊にとって恰好の位置に首を晒した。一閃、虎熊の剣戟が『オーガ』の首を刎ねる。
ドウっと音を立てて倒れる『オーガ』、やがてその肉体は崩れて魔石だけがその場に残る。
一分間にも満たない攻防、かつてエテルと二人では罠に掛ける以外に手が無かった『オーガ』をこれ程に容易く倒せるようになる……やはりパーティを組めるというのは良いな。
「タチア、『オーガ』から一撃貰ってたが大丈夫か?」
「ああ、腕で受けたし地面に衝撃を逃がしたから大丈夫だ」
正面から『オーガ』の攻撃を受けてくれたタチアに声を掛ける、タチアも無事だと答えたので一先ずは安心だ。
「虎熊、トドメをありがとう」
「なに、初手で腕を斬るに留めてしまった妾の不徳よ。タタラそしてエテルも、体勢を崩してくれて助かった」
「ううん、私達はチームだもん。コレくらいは普通だよ、タチアはどう?」
「ああ、私もチームならコレが普通だと……いや」
タチアは言葉を一旦止め、言い直す。
「この最高のチームならコレくらい出来て当然、だと思う」
そう、笑って言った。
「……そうだね、この最高のチームならね!」
エテルはそんなタチアに満面の笑みで返す。
「ああ、この一党であるならば当然よな」
虎熊も笑顔だ。
「タチア、言うようになったじゃないか」
俺も思わず笑ってしまった。ダンジョンに入った時とは完全に別人になっているタチアの成長に、嬉しくなってしまった。
「ふふ、最高の仲間に鍛えられたからな!」
俺達の声が聞こえてなかった姿が嘘のような、そんなタチアの姿が眩しくて。
俺も、彼女へ誇りを持って鎧を仕立て贈れると胸を張れると思えた。
そうして、何匹かの『オーガ』を倒しつつ進み残すは階段を降りるのみとなったタイミングでエテルが待ったを掛けた。
壁から覗き込めば、その先に『オーガ』にしては小柄な影が一つ。
青白い肌に入墨、赤い頭髪。無手に格闘着を纏う鬼。
「やはり出るか、レア種」
「アレが『オーガ』のレア種……小柄だが、圧が凄まじいな」
「小さくなったと言うより、強さが圧縮されたって感じだな。アレで素のステータスは通常種の『オーガ』より上だ」
「まるで、妾の国の鬼が如しじゃの」
「小さくなった分だけ素早そう……」
陰から盗み見て、それぞれ感じた事を口に出す。
タチアを見れば、一つ頷いて来る。
「防御に徹させて貰う、恐らく油断すれば一瞬で崩される」
「危険なポジションで悪い、頼らせて貰う」
「大いに頼ってくれ、私はこのチームの盾だ。皆へ攻撃を向けさせる気はない」
力強い返答だ、気負い過ぎな面も有るが俺達が可能な限り早く『グラップル』を倒せればタチアの負担はそれだけ減る。
時間との勝負になりそうだ。
「ごめん、今回はちょっと射撃が当てられる気がしないや」
「それは仕方ない」
「だから『性魔術』で援護するよ」
「エグい」
射撃が当たらないから性魔術で援護すると言ったエテルに思わず本音が漏れた、正直『魅了』が通れば無防備に出来るから一番強いんじゃないかと思う。
「タタラ、ヤツのステータスは分かるかの?」
「そうだな、ちょっと鑑定掛けてみる」
虎熊の問に『グラップル』へ鑑定を掛け確認する俺。
鬼人族『オーガグラップル』
体力 200/200
魔力 0/0
技力 40/40
物理攻撃 40
物理防御 20+1
魔法攻撃 0
魔法防御 15
速力 40
移動力 4
状態異常 無し
特殊 『肉体再生Ⅲ』
装備 『武道着』
速力が俺と同じ、エテルは圧倒しているが銃の命中補正が低いから必中とは言い難い。
俺は鑑定で得た情報を共有する、虎熊が難しそうな顔をした。
「妾では当てられぬやも知れんの、エテルの『魅了』が頼りじゃ」
「うん、頑張るよ!」
「相手は武器を持たないが、『格闘術』の技を使うだろう。タチアも気を付けてくれ」
「分かった」
全員の意思確認を終え、頷く。エテルが飛び出し『グラップル』へ向けて射撃を行う。肩や頭部を削るが、大したダメージが入っていないのが分かった。移動力と速力はエテルの方が上、ギリギリ届かない距離を見極めて引き撃ちで誘導する。
タチアの身体が緊張で震えてるのが見えた、そっとその肩に手を乗せる。驚いた様に震えるタチアに、大丈夫だと声を掛ける。肩から伝わる緊張が解れたのが解り、エテルが戻るのを待つ。
彼我の距離30m、タチアが早めに飛び出した。
騎士学校仕込みらしき対人剣術を活かして細剣を当てようとするが『グラップル』は余裕を持って避けていく。
そしてタチアへ反撃に移ろうとした『グラップル』へ向けて俺と虎熊で挟み撃ちにする。
武器命中15+40=55−40判定15。回避判定。
ここに来て回避判定、ウォーハンマーが盛大に空振る。対面の虎熊の攻撃も避けられた様子だ。
反撃で『グラップル』の拳が飛んでくる。
命中40−40判定0。回避判定。
眼前に迫った拳をギリギリ避ける。
速い、動きを読み切れない。鼻先を掠めて振り切られた拳を見送り、もう一度攻撃に移ろうとする。
眼前の、いやに整った『グラップル』の顔が狂喜に歪む。タチアより俺へ敵意を向けているのは、単純に同性を排して雌を嬲る為か?
だが、ちょっとこのパーティを舐め過ぎたな?
歯を剥き出しにして嗤っていた『グラップル』の表情から力が抜け呆けた表情になる、エテルの『魅了』が通った証拠だ。
身体が弛緩したのを確認し俺、虎熊、タチアの3人が一気に攻める。
命中判定。
物理攻撃55−21。判定34。
背中から脊椎を砕くようにウォーハンマーで思い切り打ち付ける。虎熊の剣閃が腹を切り裂き腸をぶち撒けさせる。タチアの刺突が喉を貫き頸椎を断った。
普通の生物なら終わる所なのだが、生憎俺達が戦ってるのは『オーガ』だ。
「タチア、防御!」
「っ!?」
俺の言葉に従って咄嗟に防御姿勢を取るタチア。守ったのは頭と心臓、そして心臓を護った左腕に『グラップル』の右腕が突き刺さった。
タチアの左腕から嫌な音が響く、口からうめき声が漏れてるのが聞こえた。その最後の足掻きの後に『グラップル』は消滅した。
「タチア!」
「ふふ、タタラ殿の声が無ければ心臓を貫かれていたか……?」
脂汗を流しながら腕を押さえてタチアが軽口を叩く、骨折を即座に治せるのは癒しの乙女の祝福を受けた傷薬だけ。インベントリから慌てて取り出し、腕の骨を正しい位置に戻して固定した後に薬を飲ませる。
「……キチンと治ったか」
手の開閉を繰り返し、痛みが無いことを確認して添え木を外した。
「頸を刎ねても油断は出来んか、レア種の『オーガ』は侮りがたいな」
「済まない、アレだけしぶといとは思ってなかった」
「ふ、タタラ殿でも見誤る事が有るんだな」
「お前は俺を何だと思ってるんだ……」
向けられる信頼が結構重い気がする。
「御三方は以前ヤツと戦った事は?」
「俺は有るが、正攻法では無かったしな……」
「私は無いかな」
「妾も無いの」
まぁ、エテルと虎熊はな。前回潜ったのが初だし。
「タタラ殿はどのように戦ったので?」
「落とし穴に落として王水とかぶち込んだ」
「……」
いや、外道戦法なのは自覚あるからそんなドン引きした顔をしないでくれ。
「このレア種に関してはタタラの落とし穴の方が良さそうじゃの……」
「油断すると飛び出して来るけどな」
「経験したんだね……」
エテルが苦笑気味に言って来た。あの時はまだダンジョンを構成する物質の理解が低かったせいか深く落とし穴作れなかったから仕方ないだろ。
「コレまでの流れから次の階層にも出そうじゃの」
「むしろ次の階層から出て来る『オーガ』が『グラップル』になってそうだな」
「流石にそれは勘弁願いたいな」
そんな軽口を叩いたのが原因なのか、ボス部屋前まで出会う敵が全て『オーガグラップル』になった。レア種とは。
「流石にキツかったな……」
「タタラ殿の残虐罠が最適解に見えるのは異常事態に思えるな……」
「そもタタラは何故ああまで罠の種類を増やしたのか……」
「最後は完全に遊んでたよね……」
いや、最初は落とし穴で対処していたのだ。途中から地雷を使用し、横から飛び出るパンチ罠を作り、トランポリンで飛ばしてから横パンチからの天井から叩き落としで穴に落とし地雷を起動させるなりして工夫を凝らしたのだ。全部が決まった時などメンバーとハイタッチしたくらいに爽快だった。
農家の対害獣罠として売り出そうかとか、罠の組み合わせでコンテストとかやらないかなとか考えつつ『クラフト』のスキルレベルが上がっていたのでランクアップさせておく。
「タタラ殿、ここのボスについてなのだが」
「ああ、此処は『オーガ』種のボス『ハイオーガ』が出現する。単純に『オーガ』の能力を上げたタイプだが……正直タチアの初期レベル時点での打たれ強さ程度だ」
逆に言えば、初期で『ハイオーガ』レベルの打たれ強さを持っているタチアは何なのか。
「厄介なのは『再生』持ちで持久戦が得意な事、物理攻撃が高い事か」
尤も、レベルが10を越えたタチアの物理防御を越えてダメージを与えられるとも思えないが。
「虎熊の攻撃力なら特に問題無く体力を削れるな」
「『魅了』掛ければ攻撃も封じれるよね」
「通らずともタチアが正面から殴り合えるから削りきれるの」
方針とも言えない脳筋戦法だが、王道とも言える。
真正面に攻撃を受けられる壁を置き、高い火力のメンバーが攻撃に集中する……魔法使いが居ない為全員が物理で殴ってること以外はオーソドックスな戦法である。
「その、以前挑んだ際はどう対処を?」
「落とし穴に落として火薬でボン」
「……タタラ殿、ボス相手にも罠を使ったのか」
「その時は俺とエテルの二人だけだったからな、根本的に火力不足で他に手が無かったんだ」
途中参加の虎熊には見学して貰ったから、俺とエテルで可能な戦法がそれだけだったのだ。
「そういえば、虎熊の攻撃力ってどれくらいなんだ?」
「む? 妾の物理攻撃は現状125なのじゃ」
「そうか……何だそのバ火力」
虎熊のレベルは不明だが、武器込みとは言え120越えは高過ぎる。
「この階層のボス相手でも余裕の有る火力だ、一分以内に倒せる可能性も高い」
「エテル殿が後詰めで攻撃する形になるだろうか?」
「私の『ロニセラ』じゃ火力が不足するから援護かな。『エナジードレイン』系で回復能力の阻害も出来るって何となく分かったから、ちょっと耐えられても大丈夫だよ」
「偶にエテルがこのパーティで一番バグっとる気がするのじゃ……」
分かるぞ虎熊、普通なら『エナジードレイン』で回復能力阻害とか起きないからな。
「雑談も此処までだな、先に進もうか」
そう俺が言うと、全員が真剣な顔で頷く。その様子を見た後、俺も頷いてから扉を開けた。
広場の中には以前と変わらず『ハイオーガ』が一匹、前回との違いは手に持っているのが斧から棍棒に変わっている事か。
鬼人族『ハイオーガ』
体力 300/300
魔力 0/0
技力 30/30
物理攻撃 30+20
物理防御 40
魔法攻撃 0
魔法防御 10
速力 15
移動力 2
状態異常 無し
特殊 『肉体再生』
装備 『鬼鉄の金棒』
鑑定を掛ければ前回とステータスが変わっていない確認が取れた、コレなら真正面から挑んでも大丈夫だ。
微かな羽撃き音と共に飛び出していくエテル、上空から『ロニセラ』を『ハイオーガ』の顔面に向けて発砲する。しかし、表皮を削るだけで頭蓋を砕くには至らない。
その攻撃に対して『ハイオーガ』が激昂し、エテルに向かって武器を振るうが『飛行』状態のエテルには攻撃が届かない。更に苛立ちを募らせた『ハイオーガ』は、エテルに集中する。
ある程度『ハイオーガ』が釣り出せたタイミングでタチアが進み出て『ハイオーガ』の腹部へ細剣を突き入れる。しかし、タチアの物理攻撃では『ハイオーガ』の防御は突き崩せずダメージを与えられない。だが、エテルからタチアにターゲットを切り替えられた。
『ハイオーガ』が今度はタチアに向けて金棒を振るうが、タチアは攻撃を流して直撃を受けない様な防御法を取っている。自身の硬さに依存しない、技術を持って対処する技能を試しているのだろう。そんなタチアの様子に『ハイオーガ』が益々苛立つ。
その姿を見て、俺と虎熊がタチアの後ろから飛び出す。二人で『ハイオーガ』を挟むが、攻撃を開始するのは虎熊だけだ。俺は『ハイオーガ』の後ろに落とし穴を『クラフト』スキルで作製する。虎熊の攻撃でかなりのダメージを受け、気がそちらに向いた瞬間タチアが渾身の体当たりで『ハイオーガ』を押す。体勢を崩した『ハイオーガ』は、そのまま落とし穴に尻が嵌まる格好になった。虎熊は届く様になった『ハイオーガ』の頸に刀を一閃して刎ねる、それに合わせて俺達3人は後ろに跳ぶ。その直後、頸を失った『ハイオーガ』が金棒を横薙ぎに振るって俺達が立っていた場所へ攻撃を行った。
事前に『グラップル』で経験していた最後の足掻き、同じ『オーガ』だからやってくると思ったが予想が当たっていた。今迄は落とし穴の中に落とすと言う安全策を取って居たから経験していなかったが、本来防御力が上回っている筈のタチアの腕を折る様な攻撃力なのだ。どのような補正が有るか分からないので当たらない様にする方がいい。
「危なげなく倒せたな」
消滅していく『ハイオーガ』を見ながら、そんな言葉を溢す。
火力担当としての虎熊が強過ぎると思う、一人で通常攻撃で100近いダメージを出すのはこの階層付近では過剰に近い物が有る。タチアが壁として役割を発揮してくれる為に俺も攻撃に回れて更に撃破迄の時間が早くなっているし、エテルも『魅了』を通したり『エナジードレイン』したりと援護が強い。
エテルの2人ではアレだけ苦戦していたのが嘘のようだ。
「ねぇ、タタラ! ボスドロップ宝箱出たよ!」
少し離れた位置からエテルに呼ばれ、視線を向ける。
豪奢な作りの宝箱の横で、エテルが手を振っているのが見えた。そのたびに主張の強い御山が揺れていて目の保養になる……いかん、そろそろイチャつきたくなってきた。タチアが居るから控えようとエテルから精気譲渡を受けていないので俺の中でエテルが不足し始めている。
「なら、20階層初踏破記念でタチアに開けてもらうか」
そう言いながら宝箱の位置に向かう、タチアは戸惑っているようだがエテルと虎熊に背中を押されて宝箱の前に移動させられていた。
「では、開け!」
意を決して宝箱を開けるタチア、中から出て来たのは1本の剣だった。
「刃が無い?」
「エストックだな、刺突に特化した両手剣だ」
俺の説明を聞いたタチアがなるほどと頷いて、少しエストックを試した。俺が調整した細剣よりも様になっているようで、何度か刺突の型を試した後に満足そうな顔で笑った。
「良ければコレを使わせてもらえないだろうか?」
「俺は使えないし構わないが、2人は?」
「私も構わないよ」
「妾もじゃ」
エテルと虎熊も了承を出し、エストックはタチアが使う事となった。細剣にしては長物を使う癖が付いていたが、どうやら最適な武器を見付けられたらしい。
しかし、鉄製の武具は何を頼むつもりなのだろう?
「じゃ、取り敢えず各員スキルの確認をして次に進もうか」
俺の言葉で全員がステータスを確認する。大きな動きは無い様子だが、虎熊が何か操作してるのが見えた。『剣適性』辺りがランクアップしたのかも知れない。
一通り終わり、階層を降りる。壁面が変わり、綺麗なアイボリー色に包まれる。タチアは先程までの赤黒い悪趣味な壁と大きく変わった事に驚いている様子だ。
「此処からは出現するモンスターが『トロール』種にかわる、肉体再生と精気回復を持ってるが『オーガ』に比べれば打たれ弱いな」
「出る順番が違うような気がするな……」
死に難さで上位にくる『オーガ』種の後に劣化版とも言える『トロール』を配置しているのは確かに順番が違うように感じるが、『トロール』は『オーガ』と違い集団戦を可能とする種族だ。その点が『オーガ』よりも厄介で、次に配置されている理由だろう。尤も、エテルがヘッドショットで殺せるので難易度が下がりまくっているのだが。
「この流れじゃと『トロール』のレア種も出て来る可能性が高いかの?」
「いや、流石に『トロール』のレア種は……」
実はゲーム時代に『トロール』のレア種は出現率がかなり低く設定されていた。『トロール』のレア種は通常種に比べて圧倒的に弱く、一部のステータスは『ゴブリン』並だったりする。
しかし、コイツはレアアイテムを盗めたりドロップしたりとかなり有益な存在なのだ。
見た目は青い愛嬌の有る二足歩行の河馬に似ている、数多くのプレイヤーが著作権を叫んだとの噂が有るどっかの谷の妖精にそっくりなヤツだ。
ただコイツ、逃げ足が凄まじく速い。プレイヤーのキャラを認識した瞬間に逃げ出し、画面外に消えると撤退する。更に『魅了』を筆頭に状態異常耐性が凄まじい高さらしく、ゲーム時代でコイツに対しては行動不能に出来たことが無い。
幸運の妖精なんて二つ名をプレイヤーから送られて居たが、倒したり盗んだり出来る事自体が幸運の上で成り立つ敵だ。
そんな事を説明した直後、壁から通路の先を覗いたエテルが凄く明るい雰囲気になった。まさかと思い先を確認すると、居たのだ。『トロール』のレア種、『妖精谷のムゥ
……改めて思うと名前からしてアウトだなアイツ。
「すご、可愛い……可愛い!」
やや興奮気味のエテルを見て、タチアが驚いている。そりゃ、『オーク』の非戦闘状態に反応しなかった姿の後だもんな……戸惑うのも分かる。
「エテル、彼奴に盗むを頼む」
「ふぇ?」
結構マジな声で言い放った俺に、エテルは戸惑う。このゲームで活用する場面が多いステータス上昇アイテムを確実に盗める相手だ、必ず手にしなければ。
「アイツはかなりのレアアイテムを持っている、集めれば戦力拡充に役立つんだ」
「タタラ、お主目が血走ってて少々怖いぞ?」
「あのタタラ殿をして彼処まで言わしめるとは……」
俺の反応に虎熊とタチアは諌めようとするが、俺はとても気にしてられない。アイツから盗れるアイテムはそれだけ有用なのだ。
「え、うん……頑張ってみる」
やや戸惑いつつ、エテルは了承した。『盗む』のスキルレベルはまだ低いかも知れないが、エテルなら盗めると信じている。
そんな事をしつつ、エテルが『ムゥ
ステータスアップアイテムを一発で盗れるエテルの運よ。
エテルは『ムゥ
「あの河馬畜生、生かしてはおけぬ……」
「落ち着けタタラ、怨霊みたいな姿になるのはやめるのじゃ」
「タタラ殿のエテル殿好きは極まってるな……」
「良いじゃろ? 妾の推し達じゃぞ」
「貴女も貴女で極まってますね……」
俺から漏れ出す殺気に対して言葉を向けてくる虎熊、そんな虎熊に対してタチアも何か言っているが気にしてられない。
特に暴れる事も無くされるがままだった『ムゥ
あまりの速さに戸惑っていると、エテルは此方に手を振って来た。
「なんか、追加で貰えた!」
その手には別の色の石、ステータスアップアイテムを一度に2個手に入れられるとは思わなかった。
まさか、エテルの無害さに追加報酬が発生した……? いや、でも盗んでるしな。
「なんで追加で貰えたんだろうな」
「エテルの巨峰に感謝したんじゃないかの?」
「コロス」
「落ち着けタタラ殿!?」
河馬畜生が去って行った方向へ向かおうとしたらタチアに止められた。結構本気で力を入れているらしく、身体が中々動かない。
少しキョトンとしたエテルが、苦笑いをした後に俺を正面から抱き締めてくる。そのまま大きくなった翼でも俺を包み込み、そっと唇へキスをして来た。
「大丈夫、私はタタラ専用だよ」
ちょっと悪戯っぽくそう言ったエテルを見て、落ち着きを取り戻す。鎧の影響でエテルをしっかり感じられなかったが、今はキスの感触だけで十分だ。
「……ヨヒラ殿、何か苦い物は持っていませんか?」
「生憎持ち合わせは無いの。この砂糖すら置き去りにする甘味、癖になる」
「……最早手遅れでしたか」
タチアと虎熊が何やらやり取りをしているみたいだが、俺はエテルに集中していてあまり聞いていなかった。
そうして、25階層迄俺達は進み続ける。流石に階層の『トロール』全てが『ムゥ
……それでも大分異常事態だが。
そうして、俺としては久し振りに26階層を越えた探索が始まった。
レア種の見た目に既視感が有っても気の所為です()
この小説は……
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永遠と愛の絆
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寛容と一途な愛
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信念と翼
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鎚を包む花束
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誠実と誇り
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都市長いっとけ都市長
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年増園
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太陽の笑顔
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星の微笑み
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太陽と星
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娘さん、親父殿を俺にください