※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント探索パート最終。



翼は見届ける。

 正直な話をしよう、現状の俺は『鑑定』を使用しても『ミスリルゴーレム』相手は多少手間取る。

 と言うのも、俺では『ミスリルゴーレム』の部位破壊が出来ないからだ。

 攻撃力不足か、それともミスリルの特性かは不明だが『鑑定』を使用した上で殴って何処も破壊できなかった。

 確実に防御を抜いている事は分かったのだが、部位破壊条件迄は満たせない。転生してから発生するようになった為にゲーム知識は役に立たず、おっちゃん達も出来るかどうかは運だとこぼしていた。条件が不明故に、俺に出来るのは外装を破壊して体力を削り切る事だけだ。

 それでも虎熊達に比べて圧倒的に早いのだが、結局破損が著しい為にドロップが少なくなる。理想は一撃で頭部の一文字を消す事だが、届かせる為の手が無い。

 そんな状況に思わずため息が漏れれば、タチアが気に掛けて来た。

 

「タタラ殿、やはり『ミスリルゴーレム』相手は荷が重いだろうか?」

「いや、大した苦戦をする訳じゃ無いんだ。ただ、俺の『鑑定』込みでもアイツの部位破壊を成功した事が無くてな……」

 

 俺の懸念に考え込むタチア。

 

「『ゴーレム』種は部位破壊をした方が良いのだろうか?」

「脚一本丸々破壊とかだと、ドロップするアイテムが良くなったりするな。理想としては、本体そのままで額の一文字を消す事なんだと思う」

「ふむ……だったら『オーガ』の時のように落とし穴を仕掛けては?」

「……え?」

 

 今迄想定して無かった事をタチアは言い出した。

 

「落とし穴に嵌め、頭を此方の立ち位置に近付けて削ればほぼ本体を無傷に出来るのではと思ったのだが」

「……それだ!」

 

 思わず大声が出る、『オーガ』と違い攻撃をほぼ避けられるから失念していた。そうだ、確かに『ゴーレム』相手でも落とし穴を仕掛けていいじゃないか。

 

「タチア、頼みが有る」

「な、なんだろうか?」

「一発だけで良い、あの『ミスリルゴーレム』の攻撃を誘発してくれ」

 

 我ながら無茶な頼みだとは思うが、明確な隙を作らないと足元にいきなり大穴を空けるなんてのは無理だ。『ゴーレム』種の動きでも一拍の時間が必要になる。

 

「……避けず受ければいいだろうか?」

「そうしてくれれば助かるが、無理なら避けていい」

「……タタラ殿、覚えてる限りで『ミスリルゴーレム』の攻撃力は?」

「80だな、『ゴーレム』の攻防は同じだと思って貰って良い」

「ふむ……いいだろう、一発耐えて見せる」

「助かる」

 

 タチアの物理防御は50を越えている、とは言えあの巨大な拳が迫るのは純粋に恐怖だろう。それを強いるのは心苦しいが、此処は頼るしかない。

 

「では、成功した暁には私の鎧に使うミスリルを少し増やして貰おう」

「内部機構で大部分使うが、外装の一部も魔鉄との併用にする。多少の軽量化も済むし」

「では、それで!」

 

 そう言ったタチアは『ミスリルゴーレム』に駆け出した。まだ作戦を伝えて居ないのだが、回り込む挙動を取っているのは俺を極力視界から外す為だろう。本当、大きく成長したなタチアは。

 

「なら、期待に応えないとな」

 

 俺もタチアとは逆方向に走る、自然と『ミスリルゴーレム』の背後に回る格好になり視界から完全に外れている。

 インベントリから魔石を一つ取り出す。大きさは気にしなくていい、『オーガ』の時程の深さは要らないのだから。

 『ミスリルゴーレム』が腕を振り上げ、勢い良くタチアに拳を叩き付ける。重量は減っているが、その分速度が上がり破壊力を増しているのが分かるがタチアは問題無く受けきる。

 その瞬間に、俺は『ミスリルゴーレム』の足元を『クラフト』で変化させる。液状化させた床に足を取られ、『ミスリルゴーレム』が盛大に倒れ込む。殴り付けた腕を下にして、倒れた『ミスリルゴーレム』は直ぐに起き上がれない様子だ。

 

 傀儡族『ミスリルゴーレム』

 体力   400/400

 魔力   0/0

 技力   0/0

 物理攻撃 80

 物理防御 80

 魔法攻撃 0

 魔法防御 80

 速力   30

 移動力  3

 状態異常 『転倒』

 特殊能力 無し

 装備   無し

 

 そんな『ミスリルゴーレム』の額に俺は『鑑定』を向ける。最初の一文字の削りやすい箇所を見極め、ウォーハンマーでこそぎ落とす。

 武器命中15+40−30判定55。命中判定。

 攻撃55−80致命打判定55×2=110。即死。

 倒れたままの『ミスリルゴーレム』は痙攣するかのように震え、その後崩れた。残ったのは大量のミスリルインゴット、ざっと見て2kg程だろうか?

 

「タチア、よく耐えた!」

「ふふ、私の頑丈さなら当然。しかし、タタラ殿も流石の手際だな」

「まぁな、こと『ゴーレム』退治は殆どプロみたいなもんだ」

 

 ミスリルインゴットをインベントリに回収しつつ、タチアとハイタッチを交わす。置いてけぼりを食らったエテルと虎熊がやや不満気な顔で歩いて来た。

 

「……二人で楽しそうだね?」

「……適材適所とは言え、少々寂しいのう」

 

 無事に倒せたとは言え、俺とタチアで盛り上がって先行してしまったのは確かにパーティとしては問題だ。

 

「悪い、興奮し過ぎた」

「私も済まない、御二人の意見も聞くべきだった」

 

 素直に謝る俺とタチアを見て、エテルと虎熊は一拍置いて溜息を吐いた。

 

「素直に謝ってくれるなら許すけど、次はちゃんと私達にも相談してよね?」

「『ゴーレム』に有効なタタラを欠く事になるのはよくない、妾が補助に入れるようにするのじゃ」

 

 そんな注意をするだけに留めて、二人も最後には笑った。

 俺達の対『ゴーレム』戦術が新たに確立され、効率よく『ゴーレム』狩りが行われた。効率は良かったのだ……敵が『ミスリルゴーレム』に偏らなければ。

 まさか丸々2階層が『ミスリルゴーレム』で埋め尽くされるとは……今回の探索の偏りを舐めていた。

 おかげで俺もレベルが上がり29と虎熊の一つ下迄上がった。何なら『クラフトⅤ』と『鑑定Ⅴ』のスキルレベルがマスター一歩手前まで上がってる。

 気付けば28階層、階段の前で俺達は項垂れていた。

 

「……ミスリルが20kgは集まってるんだが、どう思う?」

「……異常事態だね」

「……市場に流したら値崩れ必至で経済がガタつくのう」

「……都市長様が違う理由でタタラ殿に胃を破壊されるのか」

「「それな」」

「俺はそんな頻繁に都市長の胃を破壊して無いぞ……」

 

 カラムスさん曰く作品で発狂させてるらしいが。

 しかし、このミスリルどうするかな……魔法金属の昇華錬成の実験にするか? それより虎熊の都市内で使う防具を作るのも有りか、タチアの方は浮遊石の検証後じゃないと本格的に弄れないし。

 ま、外に出た後で集まって相談するか。

 

「この階層で『スチールゴーレム』出なかったらまた別の日に潜らないとな」

 

 そうあり得なくも無さそうな事態に思わず愚痴を溢す、パーティの面々は揃って苦笑している。

 

「個人的にはとても楽しかったし、レベルアップも出来てありがたかったが……流石に疲れるなコレは」

「妾もそう頻繁に此処に来れる訳でもないのじゃ、次は手伝ってやれぬかも知れん」

「はは……ここ何階層かお仕事無くてごめんなさい」

 

 タチアは初の本格的な探索を楽しんだらしい。

 虎熊は次も手伝いたそうだが、立場的に頻繁に都市長宅から離れられないと言う。

 エテルは26階層から役に立たなくなっているのを気に病んでるようだ。

 仕事が無いと言うか、エテルが盗むを実行する前に俺とタチアで『ミスリルゴーレム』を転ばせて即死させてるせいで間に合って無いだけなのだが。

 

「せめて『アイアンゴーレム』が出てくれたらな……」

 

 鉄のインゴットが増えれば鋼に変える事が出来るし、更に鋼から形状記憶合金に変えることも出来る。今回タチアのおかげ確立した戦法の影響でインゴット20個分は確保出来る見込みが出たので、『スチール』でも『アイアン』でも遭遇したらかなり確保できるのだ。

 

「あ、次の『ゴーレム』だよ。また銀色っぽいね」

 

 先行するエテルの言葉が聞こえた、虎熊は『鑑定』の経験値稼ぎをする為その横で『ゴーレム』へ向けて使用している。

 

「た、タタラ! す、『スチール』が出たのじゃ!!」

「何ぃ!?」

 

 虎熊の叫びに思い切り反応し、壁から先を覗き込む。

 視界の先にはエテルの言った銀色というよりも鈍色に光を反射する一体の『ゴーレム』が居た。即座に『鑑定』を掛けてステータスを見る。

 

 傀儡族『スチールゴーレム』

 体力   300/300

 魔力   0/0

 技力   0/0

 物理攻撃 70

 物理防御 70

 魔法攻撃 0

 魔法防御 20

 速力   15

 移動力  3

 状態異常 無し

 特殊能力 無し

 装備   無し

 

 『鑑定』の結果、まごうことなく『スチールゴーレム』だと確定した。思わず口角が上がる、漸く見付けた獲物に気が逸る。

 

「……タチア、攻撃力70だが頼めるか?」

「『ミスリル』よりは低いな、任されよう」

「……ねぇ、タタラ。私が先に行って『盗む』試してもいい?」

 

 エテルの控え目な主張を聞き、タチアに視線を向ける。少し思考を巡らせた後、一つ頷く。それを見て俺はエテルに視線を再び向ける。

 

「ああ、大丈夫だ。お願いするよ」

「うん、偶に使わないと錆びちゃうからね」

 

 俺の返事に指をストレッチしながら戯けた言葉を送ってくるエテル、エテルの幸運なら鋼のインゴットを盗れるだろうという打算も有るが気に病ませるのが嫌なのも大きい。

 

「それじゃ、行くね」

「スキル実行の後はすぐ私の後ろへ、エテル殿でも不運に襲われる事も有るからな」

 

 エテルの行動後、直ぐにカバー出来るようにタチアが後に続くで付いていく。俺も少し遅れて動き出す、途中でタチアと逆方向に動き出して様子を伺う。エテルが初手で『盗む』を使用、その手に恐らくインゴットを手にしたのが見えた。

 此処で俺とタチアの予想外が発生する、エテルが『スチールゴーレム』の視界を身体を使って遮ったのだ。一瞬混乱するタチアだが、俺が指差す方向に移動を促すと疑問を持ちながら方向転換した。そして、エテルは『スチールゴーレム』を誘導してタチアが向かう方向に身体を向けさせる。

 エテルは『ゴーレム』族の視力の悪さを利用して、タチアと俺が配置に着く時間を『盗む』をした後で稼いでいるのだ。斥候役として仕事が無かった中で考えた貢献方法なのだろう、俺の嫁が健気で愛おしい。

 俺とタチアが配置に付き、エテルに合図を送った瞬間にその翼を大きく羽撃かせて上昇した。遠距離攻撃を持たない者が『飛行』持ちに攻撃出来ない理由がコレである。長柄の得物を使おうと、遥か頭上を飛ばれたら攻撃等出来ないのだ。

 盛大に空振った『スチールゴーレム』の迫る拳に対して、タチアは冷静にその手を添わせる。おっちゃん譲りの『矢除け法』により更に拳を流された『スチールゴーレム』。その足元を『クラフト』で液状化してやれば、盛大にバランスを崩して仰向けに倒れた。

 そんな『スチールゴーレム』の額に手を伸ばす。

 命中43−15判定43。命中判定。

 物理攻撃43−70致命打判定43×2=86。即死判定。

 親指で『スチールゴーレム』の一文字を削ってやれば、痙攣しやがて消滅した。残ったのは、10kgの鋼のインゴット。

 

「おっしゃぁぁぁぁあ!!」

 

 思わず雄叫びを上げてしまった。が、俺の反応から鋼が手に入った事が分かったのだろう他の面々も喝采を上げた。

 全員でハイタッチを交わし、労い合う。

 タチアの鎧の素材はコレで集まったのだ。

 

「お疲れ様だな、漸く揃ったぞ!」

「鉄も鋼も出なくて大変だったよね、ミスリルはいっぱいだけど!」

「くふふふ、妾もレベルアップ出来るとは思わなかったのじゃ! それに、新しい知見も得れたしの!」

 

 開放感から笑って感想を言い合う俺とエテルの虎熊。

 そんな中、タチアは静かな表情だった。

 

「私も大きく成長出来たと思う、皆が見捨て無かったおかげだ……ありがとう」

「此方こそ、一番危ないポジションに立ってくれてありがとうだタチア」

 

 感謝を述べるタチアに、此方も感謝を返す。タチアには俺達も助けられているのだ、エテルと虎熊の二人もタチアに感謝の言葉を送っている。

 

「さて、目標は達成したし……帰るか」

 

 俺のその言葉に、エテルと虎熊は賛成の意を示す。しかし、タチアは挙手をして発言をする。

 

「済まない、皆……このままボスを倒しに行かないか?」

 

 その言葉に、パーティ全員の目が集まる。

 功名に焦っている訳でも無く、何かしらの理由を含んでいそうな雰囲気だ。

 

「ふむ、妾は構わんが……理由は何じゃ?」

 

 虎熊が代表して声を上げる。俺としても正当な理由が有るなら構わないし、エテルは俺の意見に乗る雰囲気だ。

 

「現状、ボスドロップで手に入った物は誰かの役に立つ物だ」

 

 確かに、タチアの使っているエストックもそうだし俺が預かっている『浮遊石』もそう。

 

「ならば、次のボスでも同じ事が起こる確率は高いと思う」

「成る程、今回も同じ事が起こり得るとタチアは思うわけか」

「ああ、多分に希望的観測は含むがな」

 

 確かに希望的観測である事は否めない。しかし、今回の探索では有り得ない程の運の偏りが発生している。

 そこまで分の悪い賭けと言う訳でも無いし、大きなマイナスが発生する事でも無い。ならば挑んでも良いだろう。

 

「俺も賛成するよ」

「ん、タタラが大丈夫なら私もいいよ」

「賛成多数、タチアの案を採用じゃな」

 

 俺達が賛意を示した事で、タチアは嬉しそうに笑った。

 おっちゃん、この姿を見たら嬉しがるかな。そうであって欲しいな。

 

「それじゃあ、道中の『ゴーレム』も片付けつつ進もうか」

 

 30階層へ降りるまでに『ロック』1、『アイアン』1、『スチール』2、『ミスリル』5の『ゴーレム』を片付けた。何度目かになるかは忘れたが、レア種とは?

 追加で入った素材で何か作ろうかと相談したら、パーティメンバー共通のアクセサリーを頼まれた。ミスリルで全員分のイヤリングでも作るかな、なんて思いつつボス部屋の扉の前に立つ。

 中央に円形のハンドルが付いている扉で、バネやらクランクやらでゴテゴテしている。

 

「タタラ殿、この先のボスに付いて聞いていいだろうか?」

 

 タチアのその言葉で、虎熊が反応した。

 

「そう言えば以前、28階層までしか潜ってないとか言っておったよなタタラ?」

「……そう言えば初めて会った日にそんな話はしたな」

 

 よく覚えている物だ、俺もその話したのを言われるまで忘れていたくらいなのに。

 

「実は潜った深さだけなら50階層迄は行ってるんだ」

「……お主が何をしてても気にしない事にする」

 

 因みに、一緒に潜ったのは『天使長』だったりする。俺もまだ出来た物の試験をしている最中だった為、おっちゃんやカラムスさんに相談しようとしていたら偶然降りてきて一緒して貰った。

 ゲーム時代、面倒なギミックで倒すのに時間が掛かった50階層のクソボスを剣を数回振っただけで殺す姿は怖気すら覚えた。

 尤も、見惚れる程の剣技を褒めたら大型犬みたいな感じになったので恐怖はどっかに行ったが。

 

「この先に居るのは『オリハルコンゴーレム』だ。物理攻撃と物理防御、そして魔法防御が100を誇る全長9mのクソ硬い敵だな」

 

 ゲーム時代、コイツに挑む上で対策を十全に練らなければ全滅させられる程の難敵だった。原作ヒロインの一人にとってはストーリーボスも兼ねている為か、他の階層ボスよりもやや手強く調整にされている。

 ゲーム時代の最適解は原作主人公と僧侶ヒロインに『コアブレイカー』を装備させ、他の面々で支援しながら殴る事だった。運が良いと1ターンで2/3の体力を削れるので、かなり楽になる。

 

「……タタラの得意分野かの?」

「初めて挑んだ時には『鑑定』を戦闘で使えなかった時だがな。代わりに、作ったアイテムでの実験対象にしたが」

「ボス相手に実験するのお主くらいじゃぞ……」

 

 仕方ないだろ、地上で実験するにはヤベェ代物だったんだから。

 

「その時はどのように戦ったのだ?」

「『液化魔石燃料』ぶん投げて燃やした」

「……燃えるのか?」

「流石に全身の外装溶かして内部構造曝すくらいしか無理だったな、瓶一本じゃ『ミスリルゴーレム』くらいまでしか倒せなかった」

「瓶一本で『オリハルコンゴーレム』を行動不能に出来れば十分じゃろ」

 

 虎熊がやや投げやりに言ってくる。因みにこの話を都市長にしたら、それ以上の研究は禁止にされた。実験中に俺が死ぬ可能性と家ごと研究資料が焼失する可能性が高過ぎるとの事だった。

 まぁ、量を間違えてバーラル夫妻の遺体を広場ごと焼き払った実績も有るしな。飛行機の燃料みたいに活かせないかと使い道は模索中だ。

 

「今回も使っとくか?」

「却下じゃ」

「真っ当に攻略をしよう」

 

 俺の質問に即座に虎熊とタチアが反対する、エテルも苦笑気味で反対派なのが分かった。

 

「なら、タチアが変わらず最前衛で壁役だな」

「物理攻撃100は少々痛そうだが、やってみせよう」

「虎熊は『鑑定』の練習に徹するか?」

「いや、妾も攻撃に入ろう。少ないがダメージは通せるからの」

「……この時点で純粋に物理攻撃をアレに通せるの異常だな」

「異常の塊のお主がそれを言うのかのぅ」

 

 虎熊にジト目で言われた、確かに他の奴がやれない事をやってるのは俺も同じではあるが。

 虎熊は溜息を一つ吐いて続きを促す。

 

「エテルは現状攻撃手段が無い、可能なら『盗む』の実行とタチアが崩れそうな時は撹乱に入ってくれ」

「うん、分かった」

 

 『ロニセラ』は『ゴーレム』の外装を貫ける目処が立たない、攻撃魔法も補正込みで100越えの上級は覚えれはしそうだが此処では無理だ。エテルはこの先なら活躍が出来るのだが、今は我慢して貰おう……いや、ボス部屋の広さから考えてギリギリ大丈夫か?

 

「少し方針を変えたい」

 

 俺の言葉にメンバー全員が視線を向けてくる。俺はエテルに対して、向き合う。

 

「エテル、『エリンジウム』を初手で使ってくれるか?」

「え、アレを?」

 

 ダウンサイジングが出来てない初期型の魔導加速砲、現状防御さえされなければ純粋に『オリハルコンゴーレム』の防御を貫ける最大火力だ。

 エテルの『銃適性』の成長、『狙撃』の取得で命中率は上がっている。『エリンジウム』の速力の低下もエテル自身の速力が上がっているので相殺も叶う筈だ。必要と判断したらエテルも『精密射撃』を使用するだろう。

 

「可能なら頭、難しそうなら胸部辺りを狙って欲しい」

「……狭くて使うのが危ないって話じゃ無いの?」

「ボス部屋の中は広い空間になってるから、シールドの後ろならそこまで影響は無いと思う」

 

 エテルは少し考え込むようにして、頷く。

 

「分かった、やるよ」

「任せた」

 

 真剣な目を向けてくるエテルに、俺も全幅の信頼を乗せて返す。

 早速準備に入る、先ずは横になっても大丈夫なように専用のマットを敷く。コレは以前伏射した際にエテルが『胸が潰れて苦しい』と言った為に作ったマットで、エテルの胸が収まるスペースが空けられている。最初はスライム素材で最適な形になるマットを作ろうとしたのだが感触が不評で、エテルの伏射姿勢から型を取りスポンジ系のやや硬めの物を採用している。

 尚、型を取ってる最中に興奮してしまい行為に発展。試作品の一つがプレイマットに変わったのは完全な余談である。

 伏せたエテルがインベントリから『エリンジウム』を取り出す。前回から大きな変更は無いが、支持架がマットの分だけ大きくなっている。更に弾頭も取り出す、16×118mmの真鍮代わりに魔鉄を芯に据えた特殊弾頭である。

 弾頭を装填し、魔力を送るエテル。銃身に6枚の魔法陣が展開され、シールド部からバリアフィールドが展開される。エテルのすぐ後ろにタチア、虎熊の順番で隠れさせる。

 準備が完了したのを見て、ボス部屋の扉を開ける。両開きの扉の先に、佇む巨兵が一体。

 黄金にも似た光を放つ白金の金属オリハルコンで全身を作られた鉄巨人、『オリハルコンゴーレム』が部屋の中央に居た。

 扉が開く最中に確認し、エテルの背後に走る。俺がフィールド内に入った瞬間、エテルが銃爪を引く。

 閃光と衝撃、遅れて轟音が響く。屋内での使用が初めてで意識をして無かったが、音速を突破した際に発生する衝撃波と音は俺達パーティメンバーの鼓膜に凄まじいダメージを叩き出した。

 俺達の悲鳴すら掻き消す音と、それが生み出す破壊力は凄まじかった。

 頭部ではなく胸部、その中央を穿った弾丸は破壊を余す事無く撒き散らしその内部に空気の爆発を誘発して『オリハルコンゴーレム』の装甲を内側から弾き飛ばした。

 一部始終を何とか見届けた俺は、膝から崩れた『オリハルコンゴーレム』に『鑑定』を掛ける。

 

 傀儡族『オリハルコンゴーレム』

 体力   200/700

 魔力   0/0

 技力   50/50

 物理攻撃 100

 物理防御 100(−80)

 魔法攻撃 0

 魔法防御 100(−80)

 速力   25

 移動力  2

 状態異常 『装甲欠損:防御低下』『スタン』

 特殊能力 『飛翔拳』

 装備   無し

 

 『貫通Ⅲ』の発動とクリティカル判定、更に『不意打ち』スキルが影響して500ものダメージを叩き出している。追加効果としてか、装甲が弾き飛ばされた影響で防御が8割低下してスタンまで掛かってる。

 畳み掛けるなら今しか無い、

 

「悪い、先に行く!」

 

 耳を押さえる面々に聞こえるかも分からないが声を掛けて飛び出す。……アクセサリーは防音・遮音と念話機能付けよう、この音で耳やられてもいいように。

 黒鐵の噴射機構を起動し『オリハルコンゴーレム』に肉薄する、距離は60m程。こんな距離で対物狙撃銃など使うものでは無いなと反省する。

 二拍目、残った20mを詰めて『鑑定』を深く使う。動かない的になっている『オリハルコンゴーレム』にはそのまま攻撃が入る。

 物理攻撃58−20致命打判定58×2=116。防御無視。

 『オリハルコンゴーレム』の脇腹を盛大に吹き飛ばすが、まだ体力を削り切れて居ない。俺の攻撃後に『スタン』から抜け出した『オリハルコンゴーレム』がエテルに拳を向ける。その肘から勢い良く風と煙が噴射し、その腕が射出された。

 元祖スーパーロボットの代名詞ロケットパンチこと『飛翔拳』である。『ゴーレム』種の一部が所持していて、実は味方にした『ゴーレム』も使える。その最大射程は5だ。

 

「タチア、トドメを!」

「!?」

 

 俺の指示に戸惑いを見せるが、意を決してエストックに力を込めて突き入れる。エテルが『エリンジウム』で穿った穴にそのまま刃を通し、そのまま刃から全力で魔力を放出する。

 過去作から国に仕える騎士達に共通する技で、過去の主人公の中にも使い手が居た魔法剣『バーストエッジ』である。消費する魔力により追加ダメージを入れるタイプで、タチアなら多分全魔力を注ぐ筈。

 目論見通りにタチアの魔力が『オリハルコンゴーレム』の中から漏れ出し、やがて大爆発を引き起こした。最低値150の魔法攻撃だ、流石に耐えられないだろ。

 

「た、タタラ殿!? エテル殿は!?」

「いや、大丈夫だ。焦らないで入口の方を見てみ」

「え?」

 

 俺に言われてエテルが伏射姿勢を取っていた入口方向を見るタチア、そこには此方へ向けて手を振るエテルと大分手前で地面に突き刺さった『オリハルコンゴーレム』の腕が有った。

 

「……無事?」

「あの特殊攻撃の『飛翔拳』は50mしか届かない、エテルの居る入口まで60mだから大丈夫なんだ」

「……焦った」

 

 溜息を吐いたタチアの姿に思わず笑う。仲間を心配する姿は騎士と言うよりも彼女本人のそれだろう、素の姿は何とも思い遣りの有る少女だ。

 笑う俺にジト目を向けていたタチアだが、やがて釣られて笑い出す。そんな俺達の下にエテルと虎熊も集まった。

 

「良い一撃だったぞタチア!」

「お疲れ様、格好良かったよ」

 

 一番にタチアの剣技を褒める虎熊と、トドメを決めた姿を褒めるエテル。そんな称賛に恥ずかしくなったのか頬を染めて目を逸らすタチア。

 

「早期に決着が着いたのはタチアが俺のすぐ後に来てくれたからだ、ありがとうタチア」

 

 俺もしっかりと礼を言う、タチアはいよいよタジタジと言った姿になりそんな様子に俺達はまた笑う。遂にはタチアはむくれてしまい、3人で謝る事態になる。

 そんな和気藹々とした雰囲気の中で、ボスドロップ宝箱が出現した。

 

「タチアかエテルかな、今回開ける権利が有るのは」

 

 俺の言葉に虎熊は頷き、エテルは焦り顔だ。そしてタチアは挙手して発言する。

 

「それならエテル殿を推そう。初手でアレだけの痛手を与えたのなら立派な第一勲功だろう」

 

 その言葉にエテルは慌てる、何とか辞退しようかと言葉を探しているようだがトドメを刺したタチアが推すのならここはエテルだろう。虎熊と目配せし、二人でエテルの背を押して宝箱の前に進ませる。オロオロとしていたエテルだが、遂には諦めて宝箱を開く。

 

「……指輪?」

 

 宝箱から取り出したのは二つの指輪、正しく言うのなら一組のペアリングだ。

 前世のゲームでも見た記憶が無い物だったから、エテルには悪いが横から『鑑定』を掛けさせて貰う。

 

 装飾具『悠久の誓い(エンゲージリンク)

 特殊効果『リンゲージ』

 この装飾具を分け合って身に着けた者は生命を共有する。

 死が二人を分かつまで。或いは、此方より彼方まで。 

 装備を外す事は出来ない。

 

 ……呪いの装備だろうか?

 

「効果はそこそこだが、呪われてるのかコレ」

「え、そうなの?」

「ペアで着けた者同士の生命を共有するって出てる。一度装備したら外れ無いってさ」

「……」

 

 ただ、この装備は装備欄のアクセサリー枠を埋める事は無いようだ。

 

「……タタラ、お願いが有るんだけどいい?」

「ん、何だ?」

 

 この装備に付いて確認をしていると、エテルが声を掛けてくる。

 

「この指輪、私と一緒に嵌めて欲しいの」

 

 何処か不安気な表情で、そう言って来た。生命を共有する指輪、生涯外せない物。前に言っていた『俺が死んだら後追いする』の言葉通りになるコレは、彼女にとって渡りに船なのだろうか。

 

「……指輪なら、俺が作ったやつにして欲しい」

 

 コレは俺の我儘だ。出来ればそういう指輪(・・・・・・)は俺の手で作りたかった。

 

「うん、それも欲しいよ? けど、私はここでこの指輪を手に入れた運命を信じたい」

「……」

 

 能力から考えれば体力を俺が肩代わり出来る可能性が高い、彼女の生存率を上げるうえでは最適だ。邪魔をするのは俺のプライド、それだけだ。そして、愛した女の願いを前に詰まらないプライドなど捨ててしまえ。

 

「……分かった。片方を貸してくれ」

 

 右手を差し出してエテルを促す、エテルは嬉しそうに指輪を渡して来た。俺はそれを受取り、エテルの肩を掴む。

 俺が作った指輪を贈れなかった意趣返しだ、とことんやってやる。

 

「エテル・ネル=バーラルさん」

「は、はい!」

「俺と、結婚して下さい」

 

 真っ直ぐ、エテルの目を見て言う。大きな声は出さない……いや、出せない。緊張で半ば掠れてすらいた。

 エテルは目を大きく見開き、やがてポロポロと涙を流しながら笑顔で答えてくる。

 

「はい。不束者ですが、宜しくお願いします」

 

 その答えを聞いて、安堵が湧いてくる。視界がぼやけてエテルの顔がちゃんと見えない、どうやら俺も泣いているらしい。

 

「左手、良いか?」

「うん」

 

 エテルの左手を取り、薬指に『悠久の誓い(エンゲージリンク)』を嵌める。最初はエテルの細い指に合わなかったが、指輪が光ったと思ったらピッタリになっていた。

 指輪の嵌まった左手を胸元に運び、エテルは幸せそうに笑って涙を流す。こんなに喜んでくれるなら、自分から進んで指輪を贈れば良かったと後悔する。

 俺も残った『悠久の誓い(エンゲージリンク)』を嵌めようとしたらエテルに奪われた。

 

「タタラ・ジュロンさん」

「……はい」

「貴方を愛しています。コレからもずっと、一緒に居て下さい」

 

 エテルも真っ直ぐに俺の目を見て告白して来る。

 一切の茶化しも湧かず、俺は真っ直ぐに答えを返す。

 

「はい。貴女と歩む権利を俺に下さい」

「はい!」

 

 エテルがさっきの俺と同じ様に左手へ指輪を嵌める。その瞬間、俺とエテルの何かが繋がった感覚が走る。

 恐らく、これが『リンゲージ』の効果。感覚としては体力、技力、魔力の統合と共有だろう。実質2人分を使用出来ると言うのは大きいだろうが、それよりも何か深く一つになった感覚がこそばゆい。

 

「幾久しく、宜しくお願いね。タタラ」

「死が二人を分かつまで。いや、此方より彼方まで一緒に居るよ」

 

 思い返せば、この言葉は結婚の宣誓に載る一文だったな。

 そのままエテルを抱き寄せて、唇を重ねる。性的な目的の無い、愛情表現としてのキス。10秒程続けた後に離れて、互いの顔を見て笑う。

 そんな俺達に、力強い拍手が贈られる。

 驚いてそちらを見ると、大興奮と言った具合の虎熊が思い切り拍手していた。

 隣に立つタチアは顔を真赤にして口元を押さえている。羞恥で限界だが邪魔をしてはいけないとそうしているのだろう。

 

「二人の婚約の誓い、この虎熊四葩が見届けた! その永遠の愛の証明、妾が受け持とう! 二人の仲を裂く者は妾の敵、万難を排しその幸せが続くように尽力しよう!!」

「わ、私も! 見習いとは言え騎士であるこのタチア、タタラ・ジュロンとエテル・ネル=バーラルの婚約を見届けたり! 二人の道、我が騎士の誇りに賭けて護ろう!!」

 

 力強く、頼りになる仲間達の宣言に驚く。そして思い切り笑った。身近な二人が幸せを願ってくれる事が途轍もなく嬉しい。

 

「さて、良いものも見れたし……地上に帰るかの?」

 

 ある程度落ち着いて、虎熊がそう切り出す。素材も集まり、ボスドロップも取れた。なら、もうダンジョンから出ても問題は無い。

 

「そうだな、帰るか」

 

 俺も答え、エテルとタチアも頷いている。

 それならとインベントリから『転移結晶』を取り出して、全員で集まる。俺の左手はエテルと恋人繋ぎ状態だ。結晶を握る右手に、虎熊とタチアが捕まる。そして魔法を発動させ、俺達は地上へと帰還した。




なんかちゃんとイチャ付いてないなってストレスが溜まった。
反省はしている。後悔はない。

この小説は……

  • 永遠と愛の絆
  • 寛容と一途な愛
  • 信念と翼
  • 鎚を包む花束
  • 誠実と誇り
  • 都市長いっとけ都市長
  • 年増園
  • 太陽の笑顔
  • 星の微笑み
  • 太陽と星
  • 娘さん、親父殿を俺にください
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