既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
浴室に入るとマットの上で身を伏せたエテルが待っていた。
なんて事は無く、一人で落ち着いて入浴を楽しむ。途中で虎熊を連れたエテルが乱入してくる事もなく、湯船に浸かっている最中は本気で気が抜けて鼻歌まで歌う始末だ。
集中して書類仕事をした後はこうしてゆっくりと湯船に浸かるに限る、湯に疲れが溶け出していくような心地よさだ。入浴剤を買ってこようかなと悩むが、虎熊の実家に頼んで檜を交易してもらって檜風呂を作るのもアリか。
浴槽の縁に頭を乗せて身体を伸ばす。髪が湯に入らないように気を使うのが面倒だが、結んだ髪を時々エテルが猫のように突いて遊んでいたりするので切れない。思えば、普段から子供っぽい所が有るなアイツ。
肩まで湯に浸かること20分、しっかりと温まった上で風呂から出る。明日はダンジョンに潜るまではダルマさんに斧を渡すくらいしか用事は無いので、風呂掃除をするかな。人が増えたから湯船の汚れが少し早い、変態なら美少女の出汁とか言って飲みそうだが俺にはそんな趣味も性癖も無い。
部屋に戻り、眠りにつくまでに少し思考を回す。虎熊の装備は胸甲、篭手、脚甲の3点と上から外套を被せようと思う。動きの阻害を防ぐ為にスリットをやや多めにしつつ、不意を突かれても大丈夫なようにオリハルコンの銀糸を編んだ布で防御力を確保する。序に身体も軽く隠して不埒な視線から守ろう、アイツ何だか無防備だし。
そして、問題はエテルだ。身体が成長()してしまい、今迄の防具が使えなくなってしまった。諸々を仕立て直そうとしたが、小細工でどうにかなる範囲を越えていた。上にばかり気を取られていたが、下もしっかりと成長していてとても元気な子供を生んでくれそうになってた。いかん、心のオヤジが顔を出してきやがった。下手にこういった事を考えてると夢の中にエテルが侵入してくるのだ、冗談でも比喩でも無く夢魔の力を使って無意識に。
性魔術取得前でレベルアップが無かった日はそれなりの頻度で夢の中に入って来ていた、おそらく夢魔としての必須栄養素を得る為の貴重な機会だったのだろう。
ちなみに、夢の中だとエテルは変態性が増す。例えると学校の教室で他の生徒に見られながらとか、首輪着けて深夜の散歩なんて状況でプレイした事がある。後は俺が暴漢役でエテルを無理矢理襲っている場面とか。
俺が分身して複数プレイはまだ経験がないが多分やらない。無理矢理なヤツは最後エテルが本気で泣きだして二度とやらなかったし、下手したら母親の事を思い出してる可能性が有る。複数とかはモロにトラウマだろうし絶対に無いだろう……俺が触手系モンスターにされてってプレイはやらされそうだが。
運良く考え事がフラグになる事は無く、グッスリと眠れた。
何時頃来るのか分からないが、朝に取りに来るようおっちゃんには伝えたから直ぐにダルマさんが斧を取りに来るだろう。起き抜けで上手く動かない頭をそのままに、工房にダルマさんの斧を取りインベントリに入れる。
洗面所で顔を洗う前に浴室に入り浴槽の水を抜く……洗顔が面倒なのでそのままシャワーを浴びる事にした。寝汗を流して頭もサッパリさせた後は台所で朝食の用意だ、昨日は鎧の調整その他で一日家に居たので食材は殆ど無い。しまったな、なんて思いながら取り敢えずスクランブルエッグとトーストは用意する。昨日と同じポタージュスープのインスタントを取り出して味噌と出汁の素が有れば毎日具を変えた味噌汁を出せるのに、なんて考えつつ用意を進める。残念ながらサラダは無い、野菜が全滅していた。午前中は少し家の事をやらせてもらおうかな、食材もそうだが備品を少し買い足さないとダメそうだ。
「む、昨日に続き早いのじゃなタタラ」
背後からそう声を掛けられた。振り向けば平服に着替えた虎熊が愛刀を片手に立っている、汗は見えないからコレから素振りなのだろう。
「おはよう、虎熊。今日も素振りか?」
「うむ、おはよう。身体の調子を軽く見るだけじゃ、ダンジョンに潜るしの」
あまり汗をかく気は無さそうだ、虎熊の活躍は基本『オーガ』種以降になるからそれまではどうして貰おうかな。
「……そういえば、エテルは一緒に寝たのか?」
「うむ、昨日も遅くまで話しておったぞ。互いに話すことが尽きなかったのじゃ」
「そうか、まぁアイツが楽しいならいいか」
同性の友達がずっと居なかったし、泊まりで遊ぶなんて事も無かっただろうからずっと燥いでるな。
「妾の部屋で寝ておるから後で呼びに行くとよい……妾の部屋でいたすのは避けて欲しいの」
「ヤるかよ……」
その場合はエテルの自室か俺の部屋に行くわ。
そんな虎熊とのやり取りをして、エテルを起こしに虎熊の自室へ。許可は貰っているので扉をノックして呼び掛けるのだが、中からは全く人の気配がしない。疑問に思って中を覗くも、寝具の上はもぬけの殻である。
「……エテル?」
純粋に疑問が湧いた。虎熊が起きたのはつい先程、着替えの時間を考えても15分は掛かっていないだろう。仮に起きたとして、自室に向かったのだろうか? しかし、寝台の近くにはエテルの服が置きっ放しだ。今日着る予定で置いておいた物らしく、汚れや着用後の皺は確認出来ない。
すぐ隣のエテルの自室を見ても、内部は無人だ。ベッドの上に鎮座する、バーラル邸から持ち帰って俺が手直ししたぬいぐるみが寂しそうにちょこんと座っていた。
「あいつ、何処に……ん?」
エテルの自室から離れ、頭を掻きながら視線を落としたら何かが光って見えた。場所は虎熊に貸した自室の前、そこから点々と続いている。
「なんだコレ……液体?」
やや粘性の有る液体で、指で軽く掬って眼前に運んで分かるのは透明度が高めというくらいだ。思わず『鑑定』を掛けて詳細を見る。
体液『夢魔の愛液』
分泌元:エテル・ネル=バーラル
「……」
どう反応するべきなんだ、これ。続いている先を見ると俺の部屋である。2日で限界だったか……その割には夢には来なかったみたいだが。
恐る恐る自室に近寄ると、完全に閉めた筈の扉が僅かに開いていて部屋からくぐもった声が聞こえて来た。そっと隙間から覗くと、エテルは居た。
ベッドの上、俺の枕に顔を埋めてパジャマを半分脱ぎ捨てて盛大に自慰行為に励んでいる。右手をパジャマの裾から内に突っ込み自ら乳房を揉み、左手は秘処へ伸び指を挿入している。相当溜まっていたのか、その手は激しく動いている。
「んぁ、たたら! たたらぁ!」
枕に埋めたままエテルが呼んだ俺の名前はくぐもって聞こえてくる、深く呼吸をして俺の匂いを嗅ぎ更にトリップしている様子だ。遂にはパジャマが邪魔になったらしく、盛大に脱ぎ捨てて仰向けになる。M字に開脚して更に指の動きを激しくする左手と、右手で自ら持ち上げて乳首を舐め始めた。都市長とカラムスさんが憤死しそうな光景である。
そんな光景を見続けている俺の下半身はとうに臨戦態勢である、こうなるのが分かってて見る選択をしたら俺が取る行動は決まっている。ドアを開け、部屋の中へ入る。
自らを慰める事に集中していたエテルの虚ろな目が俺へ向けられる。すると自ら舐めていた乳首から口を離して嬉しそうに俺を見た。
「たたら! えへ、たたらだ!」
恰好の淫靡さに反した子供のような滑舌だ、完全に発情している。
「ねぇ、しよ! えっち、いっぱいしようよ! きもちいいこと、ね?」
体勢を変え、自ら両手で入口を拡げて奥を俺に見せてくる。止めどなく溢れ出す愛液が、彼女の期待をそのまま伝えてくるようだ。
かくいう俺も限界だった。つかつかとエテルに近付き、自らズボンを突き破らんと勃ち上がった肉棒を取り出しエテルの膣口に容赦なく挿入する。最奥まで濡れたエテルは滑らかに俺を迎え入れ、その刺激でエテルは仰け反った。
腰に絡んだ脚で多少激しく動いても抜ける事が無い事を確認し、容赦なく腰を動かした。今更ながら気付いたのだが、俺の陰嚢の中身は生成された精子を吐き出したくて仕方なかったらしい。
普通、何もしなければ男性の陰嚢は3日程で満杯になる。そこから時間が経つと精子は劣化し、黄ばみ臭いがキツくなる……コレが大体2週間程。たった2日でどうにかなるのか、本来なら多少溜まっているだけだ。しかし、エテルに鍛えられた『性魔術』スキルを所持する俺は違う。というのも、エテルの性欲に対応する為にスキルが精子の生成量と生成速度を増加させる方向に深化しているのだ。陰嚢はとうの昔に満杯であり、僅かな切っ掛けで理性がキレるところまで来ていたのだ。
結果、僅か2日で俺の理性はエテルの身体に完全敗北した。
エテルが仰け反った拍子に突き出されるように迫ったその乳房、クラスアップの影響で更に迫力を増したそれの片方の先端にしゃぶりつく。それだけで悲鳴に似た嬌声を上げるエテル、絶頂を迎えたらしく膣内がうねり咄嗟に奥へ腰を突き入れた俺も射精する。内部を全て精液で満たさんばかりに大量の射精、背中に鳥肌が立つ程の快感が走り腰が抜けそうになる。
拙いな、まだ精子が溜まったままだ。硬度を保った状態の愚息を見て、身体を震わせるエテルを見やり……そのまま腰を動かした。治まりが付かない愚息から、全てとは言わないが何割かエテルの中に出しておかないとそのうち狂って虎熊さえ対象に見てしまいそうだ。
それは駄目だ、あいつを選ばなかった分際でいざとなればその身体を貪るなど誠意に欠ける。あいつが俺をそういう対象として見てくれている事は分かっているし、あいつの性格からそうなっても赦してくれるだろうというのも知ってる。それでも駄目だ、こんなのは自己満足なのは分かっているが……あいつを都合の良い相手だと思いたくない。
そんな事を考えながら、エテルの細い腰を掴み勢い良く腰を打ち付ける。衝撃で揺れる乳房の柔らかさに興奮が増しつつ、エテルの身体を起こして俺の上に座らせる体勢を取らせる。対面座位となって俺の胸板に押し付けられるエテルの乳房が柔らかく潰れ、それでなお硬さを伝える先端の感触に心地良さを覚える。
エテルは脱力気味だが俺の首に腕を回して身体を支えている、その顔は涙と涎でぐちゃぐちゃでヒドイ状態だ。下から突き上げるたびに動物の鳴き声のような音を口から漏らし、自分の快楽を欲して腰を動かしている。他の男には見せない、俺にしか見せないエテルの雌の姿。そんな姿に独占欲が湧いてくる。再び限界が近付き、エテルの耳元で言う。
「ほら、どうして欲しい? 言ってみろよ」
乱暴な口調で問えば、エテルは背中を震わせて答える。
「わたしの、たたらせんようあかちゃんべやにせいしちょうだい! いっぱい、いっぱいちょうだい!!」
何処でそんな語彙を身に着けてくるのかよく分からないが、常のエテルでは聞けないそんな言葉に俺の支配欲は満たされて満足感が湧く。
「ならくれてやるよ、しっかりと孕めよエテル!」
俺も俺でどうしてこんな事を言っているのだろう。
再びガッツリと腰を抑え、エテルの体重分も含めた深い結合状態で射精する。エテルもまた絶頂したらしく、腰を反らせて受け入れている。
今、孕めよとか言ったけど本当に着床しそうだな。『天使長』の言葉だとエテルは俺相手に孕み易い状態なのに前は成長にエネルギーを割かれていて、今は何時デキてもおかしくない状態だし。身体を少しの間震わせたエテルは、力が抜けて俺に寄りかかって来た。
「お疲れ様、エテル」
頭を撫でながらそんな労いの言葉を言えば、エテルは擽ったそうに笑った。
一分ほど続いた射精を終えた逸物をエテルから抜けば、ゴポリと音が聞こえそうな量がエテルの膣口から溢れて来た。エテルはそんな俺の精液を勿体ない等と言いながら掬って舐めている。こういう所が夢魔だよな、なんて思いつつ汚したシーツやカバーなんかを回収して洗濯室に持ち込もうと考える。2人して部屋から出た時に、違和感を感じた。床に溢れていたエテルの体液が広がっている気がする。いや、正しくは量が増えている……?
「どうしたの?」
「いや、なんでもない……」
エテルの疑問に答えながら、俺はその場を後にする。掃除をしなきゃなって思考と、出来れば考えないようにする増えた理由。
洗濯室にシーツその他を放り込み、溜まっていた洗濯物を処理する為に洗濯機を回す。その流れでシャワーを浴びようと思ったら先客が居た。おそらく虎熊が使用しているのだろう、型稽古の後で軽く汗を流していると思われる。シャワーの音に紛れてすすり泣くような声が聞こえる気がするが気の所為だと思おう。
今度シャワー室を増設しよう等と考えつつ、エテルはそのまま虎熊と一緒に入らせて俺は湯で濡らしたタオルを固く絞って身体を拭く。特に結合した部分は臭いが凄いので念入りに拭くと、滑りが取れる感触がする。拭き終わったタオルを洗濯籠に放り込み、リビングに戻る。まだ誰も居なかった。
十五分くらいしてエテルと虎熊が二人一緒にリビングに入ってきた、2人共髪をキチンと乾かしていない様子なので後でドライヤーを掛けてやるかな。虎熊の目がやや腫れてるように見えたり、肌の火照りが違う意味合いに感じるのは無視しよう。
「「「いただきます」」」
揃って挨拶をし、朝食を開始。エテルに午前中は家の事をやりたいから食材の買い物を頼んだら軽く了承を貰える。虎熊には洗濯物を干して貰おうと頼んだら、家の事は普段家政婦に任せていたので未体験だと言われた。本人が目をキラキラさせているので、教えてみようと思った。エテルは買い物を終えたら教えると意気込んでいて、楽し気な空気が流れている。
タチアはまだ来る気配が無いので、俺は風呂掃除を開始する。先ずは洗剤を浴槽に吹き付ける、専用の自作スプレーで洗剤を泡状にして浴槽に吹き付ける。前世の物と違うのはこの洗剤、魔法効果として『浄化』『洗浄』『殺菌』『滅菌』『分解(弱)』など考えられるだけの魔法効果を持つように作られている事か。直ぐに汚れが浮いて来るので、シャワーで流しながらスポンジで擦って念入りに洗い落とす。
この洗剤、強力なのはいいが残っていると肌をボロボロにするのだ。以前、ダンジョンでモンスターに間違えて使用した際は皮膚が剥がれ落ちて肉が見えていた。幸い、40℃以上の湯を掛けると簡単に粘度が消えるので熱めのお湯を掛ければ洗い落とせるのだ。エテルはもし家に押し入られて襲われたのならコレをぶっ掛けろと言い含めている、当人は威力を知らないので疑問を持っていたが。
浴槽を洗い、浴室の鏡や棚そして床も洗い終われば見事に水垢を流され綺麗になった状態だ。浴槽には水を溜めておき、夜には温めて湯に浸かれるようにしておく。
浴室から出たがまだおっちゃんやダルマさん、更に言えばタチアも来てない。仕方ないので部屋の前の廊下を拭き掃除する事にした。フローリングに先ずは洗剤を撒きモップで伸ばしていく。次に濡れた状態で拭き掃除、その後乾いた布で拭く。コレだけでは体液で汚れた部分がやや目立つので、速乾性の高いオリジナルのワックスを使用する。5分も有れば自然に乾くので、斑無く綺麗にワックスを塗っていく。『クラフト』スキルの応用でこの手の作業が非常に得意な我が身、こういう所で地味に恩恵を感じるのが何故か楽しい。虎熊とエテルに部屋の前をワックス掛けした事を伝えて、5分は通らないように言い含める。二人からは軽い返事が返って来た、聞き分けのいいヤツは大好きだよ。
次は台所でも掃除するかと油汚れ用の洗剤を用意しようとしたら、来客を告げるチャイムが鳴った。
「朝早くから悪いわね、タタラ」
出迎えれば、堂々と腕を組み額に青筋立てた都市長が立っていた。その背後には気不味そうなおっちゃんとダルマさん、そして状況が分かってない様子のタチアが居た。
「えっと、おはようございます……おっちゃんとダルマさんにタチアは分かるけど都市長はなんで?」
本当に疑問を持って言ったら、おっちゃんが『こいつマジか』みたいな目を向けて来た。おっちゃんが事情を知っててその反応、何だかまた特許とか開発関係でやらかしたみたいな。
「ふふ、変な事を宣うのねタタラ。昨夜送ってきた貴方のコレ、キチンと説明をして貰えるかしら?」
そう言って都市長がインベントリから取り出したのはレポートらしい紙束、つまりアレは『浮遊石』の研究レポートか。
「ああ、すみません。ソレについてですね」
「ええ、コレについてよ」
今にも爆発しそうな都市長に対して、報告漏れがあった事を思い出す。インベントリからソレを取り出して、都市長に渡す。突然の行動に都市長は疑問に思ったのか、首を傾げた後に見る見る内に顔色を変えていった。
「完成したのを報告漏れしてましたね、性能が劣るので『浮身石』って名付けました」
「……タタラ、説明。ちょっと家に上げなさい」
そう言われ押し切られた。ダルマさん、スゲェ面倒そうな顔してる……おっちゃんと古くからパーティ組んでるから都市長の事昔から知ってそうだしな。気質が分かるならこんな反応もするか。
「……で、タタラ。何で昨日出した報告書では理論提唱で止まってて、翌朝説明求めに来たら現物が有るのよ」
来訪者のうち、タチアを欠いた3人を工房に案内して話しを聞くことにした。質問というか詰問に感じる語調で、更には審問みたいな雰囲気が漂ってる。
「いや、失敗前提で挑戦したら成功しちゃったと言うか」
「これ、特大魔石3個か霊核が必要的な予測されてたわよね?」
「魔石は錬金で作れますし、そうやって特大の用意したら後は流れで」
「流れで成功させるんじゃ無いわよ。それで、再現性は?」
「俺の工房並の設備が有れば可能です、無い状態でやるなら余程の天才に限るんじゃないですかね?」
「貴方は出来るの?」
「作った張本人が出来なくてどうするんですか」
「そうね、余程の天才だったわね貴方」
都市長は額に手を当ててため息を吐いている。コイツには特殊なスキルは必要無くて、『クラフト』時に多積層魔法陣さえ組めるのなら誰でも作れる代物だ。
「一応、作業時のデータは作業台の記録装置に残ってるので提出はできますよ」
「一応預かるわ、再現出来るかしらね……」
俺から作業台のデータと、更に完成品に付いての資料を受け取る都市長。俺の作業台の設計データ持って帰って『ハイエンドクラスモデル』とか言って高額で売ってるのに、同じ物を使っても『作れません』とか言われたって流石に知らんよ。多積層魔法陣とか概念の説明はしているんだから、そこから先は自分で学んでくれ。
「それで、報告書に書いて有った事についてよ」
「え、不備でも有りました? そもそもアレって概念説明用の一次報告書なんですけど」
「『浮身石』についてじゃないわよ。これよ、コレ!」
そう言って報告書のあるページに書かれた但し書きが指差される。書いてあるのは超巨大魔力炉の制作についてだ。
「ああ、この落書きですか。これが?」
「落書きですか、これが? じゃないわよ! 何よこの莫大な素材要求と想定されるエネルギー産出量、あんたコレで何をするつもりよ!?」
「いや、単なる落書きと言うか本当にネタで書いた物ですし。そもそも作れない前提ですよコレ」
「当たり前でしょ、こんなの作って設置したら本国から独立の意思ありとか言われて『ワールウィンド』に軍が差し向けられるわよ!」
「……え、マジ?」
ちょっとこの世界のエネルギー関連事業について甘く見すぎていた。この魔力炉で生み出せるのは1秒間で一般家庭3000世帯を賄える程、『ワールウィンド』程の大きさの都市ならば4基も作ればエネルギー問題が無くなる。医療機関どころか工場や軍事施設も含めて全て賄える程度には出力が高い。
伝えられているカタログスペックだけの判断だが、現行の主力戦艦に搭載されている全動力を合わせた物よりも強力である。作るのが殆ど無理であると判断出来る材料の数を無視すれば、何世代も技術が進歩する。
そんな物をいち地方都市の、一般……でもないが一人のクラフターが設計して理論を確立してしまった訳だ。本国から危険視されるのも仕方ないのだろう……いや、戦闘力が並のクラフター相手にそんな警戒するのだろうか?
この世界、神殺しとかやらかすヤツ居るのに?
「一応、絶対に作れない物として本国には報告を入れて提出済みよ。向こうの研究所が何かしら反応するかも知れないけれど、反逆の意思は無いって声明を出してないとどうなるか分からないわ」
「あ、そうか。特許申請って『ワールウィンド』内で済まないんだっけ」
「当たり前でしょ、本国でも貴方の特許が『再現性無い』とか阿鼻叫喚の地獄絵図招いてクレーム入れられる私を舐めんじゃ無いわよ」
「いや、本当にすみません」
「分かればいいのよ」
怒り心頭、と雰囲気は出しているが都市長は実際そんなに怒って無いだろう。俺の迂闊さを叱らないと立場的に赦されないからこそ直接言いに来た次第だろう。
「なんというか、俺はこの魔力炉とその本質に関わる理由から文句言われるのかと」
「……何よ、その本質って」
「いや、コレとどの詰まり霊核を人工的に作り上げる事にも繋がるのでそっちを突っ込まれるのかと」
「……は?」
え、何その反応。
「待ちなさい、タタラ。コレ、人工霊核の作成ってどういう意味よ?」
「え、コレのプロセス見て霊核と同じだって気付きませんでしたか?」
「……嘘でしょ」
理論提唱の項を読み、資料と見比べ……都市長は両手で顔を覆った。
「何でついで感覚で霊核の核心に触れてるのよコレ……」
「魔力万有引力の法則とでも言うべきですかね、多分人間が自然に生きていて魔力を回復させる理由にコレ有ると思いますよ」
身体を休ませると身体機能を低下させて、体内に魔力を溜めるように生物は出来ているのだろう。キャパシティが決まっていて、それ以上は余剰として破棄して自然魔力に還元してると思われる。神から力を分譲された聖人やら勇者の内側に霊核が出来るのも、そうしてキャパシティが強化されて魔力を留めておける器官として新たに作られたからとも推察できる。
「コレ、本国の研究所も気付いたかしらね……」
「都市長が気付いて無いなら向こうも無理では?」
「私を過大評価し過ぎよ、向こうは国内でも最上級の頭脳を集めた奴等よ?」
「その割には、都市長とは違って俺の技術を再現出来てないみたいですけどね」
少なくとも『ワールウィンド』で最高と謳われる『クラフト』の技術を持っていた都市長は、劣化品と卑下するが俺の魔鉄を自力で再現した唯一の人なのだ。特許の使用料の発生は王立の研究所だろうが避けられない、ならば俺に都市長以外から特許使用料を振り込まれないのはおかしいのだ。
「……はぁ、分かったわよ。今日中にこの報告書と一緒に向こうの所長に話して牽制してみるわ」
何処か苦笑いする都市長に、俺は少し安堵した。
「ところで、万有引力の法則って何かしら?」
なんか物凄いやぶ蛇突いた気がする。そういえば、中等部迄で万有引力の法則ってやってなかったな?
「あー……人伝に聞いた理論なので説明は雑ですよ?」
必殺、人伝の話。転生云々なんて言えねぇよ。まぁ、相手は人ではなくお喋り好きの『天使長』という設定にさせて貰うけどな。
俺は万有引力の法則を概念的な触りだけ話して、そこから魔力にも同じ性質が存在している事を『浮遊石』を解析している最中に気付いたと説明した。それが霊核や神核にも存在していて、動力として稼働し続ける理由ではないかと見解を述べる。
一度は顔を上げた都市長が、今度は頭を抱えた。
「胃だけじゃなくて頭も痛いわ……」
「ご愁傷様だな、俺はお前の情けない姿に笑いが込み上げてくるがな」
「ローガス、アンタね……!」
おっちゃんの誂う声に反応する都市長、気安い友人といった雰囲気だ。なにやら口喧嘩を始めた二人を放っておいて、俺はダルマさんに向き合う。
「はい、ダルマさん。ご依頼の品だよ」
「お? おう、悪いな坊主。急な依頼でよ!」
「構わないよ、商売道具無いとダルマさんも干上がっちゃうしね」
「は、言うじゃねぇか!!」
豪快に笑うダルマさんが俺の胸を拳で軽く叩く、俺はそんなダルマさんに笑って応える。
「しかし、昨日依頼したってのに本当に翌朝には受け取れるとはな……特急料金が必要かこりゃ?」
「要らないよ、そんなの。正規の依頼料以上は取らない主義なんだ」
「腕の安売りは下に見られるから止めとけ、坊主。引いてはお前の武器を使う奴の格も下げるぞ」
真剣な声音のダルマさんに、思わず息を呑む。俺の作品を使うダルマさんもそうだが、バカやタチアもそんな扱いをされたのなら俺は自分を許せないだろう。
「……うん、気を付ける」
「今は若手、それも学園卒業前の半人前だから許されてるがな。それは学生までだって覚えておけ」
「分かった。ありがとう、ダルマさん」
「ふん、気にすんな。歳食うと若い奴に説教したくなるオッサンの悪癖だ」
ダルマさんはそう嘯くが、正しく叱ってくれる大人の存在はありがたいのだ。
「ま、それでも初めての魔鉄製武器の制作依頼だからね。正規料金の3万と、おっちゃんから頼まれたミスリルとオリハルコンの加工も込みで300万になるよ」
「……それでもちょっと安すぎるだろ、ミスリルとオリハルコンってだけでも他店なら桁が三つは増えるぞ」
「でも、インゴット一つ分ならそんなもんだよ」
「ダルマ、取り敢えず今はそれで取引しなさい。タタラも事情を知ってるから、今は緊急時の割引と思いなさい」
「……そうか、坊主も関わるのか」
ダルマさんが苦々しくそう言った。まだ半人前の俺が、というか子供が関わるのが嫌なのだろう。高等部探索科の非常勤講師も務めてるらしいからな、未来ある若者ってのが好きな人なんだ。
「一応、対人戦闘能力は低いから道具による支援を主にするつもりだよ」
「それでいい、坊主にはまだ早いからな」
人殺しの経験、そんなのはしないほうがいいのだろう。しかし、此処は倫理観が高く人死に忌避感がある現代日本では無い。それならば、何時かは人を害する機会も訪れるだろう。その覚悟だけは、常に持っていて然るべきだ。たとえ、今でなくても。
ダルマさんは新しい斧を持って、重さのバランスを確かめる。俺は設計する上での考えを伝えて、ダルマさんはソレを聞きながら運用方法を構築している。特にハンドガードになる刃の使い方は本人も気に入ったらしく、背中をバシバシ叩かれながら褒められた。柄は柄巻を自分で調整してもらおうと本来より細く作っている旨を伝えれば、インベントリから柄巻を取り出して早速調整していく。以前、バカのを見たことがあったが比べられない程に早い。時間にして十秒経たず、自分が納得できる調整を行ったらしい。
「あ、ダルマさん。その斧は刃をミスリルにしてるから、やり方によっては魔法も斬れるよ」
「……偶に坊主が遠くに見える瞬間が有るんだよな」
改めて斧の刃を見ながらそう溢すダルマさん、それでも一つ頷いて新たな斧を背負う。
「ありがとうな、早速ダンジョンで手に馴染ませに行かせてもらう」
「整備はウチでね、外だとバランス崩れるから」
「ああ、前の斧で痛いほどに理解したさ」
男臭い笑みを浮かべるダルマさんに、俺も笑った。
その後、おっちゃんから300万を受取った後に都市長達は帰っていった。
ダンジョンに向かう前から、気疲れしてしまいそうだ。
エテルが食材を買って帰るまで、気を抜いて休んでおこう。
因みに、夢でエテルが泣いた理由はタタラが役に成り切ってたせい。シチュエーションとしてはタタラに拾われた後に恋心を強めて行く中で起こった暴行事件、暴走する前でこの事件で処女喪失となる事に。タタラが言葉責めとして『好きな奴に処女やれなくて残念だったな』と言った際に現実で起きていたらと頭に過って泣き出した。
この小説は……
-
永遠と愛の絆
-
寛容と一途な愛
-
信念と翼
-
鎚を包む花束
-
誠実と誇り
-
都市長いっとけ都市長
-
年増園
-
太陽の笑顔
-
星の微笑み
-
太陽と星
-
娘さん、親父殿を俺にください