※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中


道に迷う

 そんな甘酸っぱいやり取りをしたが、パーティ専属クラフターとして幾つか仕事が残っている。

 タチアの装備の整備もそうだが、エテルと四葩の装備作成も重要だ。四葩はまだ簡単である、此方の一般的な防具のサイズを合わせて作成すれば事足りる。多少は四葩らしい見た目のアレンジは入れるが、出身国の陽出國の造りが分からない限りそちらに寄った物が作れない。それに、異文化交流としても此方の装備を渡す方が周囲からも浮きにくいだろう。

 対してエテルは元が低い身体能力を補う為に、徹底的な最適化を施した上で強化術式を刻んだ特別製だ。タチアのインナーマッスルスーツ程では無いが、エテルの身体能力を底上げしている。

 素材も『天使長』の羽を使用しているので初期装備にしては破格、というか俺が作った防具の中でもダントツの性能だったりする。好きな娘に傷付いて欲しくないからとはいえ、装備合計で物理防御50の魔法防御80はやり過ぎたと思ってる。それでも心配で俺が前に出ていたのだが。

 

 そんな装備を新調する為に、素材を選ぶ。元にするのはミスリル銀糸を織り込んで作ったミスリル布だ、これに以前と同じく『天使長』の羽を使って魔術的な処理を行い強靭さと対魔術処理を行う。エテルが多少成長しても大丈夫なようにやや大き目に作る、ややゆったりと身体を包む為にボディラインを見せにくくするだろう。下はホットパンツでは駄目そうなので膝上のキュロットスカートだ、布面積の広さで衝撃の分散を狙い仮に魔法が直撃しても着用者に衝撃が伝わらないようにする。

 と、コレだけエテルを男の視線から守ろうとするデザインでもエテル自身が嫌がれば即座にデザインを変更するつもりではある。エテルの趣向から上はタイトなショートジャケットにしたがると思う、一度そういう扇情的な格好はこうされるぞと脅しも兼ねて押し倒そうか……逆効果になるから駄目だな。俺がやると基本受け入れてしまうからな、エテルは。

 基本的な物が出来上がったが、少し考えている物がある。前世で動画の広告で何度か見かけたカップ付きインナーという物が有った。防御効果を考えて、コレを作れるようになるべきなのではないだろうか?

 正直、女性の下着関連とか恥ずかしいので触れたくは無いが安全の為には必要かも知れない……都市長は必要なさそうだからあのショップの店員さんに頭を下げようか。何となく、あの人なら作れそうだって直感が言ってるし。

 そんな事を考えながら四葩の為の素材を選定する。基本はミスリルだが、ハニカム構造を取り入れるかを考える。エテルやタチアに比べて華奢な身体だが、女性らしい丸みを帯びている綺麗な身体だ。目測だが腰はエテルよりも細いだろう、そのくせパーティで一番の物理攻撃力を誇るのだから意外性の塊だろう。

 平服もエテルと同じミスリル布で作り直そうか、それとも着物の作り方を教わった後に繕うか。後で四葩に聞こう。

 後は正確な寸法も取らなければ、その為にはエテルに協力して貰う必要が有るだろう。二人きり、しかも相手が薄着になるのだ。不安にさせてしまっては申し訳ない。エテル自身の時は俺が採寸したが、童貞を奪われた後だったので気不味かったな。しかもエテルの奴、俺なら見せても問題無いとか言って一切隠さずに前に立って来やがったし。お陰で勃っちゃって立てない状態で採寸したんだった……俺はよくあの状況で襲わなかったな。

 

 そんな事を考えながら風呂に入れば、エテルがマットの上で身を伏せて待ち構えていた。……え、幻覚じゃなくて?

 

「お待ちしておりました旦那様、本日お身体を洗わせて頂くエテルと申します。よろしくお願いしますね」

 

 身を起こしてそんな挨拶をしてくるエテル、身体には薄いタオルが巻かれているが薄すぎて色々浮き上がってる。初手から興奮してる辺りで身体洗うだけじゃ済まないだろコレ。

 そして、それが分かっているからか下半身が臨戦態勢に入っている。エテルの視線は俺の愚息に向けられていて、舌舐めずりをしている。

 獲物を前に舌舐めずりは三流のやる事だと何処かの軍曹が言っていたが、この場合は蛇が獲物を前に舌を伸ばしてるそれなんだと思うがどうよ?

 マットの上に俯せで寝かされて、エテルに身体を洗われる。身体中にボディソープを塗って、身体全体を使って洗われる故に柔らかい感触が凄まじい。告白をした日はスポンジで身体を洗われていたが、最早そういう店で洗われているような物だろう。

 タオルを外しているらしいエテルの身体は何処も柔らかいのだが、その中で2点主張する硬さの感触が有る。そこが擦れるたびにエテルから悩ましい声が聞こえてきて、愚息が元気を主張して辛い。

 

「痛いところはないですか、旦那様?」

 

 正直、愚息が痛いです。とは思っても口に出すのも苦しいくらいに勃起している。声を出そうとして荒い息遣いしか出来ない程に余裕が無い。

 エテルが身を起こしたらしく、背中から重みが一部消えた。柔らかな感触も離れ、安堵に息を吐く。

 

「それでは、マッサージ……始めますね?」

 

 そんな言葉と共に、腰に圧力が掛かる。親指に体重を掛けているのか、一点に掛かる圧が痛みを伝えてくる。思わず声を漏らすが、エテルは容赦なく腰を押してくる。場所を少し変え、掛ける体重を変えと次々に指圧してくる。やがて血行が良くなって来たのか、腰が熱を帯び始める。意識しても無かった腰の凝りが解れ、身体が楽になってくる。

 それと同時に、愚息に通う血が多くなったのか身体を浮き上がらせそうな程に硬くなった。エテルに体重を掛けられマットに押しつけられる愚息の先端が痛い、マットに擦れる感触だけでも発射したくなる。そして、発射したら死にたくなるのが分かる。

 エテルの指圧は腰から背骨に沿って上に上がっていく、肩甲骨を解された時の解放感は特に凄まじい。そしてそろそろ我慢の限界でもある。呼吸が荒く、マットの上に涎を垂らしてしまうくらいに口を開きっぱなしにしていた。エテルを押し退けて、そのまま無理矢理挿入してやりたい。

 

「それでは、次は前を洗いますね?」

 

 そう言われて、身体を仰向けにすれば愚息が赤黒く血を通わせていた。その状態にエテルは驚いたように眼を見開き、うっとりと蕩けた視線になった。

 

「あら、元気いっぱいですね旦那様?」

 

 そう誂うように言ってくるエテルに、俺はまともに返事が出来る程の余裕は無かった。荒く呼吸を繰り返すだけの俺に、エテルが覆い被さってくる。

 

「それでは、ご奉仕致しますね?」

 

 そう言った直後、愚息をエテルの膣が飲み込んだ。散々我慢させられていた愚息はそれだけで発射してしまい、情けない限りだったが萎える気配が全く無かった。眼前に広がるエテルの顔を見て、我慢せずに唇を合わせる。最初は単純な接触だったが、舌を絡ませて互いの口内を蹂躙し合う。

 息苦しさを覚えて離れても、互いの虹彩の形が分かる程の至近距離を維持し続ける。腕を伸ばしてその頭を撫でれば、まるで猫のように眼を細めて受け入れる。

 やはり俺はこの少女を好きなんだなと、その笑顔を見て再認識する中で下半身はずっと刺激を受け続けて硬度をましていた。台無しだよ畜生。

 

「ふふ、今度こそご奉仕させて頂きます」

 

 楽しそうにそう言ったエテルは身体を起こして、俺の上に跨る姿勢を取った。そのまま腰を動かし、膣内に納めた俺の愚息を様々な角度から刺激し始める。

 緩急の付け方、角度の取り方は本能故の匠さか。俺以外の経験は無い故の俺特化のそれの可能性も有るのだろう。腹部に添えて身を支えている手を取り、指を絡める。エテルからも指を絡められ、恋人繋ぎを形作れば腰使いが激しくなり始めた。

 俺からも腰を突き上げ、より強い快楽を求め……二度目もまた早い決着だった。エテルが腰を深く沈めて俺の遺伝子を受け入れる、膣壁の収縮の激しさから彼女も絶頂している事が分かった。

 またキスがしたくなってエテルを抱き寄せ、唇を軽く触れ合わせる。胸元にエテルの頭を抱き寄せて、纏めていた髪を解きその髪を梳る。翼が俺を包み、エテルが俺を両腕でも抱き締める。

 

「ああ……幸せ、だな」

「うん、私も」

 

 思わず溢れた言葉に、エテルはそう返してくる。顔を上げたエテルと目が合い、思わず互いに笑う。

 互いに汚れた身体を清めて、湯船に浸かる。普段ならもう何戦かしているのだが、今日は互いに満足してしまっている。キスより先のスキンシップは無く、エテルはずっと嬉しそうに抱き着いている。以前、エテルを落ち着かせた時のように背中を心拍に合わせて指でトントンと軽く叩いているとエテルの尻尾が揺れていた。何となく上機嫌に見えるが、実際はどうなのだろう。胸元に頬擦りしたり、額を当ててグリグリしたりと接触の仕方が子供っぽい。髪がタオルから溢れて湯に入りそうだったので指で掬い、耳にかけてやる。何をされたのかよく分からないと眼を瞬かせた後、ほにゃっと効果音が付きそうな柔らかい笑いを向けてくる。

 何となく、こういうのでいいんだよこういうのでと誰かに言われた気がする。多分、気の所為だ。

 風呂から上がって、エテルの髪にドライヤーを掛けてから俺は工房にエテルを連れて入った。目的は新しく作った防具を確認して貰う事だ。

 思考入力式魔導ワードプロセッサを使い、服の確認をして貰う。口頭で説明を挟みつつ、今回のデザインが露出を控えた理由に『エテルの身体を他の男に見られたく無いから』と言ったら嬉しそうに笑っていた。キュロットスカートには納得してくれたが、ジャケットには不満を出された。丈の短いショートジャケットにデザインを変更して納得して貰ったが、個人的にはエテルに危機感を持ってほしい。

 

「いいか、エテル。お前の身体は魅力的だ」

「えへへ、タタラは何時も私のおっぱい見てるもんね」

 

 説得に入ろうと思ったら初手から助走付けて殴られた気分だ、いや確かに何時も見てしまってるけれども。

 

「……お前の身体は魅力的だ、他の男からも性的な視線を向けられているだろう」

「うん、タタラ以外からもやらしい目で見られるね。偶に触ろうとする人も居るし」

「俺が居る時に遭遇したら言え、キッチリ殺してやる」

「逆に言えないよそんな本気の声で言われたら」

 

 何処か呆れの混じった声で言われ、落ち着く為に深呼吸をする。いかんな、想像上でもエテルに手を出そうとする相手が居たら殺意が湧いてくる。

 

「正直、このジャケットみたいにお前のスタイルがわかり易く伝わるデザインはあまり着て欲しく無い。お前なりにお洒落もしたいだろうから受け入れてるが、お前が誰かに汚されるかもって想像しただけで殺意が湧く」

「そうなんだね……私、タタラに愛されてるなぁ」

「何をそんな当たり前の事を」

 

 俺の言葉に笑っているエテル。

 

「なら普段はこの上にケープを着るよ、それで安心する?」

「……ちょっと、本当にちょっとだけどな」

「なら、タタラがいない時は着るね」

 

 俺が居る時は守ってくれ、そう言外に言われた気がする。必ず守ると誓おう。

 

「で、エテル。悪いんだが今の身体を採寸させて欲しいんだが」

「いいよ、お好きなだけどうぞ」

 

 俺の言葉に楽しそうな声で答えて、エテルは服を全て脱いだ。

 俺の前には男の欲望を押し固めたかのような女体、しかし風呂で戦闘を終えている俺は反応すること無く採寸を終えていく。着用時の変化を見る為に、エテルへ頼み事をする。

 

「エテル、探索時に着ける下衣を着てくれ」

「分かった」

 

 インベントリからスポーツ向けの下衣を取り出して身に着けるエテル、その乳房が形を変えて身体の線を変化させる。

 その状態に合わせて布の長さを変える、防御力を考えつつもエテルの身体が成長した時に合わせて内側に少し細工をする。そうしてジャケットが出来上がり、次はキュロットスカートだが此方は特に問題無く終わる。上下共にミスリル銀糸の色そのままな純白だが、染色は専用の塗料が無いので諦めて貰う。ただ、白系統が好きなエテルは大分気に入ってくれたらしい。

 これで明日の探索には間に合ったと、安堵の息を吐く。エテルは服を着たうえでの動きを見る為に、軽く身体を動かしている。俺も動きに合わせて布が目的の通りに身体の線を隠せているかを確認する、エテルがI字バランスを試して問題無かった事で肩の荷は降りた。

 次に四葩の防具を作らなければならないが、採寸を終わらせる必要が有る。エテルとしては二人きりになるのはアウトだと思い、四葩の採寸を頼む。しかし

 

「え、トラッちゃんの採寸はタタラがやってあげたほうが効率良いでしょ? なら……うん、二人でやるといいよ」

 

 なんて言葉が返って来た。

 

「え、いや……四葩と二人きりで工房に俺が居て不安になったりしないのか?」

「え、なんで?」

「なんでって……以前は警戒してただろ」

 

 俺の言葉に対して逆に意味がわからないとエテルは言ってくる、出会った直後は俺と四葩が触れ合う事にも警戒していたしタチアが脱いで肌を曝した時なんか俺に対して苛立ちをぶつけて来たりした筈だ。それが何故、四葩の肌を見る状況を良しとするのか?

 

「でもトラッちゃんなら大丈夫だと思うし、タタラもいきなり押し倒したりはしないでしょ?」

「いや、まぁそうだけど……」

 

 何だか釈然としない、エテルを裏切るつもりなど毛頭無いが何だか楽観的というか……四葩へ何かを求めている?

 

「じゃあ、トラッちゃん呼んでくるから」

 

 そう言い残してエテルは工房から出ていった。この心変わりの理由はいったい何なのだろう、友情と言うには少し違和感が有る。

 

「さっきぶりじゃな、タタラ」

「そうだな、四葩」

 

 工房に入ってきた四葩とそんな言葉を交わす。俺に名前を呼ぶように頼んでから雰囲気が少し変わっただろうか、何となく静かな印象を受ける。それとも、俺の心境が変わったのか。

 

「エテルから話は聞いてるか?」

「うむ、お主が妾の肌を見たいと聞いたの」

「嘘を言うな」

 

 少し悪戯心を含ませた目でそんな事を言ってきた、思わず目を細めて否定してやればケラケラと笑い出す。

 

「冗談じゃよ冗談、妾の鎧の為に採寸をしたいのじゃろ?」

「分かってるなら誂うなよ……」

「お主が誂い甲斐が有るのが悪いんじゃよタタラ」

 

 笑い続ける四葩の様子に思わず溜息を溢す。四葩は俺のそんな姿に更に笑い声を上げた、そこまで笑わなくてもいいだろうが。

 

「はぁ、笑った笑った……さて。妾の鎧に付いて聞こうかの」

「あっさり雰囲気変えやがって……先ずはコレを見てくれ」

 

 そうして先程のエテルと同じ様に装備に付いての説明を始める。投影された図面と、使用する強化術式に付いて語れば四葩も次々と質問してくる。それに答え、要望を確認する事を繰り返すうちに装備の内容が固まった。

 

「ではコレから採寸かの?」

「ああ、悪いがコレに着替えてくれ」

 

 インベントリから以前タチアにも使わせた薄手の前掛けを渡す、そのまま四葩に背中を向けて着替えを待つ。

 衣擦れの音と軽い落下音、その後に背中に伝わる軽い衝撃。

 

「四葩!? お前、何を」

「此方を向くで無いぞ、妾は今服を纏っておらぬ」

 

 そう言って俺の背中に密着する四葩、控え目ながらも女性らしい柔らかさが背中に感じられる。

 

「エテルも酷な事をするのじゃ、これではまるで妾にタタラと致せといわんばかりではないか」

「だからって流されるなよ、友達を裏切るつもりかお前!」

「エテルが構わぬと言うなら、妾だって!」

「なんでだ、お前はもっと賢い女だろうが……!」

「真に賢いなら……友の男に懸想などせん!!」

 

 互いにどんどん声が大きくなる、工房は防音であるために音は外に聞こえない。誰も今の俺達を止めに来ないのだ。

 四葩の声には涙が混ざっていて、あれだけ強い力が有るとは思えない程に弱々しい。

 

「何故じゃ、何故妾はお主を諦められぬのじゃ……」

「悪い、お前がどんなに思ってくれていても……俺はエテル以上に誰かを愛せない」

「分かってる、分かってるよ……それでも私はタタラが好きなの」

 

 かつて一度だけ、両親へ向けて宣誓した時に見せた女の子らしい口調が顔を覗かせる。之が本来の四葩の姿なら、取り繕えない程に精神が追い詰められている事になる。

 抱くべきなのか? エテルを裏切って、不誠実に。

 この寛容で優しい、虎熊四葩という少女を?

 そんな事が許される訳が無い。誰かを選ぶということは、選ばなかった誰かの想いを選べない事の筈だ。ならば俺は、エテルを選択した俺は四葩を選んでは駄目なのだ。ここは確かに俺が知るエロゲーに似た世界だが、似ているだけ。ハーレムが許されるのは真に立場が有る者達だけなのだ。

 俺には社会的に保証された立場など無い、そんな俺を誰がハーレムなど許すのか。心苦しくても、俺は虎熊四葩という少女に誠実に向き合わなければならない。

 

「ごめん、四葩。俺がはっきりと言葉に出来なかったからお前に期待させたんだな?」

「違う、違うの……お願いだからそれ以上言わないで」

「四葩、俺は確かにお前の事が好きだ。けれど、それは恋愛としてじゃない」

「やめて……」

「俺は、エテル以外を」

「やめて!」

「アイツ以外を、女として愛せる程に器用じゃないんだ」

 

 胸に痛みが走る、四葩の涙声で静止が入るたびに挫けそうになった。それでも、それでも俺は……はっきりと口にしなければならない。中途半端でいてはより大きな破局を迎えるかも知れない、二度と四葩と会えないなんて事になったら嫌だ。

 俺は虎熊四葩という少女を、人として好きなのだ。

 

「お前なら、俺よりずっといい男を掴まえられる。だから俺なんて直ぐに忘れろよ」

「無茶を言わないでよ……鬼の一途さを知らないくせに」

「そういえば、お前の名前の花言葉は『一途な愛情』だったか?」

「なんでそんな事に詳しいの……鬼は元から一途な気質なのじゃ。だから、妾が特別重い訳では無い」

 

 少し、何時もの調子を取り戻して来たらしい四葩。そっと腕が解かれて、身体が離れていった。

 

「ここまで勇気を出して迫ったのに、本当エテルの事しか想えんのじゃな」

「お前の事を思ったから、一時の衝動で関係なんて持てるかって話だ。お前の人生だって関わってくるんだからな」

「元が享楽的で刹那的な鬼をそんなに大切に思える気質だからこそ妾が惚れた事を忘れぬようにな。多分、この先まだまだ増えるぞ」

「そんな馬鹿な事が有るかよ、俺みたいな不器用な人間が」

「誠実で一途というのじゃよ、タタラはな」

 

 誠実であるならば、ここまでお前の恋慕に対する答えを渋っていないよ。もっと甲斐性が有れば、もっと女の扱いが上手ければ……お前を泣かせずに済んだだろう。

 

「ほれ、採寸するのじゃろ? 冷えて来たから早くして欲しいのじゃ」

「いや、今のはお前が始めた流れだろ……」

「知らぬ、女に恥をかかせたのはタタラの方じゃ」

「はぁ、そうですか……」

 

 やっぱり、男は女に勝てないんだなと思った。

 振り向いて虎熊を見たが、即座にまた振り返る。

 

「お前、なんで渡したやつ着けて無いんだよ!?」

「ふむ、あわよくばタタラが我慢出来なくなると思うての」

「おま、マジでこの……」

「覚えておれよ、妾は一途で諦めが悪いからの?」

 

 そう笑って言う四葩の眼には、僅かな涙が見えた気がした。

 四葩の身体を採寸する際に、決して目を逸らさずにやれと言われた。もし目を逸らすようならこのままエテルの前に飛び出して、嘘を申し立てるとも。とんでもねぇ脅しを掛けられ、諦めて四葩の身体を測っていく。

 よく見れば四葩の褐色の肌が羞恥を隠しきれず紅潮していて、顔どころか耳と首筋すら紅い。女性にしては高めの身長だが、肩や腰の細さに驚く。パーティで一番高い物理攻撃力を誇るというのに、その身は華奢な美女とは落差が凄い。首元、肩幅を測った後に胸元を測る為に両腕を拡げて貰う。

 控え目ながらも形の良い乳房が小さく揺れる、悲しきかなおっぱい聖人の性。例え小さくとも思わず見てしまうある種の呪いだ。

 腹回り、腰と調べて次に高さを測る。と言っても股下だけだ。腰から下は袴を意識した物にしようと思っている、そのままでは無いがロングのキュロットスカートならそれっぽくなるのではと考える。

 測り終えた数字を元にして装備のイメージを固める、そのまま図にして投影すれば四葩からは良い評価を貰えた。特にキュロットスカートは故郷の物に似たデザインでも有るし、脚を曝すのはあまり好んで無いとの事だった。

 

「綺麗な脚だがな」

「阿呆」

 

 思わず言葉を溢したら、四葩に軽く叩かれた。スパンっといった高い音が鳴るが、痛みは無い。

 

「これなら作れるな、明日の朝も鍛錬するか?」

「日課は欠かさぬよ」

「なら、その時に最終調整をしようか。タチアの『アーラ』程には時間掛からないし」

「ふむ、ではそれで頼もうかの」

 

 服装を整えた四葩に了承を取り、俺はそのまま鍛冶場で作業に移ろうとする。その直前、四葩が俺に抱き着いてくる。10秒程抱き締めてきて、腕を離したらそのまま出て行ってしまった。

 エテルに対しては躊躇わず抱き返せるが、恋人でもない四葩にそれは出来ない。『鑑定』で苦しんでいた時なら露知らず、今それをやるのは四葩の心に俺が居座る事を長引かせるだけだ。

 だから、応えては駄目なのだ。

 

 胸の内に有る蟠りを払う為に鎚を振るう。こんな心境でクラフトに向き合うなんて本当は良くないなんて分かっている、それでも鎚を振るう事を止められない。

 一打一打に込めるのは四葩に対する心、エテルを裏切ってしまいそうな己の弱さだ。

 

 己の心を蝕む邪念を祓え。

 愛する者への想いを清めろ。

 迷うな、お前はもう選び取っただろう。

 今更未練など持つな。

 あの時、エテル・ネル=バーラルの手を取った事を後悔しているのか。

 

 次々に浮かんでくる澱みを叩き壊したくて、振るう鎚に力が入る。

 本来は魔力を流して変形させるべきミスリル銀に、鎚を打ち付ける。

 鍛造。本来は魔法金属では不可能とされる技法。

 しかし、ある程度条件を満たせば叶うのだ。単純に魔力を一定で流し続ける魔力制御能力と続けられる魔力が有るのなら。

 俺は『錬金術師の卵』を持って魔力量の問題を解決し、極まった『クラフト』スキルを補助として魔力制御の問題を突破した。

 火で熱しても溶けないミスリルが、魔力により擬似的に融点を迎え容易に変形を許す。そこに鎚を振るって延ばし、折り曲げ延ばしと繰り返す。ミスリルインゴット5つ分を重ねて折り曲げてを繰り返す事に18回、約131万層に達したミスリル銀の組織層は尋常ではない靭性を誇る。

 四葩の胸の形に合わせて曲面を描く様に打った胸甲は、彼奴を守ってくれるだろう。エテル以外を受け入れられない甲斐性無しの俺と違って、きっと。

 腕甲は片側ミスリルインゴット3つ、合計6個のミスリルを鍛造して2つに分ける。タチアと違い繊細な指先の動きを要求される四葩の刀術を前提にした為に手には装甲を装着しない、手の甲迄は覆うがそれも手首を自由にする為ミスリル布を使う。手首から肘迄はミスリルの装甲で覆い、その下を手の甲から肩迄のミスリル布を通す形だ。

 足回りも脛当に留める、靴は慣れている物にしなければ技に陰りが出るだろう。腕と同じく6個のミスリル銀を鍛造し、両足分を作成した。

 胸甲の肩部に、ケープ状にしたミスリル布を取り付ける。四葩の肘近く迄垂れるケープには魔力障壁の術式を裏に縫い付けている。当人の中では低めの魔法防御も多少は補えるだろう。

 布を繕ってキュロットスカートを作成する。プリーツ状にする事で移動のしやすさと、重ねられる事での厚みを持たせた防御力を発揮する。腰回りは当人の細さに合わせつつ、多少の変化にも対応出来る様にアジャスターを付けた。現在の数値から±10cm迄なら対応出来るだろう。ベルトも通せるので、腰からランタンを下げたり剣帯を通したりも出来る。

 エテルの物と同じく、染色が出来ないので純白だ。思えばタチアも同じ色の腰垂れを纏っている、俺達のパーティのトレードマークみたいになりそうだなとそんな事を考えた。

 

「……こんな雑念混じりの心境で、コレだけ良質な作品が出来るとはな」

 

 虎熊四葩専用の軽装鎧セット、案の定『鑑定』しても名前は出なかった。直感で魔法防御はセットで60程上がるのは分かったが、その他は実際に四葩が纏ってくれないと判明しないだろう。

 

「っと、そうだな……アレも作らないとな」

 

 ふと、脳裏に浮かぶ約束の一つ。

 インベントリから鉄のインゴットを一つ取り出して、炉へと入れる。熱され、柔らかくなったところで金床へと移し鎚を打ち付ける。

 一打一打、脳裏に浮かぶのは四葩との時間だ。互いに笑い合ったり、戯れたりとそんなありふれた日常風景。

 俺が、虎熊四葩へ好意を抱くに足る光景。

 一打振るえば笑顔が、もう一打振るえば怒り顔が浮かんでは消えていく。

 鉄を折り曲げ、重ね……重ねた日々を想起する。

 何度か折り曲げ、延ばした後に複数に切り分ける。

 丁寧に磨き、紙を貼って要でとめる。

 依頼されていた四葩の鉄扇、鎧に対してよりも想いが込められてしまったように感じる。

 

「情けないぞ、タタラ・ジュロン。何時までも引き摺るなよ女々しい野郎が」

 

 自分自身にそんな罵倒をする、この胸の靄をどうにかしたかった。なのに、どうしようもない。

 そんな自分の情けなさに、俺は少し泣いた。




アンケート、ネタ枠入れたら結構票入ってて笑ってしまった。
一番悪いのはネタ枠入れた作者自身なんですけどね。

この小説は……

  • 永遠と愛の絆
  • 寛容と一途な愛
  • 信念と翼
  • 鎚を包む花束
  • 誠実と誇り
  • 都市長いっとけ都市長
  • 年増園
  • 太陽の笑顔
  • 星の微笑み
  • 太陽と星
  • 娘さん、親父殿を俺にください
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