既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
一夜明けて、動きの鈍い頭をそのままに着替えて台所へ向かう。既にエテルが朝食の準備を始めていて、何時もより寝坊したかと一瞬焦る。
「おはよう、タタラ」
「おはよう、エテル。悪いな、遅くなったか」
「ううん、何時も通りだと思うよ? ほら、時計見て」
確かに時計の短針は何時もと同じ位置だし、長針は頂点を指していない。エテルが早かっただけだった。
目覚めのキスをしようか考えたが、調理中なので控えた。まだ手付かずだったサラダを手早く用意して、トーストを焼く。準備が終わってから改めてエテルを抱き寄せてキスをする、エテルからも首に腕を回されて強く抱き合う格好だ。
俺の中ではまだ四葩の告白が残っている、まるでその罪悪感を誤魔化すかのようなこの行為が唾棄すべき物のように感じた。
それでも、俺はエテルの温もりに縋りたかった。なんて心が弱い。
「……タタラ、悩み事?」
俺の様子に気付いたらしいエテルがそう聞いてくる、俺はそんなエテルを抱き寄せて身体を密着させる。
「……結構重く感じてる事が出来てな、それでずっと考えてる」
内容は詳しく言わないが、それでも悩んでる事実は告げる。下手に誤魔化したら駄目な気がした。
「そう、なんだ。話せるようになったら言って、ちゃんと聞くから」
「ああ、その時は頼む」
最後にもう一度キスをして、庭先へ向かう。昨夜完成させた四葩の装備一式の調整の為だ。
四葩は相変わらず刀を振るい、技を確認していた。昨夜の事など何も無かったかのような、乱れの無い剣舞だった。
舞を終え、静かに俺へと向き合う四葩。その目は嬉しそうな、それでいて悲しそうな物に見えた。
「おはようなのじゃ、タタラ」
「ああ、おはよう四葩」
俺は、何時も通りに笑えているだろうか?
四葩が辛くなるような顔は作らないよう出来ているだろうか?
「何か用事かのう? それとも、妾と会話をしたくなったかの?」
「用事だよ。昨夜の鎧が出来たからさ、調整をってな」
「やはり意味不明な作業の早さじゃな……」
呆れた風に溜息を吐く四葩、その反応はひどくないか?
「それじゃ早速着けてみてくれ」
「ここで裸になれと言うのじゃな? 中々に倒錯的の趣向じゃのう」
「裸で首輪だけ着けて外を散歩する妄想してる
「流石に妾もそんな考えまで至った事はないのじゃ、業が深過ぎやしないかの?」
「まぁ相手とセックスして相手の子供を孕んで相手を魔力と魂にして孕んだ器に入れて産み直すとか言い出す
「理解の外過ぎてついていけんのじゃ……」
俺も理解するの無理だったからな、流石に。これで四葩まで『良い考え』とか賛同したら俺が詰む。
平服を一旦脱いで腕甲を着装、弓手甲と似た形態をしている内袖に違和感が無いか確かめている。袖の余りが動きを阻害しないか俺も調べる為に触る、性別以前に戦士と鍛冶師の雰囲気しか出ず四葩の要望で少し袖を詰めたりの調整を施す。
そして平服を着直してその上から胸甲を着用する。胸元は問題無いようで、仮にカップサイズが2つ上がっても余裕が出来る計算は間違っていなかったらしい。
「なんというか、胸元が大分広いのう……」
「衝撃を身体に届かせないってのと、ある程度は身体が成長しても大丈夫なようにしたからな。いきなりエテルサイズにでもならなければ問題無いぞ」
「あの規格外な成長をしたら妾は剣を振るえなくなるぞ……」
「邪魔そうだもんな、エテル見てると」
男にとっては夢とか色んなものが詰まってるが、当の女性からは邪魔とか思われてるなんて前世の本なんかで見てるから何とも言えない。
尤も、エテルは俺好みの身体に成れている事を喜んでいる雰囲気を感じる。本当のところは分からないが、性癖に授乳が入ってるし多分気に入ってるんだろう。
そんな会話の後に四葩は履いていたズボンを脱いで、防具のプリーツスカートを履く。裾は七分、何かの拍子に踏まないように短めにした。腰のアジャスターの使い方を教え、四葩がカチカチと物珍しそうに弄って腰に合わせる。±10cmは対応出来るようにとしたが、音から察するに-5cmといったところか。少しキツめにして行動中でのズレ防止にしているようだ。脱いだズボンからベルトを外して腰に巻く、此方も少しキツめに締めているようだ。
最後に脛当を装着する。用意した靴は革と底の厚いブーツで、その上に被せる恰好だ。ベルトをキツく締めて、動きが鈍らないようにする。
装備を終えて四葩を見ると、金属部分を無視すれば深窓の令嬢然とした雰囲気を発している。改めて思い出すとコイツ、いいとこのお姫様なんだよな。
「どうした呆けて、妾に見惚れたか?」
「普通に似合ってて見惚れはしたぞ、やっぱり生まれのせいか気品有るよなお前」
「……一切の照れも無くそういう事を言うから相手が好意をもったりするんじゃぞ、自覚せいタタラ」
自覚と言われてもな、自然に出る言葉をどうやって意識すればいいんだ?
少し顔を赤くした四葩に、最後に鉄扇を渡す。
驚いた表情をして受け取った後、一振りして扇を開く。パンッと心地の良い音を鳴らせて、滑らかに扇は開いた。
眼を瞬かせた後、四葩が扇を構えて静かに動き出す。頭頂の位置が変わらず、背筋を真っ直ぐに伸ばしたまま身体が流れるように動く。本来の履物とは違うはずなのに、足音一つ立てない見事な重心移動。目線や指先に全てに力が通い、しかし余分な力みの無い最適な緊張状態。
一通り舞ったのか、動きを止めた姿に余韻を見る。静かに姿勢を正し、一礼を持って舞を完遂させた。
「……お美事、言葉が湧かないくらいに綺麗だった」
「ふむ、母上の方がより美しく舞えるのじゃ、妾はまだまだよ」
「お前のお母さんの方が上手いのかも知れないが、俺は虎熊四葩の舞しか知らない。そんな俺の心を掴むくらいに綺麗だよ、お前の舞は」
「だから、そういう言動を辞めよと……」
四葩が溜息を吐く、褒め言葉くらい素直に受け取ってもいいと思うんだが。
「コレで、妾はタタラに正式な武具の依頼を出来るのじゃな」
「制作が解禁されただけだがな、基本素材持ち込みだからな?」
「分かっておるのじゃ」
鉄扇をインベントリへ……大切そうにその表面をひと撫でしてからしまう四葩。そろそろエテルが調理を終えて待ち惚け食らってるかも知れない。
「エテルが飯作ってくれてるから、手を洗ってこい」
「む、そういえば朝餉の時間じゃな……風呂は」
「その装備をまた一から着け直していいなら行って来い」
「……手を洗うだけにするかの」
軽装とは言え、鎧を装備するのは大変面倒なのである。
3人が揃った上で挨拶をし、朝食を開始する。本日のメニューはスクランブルエッグとベーコンにサラダ、オニオンスープである。半熟のスクランブルエッグの中には粉チーズが入っていて、塩とは違うしょっぱさとバターの風味が合わさって非常に美味い。切り分けたベーコンも口にすれば、玉子の旨味と燻製肉の熟成された旨味が合わさってまさに至福である。オニオンスープは一緒に葉野菜と根野菜……おそらく蕪が一緒に煮込まれていて、玉ねぎ以外の野菜の甘さが加わって非常に美味い。少量足されたクルトンが歯応えを伝えてきて飽きもこない、エテルのジュロン家アレンジレシピはどうも俺の舌に特効過ぎて離れられそうに無い。
一通り食い終わり、ゆっくりとスープを味わって飲んでいるとエテルが何時も通り嬉しそうに俺を眺めて来ていた。俺が幸せならそれが全部と言わんばかりの慈愛の視線に、何となく気恥ずかしくなる。そんな俺達を見て興奮八割、胸の痛み二割といった表情の箱推し鬼は見ないフリだ。
「それじゃ、俺は今日一日家の防衛能力向上に勤しむから二人は気を付けてダンジョンを探索してくれ」
言いながらエテルに帰還結晶を渡す。俺の代わりに判断する人材としては一番長く共に行動しているエテルが最適だろう。四葩はエテルの行動を諌めたり修正出来るので、冷静に状況を見極める副長として活躍して貰いたい。タチアの装備は四葩に渡しておく。
正直なところを言うと斥候のエテルよりも後ろに控えてる四葩を頭に据えた方が良い気もするが、忘れがちだけどコイツ迷い癖有るんだよな……。
「それじゃ、行ってくるね!」
「エテルはキッチリ守るのじゃ、安心せい」
手を振って出発した二人を見送り、俺は工房へ入る。
インベントリから取り出すのはミスリル銀40kg、それとオーク材だ。家の防御力向上計画はミスリルの支柱を等間隔で家の堀に刺し、魔力を通して結界を強化するプランである。物理的にもミスリルは強固であるので耐久性も高いが、物が希少過ぎるので下手に刺していたら盗まれかねない。なので、オーク材を壁板にして支柱をパッと見では素材を分からなくする。まぁ、錆止めのペンキでも誤魔化せそうではあるが。支柱一本に使うインゴットは五を想定、中空二重構造にして長さは4m。地中に1m刺して地上には3m出す形にする。流石に鍛造で作れる物でもないし、一度に数十mなんて作れる広さは作業場に無いので一本一本クラフトで作っていく。予備も含めて60本を作成、コレだけで30kgのミスリルである……コレ売るだけでもセキュリティが滅茶苦茶高い豪邸買える気がする。けど、この家を手放す気は無い。ミスリルの支柱へ結界を構築する術式を一本一本に刻んでいく、気が遠くなりそうだがコレをしないと霊脈から組み上げた魔力で結界を展開出来ない。それではただ硬いだけの柵になってしまう。
次にオーク材を加工する。幅5cm、長さ1m強の板を大量に作る。前にエテルと二人で探索に入った時に手に入れた物や、四人で探索した時の物なども含めて100枚以上の蓄えが有るので出し惜しみは無しだ。材料の余裕を考えて支柱を覆うカバーをオーク材で作る。ミスリルに鋲を打ち込むよりも加工難易度は低いし、仮にカバーを破壊されても下のミスリル製の支柱を見たら侵入者の心が折れるかも知れない。防腐処理として水溶性の防腐剤に液状化した魔石を少量溶かし込み、板材に塗って乾かす。木材の内部に液状化した魔石が浸透して対魔法効果を発揮するのだ、乾ききって無いと燃料としてアホみたいに燃えるが。作業を開始して3時間程、柵の支柱と板材の用意が完了した。最後は門扉を作るが、先に柵の交換を行ってしまおうと思う。作業を行おうと庭に全ての資材を置いたタイミングで来客を知らせるチャイムが鳴った。今日は来客予定は無かった筈だが、誰だろうか。
「はい、今出ます」
そう声を掛けて玄関に向かえば、最近見慣れてきた光景が広がっていた。
「おはよう、タタラ。早速だけどお話ししましょ?」
「おはようございます、都市長。正直今日はやりたい事が有るんでお引き取り願っていいですか?」
額にぶっとい血管を浮き上がらせた都市長が、俺の報告書を紙に写したらしい物を持って立っていた。
「坊、何故毎日の如くやらかすんだお前」
「坊主、流石に頻度が高くないか?」
「お久しぶり、坊っちゃん! なんか連れてこられちゃったわ!!」
「まったく、坊ちゃまが僕の手を煩わせるのはどうなんだい?」
相変わらず黒い鎧と大剣が特徴のおっちゃんと、俺が造った斧を背負った呆れ顔のダルマさん。そして、最近中々見なかったおっちゃんのパーティメンバー二人がいた。
下手すれば初等部くらいの年齢に見える低身長貧乳の金髪翠眼の女エルフ、オリーブさん。そして厭味ったらしいイケメンフェイスをした高身長細身金髪細目男エルフ、ナルキさんだ。
フルメンバーって事は、コレから探索に行くところを捕まったか?
「やりたい事が人手を必要とするならコイツら使って良いから、お話ししましょうか」
「拒否権無いんですね分かりました……本当に後ろの四人、ってかダルマさん貸して貰いますからね?」
「お、俺か?」
「うん、力仕事頼みたくて」
「なら俺向きだな!」
都市長の言葉からダルマさんの力を借りれそうなので了承を取っておく、コレで支柱に埋め込む時とかカバー被せる時とかである程度楽ができる。
五人をリビングに案内して、紅茶を淹れる。全員に配り終えた辺りで、都市長が切り出した。
「それで、この『錬金術師の卵』って何?」
「何って言われましても……本気で聞きますか、その厄ネタの事?」
「聞いとかないと胃が痛いままなのよ、聞いた後は精神の負荷で発狂するけどね」
「何方にしても地獄ですね、笑える」
「笑ったまま顔が戻らないようにしてあげましょうか?」
「すみません」
俺と都市長のやり取りに、好奇心旺盛なオリーブさんが我慢出来ないと言った具合に突っ込んでくる。
「坊っちゃん、何か作ったの!? ダルマの斧も凄い出来だし都市長がこうならさぞ面白い物が出来たんでしょ!? 見せて欲しいわ!」
物凄い早口でそう言われた。俺はインベントリから『錬金術師の卵』を取り出してテーブルに置く、オリーブさんは都市長よりも早く『錬金術師の卵』を手に取って顔の前へ近付ける。
「何かしら、コレが都市長が言っていた『錬金術師の卵』かしら? 卵というよりも宝石みたいね、キラキラしているわ! 何よりガラス質の表面の奥に見える揺らぎ、コレは高密度の魔力だわ! これを坊っちゃんが作ったのね!!」
興味津々と自分の目で『錬金術師の卵』を調べるオリーブさん、どうやらどんなものかは分かっていない様子だ。
オリーブさんの手から『錬金術師の卵』を奪い取った都市長が、自身の『鑑定』を使って調べているようだ。性能を目にしたのか表情が凄いことになっている。
「タタラ、あえて聞くわね? コレは何を作ったの」
真剣な表情で聞いてくる都市長と、その気迫に先程迄の勢いを削がれたオリーブさん。おっちゃん達は静観するらしく、静かに流れを見守っている。
「……錬金術師の悲願、で分かりますよね?」
「……貴方、そのうち袋叩きに遭うわよ」
俺の言葉に『錬金術師の卵』の正体を理解した都市長は、天を仰いで背もたれに身を預けた。ま、そうなるよな。
「因みに、コレの根本は霊核と同じものです。錬金術師達は身近とは言い難いですが、元から有るものを目指して足掻いていたんですねってブラックジョークですよコレ」
「あんた、終いには国家の錬金術研究所の人間から殺されるわよ」
俺の言葉に更に重い溜息を吐く都市長、そんな都市長から『錬金術師の卵』を取り返したオリーブさんが目をキラキラさせて捲し立てる。
「凄い! コレが『賢者の石』なのね! 初めて見たわ!!」
「そりゃ存在そのものが御伽噺みたいなもんだからな」
「因みに、作った時に『鑑定』が出来なかったので間違いなく今まで存在してなかった物ですね」
「悲願を達成させた人間がこの軽さって……」
都市長、一気に老けた気がする。
「あ、そうだおっちゃん」
「このタイミングで俺に声を掛けるとか何を考えてるんだお前……」
思いつきを話そうとおっちゃんに声を掛ければ、何処か嫌がっている雰囲気を出して来た。悪いけど、今回はちょっとマジだ。
「コレ、特大の魔石五個で一つ作れるんだ」
「手軽……とも言えないが、素材としては簡単だな?」
「そこで、さ。人数分の『錬金術師の卵』欲しくない?」
「お前な……俺達が持ってて何か出来ると思うか?」
そう、装飾品としての効果が分からないと拒否しようとするよな。でも、俺はおっちゃん達のパーティに居なくなって欲しくないんだ。
「何か出来るというか、探索でも何でも有利になれるよ。これを装備していれば」
「……そんなに凄いのか、これ?」
「体力、魔力、技力に100ずつプラス」
「……は?」
「特殊能力として『体力回復』『魔力回復』『技力回復』のランクⅤが付く」
「……本当、か?」
「間違いないよ」
おっちゃんは深く考え込んだ。このメンバーは誰もが高レベルで、スキルの取得も多い。深層の探索はリソース確保が重要、そんな中で身体の傷も魔力と技力の消耗を気にしなくてよくなるなら?
そもそも、高位の魔法使いであるオリーブさんが魔法を撃ちたい放題出来る時点で一つでも作る意味はある。
「……流石の俺達でも、魔石の蓄えはそこまででも無い。特大なんて過去に一度手に入っただけだしな」
「別に、小さいのからでも『錬金術』で融合させて作れるけど」
「……本当、か?」
「嘘は言わないよこんな事で」
俺の言葉におっちゃんは悩んだままだが、遂に結論を出したらしい。インベントリから袋を取り出し、俺の前に置く。
「今、俺達のパーティで所有している全ての魔石だ。作れるだけ頼む」
「分かった……あ、都市長」
「依頼料は私が全部持つから、作業工程含め全部見せなさい」
俺は制作時に発生する技術料が幾らか聞きたかったんだけど……まぁ、いいか。
そんな訳で、実践に移る。一応、どんなに気になった事があったりしても絶対に俺へ話し掛けたり作業台に近付かないようにオリーブさんに言っておく。本人は分かったと言っているが、正直信用出来ない。おっちゃんとダルマさんが力付くで止めると約束してくれたので、作業を始める。
おっちゃんのパーティで集めた魔石はギリギリ4個の『錬金術師の卵』を作成出来る数だった、その事を伝えて了承を貰い精密作業台で『錬金術』を使用する。どんどんと魔石を統一していき、やがて特大の魔石が複数出来上がる。そこから『クラフト』を使用し、多積層魔法陣を展開して特大の魔石5つを圧縮・融合させていく。やがて、手の平大のそれが一つ出来上がる。『鑑定』を掛ければ『錬金術師の卵』の文字、都市長に渡して確認して貰う。
「嘘でしょ、こんな小さな設備でコレを作れるなんて……」
王立研究所とかに比べれば小さいけど、質ははっきり言って上だと自負は有るぞ都市長。
「はい、おっちゃん。先ずは一つ目」
そう言っておっちゃんに『錬金術師の卵』を差し出す。するとおっちゃんより先に我慢できなくなったらしい金色の影が俺の手から『錬金術師の卵』を掠め取った。
「凄いわ凄いわ凄いわ! 魔石が一つになる光景も、立体で構築される魔法陣も見たことがないわ!! そこから生み出されたコレの、なんて美しい事でしょう!! 実際に出来る工程を見たら宝石よりも輝かしく見えてしまう!! 凄いわ! 坊っちゃん、貴方本当に凄いのね!!」
「落ち着け、オリーブ」
暴走しかけているオリーブさんをダルマさんが止めた。結構ヤバそうな雰囲気出てるんだが、大丈夫だろうか?
そのまま続けて2個、3個と作っていく。4個目を作っている最中、ダルマさんとおっちゃんを振り払ったオリーブさんが俺に突撃しかけたらしいが意外な事にナルキさんがオリーブさんの足元を掬って転ばせて止めたらしい。
「作れるだけ作ったよ、おっちゃん」
「本当にそうみたいだな、魔石が入ってた袋がスカスカだ」
苦笑いしながらそう言ってくるおっちゃんだが、何処か満足そうだ。分配はおっちゃん以外に持たせる形にしたらしい、おっちゃんは他のメンバーよりも装備に恵まれていると言って後回しにした。ただ、魔石が集まったらまた作って欲しいと言われたので了承した。
そんな俺の所に都市長がやって来た、見学で満足かと思ったらドンっと中身が満載の袋を取り出して渡してくる。
「カラムスの為に一つ作ってちょうだい」
「え、俺がですか?」
「私が作ってあんたの性能未満の物になったらダメでしょ、しっかりした物を渡さないとこの先の事件でカラムスが重傷を負うかも知れないじゃない」
そう言われて、俺は静かに息を呑む。カラムスさんはテキスト上とはいえ、ゲームでは大怪我を負って傷薬不足で後遺症が残ったと書かれていた。この『錬金術師の卵』が有れば、回避出来るかも知れない。
「分かりました……都市長の分は?」
「そっちは私自身が作ったのを持つわ。他人の作品抱えて生きるより、自分の作品と心中してこそのクラフターでしょう」
かつて、俺が四葩の両親に向かって言った言葉も同じだった。
結局、都市長と俺は似た者クラフターなのかも知れない。
その後、カラムスさん用の『錬金術師の卵』を作り終えた後で都市長はオリーブさんとナルキさんを護衛に伴って帰っていった。残ったおっちゃんとダルマさんに今日やっていた作業の話をすれば、快く協力してくれた。
元から有った柵の支柱を全て抜いて、新しく作ったミスリルの支柱を打ち込んでいく。ダルマさんは分かっていたが、意外とおっちゃんもこの手の作業の手際が良かった。何でも昔は建築現場のバイトもしていた事も有ったらしい、意外だ。
全ての柵を取り替え、支柱にマーカーを刻み終わった後で二人には帰って貰おうとした。しかし、最後まで手伝うから遠慮するなと言われて思わず頼ってしまった。門扉は片側2.5kgのミスリルを使う両開きの物にする。両方合わせて5kg、インゴット50個分とかどんだけ金を掛ければ作れるかは考えない。おっちゃんとダルマさんの顔も引き攣っていたけれど、一旦無視させて貰う。
四葩の鎧を作った時のように、鍛造で門を作る。折り返す事12回、約20万層の金属層を持つ門扉だ。真ん中から分け、門扉を支える柱として1kg分のミスリルを加工し用意した。
正面玄関の門扉を外し新しく作った支柱に差し替えて、円滑に動くようにボールベアリングを嵌めてから新しい門扉を設置する。引いても押してもどちらでも稼働する形にしたので、出入りの際にはそこまで不自由は無いだろう。エテルが妊娠して外出したり帰宅する際には多少楽になる筈だ。
鍵は俺謹製の前世知識全開の物を設置した、エテルが『解錠』スキルの練習に使える様に用意したものの更に発展させたヤツだ。学園の先生から散々言われた物では有るが、この世界では『解錠』スキルで破れる可能性も有る。コレですら万全とは言い難いと思ってる。
仮にこの門を物理的にぶち抜くつもりなら、エテルの『
「……ミスリルって重く出来るもんなんだな」
運んだ門扉の重さを思い出したダルマさんの言葉だが、コレはインゴットを50個注ぎ込んだから出来る芸当だからね?
「流石にこんな量のミスリルなんて取れないぞ普通。坊は何をやってこんなに手に入ったんだ?」
「タチアのスキルだよ、25階層の敵が殆ど『ミスリルゴーレム』になれば一回でコレくらいは入手出来るから」
「……あの子の効果不明のスキルがこんな風に役に立つとはな」
「その代わり鉄がまったく手に入らなくてね……前回なんてミスリル40kgに対して鉄が20kgとか意味が分からない状況だったよ」
「本当に意味が分からんな」
そもそも、kg単位に達するミスリルが手に入る事自体が普通は無い。忘れそうになるがミスリルは希少金属なのだ、本当に忘れそうになるが。
おっちゃんとダルマさんに水出しのお茶を用意して、軽く話す。ダルマさんは斧が余程気に入ってくれているらしく、ダンジョンでの出来事を楽しそうに話してくれた。おっちゃんも今の剣と鎧が無かったら頼んでいたかも知れないなんて嬉しい言葉をくれる。例えお世辞だとしても、おっちゃんくらい凄い人から言われると嬉しい物だ。
お茶を飲み終えて一休みした後、二人は帰って行った。『錬金術師の卵』の作成や、作業で3時間程の拘束をしてしまったがこの後探索をするつもりらしい。本気でタフである。
庭先で結界が正常に動くかの確認を行う、霊脈から汲み上げた魔力を反応させて家をドーム状に包む結界が起動した。霊脈の魔力がやや低いからか、結界の出力が想定していた物の八割程だ。
術式の効率化は今の俺では無理で、誰か専門家を連れて来ないと対応不可だ。俺の取れる手段なんてそれこそ、結界を起動させる為に『錬金術師の卵』を活用した魔力炉を作って繋ぐ程度だろう。何れは家の工房や結界を稼働させる源として用意してもいいが、そんな事をしたらまた都市長から怒られるだろう。都市長個人に同じ物を渡したら目溢ししてくれないかな……いや、賄賂は逆に怒るかあの人。
新しくなった柵の様子を見ながら家を回り、庭先に戻った時に来客が有った。と言っても、玄関に来た訳じゃ無い。
庭先に立つ一人の女性。豊かな金髪に豊満な身体をメイド服で包み、その背に刃金の翼を広げる上位存在。久しく見なかった『天使長』がそこに居た。
「お久しぶりですね」
《はい、お久しぶりですタタラさん!》
挨拶をすれば、嬉しそうに応える『天使長』。今回はなんだろう、また武器整備かな?
《風の噂で聞きましたよ、同居している女性と結婚するとか?》
「ええ、学園の卒業後に式も挙げる予定です……『天使長』も出ますか?」
《それはとても魅力的なお誘いですが、私はちょっとその手のイベントには参加出来ないんですよ》
イベントスチルの問題だろうか?
「そうですか、残念です」
昔からの知り合いだから本気で残念だ。エテル達に説明するのは難しいが、沢山世話になった人だからな。
《我儘を一ついいですかね?》
「え、はい。なんでしょうか」
《もし、もしですよ? お子さんが産まれたら抱かせてくれたりしないかなって……》
「あ、そんな事ですか? 勿論いいですよ」
俺が了承すると『天使長』はパッと明るい笑顔になる。やっぱり子供みたいな所があるなこの人。
「武器は大丈夫ですか?」
《はい、変わらない斬れ味で敵をバッサリ行けてます!》
さり気に恐ろしい言い回しである。
「そういえば、今日はどんな用事だったんでしょうか?」
武器の整備が無い上に、俺が世界に無かった物を作り上げたタイミングでも無い。いや、ここ最近立て続けにやらかしては居るが。『天使長』は気配を感じて俺の所に来るはずなのだが、ここ最近は作っている時に来てない。
《あ、そうでした! タタラさんにお伝えしなければならない事が有りました!》
両手をパンと顔の前で合わせて、『天使長』は明るい声で言っている。
《タタラさん、このままだと世界から追い出されかねないので注意して下さいね!》
「くっそ明るい声で言う事じゃ無いですよね、それ」
虎熊の胸が成長する予定は有りません。一応、妊娠して授乳するってなれば生物として一時的に成長しますが期間が終われば元に戻ります。
アンケートは10月第一週が終わるまでにしますね。
アンケートが分かりづらいとの事で一応。
・登場キャラは他国の言語や花から名付けられている。
・キャラ達は性格やキャラの方向性を花言葉から取られている。
・下四つの選択肢は男。
とヒントにもならない物をおいておきますね。
この小説は……
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永遠と愛の絆
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寛容と一途な愛
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信念と翼
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鎚を包む花束
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誠実と誇り
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都市長いっとけ都市長
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年増園
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太陽の笑顔
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星の微笑み
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太陽と星
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娘さん、親父殿を俺にください