※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中。
虎熊関連イベント開始。


鍛冶師は邂逅する

 爆弾発言の後に去って行った『天使長』を見送って、俺は少し考える。以前四葩にも言われたが、この世界から追放を喰らう可能性があるとシステム側の存在から直接的に言われた意味だ。

 これ以上、新たな発明をやめろとそういう意味なのか。それとも別の意図が有るのか、答は出ない。

 確かに『錬金術師の卵』こと『賢者の石』は危険極まりない物質だ。霊核と同質の物なのだから、アレを応用すれば人は人為的に神を作成することも可能になる。尤も、神を神たらしめる権能を持つ事が出来ないだろうから力が強いだけの存在に成り下がるだろうが。それとも、神を打ち倒せばその権能を奪えるのか?

 そんな益体もない事を考えながら、一度家を出る。

 向かうのは癒しの乙女の教会、四葩に『女神の癒薬』を与えて以降補充して居ないことを忘れていた。この先、何が起こるか分からないので回復手段は増やしておくに限る。

 教会の前には年配のシスターが一人、人々に安心感を抱かせる白と青と緑の服を着こなして落ち葉を掃除していた。

 

「お久しぶりです、シスターカレハ」

「あら、お久しぶりですねタタラさん」

 

 声を掛ければ穏やかに返事をしてくれるカレハさん。俺が子供の時からシスターを務めている大ベテランだ。

 

「本日は癒薬が欲しくて来ました、寄進させていただけます?」

「あらあら、最近外来のお嬢様が鬼だとお伺いしましたがタタラさんの案件でしたのね? それは確かに、我等が乙女様の癒薬が必要でしょう」

「はい、一度使用しましたが効果覿面でした。俺達が作った傷薬じゃまともに治せないので、癒しの乙女様の慈愛には感謝してもし足りません」

 

 解析するのも烏滸がましい乙女の祝福がこもった癒薬は、恐ろしい事に保存状態に関わらず効果の劣化が起きない。もし効果を無くす事が有るとすれば、それは乙女への信仰心が世界から失われた時だろう。

 俺はそこそここの乙女様を敬っている。子供の頃、両親が大怪我をした際に癒薬で後遺症も無く癒えたのでその頃から偶に教会へ来ては感謝を伝えていた。今は頻度が減ってしまっているが。

 実はこの教会からの依頼は最優先かつ依頼料を殆ど貰わないで受ける事にしていたりする。尤も、信者でもない俺に依頼をする事なんてほぼ無いが。

 

「それでは、祭壇の前へどうぞ。私は癒薬を持ってきますので」

「はい、ありがとう御座います」

 

 促されたので教会の奥、祭壇の前へ進む。片膝をついて、両手を組んで祈りを捧げる。今日も世界を見守ってくれている感謝と、エテル達が無事帰ってくるようにと願う。

 ふと、誰かに頭を撫でられる感覚がした。何事かと顔を上げるが女神像が立っているだけで、周囲を見回しても誰も居ない。

 

「……気のせい、か?」

 

 偶に、教会で独りで祈りを捧げていると起こる事象だ。両親が亡くなった後で子供が縋った幻想、という訳でも無く両親が亡くなる前から起こっている。

 

「お待たせしました、タタラさん。本日はコレくらいしかお出し出来ませんが、どうぞ」

 

 そんな俺にシスターカレハが声を掛けてきた。重そうな木箱を持っている姿を見て、慌てて近付いてその荷物を持つ。悪い言い方になるが、もう若くないから無理をしないで欲しい。健康で居てほしいと願う。

 

「あらあら、タタラさんは力持ちですね」

「そんな事はどうでもいいですよ、筋とか痛めてませんか?」

「ふふ、大丈夫ですよ。おばあちゃんですが、コレでも体力には自信も有りますから」

 

 穏やかに微笑むシスターカレハに脱力しそうになる。この人、人を心配させる事が多い天然に見えるけれどそれ以上に荒事になれてるみたいなんだよな。多分、昔この人を好きになった男も多かっただろうな。年食ってても美人なのが分かるし。

 俺は木箱の中の癒薬を確認して、一旦床に置く。インベントリから財布を取り出して50万程取り出して寄進する。

 

「あらあら……随分と多いですね」

「沢山癒しの乙女様には助けられてますからね、これはほんの気持ちですよ」

 

 曰く、傷薬のレシピは怪我から死に繋がる事が多かった過去の時代に癒しの乙女が憐れんで伝えたと言われている。傷薬は俺も作れるが、元は癒しの乙女が伝えて無ければ無理な事だった。だから、俺は癒しの乙女を敬っている。今日も貴女のおかげで健康に人々が生活を送れています、と感謝している。不信心者な俺が出来る事なんて、教会の人々が少しでも身体を健康に保てるようにお金を出す事だけ。だから惜しまない。

 

「ふふ、タタラさんが乙女様の信者ならよかったのに」

「信仰心を持てない人間なので。俺が信者になろうとしても、傷薬の利権目当てで信仰してるとか思われて教会のイメージを損ないますよ」

 

 クラフターや商人に癒しの乙女を信仰してる人間が少ない理由とされるのがコレだ、当人達は敬虔であればあるほどに癒しの乙女の宗派に所属しようとしなくなるんだそう。

 俺はそもそも信仰できないから所属しないのだが。

 

「はにゃぁぁぁぁぁ!?」

 

 そんな俺とシスターカレハの会話中に物凄い悲鳴と破砕音が響いた。俺は何事かと思い咄嗟にシスターカレハを庇える位置に立つが、シスターカレハは頬に手を当てて溜息を吐いていた。

 

「あの子はまたやっているのね……怪我は大丈夫かしら?」

 

 最早慣れた様子である。あの悲鳴と破砕音になれてるって、と驚くよりも声に対して嫌な予感がした。

 前世で遊んだこの世界の元になったと思わしきゲーム『深く深い闇の先で』の中で、多分一番聞いた声。遭遇しないのですっかり忘れていたのたが、この教会には一人メインヒロインが住んでいるのだ。教会を切り盛りする名前の分からない老シスターが引き取った孤児で、先天的に強い力を持っていて排斥されて来た女の子。メインヒロインでは一番低い背と一番デカい胸を持ち、エロ系スチルも最多で持っているパッケージの真ん中を飾ったヒロイン。

 

「シスターランカ、大丈夫ですか?」

「ふぇぇ、ごめんなさいシスターカレハ」

 

 癒しの乙女の宗派特有の目に優しい色合いのシスター服を所々汚して出て来たのは、真っ白な髪色をしたメガネの少女だ。エテル程では無いが、タチアよりも大きい立派な胸部を誇り涙目で謝る姿はその手の趣向を持つ人に好かれるだろう。

 ただし、初期ステータスは完全に攻撃型のそれで初期から『物理攻撃上昇』と『物理防御上昇』に『魔法防御上昇』更に『槌適性』を所持している前衛型だ。驚く事にシスターなのに『信仰魔法』を所持していない為、回復役を求められる立場の筈なのに最前線で敵をぶん殴ってる場合の方が多いというキャラクターだ。実際、キャラの成長方針も『体力』『物理攻撃』『物理防御』『魔法防御』が凄まじい伸びを見せるので最初から最後まで頼れる前衛役だった。

 ドジを披露しているが、三指に入るくらい物理方面では頼りになるのだ。ドジを披露しているが。

 シスターランカは俺に気付いたらしく、眼を瞬かせてからシスターカレハに質問した。

 

「あ、あのシスターカレハ? そちらの男性は……?」

「彼は近所でクラフターをしているタタラさんですよ、本日は寄進して頂きましてね。御礼に癒薬を分けて差し上げたの」

「え、えぇ!? シスターカレハ、あんなに癒薬を分ける事を渋っていたのにどうしたんですか!?」

 

 あの、第三者がいる時にそう言った内部の事情とか言わない方がいいと思うよ?

 それにシスターカレハ、昔から俺が寄進すると癒薬を分けてくれてたけどな。偶に脚とか腰が辛そうで負担軽減の為にサポーター作って贈ったり、両親が死んだ後は母の日にカーネーション贈ったりした事は有るけど贔屓されるような事じゃないだろうし。

 

「あらあら、シスターランカ。まるで私が孫のように可愛がっている子供に贔屓しているような言い方は感心しませんね?」

 

 普段と大して変わらない声音の筈なのに、滅茶苦茶威圧が込められた声だった。シスターランカが今にも泣き出しそうな様子だ、早く謝っとけ。俺まで震えそうだぞ。

 

「す、すすすすすすすみませんでしたシスターカレハ! 我が教会は遍く人々に等しい施しを行っておりますぅ!!」

 

 めっちゃ動揺してるじゃん、言わされてる感がスゲェよ。

 

「あの、シスターカレハ?」

「はい、何でしょうか? 我が教会は遍く人々に等しく接する教会ですよ?」

 

 笑顔なのに目が笑ってないな、怖い。

 けど気になったのはそこじゃ無いんだよな。

 

「さっきの破砕音……もしかして食器とか壊れてませんか?」

「あら……」

「コレでもクラフターです、いくつか後で持ってきますので納めて下さい」

「それは……」

「お願いします、かあ……シスターカレハ」

 

 しまった、偶にこの人の事を母さんって呼びそうになる癖が出かけた。生前の母さんに似てて子供の頃は偶に呼び間違えたんだよな、今でも治ってないとは不覚だった。

 

「……仕方ないですね、そこ迄強く言われてしまっては断ることの方が不躾になってしまいますし。寄付を受け入れます」

 

 何処か嬉しそうな雰囲気の声だった。

 それともう一つ。

 

「さっきのシスターランカでしたか? あの子、多分よく食べますよね?」

「え、ええ。細身な身体の何処に入っているのか分からない程食べますが……」

「これ、食費に使って下さい」

 

 財布から更に五万ほど出してシスターカレハに渡す。物凄く驚かれているが、実はゲーム知識によるものだ。

 彼女は先天的に筋密度が常人の数倍有り、更に魔力による身体強化の倍率も桁外れの効果を発揮する。その為、人より多く食事と言うか栄養を必要とするのだが教会暮らしは基本質素となる為に満足に食事を取れない。その為、原作開始のタイミングではあまり力を出せないといった描写が有る。

 正直、ゲーム開始時に彼女を最初のルートとして定めたというか最初の攻略に入った理由がいっぱいご飯を食べさせた時のスチルが幸せそうだったからだ。どんだけ普段食えてないんだよと思いながら無理繰り金策して、満足するまでご飯を食べさせ続けたらルートに入っていた。因みに、公式でエロシスター扱いをされていてその名に恥じない乱れっぷりだった。息子がお世話になりました。

 

「何となく、彼女は常人よりも筋力が多いのが分かります。多分、その影響で食事が多くなる傾向にあるのでしょう。シスターカレハ、幼い頃に俺は貴方とこの教会に救われました。だから今度は俺に貴方と教会を助けさせて下さい。お願いします」

 

 頭を下げてお願いする。ゲームでの彼是よりも、此方の方が比重が大きい。関わりのない美少女よりも、助けてくれたシスターと教会。今は出来ない母親への孝行の代替えみたいな物かも知れないが、それでも俺は小さな事からこの教会を助けていきたい。

 

「……分かりました、この施しを受け入れます」

 

 何処か諦めと、呆れを含んだ言葉だ。

 

「ありがとう御座います、かあさ……シスターカレハ!」

「その母さんと呼びそうになる癖、治して下さいねタタラさん?」

 

 また出かけたな、この悪癖。早く治さないとシスターカレハに恥をかかせてしまう。

 

「それじゃあ、食器取ってきますので一旦お暇します。お邪魔しました」

「あらあら、それではまた」

 

 小さく手を俺に振ってくるシスターカレハに、俺も手を振ってから家に向かって走る。どうせ余ってるし、ミスリルで4人分くらいの食器一式を作って渡すかな。シスターランカにも軽く手を振れば、彼女も振り返してきた。結構良い反応速度しているな。

 

 家の工房で手早くミスリル製の食器一式4人分を作成し、癒しの乙女の教会へ持ち寄る。制作時間については丁度いいのを探していて時間が掛かったと誤魔化した、シスターカレハには気付かれてたっぽいが指摘はしないでいてくれた。

 教会から立ち去ろうとしたタイミングで、入れ替わりで入ってくる人影が有った。身長は俺より低い、170cm前後といったところだろうか? シルバーグレーの髪色と、黄色い瞳の俺より少し若い少年だった。

 ぶつかりそうだったので、軽く避けて道を譲る。

 

「あ、どうも」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 軽い挨拶と共にすれ違い、俺は教会の外に出た。

 

「ばあちゃん、怪我したから傷薬ちょうだい!」

「スミスくん!? シスターカレハにおばあちゃんは失礼だよ!?」

「シスターランカ?」

「ひぃっ!?」

 

 俺はそのやり取りで思わず振り返る。シスターランカが名前をくん付けで呼ぶ相手はゲーム中一人しかいない。そしてスミスという名前。

 

「スミス・サントリナ……今のが原作主人公か」

 

 すれ違っただけだが、思わぬ邂逅だった。原作でも顔は出しているが今一印象に残らないんだよな、この作品の主人公。過去作主人公が格好良かったり綺麗だったりな一枚絵出されてるのに対して、この作品の主人公は熱血な場面は有るけど悉くアホな場面にスチルを割かれたせいか印象が薄い。だいたいは変顔晒してるタイミングだし。

 

「ま、シスターカレハとしか接点作る気が無い俺には関係ない事だよな」

 

 そう独り言を溢して今度こそ立ち去る。この言葉が言霊になる事を願うが、フラグになったらどうしようか。

 商店区を歩き、買い物をする。素材さえ有れば基本的に何でも作るが、最近不足気味の物がある。具体的に言うと鉄だ。

 本来は商業区の方で買うべき物なのだが、偶に此方を覗くと失敗作の鉄屑を扱っている店があるのだ。そういった物を安く買い叩き、自分の所でリサイクルする……まぁ粗悪なので作れるのは精々がインゴットの一つか二つ程度だ。が、手間を差し引いても真っ当に買うより1/4程の値段で買えるのは意外に懐に優しい。特に魔鉄へ生成して商品を売れば値段が20倍近くに跳ね上がるから、かなりアレな商売だと思う。しかし、ミスリルばかり手に入って鉄が手に入らないのはどう考えてもおかしな事態だろう。下手すればこの先売れる物が無くなりかねない。持ち込み品の技術料だけだと本気で詰むかも知れない。

 本来なら『ゴブリン』種のレアドロップから作れる『ゴブリンキラー』や『オーク』種のレアドロップ品で作れる『ミートチョッパー』、『オーガ』種のレアドロップ品製の『オーガニクス』に『トロール』素材から作れる『ガラガラドン』。そして『ゴーレム』種のレアドロップから作れる『コアブレイカー』、ドロップ率から考えてこの辺りが作れてもおかしくないのだ。が、基本タチアの影響として通常種と出会えない為に、集団で出現する『ゴブリンコマンダー』から『ゴブリンキラー』を作れるか否かといったドロップ状況である。ドロップが基本魔石に寄ってる影響で『浮身石』や『錬金術師の卵』なんていう特殊な物も作れたが、安易に売れそうに無いのだ。下手したら『ワールウィンド』最高のパーティであるおっちゃん達ですら作る際の技術料を出せない可能性すら有る。あの都市長が技術料の明言を避けていた、後から思えばとんでもない事である。

 そんな風に意識を逸らしていた為だろう、胸元に衝撃を感じた。

 

「きゅうん!?」

 

 動物みたいな声を出して、何かが転がった音がした。慌てて正面を見れば、小柄な少女らしき人物が目を回して倒れている。

 

「やべ、大丈夫か君!?」

 

 思わず大きな声を上げて駆け寄る。何と言うか、見覚えは有るけど見慣れない恰好である。例えも何も無く簡単に言えば『忍者』である。エロゲーナイズされて袖は無いし下はスパッツ履いてるしで『忍者』って言うか『NINJA』とか『KUNOICHI』だけど、間違いなくこの『ワールウィンド』に居るのがおかしい人種である。

 冷静にそんな事を分析している一方で、呼び掛けてもマトモに反応しない少女を如何にするか悩む。ぶつかった責任は取らないとならないが、少女に下手に触れば俺が捕まりかねない。最良はこのまま呼び掛けて少女自身で起きてもらい、お詫びをして立ち去る事。

 次善は目覚めない少女を近くの女性に任せて、医者を呼びに行く事。

 危険なのは少女を抱えて病院に向かうこと。

 どれを選んでも詰む気がしてならないのは何故だろうか?

 呼び掛けを続けながら悩んでいると、物凄い腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。音の発生源を確認すれば、少女の腹。野次馬として集まっていた周囲の人達も沈黙する、まるで妖精でも通ったかのような静けさだ。

 

「お、おなか減ったでござる……」

 

 口調までテンプレかよ、とツッコむ手間も惜しみ近くの屋台から美味そうな匂いのする物を片っ端から買い漁る。周囲の人達も協力してくれて、飲み物も含めて色んな物を集めた。

 

「ほら、コレを食べるんだ」

 

 少女の上半身を抱き抱えて、口元に串肉を近付ける。香辛料が効いた食欲を刺激する匂いが鼻に届いたのか、少女の鼻がひくひくと動く。周囲の人達は固唾を呑んで見守っている。

 やがて口元の肉にゆっくりと近付いて、パクリ。

 

「……お、おいしいでござる……」

 

 心の底から出た声だった。万感の思いの乗ったその音は、周囲の人達の涙腺を刺激して啜り泣きを誘発させた。

 次々に口元に近付ければ美味しい美味しいと言葉を続け、どんどん消費していく。

 

「う、けほっこほっ」

「水分が足りないのか? ほら、飲み物だ。スパイスが効いてて美味いぞ?」

 

 ゆっくりと飲み物を飲ませる。口元から溢れて喉元を濡らさないよう、ゆっくりと杯を傾ける。少女の白い喉がゆっくりと上下し、嚥下しているのが分かる。杯を満たしていた飲み物を全て飲み終えた時、少女の目の焦点が合った。

 

「おい、大丈夫か? まだ動けないか?」 

 

 次の食べ物を手に取ってそう問えば、少女はハッとした様子で身を起こした。と、次の瞬間には用意していた食べ物を物凄い勢いで食べ始めたのである。

 何日か絶食したような状態からいきなりそんなに食って大丈夫なのだろうか? そう思いつつ、少女の手が届く位置に食べ物を並べていく。買ってきた物を全て食い尽くし、食後の一杯と言わんばかりに豪快な飲みっぷりで近くで買ってきたクラフトドリンクを飲み干した。

 

「ぷはぁっ! ごちそうさまでござる!!」

 

 あまりに見事な食いっぷりとその量に、周囲は思わず拍手を贈る。後頭部に手を当ててどうもどうもと頭を下げる少女を見て、とりあえずどうするか考える。何となく関わったら面倒そうなので、一言残して立ち去ろうと決める。

 

「もう大丈夫そうだな、ぶつかって悪かったな」

「あ、いえいえ!」

「それじゃ、俺は此処で」

 

 そのまま立ち去ろうとした瞬間、背後から腰に衝撃が走った。

 

「コレもきっと何かの縁! 助けて頂きたいのでござる!!」

「いや、なら先ずは警邏隊の所へ行ってくれ。公的機関の力を最初に頼ってくれ」

「無理でござる! 拙者、遥々遠き陽出國より来たのでござるが無学ゆえに文字が読めぬでござる! 入国審査とやらで話しが通じず、思わず逃げたら三日三晩追い掛けられしかも此方の通貨も使えず何も口に出来ず!! 力が入らない所へ不埒な男共に囲まれ純潔の危機にまで発展!! もう限界なのでござる!!」

「初手のやらかしから自業自得じゃねぇか! マジで自衛団に突き出してやるからな!!」

 

 四葩よりもヒデェ状況作ってやがるぞこのエセNINJA、周囲の人達も状況の変化から雲行きが怪しくなったと感じで警邏隊を呼びに行ってるようだ。

 

「ええい、離せ! ズボン脱がす気かお前、この痴女が!!」

「拙者、コレでも新品な処女でござる! 遊んでなんかござらん!!」

「そこじゃねぇよ、離せっての!」

「嫌でござる! 餌をあげたなら合法、責任取るでござる!!」

「まるで意味が分からんぞ!?」

 

 エセNINJAの言葉が真面目に何を言っているのか分からず、ツッコミを放棄したくなる。お巡りさんコイツです、早く助けて下さい。

 そう思っていたら警邏隊が来た、コレで勝てる。

 

「テメェの命運も此処までだ! 大人しく縛に就くんだな!!」

「な、謀ったでござるな!? あんなに優しくしてくれたのに!!」

「優しさで飯恵んだら犯罪の片棒担がされそうになった俺の気持ちを考えやがれ!」

 

 警邏隊の人達がトリモチランチャーを構える、このままだと俺も巻き込まれるなコレ。咄嗟に腰に回る少女の手を掴み、身体を反転。警邏隊の人達へ少女の身を曝した瞬間に響く空気が弾けたような音。

 

「きゃうん!?」

 

 俺が少女とぶつかった時に聞こえた奇妙な鳴き声を思わせる声が聞こえた、衝撃が伝わって来ないので少し振り向くと少女の下半身がトリモチにより地面とくっついてるのが見えた。いい腕してるな、警邏隊の人達。

 

「な、何でござるか!? 男達が白くてネチャネチャした物を拙者の下半身にぶっ掛けたでござる!?」

「悪意しか感じねぇ言い方すんなよお前」

 

 ほら、警邏隊の人達が凄く居た堪れない雰囲気になってんじゃねぇか。

 

「や、やめてぇ!? 拙者に乱暴するつもりでござろう!? 艶本みたいに! 艶本みたいに!!」

「そういう言い回しってお前ら本当何処で学んで来るの?」

 

 艶本ってエロ本だよな、乱暴云々ってネットミームなアレじゃねぇか。

 

「入管管理局とか言う奴等と同じ様に、拙者の服を脱がせるつもりでござろう!?」

「おっと?」

 

 ちょっと雲行きが怪しくなったな。いや、コイツの事だしなんかあるな?

 

「わざわざ女性職員に対応させて、脱がせて百合乱暴するつもりに違いない! 処女を奪えても、拙者の心まで奪えるとは思わない事でござる!!」

「……お前、もしかして。服の下に暗器隠してて、入管管理局の人達に呼び止められた挙句提出渋って逃げたとかじゃねぇのかそれ」

 

 俺の言葉に、少女が押し黙る。周囲の人達も直前までは少女へ同情の視線を向けていたが、俺の発言から疑いの視線を少女に向け始めた。

 少女はダラダラと冷や汗を流した後、舌をちろっと出して片目を瞑る。ウインクのつもりだろうか?

 

「てへ♪」

「確保ぉ!!」

 

 少女の態度にブチ切れた警邏隊の人達が確保に向かってくる。ガッチリズボンを掴んでいる少女の腕のちょっとした箇所を押して脱力させる、自然と離れた腕に驚愕する少女を無視して身体を離す。その瞬間、警邏隊の人達が少女を容赦なく確保した。

 

「きゃうん!? 何でぇ何ででござるかぁ!?」

「いや、正式な手続きしないで通ったからだろ。普通に入る上での目的とか言って、職員の協力得ればいいじゃないか」

「そんなの信用出来ないでござるよ!」

「その信用をしないから自分も信用されないって自覚持てよお前」

 

 半分話が通じそうな分、初期タチアよりも質が悪いぞコイツ。

 見た目と、言ってる事から考えて四葩の関係者っぽいが……まさか虎熊家から送られてきた迎えか? ……いや、流石にコレは無いだろう。

 と、その時だ。羽撃く音が聞こえ、突風を伴って警邏隊の人達に取り押さえられている少女の元へ何かが降り立った。あまりの勢いに警邏隊の人達は吹き飛ばされて、後にはトリモチ塗れの少女と新たな人影が一つ。

 烏の濡羽色、そう評するのが相応しい黒色の髪を肩口で切り揃えた同色の瞳を鋭くして此方を睨見つける者。白い狩衣と言うのか、精々が時代劇でしか見たことの無い和服と高下駄。右手には大きな団扇、左腰には刀を差している。

 何よりも目立つのは、その背に生えた一対の黒い翼。天使族や堕天使と言った類いではない、それらと違い光輪がその頭上に無い。思い至るは一種の妖怪。

 

「……天狗、か?」

 

 俺の言葉に、知っているのかと疑問を持ったらしい警邏隊及び近くにいた人達が視線を向けてくる。

 

「……ほう、我等が種族を言い当てるか。祖国とは疎遠故、知られていないと言われたのだがな?」

「生憎、ちょっとした伝でな。それで、陽出國の三大妖怪の一柱がこの『ワールウィンド』に何の用で?」

「一つは人探し、主から迎えを仰せつかった故。もう一つは……」

 

 と、突然天狗が足元で勝ち誇った表情をしている少女に向き直って……思いっきり拳骨を落とした。

 

「貴様ぁ! 何故よりにもよって正式な入国手続きをサボって逃げ出したぁ!!」

「きゃうん!?」

 

 物凄い声だった。何となく分かったが、この天狗さん苦労人だ。

 

「私が手続きを終えて見れば姿が見えず、入管管理局内で三日三晩待ち惚けを食らった気持ちが分かるか!?」

「ごめんなさいでござる、ごめんなさいでござる!」

 

 三日三晩待ち続けてる辺り、この天狗さんも結構ズレてるっぽい。いや、初めて入る場所だから下手に動けなかったのか?

 

「貴様が大人しくしておれば、三日前には無事にこの街へ入れて四葩様を探せたのだ! 目的の鍛冶師の店も簡単に教えてくれた親切な職員さん達だったのだぞ!?」

「ひぃ!? 痛い痛い痛い! 尻尾の毛が抜けちゃうでござるよ!?」

「尻尾の禿ぐらい大人しく受け入れろこの駄狐!」

 

 職員にさん付けする辺り相当良い人な気がする。というか、今四葩って言ったかこの天狗さん?

 

「あっと……お取り込み中に申し訳ないんだけど、少しいいか?」

 

 俺が声を掛けると、少女は嬉しそうに目を輝かせる。悪いがお前を助ける意図は欠片ほどもない、天狗さんの手が空いたら速攻で警邏隊の人に連れてって貰うからな?

 

「む、済まないが今この駄狐を折檻するので忙しい。控えてくれないだろうか?」

「一点確認させて貰えれば良い、人探しって言ってたよな? それも、主から命じられたって」

「……ああ、そうだ。主の息女の一人がこの国に迷い込んでしまったそうなので、な。私とこの駄狐が迎えを命じられたのだ」

「……もしかして、条件に『迷わない人材』とか付けられてない?」

 

 俺の意味が分からない質問に、周囲の人達は困惑気味だが……天狗さんの警戒度合いが上がっている。

 

「……質問の意図が分からぬ、な」

「そうか……じゃあ次に聞きたいんだが」

「何故貴殿は私にそのような質問を……」

 

「虎熊四葩って鬼族の令嬢を知ってるか?」

 

 反応は劇的だった。天狗は正に『目にも止まらぬ速さ』で俺の首元に抜刀した刀を突き付け、トリモチから抜け出したエセNINJAは背後に回り俺の首に小刀を当てていた。ヤバいな、普通に見えなかった。

 

「答えろ、何故その名前を知っている」

「答えて下さい、ご飯の恩は有りますがお嬢様の情報を言って貰わねばなりません。手荒な真似をする前に答えて下さい」

 

 エセNINJA、アレキャラ作ってたのかよ。ちっとも見抜けなかったぞ。

 

「その前に一つ答えてくれ。この質問の答え如何で目的に添えるかが変わる」

 

 命を握られてる状況だが、意図が掴めなければ動きようが無い。周囲の人達は俺の心配をしてくれているが、距離が近過ぎて動けないのだろう。

 

「……いいだろう、言ってみろ」

「あんたの主から言われてる鍛冶師の名前を言ってくれ」

「何故、でしょうか」

「心当たりが有るからだ」

「そんな物、既に居場所は知っている」

「本当に、か? この『ワールウィンド』の土地勘も無しに、辿り着けると?」

 

 俺の言葉に天狗さんの表情が少し変わる。やっぱりそこを危惧してたか、地図を貰ってても整然とした街並みだと見分け付かないからな、ここ。

 

「……それは別に構わん」

「いや構えよ、運命の迷い子とか不名誉な二つ名付いてる家系だろうが」

「何故、それを知っているのです?」

 

 いや、此処まで言い当ててる事にある程度推察は付かないのか?

 そして、俺の質問にすぐ答えなかったツケが妖怪二人組に襲いかかる。

 上空から迫る銀光、咄嗟に俺へ刃を向けていた二人組が飛び退きそれまで立っていた場所が切り裂かれる。

 上空から俺の背後に降り立ち、背中合わせになる1人の騎士。

 都市最強と名高き軍神が認めた聖人。

 カラムスさんが俺と背中合わせで立つ。そうか、そっちの方が厄介なのか。

 俺は向き合う形になった天狗さんを見据え、先程の質問の続きをする。

 

「もう一度聞く、主から聞いている鍛冶師の名前を言ってくれ。事を構える必要も無い可能性だって有るんだ」

「諄いぞ、人間。主命を果たさねばならぬ身、邪魔立てするならば……斬る」

「だから話を聞けよお前等、その主命を果たす上で滅茶苦茶簡単な事になるんだっての」

 

 名乗ろうにも、今名乗って変に拗れる可能性すら有るのが不味い。と言うか当主代行、人相書きとか渡さなかったのか?

 

「おい、此奴等は何者だ?」

「虎熊家から遣わされたお迎えですよ」

「……それが何故、お前に刃を向けていたのだ?」

「不幸な行違い、ですかね」

 

 言って、インベントリから『黒鐵の鎧』を呼び出す。一瞬で装着される全身鎧に、天狗さんは驚愕と言った具合に目を見開く。

 そして、インベントリから取り出す一本の棒。長さは1m程の飾り毛の無い魔鉄製の棒だ。ウォーハンマーでは相手を捉えられない場合の、主に対人戦用に用意したバトンである。

 

「悪いけど、話をちゃんと聞いて貰うよ天狗さん」

「やってみよ、若人」

 

 人間呼びから変わったな、何か心境の変化でも有ったか?

 取り敢えず、一旦冷静になって貰うためにぶん殴ろう。話はそれからで十分だ。




スミス・サントリナ(独語:鍛冶師 花:サントリナ)原作主人公
シスターランカ(花:カサブランカ)原作ヒロイン・エロあり
シスターカレハ(花:枯葉)原作キャラだが名前と立ち絵エロ無し

シャムス(アラビア語:太陽)原作キャラ・エロあり
エスト(ポルトガル語:星【エストレッラ】)原作キャラ・エロあり

妖怪二人組:リメイク版の追加キャラ




アンケート、下四つの内約
太陽の笑顔(シャムスルート)
星の微笑み(エストルート)
太陽と星(後輩ハーレム?)
娘さん、親父殿を俺にください(ローガスルート)

この小説は……

  • 永遠と愛の絆
  • 寛容と一途な愛
  • 信念と翼
  • 鎚を包む花束
  • 誠実と誇り
  • 都市長いっとけ都市長
  • 年増園
  • 太陽の笑顔
  • 星の微笑み
  • 太陽と星
  • 娘さん、親父殿を俺にください
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